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特許7373798打抜き装置の調整装置および打抜き装置の調整方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】打抜き装置の調整装置および打抜き装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/14 20060101AFI20231027BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
B21D37/14 J
B21D28/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020017287
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021122841
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正行
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-071543(JP,A)
【文献】特開平03-161246(JP,A)
【文献】特開2018-020380(JP,A)
【文献】特開2002-001452(JP,A)
【文献】米国特許第05263237(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/14
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜き型を有するダイに積載したワークをパンチで打ち抜くことで、前記ワークを所定の形状に打抜く打抜き装置の調整装置であって、
前記パンチまたは前記ダイを、打ち抜き方向と直交する方向へ移動させる第1駆動機構と、
前記第1駆動機構と通信可能に接続された制御部と、を備え、
前記制御部は、前記パンチを前記抜き型に挿入した初期位置から、打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向へ前記パンチまたは前記ダイを移動させて、前記パンチと前記ダイとを接触させ、
前記初期位置と前記4方向でのそれぞれの接触位置との距離に基づいて、前記パンチの中心軸と前記ダイの中心軸とが合わさる中心位置へ前記パンチまたは前記ダイを移動させるよう、前記第1駆動機構を制御する、
打抜き装置の調整装置。
【請求項2】
前記第1駆動機構は、前記パンチまたは前記ダイを打ち抜き方向周りに移動させ、
前記制御部は、前記初期位置から、打ち抜き方向周りの2方向へ前記パンチまたは前記ダイを回転させて、前記パンチと前記ダイとを接触させ、
前記初期位置から前記打ち抜き方向周りの2方向でのそれぞれの接触位置への回転量にも基づいて、前記中心位置へ前記パンチまたは前記ダイを移動させるよう、前記第1駆動機構を制御する、
請求項1に記載の打抜き装置の調整装置。
【請求項3】
前記パンチまたは前記ダイを、前記打ち抜き方向と直交する方向へ移動させる第2駆動機構をさらに備え、
前記制御部は、ドライバにより前記パンチを前記ダイと接触しない位置から下降させ、前記パンチと前記ダイとの接触時に発生する荷重の有無に基づいて、前記パンチを前記初期位置に移動させるよう、前記第2駆動機構を制御する、
請求項1または2に記載の打抜き装置の調整装置。
【請求項4】
前記パンチまたは前記ダイに作用する荷重を測定する荷重センサをさらに備え、
前記荷重センサは、前記パンチを下降させた際に前記打ち抜き方向に垂直な方向に働く荷重を測定し、
前記制御部は、前記荷重センサによって検出された荷重方向に、前記パンチまたは前記ダイを移動させるよう、前記第2駆動機構を制御する、
請求項3に記載の打抜き装置の調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2駆動機構の制御を、前記荷重センサによる荷重の測定値がゼロになるまで行う、
請求項4に記載の打抜き装置の調整装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記中心位置における前記パンチと前記ダイとの離間距離の50%以下の移動量で、前記パンチまたは前記ダイを移動させるよう、前記第2駆動機構を制御する、
請求項4または5に記載の打抜き装置の調整装置。
【請求項7】
抜き型を有するダイに積載したワークをパンチで打ち抜くことで、前記ワークを所定の形状に打抜く打抜き装置の調整方法であって、
制御部が、前記パンチを前記抜き型に挿入した初期位置から、打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向へ前記パンチまたは前記ダイを移動させて、前記パンチと前記ダイとを接触させ、
前記制御部が、前記初期位置と前記4方向でのそれぞれの接触位置との距離に基づいて、前記パンチの中心軸と前記ダイの中心軸とが合わさる中心位置へ前記パンチまたは前記ダイを移動させる、
打抜き装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打ち抜き装置の調整装置および打抜き装置の調整方法に関し、特に、打ち抜きプレス用金型の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
打ち抜きプレス加工は、一般的にダイの上に置かれたワークをストリッパにより押さえつつ、パンチによってダイの中にワークを押しこみ、打ち抜くことで所定の形状が得られる技術である。打ち抜きプレス加工は、一般的に家電機器や精密機器、もしくは自動車部品といった多岐にわたる分野で普及している。
【0003】
打ち抜きプレス加工においてプレス用金型であるダイとパンチ間のクリアランスはワークの品質(バリおよび表面粗さなど)に大きな影響を与える重要なパラメータであり、その適正量は一般的にワーク厚みの6~10%と知られている。パンチとダイとのそれぞれの中心が一致していない場合、工具偏摩耗の原因となり工具寿命が低下することがある。例えば厚み30μmの薄材を打ち抜く場合にはクリアランス適正量は2μm程度となり、精密な工具位置の調整が求められる。
【0004】
従来において工具位置の調整方法として、人の手によりハンマーで金型を叩く方法や金型を削る方法が存在するが、作業者の熟練度が必要となる。そこで、例えば、特許文献1に示すようにプレス金型の芯出し装置の例が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3375094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1による芯出し装置ではパンチとダイ間の位置関係が定量的に不明であるので、パンチの中心とダイの中心とが一致していることを判断できない。また、上記芯出し装置での工具固定方法はナットによる締結であるが、加工時の振動によりナットが緩み工具位置が変動する。したがって、パンチとダイ間のクリアランスを中心に合わせるためにノウハウが必要となり、またプレス中にクリアランスが偏心するおそれがある。
【0007】
本開示は、上記従来の問題点に鑑み、パンチとダイの相対位置の調整の精度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の打抜き装置の調整装置は、抜き型を有するダイに積載したワークをパンチで打ち抜くことで、前記ワークを所定の形状に打抜く打抜き装置の調整装置であって、前記パンチまたは前記ダイを、打ち抜き方向と直交する方向へ移動させる第1駆動機構と、前記第1駆動機構と通信可能に接続された制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1駆動機構により、前記パンチを前記抜き型に挿入した初期位置から、打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向へ前記パンチまたは前記ダイを移動させて、前記パンチと前記ダイとを接触させ、前記初期位置と前記4方向でのそれぞれの接触位置との距離に基づいて、前記パンチと前記ダイとの相対的な中心位置へ前記パンチまたは前記ダイを移動させるよう、前記第1駆動機構を制御する。
【0009】
また、本開示の金型調整方法は、抜き型を有するダイに積載したワークをパンチで打ち抜くことで、前記ワークを所定の形状に打抜く打抜き装置の調整方法であって、制御部が、前記パンチを前記抜き型に挿入した初期位置から、打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向へ前記パンチまたは前記ダイを移動させて、前記パンチと前記ダイとを接触させ、制御部が、前記初期位置と前記4方向でのそれぞれの接触位置との距離に基づいて、前記パンチまたは前記ダイを前記抜き型の中心位置へ移動させる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本開示の打抜き装置の調整装置および打抜き装置の調整方法によれば、パンチとダイの相対位置の調整の精度向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本開示の実施の形態1における打抜き装置の全体を示す概略図
図1B】本開示の実施の形態1における打抜き装置の上型の斜視図
図2A】本開示の実施の形態1における調整装置の構成を示す概略図
図2B】本開示の実施の形態1における調整装置の構成を示すブロック図
図3】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法を示すフローチャート
図4A】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図4B】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図4C】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図4D】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図4E】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図4F】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図4G】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法の具体的な動作を示す説明図
図5A】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法のステップS2の具体的な動作を示す説明図
図5B】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法のステップS2の具体的な動作を示す説明図
図5C】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法のステップS2の具体的な動作を示す説明図
図5D】本開示の実施の形態1における調整装置における調整方法のステップS2の具体的な動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本開示の実施の形態1について、図1から図4Gを参照して説明する。図1Aは、本開示の実施の形態1における打抜き装置100の全体を示す概要図を示す。図1Bは、本開示の実施の形態1における打抜き装置100の上型1の斜視図を示す。図2Aは、本開示の実施の形態1における調整装置3の構成を示す概略図を示す。図2Bは、本開示の実施の形態1における調整装置3の構成を示すブロック図を示す。以下の説明の便宜上、図中に示すXYZ直交座標系をとるものする。
【0013】
打抜き装置100は、金型としての上型1および下型2を備える加工装置である。上型1は、パンチベース11、パンチホルダー12、およびパンチ13を備える。下型2は、ダイベース21、ダイホルダー22およびダイ23を備える。上型1は、ドライバ5(図2B参照)により下型2に対して昇降する。上型1においてパンチホルダー12によりパンチベース11に保持されたパンチ13が、下型2においてダイホルダー22によりダイベース21に保持されたダイ23に対して、ダイ23の上にストリッパにより押さえつけられたワークWを打ち抜く。これにより、所定形状のワークを得ることができる。
【0014】
調整装置3は、上型1もしくは下型2の少なくとも一方の調整を行う。調整装置3が上型1に設置される場合、パンチホルダー12の側面を囲むようにパンチベース11に取り付けられる。調整装置3が下型2に設置される場合、ダイホルダー22の側面を囲むようにダイベース21に取り付けられる。金型調整は、調整装置3がパンチホルダー12もしくはダイホルダー22を指定位置に移動させることにより、実行される。
【0015】
次に、調整装置3の構成について図2Aを参照して詳細に説明する。
【0016】
調整装置3は、第1駆動機構33および位置センサ34を備える第1駆動ベース31と、荷重センサ36を有する第2駆動機構35を備える第2駆動ベース32と、第1駆動機構33および第2駆動機構35とそれぞれ通信可能に接続されている制御部4とによって構成されている。第2駆動機構35は、ダイ23にパンチ13を嵌合させるために用いられ、第1駆動機構33は、ダイ23内でパンチ13を移動するのに用いられる。
【0017】
第1駆動ベース31は、例えば、中央部が空洞の四角枠形状を有する。第1駆動ベース31は、少なくとも4つ以上の第1駆動機構33を備える。第1駆動機構33は、それぞれ打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向に沿って配置されている。第1駆動ベース31のそれぞれの辺に設けられた第1駆動機構33が各々駆動することにより、第1駆動ベース31の内側に備えられた第2駆動ベース32が、並進および回転運動を行う。このように、第1駆動機構33は、第2駆動ベース32に備えられた第2駆動機構35を移動させるので、第2駆動機構35が支持するパンチ13またはダイ23を打ち抜き方向と直交する方向へ移動させることができる。
【0018】
この際、第1駆動機構33と同じ数で、第1駆動機構33付近に備えられた位置センサ34により、それぞれの第1駆動機構33の駆動量を測定する。第1駆動機構33として、例えば、サブミクロン単位のピッチで駆動できるピエゾ素子を用いたアクチュエータ機構を採用すると、高精度な調整をすることができる。位置センサ34として、必要スペースが少ない静電容量式センサを採用すると、調整装置3の小型化をすることができる
【0019】
複数の第1駆動機構33のうち少なくとも対向する2つの第1駆動機構33は、第2駆動ベース32を並進および回転運動させるために、対向方向に直交する方向にてオフセットしてもよい。オフセット量は、大きければ回転運動に必要なトルクが減少するも回転角度が減少するので、第1駆動機構33によるトルクを考慮して回転角度が最大になるようにオフセット量を小さくしてもよい。
【0020】
調整装置3をパンチベース11もしくはダイベース21に対して設置する際には、第1駆動ベース31を、パンチベース11もしくはダイベース21に対して固定するよう設置する。第1駆動ベース31をネジ締めなどの堅固な固定方法で固定すると、パンチホルダー12もしくはダイホルダー22をそれぞれ対応するベースにネジ締めなどの手段にて固定する際に、調整装置3の位置の変動を防ぐことができる。
【0021】
第2駆動ベース32は、例えば、中央部が空洞の四角枠形状を有し、第2駆動ベース32の内側でパンチホルダー12もしくはダイホルダー22が固定される。第2駆動ベース32は、第2駆動機構35を少なくとも4つ以上備える。第2駆動機構35は、例えば、アクチュエータである。第2駆動機構35は、それぞれ打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向に沿って配置され、パンチ13またはダイ23を打ち抜き方向と直交する方向へ移動させる。第2駆動ベース32のそれぞれの辺に設けられた第2駆動機構35が各々駆動することにより、第2駆動ベース32の内側に存在するパンチホルダー12もしくはダイホルダー22が並進および回転運動を行う。
【0022】
この際、第2駆動機構35に備えられた荷重センサ36により、パンチ13またはダイ23に作用する荷重を、固定されたパンチホルダー12もしくはダイホルダー22を介して測定する。
【0023】
荷重センサ36は必ずしも第2駆動機構35に備えられる必要はなく、例えば、パンチホルダー12もしくはダイホルダー22に備えられていてもよい。また、パンチ13とダイ23の接触を検知する方法があれば荷重センサ36を備えなくても、例えばパンチ13とダイ23に通電センサを備えるという形をとってもよい。荷重センサ36を備える場合、後述する粗調整の際に、パンチ13またはダイ23の調整方向を演算することができる。
【0024】
第2駆動機構35のうち少なくとも対向する2つは、パンチ13およびダイ23等の工具を並進および回転運動させるために、対向方向に直交する方向にてオフセットすることが望ましい。オフセット量は大きければ回転運動に必要なトルクが減少するもストロークが減少するため、第2駆動機構35によるトルクを考慮してストロークが最大になるようにオフセット量を小さくしてもよい。
【0025】
パンチホルダー12もしくはダイホルダー22の固定時にそれぞれの部材の損傷を防ぐために、第2駆動機構35でパンチホルダー12もしくはダイホルダー22に対して接触する箇所にはゴム材などの緩衝材を設けてもよい。
【0026】
荷重センサ36は、荷重の0点をリセットする機能を有する場合、工具(パンチ13とダイ23との)接触の検知を容易にすることができる。
【0027】
制御部4は、位置センサ34と荷重センサ36からそれぞれ、位置情報および荷重情報を受け取り、位置情報および荷重情報の演算処理結果に基づき、第1駆動機構33と第2駆動機構35へそれぞれの駆動情報を送る。制御部4は、上型1を昇降させるドライバ5と通信可能に接続されている。制御部4は、半導体素子などで実現可能である。制御部4は、例えば、マイコン、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASICで構成することができる。制御部4の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。制御部4は、ハードディスク(HDD)、SSD、メモリ等の記憶部を有しており、記憶部に格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、所定の機能を実現する。制御部4は、工具中心位置を算出するために、位置センサ34からの位置情報を記憶部に記憶させてもよい。
【0028】
次に、調整装置3を用いた打抜き装置100の調整方法について説明する。図3に、本開示の実施の形態1で用いた調整装置3における調整方法を示すフローチャートを示す。図4A図4Gに、本開示の実施の形態1で用いた調整装置3における調整方法の具体的な動作を示す説明図を示す。図5に、本開示の実施の形態1で用いる調整方法におけるステップS2の具体的な動作を示す説明図を示す。
【0029】
はじめに、図3のステップS1において、作業者が、調整装置3を上型1もしくは下型2に設置する。調整装置3の設置当初は、図4Aに示すように、工具のキャリブレーションが完了していない状態、すなわち、ダイ23の抜き型23aに対してパンチ13が偏心している状態である。
【0030】
調整装置3を上型1に設置する場合は、図4Bに示すように、パンチホルダー12の側面を囲み、パンチベース11に対して第1駆動ベース31を固定するように設置する。調整装置3を下型2に設置する場合は、ダイホルダー22の側面を囲み、ダイベース21に対して第1駆動ベース31を固定するように設置する。パンチホルダー12またはダイホルダー22は、X方向およびY方向にそれぞれ対向する少なくとも2組の第2駆動機構35により挟まれて支持される。そして、パンチホルダー12のパンチベース11に対する固定もしくはダイホルダー22のダイベース21に対する固定を緩めて、パンチホルダー12もしくはダイホルダー22が第1駆動機構33および第2駆動機構35により移動可能な状態にする。
【0031】
続いて、図3のステップS2において、パンチ13とダイ23が嵌合するように工具位置を粗調整する(図4C)。
【0032】
まず、制御部4が第2駆動機構35を駆動させて、パンチ13もしくはダイ23を打ち抜き方向に垂直な平面上を移動させ、嵌合位置周辺まで移動させる(図5A)。
【0033】
この際、例えば、前回加工時の中心位置が制御部4に記憶されている場合、調整装置3の設置されていない方の工具(パンチ13またはダイ23)位置が前回加工時と変わっていなければ、調整装置3の設置されている方の工具位置を前回加工時の中心位置に移動させることで、以下のステップS2の作業は省略することができる。
【0034】
パンチ13とダイ23の接触を、荷重センサ36を用いて検知する場合、荷重センサ36は、荷重のゼロ点のリセットによりパンチ13とダイ23との接触を検知可能な状態にする。
【0035】
その後、図5Bに示すように、制御部4は、ドライバ5を駆動して上型1を下降させてパンチ13とダイ23とを接近させる。次に、制御部4は、ドライバ5を制御して、パンチ13とダイ23との接触位置付近において、接触時の工具損傷を防ぐために、例えば、10μm以下のピッチにて上型1を降ろし、パンチ13とダイ23とを接触させる。
【0036】
そして、荷重センサ36が、パンチ13とダイ23とが接触した際に発生する、工具接触時の打ち抜き方向に対して垂直な方向の荷重を測定する。この荷重は、パンチ13とダイ23との接触点から抜き型23aの方向に発生する。図5Bにおいて、荷重センサ36は、例えば、X方向に2Nの力を検出する。
【0037】
次に、制御部4は、ドライバ5を駆動してパンチ13とダイ23とが接触しない位置にまで上型1を上昇させる。制御部4は、例えば、荷重センサ36による荷重が検出されなくなったことに基づいて、パンチ13とダイ23とが接触しなくなったと判断してもよい。
【0038】
次に、制御部4は、第2駆動機構35により、パンチ13とダイ23とを接触させた際に測定された荷重方向に、パンチ13もしくはダイ23を移動させる(図5C)。このとき、パンチ13もしくはダイ23の移動量は、例えば、片側クリアランスの50%以下である。このように、制御部4は、中心位置におけるパンチ13とダイ23との離間距離の50%以下の移動量で、パンチ13またはダイ23を移動させるよう、第2駆動機構35を制御する。例えば、制御部4の有する記憶部が、予めパンチ13とダイ23とのクリアランスを記憶しておくことで、パンチ13もしくはダイ23の移動量を算出する。または、移動量は、予めユーザにより設定されて記憶部に記憶されていてもよい。
【0039】
制御部4は、上述した工具接触時の荷重測定と工具移動の一連の動作を、工具接触時の荷重が測定されなくなるまで、すなわち荷重センサにより加入の測定値がゼロになるまで繰り返し、パンチ13をダイ23の抜き型23a内へ挿入させる。図5Dにおいて、荷重センサ36が検出する力は、0Nである。このときの、パンチ13またはダイ23の位置が初期位置として位置センサ34の検出値が初期化される。例えば、パンチ13の初期位置として、X方向に0μm、Y方向に0μm、回転方向としてθ方向に0μradと制御部4の記憶部に記憶される。この初期位置においては、粗調整の段階であるので、パンチ13の中心軸Cpとダイ23の中心軸Cdとは一致していない。このように、制御部4は、ドライバ5によりパンチ13をダイ23と接触しない位置から下降させ、パンチ13とダイ23との接触時に発生する荷重の有無に基づいて、パンチ13を初期位置に移動させるよう、第2駆動機構35を制御する。
【0040】
以上の動作により、図3のステップS2が実現される。
【0041】
続いて、図3のステップS3において、打ち抜き方向に対して垂直な平面での、直交する4方向にパンチ13またはダイ23を移動させた場合の工具接触位置を測定する。
【0042】
まず、制御部4は、第1駆動機構33により、打ち抜き方向に対して垂直な平面での直交する4方向のうち1方向へ、パンチ13およびダイ23の一方が他方に接触するまで、パンチ13またはダイ23を移動させる(図4D)。パンチ13またはダイ23の移動は、工具接触時の工具損傷を防ぐため、例えば、5μm以下のピッチで行う。パンチ13とダイ23とが接触した位置は、制御部4の記憶部に記憶される。図4Dに示す状態の場合、X方向に-3μmであり、ダイ23の抜き型23aの他方に接触する場合、X方向に5μmである。
【0043】
そして、位置センサ34はパンチ13とダイ23との接触時の位置情報(接触位置情報)を取得して制御部4へ送信し、制御部4が位置センサ34により取得された位置情報を記憶部に記憶させる。
【0044】
その後、打ち抜き方向に対して垂直な平面での直交する4方向のうち残りの3方向にて同様の作業を行い、それぞれの方向における工具接触時の位置情報を取得する。
【0045】
続いて、図3のステップS4において、打ち抜き方向周りにパンチ13またはダイ23を回転させた場合の工具接触位置を測定する。なお、パンチ13の断面形状が回転中心について点対称である場合、ステップS4は省略される。
【0046】
まず、制御部4は、第1駆動機構33により、ステップS3において記憶した4方向の工具接触位置情報のうち、いずれか1方向の接触位置付近まで、パンチ13またはダイ23を移動させる。第1駆動ベース31の構造上、第1駆動機構33にてパンチ13またはダイ23を回転させるストロークの確保が難しいため、制御部4は、接触位置から1μm以内までパンチ13またはダイ23を移動させてもよい。
【0047】
その後、図4Eに示すように、制御部4は、第1駆動機構33により、打ち抜き方向周りの一方向へ、パンチ13とダイ23とが接触するまで、パンチ13またはダイ23を回転させる。パンチ13またはダイ23の回転は、パンチ13およびダイ23の接触時の工具損傷を防ぐため、例えば、100μrad以下のピッチで行ってもよい。
【0048】
一方向の回転方向は、例えば、時計回りであり、-10μrad回転して接触したとして位置センサ34が位置情報を取得する。そして、位置センサ34はパンチ13およびダイ23の接触時の取得した位置情報を制御部4に送信し、制御部4は位置センサ34により取得された位置情報を記憶部に記憶させる。
【0049】
次に、打ち抜き方向周りのうち上記動作の反対方向にて同様の作業を行う。第1駆動機構33により、打ち抜き方向周りの一方向と反対方向へ、工具が接触するまで、パンチ13またはダイ23を回転させる。例えば、反時計回りに18μrad回転して接触したとして位置センサ34が位置情報を取得する。位置センサ34はパンチ13およびダイ23の接触時の取得した位置情報を制御部4に送信し、制御部4は位置センサ34により取得された位置情報を記憶部に記憶させる。
【0050】
続いて、図3のステップS5において、ステップS3とステップS4にて得られた位置情報を基に、制御部4がパンチ13の中心軸Cpとダイ23の中心軸Cdとが合わさる工具中心位置を算出し、パンチ13またはダイ23を算出した工具中心位置へ移動させる。工具中心位置は、例えば、以下の様にして算出することができる。
【0051】
まず、ステップS3で得られた4方向の接触位置情報のうち、図4Eに示すように、ある一つの方向である第1方向の接触位置をx1、第1方向の反対方向である第2方向の接触位置をx2、第1方向の直交方向である第3方向の接触位置をy1、第3方向の反対方向である第4方向の接触位置をy2と表記する。また、ステップS4で得られた2方向の接触位置情報のうち、ある一つの方向である第5方向の接触位置における回転角度θ1、第5方向の反対方向である第6方向の接触位置における回転角度θ2と表記する。
【0052】
工具中心位置(並進位置:Cx,Cy、回転位置:Cθ)は、初期位置と4方向のそれぞれの接触位置との距離および初期位置と2方向の回転量に基づいて、以下の式(1)、式(2)、式(3)により算出される。
【0053】
Cx=(x1+x2)/2 ・・・ 式(1)
【0054】
Cy=(y1+y2)/2 ・・・ 式(2)
【0055】
Cθ=(θ1+θ2)/2 ・・・ 式(3)
【0056】
その後、制御部4は、図4Fに示すように、算出したパンチ13の中心軸Cpとダイ23の中心軸Cdとが合わさる工具中心位置(Cx,Cy,Cθ)まで第1駆動機構33を駆動制御してパンチ13またはダイ23を移動させる。工具中心位置は、例えば、X方向に2μmであり、Y方向に1μmであり、θ方向に4μradである。なお、パンチ13の断面形状が回転中心について点対称である場合、回転位置Cθの算出は省略することができる。
【0057】
続いて、図3のステップS6において、作業者は、調整装置3を上型1もしくは下型2から取り外す。作業者は、まず、第2駆動ベース32に固定されたパンチホルダー12もしくはダイホルダー22をパンチベース11もしくはダイベース21に対して固定する。その後、制御部4は、第2駆動ベース32のパンチホルダー12もしくはダイホルダー22の固定を解除し、パンチベース11もしくはダイベースが21に対する第2駆動ベース32の固定を解除することで調整装置3を取り外す(図4G参照)。
【0058】
パンチ13およびダイ23の組み合わせが複数存在する場合には、上記のステップS1~S6を全ての組み合わせにて繰り返すことで、1つの調整装置3により全ての工具位置調整を実行できる。
【0059】
本開示の打ち抜き装置100の調整装置3によれば、抜き型23aを有するダイ23に積載したワークWをパンチ13で打ち抜くことで、ワークWを所定の形状に打抜く打抜き装置100の調整装置3であって、第1駆動機構33と、制御部4とを備える。第1駆動機構33は、パンチ13またはダイ23を、打ち抜き方向と直交する方向へ移動させ、制御部4は、第1駆動機構33と通信可能に接続されている。制御部4は、第1駆動機構33により、パンチ13を抜き型23aに挿入した初期位置から、打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向へパンチ13またはダイ23を移動させて、パンチ13とダイ23とを接触させ、初期位置と4方向でのそれぞれの接触位置との距離に基づいて、パンチ13の中心軸Cpとダイの中心軸Cdとが合わさる中心位置へパンチ13またはダイ23を移動させるよう、第1駆動機構33を制御する。
【0060】
また、本開示の打ち抜き装置100の調整方法によれば、制御部4が、第1駆動機構によりパンチ13を抜き型23aに挿入した初期位置から、打ち抜き方向に対して垂直な平面における直交する4方向へパンチ13またはダイ23を移動させて、パンチ13とダイ23とを接触させ、制御部4が、第1駆動機構により初期位置と4方向でのそれぞれの接触位置との距離に基づいて、パンチ13の中心軸Cpとダイ23の中心軸Cdとが合わさる中心位置へパンチ13またはダイ23を移動させる。
【0061】
制御部4により、パンチ13とダイ23の接触位置情報に基づく中心位置へパンチ13を移動させるように第1駆動機構33を制御することが可能となり、パンチ13とダイ23の定量的な位置関係に基づく自動的な工具位置の調整を実現することができる。制御部4が第1駆動機構33および第2駆動機構35を用いてダイ23とパンチ13の接触位置に基づく中心位置へパンチ13を移動させるよう制御することが可能となり、作業者の作業熟練度を要せずミクロン単位以下の微小な金型調整を実現できる。したがって、例えば30μm以下の薄材における打ち抜きのような2μm前後のクリアランスとなる場合でも、適切な工具位置調整が可能となり品質の向上、調整工数の削減だけでなく、クリアランスずれ起因の工具偏摩耗の抑制による工具の長寿命化および安定化が可能となる。
【0062】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の打抜き装置の調整装置および調整方法は、抜き型を有するダイに積載したワークをパンチで打ち抜くことで、前記ワークを所定の形状に打抜く打抜き装置を調整するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 上型
2 下型
3 調整装置
4 制御部
5 ドライバ
11 パンチベース
12 パンチホルダー
13 パンチ
21 ダイベース
22 ダイホルダー
23 ダイ
23a 抜き型
31 第1駆動ベース
32 第2駆動ベース
33 第1駆動機構
34 位置センサ
35 第2駆動機構
36 荷重センサ
100 打抜き装置
W ワーク
Cp、Cd 中心軸
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
図5D