(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】樹脂付き金属箔、フレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20231027BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
H05K1/03 670A
H05K1/03 630H
B32B15/08 J
(21)【出願番号】P 2022104362
(22)【出願日】2022-06-29
(62)【分割の表示】P 2017564260の分割
【原出願日】2017-01-24
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2016012063
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】江崎 義昭
(72)【発明者】
【氏名】小関 高好
(72)【発明者】
【氏名】栃平 順
(72)【発明者】
【氏名】原田 龍
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315595(JP,A)
【文献】特開昭63-058997(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046014(WO,A1)
【文献】特許第5404959(JP,B1)
【文献】特開2003-342441(JP,A)
【文献】国際公開第2002/040611(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔に第1絶縁層及び第2絶縁層がこの順に形成された樹脂付き金属箔であって、
前記第1絶縁層は、ポリイミド樹脂層、ポリアミドイミド樹脂層、液晶ポリマー樹脂層、フッ素樹脂層又はポリフェニレンエーテル樹脂層で形成され、
前記第2絶縁層は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層で形成されていると共に、
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層全体に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が
10000/130.3質量%以上95質量%
以下である、
樹脂付き金属箔。
【請求項2】
前記成分(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂及び両末端ビニル基のポリフェニレンエーテルオリゴマーからなる群より選択される1種又は2種以上である、
請求項
1に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(C)硬化促進剤をさらに含む、
請求項1
又は2に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(D)充填材をさらに含む、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂層が、180℃で60分間処理した後の貯蔵弾性率が25℃~150℃において10
5~10
8Paである、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の樹脂付き金属箔の前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の硬化物を絶縁層として有している、
フレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付き金属箔、フレキシブルプリント配線板に関し、特にフレキシブルプリント配線板等のプリント配線板の製造に用いられる樹脂付き金属箔、各種電子機器に用いられるフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
小型・薄型の電子機器には多くのフレキシブルプリント配線板が使用されているが、最近では更なる高密度化・薄型化の要求からフレキシブルプリント配線板にも多層化のニーズが高まると共に、その要求品質が厳しいものとなっている。従来、フレキシブルプリント配線板の多層化材料としては、絶縁層としてボンディングシートやカバーレイが用いられ、導体層として銅箔などの金属箔が用いられている。近年、薄型化の要求を達成するために、樹脂付き金属箔が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
他方、多層プリント基板の製法としては、孔あき基板と、銅パターンが形成されたプリント基板との間に、孔あき基板の孔と対応する孔を有するフィルム状接着剤を挟持し、加熱加圧して積層成形する製法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この製法では、孔に接着剤がはみ出さないようにするために、孔あき基板上に熱可塑性樹脂シートを載置し、加熱加圧して積層成形するようにしている。
【0004】
上記の多層プリント基板を薄型化するため、孔あき基板及びフィルム状接着剤の代わりに、孔あきの樹脂付き金属箔を用いることが考えられる。具体的には、孔あきの樹脂付き金属箔の樹脂をプリント基板上に重ね、孔あきの樹脂付き金属箔の金属箔上に熱可塑性樹脂シートを載置し、加熱加圧して積層成形する。この成形時に熱可塑性樹脂シートが熱変形して孔を充填することにより、孔あきの樹脂付き金属箔の樹脂が孔にはみ出すことを抑制することができる。
【0005】
しかし、プリント基板の表面は銅パターンが形成されて凹凸となっているため、熱可塑性樹脂シートを使用して加熱加圧する場合、プリント基板の表面の凹凸が孔あきの樹脂付き金属箔の金属箔の表面に凹凸となって現れることがある。このように金属箔の表面が凹凸となってその平滑性が損なわれると、この箇所に部品を高密度に実装することが困難となる。
【0006】
そこで、熱可塑性樹脂シートを使用せず、孔あきの樹脂付き金属箔の樹脂として流動性の高いものを用いることが検討されている。この場合、成形時に樹脂が流動しやすくなり、プリント基板の表面の凹凸がならされて、その上の金属箔の表面の平滑性が確保される。さらに密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性も良好である。しかし、孔あきの樹脂付き金属箔の樹脂の流動性が高いため、この樹脂が孔にはみ出してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/145224号
【文献】特開平5-191046号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性を良好に維持しながら、成形時における樹脂の流動性が低く、はみ出しを抑制することができる樹脂付き金属箔、フレキシブルプリント配線板を提供することである。
【0009】
本発明に係る一態様の樹脂付き金属箔は、
金属箔に第1絶縁層及び第2絶縁層がこの順に形成された樹脂付き金属箔であって、
前記第1絶縁層は、ポリイミド樹脂層、ポリアミドイミド樹脂層、液晶ポリマー樹脂層、フッ素樹脂層又はポリフェニレンエーテル樹脂層で形成され、
前記第2絶縁層は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層で形成されていると共に、
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層全体に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1A~
図1Fは本発明の実施の形態に係る樹脂付き金属箔の複数の例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
<樹脂付き金属箔>
本実施形態の樹脂付き金属箔30について説明する。樹脂付き金属箔30は、後述のフレキシブルプリント配線板40の材料として用いることができる。
図1A~
図1Fに樹脂付き金属箔30の具体例を示す。樹脂付き金属箔30は、金属箔50に第1絶縁層21及び第2絶縁層22がこの順に形成されている。
【0013】
第1絶縁層21は、ポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5又はポリフェニレンエーテル樹脂層6で形成されている。第1絶縁層21は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含み得る。
【0014】
図1Aに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、ポリイミド樹脂層9で形成されている。ポリイミド樹脂層9は、ポリイミド樹脂を主成分として含有するポリイミド樹脂組成物で形成されている。このポリイミド樹脂組成物には、例えば、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が含有されていてもよい。
【0015】
図1Bに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、ポリアミドイミド樹脂層8で形成されている。ポリアミドイミド樹脂層8は、ポリアミドイミド樹脂を主成分として含有するポリアミドイミド樹脂組成物で形成されている。このポリアミドイミド樹脂組成物には、例えば、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が含有されていてもよい。
【0016】
図1Cに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、液晶ポリマー樹脂層4で形成されている。液晶ポリマー樹脂層4は、液晶ポリマー樹脂を主成分として含有する液晶ポリマー樹脂組成物で形成されている。液晶ポリマー樹脂は、パラヒドロキシ安息香酸と様々な成分(例えば6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)とが直鎖状にエステル結合した構造を有している。
【0017】
図1Dに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、フッ素樹脂層5で形成されている。フッ素樹脂層5は、フッ素樹脂を主成分として含有するフッ素樹脂組成物で形成されている。フッ素樹脂は、フッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂である。フッ素樹脂の具体例として、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0018】
図1Eに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、ポリフェニレンエーテル樹脂層6で形成されている。ポリフェニレンエーテル樹脂層6は、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分として含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物で形成されている。ポリフェニレンエーテル樹脂は、2,6-ジメチルフェニレンオキサイドの重合体である。ポリフェニレンエーテル樹脂には、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が含まれる。変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン樹脂などの他の樹脂とのポリマーアロイである。変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、成形流動性に優れている。
【0019】
図1Fに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21が、塗工層211とフィルム層212とで構成されている。塗工層211及びフィルム層212の各々は、ポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5又はポリフェニレンエーテル樹脂層6で形成されている。すなわち、
図1Fに示す樹脂付き金属箔30の第1絶縁層21は、ポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5及びポリフェニレンエーテル樹脂層6からなる群より選ばれた2層で形成されている。第1絶縁層21を構成する塗工層211及びフィルム層212の2層は、同じ樹脂層でも異なる樹脂層でもよい。
【0020】
このように、
図1A~
図1Fのいずれの場合も、第1絶縁層21が特にポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5又はポリフェニレンエーテル樹脂層6で形成されていることにより、樹脂付き金属箔30の耐熱性及び寸法安定性を高めることができる。この樹脂付き金属箔30を材料として製造されたフレキシブルプリント配線板40の耐熱性及び寸法安定性も高めることができる。なお、第1絶縁層21は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含み得るので、硬化状態でも半硬化状態でも固化状態でもよい。
【0021】
第2絶縁層22は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3で形成されている。半硬化状態とは、硬化反応の中間段階の状態であり、中間段階は、ワニス状態であるAステージと硬化した状態のCステージの間の段階である。半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3は、室温でベタツキのない程度に硬化しており、さらに加熱されると一度溶融した後、完全硬化し、Cステージのポリオレフィン樹脂層3となる。ポリオレフィン樹脂層3は、ポリオレフィン樹脂を主成分として含有するポリオレフィン樹脂組成物で形成されている。
【0022】
ポリオレフィン樹脂層3は、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、ポリオレフィン樹脂層3全体に占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%である。このように、ポリオレフィン樹脂層3が成分(A)ポリオレフィン系エラストマーを多く含む場合、成形時における樹脂(特にポリオレフィン樹脂組成物)の流動性を低くして、はみ出しを抑制することができる。さらに樹脂付き金属箔30及びこれを材料として製造されたフレキシブルプリント配線板40の柔軟性が増し、より屈曲性が高められる。ポリオレフィン樹脂層3全体に占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50質量%未満であると、屈曲性を十分に高めることができない。また成分(A)ポリオレフィン系エラストマーは熱膨張係数が大きいので、ポリオレフィン樹脂層3全体に占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が95質量%を超えると、成形時の寸法変化が大きくなり、成形後のフレキシブルプリント配線板40の反りが大きくなる。
【0023】
成分(A)ポリオレフィン系エラストマーは、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体、水添ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体及びエチレン-グリシジルメタクリレート-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0024】
成分(B)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂及び両末端ビニル基のポリフェニレンエーテルオリゴマーからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。エポキシ樹脂として、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
ポリオレフィン樹脂層3は、成分(C)硬化促進剤をさらに含むことができる。硬化促進剤として、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0026】
ポリオレフィン樹脂層3は、成分(D)充填材をさらに含むことができる。充填材として、例えば、シリカが挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン樹脂層3は、180℃で60分間処理した後の貯蔵弾性率が25℃~150℃において105~108Paであることが好ましい。これにより、フレキシブルプリント配線板40の耐熱衝撃性を高めることができ、更にリフロー時の半田耐熱性を高めることができる。
【0028】
次に樹脂付き金属箔30の製造方法について説明する。
【0029】
図1A~
図1Eに示す樹脂付き金属箔30は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0030】
まず銅箔等の金属箔50の表面に、液状のポリイミド樹脂組成物、液状のポリアミドイミド樹脂組成物、液状の液晶ポリマー樹脂組成物、液状のフッ素樹脂組成物又は液状のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を塗工した後に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5又はポリフェニレンエーテル樹脂層6で構成された第1絶縁層21を形成する。
【0031】
次にこの第1絶縁層21の表面に液状のポリオレフィン樹脂組成物を塗工した後に加熱乾燥して、ポリオレフィン樹脂層3で構成された第2絶縁層22を形成する。このようにして
図1A~
図1Eに示す樹脂付き金属箔30を製造することができる。この樹脂付き金属箔30において、第1絶縁層21は、硬化状態、半硬化状態又は固化状態であり、第2絶縁層22は、半硬化状態である。
【0032】
図1A~
図1Eに示す樹脂付き金属箔30は、次のようにして製造することもできる。
【0033】
まず銅箔等の金属箔50の表面に、フィルム状物として、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルム又はポリフェニレンエーテルフィルムを圧着して、ポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5又はポリフェニレンエーテル樹脂層6で構成された第1絶縁層21を形成する。
【0034】
次にこの第1絶縁層21の表面に液状のポリオレフィン樹脂組成物を塗工した後に加熱乾燥して、ポリオレフィン樹脂層3で構成された第2絶縁層22を形成する。このようにして
図1A~
図1Eに示す樹脂付き金属箔30を製造することもできる。この樹脂付き金属箔30において、第1絶縁層21は、硬化状態、半硬化状態又は固化状態であり、第2絶縁層22は、半硬化状態である。
【0035】
図1Fに示す樹脂付き金属箔30は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0036】
銅箔等の金属箔50の表面に、液状のポリイミド樹脂組成物、液状のポリアミドイミド樹脂組成物、液状の液晶ポリマー樹脂組成物、液状のフッ素樹脂組成物又は液状のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を塗工して塗工層211を形成する。
【0037】
次にこの塗工層211の表面に、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルム又はポリフェニレンエーテルフィルムを重ねてフィルム層212を形成する。
【0038】
次にこのフィルム層212の表面に、液状のポリオレフィン樹脂組成物を塗工した後に加熱乾燥する。このようにして
図1Fに示す樹脂付き金属箔30を製造することができる。この樹脂付き金属箔30において、塗工層211及びフィルム層212で構成された第1絶縁層21は、ポリイミド樹脂層9、ポリアミドイミド樹脂層8、液晶ポリマー樹脂層4、フッ素樹脂層5又はポリフェニレンエーテル樹脂層6であり、第2絶縁層22は半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3である。第1絶縁層21は硬化状態でも半硬化状態でも固化状態でもよい。
【0039】
<フレキシブルプリント配線板>
本実施形態のフレキシブルプリント配線板40について説明する。フレキシブルプリント配線板40は、上述の樹脂付き金属箔30の第1絶縁層21の硬化物又は固化物と、第2絶縁層22の硬化物とを、絶縁層2として有している。
図2にフレキシブルプリント配線板40の具体例を示す。
図2に示すフレキシブルプリント配線板40は、絶縁フィルム7と、導体層1と、絶縁層2と、金属箔50と、非貫通孔13とを備えている。なお、フレキシブルプリント配線板40には、フレックスリジッドプリント配線板も含まれる。
【0040】
絶縁フィルム7として、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテルフィルムが挙げられる。
【0041】
導体層1は、絶縁フィルム7の表面において所定のパターン状に形成されている。導体層1は、絶縁層2内に存在する内部回路11と、絶縁層2外に存在する外部回路12とで構成されている。
【0042】
絶縁層2は、絶縁フィルム7の表面に形成されている。この絶縁層2は、上述の樹脂付き金属箔30の第1絶縁層21の硬化物又は固化物と、第2絶縁層22の硬化物とで形成されている。
【0043】
金属箔50は、絶縁層2の表面に形成されている。この金属箔50は、上述の樹脂付き金属箔30の金属箔50で形成されている。この金属箔50の不要部分をエッチングなどにより除去して、絶縁層2の表面に回路を形成してもよい。
【0044】
非貫通孔13は、絶縁層2及び金属箔50を貫通し、絶縁フィルム7を貫通しない孔である。非貫通孔13の底面には絶縁フィルム7の表面が露出し、この表面に外部回路12が形成されている。
【0045】
図2に示すフレキシブルプリント配線板40は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0046】
まず
図3に示すように、表面に導体層1が形成された絶縁フィルム7と、貫通孔14が形成された樹脂付き金属箔30とを準備する。
【0047】
次に樹脂付き金属箔30の第2絶縁層22を絶縁フィルム7の表面に重ね、加熱加圧して積層成形する。このようにして
図2に示すフレキシブルプリント配線板40を製造することができる。
【0048】
ここで、第2絶縁層22は上述のポリオレフィン樹脂層3で形成されているので、成形時に第2絶縁層22からポリオレフィン樹脂組成物が流動しにくく、非貫通孔13内にはみ出して外部回路12を被覆したりすることなどを抑制することができる。しかも上述のポリオレフィン樹脂組成物は成形時において全く流動しないわけではなく、非貫通孔13内にはみ出さない限度で流動性を有しているので回路充填性は良好である。すなわち、成形時においてポリオレフィン樹脂組成物は内部回路11,11間の隙間を充填し、絶縁フィルム7の表面の凹凸をならすことができる。さらに成形時には、特許文献2に記載の熱可塑性樹脂シートのようなクッション材で樹脂付き金属箔30の金属箔50の表面を押圧するのではなく、鏡板で押圧するようにしている。そのため成形後において、金属箔50の表面の平滑性を確保することができる。しかも上記のようにして得られたフレキシブルプリント配線板40において、金属箔50は、絶縁層2により絶縁フィルム7に強固に接着されているので、金属箔50の絶縁フィルム7に対する密着性が良好である。このように、フレキシブルプリント配線板40を製造するにあたって、本実施形態の樹脂付き金属箔30を材料として用いるようにすれば、密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性を良好に維持しながら、成形時における樹脂(特にポリオレフィン樹脂組成物)の流動性が低く、はみ出しを抑制することができる。
【0049】
以上述べた実施形態から明らかなように、本発明に係る第1の態様の樹脂付き金属箔(30)は、金属箔(50)に第1絶縁層(21)及び第2絶縁層(22)がこの順に形成された樹脂付き金属箔(30)である。
【0050】
前記第1絶縁層(21)は、ポリイミド樹脂層(9)、ポリアミドイミド樹脂層(8)、液晶ポリマー樹脂層(4)、フッ素樹脂層(5)又はポリフェニレンエーテル樹脂層(6)で形成されている。
【0051】
前記第2絶縁層(22)は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層(3)で形成されている。
【0052】
前記ポリオレフィン樹脂層(3)が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含む。
【0053】
前記ポリオレフィン樹脂層(3)全体に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%である。
【0054】
第1の態様によれば、密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性を良好に維持しながら、成形時における樹脂の流動性が低く、はみ出しを抑制することができる。
【0055】
本発明に係る第2の態様の樹脂付き金属箔(30)では、前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーが、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体、水添ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体及びエチレン-グリシジルメタクリレート-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0056】
本発明に係る第3の態様の樹脂付き金属箔(30)では、前記成分(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂及び両末端ビニル基のポリフェニレンエーテルオリゴマーからなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0057】
本発明に係る第4の態様の樹脂付き金属箔(30)では、前記ポリオレフィン樹脂層(3)が、成分(C)硬化促進剤をさらに含む。
【0058】
本発明に係る第5の態様の樹脂付き金属箔(30)では、前記ポリオレフィン樹脂層(3)が、成分(D)充填材をさらに含む。
【0059】
本発明に係る第6の態様の樹脂付き金属箔(30)では、前記ポリオレフィン樹脂層(3)が、180℃で60分間処理した後の貯蔵弾性率が25℃~150℃において105~108Paである。
【0060】
第6の態様によれば、フレキシブルプリント配線板(40)の耐熱衝撃性を高めることができ、更にリフロー時の半田耐熱性を高めることができる。
【0061】
本発明に係る一態様のフレキシブルプリント配線板(40)は、前記樹脂付き金属箔(30)の前記第1絶縁層(21)及び前記第2絶縁層(22)の硬化物を絶縁層(2)として有している。
【0062】
一態様のフレキシブルプリント配線板(40)によれば、密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性を良好に維持しながら、成形時における樹脂の流動性が低く、はみ出しを抑制することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0064】
(実施例1)
実施例1は、実施例1-(1)~実施例1-(11)の11種類の実施例で構成される。これらの実施例は、第2絶縁層のみが異なるだけで、その他は同じである。
【0065】
パナソニック株式会社製「R-F552」(銅箔の表面に液状のポリイミド樹脂組成物を塗工し、これを加熱乾燥することによって製造された2層キャスティングフレキシブル銅張積層板であって、銅箔の厚みが12μm、硬化状態のポリイミド樹脂層の厚みが12.5μmであるもの)を準備した。
【0066】
ポリイミド樹脂層の表面に、表3に示した(1)~(11)の樹脂組成のポリオレフィン樹脂組成物を塗工し、これを加熱乾燥することにより、厚みが50μmの半硬化状態のポリオレフィン樹脂層を形成した。このようにして、金属箔(銅箔)に第1絶縁層(硬化状態のポリイミド樹脂層)及び第2絶縁層(半硬化状態のポリオレフィン樹脂層)がこの順に形成された樹脂付き金属箔を得た。表3に示す(1)~(11)のポリオレフィン樹脂組成物を構成する成分(A)~(D)の具体的なメーカー名、商品名などを表4に示す。
【0067】
(実施例2)
実施例2は、実施例2-(1)~実施例2-(11)の11種類の実施例で構成される。これらの実施例は、第2絶縁層のみが異なるだけで、その他は同じである。
【0068】
厚みが12μmの銅箔の表面に液状のポリアミドイミド樹脂組成物を塗工し、これを加熱乾燥することにより、厚みが12.5μmの硬化状態のポリアミドイミド樹脂層を形成した。
【0069】
液状のポリアミドイミド樹脂組成物は次のようにして調製した。無水トリメリット酸(ナカライテスク株式会社製)192g、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル211g、2,4―ジイソシアン酸トリレン35g、ジアザビシクロウンデセン(サンアプロ株式会社製)1g、及びN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC、ナカライテスク株式会社製)2482gを配合することでポリマー濃度を15質量%に調整し、得られた混合物を加熱することで1時間かけて100℃まで昇温させ、続いて混合物を100℃のまま6時間維持することで、反応を進行させた。次いで、混合物に更にDMAC1460gを加えることでポリマー濃度を10質量%に調整し、続いて混合物を室温まで冷却した。これにより、ポリアミドイミドが溶解している樹脂溶液として液状のポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0070】
次にポリアミドイミド樹脂層の表面に、表3に示した(1)~(11)の樹脂組成のポリオレフィン樹脂組成物を塗工し、これを加熱乾燥することにより厚みが50μmの半硬化状態のポリオレフィン樹脂層を形成した。このようにして、金属箔(銅箔)に第1絶縁層(硬化状態のポリアミドイミド樹脂層)及び第2絶縁層(半硬化状態のポリオレフィン樹脂層)がこの順に形成された樹脂付き金属箔を得た。表3に示す(1)~(11)のポリオレフィン樹脂組成物を構成する成分(A)~(D)の具体的なメーカー名、商品名などを表4に示す。
【0071】
(比較例1)
実施例1において、ポリオレフィン樹脂層の代わりにエポキシ樹脂層を形成した。それ以外の内容は実施例1と同じにした。
【0072】
エポキシ樹脂層を形成するためのエポキシ樹脂組成物の樹脂組成を表3の(12)に示す。このエポキシ樹脂組成物を構成する成分(E)~(I)の具体的なメーカー名、商品名を表4に示す。上記の樹脂組成のうちのカルボジイミド変性ポリアミドは、次のようにまずカルボジイミド化合物を合成した後、このカルボジイミド化合物を用いて合成した。
【0073】
(カルボジイミド化合物の合成)
4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート590g、シクロヘキシルイソシアネート62.6g及びカルボジイミド化触媒(3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド)6.12gを180℃で48時間反応させることによって、カルボジイミド化合物として、4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド樹脂(重合度=10)を得た。
【0074】
(カルボジイミド変性ポリアミドの合成)
1リットルのセパラブルフラスコにエステル共重合アミド樹脂(商品名:「CM8000」、東レ株式会社製)50.0gとイソプロピルアルコールとトルエンとの混合溶媒(質量混合比4:6)450.0gとを加えて撹拌することにより溶解させた。こうして得られた溶液に上記カルボジイミド化合物(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド樹脂)5.0gを加え、フラスコを120℃のオイルバスに浸漬させてリフラックス下で3時間加熱撹拌した後に、減圧乾燥して溶媒を除去することにより、カルボジイミド変性ポリアミドを得た。
【0075】
上記のようにして得られたカルボジイミド変性ポリアミドに対して赤外分光光度測定を行ったところ、2120cm-1にカルボジイミド基の存在を示す吸収ピークが認められた。さらに上記カルボジイミド変性ポリアミドに対して示差走査熱量測定を行ったところ、1つの吸熱ピークが観測された。なお、上記カルボジイミド変性ポリアミドのガラス転移温度(Tg)は120℃、5%重量減温度は320℃、溶液の粘度は860mPa・sであった。
【0076】
(比較例2)
実施例1において、ポリオレフィン樹脂層の代わりにエポキシ樹脂層を形成した。それ以外の内容は実施例1と同じにした。
【0077】
エポキシ樹脂層を形成するためのエポキシ樹脂組成物の樹脂組成を表3の(13)に示す。このエポキシ樹脂組成物を構成する成分(E)~(I)の具体的なメーカー名、商品名を表4に示す。上記の樹脂組成のうちのカルボジイミド変性ポリアミドは、比較例1と同様の方法で合成した。
【0078】
(銅箔引き剥がし強度)
厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に、樹脂付き金属箔の第2絶縁層を重ねて貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製した。このサンプルの金属箔(銅箔)をサンプルの表面に対して90°方向に引き剥がしたときの銅箔引き剥がし強度を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0079】
(屈曲性)
厚み25μmのポリイミドフィルムの片面に、厚み18μmの電解銅箔でMITパターンの回路が形成されたフレキシブルプリント配線板を準備した。このフレキシブルプリント配線板の両面に、樹脂付き金属箔の第2絶縁層を重ねて貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形した後、両面の樹脂付き金属箔の金属箔を全面エッチングにより除去することによってサンプルを作製した。このサンプルを用いてMIT試験を行った。測定条件は、折り曲げクランプのR=0.38mm、荷重500gf、毎分175回の割合で折り曲げるように設定した。回路の導通が取れなくなるまでの折り曲げ回数により屈曲性を評価した。具体的には100回以上を「合格」、100回未満を「不合格」とした。評価結果を表1及び表2に示す。
【0080】
(半田耐熱性)
厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に、樹脂付き金属箔の第2絶縁層を重ねて貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製した。このサンプルを260℃と288℃に加熱した半田浴にそれぞれ60秒間浸漬した後、外観を観察することにより半田耐熱性を評価した。膨れやはがれ等の外観異常の発生がないものを「合格」とし、これ以外のものを「不合格」とした。評価結果を表1及び表2に示す。
【0081】
(回路充填性)
厚み35μmの圧延銅箔で櫛形パターンの回路が形成されたフレキシブルプリント配線板を準備し、このフレキシブルプリント配線板の回路形成面に樹脂付き金属箔の第2絶縁層を重ねて貼り合わせ、180℃で1時間加熱加圧成形することによってサンプルを作製した。このサンプルの断面を目視にて観察することにより回路充填性を評価した。回路間が全て樹脂で充填されているものを「合格」とし、これ以外のものを「不合格」とした。評価結果を表1及び表2に示す。
【0082】
(樹脂流れ性)
樹脂付き金属箔に直径10mmの孔をあけてから、この樹脂付き金属箔の第2絶縁層を電解銅箔の光沢面に重ねて貼り合わせ、170℃で30分間加熱加圧成形することによってサンプルを作製した。この際、樹脂が孔の内側に流れ出る長さを測定することにより樹脂流れ性を評価した。流れ出る量が1.0mm以下のものを「合格」とし、これ以外のものを「不合格」とした。評価結果を表1及び表2に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
実施例1、2の各々において、第2絶縁層を11種類のいずれのポリオレフィン樹脂組成物で形成しても、各評価項目の結果は変わらなかった。
【0088】
表1及び表2から明らかなように、各実施例は、密着性(銅箔引き剥がし強度)、屈曲性、耐熱性(半田耐熱性)が良好であることに加え、樹脂が流動しにくいにも拘わらず、回路充填性に優れていることが確認された。
【0089】
これに対して、各比較例は、密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性は良好であるが、樹脂が流動しやすいものであった。
【符号の説明】
【0090】
4 液晶ポリマー樹脂層
5 フッ素樹脂層
6 ポリフェニレンエーテル樹脂層
8 ポリアミドイミド樹脂層
9 ポリイミド樹脂層
21 第1絶縁層
22 第2絶縁層
30 樹脂付き金属箔
40 フレキシブルプリント配線板
50 金属箔