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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20231027BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231027BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231027BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20231027BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231027BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20231027BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20231027BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20231027BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/895
A61Q1/02
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019093732
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020186217
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】永井 裕子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210440(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069403(WO,A1)
【文献】特開2017-114831(JP,A)
【文献】特開2018-035091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)不揮発性のフェニル変性シリコーン 0.1~10質量%、
(B)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油 0.01~30質量%、
(C)トリメチルシロキシケイ酸、及びアクリルシリコーン共重合体から選ばれる1種又は2種以上の皮膜形成剤 0.01~20質量%、
(D)シリコーン処理とN-アシルアミノ酸処理で同時に処理された着色顔料を含む、疎水化処理された着色顔料 1~20質量%
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、0.02~2である油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~20である請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌に密着して、均一な仕上がりが得られ、化粧持続性に優れた化粧料が検討されている。
例えば、特許文献1には、シリコーン樹脂球状弾性粉体、デキストリン脂肪酸エステル、不揮発性のフェニル変性シリコーン及び揮発性シリコーン油を含有する油中水型乳化化粧料が、塗布中の筋ムラができにくく、肌に素早く密着させることができ、毛穴カバー力に優れ、均一でマットな仕上がりが得られることが記載されている。
特許文献2には、シリコーン化多糖化合物、特定のエステル油及び疎水化処理された着色顔料を含有する油中水型乳化化粧料が、塗布後の肌に皮膜感がなく、塗布後の肌の仕上がりが均一で、艶やかに見え、粉っぽく見えないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-114831号公報
【文献】特開2018-35092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の化粧料では、塗布後の肌に、ツヤのある均一な仕上がりが得られず、肌が乾燥したときに感じられるようなつっぱる感じがあった。
また、化粧料を塗布した後に粉感があり、時間が経過すると、しわの中に粉がたまり、しわが目立つという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、不揮発性のフェニル変性シリコーン、特定のエステル油、皮膜形成剤及び疎水化処理された着色顔料を組合わせて用いることにより、上記課題を解決した油中水型乳化化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)不揮発性のフェニル変性シリコーン 0.1~10質量%、
(B)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油 0.01~30質量%、
(C)皮膜形成剤 0.01~20質量%、
(D)疎水化処理された着色顔料 1~20質量%
を含有する油中水型乳化化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水型乳化化粧料は、ツヤのある均一な仕上がりが得られ、塗布後の肌に、つっぱり感や粉感がなく、時間が経過しても、しわが目立たないものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(A)のフェニル変性シリコーンは、不揮発性のものである。ここで、不揮発性とは、油剤1gを直径48mmのガラスシャーレに広げ、25℃、常圧で24時間放置した後の質量減少率が1%以下のものを言う。
また、成分(A)は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させる観点から、25℃で、5mm2/s以上の粘度を有するものが好ましく、500mm2/s以下の粘度を有するものが好ましい。
成分(A)としては、例えば、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等が挙げられる。
これらのうち、ツヤのある均一な仕上がりを向上させる観点から、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンがより好ましい。
【0009】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、全組成中に0.1~10質量%であり、0.3~7質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。
【0010】
成分(B)のエステル油は、25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるものである。
液状とは、流動性を有し、25℃で液体のものである。また、成分(B)の融点は、20℃以下が好ましい。
【0011】
成分(B)を構成する脂肪酸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれでも良く、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、飽和脂肪酸が好ましい。また、直鎖脂肪酸又は分岐鎖脂肪酸のいずれでも良く、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、分岐鎖脂肪酸が好ましい。また、これらの脂肪酸は、ヒドロキシ基を有していても良い。
このような脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。また、上記飽和脂肪酸の中でも、炭素数16~28の飽和脂肪酸が好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられる。また、炭素数16~22の飽和脂肪酸がより好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0012】
成分(B)を構成するアルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールであり、なかでも、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、ジペンタエリスリトールが好ましい。
成分(B)としては、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして、例えば、(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ペンタエリスリチル等が挙げられ、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして、例えば、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
成分(B)としては、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルがよりさらに好ましい。
【0013】
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては、サラコスWO-6(日清オイリオ社製)、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては、サラコスDP-518N(日清オイリオ社製)等の市販品を用いることができる。
また、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ペンタエリスリチルは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルは、後記製造例に記載された方法で製造することができる。
【0014】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~30質量%であり、0.05~10質量%が好ましく、0.08~5質量%がより好ましく、0.3~2質量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、0.1~20であるのが好ましく、0.7~13がより好ましく、2~7がさらに好ましい。
【0016】
成分(C)の皮膜形成剤としては、通常の化粧料に用いられるもので、トリメチルシロキシケイ酸、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリルシリコーン共重合体等が挙げられる。
【0017】
トリメチルシロキシケイ酸としては、シロキサン構造を主骨格とした架橋構造を持つ化合物で、[(CH33SiO1/2S[SiO2Tで表されるもの(Sは1~3、Tは0.5~8)が好ましい。
【0018】
また、その性状は、25℃で液状、ガム状、ペースト状、固体状などのいずれでも良いが、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、固体状のものが好ましい。また、溶剤に溶解して使用することもできる。溶剤としては、シリコーン油、炭化水素油が挙げられ、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン(2cs)、ジメチルポリシロキサン(6cs)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましい。
【0019】
トリメチルシロキシケイ酸としては、化粧品表示名称「トリメチルシロキシケイ酸」(INCI名称「Trimethylsiloxysilicate」)が好ましく、SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、予め溶剤に溶解させたものでは、KF-7312T(60質量%メチルトリメチコン溶液)、KF-7312L(50質量%ジメチルポリシロキサン(2cs)溶液)、KF-7312J(50質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KF-7312K(50質量%ジメチルポリシロキサン(6cs)溶液)(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0020】
フッ素変性シリコーン樹脂としては、下記一般式(1):
1 gSiO(4-g)/2 (1)
(式中、R1は炭素数1~8の炭化水素基、フェニル基、水酸基又は一般式-R2-Rf(R2は炭素数2~6の2価のアルキレン基を示し、Rfは炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を示す)であって、水酸基及び一般式-R2-Rfを必須とする官能基から任意に選ばれ、gは平均数で1.0≦g≦1.8である。尚、R1は、同じであっても、異なっても良い)
で表される構造を有するものが好ましい。
【0021】
また、フッ素変性シリコーン樹脂は、25℃で固体状であるのが好ましい。また、溶剤に溶解して使用することもできる。
溶剤としては、シリコーン油が挙げられ、シリコーン油としては、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン(2cs)、ジメチルポリシロキサン(10cs)から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン(10cs)から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンがさらに好ましい。
【0022】
このようなフッ素変性シリコーン樹脂としては、化粧品表示名称「トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸」(INCI名称「Trifluoropropyldimethyl/Trimethylsiloxysilicate」が好ましく、予め溶剤に溶解させたXS66-B8226(50質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、XS66-B8636(50質量%ジメチルポリシロキサン(10cs)溶液)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等の市販品を用いることができる。
【0023】
アクリルシリコーン共重合体としては、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体、アクリル-シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。
カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体としては、特開平11―1530号公報、特開2000-63225号公報に記載されたものを用いることが好ましい。
カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体の性状は、25℃で液状、ガム状、ペースト状、固体状などのいずれでも良いが、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、固体状のものが好ましい。また、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、溶媒によって希釈された溶液や分散液であることが好ましい。なかでも、液状油によって希釈された分散液として用いるのが好ましく、シリコーン油、炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましく、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカンから選ばれる1種又は2種以上を用いるのがより好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカンから選ばれる1種又は2種以上を用いるのがさらに好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンがよりさらに好ましい。
【0024】
カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体としては、シリコーンデンドリマー・アクリル共重合体が好ましく、化粧品表示名称「(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー」(INCI名称「Acrylates/Polytrimethylsiloxymethacrylate Copolymer」)が好ましく、予め溶剤に溶解させたFA4001CM(30質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、FA4002ID(40質量%イソドデカン溶液)(以上、東レ・ダウコーニング社製)等の市販品を用いることができる。
【0025】
アクリル-シリコーン系グラフト共重合体としては、特開平2-25411号公報に記載されたものを用いることが好ましい。
アクリル-シリコーン系グラフト共重合体は、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、25℃で固体状のものが好ましい。
また、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、溶剤に溶解して使用するのが好ましい。溶剤としては、シリコーン油、炭化水素油が挙げられ、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンがよりさらに好ましい。
【0026】
アクリル-シリコーン系グラフト共重合体としては、化粧品表示名称「(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー」(INCI名称「Acrylates/Dimethicone Copolymer」)が好ましく、予め溶剤に溶解させたKP545(30質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KP549(40質量%メチルトリメチコン溶液)、KP550(40質量%イソドデカン溶液)(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0027】
成分(C)の皮膜形成剤としては、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、トリメチルシロキシケイ酸、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリルシリコーン共重合体から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、トリメチルシロキシケイ酸、フッ素変性シリコーン樹脂、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体、トリメチルシロキシケイ酸から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、トリメチルシロキシケイ酸から選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましい。
【0028】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、全組成中に0.01~20質量%であり、0.1~12質量%が好ましく、0.2~7質量%がより好ましく、0.8~3質量%がさらに好ましい。
【0029】
本発明において、成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、0.1~6であるのが好ましく、0.31~3.2がより好ましく、0.6~1.5がさらに好ましい。
【0030】
本発明において、成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、0.01~8であるのが好ましく、0.02~4がより好ましく、0.08~1.6がさらに好ましく、0.2~0.7がよりさらに好ましい。
【0031】
本発明で用いる成分(D)は、疎水化処理された着色顔料である。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更にカーボンブラック等の無機顔料;タール系色素、レーキ顔料等の有機顔料、カルミン等の天然色素などが挙げられる。
着色顔料としては、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、肌をきれいなメイクアップ効果で仕上げる観点から、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、微粒子酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがさらに好ましい。
【0032】
これらの着色顔料の疎水化処理としては、シリコーン処理、フッ素処理、脂肪酸処理、N-アシルアミノ酸処理等が挙げられる。シリコーン処理としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理等が挙げられ、フッ素処理としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理等が挙げられ、脂肪酸処理としては、ステアリン酸処理、ミリスチン酸処理等が挙げられ、N-アシルアミノ酸処理としては、ラウロイルリジン処理、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa処理、ステアロイルグルタミン酸2Na処理、ラウロイルアスパラギン酸Na処理等が挙げられる。
疎水化処理としては、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌のつっぱり感や粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、シリコーン処理、N-アシルアミノ酸処理から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、ステアロイルグルタミン酸2Na処理、ラウロイルアスパラギン酸Na処理から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ジメチルポリシロキサン処理、ステアロイルグルタミン酸2Na処理から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましい。また、シリコーン処理とN-アシルアミノ酸処理で同時に処理したものが好ましく、ジメチルポリシロキサン処理、ステアロイルグルタミン酸2Na処理で同時に処理したものがより好ましい。
【0033】
着色顔料を疎水化処理するには、通常の方法により、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
処理量は、着色顔料の質量に対して、0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
なお、成分(D)の含有量は、疎水化処理した剤を含めての質量を意味する。
【0034】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、ツヤのある均一な仕上がりを向上させ、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、含有量は、全組成中に1~20質量%であり、3~18質量%が好ましく、8~17質量%がより好ましい。
【0035】
本発明の油中水型乳化化粧料は、さらに、揮発性油を含有することができ、塗布後の肌のつっぱり感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させることができる。ここで、揮発性とは、35~100℃の引火点を有するものである。
揮発性油としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、シリコーン油、炭化水素油、エーテル油等が挙げられる。
シリコーン油としては、鎖状ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサンが挙げられる。鎖状ジメチルポリシロキサンとしては、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、直鎖のものとしては、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等が挙げられ、分岐鎖のもとしては、メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等が挙げられる。環状ジメチルポリシロキサンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。
炭化水素としては、イソドデカン、イソトリデカン、イソヘキサデカン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン等が挙げられ、エーテル油としては、エチルパーフルオロブチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
これらのうち、塗布後の肌のつっぱり感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させることが観点から、シリコーン油、炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカン、軽質イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましい。
【0037】
揮発性油は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は塗布後の肌のつっぱり感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、全組成中に5~40質量%であるのが好ましく、8~35質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明の油中水型乳化化粧料は、さらに、板状粉体を含有することができ、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させることができる。
ここで、板状とは、形状が狭義の板状の他、薄片状、鱗状等の形状の粉体も含まれる。
板状粉体は、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、体積平均粒子径1~100μmであるのが好ましく、8~60μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましい。また、アスペクト比10~80が好ましく、15~70がより好ましい。
【0039】
本発明において、体積平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定器(セイシン企業社製、LMS-350)により測定される。また、本発明において、体積平均粒子径とは、体積基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。
また、アスペクト比は、体積平均粒子径と粒子の平均厚さとの比により計算されるものであり、アスペクト比=(体積平均粒子径/平均厚さ)で定義される。
なお、粒子の平均厚さは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡により観察して測定した10~50個の母粒子の厚さを数平均して求められる。
【0040】
板状粉体としては、例えば、板状酸化セリウム、板状硫酸バリウム、タルク、マイカ、板状カオリン、セリサイト、白雲母、板状合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、板状無水ケイ酸、板状ヒドロキシアパタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、板状セラミックスパウダー、板状アルミナ、板状窒化ホウ素、板状酸化鉄、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、アルミニウム、板状ガラス末等が挙げられる。
板状粉体としては、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、タルク、マイカ、板状合成雲母、板状窒化ホウ素、板状ガラス末から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、タルク、板状合成雲母、板状窒化ホウ素から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、タルク、板状窒化ホウ素から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、タルクがよりさらに好ましい。
【0041】
また、板状粉体は、そのまま用いることができるほか、必要に応じて、成分(D)と同様に、疎水化処理したものを用いることもできる。
なお、板状粉体を疎水化処理した場合、その含有量、体積平均粒子径、粒子の厚さは、疎水化処理した剤を含めての含有量、体積平均粒子径、粒子の厚さを意味する。
【0042】
板状粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、全組成中に1~30質量%が好ましく、1.5~20質量%がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましく、2.5~7質量%がよりさらに好ましい。
【0043】
本発明の油中水型乳化化粧料は、さらに、球状粉体を含有することができ、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させることができる。
ここで、球状とは、真球、略球状、回転楕円体を含み、表面に凹凸がある球状粉体等であっても良い。
球状粉体は、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、体積平均粒子径1~50μmであるのが好ましく、2~30μmがより好ましく、3~20μmがさらに好ましい。
【0044】
球状粉体としては、例えば、球状ポリアミド樹脂、球状ポリメタクリル酸メチル樹脂、球状ポリウレタン樹脂、球状シリコーン樹脂、球状ポリエチレン樹脂、球状ポリスチレン樹脂、球状セルロース樹脂、球状ポリ乳酸樹脂、球状シリカなどが挙げられる。中でも、球状ポリメタクリル酸メチル樹脂、球状ポリウレタン樹脂、球状シリコーン樹脂、球状セルロース樹脂、球状ポリ乳酸樹脂、球状シリカが好ましく、球状ポリウレタン樹脂、球状セルロース樹脂、球状ポリ乳酸樹脂、球状シリカがより好ましく、球状ポリウレタン樹脂がさらに好ましい。
【0045】
球状粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌の粉感を低減し、時間が経過しても、しわが目立つのを抑制させる観点から、全組成中に0.1~20質量%が好ましく、0.2~10質量%がより好ましく、0.3~5質量%がさらに好ましい。
【0046】
本発明の油中水型乳化化粧料において、水の含有量は、全組成中に10~70質量%であるのが好ましく、15~60質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
【0047】
本発明の油中水型乳化化粧料は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の粉体、前記以外の油性成分、前記以外の高分子化合物、界面活性剤、酸化防止剤、香料、色素、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等を含有することができる。
【0048】
本発明の油中水型乳化化粧料は、通常の方法に従って製造することができ、液状、乳液液、ペースト状、クリーム状、ジェル状等の剤型にすることができ、液状、乳液状、クリーム状が好ましい。
また、本発明の油中水型乳化化粧料は、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー;ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料などとして適用することができる。なかでも、化粧下地、ファンデーションがより好ましい。
本発明の油中水型乳化化粧料は、単品のみの使用においても、リキッドファンデーションやパウダーファンデーション・白粉等の粉体化粧料の重ね付けにおいても使用することができる。
【実施例
【0049】
製造例1(テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルの製造):
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分離管を備えた3Lの4つロフラスコに、ジペンタエリスリトール〔商品名:ジ・ペンタリット、広栄化学工業社製〕58.4g(0.23モル)と2-(1,3,3-トリメチル)ブチル-5,7,7-トリメチルオクタン酸〔商品名:イソステアリン酸、日産化学工業社製〕293.9g(1.03モル)を仕込んだ(原料仕込み質量比=10:50.3)。その後、ジブチルチンオキサイド(触媒)を全仕込み量の0.05質量%、キシレン(還流溶剤)を全仕込み量の5質量%加え、攪拌しながら200~250℃で約21時間反応を行った。反応終了後、還流溶剤であるキシレンを減圧留去した。キシレンを除去した反応物を、活性白土により吸着処理し、次いで60℃程度まで冷却後ろ過し、常法にて脱臭・蒸留処理を行うことで、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルを245g得た。
テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルの25℃における粘度は、35万mPa・sであり、25℃で液状であった。粘度は、ブルックフィールド型粘度計(BH型)を用い、25℃にてローターNo.6を用い、2rpmにて測定した。
【0050】
実施例1~7及び比較例1~3
表1に示す組成の油中水型乳化化粧料(ファンデーション)を製造し、塗布後の肌の均一なツヤ感、塗布後の肌のつっぱり感のなさ、塗布後の肌の粉感のなさ及び塗布5時間経過後のしわの目立たなさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0051】
(製法)
粉体相成分を混合粉砕し、別途混合した油相成分に添加してディスパー(2000rpm)で10分間分散した。その後、水相成分を添加し、ディスパー(800rpm)で10分間撹拌して、油中水型乳化化粧料を得た。
【0052】
(評価方法)
(1)塗布後の肌の均一なツヤ感:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、顔に0.16g塗布し、塗布直後の顔の均一なツヤ感について下記の5段階で目視評価した。結果を5名の合計点で示した。なお、均一なツヤ感とは、顔が全体的にツヤがあり、顔が全体的に明るく見えることを示す。
5;ツヤがかなり均一に見える。
4;ツヤが均一に見える。
3;ツヤがやや均一に見える。
2;ツヤがあまり均一に見えない。
1;ツヤが明らかに均一に見えない。
【0053】
(2)塗布後の肌のつっぱり感のなさ:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、顔に0.16g塗布し、塗布直後の顔のつっぱり感を下記の5段階で官能評価した。結果を5名の合計点で示した。なお、つっぱり感とは、肌が乾燥したときに感じられるような感覚であり、素肌感がありながら皮膚がひっぱられる感じを示す。
5;つっぱり感が全くない。
4;つっぱり感がない。
3;つっぱり感があまりない。
2;つっぱり感がある。
1;つっぱり感がかなりある。
【0054】
(3)塗布後の肌の粉感のなさ:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、顔に0.16g塗布し、塗布直後の粉感を下記の5段階で目視評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;粉感が全くない。
4;粉感がない。
3;粉感があまりない。
2;粉感がある。
1;粉感がかなりある。
【0055】
(4)塗布5時間経過後のしわの目立たなさ:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、顔に0.16g塗布し、塗布5時間後の口の周りの小じわの目立ちを、油中水型化粧料を塗布する前と比較して、下記の5段階で目視評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;しわが明らかに目立たない。
4;しわが目立たない。
3;しわがあまり目立たない。
2;しわがやや目立つ。
1;しわがかなり目立つ。
【0056】
【表1】
【0057】
処方例1
実施例1~7と同様にして、表2に示す組成の油中水型乳化化粧料(ファンデーション)を製造した。
得られた油中水型乳化化粧料は、塗布後の肌に、均一なツヤ感があり、粉感や、つっぱり感がなく、時間が経過してもしわが目立たないものである。
【0058】
【表2】