(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ごみ発電システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
F01K 27/02 20060101AFI20231027BHJP
F01K 7/22 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
F01K27/02 C
F01K7/22 A
(21)【出願番号】P 2020042461
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019111857
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第40回全国都市清掃研究・事例発表会実行委員会が平成30年12月20日に発行した第40回 全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集の第146頁~第148頁にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】叶 雅由
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰行
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-022421(JP,A)
【文献】特開2017-155613(JP,A)
【文献】特表2001-520360(JP,A)
【文献】特表2010-540829(JP,A)
【文献】特開2008-069702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 15/10
F01D 25/00
F01K 7/22
F01K 27/02
F23G 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却の廃熱を利用して高温腐食を生じさせない温度の飽和蒸気を発生させる廃熱ボイラと、前記廃熱ボイラから前記飽和蒸気が供給される高圧タービンと、前記高圧タービンから排気された蒸気を除湿する除湿器と、前記除湿器で除湿された蒸気をごみ焼却の燃焼排ガスによって加熱することにより高温腐食を生じさせない温度の過熱蒸気とする再熱器と、前記再熱器から前記過熱蒸気が供給される低圧タービンと、を備え
、
前記再熱器は、ごみ焼却による燃焼排ガスの温度が500℃~600℃の領域に設置され、前記過熱蒸気が320℃以下である、ごみ発電システム。
【請求項2】
前記飽和蒸気が250~300℃である請求項1に記載のごみ発電システム。
【請求項3】
前記高圧タービン及び前記低圧タービンが単車室内に収容されていることを特徴とする請求項1に記載のごみ発電システム。
【請求項4】
前記高圧タービンと前記低圧タービンとが別個に設けられ、前記高圧タービンと前記低圧タービンの各々に発電機が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のごみ発電システム。
【請求項5】
ごみ焼却のための焼却炉が複数台設置され、複数台の前記焼却炉の其々に対して前記廃熱ボイラ及び前記再熱器が設けられ、前記焼却炉の其々に対して設けられた複数台の前記廃熱ボイラからの前記飽和蒸気が1台の前記高圧タービンに供給されるように構成され、前記焼却炉の其々に対して設けられた複数台の前記再熱器からの前記過熱蒸気が1台の前記低圧タービンに供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1~
4の何れかに記載のごみ発電システム。
【請求項6】
請求項
5に記載のごみ発電システムの運転方法であって、ごみ発電システム全体の負荷の低下に応じて、複数台の前記焼却炉のうちの幾つかの焼却炉を稼働し、他の焼却炉の稼働を停止することを特徴とする、前記ごみ発電システムの運転方法。
【請求項7】
前記焼却炉、前記廃熱ボイラ、及び前記再熱器が其々2台設けられ、ごみ発電システム全体の負荷が1/2以下の時に、1台の焼却炉へのごみ供給を停止し、他の1台の焼却炉を稼働させることを特徴とする、請求項
6に記載のごみ発電システムの運転方法。
【請求項8】
前記焼却炉、前記廃熱ボイラ、及び前記再熱器が其々3台設けられ、ごみ発電システム全体の負荷が2/3以下且つ1/3を超える時には1台の焼却炉を停止して他の2台の焼却炉を稼働させ、ごみ発電システム全体の負荷が1/3以下の時には2台の焼却炉を停止して他の1台の焼却炉を稼働させることを特徴とする、請求項
6に記載のごみ発電システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却熱を利用したごみ発電システム及びその運転方法に係り、詳しくは、排ガス再熱方式によるごみ発電システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ発電システムは、ごみ焼却炉で発生した高温の燃焼排ガスから廃熱ボイラで熱回収し、廃熱ボイラで発生した高圧蒸気を蒸気タービンに送り、蒸気タービンを回転させて発電する。
【0003】
この種の発電システムでは、発電効率の向上のため、近年、蒸気の高温高圧化が進んでおり、廃熱ボイラで発生した蒸気を過熱器により高温高圧(例えば4MPaG、400℃)の過熱蒸気として蒸気タービンに送るごみ焼却発電システムが知られている(例えば特許文献1等、以下、「高温高圧方式」と言う。)。
【0004】
しかしながら、都市ごみにおいてはごみ中に塩素分が含まれているため、この塩素分がごみの燃焼過程において塩化水素に変化し、燃焼排ガス中に含まれ、過熱器の高温腐食を招くこととなる。特に、蒸気温度が330℃以上になると、排ガス成分の性状にもよるが、過熱管の腐食が急速に進行する。
【0005】
そのような高温腐食のリスクを軽減しつつ高効率のごみ発電を実現するため、ごみ焼却の廃熱によって加熱されるボイラと、前記ボイラからの蒸気で駆動される蒸気タービン発電装置とを備え、前記蒸気タービン発電装置は、前記ボイラから高温腐食を生じない温度の蒸気が供給される高圧タービンと、前記高圧タービンの排気が供給される中低圧タービンと、前記中低圧タービンの排気を復水して前記ボイラに供給する給水経路を備え、前記高圧タービンの排気は除湿器を介して前記中低圧タービンに供給され、前記給水経路には、前記中低圧タービンから抽気した蒸気が供給される給水加熱器が設けられ、前記除湿器を介した蒸気は、前記ボイラからの蒸気が供給される再熱器によって加熱されて前記中低圧タービンに供給される、ごみ発電システムが提案されている(特許文献2、以下、「蒸気再熱方式」と言う。)。斯かるごみ発電システムにより、ボイラから高温腐食を生じない温度の蒸気が高圧タービンに供給されるので、ボイラの高温腐食リスクをなくすことができ、また、高圧タービンの排気が除湿器を介して中低圧タービンに供給され、且つ、中低圧タービンから抽気した蒸気によって給水加熱が行われるので、ボイラ蒸気温度を高温にすることなく高効率の発電を行うことができるとされている。この蒸気再熱方式では、高温高圧方式と異なり高圧タービン入口と中圧タービン出口との間の熱落差を除湿器と再熱器の採用によって増加するエンタルピーによってカバーし、熱効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-4420号公報
【文献】特開2017-155613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の蒸気再熱方式は、高温腐食のリスクを軽減しつつも上記高温高圧方式の発電効率に近づけることが可能であるが、さらなる高効率化が望まれる。
【0008】
そこで本発明は、高温腐食のリスクを軽減しつつも上記従来の蒸気再熱方式に比してごみ発電効率を高め得るごみ発電システム及びその運転方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るごみ発電システムの第1の態様は、ごみ焼却の廃熱を利用して高温腐食を生じさせない温度の飽和蒸気を発生させる廃熱ボイラと、前記廃熱ボイラから前記飽和蒸気が供給される高圧タービンと、前記高圧タービンから排気された蒸気を除湿する除湿器と、前記除湿器で除湿された蒸気をごみ焼却の燃焼排ガスによって加熱することにより高温腐食を生じさせない温度の過熱蒸気とする再熱器と、前記再熱器から前記過熱蒸気が供給される低圧タービンと、を備える。
【0010】
本発明に係るごみ発電システムの第2の態様は、前記飽和蒸気が250~300℃とされ得る。
【0011】
本発明に係るごみ発電システムの第3の態様は、前記過熱蒸気が、320℃以下とされ得る。
【0012】
本発明に係るごみ発電システムの第4の態様は、前記再熱器が、ごみ焼却による燃焼排ガスの温度が500℃~600℃の領域に設置され得る。
【0013】
本発明に係るごみ発電システムの第5の態様は、一つの車室内を高圧部と低圧部とに仕切ることにより前記高圧タービン及び前記低圧タービンが単車室内に収容され得る。
【0014】
本発明に係るごみ発電システムの第6の態様は、前記高圧タービンと前記低圧タービンとが別個に設けられ、前記高圧タービンと前記低圧タービンの各々に発電機が接続され得る。
【0015】
本発明に係るごみ発電システムの第7の態様は、ごみ焼却のための焼却炉が複数台設置され、複数台の前記焼却炉の其々に対して前記廃熱ボイラ及び前記再熱器が設けられ、前記焼却炉の其々に対して設けられた複数台の前記廃熱ボイラからの前記飽和蒸気が1台の前記高圧タービンに供給されるように構成され、前記焼却炉の其々に対して設けられた複数台の前記再熱器からの前記過熱蒸気が1台の前記低圧タービンに供給されるように構成され得る。
【0016】
また、本発明に係るごみ発電システムの運転方法は、上記第7の態様のごみ発電システムの運転方法であって、ごみ発電システム全体の負荷の低下に応じて、複数台の前記焼却炉のうちの幾つかの焼却炉を稼働し、他の焼却炉の稼働を停止することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るごみ発電システムの前記運転方法は、一態様において、前記焼却炉、前記廃熱ボイラ、及び前記再熱器が其々2台設けられ、ごみ発電システム全体の負荷が1/2以下の時に、1台の焼却炉へのごみ供給を停止し、他の1台の焼却炉を稼働させる。
【0018】
本発明に係るごみ発電システムの前記運転方法は、他の一態様において、前記焼却炉、前記廃熱ボイラ、及び前記再熱器が其々3台設けられ、ごみ発電システム全体の負荷が2/3以下且つ1/3を超える時には1台の焼却炉を停止して他の2台の焼却炉を稼働させ、ごみ発電システム全体の負荷が1/3以下の時には2台の焼却炉を停止して他の1台の焼却炉を稼働させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、除湿器で除湿された飽和蒸気を、ごみ焼却の燃焼排ガスによって加熱して高温腐食を生じさせない温度の過熱蒸気とすることにより、高温腐食のリスクを低減しつつ従来の蒸気再熱方式より高効率のごみ発電システム及びその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るごみ発電システムの第1実施形態を示す概略系統図である。
【
図2】本発明に係るごみ発電システムの第2実施形態を示す概略系統図である。
【
図3】本発明に係るごみ発電システムの第3実施形態を示す概略系統図である。
【
図4】比較例としての高温高圧式のごみ発電システムを示す概略系統図である。
【
図5】比較例としての蒸気再熱式のごみ発電システムを示す概略系統図である。
【
図6】本発明に係るごみ発電システムの実施例1、高温高圧式ごみ発電システムを採用した比較例1、及び、蒸気再熱式ごみ発電システムを採用した比較例2のぞれぞれの蒸気状態変化を示す概念図である。
【
図7】本発明に係るごみ発電システムの実施例2を示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。全図及び全実施形態を通じて同一又は類似の構成要素には同符号を付した。
【0022】
図1は、本発明に係るごみ発電システムの第1実施形態を示している。
図1に示す系統図において、実線で示す経路は蒸気経路を示し、破線で示す経路は給水経路を示している。第1実施形態のごみ発電システムは、
図1を参照して、ごみ焼却の廃熱を利用して高温腐食を生じさせない温度の飽和蒸気V1を発生させる廃熱ボイラ1と、廃熱ボイラ1から飽和蒸気V1が供給される高圧タービン2と、高圧タービン2から排気された蒸気V2を除湿する除湿器3と、除湿器3で除湿され蒸気V3をごみ焼却の燃焼排ガスGによって加熱することにより高温腐食を生じさせない温度の過熱蒸気V4とする再熱器4と、再熱器4から過熱蒸気V4が供給される低圧タービン5と、を備えている。符号GEは発電機を示している。
【0023】
廃熱ボイラ1及び再熱器4は、図示例では各2台備えているが、1台又は3台以上とすることもできる。図示例において、高圧タービン2と低圧タービン5とは、同軸、即ちタービンローター(車軸)が共通とされて、1台の発電機Gに接続されている。
【0024】
廃熱ボイラ1で発生する飽和蒸気V1は、高温腐食を生じさせない温度の飽和蒸気である。高温腐食は330℃を超えると活発になるため、飽和蒸気V1は330℃未満、好ましくは320℃以下とされる。ごみ焼却施設において一般的に使用されている高圧の飽和ボイラ(廃熱ボイラ)は、飽和蒸気温度が250℃~300℃である。従って、一般的に使用されている廃熱ボイラで発生した飽和蒸気V1を、過熱器を経由しないで高圧タービン2に供給することで、高温腐食を生じさせない温度の飽和蒸気V1を高圧タービン2に供給することができる。廃熱ボイラ1は、焼却炉と一体となったものや別置きタイプのものがある。大型のストーカ式ごみ焼却炉では、焼却炉の壁面まで水冷壁を下した構造の一体型廃熱ボイラが一般的である。
【0025】
高圧タービン2では、蒸気タービンの下限限界乾き度付近まで乾き度が下がるように仕事がなされる。具体的には、高圧タービン2の出口での蒸気の乾き度は、0.88以上とされる。
【0026】
高圧タービン2を出た蒸気V2は、除湿器3において除湿され、再熱器4へ流れる。除湿器3は、高圧タービン2から排気された蒸気V2を、好ましくは乾き度99%以上、より好ましくは乾き飽和蒸気(乾き度100%)になるまで除湿することができる。除湿器3としては、例えばベーンセパレータタイプの除湿器を採用することができる。
【0027】
除湿器3で除湿された蒸気V3は、再熱器4においてごみ焼却の燃焼排ガスGによって加熱され、高温腐食を生じさせない温度の過熱蒸気V4とされる。高温腐食は330℃を超えると活発になるため、過熱蒸気V4は330℃未満、好ましくは320℃以下とされる。
【0028】
再熱器4は、ごみ焼却による燃焼排ガスGの温度が500℃~600℃の領域(煙道)に設置され得る。焼却炉(不図示)の出口付近の燃焼排ガス温度が一般的には850℃~1000℃程度であり、効率的な伝熱面積となるような排ガスの最低温度は500℃程度と考えられるからである。このような温度域(500℃~600℃)は、例えば廃熱ボイラの中間位置にある。焼却炉の燃焼排ガスは、再熱器4の入り口に至る過程で再熱器4の上流側の廃熱ボイラによって500~600℃程度まで冷却され、更に、再熱器4の下流側の廃熱ボイラによって200℃程度まで冷却される。ごみ焼却炉(図示せず。)は、従来公知のごみ焼却炉とすることがでる。燃焼排ガスの条件(HCl等の腐食成分が少ない等の条件)によっては、燃焼排ガスGの温度が700℃~850℃の温度域に再熱器4を設置することもできる。このような温度域(700℃~850℃)は、例えば焼却炉一体型の廃熱ボイラの高温部側の煙道にある。
【0029】
再熱器4は、減温装置(図示せず。)を備えることができ、減温装置により再熱器4の出口での過熱蒸気V3の温度を、高温腐食を生じさせない温度に制御することができる。減温装置は、従来公知の減温装置を採用することができ、例えば、蒸気中に給水をスプレーして温度を下げる様式、或いは、給水と熱交換して温度を下げる様式とすることができる。
【0030】
低圧タービン5から排気された蒸気は、復水器6で冷却して凝縮されて飽和水となり、復水タンク7に貯水される。復水タンク7に溜まったボイラ水は、復水ポンプ8によって脱気器9に送られ、酸素等の非凝縮性ガスが除去されて、給水ポンプ10によって廃熱ボイラ1に給水される。
【0031】
復水ポンプ8と脱気器9との給水経路11に給水ヒータ12を介在させることができ、低圧タービン5から抽気した蒸気により復水を加熱することができる。給水ヒータ12で復水を加熱した蒸気は、熱を奪われ凝縮して水となり、復水タンク7に送られる。
【0032】
高圧タービン2から排気された蒸気は、再熱器4に供給するほか、バルブ制御により、一部を温水器等の熱利用設備Hに供給した後に脱気器9に送り、他の一部をそのまま脱気器9に送ることができる。
【0033】
図1に示す例では、ごみ焼却のための焼却炉(図示せず。)は複数台(図示例は2台)設置され、複数台の前記焼却炉の其々に対して廃熱ボイラ1が設けられ、前記焼却炉の其々に対して設けられた複数台(図示例は2台)の廃熱ボイラ1からの飽和蒸気が合流して1台の高圧タービン2に供給されるように構成されている。また、複数台(図示例は2台)の廃熱ボイラ1の其々に対して再熱器4が設けられ、廃熱ボイラ1の其々に対して設けられた複数台(図示例は2台)の再熱器4からの過熱蒸気が合流して1台の低圧タービン5に供給されるように構成されている。このようにして、ごみ発電システムの蒸気サイクル経路を形成する前記蒸気経路及び前記給水経路に、複数台の廃熱ボイラ1及び再熱器4が並列に接続され得る。
【0034】
図2は、本発明に係るごみ発電システムの第2実施形態を示している。第2実施形態のごみ発電システムは、1つの車室内を高圧部と低圧部とに仕切ることにより高圧タービン2及び低圧タービン5が単車室内に収容されている点が、高圧タービンと低圧タービンとが其々の車室に設けられている2車室構造の上記第1実施形態と異なり、その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。第2実施形態では、単車室の蒸気タービンを組み合わせることにより、コストの低減化を図ることができる。
【0035】
図3は、本発明に係るごみ発電システムの第3実施形態を示している。第3実施形態のごみ発電システムは、高圧タービン2と低圧タービン5が別個に設けられ、其々に発電機GEが接続されている点が、上記第1実施形態及び第2実施形態と相違する。斯かる構成の第3実施形態は、新規建設時だけでなく、改造時にも適用できる。例えば、ボイラの交換を必要とする基幹改良工事において、既存の蒸気条件が3MPa、300℃級であれば、既存のタービンを低圧タービンに流用し、高圧タービンのみを新たに設置することで第3実施形態のごみ発電システムを構築することができる。
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、各例によって、限定されるものではない。
【0037】
実施例1として
図1に示す排ガス再熱方式を採用したごみ発電システムとし、比較例1として
図4に示す高温高圧方式のごみ発電システムとし、比較例2として
図5に示す蒸気再熱方式のごみ発電システムとした。
図4において符号SHは過熱器、符号Tは蒸気タービンを其々示す。
図5において、除湿器3を介した蒸気は、廃熱ボイラ1からの蒸気が供給される再熱器4’によって再熱されて低圧タービン5に供給されている。
【0038】
処理能力150トン/日のストーカ式ごみ焼却炉2炉を備え、ごみ発熱量12000kJ/kgの清掃工場について、実施例1、比較例1,2の3方式の比較を行った。廃熱ボイラ1は、自然循環ボイラとし、発電用火力設備の技術基準によるものとした。実施例1及び比較例2の除湿器3はベーンセパレータを備えるタイプとした。実施例1、比較例1,2において、復水器6は空冷式とし、飽和温度50℃、飽和蒸気圧力0.01235MPa・absとした。
【0039】
実施例1、比較例1、及び比較例2は、其々、下記表1の条件とした。
【0040】
【0041】
実施例1、比較例1、比較例2について、下記式により発電端効率η(%)を試算した。
【0042】
η=(3600ΣPn/nGrHu)×100
上式において、発電出力Pn(kW)、焼却炉数n、ごみ定格焼却量Gr=6250(kg/時/炉)、ごみ発熱量Hu=12000(kJ/kg)とし、Pnは各タービン毎に求めて加算した。各発電機の発電出力は、実施例1、比較例1,2の其々においてタービン廻りの熱量バランスを求め、その条件に基づいた発電出力をメーカー指定のタービン内部効率等により算定した。また、タービン出口蒸気の乾き度は0.9とした。試算した発電効率の結果を下記表2に示す。
【0043】
【0044】
表2の結果より、発電端効率は、比較例1>実施例1>比較例2であったが、比較例1と実施例1との差は0.36%であり、実施例1は比較例1と比較して遜色のない発電端効率を達成し得ることが分かる。
【0045】
図6は、実施例1、比較例1、比較例2の其々の蒸気状態変化を示す概念図である。
図6の蒸気状態変化を示す概念図において、実施例1、比較例1、比較例2の其々のA
1~3-B
1~3間の直線(タービン蒸気の状態変化線)の傾きの大きさは、比較例1>実施例1>比較例2となっており、この傾きはタービンの内部効率に直接関連する。
【0046】
図6の蒸気状態変化を示す概念図において飽和線(乾き度1.00)より下の湿り蒸気域では、タービンの湿り損失が大きくなり、タービンの有効熱落差は小さくなる。つまり、湿り領域に占めるエンタルピー差の割合が小さい比較例1では、タービンの内部効率が高くなり、発電端効率も高くなる傾向にある。
【0047】
実施例1では、比較例2に比べ湿り領域に占める割合が大きく減少している。実施例1が比較例2より、発電端効率が大きく上回っているのはそのためであり、比較例1の発電端効率に近づいた要因でもある。
【0048】
上記の結果より、本発明に係るごみ発電システムは、高温腐食のリスクを軽減しつつも蒸気再熱方式に比してごみ発電効率を高めることができる。
【0049】
上記実施例1においては
図1に示すように廃熱ボイラ1及び再熱器4を各2台備える構成としたが、
図7に示すように廃熱ボイラ1及び再熱器4を各1台のみ備える構成のごみ発電システムを実施例2とし、ごみ発電システム全体の負荷を変えて発電効率を試算し、比較した。
【0050】
実施例1ではごみ焼却炉が2炉であり、各炉に廃熱ボイラ1台を備える。実施例2はごみ焼却炉が1炉である。実施例1,2の比較条件をそろえるため、実施例2のごみ焼却炉1炉の処理能力は実施例1のごみ焼却炉1炉の処理能力の2倍とし、実施例2の廃熱ボイラの定格出力は実施例1の廃熱ボイラ1台の定格出力の2倍とした。比較結果を下記表3に示す。
【0051】
【0052】
表3に於いて、ごみ発電システム全体とは、焼却炉、廃熱ボイラ、再熱器、蒸気タービンを含む、発電を行うのに必要な全機器の総体をいう。
【0053】
表3において、ごみ発電システム全体の運転負荷を100%とした場合、実施例11,実施例21ともに、焼却炉および廃熱ボイラの運転負荷は100%(定格出力)の状態であり、システム全体の蒸気量100%、再熱器設置位置のガス温度域500~600℃であり、再熱後蒸気過熱度及び発電効率は実施例21をベースとした場合に実施例11も実施例21と同じとなる。
【0054】
表3において、ごみ発電システム全体の運転負荷を50%とした場合、実施例22では焼却炉および廃熱ボイラの運転負荷は50%(定格出力の1/2)で運転するが、実施例12では2台のうちの1台の焼却炉および廃熱ボイラを停止、すなわち、2炉のうちの1炉のごみ焼却炉へのごみ供給を停止して他の1炉のごみ焼却炉に全ごみ量を供給することで2台のうちの他の1台の廃熱ボイラの運転負荷は100%(定格出力)の状態となる。その結果、システム全体の蒸気量は実施例12,22ともにシステム全体の運転負荷100%の場合に比べて50%になるが、実施例22では燃焼排ガスの温度が実施例12に比して低くなり、再熱器設置位置の排ガス温度域が実施例12では500~600℃をキープしているが、実施例22では450℃~550℃に下がっている。そのため、実施例22は、再熱後の蒸気過熱度が低下し、実施例12に比して発電効率も低下している。
【0055】
実施例12と実施例22とで再熱器設置位置のガス温度域に差がでる理由は、次の通りである。ごみ発電システム全体の運転負荷50%の例として、ごみ量を50%とする場合について説明する。
【0056】
実施例12では、運転する焼却炉に全ごみ量を供給した場合、焼却炉および廃熱ボイラの運転負荷は100%であり、その時の燃焼排ガス量は定格排ガス量である。再熱器設置位置に至るまでの廃熱ボイラの伝熱面の大きさは定格排ガス量に対して所定の温度域(定格温度域)となるように設計される。そのため、運転する焼却炉の再熱器設置位置の排ガス温度域は定格温度域となる。
【0057】
これに対して実施例22では、焼却炉に供給されるごみ量が50%、すなわち、焼却炉および廃熱ボイラの運転負荷は100%であり、その時の燃焼排ガス量は定格排ガス量の1/2である。再熱器設置位置に至るまでの廃熱ボイラの伝熱面の大きさは定格排ガス量に対して所定の温度域(定格温度域)となるように設計されるため、1/2の燃焼排ガス量を定格温度域まで下げるのに必要な伝熱面の大きさより十分大きい伝熱面を通過した燃焼排ガスの温度は定格温度域より低くなる。
【0058】
表3では、廃熱ボイラが1台と2台の例を示したが、廃熱ボイラが3台の場合も同様である。廃熱ボイラを3台とした場合、すなわち焼却炉を3台とした場合の方が、廃熱ボイラ1台(焼却炉1台)のごみ発電システムに比べて、システム全体の負荷が低下した時には、発電効率が高くなり得る。例えば、システム全体の負荷が2/3以下(且つ1/3超)に低下した場合、廃熱ボイラ3台(ごみ焼却炉3台)のごみ発電システムでは、2台の焼却炉のみに均等に各々の運転負荷100%に相当するごみ量を供給し、廃熱ボイラ2台のみで運転した方が、廃熱ボイラ1台(焼却炉1台)に運転負荷100%に相当するごみ量の2/3を供給するごみ発電システムに比べて、発電効率が高くなる。また、システム全体の負荷が1/3以下に低下した場合、廃熱ボイラ3台(ごみ焼却炉3台)のごみ発電システムでは、1台の焼却炉のみに全てのごみを供給し、廃熱ボイラ1台のみで運転した方が、廃熱ボイラ1台(焼却炉1台)のごみ発電システムに比べて、発電効率が高くなる。
【0059】
このように焼却炉、廃熱ボイラ、及び再熱器を其々複数台備える場合には、ごみ発電システム全体の負荷の低下に応じて、複数台の前記焼却炉のうちの幾つかの焼却炉の稼働し、他の焼却炉の稼働を停止することにより、焼却炉及び廃熱ボイラを1台づつのみ備えるごみ発電システムに比して、発電効率が向上し得る。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 廃熱ボイラ
2 高圧タービン
3 除湿器
4、4’ 再熱器
5 低圧タービン
6 復水器
7 復水タンク
8 復水ポンプ
9 脱気器
10 給水ポンプ
G 燃焼排ガス
GE 発電機
SH 過熱器
T 蒸気タービン