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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20231027BHJP
   F15B 15/06 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
F15B15/14 Z
F15B15/06 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020559205
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047152
(87)【国際公開番号】W WO2020116421
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018227980
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】金澤 治
(72)【発明者】
【氏名】宮森 賢蔵
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-115530(JP,U)
【文献】特公昭38-018008(JP,B1)
【文献】特開2017-133593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F15B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、前記シリンダ本体内に支持された軸部材と、を有するシリンダ装置であって、
前記シリンダ本体には、前記軸部材の軸周りの外周面に通じ、流体の給排に基づいて前記軸部材を回転させるための回転用ポートが設けられており
前記軸部材は、ストローク可能に支持されており、
前記軸部材は、軸方向の中間の前記外周面に回転部を備え、
前記回転部の前方及び後方の前記シリンダ本体に、流体の給排により前記軸部材をストロークさせるためのストローク用ポートが設けられており、前記ストローク用ポートの間に、前記回転部に通じる前記回転用ポートが設けられる
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記軸部材は、前記外周面に沿って凹部と凸部とが交互に連続する前記回転部を有し、前記回転用ポートが、前記回転部に通じていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記回転用ポートは、複数設けられることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記軸部材は、流体軸受を備えており、前記軸部材は、前記シリンダ本体内で浮いた状態で支持されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構を備えるシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、シリンダ本体内に収容された軸部材を回転させる機構を備えたシリンダ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1では、軸部材を回転させる回転駆動モータ(ブラシレスDCモータ)が開示されている。
【0004】
特許文献2では、軸部材を所定角度で回転させる回転駆動部を備える。回転駆動部は、ステッピングモータやサーボモータ等の回転モータを有している。
【0005】
特許文献3では、軸部材に回転駆動部が取り付けられている。回転駆動部は、ロータと、ロータの周囲を囲むステータとを有している。ロータにはマグネットが配置され、ステータにはコイルが配置される。電磁気的な作用により、軸部材を回転駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-69384号公報
【文献】特開2017-133593号公報
【文献】特開2017-9068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、軸部材をモータ等で回転させる構成では、消費電力の増大や、コンパクト化を適切に図ることができない問題があった。すなわち、モータを使用することで、熱の発生により、消費電力が増大しやすい。また、機械的に軸部材を回転させるため、回転機構が煩雑化し、コンパクト化を適切に図ることができない。加えて、回転ムラを抑制することが要求される。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、電力消費の低減及びコンパクト化を図りつつ、回転ムラを抑制することが可能なシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリンダ本体と、前記シリンダ本体内に支持された軸部材と、を有するシリンダ装置であって、前記シリンダ本体には、前記軸部材の軸周りの外周面に通じ、流体の給排に基づいて前記軸部材を回転させるための回転用ポートが設けられており前記軸部材は、ストローク可能に支持されており、前記軸部材は、軸方向の中間の前記外周面に回転部を備え、前記回転部の前方及び後方の前記シリンダ本体に、流体の給排により前記軸部材をストロークさせるためのストローク用ポートが設けられており、前記ストローク用ポートの間に、前記回転部に通じる前記回転用ポートが設けられる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明では、前記軸部材は、前記外周面に沿って凹部と凸部とが交互に連続する回転部を有し、前記回転用ポートが、前記回転部に通じていることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記回転用ポートは、複数設けられることが好ましい。
【0014】
本発明では、前記軸部材は、流体軸受を備えており、前記軸部材は、前記シリンダ本体内で浮いた状態で支持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリンダ装置によれば、電力消費の低減及びコンパクト化を図りつつ、回転ムラを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のシリンダ装置の外観斜視図である。
図2】本実施形態のシリンダ装置を軸方向に沿って切断した断面図である。
図3】本実施形態のシリンダ装置を構成する軸部材の斜視図である。
図4図2に示すシリンダ装置の部分拡大断面図である。
図5図2の状態から軸部材を前方へストロークさせた状態を示す断面図である。
図6図2の状態から軸部材を後方へストロークさせた状態を示す断面図である。
図7】本実施形態のシリンダ装置を、軸方向と直交する方向に沿って切断した断面図である。
図8図7とは別の実施形態の断面図である。
図9図7とは別の実施形態の断面図である。
図10図7とは別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。
【0018】
図1図2等に示すシリンダ装置1は、シリンダ本体2と、シリンダ本体2内に支持された軸部材3と、を有して構成される。
【0019】
本実施形態では、軸部材3は、回転可能に支持される。一方、軸部材3のストロークは、任意である。すなわち、本実施形態のシリンダ装置1は、軸部材3の回転のみが可能な構成であってもよいし、軸部材3の回転とストロークの双方を可能とする構成であってもよい。ただし、以下では、軸部材3を回転させながら、軸方向へのストロークを可能とするシリンダ装置1について説明する。
【0020】
なお、「回転」とは、軸部材3の軸中心O(図4参照)を回転中心として回転することを指す。「ストローク」とは、軸部材3が、軸方向(X1-X2方向)へ移動することを指す。X1方向は、シリンダ装置1の前方側であり、X2方向は、シリンダ装置1の後方側である。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の軸部材3は、所定の径で形成され且つ、軸方向(X1―X2方向)に所定の長さ寸法L1で形成されたピストン4と、ピストン4の前端面4aに設けられ、ピストン4よりも径の小さいピストンロッド5と、を有して構成される。
【0022】
なお、図2図4に示すように、ピストン4、及び、ピストンロッド5は、一体化されていることが好ましい。図4に示すように、ピストン4、及びピストンロッド5の軸中心Oは、一直線上に揃っている。
【0023】
図2図4に示すように、ピストン4の後端面4bには、ピストンロッド5の方向に向けて、軸中心Oに沿う孔8が形成されている。
【0024】
図3に示すように、ピストン4は、前方部4c、中間部4d及び後方部4eを有し、中間部4dは、外周面に沿って、凹部9と凸部10とが交互に連続する回転部(歯車部)11を構成している。ここで、「中間」とは、前方及び後方に挟まれた間の位置であり、真ん中を意味するものではない。
【0025】
回転部11を構成する凹部9及び凸部10は、周方向に一定の間隔で形成されている。また、凹部9及び凸部10は、軸方向(X1-X2方向)に、所定の幅を有して形成されている。凹部9及び凸部10は、後述する回転用ポート31、32の径よりも大きい幅を有している。本実施形態のように、軸部材3がストロークする構成では、軸部材3のストローク量に応じて、回転部11の軸方向の幅が設定される。
【0026】
なお、ピストン4の前方部4c及び後方部4eは、中間部4dと違って、円柱状で形成されている。これにより、前方部4c及び後方部4eに、後述するエアベアリング21~23を配置し、ピストン4を安定してシリンダ本体2内で浮かせることができる。
【0027】
本実施形態のシリンダ装置1は、軸部材3の軸周りの外周面に配置された回転部11に流体を作用させることで、軸部材3が、軸中心Oを回転中心として回転可能とされた構成である。
【0028】
シリンダ本体2の内部には、シリンダ室12が設けられている。また、シリンダ室12からシリンダ本体2の前端面2aにまで貫通し、シリンダ室12と連続した挿通部13が設けられている。
【0029】
図2図4に示すように、軸部材3のピストン4は、シリンダ室12に収容されている。また、軸部材3のピストンロッド5は、挿通部13に挿通されている。
【0030】
なお、シリンダ室12は、ピストン4の径よりもやや大きい径を有する略円筒空間である。また、シリンダ室12のX1―X2方向への長さ寸法は、ピストン4の長さ寸法L1よりも長く形成されている。したがって、ピストン4は、シリンダ室12にて軸方向(X1-X2方向)に移動自在に収容される。
【0031】
図2図4の状態では、ピストン4が、シリンダ室12のX1-X2方向の中央付近に収まっている。このため、ピストン4の前方(X1側)及び後方(X2側)には夫々空間が空いている。ここで、前方側の空間を第1流体室14、後方側の空間を第2流体室15と称することとする。第1流体室14と第2流体室15とは夫々区画されており、互いに干渉することはない。
【0032】
図2図4に示すように、シリンダ本体2には、第1流体室14及び第2流体室15に通じるストローク用ポート25、26が形成されている。
【0033】
また、図2図4に示すように、シリンダ本体2には、ストローク用ポート25、26の間の位置に、回転用ポート31、32が形成されている。回転用ポート31、32は、軸部材3の回転部11に通じている。
【0034】
本実施形態のシリンダ装置1は、エアベアリング式であり、軸部材3とシリンダ本体2の内部空間との間には、複数のエアベアリング空間16、17、18が設けられている。図4に示すように、第1エアベアリング空間16は、ピストンロッド5の位置に形成されている。第2エアベアリング空間17は、ピストン4の前方部4cの位置に形成される。第3エアベアリング空間18は、ピストン4の後方部4eの位置に設けられる。
【0035】
図2図4に示すように、エアベアリング21が、第1エアベアリング空間16内であって、ピストンロッド5の外周を囲むように配置されている。また、エアベアリング22が、第2エアベアリング空間17内であって、ピストン4の前方部4cの外周を囲むように配置されている。また、エアベアリング23が、第3エアベアリング空間18内であって、ピストン4の後方部4eの外周を囲むように配置されている。
【0036】
各エアベアリング21~23は、限定されるものではないが、例えば、焼結金属やカーボンを用いた多孔質材をリング状に形成したもの、或いは、オリフィス絞りタイプのもの等を使用できる。
【0037】
図2図4に示すように、シリンダ本体2には、シリンダ本体2の外周面から各エアベアリング空間16、17、18にまで通じるエアベアリング加圧ポート27、28、29が設けられている。
【0038】
圧縮エアを、各エアベアリング加圧ポート27~29に供給することで、圧縮エアが、各エアベアリング21~23を通じて、ピストン4、及び、ピストンロッド5の表面に均一に吹き出す。これにより、ピストン4、及びピストンロッド5が、夫々、シリンダ室12内、及び挿通部13内で浮いた状態にて支持される。
【0039】
本実施形態のシリンダ装置1では、軸部材3の回転部11に対向する回転用ポート31、32から圧縮エアを給排する。これにより、回転部11に流体が作用して、回転力を生じさせ、軸部材3を、軸中心Oを回転中心として回転させることができる。このとき、本実施形態では、軸部材3を、シリンダ本体2内で浮かせた状態のまま回転させることができる。軸部材3とシリンダ本体2とは非接触であるため、回転抵抗を小さくすることができ、高精度な回転が可能になる。
【0040】
図4に示す回転用ポート31は、例えば、圧縮エアの供給ポートであり、回転用ポート32は、圧縮エアの排気ポートである。図4では、各回転用ポート31、32が、回転部11を介して、反対側に配置されるが、好ましい回転用ポート31、32の形態については後述する。これにより、圧縮エアを、回転用ポート31の供給位置から回転部11の表面に、回転用ポート32まで導くことができ、圧縮エアのロスを少なくすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、エアベアリング式により、軸部材3のピストン4は、シリンダ本体2のシリンダ室12内で浮いた状態で支持されており、したがって、図4に示すように、回転用ポート31、32と回転部11との間に微小な隙間30が生じる。これにより、隙間30から圧縮エアを通しながら気流を形成し、回転部11を効率よく回転させることができる。また、本実施形態では、回転時に、軸部材3のピストン4は浮いた状態であり、軸部材3全体が非接触のまま回転するため、回転音を小さくすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、軸部材3を、シリンダ本体2内で浮かせた状態で、シリンダ室12に通じるストローク用ポート25、26からの圧縮エアの給排を利用し、第1流体室14と第2流体室15との間で差圧を生じさせる。これにより、ピストン4を軸方向(X1-X2方向)にストロークさせることができる。図示しないが、各ストローク用ポート25、26に通じるサーボバルブにより、シリンダ制御圧を適切に調圧することができる。
【0043】
図2図4の状態から、第1流体室14の圧縮エアを、サーボバルブによりストローク用ポート25を通じて吸引する。一方、サーボバルブによりストローク用ポート26を通じて圧縮エアを、第2流体室15内に供給する。これにより、第1流体室14と第2流体室15との間で差圧が生じ、図5に示すように、ピストン4を前方(X1)に移動させることができる。これにより、ピストンロッド5を、シリンダ本体2の前端面2aから前方に突出させることができる。
【0044】
シリンダ室12と挿通部13との間には、前方壁40が設けられており、ピストン4は、前方壁40よりも前方に移動することができないように規制されている。また、図4に示すように、前方壁40には弾性リング41が設けられていることが好ましい。弾性リング41は、ピストン4が前方壁40に接触したときの緩衝材として作用する。
【0045】
或いは、図2図4の状態から、第2流体室15の圧縮エアを、サーボバルブによりストローク用ポート26を通じて吸引する。一方、サーボバルブによりストローク用ポート25を通じて圧縮エアを、第1流体室14内に供給する。これにより、第1流体室14と第2流体室15との間で差圧が生じ、図6に示すように、ピストン4を後方(X2)に移動させることができる。このように、ピストンロッド5を、シリンダ本体2の前端面2aから後方に引込めることができる。
【0046】
シリンダ室12の後方壁42は、ピストン4の後方(X2)への移動を規制する規制面であり、ピストン4は、後方壁42よりも後方に移動することはできない。また、図4に示すように、後方壁42には弾性リング43が設けられていることが好ましい。弾性リング43は、ピストン4が後方壁42に接触したときの緩衝材として作用する。
【0047】
図1図2図4等に示すように、ピストン4の後端面4bに形成された孔8内には、センサ(ストロークセンサ)50が、ピストン4に非接触にて設けられる。センサ50は、シリンダ本体2の後端部側で固定支持されている。
【0048】
本実施形態では、ピストン4の位置を、孔8内に配置されたセンサ50にて測定することができる。センサ50には、既存のセンサを適用することができ、例えば、磁気式センサや、過電流式センサ、光学式センサ等を用いることができる。
【0049】
センサ50にて測定された位置情報は、ケーブル51(図4参照)を通じて図示しない制御部に送信される。センサ50にて測定された位置情報に基づいて、第1流体室14及び第2流体室15のシリンダ制御圧を調圧し、ピストンロッド5の突出量を制御することができる。
【0050】
また、センサ50にて、軸部材3の回転数を測定することも可能である。センサ50の回転情報に基づいて、回転圧を調圧し、回転部11の回転数を制御することができる。
【0051】
次に、回転部11を回転しやすくするための回転用ポート31、32の形態について説明する。以下で説明する図面は、全て、軸方向(X1-X2方向)に対し直交する方向から切断した部分断面図である。
【0052】
例えば、図7に示すように、回転用ポート31と、回転用ポート32は、軸部材3を介して反対側に設けられているが、各回転用ポート31、32の貫通方向が、軸部材3の軸中心Oを通って一直線上に並ばないように、各回転用ポート31、32の一方、或いは両方の角度を変えることが好ましい。図7では、回転用ポート31の貫通方向を、軸中心Oを通る直線方向Sから傾くように設けた。矢印Aは、圧縮エアの流れの向きを示しており、圧縮エアが回転用ポート31からシリンダ本体2内に斜めに入り込み、回転部11の片側方向に流れやすくなる。この結果、回転部11を適切に回転させることができる。
【0053】
図8では、回転用ポート31を、軸中心Oを通る直線方向Sから外れた位置に配置した。すなわち、回転用ポート31、32は、軸中心Oを通る直線上に揃っておらず、ずれた配置となる。このとき、供給側である回転用ポート31側をずらして配置することが好ましい。これにより、回転用ポート31から供給された圧縮エアは、矢印Aに示すように、回転部11の片側方向に流れやすくなる。この結果、回転部11を適切に回転させることができる。
【0054】
図7図8では、各回転用ポート31、32を、軸部材3を介して略反対側に配置していたが、図9に示すように、各回転用ポート31、32を、軸部材3から見て同じ側に配置してもよい。図9に示すように、各回転用ポート31、32を、軸中心Oを通る直線方向Sに対して左右にずらして配置することが好ましい。これにより、回転用ポート31から供給された圧縮エアは、矢印Aに示すように、回転部11の片側方向から流れ、半周以上回って、回転用ポート32から外部に排出される。図9では、各回転用ポート31、32が近い位置に配置されるため、各回転用ポート31,32間の短い距離間に圧縮エアの流れが極力生じないようにすべく、側のシリンダ本体2の本体厚t1を、各回転用ポート31,32間の長い距離側のシリンダ本体2の本体厚t2よりも厚くすることが好ましい。これにより、本体厚t1の位置では、本体厚t2の位置よりも、回転部11との間の空間を狭くでき、各回転用ポート31,32間の短い距離間に圧縮エアが極力流れないように制御できる。したがって、圧縮エアを、回転用ポート31から、回転部11に対し距離の長い側を通って、回転用ポート32から排出させることが可能になる。この結果、回転部11を適切に回転させることができる。
【0055】
図10では、回転用ポート31、32の貫通方向を、軸中心Oを通る直線方向Sに沿って設けているが、回転用ポート31、32の片側のシリンダ本体2の本体厚t3を、もう一方のシリンダ本体2の本体厚t4よりも厚くした。これにより、本体厚t3の位置では、本体厚t4の位置よりも、回転部11との間の空間を狭くでき、本体厚t3の部分には、圧縮エアが極力流れないように制御できる。したがって、回転用ポート31から供給された圧縮エアを、矢印Aに示すように、回転部11とシリンダ本体2との間の空間が広い片側にのみ流れやすくなり、この結果、回転部11を適切に回転させることができる。
【0056】
本実施形態の特徴的部分について説明する。
本実施形態は、シリンダ本体2と、シリンダ本体2内に支持された軸部材3と、を有するシリンダ装置1であって、シリンダ本体2には、軸部材3の軸周りの外周面に通じ、流体の給排に基づいて軸部材3を回転させるための回転用ポート31、32が設けられていることを特徴とする。
【0057】
このように、本実施形態では、軸部材3の外周面に流体を作用させて、軸部材3を回転させるように、シリンダ本体2に、軸部材3の外周面へ通じる回転用ポート31、32を設けた。この構成によれば、従来のように、ステッピングモータやサーボモータ等の回転モータを用いた構成に比べて、電力消費の低減及びコンパクト化を図ることができる。
【0058】
更に、本実施形態では、回転ムラを抑制することが可能である。「回転ムラの抑制」について詳しく説明する。本実施形態では、軸部材3の回転方向に一致する外周面に回転部11を構成した。このため、回転部11と回転用ポート31、32との距離は、回転部11の回転や、軸部材3のストロークによっても変化せず、常に、略一定とすることができる。例えば、軸部材3のストロークにより、回転部と、回転用ポートとの距離が変化するような構成では、回転圧が変ってしまうため、回転ムラが生じる。これに対し、本実施形態では、回転部11と回転用ポート31、32との距離を略一定に保つことができるため、回転圧が変化せず、回転ムラを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、軸部材3の回転方向に一致する外周面に回転部11を構成したため、回転部11の回転に基づき、軸部材3に、軸方向(X1-X2方向)への推力が生じるのを抑制することができる。したがって、軸部材3が勝手に軸方向に動いたり、或いは、軸部材3のストローク量がばらつくことを抑制でき、回転に起因するストローク量の制御手段を特段必要としない。
【0060】
また、本実施形態では、軸部材3は、外周面に沿って凹部9と凸部10とが交互に連続する回転部11を有する。そして、回転用ポート31、32が、回転部11に通じるように形成されている。回転用ポート31、32と、回転部11とは対向していることが好ましい。
【0061】
この構成により、軸部材3とは別に回転部11を設ける必要がなく、回転部11をシンプルな形状で形成できる。したがって、シリンダ装置1をコンパクト化でき、且つ製造コストを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、軸部材3は、ストローク可能に支持されることが好ましい。これにより、軸部材3を回転させながら、ストロークさせることができる。
【0063】
また、本実施形態では、軸部材3は、軸方向(X1-X方向)の中間の外周面に回転部11を備える。回転部11の前方(X1側)及び後方(X2側)のシリンダ本体2に、流体の給排により、軸部材3をストロークさせるためのストローク用ポート25、26が設けられている。そして、ストローク用ポート25、26の間に、回転部11に通じる回転用ポート31、32が設けられることが好ましい。
【0064】
このように、本実施形態では、軸部材3の中間に回転部11を設けることで、回転機構を別個に設ける必要がなく、コンパクト化できる。また、シリンダ本体2に、回転部11へ通じる回転用ポート31、32を設けるとともに、回転用ポート31、32の前後に、ストローク用ポート25、26を設ける。これにより、簡単な構造で、軸部材3を回転させながら、ストロークさせることができるシリンダ装置1を製造することができる。
【0065】
また、本実施形態では、回転用ポートは1つであってもよいが、その場合は、1つの回転用ポートで、流体の供給と排出を担うことが必要になり、供給時間と排出時間とを分けたり、回転用ポートを大きくする等の工夫が必要である。流体制御を簡単にでき、且つスムースな流体の流れを実現するには、回転用ポート31、32を複数設けることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態では、軸部材3は、流体軸受を備えており、軸部材3は、シリンダ本体2内で浮いた状態で支持されることが好ましい。これにより、高精度なストローク及び回転が可能になる。流体軸受には、エアベアリングを用いることが好ましい。これにより、ストローク及び回転の際の摺動抵抗を、効果的に小さくすることができる。
【0067】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記の実施形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0068】
例えば、センサ50の位置は、図2図4等の配置に限定されるものではなく、センサ50を、ピストンロッド5の位置を直接測定できるように配置してもよい。
【0069】
ただし、図2図4等のように、センサ50を、ピストン4の後端面4bに形成された孔8内に配置することで、センサ50を無理なく、ピストン4に非接触で配置できると共にコンパクト化を促進でき、また位置及び回転測定の精度を向上させることができる。
【0070】
シリンダ本体2は、複数に分割したものを組み立てて形成されてもよいし、一体化したものであってもよい。
【0071】
なお、シリンダ本体2や軸部材3は、例えば、アルミ合金等で形成されるが、材質を限定するものではなく、使用用途や設置場所等で種々変更可能である。
【0072】
上記したように、本実施形態では、シリンダ装置1として、エアベアリング式シリンダのみならず、エア以外の流体の作用により駆動させることもでき、例えば、油圧シリンダを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、電力消費の低減及びコンパクト化を図りつつ、回転ムラを抑制することが可能なシリンダ装置を実現することができる。本発明では、回転のみが可能なシリンダ装置であっても、回転且つストロークの双方が可能なシリンダ装置であっても、どちらでもよい。本発明では、優れた回転精度や回転ストローク精度を得ることができる。このように、高い回転精度や回転ストローク精度が求められる用途等に、本発明のシリンダ装置を適用することで、高い精度と合わせて消費電力の低減且つコンパクト化を促進することができる。
【0074】
本出願は、2018年12月5日出願の特願2018-227980号に基づく。この内容は全てここに含めておく。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10