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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
F15B15/14 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559204
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047151
(87)【国際公開番号】W WO2020116420
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018227979
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】金澤 治
(72)【発明者】
【氏名】宮森 賢蔵
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-244878(JP,A)
【文献】特開2011-069384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、前記シリンダ本体内に支持された軸部材と、を有するシリンダ装置であって、
前記シリンダ本体には、流体の作用に基づいて、前記軸部材を回転させるための回転室を備える回転機構部が設けられており、
少なくとも前記回転機構部には、前端部及び後端部に、前記回転室に通じる回転用ポートが設けられており、
前記軸部材は、ストローク可能に支持されることを特徴するシリンダ装置。
【請求項2】
前記回転機構部の前端部及び後端部に夫々設けられた前記回転用ポートは、前記流体の供給用であり、前記回転機構部の外周部には、前記回転室に通じる流体排出用の回転用ポートが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記軸部材には回転体が接続され、前記回転体は、前記回転室に配置されており、前記回転体は、前記回転機構部の前端部から前記回転室に供給される前記流体を受けるともに、前記流体を前記流体排出用の回転用ポートへ送ることが可能な第1の回転体と、前記回転機構部の後端部から前記回転室に供給される前記流体を受けるとともに、前記流体排出用の回転用ポートへ送ることが可能な第2の回転体と、を具備することを特徴とする請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記回転機構部の前端部及び後端部に設けられた一方の前記回転用ポートは、前記流体の供給用であり、他方の前記回転用ポートは、前記流体の排出用であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記軸部材には回転体が接続され、前記回転体は、前記回転室に配置されており、前記回転体は、一方の前記回転用ポートから供給された前記流体を受けるとともに、他方の前記回転用ポートに向けて前記流体を通すことが可能な構造であることを特徴とする請求項4に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
前記シリンダ本体には、シリンダ室を備えたストローク機構部が、前記回転機構部とは区画されており、前記ストローク機構部には、流体の給排により前記軸部材をストロークさせるための前記シリンダ室に通じるストローク用ポートが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシリンダ装置。
【請求項7】
前記軸部材は、流体軸受を備えており、前記軸部材は、前記シリンダ本体内で浮いた状態で支持されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構を備えるシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、シリンダ本体内に収容された軸部材を回転させる機構を備えたシリンダ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1では、軸部材を回転させる回転駆動モータ(ブラシレスDCモータ)が開示されている。
【0004】
特許文献2では、軸部材を所定角度で回転させる回転駆動部を備える。回転駆動部は、ステッピングモータやサーボモータ等の回転モータを有している。
【0005】
特許文献3では、軸部材に回転駆動部が取り付けられている。回転駆動部は、ロータと、ロータの周囲を囲むステータとを有している。ロータにはマグネットが配置され、ステータにはコイルが配置される。電磁気的な作用により、軸部材を回転駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-69384号公報
【文献】特開2017-133593号公報
【文献】特開2017-9068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、軸部材をモータ等で回転させる構成では、消費電力の増大や、コンパクト化を適切に図ることができない問題があった。すなわち、モータを使用することで、熱の発生により、消費電力が増大しやすい。また、機械的に軸部材を回転させるため、回転機構が煩雑化し、コンパクト化を適切に図ることができない。加えて、回転ムラを抑制することが要求される。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、電力消費の低減及びコンパクト化を図りつつ、回転ムラを抑制することが可能なシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリンダ本体と、前記シリンダ本体内に支持された軸部材と、を有するシリンダ装置であって、前記シリンダ本体には、流体の作用に基づいて、前記軸部材を回転させるための回転室を備える回転機構部が設けられており、少なくとも前記回転機構部には、前端部及び後端部に、前記回転室に通じる回転用ポートが設けられており、前記軸部材は、ストローク可能に支持されることを特徴する。
【0010】
本発明では、前記回転機構部の前端部及び後端部に夫々設けられた前記回転用ポートは、前記流体の供給用であり、前記回転機構部の外周部には、前記回転室に通じる流体排出用の回転用ポートが設けられていることが好ましい。このとき、前記軸部材には回転体が接続され、前記回転体は、前記回転室に配置されており、前記回転体は、前記回転機構部の前端部から前記回転室に供給される前記流体を受けるともに、前記流体を前記流体排出用の回転用ポートへ送ることが可能な第1の回転体と、前記回転機構部の後端部から前記回転室に供給される前記流体を受けるとともに、前記流体排出用の回転用ポートへ送ることが可能な第2の回転体と、を具備することが好ましい。
【0011】
本発明では、前記回転機構部の前端部及び後端部に設けられた一方の前記回転用ポートは、前記流体の供給用であり、他方の前記回転用ポートは、前記流体の排出用であってもよい。このとき、前記軸部材には回転体が接続され、前記回転体は、前記回転室に配置されており、前記回転体は、一方の前記回転用ポートから供給された前記流体を受けるとともに、他方の前記回転用ポートに向けて前記流体を通すことが可能な構造であることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記シリンダ本体には、シリンダ室を備えたストローク機構部が、前記回転機構部とは区画されており、前記ストローク機構部には、流体の給排により前記軸部材をストロークさせるための前記シリンダ室に通じるストローク用ポートが設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明では、前記軸部材は、流体軸受を備えており、前記軸部材は、前記シリンダ本体内で浮いた状態で支持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリンダ装置によれば、電力消費の低減及びコンパクト化を図りつつ、回転ムラを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のシリンダ装置の正面側外観斜視図である。
図2】第1実施形態のシリンダ装置の背面側外観斜視図である。
図3】第1実施形態のシリンダ装置の断面図である。
図4図3の状態から軸部材を前方へストロークさせた状態を示す断面図である。
図5図3の状態から軸部材を後方へストロークさせた状態を示す断面図である。
図6図6A図6Cは、第1実施形態で使用される回転体の図である。
図7】第2実施形態のシリンダ装置の正面側外観斜視図である。
図8】第2実施形態のシリンダ装置の背面側外観斜視図である。
図9】第2実施形態のシリンダ装置の断面図である。
図10図9の状態から軸部材を前方へストロークさせた状態を示す断面図である。
図11図9の状態から軸部材を後方へストロークさせた状態を示す断面図である。
図12図12A図12Cは、第2実施形態で使用される回転体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のシリンダ装置の正面側外観斜視図である。図2は、第1実施形態のシリンダ装置の背面側外観斜視図である。図3は、第1実施形態のシリンダ装置の断面図である。図4は、図3の状態から軸部材を前方へストロークさせた状態を示す断面図である。図5は、図3の状態から軸部材を後方へストロークさせた状態を示す断面図である。図6A図6Cは、第1実施形態で使用される回転体の図である。
【0019】
シリンダ装置1は、シリンダ本体2と、シリンダ本体2に支持された軸部材3と、を有して構成される。
【0020】
(軸部材)
第1実施形態では、軸部材3は、回転可能に支持される。一方、軸部材3のストロークは、任意である。すなわち、第1実施形態のシリンダ装置1は、軸部材3の回転のみが可能な構成であってもよいし、軸部材3の回転とストロークの双方を可能とする構成であってもよい。後述する第2実施形態においても同様である。ただし、以下では、軸部材3を回転させながら、軸方向へのストロークを可能とするシリンダ装置1について説明する。
【0021】
なお、「回転」とは、軸部材3の軸中心O(図3参照)を回転中心として回転することを指す。「ストローク」とは、軸部材3が、軸方向(X1-X2方向)へ移動することを指す。X1方向は、シリンダ装置1の前方側であり、X2方向は、シリンダ装置1の後方側である。
【0022】
図3に示すように、本実施形態の軸部材3は、所定の径で形成され且つ、軸方向(X1―X2方向)に所定の長さ寸法L1で形成されたピストン4と、ピストン4の前端面に設けられ、ピストン4よりも径の小さい第1ピストンロッド5と、ピストン4の後端面に設けられ、ピストン4よりも径の小さい第2ピストンロッド6と、を有して構成される。
【0023】
なお、図3に示すように、ピストン4、第1ピストンロッド5、及び第2ピストンロッド6は、一体化されていることが好ましい。図3に示すように、ピストン4、第1ピストンロッド5、及び第2ピストンロッド6の軸中心Oは、一直線上に揃っている。
【0024】
図3に示すように、第2ピストンロッド6の後端部には、第1ピストンロッド5の方向に向けて、軸中心Oに沿う孔8が形成されている。
【0025】
また、図3に示すように、第2ピストンロッド6の後端部の外周には、回転体11が接続されている。
【0026】
(シリンダ本体)
図1図3に示すように、シリンダ本体2は、回転機構部9と、ストローク機構部10と、を具備する。ストローク機構部10は、シリンダ本体2の前方側(X1方向)に、回転機構部9は、後方側(X2方向)にて夫々区画されている。
【0027】
図1図3に示すように、回転機構部9は、ストローク機構部10よりも大きな径で形成されている。回転機構部9は、前端部9aと、後端部9bと、前端部9aと後端部9bの間を繋ぐ外周部9cと、を有して構成され、前端部9a、後端部9b及び外周部9cで囲まれた内部に、回転室(空間)9dを備える。軸部材3に接続された回転体11は、回転室9d内に配置される。図3に示すように、回転室9dの前後方向(X1-X2方向)への長さは、図4図5に示すように、軸部材3が前後方向にストロークした際の回転体11の最大移動量を確保する。
【0028】
また、図3に示すように、回転室9dの径T1(前後方向(X1-X2方向)に対し直交する方向の幅)は、回転体11の径T2(図6B参照)より僅かに大きい。
【0029】
図1図3に示すように、円環状の前端部9aには、周方向に沿って、複数の第1回転用ポート12が形成されている。第1回転用ポート12は、回転室9d内に通じている。各第1回転用ポート12は、等間隔で形成されていることが好ましい。
【0030】
図2図3に示すように、後端部9bには、周方向に沿って、複数の第2回転用ポート13が形成されている。第2回転用ポート13は、回転室9d内に通じている。各第2回転用ポート13は、等間隔で形成されていることが好ましい。
【0031】
また、各第1回転用ポート12と、各第2回転用ポート13とは、前後方向(X1-X2方向)で対向する位置に形成されることが好ましいが、周方向にずれていても構わない。
【0032】
図1図3では、第1回転用ポート12及び第2回転用ポート13は、円状で形成されるが、形状を限定するものではない。多角形や長穴形状等であってもよい。また、第1回転用ポート12と第2回転用ポート13とで同じ形状であることが好ましいが、異なる形状であっても構わない。
【0033】
図1図3に示すように、回転機構部9の外周部9cには、前後方向(X1-X2方向)に長い長穴状の複数の第3回転用ポート14が、外周方向に沿って形成されている。各第3回転用ポート14は、等間隔で形成されていることが好ましい。第3回転用ポート14は、長穴状以外の形状であってもよく、例えば、第1回転用ポート12及び第2回転用ポート13と同様の円状であってもよいが、第3回転用ポート14は、流体の排出用であるため、第3回転用ポート14のトータル面積は、第1回転用ポート12及び第2回転用ポート13のトータル面積よりも大きいことが、流体排出を促進でき、好ましい。
【0034】
第1回転用ポート12及び、第2回転用ポート13は、空気や水等の流体の供給用である。一方、第3回転用ポート14は、流体の排出用である。本実施形態では、流体を、第1回転用ポート12及び第2回転用ポート13を介して、回転室9dの前後から供給する。例えば、流体は、圧縮エアであり、回転体11は、前方及び後方の双方から圧縮エアを受けて、回転する。回転体11に当たった圧縮エアは、側方に拡散し、第3回転用ポート14から外部に排出される。回転体11の回転により、回転体11に接続された軸部材3を、軸中心Oを回転中心として回転させることができる。
【0035】
図3に示すように、ストローク機構部10の内部には、シリンダ室15が設けられている。また、シリンダ室15からシリンダ本体2の前端面2aにまで貫通し、シリンダ室15と連続した挿通部16が設けられている。
【0036】
図3に示すように、軸部材3のピストン4は、シリンダ室15に収容されている。また、軸部材3の第1ピストンロッド5は、挿通部16に挿通されている。
【0037】
なお、シリンダ室15は、ピストン4の径よりもやや大きい径を有する略円筒空間である。また、シリンダ室15の前後方向(X1―X2方向)への長さ寸法は、ピストン4の長さ寸法L1よりも長く形成されている。したがって、ピストン4は、シリンダ室15にて軸方向(X1-X2方向)に移動自在に収容される。
【0038】
図3の状態では、ピストン4が、シリンダ室15の前後方向(X1-X2方向)の中央付近に収まっている。このため、ピストン4の前方(X1側)及び後方(X2側)には夫々空間が空いている。ここで、前方側の空間を第1流体室17、後方側の空間を第2流体室18と称することとする。第1流体室17と第2流体室18とは夫々区画されており、互いに干渉することはない。
【0039】
図3に示すように、ストローク機構部10には、第1流体室17及び第2流体室18に通じるストローク用ポート25、26が形成されている。
【0040】
本実施形態のシリンダ装置1は、例えば、エアベアリング式であり、複数のエアベアリング21、22、23が設けられている。図3に示すように、エアベアリング21は、第1ピストンロッド5の外周を囲むように配置されている。また、エアベアリング22は、ピストン4の外周を囲むように配置されている。また、エアベアリング23は、第2ピストンロッド6の外周を囲むように配置されている。
【0041】
各エアベアリング21~23は、限定されるものではないが、例えば、焼結金属やカーボンを用いた多孔質材をリング状に形成したもの、或いは、オリフィス絞りタイプのもの等を使用できる。
【0042】
図3に示すように、ストローク機構部10には、外周面から各エアベアリング21、22、23に通じるエアベアリング加圧ポート27、28、29が設けられている。
【0043】
圧縮エアを、各エアベアリング加圧ポート27~29に供給することで、圧縮エアが、各エアベアリング21~23を通じて、ピストン4、第1ピストンロッド5及び第2ピストンロッド6の表面に均一に吹き出す。これにより、ピストン4、第1ピストンロッド5及び第2ピストンロッド6が、夫々、シリンダ室15内、及び挿通部16内で浮いた状態にて支持される。
【0044】
本実施形態のシリンダ装置1では、上記したように、回転体11の前後から流体を供給し、側方から排出することで、回転体11及び軸部材3を、軸中心Oを回転中心として回転させることができる。回転角度は有限でなく、流体量によって回転数や回転スピードを調節することができる。
【0045】
本実施形態では、エアベアリング式により、軸部材3のピストン4は、シリンダ本体2のシリンダ室15内で浮いた状態で支持されている。したがって、本実施形態では、軸部材3を、シリンダ本体2内で浮かせた状態のまま回転させることができる。軸部材3とシリンダ本体2とは非接触であるため、回転抵抗を小さくでき、高精度な回転が可能になる。更に、軸部材3を、シリンダ本体2内で浮かせた状態で、シリンダ室15に通じるストローク用ポート25、26からの圧縮エアの給排を利用し、第1流体室17と第2流体室18との間で差圧を生じさせる。これにより、ピストン4を軸方向(X1-X2方向)にストロークさせることができる。図示しないが、各ストローク用ポート25、26に通じるサーボバルブにより、シリンダ制御圧を適切に調圧することができる。
【0046】
図3の状態から、第1流体室17の圧縮エアを、サーボバルブによりストローク用ポート25を通じて吸引する。一方、サーボバルブによりストローク用ポート26を通じて圧縮エアを、第2流体室18内に供給する。これにより、第1流体室17と第2流体室18との間で差圧が生じ、図4に示すように、ピストン4を前方(X1)に移動させることができる。これにより、第1ピストンロッド5を、シリンダ本体2の前端面2aから前方に突出させることができる。
【0047】
シリンダ室15と挿通部16との間には、前方壁40が設けられており、ピストン4は、前方壁40よりも前方に移動することができないように規制されている。また、図示しないが、前方壁40には弾性リングが設けられていることが好ましい。弾性リングは、ピストン4が前方壁40に接触したときの緩衝材として作用する。
【0048】
或いは、図3の状態から、第2流体室18の圧縮エアを、サーボバルブによりストローク用ポート26を通じて吸引する。一方、サーボバルブによりストローク用ポート25を通じて圧縮エアを、第1流体室17内に供給する。これにより、第1流体室17と第2流体室18との間で差圧が生じ、図5に示すように、ピストン4を後方(X2)に移動させることができる。これにより、第1ピストンロッド5を、シリンダ本体2の前端面2aから後方に引込めることができる。
【0049】
シリンダ室15の後方壁42は、ピストン4の後方(X2)への移動を規制する規制面であり、ピストン4は、後方壁42よりも後方に移動することはできない。また、図示しないが、後方壁42には弾性リングが設けられていることが好ましい。弾性リングは、ピストン4が後方壁42に接触したときの緩衝材として作用する。
【0050】
(回転体)
第1実施形態の回転体11について説明する。図6A図6Cに示すように、第1実施形態の回転体11は、第1回転用ポート12からの流体を受ける第1回転体11aと、第2回転用ポート13からの流体を受ける第2回転体11bと、を具備する。図6Cに示すように、第1回転体11aと第2回転体11bの間には支持体30が設けられている。支持体30の中央部には貫通孔30aが形成されている。この貫通孔30aの前後に連通する筒状部31が設けられている。支持体30及び筒状部31は一体で形成されることが好ましい。
【0051】
図6A図6Cに示すように、第1回転体11aは、支持体30の表面30bに配置された複数の羽根32により構成される。各羽根32は、略同一形状の板材である。羽根32には、支持体30の表面30bに設けられた筒状部31の外周面に接続する第1接続部32aと、支持体30の表面30bの周縁部に接続する第2接続部32bと、を備える。羽根32は、その第1接続部32aが、支持体30の表面30bよりも前方に離れた筒状部31の外周面に当接しており、第1接続部32aから第2接続部32bに向けて徐々に傾いた状態で支持されている(図6Cも参照)。また、図6A図6Bに示すように、隣接する羽根32同士は、正面から見たときに、一部で重なり合うように配置されている。
【0052】
第2回転体11bは、支持体30の裏面30cに配置された複数の羽根33により構成される。図示しないが、各羽根33は、第1回転体11aを構成する羽根32と同様に、筒状部31の外周面から、支持体30の裏面30cにかけて斜めに傾きながら、隣同士の羽根33が一部で重なり合うように配置されている。
【0053】
図6A図6Cに示す回転体11では、第1回転体11aを構成する複数の羽根32と、第2回転体11bを構成する複数の羽根33とは、支持体30を対称面として、面対称で配置されている。
【0054】
回転体11は、筒状部31に第2ピストンロッド6が通され、第2ピストンロッド6の外周面に固定支持される。
【0055】
第1回転用ポート12から回転室9d内に供給された流体は、第1回転体11aの羽根32に当たる。また、第2回転用ポート13から回転室9d内に供給された流体は、第2回転体11bの羽根33に当たる。このとき、第1回転体11aと第2回転体11bの各羽根32、33は面対称で配置されているため、それぞれ同じ方向に回転力が生じ、回転体11を精度良く回転させることができる。このとき、各第1回転用ポート12と、各第2回転用ポート13とが、前後方向(X1-X2方向)で対向する位置に形成されていると、各回転用ポート12、13を通じて第1回転体11a及び第2回転体11bに流体が作用した際、第1回転体11aと第2回転体11bに加わる軸方向の力を相殺させながら、効率よく回転力を発生させることができ、軸方向に余計な力を加えにくくなる。
【0056】
また、図3に示した回転室9dの径T1(前後方向に対し直交する方向の幅)を、回転体11の径T2(図6B参照)とほぼ同じとした。これにより、各回転用ポート12、13から回転室9d内に供給された流体が、回転体11を介して、反対側に通過する量を極力少なくすることができる。したがって、各回転用ポート12、13から供給された流体が、回転室9d内で混じり合うのを抑制でき、精度良く回転させることができる。なお、回転体11の径T2を、回転室9dの径T1よりもわずかに小さくすることで、回転体11が回転室9dの壁面に接触することなく、回転させることができる。
【0057】
本実施形態では、第1回転体11a及び第2回転体11bに夫々当たった流体は、側方に拡散し、第3回転用ポート14より外部に排出される。回転体11による遠心力及び、第1回転体11a及び第2回転体11bを構成する各羽根32、33の傾きにより、適切に、流体を側方に拡散させることができる。
【0058】
このように、本実施形態では、例えば、図6A図6Bに示す回転体11の構造を用いることで、回転体11に対し前後方向(X1-X2方向)から流体を供給し、側方(前後方向に対し直交する方向)から外部へ逃がす流体の流れを実現でき、回転体11が接続された軸部材3を、軸中心Oを回転中心として精度良く回転させることができる。
【0059】
(センサ)
図3図5に示すように、第2ピストンロッド6の後端部に形成された孔8内には、センサ(ストロークセンサ)50が、第2ピストンロッド6に非接触にて設けられる。センサ50は、シリンダ本体2の後端部側で固定支持されている。
【0060】
本実施形態では、ピストン4の位置を、孔8内に配置されたセンサ50にて測定することができる。センサ50には、既存のセンサを適用することができ、例えば、磁気式センサや、過電流式センサ、光学式センサ等を用いることができる。
【0061】
センサ50にて測定された位置情報は、図示しない制御部に送信される。センサ50にて測定された位置情報に基づいて、第1流体室17及び第2流体室18のシリンダ制御圧を調圧し、第1ピストンロッド5の前端面2aからの突出量を制御することができる。
【0062】
また、センサ50にて、軸部材3の回転数や回転スピードを測定することも可能である。センサ50の回転情報に基づいて、回転圧を調圧し、回転体11の回転数や回転スピードを制御することができる。
【0063】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のシリンダ装置の正面側外観斜視図である。図8は、第2実施形態のシリンダ装置の背面側外観斜視図である。図9は、第2実施形態のシリンダ装置の断面図である。図10は、図9の状態から軸部材を前方へストロークさせた状態を示す断面図である。図11は、図9の状態から軸部材を後方へストロークさせた状態を示す断面図である。図12A図12Cは、第2実施形態で使用される回転体の図である。
【0064】
以下では、主に、第1実施形態のシリンダ装置1と相違する点について説明する。なお、第1実施形態のシリンダ装置1と同じ構造の部材については、同じ符号を付した。図7図8に示すように、シリンダ装置61は、シリンダ本体62と、シリンダ本体62内に支持された軸部材3とを、有して構成される。
【0065】
シリンダ本体62は、回転機構部69と、ストローク機構部10とに区画されている。図9等に示すように、回転機構部69は、前端部69aと、後端部69bと、前端部69aと後端部69bの間を繋ぐ外周部69cと、を有して構成され、前端部69a、後端部69b及び外周部69cで囲まれた内部に、回転室(空間)69dを備える。
【0066】
図7図9に示すように、第2実施形態の回転機構部69にも、第1実施形態の回転機構部9と同様に、前端部69a及び後端部69bにそれぞれ、第1回転用ポート72及び第2回転用ポート73が設けられているが、第1実施形態と異なって、外周部69cに、回転用ポートは設けられていない。
【0067】
第2実施形態では、第1回転用ポート72及び第2回転用ポートのどちらか一方が、流体供給用であり、他方が、流体排出用である。
【0068】
軸部材3の第2ピストンロッド6の後端部に接続される回転体71は、例えば、図12A図12Bに示すように、リング部83と、リング部83の中心に位置する円筒部81と、円筒部81とリング部83の間を放射線状に接続する複数の羽根82と、を有して構成される。各羽根82は、等角度で配置され、各羽根82の間は、貫通する空間Aである。図12B等に示すように、各羽根82は、前端側から後端側に向けて、斜めに傾いた状態で支持されている。リング部83は無くてもよいが、補強のために、配置したほうが好ましい。
【0069】
回転体71は、円筒部81に第2ピストンロッド6を通し、第2ピストンロッド6の後端側に固定支持される。
【0070】
本実施形態では、図9に示した回転室69dの径T3(前後方向に対し直交する方向の幅)を、回転体71の径T4(図12B参照)とほぼ同じとしているが、径T3のほうが、径T4よりわずかに大きいことが好ましい。
【0071】
第2実施形態では、例えば、第2回転用ポート73を通して圧縮エアが、回転室69d内に送り込まれる。圧縮エアが羽根82に当たって、回転体71が回転する。圧縮エアは、羽根82の間の空間Aを通って、第1回転用ポート72から外部に排出される。
【0072】
上記したように、回転室69dの径T3を、回転体71の径T4とほぼ同じ大きさとしているため、回転室69d内に供給された流体の多くを回転体71の回転に適用でき、流体の供給量に対する回転効率を高めることができる。なお、回転体71の径T4を、回転室69dの径T3よりも僅かに小さくすることで、回転体71が回転室69dの壁面を摺動せず、浮いた状態で回転させることができる。
【0073】
第2実施形態のシリンダ装置61においても、第1実施形態のシリンダ装置1と同様に、エアベアリング式により、軸部材3を、シリンダ本体2の内部で浮いた状態で支持することができる。そして、軸部材3を、シリンダ本体2内で浮かせた状態で、シリンダ室15に通じるストローク用ポート25、26からの圧縮エアの給排を利用し、シリンダ室15内で差圧を生じさせることで、ピストン4を軸方向(X1-X2方向)にストロークさせることができる。これにより、図9の状態から図10のように、第1ピストンロッド5を前端面2aから前方(X1方向)に向けて突出させたり、図9の状態から図11のように、第1ピストンロッド5を後方(X2方向)に向けて引込めることが、極力、摺動抵抗を小さくした状態で実現できる。本実施形態では、軸部材3を回転させながら前後方向(X1-X2方向)へのストロークが可能であり、高精度なストローク及び回転を実現することができる。
本実施形態の特徴的部分について説明する。
【0074】
本実施形態は、シリンダ本体2、62と、シリンダ本体2、62内に支持された軸部材3と、を有するシリンダ装置1、61であって、シリンダ本体2、62には、流体の作用に基づいて、軸部材3を回転させるための回転室9d、69dを備える回転機構部9、69が設けられている。そして、少なくとも回転機構部9、69には、前端部9a、69a及び後端部9b、69bに、回転室9d、69dに通じる回転用ポート12、13、72、73が設けられていることを特徴する。
【0075】
このように、本実施形態では、回転室9d、69dに通じる回転用ポート12、13、72、73を、軸部材3の軸方向である前後方向(X1-X2方向)に配置した。本実施形態では、回転室9d、69d内に供給する流体の作用により、軸部材3を回転させることができる。この構成によれば、従来のように、ステッピングモータやサーボモータ等の回転モータを用いた構成に比べて、電力消費の低減及びコンパクト化を図ることができる。
【0076】
また、本実施形態のように、流体の作用により軸部材3を回転させる構成では、回転ムラを抑制することが可能である。特に、本実施形態では、流体を、軸方向に沿って作用させることができ、回転の際に、軸部材3に偏心を生じさせにくく、効果的に、回転ムラを抑制することができる。
【0077】
第1実施形態のシリンダ装置1では、回転機構部9の前端部9a及び後端部9bに夫々設けられた第1回転用ポート12及び第2回転用ポート13は夫々、流体供給用である。そして、回転機構部9の外周部9cには、回転室9dに通じる流体排出用の第3回転用ポート14が設けられている。これにより、回転室9d内に前後方向(X1-X2方向)から流体を供給するとともに、側方から排出する回転機構を構成でき、流体の給排を適切に行うことができる。これにより、回転ムラを効果的に抑制できる。また、このような流体の流れにより、軸部材3に、軸方向(X1-X2方向)への推力が生じるのを適切に抑制することができる。
【0078】
第1実施形態の回転体11は、例えば、図6A図6Cに示す構造で具現化される。すなわち、回転体11は、回転機構部9の前端部9aから回転室9dに供給される流体を受ける第1回転体11aと、回転機構部9の後端部9bから回転室9dに供給される流体を受ける第2回転体11bと、を具備する。第1回転体11a及び第2回転体11bは、流体を、回転機構部9の外周部9cに設けられた第3回転用ポート14から外部に排出可能な羽根構造を備えている。
【0079】
このように、回転体11は、前後双方から流体を受ける構造であるため、回転室9d内での回転体11の位置が変わっても、軸方向(X1-X2方向)への推力が生じるのを抑制することができる。回転体11の位置に応じて、第1回転用ポート12及び第2回転用ポート13からの流体量を調節することで、効果的に、推力の発生を抑制することができる。
【0080】
また、第2実施形態のシリンダ装置61では、回転機構部69の前端部69a及び後端部69bに設けられた一方の回転用ポートは、流体の供給用であり、他方の回転用ポートは、流体の排出用である。これにより、流体を、軸方向(X1-X2方向)に沿って適切に給排でき、回転ムラを効果的に抑制できる。
【0081】
第2実施形態の回転体71は、例えば、図12A図12Cに示す構造で具現化される。すなわち、回転体71は、一方の回転用ポートから供給された流体を受けるとともに、他方の前記回転用ポートに向けて流体を通すことが可能な羽根構造を有している。このような回転体71により、流体が回転室69d内で滞留せず、回転ムラを効果的に抑制することができる。加えて、第2実施形態では、軸部材3に軸方向(X1-X2方向)への推力を生じさせることができる。すなわち、回転させながらストロークさせる構造において、軸部材3の第1ピストンロッド5を前方に突出させる場合には、第2回転用ポート73から流体を供給し、第1回転用ポート72から流体を排出することで、軸部材3に前方(X1)への推力を生じさせることができる。また、軸部材3の第1ピストンロッド5を後方に引込める場合には、第1回転用ポート72から流体を供給し、第2回転用ポート73から流体を排出することで、軸部材3に後方(X2)への推力を生じさせることができる。このように、第2実施形態では、回転に伴い前後方向への推力を生じさせることができ、軸部材3の前後方向への移動をアシストすることができる。
【0082】
第1実施形態及び第2実施形態の双方において、軸部材3は、ストローク可能に支持されることが好ましい。これにより、軸部材3を回転させながら、ストロークさせることができる。
【0083】
また、シリンダ本体2、62には、シリンダ室15を備えたストローク機構部10が、回転機構部9、69とは区画されており、ストローク機構部10には、シリンダ室15に通じるストローク用ポート25、26が設けられていることが好ましい。これにより、ストローク機構部10のシリンダ室15に供給される流体と、回転機構部9、69の回転室9d、69dに供給される流体とが互いに干渉するのを抑制でき、簡単な構造で、軸部材3を回転させながら、ストロークさせることができるシリンダ装置1、61を製造することができる。ストローク機構部10に作用する流体と、回転機構部9、69に作用する流体は、同じであってもよいし異なっていてもよい。例えば、ストローク機構部10と回転機構部9、69の双方に圧縮エアを作用させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、軸部材3は、流体軸受を備えており、軸部材3は、シリンダ本体内で浮いた状態で支持されることが好ましい。これにより、ストローク及び回転の際の摺動抵抗を小さくでき、高精度なストローク及び回転が可能になる。流体軸受には、エアベアリングを用いることが好ましい。
【0085】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記の実施形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0086】
例えば、センサ50の位置は、図3図9等の配置に限定されるものではなく、センサ50を、第1ピストンロッド5の位置を直接測定できるように配置してもよい。
【0087】
ただし、センサ50を、第2ピストンロッド6の後端に形成された孔8内に配置することで、センサ50を無理なく、第2ピストンロッド6に非接触で配置できると共にコンパクト化を促進でき、また位置及び回転測定の精度を向上させることができる。
【0088】
シリンダ本体2、62は、複数に分割したものを組み立てて形成されてもよいし、一体化したものであってもよい。
【0089】
なお、シリンダ本体2、62や軸部材3は、例えば、アルミ合金等で形成されるが、材質を限定するものではなく、使用用途や設置場所等で種々変更可能である。
【0090】
上記したように、本実施形態では、シリンダ装置1、61として、エアベアリング式シリンダのみならず、エア以外の流体の作用により駆動させることもでき、例えば、油圧シリンダを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、電力消費の低減及びコンパクト化を図りつつ、回転ムラを抑制することが可能なシリンダ装置を実現することができる。本発明では、回転のみが可能なシリンダ装置であっても、回転且つストロークの双方が可能なシリンダ装置であっても、どちらでもよい。本発明では、優れた回転精度や回転ストローク精度を得ることができる。このように、高い回転精度や回転ストローク精度が求められる用途等に、本発明のシリンダ装置を適用することで、高い精度と合わせて消費電力の低減且つコンパクト化を促進することができる。
【0092】
本出願は、2018年12月5日出願の特願2018-227979号に基づく。この内容は全てここに含めておく。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12