IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社 大治の特許一覧

<>
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図1
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図2
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図3
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図4
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図5
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図6
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図7
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図8
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図9
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図10
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図11
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図12
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図13
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図14
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図15
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図16
  • 特許-回転体装置及び発電装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】回転体装置及び発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
F03D3/06 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022090070
(22)【出願日】2022-06-02
(65)【公開番号】P2023051721
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2021162098
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522478813
【氏名又は名称】有限会社 大治
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】中熊 純正
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3224427(JP,U)
【文献】特開2008-106622(JP,A)
【文献】特開昭60-022078(JP,A)
【文献】特開2002-371946(JP,A)
【文献】特開2002-155849(JP,A)
【文献】登録実用新案第3101541(JP,U)
【文献】特許第4705996(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3193286(JP,U)
【文献】特表2016-532803(JP,A)
【文献】特開2011-157951(JP,A)
【文献】特開2011-033019(JP,A)
【文献】特開2010-209786(JP,A)
【文献】特開2012-067742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心の周りに回転自在な主軸シャフトを備えて流体の力を受けて回転する回転体を備えた回転体装置であって、
前記回転体は、
前記主軸シャフトの軸心から放射方向に離間するとともに前記主軸シャフトの軸心を中心として旋回する偏心軸と、
前記偏心軸を中心として回転可能に設けられた帆部材と、
前記回転体装置に設けられたストッパと、を有し、
前記ストッパは、前記帆部材が前記偏心軸を中心とした所定の回転方向に回転すると、前記帆部材の一部が前記ストッパと当接して前記帆部材の前記所定の回転方向への回転を停止する位置に設けられ、
前記ストッパは、前記流体により前記帆部材にかかる圧力によって伸縮して前記帆部材が前記流体の圧力により前記偏心軸を中心として回転することを可能とする伸縮可能部材を有することを特徴とする、
回転体装置。
【請求項2】
軸心の周りに回転自在な主軸シャフトを備えて流体の力を受けて回転する回転体を備えた回転体装置であって、
前記回転体は、
前記主軸シャフトの軸心から放射方向に離間するとともに前記主軸シャフトの軸心を中心として旋回する偏心軸と、
前記偏心軸を中心として回転可能に設けられた帆部材と、
前記回転体装置に設けられたストッパと、を有し、
前記ストッパは、前記帆部材が前記偏心軸を中心とした所定の回転方向に回転すると、前記帆部材の一部が前記ストッパと当接して前記帆部材の前記所定の回転方向への回転を停止する位置に設けられ、
前記ストッパは、前記流体により前記帆部材にかかる圧力によって伸縮して前記帆部材が前記流体の圧力により前記偏心軸を中心として回転することを可能とする伸縮可能部材を有し、
前記帆部材は、前記主軸シャフトの一端側から放射方向に延びる第1主軸フレームと、前記主軸シャフトの他端側から放射方向に延びる第2主軸フレームとに回転自在に設けられており、
前記帆部材は、可撓性を有する、
回転体装置。
【請求項3】
前記回転体はユニット化されており、前記回転体に、他の回転体を、前記軸心同士が同軸となるか、または、前記軸心同士が平行となるように着脱自在に結合可能である、
請求項1又は2に記載の回転体装置。
【請求項4】
前記ユニット化された回転体は、前記他の回転体を、前記軸心同士が同軸となり、かつ、各回転体が一体となって回転可能であるように、前記軸心方向に着脱自在に結合するための結合部を有する、
請求項に記載の回転体装置。
【請求項5】
前記ユニット化された回転体は、前記他の回転体を、前記軸心同士が平行となり、かつ、各回転体が一体となって回転可能であるように、前記軸心と垂直な方向に着脱自在に結合するための結合部を有する、
請求項に記載の回転体装置。
【請求項6】
前記帆部材は可撓性を有し、前記流体により、前記流体の進行方向側に膨らんだ形状となるように変形可能に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の回転体装置。
【請求項7】
前記主軸シャフトの一端側から放射方向に延びる第1主軸フレームと、前記主軸シャフトの他端側から放射方向に延びる第2主軸フレームとを有し、前記偏心軸は、前記第1主軸フレームと前記第2主軸フレームとの間で前記主軸シャフトと略平行にかつ前記偏心軸の軸心を中心として回転可能に支持されることを特徴とする、
請求項1に記載の回転体装置。
【請求項8】
前記帆部材は、前記回転可能に支持された前記偏心軸に固定されており、かつ、前記偏心軸から前記主軸シャフト側にある前記帆部材の面積は、前記帆部材全体の面積の60%以上でかつ90%以下の範囲である、
請求項に記載の回転体装置。
【請求項9】
前記帆部材は、多角形の形状を有し、かつ、前記帆部材の前記面積は、前記主軸シャフト、前記偏心軸、前記第1主軸フレーム及び前記第2主軸フレームで形成される領域よりも小さいことを特徴とする、
請求項に記載の回転体装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載された回転体装置と、前記主軸シャフトの回転力を電気エネルギーに変換する発電部とを備えるとともに、船舶に搭載されて用いられる発電装置であって、
前記回転体は、前記船舶が水上にあるときに少なくともその一部が水面下に位置するように前記船舶に搭載される、発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風や水などの流体の力を受けて回転する回転体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電あるいは海流発電等の発電システムに用いられる回転体が知られている。例えば、風を受ける面に窓をつけ、風が回転を妨げる方向では窓が開き、風が回転を推進する方向では窓が閉じて風による推進力を受けるようにした回転体が知られている。特許文献1には、そのような回転体として、枠体のロータと、その一部を塞ぐ風受け板を有するものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、風を受けたときの帆部材の振動を抑える垂直型回転体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3098761号
【文献】実用新案登録第3224427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような回転体では、風が回転を妨げる方向において窓が開いている状態でも窓以外の部分では風を受けてしまうことから回転効率が悪くなるおそれがあり、回転効率の向上が求められている。また、特許文献1に記載された回転体では、風受け板が四角形状であることから、風を受けたときに角部分が振動してスムーズな回転が困難になるおそれがある。
【0006】
特許文献2に記載された回転体では、略三角形状の帆部材によって略四角形状の開口部の一部を塞ぐ構成とすることで風による帆部材の振動を抑制している。しかしながら、回転体の回転力を電気エネルギーに変換する場合など、大きな回転力が必要とされる用途では、更なる回転力の向上が求められている。
【0007】
本発明は上記背景の下になされたものであり、流体から推進力を受けて回転する回転体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転体装置は、軸心の周りに回転自在な主軸シャフトを備えて流体の力を受けて回転する回転体を備えた回転体装置であって、前記回転体は、前記主軸シャフトの軸心から放射方向に離間するとともに前記主軸シャフトの軸心を中心として旋回する偏心軸と、前記偏心軸を中心として回転可能に設けられた帆部材と、前記回転体装置に設けられたストッパと、を有し、前記ストッパは、前記帆部材が前記偏心軸を中心とした所定の回転方向に回転すると、前記帆部材の一部が前記ストッパと当接して前記帆部材の前記所定の回転方向への回転を停止する位置に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体からの力により回転する回転体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】回転体を風上側から見た概略側面図。
図2】回転体を図1の矢線A1方向から見た概略側面図。
図3】回転体を複数備えた回転体装置を用いた垂直型風力発電機の説明図。
図4】主軸シャフトの取り付け構造を示す一部断面図。
図5】垂直型風力発電機の構成および動作を示す説明図。
図6】帆部材の取り付け構造を示す一部断面図。
図7】当接部の具体的な構成の説明図。
図8図7のA2-A2線に沿う断面図。
図9】可撓性を有する材質で帆羽を製造した場合における帆羽の形状の変化の説明図。
図10】主軸フレームと帆部材との間のバネによって帆部材に反時計回りの回転力をかける構成の説明図。
図11】ストッパに伸縮可能部材を設けた構成の説明図。
図12】(a)、(b)は、回転体101の帆部材の形状の説明図。
図13】帆部材の他の構造例の斜視図。
図14】(a)~(c)は、回転体が軸心に対して垂直な方向に着脱自在に結合された形態での回転体装置の説明図。
図15】回転体装置の平面図。
図16】垂直型風力発電機を水素製造充填貯蔵設備に応用した例の説明図。
図17】海流発電設備の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、本発明にかかる回転体は、風力や淡水、海水等の任意の流体により回転可能であるが、以下の実施形態ではその一例として風力により回転し、その回転力を発電機により電気エネルギーに変換して利用する例を示す。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態に係る回転体装置10を構成する複数の回転体101のうちの1つを風上側から見た概略側面図、図2は回転体101を図1の矢印A1方向から見た概略側面図、図3は回転体101を2つ備えた回転体装置10を用いた風力発電機1の説明図である。なお、この例では、図1、2の回転体装置10において回転体101を増設することで、回転体101を2つ備えたものとした。しかし、風力発電機1は、図1、2のように回転体101を1つのみ有するものとしてもよく、あるいは、回転体101を3つ以上備えるようにしてもよい。図4は主軸シャフト11の取り付け構造を示す一部断面図、図5は、風力発電機1の構成および動作を示す平面図である。なお、図3において回転体101は垂直型回転体とした。
【0013】
図1及び図2に示すように、回転体101は、円柱状の主軸シャフト11を有し、主軸シャフト11は、その中心軸を軸心として回転可能である。回転体101の主軸シャフト11の上端には第1の主軸フレーム部12が、下端には第2の主軸フレーム部13が設けられている。主軸フレーム部12は、4本の主軸フレーム121、122、123、124を有している。4本の主軸フレーム121、122、123、124は、主軸シャフト11を軸として、水平面内で互いに90度の向きとなるように一体に設けられている。図1において、主軸フレーム121は主軸シャフト11から紙面右方向に、主軸フレーム122は主軸シャフト11から紙面奥行き方向に、主軸フレーム123は主軸シャフト11から紙面左方向に、主軸フレーム124は主軸シャフト11から紙面手前側方向に延びている。図1において、帆部材14は紙面に平行で、帆部材15~17は紙面に垂直である。また、図2においては、帆部材14は紙面に垂直で、帆部材15、16、17は紙面に平行である。なお、回転体101を複数備える場合、各回転体は、その軸心が同軸となるようにそれぞれの主軸シャフトが結合可能とされる。また、回転体101をユニット化して、任意の数の回転体101を、軸心を同軸として容易に回転体装置10に着脱自在としても良い。
【0014】
一方、主軸フレーム部13は、4本の主軸フレーム131、132、133、134を有している。4本の主軸フレーム131、132、133、134は、主軸シャフト11を軸として、水平面内で互いに90度の向きとなるように一体に設けられている。図1において、主軸フレーム131は主軸シャフト11から紙面右方向に、主軸フレーム132は主軸シャフト11から紙面奥行き方向に、主軸フレーム133は主軸シャフト11から紙面左方向に、主軸フレーム134は主軸シャフト11から紙面手前側方向に延びている。このとき主軸フレーム131は上側の主軸フレーム121と、主軸フレーム132は主軸フレーム122と、主軸フレーム133は主軸フレーム123と、さらに主軸フレーム134は主軸フレーム124とそれぞれ対向するように形成されている。
【0015】
図1に示すように、主軸フレーム121の端部の支持部121aおよび主軸フレーム131の端部の支持部131aの間には、帆部材14が設けられている。帆部材14は、主軸フレーム121に対して放射方向に離間して偏心された、偏心軸であるシャフト141と、シャフト141に固定された2本のフレーム144、145と、これらフレーム144、145に取り付けられた帆羽142と、当接部143とを有している。帆部材14は、シャフト141とフレーム144、145によって、風を受ける部分がほぼ三角形状に形成されている。
【0016】
ここで、フレーム144、145は、ほぼ同じ長さに形成されているが、異なる長さであっても問題はない。図2では帆部材14が紙面に垂直になっており、その一方で他の帆部材15~17は紙面に平行になっている。図1及び図2に示されるように、本実施形態では、帆部材14~17は同一形状となっている。しかし、これに限らず、帆部材14~17の形状を、少なくとも1つの帆部材が他の帆部材とは異なる形状としてもよく、あるいはすべての帆部材をそれぞれ異なる形状とすることも可能である。帆羽142は、剛性を有する部材で形成されてもよいが、本実施形態では、可撓性を有する材質である帆布で形成した。また、帆羽142は、風力を受けると変形し、風の進行方向に膨らむよう湾曲可能に設けられている。しかし、説明を簡素化するために、図1~3では、風による変形については図示せず、帆羽142は平面をなすものとして示されている。
【0017】
図3に示されるように、垂直型風力発電機1は、支持台20、支持台20上に設けられた回転体装置10、トルクコンバータ22、発電機23、制御部51及び風力計52を有する。回転体装置10は、それぞれ主軸シャフト11が同軸となって一体に回転するように設けられた2つの回転体101a、101bを有する。なお、これら回転体101a、101bを区別する必要がない場合には、単に回転体101と記載する。この例では、2つの回転体101a、101bは、単一の主軸シャフト11を共有するものとした。しかし、回転体101a、101bのそれぞれをユニット型の構造として、それぞれの主軸シャフト11を、その軸心が同軸となるように互いに係合し、2つの軸心が一体となって回転するように固着することで任意の数の回転体101により回転体装置10を構成するようにしてもよい。
【0018】
風力計52は、垂直型風力発電機1の周囲の風力及び風向を検出する。トルクコンバータ22は、主軸シャフト11の回転速度検出機能を有しており、回転速度検出手段として動作する。制御部51は、風力計52で検出された風力とトルクコンバータ22で検出された主軸シャフト11の回転速度とに応じて、後述するストッパ111~114のそれぞれについて、その位置を制御する。この制御の詳細は後述する。このように複数の回転体101を設けることを可能とし、回転体装置10に大きな回転力が求められる場合には、回転体101の数を増加させることで、回転体101の数に応じて回転力を大きくすることが可能である。一方、回転体101の数を少なくすることで、回転体装置10の製造コストを抑えることができる。従って、必要とされる回転力に応じて適切な回転力を有してかつ製造コストを抑えた回転体装置10を提供することができる。
【0019】
また、各回転体101をユニット化し、それぞれの主軸シャフト11の軸心が同軸となるように結合して互いに固定することで、任意の数の回転体101を主軸シャフト11の軸心方向に増設することができる。特に、各回転体101をそれぞれ共通の構成を有するようにユニット化することで、製造コストを下げることも可能である。また、回転体101に、主軸シャフト11の軸心同士が同軸となり、かつ、各回転体101が一体となって回転可能であるように他の回転体を主軸シャフト11の軸心の方向に着脱自在に結合するための結合部を設けてもよい。
【0020】
以下、その例を説明する。図3に示される回転体101a、101bにおいて、支持台20側(主軸フレーム121~124が配置された側)を上側、その反対側(主軸フレーム131~134が設けられた側)を下側とする。図示される2つの回転体101a、101bは同じ構成を有しており、主軸シャフト11の上側端部は、所定の形状の凹部、例えば十字型の凹部を有する。一方、主軸シャフト11の下側端部(主軸フレーム131~134側の端部)は、前述した所定の形状に対応する凸部、例えば十字型の凸部を有する。これにより、図3において、回転体101a、101bの主軸シャフト11は一体となって回転する。また、回転体101a、101bをより強固に結合するために、各回転体101a、101bの上側に位置する主軸フレーム121~124の上側の面に所定の形状の凹部、例えば主軸フレームの長手方向に延びる溝状の凹部を設けてもよい。この場合、各回転体101a、101bの下側に位置する主軸フレーム131~134の下側の面に、前述した所定の形状に対応する凸部、例えば溝状の凸部を設ける。これにより、図3において、各回転体101a、101bの主軸フレーム121~124は、対応する主軸フレーム131~134と一体となって回転する。これらの例では、主軸シャフト11、及び主軸フレーム121~124及び131~134は、ユニット化された回転体101a、101bが一体となって回転可能であるように、回転体101a、101bを主軸シャフト11の軸心の方向に着脱自在に結合するための結合部となる。
【0021】
図4に示すように、これら支持台20に接して設けられた回転体101の主軸シャフト11の下端部110は、支持台20の円筒状の支持部211内に挿入され、ベアリング212およびベアリング213を介して回転自在に取り付けられている。この主軸シャフト11の下端部110は、図3に示すように、支持台20内に設けられたギア21と連結され、さらにギア21を介してトルクコンバータ22および発電部としての発電機23と連結されている。なお、この例では回転体101を2つ設けるようにしたが、3つ以上設けてもよい。
【0022】
図5に示すように、各帆部材14、15、16及び17は、それぞれ主軸フレーム121、122、123及び124に回転自在に設けられている。
図6は帆部材14の取り付け構造を示す一部断面図である。支持部121aと支持部131aとの間には帆部材固定用シャフト121bが連結されており、この帆部材固定用シャフト121bにベアリング141a等を介して帆部材14の円筒状のシャフト141が回転自在に設けられている。また、シャフト141は、主軸シャフト11を中心として主軸シャフトと共に旋回する。
【0023】
シャフト141とフレーム144、145の間には、帆羽142が、例えばシャフト141とフレーム144、145の内側部に形成された穴144aなどに図示しない紐等を介して結び付けられている。ここで、帆羽142は、ビニール、プラスチック繊維、布等からなる。また、フレーム144、145は、軽量鋼、ロープもしくは帯鋼等で構成される。
【0024】
フレーム144、145の接続部分であり、三角形状の一つの頂点となる部分には、当接部143が形成されている。図7は当接部143の具体的な構成を示す図であり、図8図7のA2-A2線に沿う断面図である。主軸シャフト11の側面には、ストッパ111が設けられている。ストッパ111は、その内側面111xが凹状に形成されている。ストッパ111は、帆部材14が所定方向から風を受けて回転したときに、帆部材14の当接部143が内側面111xに当接する位置および形状に形成されている。このような回転体装置10には、主軸シャフト11、主軸フレーム121、131、およびシャフト141によって、開口部S1が形成される。また、ストッパ111は、主軸シャフト11に対して放射方向に移動可能であり、当接部143が当接可能となるように主軸シャフト11から突出した当接位置(第1位置)と、主軸シャフト11内に収容されて帆部材14が回転しても当接部143と当接しない非当接位置(第2位置)とをとることができる。
【0025】
例えばストッパ111を移動させるためには任意の構成を用いることができ、例えばストッパ位置変更手段として電磁開閉器を用いてその動作を制御部51により制御することで、ストッパ111の位置を当接位置と非当接位置との間で移動させて、その位置を変更させることが可能である。特に、当接位置をON状態、非当接位置をOFF状態として、ストッパ111のON・OFF制御を行うことで、帆部材14をストッパ111と当接させて固定するか、あるいは、帆部材14がストッパ111と当接せず、固定されない状態とするかを制御することができる。他のストッパ112~114についても同様であり、制御部51は、ストッパ位置制御手段として電磁開閉器を制御し、これらストッパ111~114を個別に移動させてその位置を制御することが可能である。
【0026】
なお、ストッパ111~114は、後述するように、当接部143~173と当接することで帆部材14の回転を止めるように回転体装置に設けられたものであればよく、必ずしも主軸シャフト11に設けなくてもよい。例えば、ストッパ111について説明すると、主軸フレーム121と主軸フレーム131との間に、主軸シャフト11の近傍に主軸シャフト11とほぼ平行な支柱部を設け、この支柱部にストッパ111を設けても良い。他のストッパ112~114についても同様である。
【0027】
他の帆部材15、16、17は、帆部材14と同じ形状を有しており、シャフト151が主軸フレーム122および132間に、シャフト161が主軸フレーム123および133間、シャフト171が主軸フレーム124および134間にそれぞれ回転自在に取り付けられている。また、帆部材15は帆羽152および当接部153、帆部材16は帆羽162および当接部163、帆部材17は帆羽172および当接部173をそれぞれ有している。主軸シャフト11の側面には、等間隔をおいてストッパ112、113および114が設けられており、それぞれ対応する当接部153、163および173が当接する位置および形状に構成されている。
【0028】
このような回転体装置10には、主軸シャフト11、主軸フレーム122、132、およびシャフト151によって開口部S2が、主軸シャフト11、主軸フレーム123、133、およびシャフト161によって開口部S3が、主軸シャフト11、主軸フレーム124、134、およびシャフト171によって開口部S4がそれぞれ形成される。なお、帆部材15、16および17の具体的な構造は帆部材14とほぼ同じなので、詳しい説明は省略する。また、開口部S1~S4を区別する必要がない場合には、これらを単に開口部Sと記載する。
【0029】
次に、このような構成の垂直型風力発電機1の動作について説明する。
図1図2及び図5を参照すると、風が正面側から奥に向かって吹いた場合、帆部材は、帆部材14として示されるように、風により時計回りの回転方向に力を受け、その帆部材14の当接部143がストッパ111に当接する。これにより帆部材14は時計回りの方向への回転が阻止される。その結果、回転体装置10の回転体101には、帆羽142にかかる風の力を受けて図面の反時計回りに回転する力が生じる。図示される帆部材15の位置では、図中の帆部材15の軌跡に示されるように、帆部材15は風により反時計回りに回転する力を受けてシャフト151を軸にして反時計回りに回転を開始し、風と平行になった状態で停止する。図示される帆部材15の位置を通過し、更に帆部材16の位置を通じて帆部材17の位置に達するまでは、図中に帆部材16の軌跡として示されるように、帆部材16は風に抵抗する向きに移動する。この間は、帆羽162は風と平行の向きを維持したまま回転する。
【0030】
このとき、開口部S3は完全に開放されるため、風の抵抗を受けることがない。よって、より効率の良い回転動作が可能となる。図示される帆部材17の位置を通過すると、帆部材14に示されるように、帆部材には風により時計回りに回転する力を受け、その帆羽142の当接部143が再度ストッパ111に当接する。
このように、主軸シャフト11の一部に設けられたストッパ111によって帆部材14の回転を止めるようにしたので、帆部材14の横幅を開口部S1~S4の横幅とほぼ同じにできる。これにより、簡単な構造でありながら風を受ける帆の面積を簡単に大きくでき、微風でも一定量の風力を受けるができる。また、帆部材14の回転の周端部分を、当接部143を頂点とする三角形状に形成したので、従来の四角形状のものと比較して風による振動が防止できる。これにより、さらに効率の良い回転動作が可能となり、高い発電効率を得ることができる。他の帆部材15~17についても同様である。
【0031】
次に、制御部51によるストッパ111~114の制御について説明する。制御部51は、検出された風力が第1風速値より大きい場合にはストッパ111~114の一部を非当接位置とする。これにより、風により推進力を得る帆部材14の枚数が減るので、回転体装置10の回転体101を回転させつつも、その回転推進力を減少させ、回転体101が過度に高速に回転することによる故障を防ぐことができる。また、制御部51は、第2風速値を第1風速値よりも大きい風速値として、検出された風力が第2風速値よりも大きい場合には、すべてのストッパ111~114を非当接位置とする。これにより、台風等の暴風時には回転体装置10の回転体101が回転しないようにして故障を防ぐようにストッパ111~114の制御を行う。これらの制御は、各ストッパ111~114のそれぞれについて個別に行うが、回転体101ごとに制御を行うようにしてもよい。例えば図3の紙面において下方にある回転体101のストッパ111~114については上記の制御を行い、紙面の上方にある回転体101については上記の制御を行わないようにしてもよい。
【0032】
また、制御部51は、トルクコンバータ22で検出された主軸シャフト11の回転速度に応じてストッパ111~114の位置を制御することもできる。この場合も、制御部51は、検出された回転速度が第1回転速度値より大きい場合にはストッパ111~114の一部を非当接位置とする。これにより、回転体装置10の回転体101が過度に高速に回転することによる故障を防ぐことができる。また、制御部51は、検出された風力が第1回転速度値よりも大きい値である第2回転速度値よりも大きい場合には、すべてのストッパ111~114を非当接位置とする。これにより、台風等の暴風時には回転体101が回転しないようにして故障を防ぐ。また、制御部51は、主軸シャフト11の回転速度が一定となるように制御を行うこともできる。この場合、制御部51は、主軸シャフトの回転数が目標値を超えた場合にはストッパ111~114の少なくとも1つを非当接位置とし、かつ、目標値よりも低くなった場合には、非当接位置にあるストッパのうち少なくとも1つを当接位置とする。これにより、回転体装置10の回転速度が目標値に近づくように制御を行うことができる。
【0033】
また、何らかの原因により、図1において帆部材14だけでなく、帆部材16もまた紙面と平行となってその当接部163がストッパ113と当接することも起こりえる。この場合、帆部材14と帆部材16とにおいて、大きさが同じで互いに打ち消し合う方向の回転力が発生し、回転体装置10の回転体101が回転しないという異常状態になるおそれがある。また、その他の原因により、風速が回転体101を回転させるに十分大きく、かつ、ストッパ111~114がいずれも当接位置にあるにもかかわらず、回転体101が回転しないという異常状態になる場合もあり得る。
【0034】
そこで、本実施形態では、制御部51は、ストッパ111~114がいずれも当接位置にあって、検出された風力が回転体101を回転させるために必要な値である第3風速値よりも大きく、かつ、検出された回転速度値が所定の値よりも小さい場合(異常状態)には、第1復帰動作を実行する。第1復帰動作では、制御部51はストッパ111~114をすべて非当接位置とし、その後、ストッパ111をすべて当接位置とする第1復帰動作を実行する。これにより、帆部材14と帆部材16とをともにそれぞれのストッパ111、113に当接させないようにして、上記のような異常状態を解消することができる。また、例えば帆部材14に異物が絡みついた場合などにおいて、帆部材14の当接部143がストッパ111に当接しない状態とすることで、異物を除去することも可能である。
【0035】
あるいは、制御部51は、上述の異常状態において、第1復帰動作に代えて、他の復帰動作である第2復帰動作を実行してもよい。第2復帰動作では、ストッパ111~114のうち1つ、例えばストッパ111を非当接位置とし、これにより帆部材14が回転するに十分な時間が経過した後に再度当接位置に戻す。そして、検出された回転速度値が上昇して前述した所定の値よりも大きくなった場合には、異常状態が解消されたとして、復帰動作を終了する。その他の場合には、制御部51は、順次他のストッパ112~114についても同様の動作を実行し、検出された回転速度値が所定の値よりも大きくなって異常状態が解消された場合には復帰動作を終了する。
【0036】
このように、制御部51は、検出された風速値と回転速度の一方あるいは両方に基づいて、回転体装置10における回転体101の過度の回転を防止して故障を防ぐ、回転体101の回転速度を目標値に近づけるように制御する、回転体装置10の回転体101が回転しない異常状態を解消する等の、多様な制御を行うことができる。
【0037】
図9は、可撓性を有する材質で帆羽を製造した場合における帆羽の形状の変化の説明図である。なお、図中では帆部材14を例にとって説明するが、帆部材15、16及び17についても同様である。また、図中に矢印で示されるように、風は紙面において下方へと向かっている。図9に示されるように、帆羽142は、可撓性を有する帆布製であるので変形可能であり、風の進行方向に向かって膨らむように変形する。図9において、帆部材14が位置901を通過して及び位置905に至るまでは、帆部材14には、風力によって、シャフト141を中心として時計回りの回転力が発生し、帆部材14は図1に示したストッパ111に当接している。その結果、回転体装置10には、主軸シャフト11を中心とした反時計回りの回転力が発生する。
【0038】
一方、位置905を過ぎると、位置906、907に示されるように帆羽142は風力によって反時計回りの回転力が発生し、帆部材14はシャフト141を中心としてほぼ半回転する。位置907~位置909の間において、シャフト141は紙面の右方向に進むので、帆羽142は空気の抵抗と、紙面下方へと向かう風力により紙面の左向きに膨らむ。また、位置909から位置901に到達するまでは、帆部材14は、位置909で左側に膨張した状態で紙面下方への風力を受けている。従って、帆部材14は、風の方向とほぼ平行で、かつ帆部材14が左側に膨張した状態を維持して位置901に到達する。位置905~位置901に至るまでは、帆部材14はストッパ111に当接しておらず、また、風の方向とほぼ平行になっているので、回転体装置10に対して主軸シャフト11を中心とした回転力は殆ど発生しない。なお、帆羽142は、風による破損等を防ぐための強度が得られるのであれば任意の材質で形成可能である。また、帆羽142は剛性部材としてもよいが、例えばヨット等に用いられる帆のように柔軟性を有する素材を用いてもよい。ヨットの帆のような既存の製品を用いることで、本実施形態における回転体装置10の製造コストを低くすることも可能である。
【0039】
なお、本実施形態では、4枚の帆部材を設ける構成を示したが、これに限られることなく、例えば帆部材を3枚~6枚にしてもよく、あるいは7枚以上の帆部材を用いる構成としてもよい。また、上記説明では風力について説明したが、本発明は、淡水、海水等の水力を含めた任意の流体についても同様に適用可能である。
【0040】
次に本発明の第1変形例を示す。図10は、シャフト141に固定されたラチェット機構としてのバネ146によって帆部材14にシャフト141を中心とした反時計回りの回転力をかける構成の説明図である。上述のように帆部材は時計周りの回転方向に力を受けるが、バネ146はこれとは逆回転方向である反時計回りに帆部材14を付勢する付勢部となる。図中では帆羽142を例にとって説明するが、帆羽152、162及び172についても同様である。図示の例では、帆部材14には、バネ146によって紙面上で右斜め上方向に向かう支持力Sが発生し、帆部材14に反時計回りの回転力がかけられていることが示される。一方、帆部材14は、バネ146による付勢力がない状態では、図中において矢線で示される風の進行に平行となる位置で安定する。従って、バネ146によって、帆部材14は風の進行方向に対して鋭角をなす。この鋭角は、図中において角度αとして示されている。
【0041】
また、帆部材14は上述のように左側に膨らんでおり、ベルヌーイの定理により、帆部材14には紙面上で帆部材14に垂直で左下方向に向かう揚力Lが発生する。これにより、図示されるように、支持力と揚力との合力として紙面上で左斜め上方向に向かう推進力Fが発生する。この推進力が得られる結果、回転体装置10の回転体101に対して、主軸シャフト11を中心として反時計回りの回転力が発生する。以上のことから、バネ146は、風の進行方向に対して鋭角をなすように帆部材14を付勢し、その結果主軸シャフト11を中心として反時計回りの回転力が発生して回転体101の回転力に寄与していることがわかる。
【0042】
第1実施形態では、上述のように、位置907~位置910に至るまでは、回転体装置10に対して主軸シャフト11を中心とした回転力は殆ど発生しない。しかしながら図10に示される変形例では、回転体装置10に対して主軸シャフト11を中心とした反時計回りの回転力が発生するので回転効率が向上するという利点が得られる。
【0043】
次に本発明の第2変形例を示す。図11は、ストッパ111に伸縮可能部材を設けた構成の説明図である。なお、図中では帆部材14及びストッパを例にとって説明するが、他の帆部材15~17及びそのストッパ112~114についても同様である。図示されるように、ストッパ111は、伸縮性を有する伸縮可能部材としての張力調整ワイヤー111bと、ストッパ係合部111aとにより構成される。ストッパ係合部111aは、帆部材14を支持するに十分な強度があればよいが、例えば強度を高くするために金属製の金具としてもよい。張力調整ワイヤー111bは、風力が一定値を超えると延伸して帆部材14がシャフト141を中心として時計回りに回転し、帆部材14にかかる圧力である風圧が弱くなる。この張力調整ワイヤー111bにより、前記帆部材にかかる風圧によって張力調整ワイヤー111bが伸縮して帆部材14が風圧によりシャフト141を中心として回転することが可能となる。詳細には、無風時及び弱風時には張力調整ワイヤー111bは短縮状態となり、ストッパ係合部111aは図中にAで示される主軸シャフト11に近接した位置にある。この状態で、当接部143はストッパ係合部111aと係合してシャフト141を中心とした時計回りの回転が阻止される。
【0044】
一方、強風時においては帆部材14にかかる風圧は大きくなり、風圧が一定値を超えるとストッパ111の張力調整ワイヤー111bは延伸状態となり、ストッパ係合部111aは、例えば図中Bで示される位置となる。この状態でも帆部材14がストッパ111に当接して時計回りの回転が阻止されるように、この変形例では当接部143とストッパ係合部111aとは、張力調整ワイヤー111bが短縮状態であっても延伸状態であっても互いに係合して当接が維持されるようになっている。図示の例では、当接部143はL字型になっており、ストッパ係合部111aはコの字型となっている。
【0045】
張力調整ワイヤー111bが延伸した結果、帆部材14は風向きに対して平行に近づくように回転し、帆部材14にかかる風圧が弱められる。これにより、強風時には帆部材14にかかる風圧を弱めることができ、主軸シャフト11が過度に高速に回転することによる故障を防ぐことができる。また、風速が大きくなるにつれて張力調整ワイヤー111bの延伸量も大きくなり、帆部材14は風向きに対して一層平行に近づいて風圧が弱くなるので、主軸シャフト11が過度に高速に回転することが防がれる。この構成によれば、制御部51や風力計52が不要でかつ主軸シャフト11の回転速度の検出を行うことなく風速に応じて間隙部の大きさを調整し、回転体装置10における回転体101の回転を維持して発電を行いつつ、回転速度が過度に大きくなることに起因する故障を防ぐことができる。
以上のように、ストッパ111は、そのストッパ係合部111aの位置を変更可能とすることができる。
【0046】
次に本発明の第3変形例を示す。図12(a)、(b)は、回転体101の帆部材の形状の説明図である。図1図3の例では、帆部材14の形状は三角形とし、かつ、偏心軸であるシャフト141に三角形の一辺が位置し、その一辺を中心にして帆部材14が回転するものとした。しかし、帆部材14の形状は、三角形に限らず、4角形、5角形等の任意の多角形としてもよい。また、多角形は正多角形であっても、不等辺多角形であってもよい。更に、帆部材14を楕円形等の曲面形状としてもよい。このように、帆部材14の形状は、主軸フレーム121等の部材と帆部材14とが干渉することなくシャフト141を中心に回転できるものであればよい。
【0047】
図12(a)に示されるように、帆部材14の形状を略五角形として、シャフト141が帆部材14の内部に位置するようにしてもよい。また、図12(b)に示すように、帆部材14を略三角形状として、シャフト141が帆部材14の三角形の内部に位置するようにしてもよい。このように、図1図3に示される回転体装置10の例では、帆部材14はその全体が実質的に開口部S内部に位置するが、第3変形例では、図示されるように帆部材14の一部は開口部S外にある。
【0048】
帆部材14の開口部Sの外部(図中においてシャフト141の右側)にある部分は、帆部材14の開口部S内部にある部分とは逆向きの回転力を生じさせるものの、この部分を設けることで帆部材14の取り付けが容易となる。また、帆部材14の開口部Sの外部にある部分を設けることで、帆部材14のシャフト141の周りの慣性モーメントが小さくなり、帆部材14が回転しやすくなる。また、帆部材14の開口部S外にある部分により、帆部材14に生じる歪み力を緩和する作用が得られる。具体的には、帆部材14の開口部S内部にある部分により、図12(a)においてシャフト141の下端を支点とする左回り(反時計回り)の力のモーメントが発生し、帆部材14及び帆部材14を支持するシャフト141に歪みが生じる。
【0049】
一方、帆部材14の開口部Sの外部にある部分は、これとは逆に、図12(a)においてシャフト141の下端を支点として右回り(時計回り)の力のモーメントを発生させる。従って、これらの力のモーメントが相殺され、帆部材14及び帆部材14を支持するシャフト141に生じる歪みが小さくなって緩和される。その結果、帆部材14が安定して回転することが可能となる。また、図12(b)に示されるように、帆部材14の開口部Sの外部にある部分に、帆部材14の開口部S内部にある部分に起因する力のモーメントを相殺するためのカウンタバランサ147を設けてもよい。この場合、カウンタバランサ147は、シャフト141の下端を支点とする帆部材14の力のモーメントが実質的にゼロに近くなる重量とする。
【0050】
好ましくは、シャフト141からみて主軸シャフト11側にある帆部材14の面積は、帆部材全体の面積の60%以上でかつ100%以下であり、より好ましくは60%以上で90%以下、更に好ましくは75%以上で90%である。この面積が小さいと、帆部材14の開口部S内にある部分に起因する回転力が小さくなる。帆部材14の開口部S外にある部分は、帆部材14の開口部S内にある部分とは逆方向の回転力を生み出すので、十分な回転力が得られなくなるか、逆回転するおそれがある。また、帆部材14は、開口部Sをすべて覆うのではなく、開口部Sよりも小さいことが好ましい。帆部材14が開口部Sをすべて覆うまでに大きいと、風や水などの流体が回転体を通過する際に乱流が発生して回転力が落ちるおそれがある。一方、帆部材14を開口部Sよりも小さくすることで、流体は、開口部を形成する主軸シャフト11、主軸フレーム121、131およびシャフト141と、帆部材14と、の間隙を流通して帆部材14の回転を安定化させる。
【0051】
図13に、帆部材14の他の構造例の斜視図を示す。この例では、帆部材14の全体形状は流線形となっている。帆部材14は、フレーム181~184を有し、これらのフレーム181~184により四角形状の外枠部が形成さる。複数のウィング部190がこれらフレーム181~184により支持されており、これらのウィング部190により帆羽142が流線形状に支持される。補強フレーム191は、フレーム182、184の間に設けられて帆部材14の強度を維持する。また、フレーム184には、主軸シャフト11のストッパ111と当接するための当接部143が設けられている。このように帆部材14を流線型とすることで、乱流を防ぎ、流体のエネルギーを効率良く回転力に変換することが可能となる。
【0052】
図3では、回転体101同士を主軸シャフト11の軸心に沿った方向に重ねた例を示したが、回転体101同士を主軸シャフト11の軸心に対して垂直な方向に着脱自在に結合することも可能である。以下、その具体例を本発明の第4変形例として示す。
【0053】
図14(a)~(c)は、回転体101、101α、101βが軸心に対して垂直な方向、つまり図中の水平方向に着脱自在に結合された形態での回転体装置10の説明図であり、図15は、図14(a)~(c)に示される回転体装置10の平面図である。図示されるように、主軸シャフト11からは、3本の主軸フレーム121、122、123が互いに120度をなす角度で延びている。なお、この例では、帆部材14は三角形状としている。
【0054】
図14(a)は、回転体101に回転体101α、101βが結合される前の単独の状態の説明図、図14(b)は、回転体101に回転体101αが結合された状態の説明図、図14(c)は、回転体101に回転体101α及び回転体101βが結合された状態の説明図である。図14(a)において、回転体101は、点線で囲まれた領域で示される。図14(b)において、回転体101及び101αは、それぞれ点線で囲まれた領域で示される。同様に、図14(c)において、回転体101、101α及び101βは、それぞれ点線で囲まれた領域で示される。
【0055】
回転体101αにおいて、帆部材14α及びシャフト141αの構造は、回転体101における帆部材14及びシャフト141と同一である。また、回転体101αは、主軸フレーム121α、131α、及び補助シャフト11αが設けられている。補助シャフト11αは、主軸シャフト11と平行に設けられる。主軸フレーム121α、131αは、それぞれ回転体101の主軸フレーム121、131と同軸に、かつ着脱自在に結合されて固定される。回転体101βについても同様である。なお、主軸フレーム121、主軸フレーム121α及び主軸フレーム121βを貫通する心棒などの補強部材によって、回転体101、回転体101α、及び回転体101βの結合強度を高くしてもよい。
【0056】
帆部材14の回転を阻止するためのストッパ111は、回転体101においては主軸シャフト11に設けられるが、回転体101αの帆部材14αと主軸シャフト11との間には帆部材14があり、帆部材14αの回転をストッパ111で阻止することはできない。従って、帆部材14αの回転を阻止するためのストッパ111αは回転体101αの補助シャフト11αに設けられている。同様に、回転体101βの帆部材14βの回転を阻止するためのストッパ111βは回転体101βの補助シャフト11βに設けられている。
【0057】
このように、回転体101に対して、回転体101αと回転体101βとを主軸シャフト11の軸心に対して垂直な方向に着脱自在に結合した形態とすることで、回転体装置10の回転力を向上することが可能である。また、図14(b)では回転体101に回転体101αを結合することで回転体101aを増設しており、図14(c)では回転体101に回転体101αと回転体101βとを増設しているが、追加する回転体の数は、必要とされる回転力に応じて適宜変更することが可能である。
【0058】
また、図5の例では主軸シャフト11から4本の主軸フレーム121、122、123、124が互いに90度をなす角度で延び、図15の例では、主軸シャフト11から3本の主軸フレーム121、122、123が互いに120度をなす角度で延びている。しかし、主軸シャフト11に対して設けられる主軸フレームの数は任意に設定することができ、また、主軸フレーム同士がなす角度も任意に定めることができる。
なお、図3の例と図14図15の例を組み合わせて、回転体101を主軸シャフト11の軸心の方向に増設し、かつ、主軸シャフト11の軸心に垂直な方向にも増設した形態としてもよい。
【0059】
図16に、上述した実施形態に係る垂直型風力発電機1を垂直型回転体風力発電施設(発電制御装置)1200に応用した例を示す。図中において、垂直型回転体風力発電施設1200は、回転体1201、回転体1201を支持する支持構造体1202、直流電流制御設備1203、水素貯蔵充填設備1204、トルクコンバータ&ギヤボックス1205、及び発電機1206を有する。
【0060】
垂直型回転体風力発電施設1200では、風力により回転体1201が回転し、その回転力がトルクコンバータ&ギヤボックス1205を通じて発電機1206に伝達され、交流電流が発生する。直流電流制御設備1203は水電解水素製造装置を有し、水素貯蔵充填設備1204は高圧容器保管倉庫を有している。直流電流制御設備1203は、発電機1206からの交流電流を直流電流に変換し、変換された直流電流を直流電流制御設備1203に供給する。直流電流制御設備1203は、供給された直流電流を制御して水電解水素製造装置で水の電気分解により水素を製造する。製造された水素は、水素貯蔵充填設備1204で高圧容器、例えば高圧ボンベ(水素ボンベ)に充填される。水素が充填された高圧ボンベは、高圧容器保管倉庫で保管される。
【0061】
垂直型回転体風力発電施設1200は、好ましくは年間を通じて風の強い地域に設置され、上述のように風力発電及び水素の製造を行う。また、垂直型回転体風力発電施設1200を小型化して自動車に搭載してもよく、これにより自動車で移動可能な任意の場所で発電を行うことも可能である。風力発電により得られた電力によって水素を貯蔵することで、脱炭素社会に必要とされる水素エネルギーを供給することが可能である。
【0062】
図17に、本発明を海流発電に応用した例の説明図を示す。船舶1307は停泊用の碇1308を有する。発電時には、碇1308が海中に下ろされて船舶が停泊し、海流により、水面下にある回転体1301が回転することで、その回転力がトルクコンバータ&ギヤボックスを通じて発電機1306に伝達され発電する、図示しない(前記、垂直型回転体風力発電施設に同じ)水電解水素製造装置、水素貯蔵充填設備及び高圧容器保管倉庫を有する。水電解水素製造装置で水を電気分解して水素を製造する製造された水素は、水素貯蔵充填設備で高圧容器、例えば高圧ボンベ(水素ボンベ)に充填される。水素が充填された高圧ボンベは、高圧容器保管倉庫で保管される。
【0063】
この水素貯蔵充填設備1300が設置された船舶1307は、好ましくは年間を通じて海流が強い海域に停泊し、上述のように海流発電及び水素の製造を行う。また、得られた電力によって水素を貯蔵することで、脱炭素社会に必要とされる水素エネルギーを供給することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17