(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】変速制御装置および変速システム
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20231027BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20231027BHJP
F16H 59/14 20060101ALI20231027BHJP
F16H 59/36 20060101ALI20231027BHJP
F16H 59/48 20060101ALI20231027BHJP
F16H 59/66 20060101ALI20231027BHJP
B62M 25/08 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/68
F16H59/14
F16H59/36
F16H59/48
F16H59/66
B62M25/08
(21)【出願番号】P 2019038760
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018074232
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】中島 岳彦
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-123978(JP,A)
【文献】国際公開第2018/059801(WO,A1)
【文献】特開2017-007644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/68
B62M 11/06、25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の変速機を制御する変速制御装置であって、
前記人力駆動車の自動変速に関する第1パラメータの値を取得する取得部と、
前記第1パラメータの変化に関する情報であ
る変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される変速条件を記憶する記憶部と、
前記第1パラメータの値と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備え
、
前記第1パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含む、変速制御装置。
【請求項2】
人力駆動車の変速機を制御する変速制御装置であって、
前記人力駆動車の自動変速に関する第1パラメータの値、および、前記人力駆動車の自動変速に関する第2パラメータの値を取得する取得部と、
前記第1パラメータにて規定される変速条件と、前記第2パラメータにて規定される切替え条件と、を記憶する記憶部と、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たさない第1状態において、現状の変速段を維持し、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たす第2状態において、前記第1パラメータと前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備え、
前記第1パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記第2パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記変速条件が、前記第1パラメータの値に
よって規定される条件である場合、前記切替え条件は、前記第2パラメータの変化に関する情報であ
る変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される条件である、変速制御装置。
【請求項3】
人力駆動車の変速機を制御する変速制御装置であって、
前記人力駆動車の自動変速に関する第1パラメータの値、および、前記人力駆動車の自動変速に関する第2パラメータの値を取得する取得部と、
前記第1パラメータにて規定される変速条件と、前記第2パラメータにて規定される切替え条件と、を記憶する記憶部と、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たさない第1状態において、現状の変速段を維持し、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たす第2状態において、前記第1パラメータと前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備え、
前記第1パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記第2パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記変速条件が、前記第1パラメータの変化に関する情報であ
る変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される条件である場合、前記切替え条件は、前記第2パラメータの値に
よって規定される条件である、変速制御装置。
【請求項4】
前記第1パラメータは、複数種類のパラメータを含み、
前記制御部は、複数種類の第1パラメータと前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する請求項2または請求項3に記載の変速制御装置。
【請求項5】
前記第2パラメータは、複数種類のパラメータを含み、
前記制御部は、複数種類の第2パラメータの少なくとも1つが前記切替え条件を満たさない状態において、現状の変速段を維持する、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の変速制御装置。
【請求項6】
前記切替え条件は、前記変速機の変速段により異なるように規定されている請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の変速制御装置。
【請求項7】
前記第1パラメータと前記第2パラメータとは異なる、請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の変速制御装置。
【請求項8】
前記第1パラメータと前記第2パラメータとは同じである、請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の変速制御装置。
【請求項9】
前記第1パラメータは、複数種類のパラメータを含み、
前記制御部は、複数種類の第1パラメータの値と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する請求項1に記載の変速制御装置。
【請求項10】
変速機と、
請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の変速制御装置と、
前記変速機の変速操作を入力する操作部と、を有し、
前記変速操作に基づいて前記変速機が変速される変速システム。
【請求項11】
人力駆動車の変速機と、
前記変速機の変速操作を入力する操作部と、
前記人力駆動車の自動変速に関する第1パラメータの値、および、前記人力駆動車の自動変速に関する第2パラメータの値を取得する取得部と、
前記第1パラメータにて規定される変速条件と、前記第2パラメータにて規定される切替え条件と、を記憶する記憶部と、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たさない第1状態において、前記変速操作にのみ基づいて、前記変速機を制御し、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たす第2状態において、前記第1パラメータと前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備え、
前記第1パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記第2パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記変速条件が、前記第1パラメータの値に
よって規定される条件である場合、前記切替え条件は、前記第2パラメータの変化に関する情報であ
る変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される条件である、変速システム。
【請求項12】
人力駆動車の変速機と、
前記変速機の変速操作を入力する操作部と、
前記人力駆動車の自動変速に関する第1パラメータの値、および、前記人力駆動車の自動変速に関する第2パラメータの値を取得する取得部と、
前記第1パラメータにて規定される変速条件と、前記第2パラメータにて規定される切替え条件と、を記憶する記憶部と、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たさない第1状態において、前記変速操作にのみ基づいて、前記変速機を制御し、
前記取得部にて取得した前記第2パラメータが前記切替え条件を満たす第2状態において、前記第1パラメータと前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備え、
前記第1パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記第2パラメータは、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、パワー、および、路面の斜度、走行抵抗の少なくとも一つを含み、
前記変速条件が、前記第1パラメータの変化に関する情報であ
る変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される条件である場合、前記切替え条件は、前記第2パラメータの値に
よって規定される条件である、変速システム。
【請求項13】
前記第2状態であっても、前記変速操作に基づいて、前記変速機を制御する、請求項
11または請求項
12に記載の変速システム。
【請求項14】
前記第1状態および前記第2状態の少なくともいずれかの状態において、現状の前記第1状態、あるいは、現状の前記第2状態をユーザに報知する報知部を更に備える、請求項
11から請求項
13のいずれか一項に記載の変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速制御装置および変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人力駆動車は、動力の伝達機構の減速比を多段にて変速することによって、走行状態に適した条件にて走行できる。近年においては、変速段を自動で変速する機能を備える人力駆動車が提案されている。特許文献1においては、走行状態を検出し、検出結果に基づいて、変速を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変速段が自動にて変速される場合、搭乗者がより運転しやすい変速段が設定されることが求められる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる変速制御装置および変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1側面に従う変速制御装置は、人力駆動車の変速機を制御する変速制御装置であって、前記人力駆動車に関する第1変数の第1参照値を取得する取得部と、前記第1変数の変化に関する情報である変化の方向、変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される変速条件を記憶する記憶部と、前記第1参照値の変化と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備える。
【0007】
前記第1側面の変速制御装置によれば、変化に関する情報に基づいて、変速段を制御することで、搭乗者の運転状況の変化に合わせて、変速段の切り替えができる。これにより、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第2側面に従う変速制御装置は、人力駆動車の変速機を制御する変速制御装置であって、前記人力駆動車に関する第1変数の第1参照値、および、前記人力駆動車に関する第2変数の第2参照値を取得する取得部と、前記第1変数にて規定される変速条件と、前記第2変数にて規定される切替え条件と、を記憶する記憶部と、前記取得部にて取得した前記第2参照値が前記切替え条件を満たさない第1状態において、現状の変速段を維持し、前記取得部にて取得した前記第2参照値が前記切替え条件を満たす第2状態において、前記第1参照値と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備える。
【0009】
前記第2側面の変速制御装置によれば、切替え条件を満たす場合、変速条件に基づいて変速段を制御することによって、搭乗者の運転状況の変化に合わせて、変速段を切り替えることができる。これにより、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0010】
前記第2側面に従う第3側面の変速制御装置において、前記第1変数は、複数種類の変数を含み、前記制御部は、複数種類の第1参照値と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する。
【0011】
前記第3側面の変速制御装置によれば、複数種類の条件に基づいて、変速機を制御することによって、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0012】
前記第2側面または前記第3側面に従う第4側面の変速制御装置において、前記第2変数は複数種類の変数を含み、前記制御部は、複数種類の第2参照値の少なくとも1つが前記切替え条件を満たさない状態において、現状の変速段を維持する。
【0013】
前記第4側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0014】
前記第2側面から前記第4側面のいずれか1つに従う第5側面の変速制御装置において、前記切替え条件は、前記第2変数の変化に関する情報である。
【0015】
前記第5側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0016】
前記第2側面から前記第5側面のいずれか1つに従う第6側面の変速制御装置において、前記切替え条件は、前記変速機の変速段により異なるように規定されている。
【0017】
前記第6側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0018】
前記第2側面から前記第6側面のいずれか1つに従う第7側面の変速制御装置において、前記第1変数と前記第2変数とは異なる。
【0019】
前記第7側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0020】
前記第2側面から前記第6側面のいずれか1つに従う第8側面の変速制御装置において、前記第1変数と前記第2変数とは同じである。
【0021】
前記第8側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0022】
前記第1側面に従う第9側面の変速制御装置において、前記第1変数は、複数種類の変数を含み、前記制御部は、複数種類の第1参照値と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する。
【0023】
前記第9側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0024】
前記第1側面から前記第9側面のいずれか1つに従う第10側面の変速制御装置において、前記第1変数は、前記人力駆動車の走行状態に関する走行情報、および、前記人力駆動車の走行環境に関する環境情報の少なくとも一方を含む。
【0025】
前記第10側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0026】
前記第2側面から前記第8側面のいずれか1つに従う第11側面の変速制御装置において、前記第2変数は、前記人力駆動車の走行状態に関する走行情報、および、前記人力駆動車の走行環境に関する環境情報の少なくとも一方を含む。
【0027】
前記第11側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0028】
前記第10側面または前記第11側面に従う第12側面の変速制御装置において、前記走行情報は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、および、パワーの少なくとも1つを含む。
【0029】
前記第12側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0030】
前記第10側面から前記第12側面のいずれか1つに従う第13側面の変速制御装置において、前記環境情報は、斜度を含む路面の状態に関する路面情報、走行抵抗に関する走行抵抗情報 、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。
【0031】
前記第13側面の変速制御装置によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0032】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第14側面に従う変速システムは、変速機と、前記第1側面から前記第12側面のいずれか1つに従う変速制御装置と、前記変速機の変速操作を入力する操作部と、を有し、前記変速操作に基づいて前記変速機が変速される。
【0033】
前記第14側面の変速システムによれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0034】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第15側面に従う変速システムは、人力駆動車の変速機と、前記変速機の変速操作を入力する操作部と、前記人力駆動車に関する第1変数の第1参照値、および、前記人力駆動車に関する第2変数の第2参照値を取得する取得部と、前記第1変数にて規定される変速条件と、前記第2変数にて規定される切替え条件と、を記憶する記憶部と、前記取得部にて取得した前記第2参照値が前記切替え条件を満たさない第1状態において、前記変速操作にのみ基づいて、前記変速機を制御し、前記取得部にて取得した前記第2参照値が前記切替え条件を満たす第2状態において、前記第1参照値と前記変速条件とに基づいて、前記変速機を制御する制御部と、を備える。
【0035】
前記第15側面の変速システムによれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0036】
前記第14側面または前記第15側面に従う第16側面の変速システムにおいて、前記第2状態であっても、前記変速操作に基づいて、前記変速機を制御する。
【0037】
前記第16側面の変速システムによれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【0038】
前記第14側面から前記第16側面のいずれか1つに従う第17側面の変速制御装置において、前記第1状態および前記第2状態の少なくともいずれかの状態において、現状の状態をユーザに報知する報知部を更に備える。
【0039】
前記第17側面の変速システムによれば、搭乗者は現状の状態を把握できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、搭乗者がより運転しやすい変速段に適切なタイミングにて変速できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る人力駆動車の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1変速条件テーブルの一例の一部を示す図である。
【
図4】
図4は、第2変速条件テーブルの一例の一部を示す図である。
【
図5】
図5は、切替条件テーブルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0043】
(人力駆動車の全体構成)
図1は、本実施形態に係る人力駆動車の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る人力駆動車10は、搭乗者が搭乗する車両であり、搭乗者が人力駆動車10を運転する。本実施形態における人力駆動車10は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動によって人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道においての運転に免許を要しない車両が想定される。
【0044】
本実施形態において、人力駆動車10は、変速システム11を有する。人力駆動車10は、搭乗者による人力の駆動力にて運転される自転車である。人力駆動車10は、フレーム12と、フォーク14と、前輪16と、後輪18と、サドル20と、ハンドル22と、クランク30と、チェーン32と、変速機34と、操作部36と、変速制御装置40と、を有する。変速システム11は、変速機34と、変速制御装置40と、変速機の変速操作を入力する操作部36と、を有し、変速操作に基づいて変速機34を変速する。
【0045】
人力駆動車10は、クランク30と後輪18とが、チェーン32と変速機34を介して連結されて、クランク30の回転が後輪18に伝達される。変速機34は、クランク30と順方向に一体にて回転するフロントスプロケット42と、後輪18と順方向に一体で回転するリアスプロケット44と、を有する。順方向は、人力駆動車10が前進する方向である。フロントスプロケット42と、リアスプロケット44とは、それぞれ、歯数が異なる複数毎のギヤを有する。チェーン32は、フロントスプロケット42と、リアスプロケット44にかけられており、フロントスプロケット42と、リアスプロケット44のかけられるギヤに応じて、変速比が変化する。
【0046】
操作部36は、搭乗者から変速機34の変速段の操作が入力される機器である。操作部36は、変速のモードを切り替える操作と、変速段を変更する操作を検出する。操作部36は、入力された変速段を変更する操作を変速機34に伝達する方法としては種々の方法が例示される。操作部36は、電気信号によって変速機34に伝達してもよく、油圧によって変速機34に伝達してもよく、ワイヤによって変速機34に伝達してもよい。また、操作部36と、変速機34とは有線によって接続されても、無線によって接続されてもよい。
【0047】
(変速制御装置の構成)
図2は、変速制御装置のブロック図である。変速制御装置40は、変速機34の変速段を制御する。変速制御装置40は。取得部60と、制御部62と、記憶部64と、を有する。変速制御装置40は、取得部60にて種々の情報を取得し、取得した情報と記憶部64に記憶されている情報とに基づいて制御部62にて変速機34の動作を制御する。
【0048】
取得部60は、操作部36とケイデンスセンサ50とトルクセンサ52と速度センサ54と地磁気センサ56と環境情報センサ58と接続され、各部から情報を取得する。取得部60は、取得した情報を制御部62に送る。
【0049】
ケイデンスセンサ50は、人力駆動車10のクランクの回転速度を検出する。ケイデンスセンサ50は、一例においては、人力駆動車10のフレーム12に設けられる。ケイデンスセンサ50は、人力駆動車10のクランク30のクランクアームに設けられる磁石を検出する磁気センサを含む。ケイデンスセンサ50は、磁気センサの検出結果からクランクアームの回転速度を検出する。
【0050】
トルクセンサ52は、クランクに加えられるトルクを検出する、トルクセンサ52は、一例においては、人力駆動車10のフレーム12に設けられる。トルクセンサ52は、一例においては、クランクに加えられるトルクを検出する歪センサ、磁歪センサ、または、光学センサである。
【0051】
速度センサ54は、人力駆動車10の走行速度を検出する。速度センサ54は、一例においては、人力駆動車10のフレームおよびフロントフォークの少なくとも一方に設けられる。速度センサ54は、人力駆動車10の前輪のスポークに設けられる磁石を検出する磁気センサを含む。速度センサ54は、磁気センサの検出結果から前輪の回転速度が検出する。速度センサ54は、前輪の回転速度から人力駆動車10の走行速度が検出する。
【0052】
地磁気センサ56は、一例においては、人力駆動車10のフレーム12に設けられる。地磁気センサ56は、重力方向に対するフレーム12の向きを検出することで、人力駆動車10の姿勢を検出する。
【0053】
環境情報センサ58は、環境情報を取得する。環境情報は、斜度を含む路面の状態に関する路面情報、走行抵抗に関する走行抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。環境情報センサ58は、一例においては、人力駆動車10のフレーム12に設けられる。環境情報センサ58は、例えば、インターネット通信を介して環境情報を取得する通信機器、周囲の温度を検出する温度センサ、周囲の湿度を検出する湿度センサ、走行路面の状態を画像から検出するセンサである。
【0054】
制御部62は、取得部60にて取得した結果および記憶部64に記憶されている状態に基づいて、演算処理を行い、結果に基づいて、変速機34の動作を制御する。制御部62は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)である。制御部62は、外部から受信した信号を搬送信号に変換する。制御部62は、モード切替部72と、判定部74と、変速段決定部76と、を有する。
【0055】
モード切替部72は、搭乗者の操作および取得部60にて取得した情報の少なくとも一方に基づいて変速段を制御するマニュアル変速モードと、走行条件等に基づいて自動で変速段を制御するオート変速モードと、を切り替える。モード切替部72は、検出したモードの情報を判定部74に送り、判定部74における処理を行うか否かを切り替える。
【0056】
判定部74は、取得部60にて取得した情報と記憶部64に記憶されたテーブルとに基づいて、変速段決定部76にて変速段の制御を行うか否かを判定する。
【0057】
変速段決定部76は、走行状態に基づいて、変速機34を決定し、決定した変速段となるように、変速機34のモータ42a、42bを制御する。モータ42aは、フロントスプロケット42のギヤ段に掛けられるチェーン32を移動させるディレイラのモータである。モータ44aは、リアスプロケット44に係るギヤ段に掛けられるチェーン32を移動させるディレイラのモータである。変速段決定部76は、判定部74にて変速段を制御すると判定された場合、処理を実行する。
【0058】
記憶部64は、制御部62から送信される情報を一時的に記憶するキャッシュメモリと、予め記憶される情報、および制御部62から送信される情報を継続的に記憶するメインメモリと、を含む。記憶部64の一例は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)である。記憶部64は、第1変速条件テーブル82と、第2変速条件テーブル84と、切替条件テーブル86と、を有する。
図3は、第1変速条件テーブルの一例の一部を示す図である。
図4は、第2変速条件テーブルの一例の一部を示す図である。
図5は、切替条件テーブルの一例を示す図である。
【0059】
第1変速条件テーブル82は、
図3に示すように、変速段の各段に対して、複数のパラメータの上限値と下限値との関係が設定されている。本実施形態の変速段は、フロントスプロケット42のギヤ段と、リアスプロケット44のギヤ段との組み合わせである。複数のパラメータとしては、斜度、速度、トルク、パワー、ケイデンスがある。また、第1変速条件テーブル82は、
図3に一部の変速段をしめしたが、全ての変速段に対して、複数のパラメータ(変数)の上限値と下限値とが設定されている。
【0060】
第2変速条件テーブル84は、変速段の各段に対して、複数のパラメータの変化に関する情報の上限値と下限値との関係が設定されている。具体的には、第2変速条件テーブル84は、
図4に示すように、変速段の各段に対して、複数のパラメータの変化量の上限値と下限値との関係が設定されている。本実施形態の変速段は、フロントスプロケット42のギヤ段と、リアスプロケット44のギヤ段との組み合わせである。複数のパラメータ(変数)の変化量としては、斜度の変化量、速度の変化量、トルクの変化量、パワーの変化量、ケイデンス変化量がある。また、第2変速条件テーブル84は、
図34一部の変速段をしめしたが、全ての変速段に対して、複数のパラメータの変化量の上限値と下限値とが設定されている。また、ここでは、第2変速条件テーブル84は、複数のパラメータの変化率の上限値と下限値との関係が設定されていてもよい。
【0061】
切替条件テーブル86は、
図5に示すように、複数のパラメータの変化量の上限値と下限値との関係が設定されている。切換条件は、変速段を自動にて切り換えるか否かを判定する基準となる範囲である。例えば、パラメータが、上限値と下限値とによって規定される所定範囲外にあるか否かに基づいて、変速段を自動にて切り換えるかを判定する。
【0062】
(変速制御装置の制御のフロー)
以下、変速制御装置の制御のフローを、フローチャートに基づき説明する。
図6および
図7は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【0063】
変速制御装置40は、モード切替部72にて処理を行うことによってオート変速モードとマニュアル変速モードとを切り替える。以下、
図6を用いて説明する。変速制御装置40は、モード切替操作があるかを判定する(ステップS2)。具体的には、操作部36にモード切替の操作が入力されたかを判定する。変速制御装置40は、モード切替操作がない(ステップS2においてNo)と判定した場合、本処理を終了する。
【0064】
変速制御装置40は、モード切替操作がある(ステップS2においてYes)と判定した場合、マニュアル変速モードであるかを判定する(ステップS4)。変速制御装置40は、マニュアル変速モードであると判定した場合(ステップS4においてYes)、モードをマニュアル変速モードからオート変速モードに切り替え(ステップS6)、本処理を終了する。変速制御装置40は、マニュアル変速モードではない、つまりオート変速モードであると判定した場合(ステップS4においてNo)、モードをオート変速モードからマニュアル変速モードに切り替え(ステップS8)、本処理を終了する。
【0065】
なお、本実施形態においてはモードの切り替えを搭乗者の操作に基づいて行ったが、変速制御装置40が取得部60にて取得した各種パラメータの情報に基づいてモードの切り替えが必要かを判定してもよい。
【0066】
変速制御装置40は、
図3に示す第1変速条件テーブル82を用いて、
図7に示す処理を実行することによって、変速段の制御を行う。また、変速制御装置40は、変速段を自動にて変更するオート変速モードの場合に本処理を実行することが好ましい。
【0067】
変速制御装置40は、現時点の変速段の情報を取得する(ステップS12)。制御部62は、取得部60を介して操作部36から取得した情報および変速段決定部76にて決定した情報に基づいて、現時点の変速段の情報を取得する。
【0068】
変速制御装置40は、変速段に基づいて変速段の変更を行う所定値を決定する(ステップS14)。変速制御装置40は、
図3に示す第1変速条件テーブル82と、取得した現在の変速段の情報と、に基づいて、所定値を設定する。本実施形態においては、現在の変速段に対して設定されている斜度の上限値、速度の下限値、トルクの上限値、パワーの上限値、ケイデンスの上限値を所定値に設定する。
【0069】
変速制御装置40は、所定値を決定した後、斜度≧所定値であるかを判定する(ステップS16)。制御部62は、地磁気センサ56の検出結果に基づいて斜度を検出する。変速制御装置40は、斜度≧所定値ではない、つまり斜度<所定値であると判定した場合(ステップS16においてNo)、本処理を終了する。
【0070】
変速制御装置40は、斜度≧所定値であると判定した場合(ステップS16においてYes)、速度≦所定値であるかを判定する(ステップS18)。制御部62は、速度センサ54の検出結果に基づいて速度を検出する。変速制御装置40は、速度≦所定値ではない、つまり速度>所定値であると判定した場合(ステップS18においてNo)、本処理を終了する。
【0071】
変速制御装置40は、速度≦所定値であると判定した場合(ステップS18においてYes)、トルク≧所定値であるかを判定する(ステップS20)。制御部62は、トルクセンサ52の検出結果に基づいてトルクを検出する。変速制御装置40は、トルク≧所定値ではない、つまりトルク<所定値であると判定した場合(ステップS20においてNo)、本処理を終了する。
【0072】
変速制御装置40は、トルク≧所定値であると判定した場合(ステップS20においてYes)、パワー≧所定値であるかを判定する(ステップS22)。制御部62は、検出したトルク、斜度、ケイデンス等の検出結果に基づいてパワーを検出する。変速制御装置40は、パワー≧所定値ではない、つまりパワー<所定値であると判定した場合(ステップS22においてNo)、本処理を終了する。
【0073】
変速制御装置40は、パワー≧所定値であると判定した場合(ステップS22においてYes)、ケイデンス≧所定値であるかを判定する(ステップS24)。制御部62は、ケイデンスセンサ50の検出結果に基づいてケイデンスを検出する。変速制御装置40は、ケイデンス≧所定値ではない、つまりケイデンス<所定値であると判定した場合(ステップS24においてNo)、本処理を終了する。
【0074】
変速制御装置40は、ケイデンス≧所定値であると判定した場合(ステップS24においてYes)、変速段を決定する(ステップS26)。つまり、変速制御装置40は、全てのパラメータが所定値から外れている、具体的には上限値よりも大きい、または下限値よりも小さい値と判定した場合、変速段を決定する。変速制御装置40は、変速段決定部76にて処理を行い、第2変速条件テーブル84の各パラメータの上限値と下限値と、現在の走行条件のパラメータに基づいて、現在の走行条件の全てのパラメータが、上限値と下限値に含まれる変速段を切り換える変速段に設定する。すなわち、変速制御装置40は、複数のパラメータの変化に関する情報に基づいて変速段を設定する。
【0075】
変速制御装置40は、決定した変速段に基づいて、変速機34を制御し、自動にて変速段を変更し(ステップS28)、本処理を終了する。
【0076】
このように、変速制御装置40は、オート変速モードと、マニュアル変速モードを切替可能とし、オート変速モードにおいては、複数のパラメータ(変数)の変化に関する情報に基づいて、変速段を制御することによって、より適切なタイミングにて走行状態に適応した変速段に変更できる。
【0077】
本実施形態の変速制御装置40は、斜度、速度、トルク、パワー、ケイデンスの全てを用いて、全てのパラメータが所定値の範囲から外れている場合、変速を行ったが、本発明はこれに限定されない。変速制御装置40は、少なくともトルクを変数とすることが好ましい。トルクに基づいて、変速機34を制御することによって、変速段を好適に制御できる。また、変速制御装置40は、トルクと、斜度と、速度の3つを変数とすることがより好ましい。また、変速制御装置40は、パワー、ケイデンスをさらに用いることがより好ましい。
【0078】
なお、
図7に示す処理は、上り坂の走行時に好適に適用できる処理となる。下り坂の場合は、所定値として設定する上限値と下限値を入れ換え、上限値以上であるか、下限値以下であるかによって判定すればよい。具体的には、現在の変速段に対して設定されている斜度の下限値、速度の上限値、トルクの下限値、パワーの下限値、ケイデンスの下限値を所定値に設定し、判定の不等号を
図7の処理に対して逆転させる。また、変速段の上限値と下限値とによって所定値を所定範囲とし、所定範囲に含まれないか、含まれるかに基づいて判定を行ってもよい。この場合、全てのパラメータが所定範囲から外れている場合、変速段を変速するようにすればよい。所定値の設定については、他の例も同様に種々の基準、範囲にできる。
【0079】
また、変速制御装置40は、走行条件、例えば、上り坂、平坦、下り坂を検出し、検出した走行条件に基づいて、設定する所定値と、YesとNoを判定する不等号を決定してもよい。この点は、他の制御においても同様である。
【0080】
(変速制御装置の他の制御のフロー)
以下、変速制御装置の制御のフローを、フローチャートに基づき説明する。
図8は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。変速制御装置40は、
図4に示す第2変速条件テーブル84を用いて、
図8に示す処理を実行することによって、変速段の制御を行う。また、変速制御装置40は、変速段を自動にて変更するオート変速モードの場合に本処理を実行する。なお、本実施形態は、オート変速モードとマニュアル変速モードとの切り替えを行わず、常に自動にて変速を行う人力駆動車10にも適用できる。
【0081】
変速制御装置40は、現時点の変速段の情報を取得する(ステップS42)。制御部62は、取得部60を介して操作部36から取得した情報および変速段決定部76にて決定した情報に基づいて、現時点の変速段の情報を取得する。
【0082】
変速制御装置40は、変速段に基づいて変速段の変更を行う所定値を決定する(ステップS44)。変速制御装置40は、
図4に示す第2変速条件テーブル84と、取得した現在の変速段の情報と、に基づいて、所定値を設定する。本実施形態においては、現在の変速段に対して設定されている斜度の変化量の上限値、速度の変化量の上限値、トルクの変化量の上限値、パワーの変化量の上限値、ケイデンスの変化量の上限値を所定値に設定する。
【0083】
変速制御装置40は、所定値を決定した後、斜度の変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS46)。制御部62は、地磁気センサ56の検出結果の時間変化に基づいて斜度の変化量を検出する。変速制御装置40は、斜度の変化量≧所定値ではない、つまり斜度の変化量<所定値であると判定した場合(ステップS46においてNo)、本処理を終了する。
【0084】
変速制御装置40は、斜度の変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS46においてYes)、速度の変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS48)。制御部62は、速度センサ54の検出結果の時間変化に基づいて速度の変化量、つまり加速度を検出する。変速制御装置40は、速度の変化量≧所定値ではない、つまり速度の変化量<所定値であると判定した場合(ステップS48においてNo)、本処理を終了する。
【0085】
変速制御装置40は、速度の変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS48においてYes)、トルクの変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS50)。制御部62は、トルクセンサ52の検出結果の時間変化に基づいてトルクの変化量を検出する。変速制御装置40は、トルクの変化量≧所定値ではない、つまりトルクの変化量<所定値であると判定した場合(ステップS50においてNo)、本処理を終了する。
【0086】
変速制御装置40は、トルクの変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS50においてYes)、パワーの変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS52)。制御部62は、検出したトルク、斜度、ケイデンス等の検出結果の時間変化に基づいてパワーの変化量を検出する。変速制御装置40は、パワーの変化量≧所定値ではない、つまりパワーの変化量<所定値であると判定した場合(ステップS52においてNo)、本処理を終了する。
【0087】
変速制御装置40は、パワーの変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS52においてYes)、ケイデンスの変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS54)。制御部62は、ケイデンスセンサ50の検出結果の時間変化に基づいてケイデンスの変化量を検出する。変速制御装置40は、ケイデンスの変化量≧所定値ではない、つまりケイデンスの変化量<所定値であると判定した場合(ステップS54においてNo)、本処理を終了する。
【0088】
変速制御装置40は、ケイデンスの変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS54においてYes)、変速段を決定する(ステップS56)。つまり、変速制御装置40は、全てのパラメータの変化量が所定値から外れている、具体的には上限値よりも大きいと判定した場合、変速段を決定する。変速制御装置40は、変速段決定部76にて処理を行い、第1変速条件テーブル82の各パラメータの上限値と下限値と、現在の走行条件のパラメータに基づいて、現在の走行条件の全てのパラメータが、上限値と下限値に含まれる変速段を切り換える変速段に設定する。変速制御装置40は、第2変速条件テーブル84を用いて変速段を決定しても、別のテーブルに基づいて変速段を決定してもよい。また、変速制御装置40は、ステップS56において予め定められた変化段数、例えば1段、に基づいて変速段数を決定してもよい。また、変速制御装置40は、ステップS56において予め定められた変化段数、例えば1段、に基づいて変速段数を決定してもよい。また、変速段は2段以上変化してもよい。
【0089】
変速制御装置40は、決定した変速段に基づいて、変速機34を制御し、自動にて変速段を変更し(ステップS58)、本処理を終了する。
【0090】
このように、変速制御装置40は、人力駆動車の変速機を制御する変速制御装置であって、人力駆動車10に関する第1変数の第1参照値を取得する取得部60と、第1変数の変化に関する情報である変化の方向、変化量および変化率の少なくとも1つによって規定される変速条件を記憶する記憶部64と、第1参照値の変化と変速条件とに基づいて、変速機34を制御する制御部62と、を備える。このように、第1変数である各種パラメータの変化量に基づいて変速段を制御することによって、走行状態に適切に対応した変速段を設定できる。
【0091】
また、変速制御装置40は、第2変速条件テーブル84を用いて、第1変数の所定値を設定したがこれに限定されない。変速制御装置40は、予め規定される複数のパラメータの変化の方向(増加傾向、減少傾向、または、維持傾向)に応じて、ステップS46からステップS54の判断を行なってもよい。このように、変速制御装置40は、第1変数の所定値、例えば上限値、下限値ではなく、第1変数の変化の方向に基づいて、変速段を切り替える処理を実行するかの判定を行ってもよい。
【0092】
変速制御装置40は、変速段の決定するパラメータである第1変数が、複数種類の変数を含み、制御部62が複数種類の第1参照値と変速条件とに基づいて、変速機34を制御する。このように複数の第1変数に基づいて変速段を制御することによって、走行状態に適切に対応した変速段を設定できる。
【0093】
変速制御装置40は、報知部38により、自動にて変速段を制御している状態か、搭乗者の操作によって変速段を制御している状態かを示す報知を行うことが好ましい。これにより、搭乗者は、自身によって設定した変速段にて走行しているか、変速制御装置40によって設定した変速段にて走行しているかを知りながら走行できる。
【0094】
(変速制御装置の他の制御のフロー)
以下、変速制御装置の制御のフローを、フローチャートに基づき説明する。
図9は、変速制御装置の制御フローの一例を示すフローチャートである。変速制御装置40は、
図5に示す切替条件テーブル86を用いて、
図9に示す処理を実行することによって、変速段の切り替えを行うかを判定し、変速段の制御を行う。また、変速制御装置40は、変速段を搭乗者の操作によって変更するマニュアル変速モードの場合に本処理を実行する。変速制御装置40は、変速段を自動にて変更するオート変速モードの場合に本処理を実行し、変速段を変更するかを判定してもよい。なお、本実施形態は、オート変速モードとマニュアル変速モードとの切り替えを搭乗者が行わず、自動にてオート変速モードとマニュアル変速モードとの切り替えを行う人力駆動車10にも適用できる。
【0095】
変速制御装置40は、マニュアル変速モードであることを検出し(ステップS70)、変速段を再設定する変化量の所定値を設定する(ステップS72)。具体的には、変速制御装置40は、
図5に示す切替条件テーブル86に基づいて、所定値を設定する。したがって、所定値は、現在の変速段によって変化しない一定の値となる。本実施形態においては、現在の変速段に対して設定されている斜度の変化量の上限値、速度の変化量の上限値、トルクの変化量の上限値、パワーの変化量の上限値、ケイデンスの変化量の上限値を所定値に設定する。
【0096】
変速制御装置40は、所定値を決定した後、斜度の変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS74)。制御部62は、地磁気センサ56の検出結果の時間変化に基づいて斜度の変化量を検出する。変速制御装置40は、斜度の変化量≧所定値ではない、つまり斜度の変化量<所定値であると判定した場合(ステップS74においてNo)、本処理を終了する。すなわち、変速制御装置40は、マニュアル変速モードを維持する。また、この場合において、報知部38は搭乗者の操作によって変速段を制御している状態であることを示す報知を行う。これにより、搭乗者は、自身によって設定した変速段にて走行していることを把握できる。
【0097】
変速制御装置40は、斜度の変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS74においてYes)、速度の変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS76)。制御部62は、速度センサ54の検出結果の時間変化に基づいて速度の変化量、つまり加速度を検出する。変速制御装置40は、速度の変化量≧所定値ではない、つまり速度の変化量<所定値であると判定した場合(ステップS76においてNo)、本処理を終了する。すなわち、変速制御装置40は、マニュアル変速モードを維持する。また、この場合において、報知部38は搭乗者の操作によって変速段を制御している状態であることを示す報知を行う。
【0098】
変速制御装置40は、速度の変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS76においてYes)、トルクの変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS78)。制御部62は、トルクセンサ52の検出結果の時間変化に基づいてトルクの変化量を検出する。変速制御装置40は、トルクの変化量≧所定値ではない、つまりトルクの変化量<所定値であると判定した場合(ステップS78においてNo)、本処理を終了する。すなわち、変速制御装置40は、マニュアル変速モードを維持する。また、この場合において、報知部38は搭乗者の操作によって変速段を制御している状態であることを示す報知を行う。
【0099】
変速制御装置40は、トルクの変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS78においてYes)、パワーの変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS80)。制御部62は、検出したトルク、斜度、ケイデンス等の検出結果の時間変化に基づいてパワーの変化量を検出する。変速制御装置40は、パワーの変化量≧所定値ではない、つまりパワーの変化量<所定値であると判定した場合(ステップS80においてNo)、本処理を終了する。すなわち、変速制御装置40は、マニュアル変速モードを維持する。また、この場合において、報知部38は搭乗者の操作によって変速段を制御している状態であることを示す報知を行う。
【0100】
変速制御装置40は、パワーの変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS80においてYes)、ケイデンスの変化量≧所定値であるかを判定する(ステップS82)。制御部62は、ケイデンスセンサ50の検出結果の時間変化に基づいてケイデンスの変化量を検出する。変速制御装置40は、ケイデンスの変化量≧所定値ではない、つまりケイデンスの変化量<所定値であると判定した場合(ステップS82においてNo)、本処理を終了する。すなわち、変速制御装置40は、マニュアル変速モードを維持する。また、この場合において、報知部38は搭乗者の操作によって変速段を制御している状態であることを示す報知を行う。
【0101】
変速制御装置40は、ケイデンスの変化量≧所定値であると判定した場合(ステップS82においてYes)、走行条件に基づいて、変速段を決定する(ステップS84)。つまり、変速制御装置40は、全てのパラメータの変化量が所定値から外れている、具体的には上限値よりも大きいと判定した場合、変速段を再設定する処理を実行する。変速制御装置40は、例えば、変速段決定部76にて処理を行い、第1変速条件テーブル82の各パラメータ(変数)の上限値と下限値と、現在の走行条件のパラメータ(参照値)に基づいて、現在の走行条件の全てのパラメータ(参照値)が、上限値と下限値に含まれる変速段を切り換える変速段に設定する。変速制御装置40は、第2変速条件テーブル84を用いて変速段を決定しても、別のテーブルに基づいて変速段を決定してもよい。また、変速制御装置40は、走行条件に基づいて現状と同じ変速段にすると決定する場合もある。また、変速制御装置40は、ステップS84において予め定められた変化段数、例えば1段、に基づいて変速段数を決定してもよい。また、変速段は、2段以上変化してもよい。
【0102】
変速制御装置40は、決定した変速段に基づいて、変速機34を制御し、自動にて変速段を変更し(ステップS86)、本処理を終了する。すなわち、変速制御装置40は、現在の走行条件のパラメータ(参照値)と変速条件テーブルとに基づいて、自動にて変速機34を制御する。また、この場合において、報知部38は自動にて変速段を制御したことを搭乗者に報知する。これにより、搭乗者は、変速制御装置40によって設定された変速段にて走行していることを把握できる。
【0103】
このように、変速制御装置40は、人力駆動車10の変速機34を制御する変速制御装置40であって、人力駆動車10に関する第1変数の第1参照値、および、前記人力駆動車に関する第2変数の第2参照値を取得する取得部60と、第1変数にて規定される変速条件(第1変速条件テーブルまたは他の条件テーブル)と、第2変数にて規定される切替条件(切替条件テーブル86)と、を記憶する記憶部64と、取得部60にて取得した第2参照値が切替え条件を満たさない第1状態において、現状の変速段を維持し、取得部60にて取得した第2参照値が前記切替え条件を満たす第2状態において、第1参照値と前記変速条件とに基づいて、変速機34を制御する制御部62と、を備える。また、変速システム11は、取得部60にて取得した第2参照値が切替え条件を満たさない第1状態において、変速操作にのみ基づいて、変速機34を制御し、取得部60にて取得した第2参照値が切替え条件を満たす第2状態において、第1参照値と変速条件とに基づいて、変速機を制御する制御部62と、を備えるとも言える。変速制御装置40は、第2状態であっても、変速操作に基づいて、変速機を制御できる。変速システム11および変速制御装置40は、このように、オート変速とマニュアル変速の両方を可能とし、さらに、変速を自動にて行うかを判定し、変速する条件を満たした場合に、変速段を自動にて制御することによって、搭乗者により即した変速ができる。また、本実施形態においては、第2変数をパラメータの変化量としたが、パラメータの値に基づいて制御を行ってもよい。また、本実施形態においては、第2変数の所定値として設定できる切替条件テーブル86の変数を上限値と下限値の両方備えている場合としたが、上限値のみとしてもよい。また、所定値を変数の範囲としてもよい。また、変速制御装置40は、第2変数の所定値を設定したがこれに限定されない。変速制御装置40は、予め規定される複数のパラメータの変化の方向(増加傾向、減少傾向、または、維持傾向)に応じて、ステップS74からステップS82の判断を行なってもよい。このように、変速制御装置40は、第2変数の所定値、例えば上限値、下限値ではなく、第2変数の変化の方向に基づいて、変速段を再設定する処理を実行するかの判定を行ってもよい。
【0104】
また、変速制御装置40は、切替の条件である第2変数は複数種類の変数を含み、制御部62は、複数種類の第2参照値の少なくとも1つが切替え条件を満たさない状態において、現状の変速段を維持する。これにより、搭乗者が意図しないタイミングにおける自動による変速の発生を抑制できる。
【0105】
また、切替え条件は、第2変数の変化に関する情報であることによって、走行状態の変化に合わせて変速を行うかを判定できる。また、切替条件は、変速機の変速段により異なるように規定されていることが好ましい。これにより、走行状態の変化に合わせて必要なタイミングにて、自動にて変速段を制御できる。
【0106】
第1変数と第2変数とは異なってもよいし、本実施形態のように第1変数と第2変数とは同じでもよい。また、変速制御装置40は、
図7に示すように、第1変数は、複数種類の変数を含み、制御部62は、複数種類の第1参照値と変速条件とに基づいて、変速機を制御することによって、好適な変速段に制御できる。
【0107】
第1変数は、人力駆動車の走行状態に関する走行情報、および、人力駆動車の走行環境に関する環境情報の少なくとも一方を含むことが好ましい。また、第2変数は、人力駆動車の走行状態に関する走行情報、および、人力駆動車の走行環境に関する環境情報の少なくとも一方を含むことが好ましい。走行情報は、本実施形態のように、ケイデンス、人力駆動車のクランクに作用するトルク、車速、加速度、および、パワーの少なくとも1つを含む。さらに変速制御装置40は、環境情報に基づいて、変速段を制御することによって、より適切に変速を制御できる。
【0108】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲にて構成要素の種々の省略、置換または変更できる。
【符号の説明】
【0109】
10 人力駆動車
11 変速システム
12 フレーム
14 フォーク
16 前輪
18 後輪
20 サドル
22 ハンドル
30 クランク
32 チェーン
34 変速機
36 操作部
38 報知部
40 変速制御装置
42 フロントスプロケット
42a、42b モータ
44 リアスプロケット
50 ケイデンスセンサ
52 トルクセンサ
54 速度センサ
56 地磁気センサ
58 環境情報センサ
60 取得部
62 制御部
64 記憶部
72 モード切替部
74 判定部
76 変速段決定部
82 第1変速条件テーブル
84 第2変速条件テーブル
86 切替え条件テーブル