(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】面状ヒータへ電力供給可能な電源コントローラ、ヒータシステム、電力供給システムおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20231027BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231027BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231027BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H02J1/00 306B
H02J1/00 304H
H02J7/00 302A
H02M3/155 H
H05B3/00 310D
(21)【出願番号】P 2022573110
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048877
(87)【国際公開番号】W WO2022145460
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2020218998
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510302618
【氏名又は名称】デジタルファクトリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】相馬 伸行
(72)【発明者】
【氏名】菊地 すすむ
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501771(JP,A)
【文献】特開2020-092485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02M 3/00 - 3/44
H05B 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル型面状ヒータへ電力供給可能であって、
USB(Universal Serial Bus)-PD(Power Delivery)規格に従って、電源部コネクタと接続可能なUSBコネクタと、
ヒータ温度調整に関する入力操作および前記面状ヒータの情報の少なくとも一方に基づいて、前記USBコネクタで受電した電力の電圧レベルおよび電流値の少なくとも一方を変換可能な電力変換部と
を備えることを特徴とする電源コントローラ。
【請求項2】
前記電力変換部が、USB-PD規格により前記電源部の出力電圧レベルとして設定された電圧レベル(以下、USB-PD出力可能電圧レベルという)に対し、電流値を変換することを特徴とする請求項1に記載の電源コントローラ。
【請求項3】
前記電力変換部が、ヒータ温度調整に関する入力操作によって設定可能な複数の温度レベルにそれぞれ対応した複数の電流値に基づいて、電流値を変換することを特徴とする請求項2に記載の電源コントローラ。
【請求項4】
前記電力変換部が、設定されたUSB-PD出力可能電圧レベルを、それ以外のUSB-PD出力可能電圧レベル、またはUSB-PD出力可能電圧レベル以外の電圧レベル(以下、USB-PD規格非対応電圧レベルという)に昇圧または降圧することを特徴とする請求項2に記載の電源コントローラ。
【請求項5】
USB-PD出力可能電圧レベルと、USB-PD出力可能電圧レベル以外の電圧レベル(以下、USB-PD規格非対応電圧レベルという)とを、前記面状ヒータへ供給する電力の電圧レベル(以下、供給電圧レベルという)として設定可能であり、
前記電力変換部が、供給電圧レベルとしてUSB-PD規格非対応電圧レベルが設定されると、前記USBコネクタがUSB-PD規格対応電圧レベルで受電した電力の電圧を昇圧または降圧し、USB-PD規格非対応電圧レベルに変換することを特徴とする請求項2に記載の電源コントローラ。
【請求項6】
前記ヒータの温度を検出する温度センサをさらに備え、
検出された温度があらかじめ定められた閾値を超えると、定められたUSB-PD規格対応電圧レベルより低い電圧レベルを設定する、あるいは通電状態で電力供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の電源コントローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電源コントローラと、
ポータブル型面状ヒータと
を備えたことを特徴とするヒータシステム。
【請求項8】
前記電源コントローラが、前記面状ヒータ内に組み込まれる内部電源コントローラと、前記電源部と前記面状ヒータとを接続するケーブル途中に設けられる外部電源コントローラとによって構成されることを特徴とする請求項7に記載のヒータシステム。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電源コントローラと、
USB(Universal Serial Bus)-PD(Power Delivery)規格対応の電源部と
を備えたことを特徴とする電力供給システム。
【請求項10】
USB(Universal Serial Bus)-PD(Power Delivery)規格に従って、電源部のコネクタから電源コントローラのUSBコネクタへ電力供給し、
受電した電力に基づいて前記電源コントローラからポータブル型面状ヒータへ電力供給する方法であって、
ヒータ温度調整に関する入力操作および前記面状ヒータの情報の少なくとも一方に基づいて、前記USBコネクタで受電した電力の電圧レベルおよび電流値の少なくとも一方を変換することを特徴とするポータブル型面状ヒータへの電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運び、設置などが自在なポータブル型(あるいはウェアブル型)面状ヒータ(面状発熱体、シート状ヒータともいう)に関し、特に面状ヒータへの電力供給に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンファイバなどの導電性素材を利用し、電源を供給することで加熱する面状ヒータが知られている。例えば、カーボンファイバを混紗技術によってシート化することによって、床暖房などに利用することができる(特許文献1参照)。また、シート状ヒータを衣服裏面に装着させ、電圧を印加することによって保温性を高めることも可能である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-182650号公報
【文献】特開2014-235783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外などでは、電源設備が制限されるため、モバイルバッテリで電力供給を行うことが求められる。しかしながら、カーボン和紙シートなどを素材とする面状ヒータの場合、比較的低電圧の電力供給によっても短時間で加熱して高温となり、十分な暖房機能を発揮する。一方、その抵抗値が面積に比例するため、発熱量もサイズなどによって相違する。発熱量が異なる面状ヒータに対し、バッテリ容量や規格電圧などに基づいて電力供給を行うと、過度の発熱になり、あるいは暖房、保温に不十分な発熱になる恐れがある。
【0005】
したがって、面状ヒータの性能、あるいはユーザによる温度調整操作などに対して、過度の発熱、発熱不足などが生じないように、適切な電力供給を行うことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源コントローラは、持ち運び、携帯自在であるポータブル型面状ヒータに電力供給可能であって、ポータブル型面状ヒータは、様々な使用環境に適合可能なヒータとして構成可能である。例えば、融雪シート、ヒータ機能付きクッション、ヒートマット、ヒータ付きウェアなど、持ち運びや携帯可能な面状ヒータとして構成される。また、折り畳んだ状態で収納袋に収納し、災害避難所、キャンプなど屋外で使用する暖房器具として構成されるポータブル型面状ヒータとして構成することも可能である。
【0007】
また、本発明の電源コントローラと、面状ヒータとを備えたヒータシステムを提供することが可能である。あるいは、AC電源アダプタ、モバイルバッテリなどの電源部と、電源部から出力される電圧を入出力して面状ヒータへ電力供給する電源コントローラとを備えた電力供給システムを提供することが可能である。
【0008】
例えば、電源コントローラは、面状ヒータ内部に組み込まれ、スマートフォン、タブレットなどの端末と相互データ通信可能であって、端末から送られてくるヒータ温度調整に関する入力操作および面状ヒータの情報の少なくとも一方に関するデータを受信可能である。あるいは、電源コントローラは、面状ヒータと、電源部とを繋ぐケーブルの途中に配置され、ヒータ温度調整用の操作部材を備えるように構成することができる。
【0009】
さらに、ヒータシステムでは、面状ヒータ内に組み込まれた内部電源コントローラと、ケーブル途中に設けられる外部電源コントローラとによって、電源コントローラを構成することも可能である。各電源コントローラが単独で機能すればよく、また、両方の電源コントローラを電源部と面状ヒータとの間に接続する場合、いずれか一方の電源コントローラが機能すればよい。
【0010】
本発明の一態様である電源コントローラは、ポータブル型面状ヒータへ電力供給可能であって、USB(Universal Serial Bus)-PD(Power Delivery)規格に従って、電源部コネクタと接続可能なUSBコネクタと、ヒータ温度調整に関する入力操作および面状ヒータの情報の少なくとも一方に基づいて、USBコネクタで受電した電力の電圧レベルおよび電流値の少なくとも一方を変換可能な回路(以下では、電力変換部という)とを備える。
【0011】
ここで、「ヒータ温度調整に関する入力操作」には、押下型ボタンやボリュームダイヤルなどの操作部材に対する入力操作、携帯端末の温度調整用画面での設定操作などによって実行されることが含まれる。また、「面状ヒータの情報」には、面状ヒータの温度、抵抗値、ヒータサイズなどの諸元値が含まれる。これらの情報は、面状ヒータとの接続を通じて検知し、あるいは、ユーザによる入力設定操作によって検知することが可能である。また、これらの情報は、メモリに記憶することができる。
【0012】
電力変換部は、USB-PD規格により電源部の出力電圧レベルとして設定された電圧レベル(以下、USB-PD出力可能電圧レベルという)に対し、電流値を変換することが可能である。例えば、電力変換部が、ヒータ温度調整に関する入力操作によって設定可能な複数の温度レベルにそれぞれ対応した複数の電流値に基づいて、電流値を変換することができる。出力電圧レベルの設定は、電源部の特性等に基づき、電源コントローラの制御部などにおいて定めることができる。
【0013】
また、電力変換部は、設定されたUSB-PD出力可能電圧レベルを、それ以外のUSB-PD出力可能電圧レベル、またはUSB-PD出力可能電圧レベル以外の電圧レベル(以下、USB-PD規格非対応電圧レベルという)に昇圧または降圧することも可能である。
【0014】
一方で、電力変換部は、出力電圧レベルだけを変更することも可能である。USB-PD出力可能電圧レベルと、USB-PD出力可能電圧レベル以外の電圧レベル(以下、USB-PD規格非対応電圧レベルという)とを、面状ヒータへ供給する電力の電圧レベル(以下、供給電圧レベルという)として設定可能である場合、電力変換部は、供給電圧レベルとしてUSB-PD規格非対応電圧レベルが設定されると、USBコネクタがUSB-PD規格対応電圧レベルで受電した電力の電圧を昇圧または降圧し、USB-PD規格非対応電圧レベルに変換することができる。
【0015】
電源コントローラは、ヒータの温度を検出する温度センサを備えることができる。電源コントローラは、検出された温度があらかじめ定められた閾値を超えると、定められたUSB-PD規格対応電圧レベルより低い電圧レベルを設定する、あるいは通電状態で電力供給を停止することができる。
【0016】
本発明の他の態様である電力供給方法は、ヒータ温度調整に関する入力操作および面状ヒータの情報の少なくとも一方に基づいて、USBコネクタで受電した電力の電圧レベルおよび電流値の少なくとも一方を変換する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、面状ヒータの性能、あるいはユーザによる温度調整操作などに対して、過度の発熱、発熱不足などが生じないように、適切な電力供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態であるポータブル型面状ヒータに対する電力供給システムの概略的構成図である。
【
図4】第2の実施形態である電力供給システムのブロック図である。
【
図5】第3の実施形態である電力供給システムのブロック図である。
【
図6】第4の実施形態である電力供給システムのブロック図である。
【
図7】第5の実施形態であるポータブル型面状ヒータの概略的断面図である。
【
図8】第5の実施形態におけるポータブル面状ヒータの回路構成を概略的に示した図である。
【
図9】第5の実施形態であるポータブル型面状ヒータの変形例を示した概略的断面図である。
【
図10】第6の実施形態であるポータブル型面状ヒータに対する電力供給システムの概略的構成図である。
【
図11】第6の実施形態における電力供給システムのブロック図である。
【
図12】第6の実施形態における供給電力制御のフローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態であるポータブル型面状ヒータに対する電力供給システムの概略的構成図である。
【0021】
電力供給システム100は、面状ヒータ10に対して電力供給可能であり、電源コントローラ200、電源部(ソース)300とを備える。電源コントローラ200は、ケーブルC1、C2を介して面状ヒータ10、電源部300と電気的にそれぞれ接続し、ここでは電力調整機能を備えた温度調節器として構成されている。電源部300は、例えばUSB-PD(Universal Serial Bus ‐ Power Delivery)規格対応のACアダプタ、USB-PD規格対応の発電機、USB-PD規格対応のモバイルバッテリなどによって構成可能であり、ここででは、USB-PD規格対応ACアダプタによって構成されている。
【0022】
面状ヒータ10は、持ち運び自由で任意の場所に設置し、また取り外し可能なポータブル型面状ヒータであって、ここでは床や椅子などに設置可能な卓上ヒータとして構成されている。面状ヒータ10は、カーボンシート20A、20Bを備え、カーボンシート20A、20Bを面状のカバー部材30で被覆している。
【0023】
カーボンシート20A、20Bは、ここでは矩形状(例えば800mm×400mm)に構成され、短手方向に沿って一列に並んでいる。カーボンシート20A、20Bのサイズ、縦横比は同じである。パネル外装となるカバー部材30は、2枚のカーボンシート20A、20Bを覆うサイズを有する。カーボンシート20A、20Bおよびカバー部材30は、可撓性、柔軟性があり、面状ヒータ10は、ターポリン、塩化ビニル、布などのように軟質で柔らかく、折り曲げ、折り畳むことが可能である。なお、カーボンシートを1枚だけで構成する、あるいは3枚以上並べてもよく、また、カバー部材30を正方形状に構成することも可能である。
【0024】
カーボンシート20A、20Bは、ここではカーボン和紙シート(CJP)によって構成されている。カーボン和紙シートは、和紙の混紗技術を用いて、和紙の中にカーボンチョップドファイバ、すなわちカーボンファイバを細かく分断したものを長手方向に目をそろえて均質に分散させたものであり、面積抵抗(単位面積当たりの抵抗)を所定の範囲で調整可能な高電導性(低抵抗)の性能をもつ。例えば、互いに垂直な2方向の一方向に沿ったシート端部に電極配置した場合と、他方向に沿ったシート端部に電極配置した場合、面積抵抗の違いを持たせることができる。
【0025】
カーボンシート20A、20Bに電流が流れるとジュール熱が発生し、カーボンシート20A、20Bの温度が上昇する。そして、温度上昇に合わせて輻射熱(遠赤外線)が発生する。カーボン和紙シート(CJP)は遠赤外線効率、すなわち輻射熱への変換効率が非常に高く、空間を隔てた対象物に対しても、熱伝達効率が高いため、短時間で熱効果を発揮することができる。
【0026】
また、カーボンシートは、抵抗値がその縦横比に従うため、カーボンシートの縦横比を変えることで発熱量を調整することができる。また、カーボンシートの並べる枚数によっても発熱量が変わる。したがって、融雪などに必要な発熱量、および使用する電源などを考慮してカーボンシートの形状(縦横比)、枚数を定め、これらをまとめてカバー部材30で覆った1つの面状ヒータを提供することができる。
【0027】
さらに、長手方向の面積抵抗を変えてカーボンシート20A、20Bを作成することで、より細かく熱量を設定することも可能である。なお、カーボン和紙シート以外の柔軟性があるカーボンシートを使用することも可能であり、カーボンナノチューブコーティングされた布や、微細化した炭素粉末を含む樹脂シートで構成することも可能である。
【0028】
電源コントローラ200は、タイマーボタン240と、面状ヒータ10の温度(暖かさ)調整用に操作されるボタン(ここでは、温度設定ボタンという)250とを備える。温度設定ボタン250は、ここでは3つの温度レベル(暖かさ)を段階的、離散的に設定するために3つの押下型スイッチボタン250A、250B、250C(以下、低温ボタン、中温ボタン、高温ボタンという)が設けられている。
【0029】
電源コントローラ200および電源部300は、USB-PD規格に従って互いに通信可能である。また、電源コントローラ200および電源部300は、USB-PD規格に対応した電力供給が可能であり、電源部300から電源コントローラ200へ異なる電圧レベルで電力供給することが可能である。
【0030】
図2は、電力供給システム100のブロック図である。
【0031】
電源コントローラ200および電源部300は、USB-PD規格にそれぞれ対応したUSBコネクタ210、310を備える。ここでは、規格として出力可能な5V、9V、12V、15V、20Vの電圧レベル(以下、USB-PD出力可能電圧レベル)のいずれかの電圧レベルによって、電源部300から電源コントローラ200に対して電力が供給可能である。
【0032】
電源コントローラ200は、USBコントローラ220と、SSR(無接点リレー)230と、スイッチングレギュレータなどで構成可能なバックコンバータ(降圧回路)270とを備える。USBコントローラ220は、電源部300のUSBコネクタ310に対し、受電する電力の電圧レベルの情報(信号)を送信する。電源部300に設けられたUSBコントローラ(図示せず)は、受信した電圧レベルで電力供給する。
【0033】
電源コントローラ200に設けられた本体制御部260は、電源部300との接続によって起動し、USBコントローラ220との間で相互通信する。本体制御部260は、タイマー240で設定された時間に応じて、電源コントローラ200をON/OFF切替可能であり、また、USBコントローラ220との間で、熱電対などによって構成される温度センサ280によって検出されるヒータ10の温度情報伝達などの通信を行う。
【0034】
図3は、電源コントローラ200における供給電力制御のフローを示した図である。
【0035】
ユーザは、ヒータ10を使用するとき、外気の気温など使用環境に応じて温度設定ボタン250の中で所望する温度に対応したボタンを選択することが可能である。例えば、ヒータ使用開始時には、すぐに暖かくなるように高温ボタン250Cを選択操作し、ある程度暖かくなると低温ボタン250Aを選択操作する。一方、温度設定ボタン250を操作しない場合、設定されたUSB-PD出力可能電圧レベルによって電力供給を行う。
【0036】
カーボン和紙シート(CJP)を利用した面状ヒータ10の発熱量は、シートサイズ、すなわち抵抗値(面積抵抗)と相関し、電圧レベルが高いほど発熱量が大きくなる(ヒータ10の温度が高温になる)。ここでは、温度設定ボタン250の低温ボタン250A、中温ボタン250B、高温ボタン250Cが、互いに電圧差の等しい5V、10V、15Vの電力供給を行うボタンとして設定されている。
【0037】
低温ボタン250Aの5V、高温ボタン250Cの15Vは、USB-PD規格に従って出力可能な電力に相当する。そのため、ユーザが低温ボタン250Aあるいは高温ボタン250Cを操作すると、USBコントローラ220は、操作されたボタンに応じた電圧レベルを受電できるように、USBコネクタ210と電源部300のUSBコネクタ310との間で通信させる。SSR230は、受電した電力(電圧)がそのまま外部へ出力する経路と接続し、受電した電力がそのまま面状ヒータ10へ供給される(S101~S103)。
【0038】
一方、ユーザが中温ボタン250Bを操作(押下)した場合、中温ボタン250Bの10VがUSB-PD規格に対応していないため、USBコントローラ220は、USB-PD規格対応の電圧レベルで電力を受電するように、電源部300との間で通信する。ここでは、最も電圧レベルの高い20Vの電力を受電する。そして、USBコントローラ220は、SSR230を切り替え制御し、SSR230をバックコンバータ270と接続させる(S101、S102、S104)。このとき、電源コントローラ200への電源供給電圧レベルも変更される。
【0039】
このように、USB-PD規格対応の電圧レベルが設定された場合、供給電圧レベルとしてそのまま電源コントローラ200から面状ヒータ10へ電力供給する一方、USB-PD規格非対応の電圧レベルが設定された場合、バックコンバータ270によって20Vから10Vへ降圧させることで、ユーザの選択したボタン(温度、暖かさ)に合わせた温度調整が可能となる。
【0040】
昇圧ではなく降圧によって電圧レベルを変更するため、電源コントローラ200の動作負荷軽減、電力消費低減、動作安定化をもたらす。また、USB-PD規格対応の中で最大電圧レベル20Vの電力を受電するため、中温ボタン250Bを、10V以外でUSB-PD規格に対応していない電圧レベル(11Vなど)に設定するなど、様々な電圧レベルにボタンを対応させることができる。なお、電源部300が最大電圧レベル15Vのモバイルバッテリなどで構成される場合、15Vで電力を受電すればよく、電源部300の電力供給特性に応じて設定可能である。
【0041】
低温ボタン250A、高温ボタン250Cの電圧レベルをUSB-PD規格対応の電圧レベルに設定しているため、バックコンバータ270を用いずに面状ヒータ10へ電力供給し、電源コントローラ200の動作負荷軽減をもたらすことができる。このように、USB-PD規格対応の電圧レベルと、USB-PD規格非対応の電圧レベル両方を含めた電圧レベルをユーザが指定可能にすることで、面状ヒータ10のサイズ、性能に応じて温度設定ボタンの電圧レベルを柔軟に定めることができる。
【0042】
面状ヒータ10の使用中、温度センサ280によって検出される温度Tが閾値T0(例えば60°)を超えた場合、面状ヒータ10の過熱を抑えるため、より低い電圧レベルの電力を供給するように構成されている。ここでは、一段低い電圧レベルの電力供給を行う。USB-PD規格対応の電圧レベルが設定されていた場合、それよりも一段低いUSB-PD規格対応の電圧レベルに設定変更する(S105、S106、S108)。
【0043】
一方、USB-PD規格に非対応の電圧レベルが設定されていた場合、それよりも低いUSB-PD規格対応の電圧レベルに設定変更する(S105、S106、S107)。なお、電圧レベルの設定変更から所定時間経過した後、温度Tが閾値T0を超えていないことを確認した後、元の設定された電圧レベルで電力供給を再開させるようにすればよい。
【0044】
温度センサ280によって検出される面状ヒータ10の情報に基づいて電力供給制御を行うとき、USB-PD規格に非対応の電圧レベルからUSB-PD規格対応の電圧レベルに設定変更することにより、あらかじめ設計段階で電圧レベルの変動量に応じた温度降下の度合い(時間)などを推定することが容易となり、適切にヒータ温度を降下させることができる。
【0045】
温度設定ボタン250は、2つのボタンあるいは4つ以上のボタンで構成してもよい。また、低温ボタン250A、高温ボタン250Cのいずれかあるいは両方を、USB-PD規格非対応の電圧レベルのボタンとし、中温ボタン250Bを、USB-PD規格対応の電圧レベルのボタンとしてもよい。
【0046】
次に、
図4を用いて第2の実施形態である電力供給システムについて説明する。第2の実施形態では、ボリュームダイヤルによって温度調整される構成になっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0047】
図4は、第2の実施形態である電力供給システム100のブロック図である。電源コントローラ200には、可変抵抗器などによって構成される、ヒータ温度、暖かさを連続的に調整可能な操作部材(ここでは、温度設定用ボリュームダイヤルという)250’が設けられている。ここでは、5V~20Vの範囲で連続的に電圧レベルを設定することができる。
【0048】
温度設定用ボリュームダイヤル250’は、バックコンバータ270と接続し、ユーザによって選択されたダイヤル位置に応じた電圧レベルが定められている。USBコントローラ220は、指定された電圧レベルに応じて、受電する電力の電圧レベルの情報をUSBコネクタ210を通じて電源部300へ送信する。
【0049】
第2の実施形態では、USB-PD規格に対応した電圧レベル5V、9V、12V、15V、20Vで電源供給することが可能である。温度設定用ボリュームダイヤル250’は、連続的な電圧レベルの範囲5V~20Vにおいて、ユーザが所定の電圧レベルを連続的に選択(指定)可能なように構成されている。USB-PD規格対応の電圧レベル5V、9V、12V、15V、20Vが選択(指定)された場合、そのまま面状ヒータ10へ供給される。
【0050】
一方、USB-PD規格に非対応の電圧レベルが選択された場合、第1の実施形態と同様、電源コントローラ200は、電源部300から15Vの電力を受電し、バックコンバータ270において降圧する。USB-PD規格対応で最大電圧レベル15Vの電力を受電することによって、USB-PD規格に非対応の様々な電圧レベルに対応することができる。
【0051】
次に、
図5を用いて第3の実施形態である電力供給システムについて説明する。第3の実施形態では、ユーザが携帯端末などを利用してヒータ温度設定するように構成されている。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0052】
図5は、第3の実施形態である電力供給システム100のブロック図である。スマートフォン250”では、ヒータ温度調整用のアプリケーションソフトをダウンロードすることによって、電源コントローラ200と通信接続し、ヒータ温度調整することが可能である。ユーザは、スマートフォン250”の温度設定画面において、第1の実施形態と同様、低温、中温、高温を設定することができる。なお、第2の実施形態のように、ボリュームダイヤルに対応した温度設定を、スマートフォン250”の画面上で行うようにしてもよい。
【0053】
受信機能を備えた本体制御部260”は、USBコントローラ220と接続し、スマートフォン250”から送られてくる温度設定情報に基づいて、対応する電圧レベルの信号をUSBコントローラ220へ送信する。USBコントローラ220は、受信した信号に応じて、SSR230を切り替え制御する。
【0054】
このようにスマートフォン250”からの情報に基づいて面状ヒータ10の温度調整を行うことにより、ユーザは、ヒータ温度を遠隔制御することが可能となる。また、電源コントローラ200の構成に操作部材を設ける必要がなく、温度調節器を簡易に構成することができ、電源コントローラ200を面状ヒータ10に組み込んだヒータシステムの構成が容易となる。例えば、ウェアラブルデバイスとしてヒータシステムを構成した場合、衣服に対して容易に装着可能とすることができる。なお、スマートフォン250”以外の端末を電源コントローラ200と通信接続させてもよい。
【0055】
次に、
図6を用いて第4の実施形態である電力供給システムについて説明する。第4の実施形態では、電源部から供給される電力を、降圧と昇圧両方とも可能な構成になっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0056】
図6は、第4の実施形態である電力供給システム100のブロック図である。電源コントローラ200は、面状ヒータ10に対して最大20Vまでの電力供給が可能であり、昇圧および降圧回路を備えたバック/ブーストコンバータ270’を備えている。低温ボタン250A、中温ボタン250B、高温ボタン250Cは、本体制御部260と接続する。
【0057】
本実施形態では、比較的サイズの大きい面状ヒータ10で構成され、低温ボタン250A、中温ボタン250B、高温ボタン250Cは、それぞれ電圧10V、15V、20Vに対応している。一方、電源部300はモバイルバッテリによって構成され、USBコネクタ210は、ここでは最大電圧レベル15Vの電力を受電する。
【0058】
本体制御部260は、温度設定ボタン250から送られてくる信号に基づいて、バック/ブーストコンバータ270’を制御する。バック/ブーストコンバータ270’は、高温ボタン250Cが操作されたときに15Vから20Vへ昇圧し、低温ボタン250Aが操作されたときには15Vから10Vへ下げる。中温ボタン250Bが操作された場合、受電した電力を昇圧、降圧せずにそのまま出力側へ送る。
【0059】
バック/ブーストコンバータ270’を設けることにより、許容最大電流の高い面状ヒータ10を使用する場合にも、それに応じて高圧の電力供給が可能になる。また、受電する電力の電圧レベルを、温度設定ボタン250で設定可能な電圧レベルの範囲の中で中間あるいは中間付近のレベルに定めることにより、昇圧、降圧両方の電力制御を行うことができる。
【0060】
第1~第4の実施形態では、温度設定ボタン250によって設定される電圧レベルがあらかじめ定められているが、電源コントローラ200と接続させた面状ヒータ10のサイズあるいはカーボン和紙シート(CJP)の抵抗値に基づいて設定する構成にしてもよい。
【0061】
例えば、本体制御部がケーブルC2を介してカーボン和紙シート(CJP)の抵抗値を検出し、低温ボタン250A、中温ボタン250B、高温ボタン250Cに対応する電圧レベルを設定してもよい(例えば、12V、9V、6V)。また、スマートフォンなどの端末から面状ヒータ10のサイズあるいはサイズに準じた情報を電源コントローラ200へ送信するように構成してもよい。
【0062】
次に、
図7、8を用いて第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、自然災害において使用される暖房器具としてのポータブル型面状ヒータが構成されている。なお、第5の実施形態である災害用暖房器具を、キャンプなどの屋外で使用することも可能であり、融雪シート、さらにはオフィスの床などに設置してもよい。
【0063】
図7は、第5の実施形態であるポータブル型面状ヒータの概略的断面図である。
図8は、第5の実施形態におけるポータブル面状ヒータの回路構成を概略的に示した図である。
【0064】
ポータブル面状ヒータ100’は、ここでは縦横比が同じ3枚のカーボンシート120’A、120’B、120’Cを備える。カーボンシート120’A、120’B、120’Cは、その短手方向をカバーシート130’の長手方向に沿うように並び、互いに所定間隔空けて離れている。カバーシート130’は、2枚のシートを縁全体に沿って重ねた状態でカーボンシート120’A、120’B、120’Cを内部に収容する。
【0065】
カバーシート130’の長手方向縁部には、面ファスナー135’が設けられている。これによって、カーボンシート120’A、120’B、120’Cが出し入れ可能なように、カバーシート130’を開閉することができる。カバーシート130’は、カーボンシート120’A、120’B、120’C全体を被覆できるサイズを有し、カーボンシート120’A、120’B、120’Cの両面を覆う。
【0066】
カーボンシート120’A、120’B、120’Cの片面には、ここでは硬質の断熱材140’A、140’B、140’Cが、熱効率を高めるためにそれぞれ接着などによって取り付けられている。例えば、帯状両面テープ(図示せず)が、断熱材140’A、140’B、140’Cに対して間隔を空けて張り付けられる。断然材140’A、140’B、140’Cの片側全面に両面テープを張り付けることも可能であり、テープの代わりに接着剤を用いてもよい。断熱材140’A、140’B、140’Cは、カーボンシート120’A、120’B、120’Cと比べて短手方向長さが略同じである一方で全体サイズが大きく、また、カーボンシート120’A、120’B、120’Cと比べて厚みがある。
【0067】
図8に示すように、カーボンシート120’A、120’B、120’Cは、電源ラインC1’、C2’を介して、電源出力が1つである電源供給器200’から電源供給される。ここでは、電源供給器200’はバッテリやAC電源アダプタとして構成され、電源ラインC1’、C2’は、DC電源ラインとして構成される。そして、カーボンシート120’A、120’B、120’Cは、電気的に並列接続している。
【0068】
カーボンシート120’Aの電極150’A、150’Eは、フレキシブルな導線142、143を介して、カーボンシート120’Bの向かい合う電極150’B、150’Fとそれぞれ接続し、カーボンシート120’Bの電極150’B、150’Fは、フレキシブルな導線144、145を介して、カーボンシート120’Cの向かい合う電極150’C、150’Gとそれぞれ接続している。電極150’A~150’Gは、ここでは箔電極で構成されている。
【0069】
ポータブル面状ヒータ100’は、折り曲げることが可能な導線142、143および導線144、145の部分で、断熱材140’A、140’B、140’Cとは反対側に向けて、折り畳むことができる(
図7の矢印参照)。ポータブル面状ヒータ100’は、一塊となるように折り畳んだ状態で収納袋400に収納される。そのため、数多くのポータブル面状ヒータ100’を限られた収容スペースに備蓄することができる。
【0070】
自治体などは、収納袋400に収納されているポータブル面状ヒータ100’を、防災用暖房器具として備蓄することができる。台風、地震、豪雨などの自然災害が生じると、避難所へ避難してきた人々に対し、マットヒータとして供給することができる。避難者は、ポータブル面状ヒータ100’を収納袋400から取り出して広げ、ポータブル面状ヒータ100’の上で直接あるいは間接的に横になることで、体を温めることができる。
【0071】
ポータブル面状ヒータ100’は、商用電源から直接電源供給を受けるのではなく、電源供給器200’から電源供給を受ける。そのため、避難者が所有するUSBケーブルなどを使ってポータブル面状ヒータ100’へ電源供給することが可能となる。また、カーボンシート120’A、120’B、120’Cは短時間で暖房効果を発揮するため、複数のポータブル面状ヒータ100’へ順次電源供給することで、多くの避難者が暖房用器具で暖をとることができる。
【0072】
さらに、カバーシート130’に開閉部となる面ファスナー135’を設けることによって、カーボンシート120’A、120’B、120’Cのすべての交換あるいは一部交換を行うことが容易となる。また、カバーシート130’のサイズを調整することによって、カーボンシートの数を追加、減少させることができる。なお、カバーシート130’の開閉部分を一辺だけに限定しなくてもよい。例えば、カバーシートの縁全体に沿って開閉可能にしてもよい。一方で、カバーシート130’にファスナー135’などを設けず、開閉しない構成にすることも可能である。
【0073】
導線142、143、144、145を取り外し可能に、電源ラインC1’およびモバイル電源供給器200’を第1の実施形態のような電源に置換してもよい。こうすることで、カーボンシート120’A、120’B、120’Cを第1の実施形態のような直列接続にすることも可能である。カーボンシート120’A、120’B、120’Cを短手方向に並べることで、電気的な接続の仕方を直列接続、並列接続いずれか選択的に設定するように構成することができる。
【0074】
図9は、第5の実施形態である面状ヒータの変形例を示した概略的断面図である。ここでは、ウレタンなどの弾性材121’A、121’B、121’Cが、カーボンシート120’A、120’B、120’Cと同等のサイズで、カバーシート130’との間に配置されている。弾性材121’A、121’B、121’Cは、使用時にクッションとして機能する。また、カーボンシート120’A、120’B、120’Cは、フレキシブルで折曲げることが可能な導電体(銅箔テープなど)142’、143’、144’、145’を介して、電気的に接続される。
【0075】
次に、
図10~12を用いて、第6の実施形態である電力供給システムについて説明する。第6の実施形態では、電圧制御と電流値あるいはいずれか一方を制御し、面状ヒータへ電源供給を行う。
【0076】
図10は、第6の実施形態における電力供給システムの概略的構成図である。
図11は、第6の実施形態における電力供給システムのブロック図である。
【0077】
電力供給システム1000は、面状ヒータ10に対して電源供給可能な外部電源コントローラ1200とともに、面状ヒータ10内部に組み込まれた内部電源コントローラ1500とを備えている。電源部300は、ここではUSB-PD規格対応のモバイルバッテリによって構成されている。外部電源コントローラ1200、内部電源コントローラ1500は、ここでは併用する使用形態を示しているが、それぞれ単体で使用可能である。
【0078】
外部電源コントローラ1200は、タイマーボタン1240、温度設定ボタン1250とを備え、第1の実施形態と同様、電源部300側にUSB-PD規格に対応したUSBコネクタ210を備えている。さらに外部電源コントローラ1200は、内部電源コントローラ1500のUSBコネクタ215と接続するUSBコネクタ315とを備えている。USBコネクタ215、315は、いずれもUSB-PD規格に対応している。
【0079】
内部電源コントローラ1500は、外部電源コントローラ1200に設けられるような物理的スイッチ類は設けられておらず、スマートフォン250”などの端末から送られてくる信号を受信し、それに基づいて電力供給を行う。
図10、11に示す使用形態において、外部電源コントローラ1200がユーザによって操作されると、内部電源コントローラ1500は、外部電源コントローラ1200から送られてくる電圧、電流値に基づいてヒータ10へ電力供給を行う。
【0080】
内部電源コントローラ1500は、本体制御部1520と、電圧・電流制御部(電力変換部)1540とを備える。本体制御部1520は、タイマー240、温度センサ280からの信号を受信し、スマートフォン250”から送られてくる情報に基づき、電力供給を行う。具体的には、本体制御部1520は、温度設定情報を受信すると、電圧・電流制御部1540において電流値を変更するため、電圧・電流制御部1540へ電力を送る。電圧・電流制御部1540は、定められたUSB-PD規格に対応した電圧レベルに対して電流値を変更する。
【0081】
一方、温度設定情報が送られてこない場合、すなわちユーザによる温度調整に関する入力操作が行われない場合、定められたUSB-PD規格に対応した電圧レベルで電力供給を行う。この場合、電流値は、モバイルバッテリとして構成される電源部300に従った電流値となる。
【0082】
USB-PD規格に対応した電圧レベルの設定に関しては、使用される電源部300の特性、電源環境に基づいて設定される。また、ヒータ10のサイズ(面積)およびヒータ10のターゲットとなる温度、すなわちヒータ10に必要なワット数などに基づいて定められる。
【0083】
ヒータ10のサイズ(面積)が比較的大きい場合、小さい場合いずれにも同じヒータ温度を実現するためには、必要なワット数(出力)を確保する電流値を設定できる電圧レベルを設定する必要がある。そのため、5V、9V、12V、15V、20Vの中で、電流値の制限が生じないようにUSB-PD規格の電圧レベルを設定すればよい。ここでは、USB-PD規格に対応する電圧レベルの中で、9V(電流値2A)が設定されている。
【0084】
USB-PD規格に対応した電圧レベルが9V(電流値2A)として設定される場合、ユーザが、第1の実施形態、第3の実施形態のように低温、中温、高温という段階的な温度レベルのいずれかを選択すると、電圧レベルを9Vに設定したまま、電流値を変更する。ここでは、高温、中温、低温という3つの温度範囲に応じた温度レベルそれぞれに対し、1A、0.8A、0.6Aが設定される。電流値に関しては、他の電流値(ゼロ以外)に設定することも可能である。なお、第2の実施形態のように連続的な電圧レベルが設定される場合においても、各電圧レベルに応じて複数の電流値を定めればよい。
【0085】
電圧・電流制御部1540は、例えばスイッチングレギュレータで構成することが可能であり、フィードバック制御による電流モードに切り替えるように構成することができる。あるいは、DC-DCコンバータによって構成し、PWM駆動によりON/OFF時間を調整することで電流値を変更することが可能である。
【0086】
図12は、第6の実施形態における供給電力制御のフローを示した図である。上述したように、ユーザによって温度設定されている場合、その設定された温度レベルに応じた電流値に変更する一方、ユーザによって温度設定されていない場合、上述したようにUSB-PD規格に対応した電圧レベルおよびその電流値によって電力供給を行う(S201~S203)。
【0087】
ヒータ10の温度Tが閾値T0を超えると、電力供給を停止する(S205)。この間、通電状態は維持される。ヒータ10の温度Tが閾値T0を下回ると、再び電力供給を行い、ヒータ10の温度Tが維持されるように、供給電力がフィードバック制御される。また、タイマーによって時間設定されている場合、タイマーにより設定された時間に到達すると、通電状態を維持した状態で電力供給を停止する(S208)。何らかの異常が発生した場合、スマートフォン250”へ異常を報知するか、あるいは、外部電源コントローラ1200に設けられた警告ランプ(図示せず)が点灯する(S207、S208)。なお、第1~第4の実施形態のように、ヒータ10の温度が閾値T0を超えた場合、より低いUSB-PD規格に対応した電圧レベルに設定変更してもよい。
【0088】
以上、内部電源コントローラ1500について説明したが、外部電源コントローラ1200についても、物理的に入力操作するボタンが設けられている以外、同様に構成されている。例えば、内部電源コントローラ1500が外部電源コントローラ1200と接続していると認識した場合、外部電源コントローラ1200だけの入力操作に応じて電力供給制御を行うようにすればよい。あるいは、内部電源コントローラ1500が外部電源コントローラ1200の機能をOFFに設定し、スマートフォンなどの端末250”とのデータ通信に基づいて電力供給制御を行ってもよい。
【0089】
このように本実施形態によれば、外部電源コントローラ1200、あるいは内部電源コントローラ1500が、ユーザにより設定された温度レベル(低温、中温、高温)に基づき、定められたUSB-PD規格対応電圧レベルに対し、電流値を変更してヒータ10へ電力供給を行う。
【0090】
電源部300がモバイルバッテリの場合、バッテリ性能などに起因して最高出力電圧は様々であり、USB-PD規格対応電圧レベルの電圧変更に制限が生じ、また、必要以上の電流値による電力供給が行われる状況が生じやすい。電源部300の性能および定められたUSB-PD規格対応電圧レベルに応じて、ユーザの設定した温度レベルに適した電流値に設定することにより、ヒータ10に対して適切な電力供給を行うことができる。また、電流値制御によって、モバイルバッテリで構成される電源部300のバッテリ駆動時間を長くすることができる。
【0091】
電源部300がモバイルバッテリの場合、電源ON/OFFの繰り返し操作によって、電源部300内の電気回路に対してダメージを与える場合がある。しかしながら、ヒータ10の温度Tを維持するように、通電状態で電力供給、電力供給の停止を行うことにより、電源部300における回路動作が安定し、ヒータ10の温度に関してより精細な制御を可能にする。
【0092】
電圧・電流制御部1540では、電圧レベルを電流値とともに変更するように構成してもよい。この場合、第1~第5の実施形態のように、USB-PD規格対応電圧レベル、USB-PD規格非対応電圧レベルとの間で出力電圧レベルを調整するようにしてもよい。そして、設定された電圧レベル毎に、低温、中温、高温に応じた電流値をあらかじめ定めるようにすればよい。例えば、本体制御部1520は、図示しないメモリに記憶された電流値に関するデータに基づいて電圧・電流制御部1540を制御し、電流モードにおける定電流の値を定めることが可能である。
【0093】
カーボン和紙シート以外でも、同様の発熱特性や柔軟性のある発熱シートを使用することも可能であり、カーボンナノチューブコーティングされた布や、微細化した炭素粉末を含む樹脂シートで構成することも可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 ヒータ
100 電力供給システム
200 電源コントローラ
210 USBコネクタ
220 USBコントローラ
280 温度センサ
300 電源部
1200 外部電源コントローラ
1500 内部電源コントローラ
1540 電圧・電流制御部