(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】生地印刷用インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/04 20060101AFI20231027BHJP
C09D 11/14 20060101ALI20231027BHJP
D06P 1/34 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C09D11/04
C09D11/14
D06P1/34
(21)【出願番号】P 2019236841
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519406980
【氏名又は名称】金子 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】金子 和文
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-089988(JP,A)
【文献】特開平06-346380(JP,A)
【文献】特開平03-019985(JP,A)
【文献】特開2006-336164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
D06P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材と布海苔材と天然顔料材とから成り、前記大豆材と前記布海苔材と前記天然顔料材との割合が、大豆材:布海苔材:天然顔料材=35~45重量%:45~55重量%:5~15重量%に設定され
、前記天然顔料材として、煤と膠とを混合したものを採用したことを特徴とする生地印刷用インク。
【請求項2】
生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材と布海苔材と天然顔料材とから成り、前記大豆材と前記布海苔材と前記天然顔料材との割合が、大豆材:布海苔材:天然顔料材=35~45重量%:45~55重量%:5~15重量%に設定され、前記天然顔料材として、天然土を採用したことを特徴とする生地印刷用インク。
【請求項3】
生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材と布海苔材と天然顔料材とから成り、前記大豆材と前記布海苔材と前記天然顔料材との割合が、大豆材:布海苔材:天然顔料材=35~40重量%:50~55重量%:10~15重量%に設定され
、前記天然顔料材として、煤と膠とを混合したものを採用したことを特徴とする生地印刷用インク。
【請求項4】
生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材と布海苔材と天然顔料材とから成り、前記大豆材と前記布海苔材と前記天然顔料材との割合が、大豆材:布海苔材:天然顔料材=35~40重量%:50~55重量%:10~15重量%に設定され、前記天然顔料材として、天然土を採用したことを特徴とする生地印刷用インク。
【請求項5】
請求項1
~4いずれか1項に記載の生地印刷用インクにおいて、前記大豆材は、水を含浸させた大豆を絞って得られた大豆絞り汁であることを特徴とする生地印刷用インク。
【請求項6】
請求項1~
5いずれか1項に記載の生地印刷用インクにおいて、前記布海苔材は、水で煮込んだ布海苔であることを特徴とする生地印刷用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地印刷用インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣類の分野においても健康や環境に配慮された技術の研究・開発が進められており、例えば特開平8-109346号に開示される天然染料を用いたインク(以下、従来例)が提案されている。
【0003】
この従来例は、抽出された天然染料に、添加剤(植物性乾性油と、天然樹脂、天然樹脂誘導体若しくは合成樹脂の1種若しくは2種以上)と、溶剤(脂肪族炭化水素若しくはアルコール系の1種若しくは2種以上)と、可塑剤(タンニン、タンパク質若しくは炭化水素の1種若しくは2種以上)を添加したものであり、このインクを用いてプリントした衣類は、皮膚アレルギー等の障害を起こすことが防止され、また、このインクを製造する際に、人体に有害な物質が発生せず、更に、処分が困難な廃棄物が発生することが無いとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、前述したような健康や環境に優しいインクについて更なる研究・開発を進めた結果、従来にない実用的な生地印刷用インクを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3とから成り、前記大豆材1と前記布海苔材2と前記天然顔料材3との割合が、大豆材1:布海苔材2:天然顔料材3=35~45重量%:45~55重量%:5~15重量%に設定され、前記天然顔料材3として、煤と膠とを混合したものを採用したことを特徴とする生地印刷用インクに係るものである。
【0008】
また、生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3とから成り、前記大豆材1と前記布海苔材2と前記天然顔料材3との割合が、大豆材1:布海苔材2:天然顔料材3=35~45重量%:45~55重量%:5~15重量%に設定され、前記天然顔料材3として、天然土を採用したことを特徴とする生地印刷用インクに係るものである。
【0009】
また、生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3とから成り、前記大豆材1と前記布海苔材2と前記天然顔料材3との割合が、大豆材1:布海苔材2:天然顔料材3=35~40重量%:50~55重量%:10~15重量%に設定され、前記天然顔料材3として、煤と膠とを混合したものを採用したことを特徴とする生地印刷用インクに係るものである。
【0010】
また、生地に色や柄を印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3とから成り、前記大豆材1と前記布海苔材2と前記天然顔料材3との割合が、大豆材1:布海苔材2:天然顔料材3=35~40重量%:50~55重量%:10~15重量%に設定され、前記天然顔料材3として、天然土を採用したことを特徴とする生地印刷用インクに係るものである。
【0011】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の生地印刷用インクにおいて、前記大豆材1は、水を含浸させた大豆を絞って得られた大豆絞り汁であることを特徴とする生地印刷用インクに係るものである。
【0012】
また、請求項1~5いずれか1項に記載の生地印刷用インクにおいて、前記布海苔材2は、水で煮込んだ布海苔であることを特徴とする生地印刷用インクに係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したから、健康や環境に優しく、しかも、生地に印刷した際の風合いが良いなど、従来にない実用的な生地印刷用インクとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0016】
この本発明に係る生地印刷用インクは、大豆,布海苔及び天然顔料といった天然材料を原料とし、それらの配合割合が種々試した結果を基に適宜設定されているから、例えば衣類を構成する生地への印刷に使用した場合には、人体に優しく安心して着用することができるものであり、しかも、例えばインク製造時や洗濯時に色落ちして排水等で流れたとしても汚染等の心配はない。
【0017】
また、本発明は、天然材料ならでの風合いが得られ、しかも、従来にない適度な色落ちによる風合いも楽しめるものとなる。
【実施例】
【0018】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施例は、生地に色や柄を例えばスクリーン印刷や木版印刷など、適宜な印刷手段を用いて印刷するための生地印刷用インクであって、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3とから成り、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3との割合が、大豆材1:布海苔材2:天然顔料材3=35~45重量%:45~55重量%:5~15重量%に設定されたものである。
【0020】
以下、本実施例に係る構成各部について説明する。
【0021】
大豆材1は、後述する製造方法により製造され、大豆に含有されるタンパク質が生地へ印刷した際の該生地への定着成分としての機能を発揮する。
【0022】
布海苔材2は、後述する製造方法により製造され、前述した大豆材1と後述する天然顔料材3との結合を安定化せしめる増粘剤としての機能を発揮する。
【0023】
天然顔料材3は、黒色の天然顔料材3としては、松脂を燃焼させて(燻して)作った煤と膠とを混ぜて乾燥させた黒色顔料3a(天然有機顔料)が採用され、カラーの天然顔料材3としては、本実施例では、3種類の色(赤色顔料3b,緑色顔料3c及び黄色顔料3d)の天然土を焼いて石臼挽きされたもの(天然無機顔料)が採用される。
【0024】
尚、天然顔料材3は、上記のものに限らず、本実施例の特性を発揮するものであれば、その材や色など適宜採用し得るものである。
【0025】
以下、本実施例に係る生地印刷用インクの製造方法について説明する。
【0026】
大豆(国内産)を水に2~3日間浸けて含水させ(ふやかし)(
図1中A)、この水分を十分に含んだ大豆をすり潰して絞って、大豆の絞り汁から成る大豆材1を得る(
図1中B,C)。
【0027】
一方、乾燥布海苔(国内産)を水を入れた容器に入れて加熱して所定時間煮込んで布海苔材2を得る(
図1中D)。
【0028】
続いて、大豆材1(大豆の絞り汁)と布海苔材2(煮込んだ布海苔)を良く混ぜて混合物Xを得る(
図1中E)。
【0029】
続いて、この混合物Xを混ぜては濾すを複数回繰り返してペースト状の混合物Yを得る(
図1中F,G)。
【0030】
続いて、混合物Yに、天然顔料材3を混ぜてインクを作る。
【0031】
具合的には、混合物Yに黒色の天然顔料材3(黒色顔料3a)を混ぜて黒色インクK1が得られる(
図2中G,H,L)。
【0032】
一方、混合物Yにカラーの天然顔料材3(赤色顔料3b)を混ぜて赤色インクK2を得(
図2中G,I,L)、混合物Yにカラーの天然顔料材3(緑色顔料3c)を混ぜて緑色インクK3を得(
図2中G,J,L)、混合物Yにカラーの天然顔料材3(黄色顔料3d)を混ぜて黄色インクK4を得る(
図2中G,K,L)。
【0033】
本実施例では、前述したように各材料の配合割合として、大豆材1を35~45重量%とし、布海苔材2を45~55重量%とし、天然顔料材3を5~15重量%としている。
【0034】
本出願人は、種々試した結果、大豆材1と布海苔材2と天然顔料材3との割合を、大豆材1:布海苔材2:天然顔料材3=35~40重量%:50~55重量%:10~15重量%に設定した場合、生地へ印刷した際の定着性や風合い(その後の色落ちなど)が良いことを確認している。
【0035】
以上のように製造された本実施例に係る生地印刷用インクを、シルクスクリーン、手書き、木版等の手段により生地(衣類)へ印刷(プリント)し、続いて、印刷後は通気性の良い日陰場所で100日以上自然乾燥させ、続いて、この自然乾燥後に100℃の蒸気で約60分間、印刷した生地を蒸して生地への印刷が完成する。
【0036】
本実施例のインクによる印刷は、十分な定着度合であることを確認している。ただ、所謂化学性のインクに比し、定着度合は低いことは否めないが、この時間経過とともに薄れることがかえって微妙な風合いを呈し、本実施例のインクの特徴の1つとなる。
【0037】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来例にも増して健康及び環境に優しいものとなる。
【0038】
具体的には、本実施例は、材料は殆どが食べられる素材である為、例えば乳児や子供達が着る衣類に適用した場合に安全である(オーガニックコットン等との相性が良く、従来例に比して構成がシンプルで添加物が無い。)。
【0039】
また、本実施例は、印刷された衣類を着る人だけでなく、印刷する人への健康にも優しく、しかも、例えばインク製造時や洗濯時に色落ちして排水等で流れたとしても汚染等の心配はない。
【0040】
また、本実施例は、前述した健康や環境に優しいという他にも、天然材料ならでは色の深みやソフトな手触りがあるなど、商品価値の高いものとなる。
【0041】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0042】
1 大豆材
2 布海苔材
3 天然顔料材