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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20231027BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P21/00
A61P43/00 121
A61P43/00 107
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022100942
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2018121380の分割
【原出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2022130534
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2017215519
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松谷 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 智康
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】上野 栞
(72)【発明者】
【氏名】森川 琢海
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085392(JP,A)
【文献】特表2013-517806(JP,A)
【文献】国際公開第2014/099904(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/034586(WO,A1)
【文献】おなかカンパニーROTTSウェブサイト,2018年01月10日,インターネットアーカイブ閲覧 URL: https://web.archive.org/web/20180110064238/http://rotts.co.jp:80/product/s021/1069
【文献】日本健康素材株式会社技術資料,2016年,http://nihon-hm.co.jp/wp-content/uploads/2016/02/%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%83%B320160817%E6%94%B9%E5%AE%9A.pdf
【文献】INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR MEDICINE,2015年,Vol. 35, Issue 3,Pages 755-762
【文献】Frontiers in pharmacology,2017年07月17日,Vol.8, No.468,pp.1-13
【文献】J. Agric. Food. Chem.,2007年,55,Pages 4366-4370
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 21/00
A61P 43/00
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(1)及び(2)を含有する、筋管細胞賦活用経口組成物(ただし、エラスチンを含有するものを除く)
(1)3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩。
(2)オレアノール酸。
【請求項2】
(2)オレアノール酸を有効成分として表示したものである、請求項1に記載の筋管細胞賦活用経口組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩及びテルペンを含有する経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸(HMB)は、必須アミノ酸であるロイシンの代謝生成物であり、筋肉の合成促進や分解抑制にかかわっていることが知られている。しかしながら、体内でのHMB生成量は非常に少ないため、このHMBをサプリメント等として摂取する試みがなされている。
【0003】
このようなサプリメントに関し、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸カルシウム及び結晶セルロースを含有する錠剤が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、結晶セルロースを用いることにより打錠性を改善し、表面に凹凸のない錠剤を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-218158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、HMBに関する検討はなされているが、HMBと他成分との効果に関する検討はあまりなされていない。
【0006】
本発明の課題は、優れた筋肉増強効果、及び抗肥満効果を示す経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、HMB又はその塩と共に、テルペンを用いることにより、優れた筋肉増強効果、抗肥満効果を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
<1>3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩、及びテルペンを含有することを特徴とする経口組成物。
<2>テルペンが、トリテルペンである<1>に記載の経口組成物。
<3>トリテルペンが、多環性トリテルペンである、<2>に記載の経口組成物。
<4>多環トリテルペンが、五環性トリテルペンである、<3>に記載の経口組成物。
<5>五環性トリテルペンが、ウルソール酸、マスリン酸、コロソリン酸、ベツリン酸、オレアノール酸のいずれかである、<4>に記載の経口組成物。
<6>筋肉増強用であることを特徴とする<1>~<5>のいずれかに記載の経口組成物。
<7>抗肥満用であることを特徴とする<1>~<5>に記載の経口組成物。
<8>3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩が、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸カルシウムであることを特徴とする<1>~<7>に記載の経口組成物。
<9>錠剤、カプセル剤、丸剤又はチュアブル錠剤のいずれかであることを特徴とする<1>~<8>のいずれか記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた筋肉増強効果、抗肥満効果を示す経口組成物を提供することができる。特に、本発明によれば、運動と併用することで、より優れた筋肉増強効果、抗肥満効果を示す経口組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の組成物(HMBCa+コロソリン酸)を適用した場合の筋管細胞賦活作用を示す。
図2】本発明の組成物(HMBCa+ウルソール酸)を適用した場合の筋管細胞賦活作用を示す。
図3】本発明の組成物(HMBCa+オレアノール酸)を適用した場合の筋管細胞賦活作用を示す。
図4】本発明の組成物(HMBCa+コロソリン酸)を適用した場合のp-mTORタンパク質発現量(相対値)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の経口組成物は、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩と、テルペンとを含有することを特徴とする。
【0012】
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩と共にテルペンを用いることにより、筋肉増強効果や筋肉疲労回復(筋肉疲労改善)効果を向上させることができ、シェイプアップや、スポーツ選手の筋肉増強、病後の筋力回復、高齢者の寝たきり防止、運動時の筋肉ダメージの抑制、運動後の筋肉疲労回復、基礎代謝の向上等に用いることができる。
【0013】
さらに、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩と共にテルペンを用いることにより、肥満を抑制することができる。すなわち、本発明の経口組成物は、抗肥満、体脂肪の低減、体脂肪の蓄積抑制、ダイエット等に用いることができる。
【0014】
[3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩]
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸(HMB)とは、必須アミノ酸であるロイシンの代謝産物であり、ヒトの体内で合成される。本発明においては、HMB又はその塩が使用できる。HMBの塩としては、特に制限されないが、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が挙げられ、筋肉増強効果や抗肥満効果の観点から、カルシウム塩(HMBCa)が好ましい。本発明の経口組成物におけるHMB又はその塩は、公知の方法により合成したものや、市販品を用いることができる。市販品としては、食品に適用可能なものであれば限定されない。また、本発明においてHMB又はその塩は1種類のみを使用しても良いし、2種類以上を使用しても良い。
【0015】
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸又はその塩の含有量は、筋肉増強効果及び/又は抗肥満効果が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物全量に対して0.1~99質量%であり、好ましくは1~98質量%、より好ましくは5~97質量%である。
【0016】
[テルペン]
テルペンとは、イソプレンを構成単位とする炭化水素で、植物や昆虫、菌類などによって作り出される生体物質である。テルペンのうち、カルボニル基やヒドロキシ基などの官能基を持つ誘導体はテルペノイドと呼ばれる。本発明において使用されるテルペンとしては、例えば、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペンが挙げられる。また、本発明においては、非環式、単環式、多環式のいずれのテルペンも使用できる。また、本発明においてテルペンは1種類のみを使用しても良いし、2種類以上を使用しても良い。
【0017】
本発明において使用できるテルペンの具体例としては、例えば、リナロール、リモネン、カフェストール、ステビオール、コロソリン酸、ウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸、ベツリン酸、スクアレン、ラノステロール、β-カロテン、リコペンが挙げられる。
【0018】
本発明においては、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペンが好ましく、HMB又はその塩と併用することにより、優れた筋肉増強効果、抗肥満効果が得られる観点から、トリテルペンがより好ましい。また、環式のテルペンが好ましく、本発明においては、HMB又はその塩と併用することにより、優れた筋肉増強効果、抗肥満効果が得られる観点から、多環式のテルペンがより好ましい。
【0019】
これらの観点から、本発明において使用できるテルペンのうち、好ましくは、多環式のトリテルペンであり、より好ましくは五環性トリテルペンであり、特に好ましくは、コロソリン酸、ウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸、ベツリン酸、スクアレン、ラノステロールであり、より好ましくはコロソリン酸、ウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸、ベツリン酸である。本発明においては、植物から抽出や精製により得られるものや、化学合成により得られるものを使用できる。
【0020】
植物由来のテルペンを使用する場合、植物加工物におけるテルペンの含有量は、通常知られているテルペンの分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。例えば、液体クロマトグラフィー法で分析することが可能である。なお、測定の際には装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0021】
[コロソリン酸]
コロソリン酸はトリテルペンの一種であり、以下の構造式(1)で表される。
【0022】
【化1】
【0023】
コロソリン酸は、カリン、アーモンド、バナバ、クランベリー、ビワ、シソ等に含まれることが知られている。本発明においては、これらの植物より抽出したものや精製したもの、化学合成によって得られたものを使用することができる。
【0024】
コロソリン酸の含有量は、HMB又はその塩と併用することにより筋肉増強効果及び/又は抗肥満効果が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物全量に対して0.0001~20質量%であり、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.005~5質量%である。
【0025】
[ウルソール酸]
ウルソール酸はトリテルペンの一種であり、以下の構造式(2)で表される。
【0026】
【化2】
【0027】
ウルソール酸は、オリーブ葉、アーモンド、リンゴ、クランベリー、サンザシ、ラズベリー、カリン、ローズマリー葉、グァバ、シソ葉、ブルーベリー、プルーン、ビワ、ザクロ、レモンバーム、バジル、ローズヒップ、カキ、センブリ、クマコケモモ等に含まれることが知られている。本発明においては、これらの植物より抽出したものや精製したもの、化学合成によって得られたものを使用することができる。
【0028】
ウルソール酸の含有量は、HMB又はその塩と併用することにより筋肉増強効果及び/又は抗肥満効果が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物全量に対して0.0001~20質量%であり、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.005~5質量%である。
【0029】
[オレアノール酸]
オレアノール酸はトリテルペンの一種であり、以下の構造式(3)で表される。
【0030】
【化3】
【0031】
オレアノール酸は、オリーブ果実及び葉、ブドウ、ビート、ナツメ、アーモンド、バナバ葉、セージ、サンザシ、ラズベリー、カリン、ローズマリー葉、グァバ、シソ葉、ブルーベリー、プルーン、ビワ、ザクロ、レモンバーム、バジル、ローズヒップ、カキ、センブリ等に含まれることが知られている。本発明においては、これらの植物より抽出したものや精製したもの、化学合成によって得られたものを使用することができる。
【0032】
オレアノール酸の含有量は、HMB又はその塩と併用することにより筋肉増強効果及び/又は抗肥満効果が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物全量に対して0.0001~20質量%であり、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.005~5質量%である。
【0033】
本発明の経口組成物は、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品や、一般的な食品、食品添加剤、飼料等として用いることができる。
【0034】
本発明の経口組成物は、筋肉の増強のために用いられる筋肉増強用組成物として用いることができる。かかる筋肉増強用組成物としては、HMB又はその塩及びテルペンを含有し、筋肉増強や筋肉疲労回復に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに筋肉増強、筋合成の亢進、筋分解の抑制、筋肉量(筋肉重量、筋断面積、筋肉密度)の低下抑制・維持・増加、筋肉の質の低下抑制・維持・向上、筋力(パワー、持久力)の低下抑制・維持・増加、運動能力の低下抑制・維持・向上、代謝(基礎代謝、安静時及び運動時代謝)の低下抑制・維持・向上、除脂肪体重の低下抑制・維持・増加、筋肉疲労の予防・改善、筋肉増強による代謝向上効果、ロコモティブシンドロームの予防・改善効果、サルコペニアの予防・改善効果の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。なお、本発明の筋肉増強用組成物は、製品の包装等に、本発明における組合せの成分(HMB又はその塩及びテルペン)が筋肉増強の有効成分として表示されているものに限られない。例えば、有効成分を特定していないものであってもよく、HMB又はその塩のみを有効成分として表示したものであってもよく、テルペンのみを有効成分として表示したものであってもよい。
【0035】
具体的に、本発明の筋肉増強用組成物としては、医薬品(医薬部外品を含む)やいわゆる健康食品が挙げられ、いわゆる健康食品においては、「筋肉をつくる力をサポートする」、「筋肉の分解を抑える」、「筋力を増強する」、「歩行能力の低下抑制・維持・改善・向上」、「筋肉増強による代謝向上を図る」、「代謝の衰えを抑える」、「筋肉疲労の予防・回復」、「バランス能力の低下抑制・維持」、「シェイプアップ」、「マッチョ」、「細マッチョ」、「美ボディ」、「寝たきり予防」、「転倒予防」、「筋肉増強による代謝向上を図る」、「筋肉量や筋力を維持する」等を表示したものを例示することができる。本発明の経口組成物を摂取する対象としては、筋肉の増強を必要とする人であれば特に限定されないが、シェイプアップを目的とする人や、スポーツ選手や、足腰の弱った高齢者等を好ましく例示することができる。
【0036】
また、本発明の経口組成物は、抗肥満のために用いられる抗肥満用組成物として用いることができる。かかる抗肥満用組成物としては、HMB又はその塩及びテルペンを含有し、抗肥満(肥満抑制)に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに、抗肥満(ダイエット、体脂肪低減、体脂肪蓄積抑制、メタボリックシンドローム改善、痩身などを含む)の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。なお、本発明の抗肥満用組成物は、製品の包装等に、本発明における組合せの成分(HMB又はその塩及びテルペン)が抗肥満の有効成分として表示されているものに限られない。例えば、有効成分を特定していないものであってもよく、HMB又はその塩のみを有効成分として表示したものであってもよく、テルペンのみを有効成分として表示したものであってもよい。
【0037】
具体的に、本発明の抗肥満用組成物としては、医薬品(医薬部外品を含む)やいわゆる健康食品が挙げられ、いわゆる健康食品においては、「体脂肪が気になる方へ」、「肥満気味な方へ」、「体重(BMI)が気になる方へ」、「体重やお腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)を減らす」、「ウエスト周囲長を減らす」等を表示したものを例示することができる。
【0038】
本発明の経口組成物による筋肉増強効果、抗肥満効果は、日常生活を送る上で本発明の組成物を摂取すれば得られるものであるが、運動と併用することで、より優れた効果を得ることができる。ここで言う運動とは、有酸素運動又はレジスタンス運動(筋力トレーニング、ウェイトトレーニング)のいずれか一種以上である。特に、本発明の経口組成物による筋肉増強効果を得る場合、本発明の経口組成物と併用する運動の種類は特に制限はないが、有酸素運動、レジスタンス運動のうちいずれか一種以上を実施することが好ましく、レジスタンス運動を実施することが特に好ましい。また、運動を実施する場合の運動量としては、1日あたり10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上である。
【0039】
本発明の組成物の形態としては、例えば、錠状、カプセル状、粉末状、顆粒状、液状、粒状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、ペースト状、クリーム状、カプレット状、ゲル状、チュアブル錠状、スティック状等を挙げることができる。これらの中でも、錠状、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸状、チュアブル錠状の形態が好ましく、錠状、カプセル状、丸状、チュアブル錠状がより好ましい。
【0040】
本発明の組成物を錠状、丸状、チュアブル錠状とする場合、賦形剤、滑沢剤、流動化剤のいずれか一種以上を添加することにより、成型性を高めるとともに得られた錠剤、丸剤又はチュアブル錠剤の保存安定性を向上するため、好ましい。特に、賦形剤及び滑沢剤を使用することで保存安定性をより高めることができる。
【0041】
賦形剤とは、組成物の取扱いあるいは成形の向上や服用を便利にするために加えるものである。本発明に使用できる賦形剤としては特に制限はなく、例えば、デンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デンプン分解物等のデンプン又はその誘導体、結晶セルロース、糖アルコール、乳糖、ビール酵母、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、精製白糖、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、沈降炭酸カルシウム等などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
滑沢剤とは、錠剤用の粉末を圧縮する際に打錠機杵臼と錠剤間の摩擦を緩和し、スティッキングなどの打錠障害を防ぐために使用するものである。本発明に使用できる滑沢剤としては、上記目的を達成することが可能な成分であれば特に制限はなく、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸又はその塩、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、ポリエチレングリコール、植物油脂、硬化油などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
流動化剤とは、混合末や顆粒の流動性を改善するために使用するものである。本発明に使用できる流動化剤としては特に制限はなく、例えば二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明において、賦形剤、滑沢剤、流動化剤はいずれも市販品を使用することができる。
【0044】
本発明の組成物におけるHMB又はその塩及びテルペン(以下、本発明の成分ともいう)の含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。
【0045】
具体的には、本発明の経口組成物が錠状、丸状、カプセル状のサプリメントや医薬品の場合には、本発明の成分が乾燥質量換算で全体の5~99質量%含まれていることが好ましく、8~98質量%含まれていることがより好ましく、10~97質量%含まれていることが特に好ましい。また、本発明の経口組成物がチュアブル錠状のサプリメントや医薬品の場合には、本発明の成分が乾燥質量換算で全体の0.1~70質量%含まれていることが好ましく、0.5~60質量%含まれていることがより好ましく、1~50質量%含まれていることが特に好ましい。粉末状、顆粒状のサプリメントや医薬品の場合、本発明の成分が乾燥質量換算で全体の0.1~90質量%含まれていることが好ましく、0.5~80質量%含まれていることがより好ましく、1~70質量%含まれていることが特に好ましい。液状のサプリメントや医薬品の場合、本発明の成分が乾燥質量換算で全体の5~99質量%含まれていることが好ましく、8~98質量%含まれていることがより好ましく、10~97質量%含まれていることが特に好ましい。
【0046】
本発明の経口組成物の摂取量としては特に制限はないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、成人の1日当たり、HMB又はその塩の摂取量が、100mg/日以上となるように摂取することが好ましく、200mg/日以上となるように摂取することがより好ましく、300mg/日以上となるように摂取することが特に好ましい。その上限は、例えば、10000mg/日であり、好ましくは8000mg/日であり、より好ましくは5000mg/日である。また、成人の1日当たり、テルペンの摂取量が、0.001mg/日以上となるように摂取することが好ましく、0.005mg/日以上となるように摂取することがより好ましく、0.01mg/日以上となるように摂取することが特に好ましい。その上限は、例えば、100mg/日であり、好ましくは80mg/日であり、より好ましくは50mg/日である。本発明の経口組成物は、1日の摂取量が前記摂取量となるように適宜設計すればよく、1回で摂取しても良いし、複数回に分けて摂取しても良い。例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤又はチュアブル錠剤の場合は1日あたり1~4回の摂取回数とし、合計量として前記摂取量が摂取できれば良く、飲料の場合、1日の摂取量に前記摂取量が配合されていれば良い。本発明の経口組成物は、1日の摂取量が前記摂取量となるように、1つの容器に、又は例えば2~3の複数の容器に分けて、1日分として収容することができる。
【0047】
HMB又はその塩及びテルペンの配合質量比としては、乾燥質量換算で、1:0.00001~10の範囲であることが好ましく、1:0.00005~5の範囲であることがより好ましく、1:0.0001~1の範囲であることが特に好ましい。
【0048】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の成分以外の他の成分を添加して、公知の方法によって製造することができる。本発明の成分以外の他の成分としては、例えば、水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B12、B13、B15、B17、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、PABA、ビタミンC、ビタミンP)、油溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)等のビタミン類;マグネシウム、リン、亜鉛、鉄等のミネラル類;タウリン、ニンニク等に含まれる含硫化合物;ヘスペリジン、ケルセチン等のフラバノイド或いはフラボノイド類;コラーゲン等のタンパク質;ペプチド;アミノ酸;動物性油脂;植物性油脂;動物・植物の粉砕物又は抽出物等を挙げることができる。特に、糖質を筋肉に運ぶことが可能なグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ホルモンの分泌を亢進する成分が好ましく、例えば、スピルリナ、甘藷茎葉、マジョラム、カワラヨモギが挙げられる。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
【0050】
試験1:筋管細胞賦活作用の評価
(1)37℃、5%CO2インキュベーター内で、75cm2フラスコを用いて、マウス筋芽細胞株(C2C12)を10%(V/V)FBS含有DMEMにて培養した。
(2)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、75cm2フラスコからコラーゲンコートした96ウェルプレートの各ウェルに5000cells/wellの細胞密度で播種した。
(3)37℃、5%CO2インキュベーター内でコンフルエントまで培養した後、分化誘導培地にて5日間培養した。
(4)0.5%(V/V)DMSO含有無血清DMEMで所定濃度に調製した被験物質(表1~表3)を含有する培地を各100μL添加し、24時間培養した。
(5)培地を除去した後、各ウェルを無血清DMEM 150μL/wellで1回洗浄した。次いで、無血清DMEMで30倍に希釈したCell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所製)溶液 150μL/wellを添加した。
(6)添加後のプレートを37℃、5%CO2インキュベーター内に静置して適度に発色させた後、各ウェルの450nmにおける吸光度を測定した。得られたデータを元に、コントロールに対する細胞賦活活性(% of control)を下記式(1)に基づいて算出した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【数1】
式(1)中、「Data sample」は各被験物質添加ウェルの吸光度を表し、「Data control」はコントロールのウェルの吸光度を表し、「Data blank」は細胞がないウェルの吸光度を表す。
【0055】
被験物質として以下のものを用いた。
・HMB又はその塩として、HMBCa(試薬)を用いた。
・テルペンとして、コロソリン酸、ウルソール酸及びオレアノール酸(いずれも試薬)を用いた。
【0056】
図1~3に筋管細胞賦活作用の測定結果を示す。数値は、大きいほど筋管細胞賦活活性が高いことを示す。
【0057】
図1~3に示すように、HMBCa及びテルペンを用いた本発明の組成物は、各素材単独の場合に比して、優れた筋管細胞賦活作用を示した。したがって、本発明の組成物は優れた筋肉増強効果を有することがわかる。
【0058】
[実施例2]
試験2:p-mTORタンパク質発現の評価
7週齢の雄性Wistar系ラットを5日以上訓化後、体重値に基づいて群分けした。試験開始日から29日間、各群に対応した被験物質(表4)を連日で強制経口投与し、試験29日目の被験物質投与後に絶食させた。12-18時間の絶食後、ペントバルビタールナトリウムの麻酔下にて開腹、下大静脈から採血を行った。採血終了後に下大静脈を鋏で切開し放血させることで安楽死させ、氷冷下で長趾伸筋を採取した。長趾伸筋肉中のp-mTORおよび内部標準としてβ-tubulinのタンパク質発現量を測定した。
【0059】
p-mTORおよびβ-tubulinタンパク質発現量の測定は、以下の要領で行った。
長趾伸筋を、RIPAバッファー(Thermo)中でビーズショッカーを用いて破砕し、タンパク抽出液を得た。ウエスタンブロッティング法によってタンパク抽出液中のp-mTORおよびβ-tubulinのタンパク質発現を解析した。β-tubulinを内部標準としてp-mTORタンパク質量を補正し、controlに対する相対的なp-mTORタンパク質発現量を算出した。
【0060】
【表4】
【0061】
被験物質として以下のものを用いた。
・HMB又はその塩として、HMBCaの市販品を用いた。
・コロソリン酸として、バナバ葉の含水エタノール抽出物の乾燥粉末を用いた。コロソリン酸の含有量を高速液体クロマトグラフィー法で分析したところ、コロソリン酸含有量は9%であった。
なお、被験物質は純水に溶解、または十分に懸濁させたものを使用した。
【0062】
図4にp-mTORタンパク質発現量の相対値を示す。数値は、大きいほどp-mTORタンパク質発現が高いことを示す。
【0063】
p-mTORは筋タンパク質の合成に関与し、これが増加することで筋肉量を増大させることが知られている。図4に示すように、HMBCa及びコロソリン酸を用いた本発明の組成物を投与した際のp-mTORタンパク質発現量は、各素材単独の場合と比較して非常に高く、各素材からは想定し得ない発現量を示した。また、HMBCaを単独で高濃度投与した場合の発現量(投与量:320mg/kg、タンパク質発現量相対値:0.87)と比較しても、高いp-mTORタンパク質発現を示した。したがって、本発明の組成物は優れた筋肉増強効果を有することがわかる。また、筋肉量の増加により基礎代謝量が向上するため、優れた抗肥満効果、特に体脂肪低減効果が期待できる。
【0064】
[実施例5]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0065】
【表5】
【0066】
[実施例6]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日1回、1回あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0067】
【表6】
【0068】
[実施例7]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり200mg)を製造した。得られた錠剤を1日2回、1回あたり4粒(合計8粒)摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0069】
【表7】
【0070】
[実施例8]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日1回、1回あたり5粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0071】
【表8】
【0072】
[実施例9]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0073】
【表9】
【0074】
[実施例10]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日1回、1回あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0075】
【表10】
【0076】
[実施例11]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり200mg)を製造した。得られた錠剤を1日2回、1回あたり4粒(合計8粒)摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0077】
【表11】
【0078】
[実施例12]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0079】
【表12】
【0080】
[実施例13]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られた錠剤を1日1回、1回あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0081】
【表13】
【0082】
[実施例14]
下記成分からなる錠剤(1粒あたり200mg)を製造した。得られた錠剤を1日2回、1回あたり4粒(合計8粒)摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0083】
【表14】
【0084】
[実施例15]
下記成分からなるチュアブル錠剤(1粒あたり700mg)を製造した。得られたチュアブル錠剤を1日あたり2粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0085】
【表15】
【0086】
[実施例16]
下記成分からなるチュアブル錠剤(1粒あたり1000mg)を製造した。得られたチュアブル錠剤を1日3回、1回あたり2粒(合計6粒)摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0087】
【表16】
【0088】
[実施例17]
下記混合物をハードカプセルに封入し、カプセル剤(1粒あたり300mg)を製造した。得られたカプセル剤を1日あたり4粒摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0089】
【表17】
【0090】
[実施例18]
下記混合物をハードカプセルに封入し、カプセル剤(1粒あたり250mg)を製造した。得られたカプセル剤を1日2回、1回あたり3粒(合計6粒)摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0091】
【表18】
【0092】
[実施例19]
下記成分からなる顆粒剤(1包あたり3000mg)を製造した。得られた顆粒剤を1日2回、1回あたり1包を水に懸濁して摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0093】
【表19】
【0094】
[実施例20]
下記成分からなる顆粒剤(1包あたり2000mg)を製造した。得られた顆粒剤を1日2回、1回あたり1包を摂取することで、優れた筋肉増強効果や抗肥満効果が得られる。
【0095】
【表20】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の経口組成物は、筋肉増強効果、抗肥満効果を有することから、本発明の産業上の有用性は高い。
図1
図2
図3
図4