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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】皮膚ガス放散調節用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7016 20060101AFI20231027BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20231027BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231027BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231027BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231027BHJP
   A61K 31/702 20060101ALN20231027BHJP
   A61K 31/716 20060101ALN20231027BHJP
   A61K 31/718 20060101ALN20231027BHJP
   A61K 31/734 20060101ALN20231027BHJP
   A61K 31/732 20060101ALN20231027BHJP
   A61K 31/736 20060101ALN20231027BHJP
【FI】
A61K31/7016
A61K31/715
A61P3/00
A61P17/00
A23L33/10
A61K31/702
A61K31/716
A61K31/718
A61K31/734
A61K31/732
A61K31/736
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019095388
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020132621
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019027662
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 亮
(72)【発明者】
【氏名】境 洋平
(72)【発明者】
【氏名】関根 嘉香
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325065(JP,A)
【文献】特開2002-029968(JP,A)
【文献】特開2014-129268(JP,A)
【文献】特開2002-080336(JP,A)
【文献】特開2019-001739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200291(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335615(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106177188(CN,A)
【文献】Livestock Science,2016年,183,pp.84-91
【文献】におい・かおり環境学会誌,2020年,Vol.51, No.6 ,pp.338-345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 8/00-8/99
A23L 5/40-5/49
A23L 31/00-31/15
A23L 33/00-33/29
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミナコイドを有効成分とする、皮膚からのアンモニアの放散を減少させるための経口組成物であって、
前記ルミナコイドがラクチュロース又はポリデキストロースである、経口組成物。
【請求項2】
ルミナコイドを有効成分とする、皮膚からのラクトンC10の放散を増加させるための経口組成物であって、
前記ルミナコイドがラクチュロースである、経口組成物。
【請求項3】
ルミナコイドを有効成分とする、皮膚からのラクトンC11の放散を増加させるための経口組成物であって、
前記ルミナコイドがラクチュロースである、経口組成物。
【請求項4】
体臭改善用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口組成物。
【請求項5】
前記ルミナコイドの1日の摂取量が1g以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口組成物。
【請求項6】
医薬組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口組成物。
【請求項7】
飲食品組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルミナコイドの新たな用途、具体的には皮膚ガス放散調節の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を分解する過程で生じる有害物質のアンモニアは、健康時には主にカルバミルリン酸を経て肝臓中のオルニチンと反応し、最終的な排泄時には無害な尿素に変換されて排泄される。一方、血中のアンモニアの一部は皮膚ガスとして常在的に放散している。しかし、病的疲労や生理的疲労、過剰なストレス等が原因で、アンモニアを解毒する能力が低下した場合、過剰なアンモニアの一部は血液から皮膚ガスとして放散して、アンモニアに起因する強い体臭が発生する。
【0003】
このような、皮膚からのアンモニア臭を抑制するためには、例えば、オルニチンや環状ジペプチドの摂取が有効であると報告されている(特許文献1、2)。また、外用剤としては、リタ(Sapindus trifoliatus)の果実からの抽出物を用いることが有効であると報告されている(特許文献3)。
【0004】
また、皮膚ガスとしてラクトンC10及びラクトンC11が放散されることも確認されている。ラクトンC10及びラクトンC11に起因する臭いは、「スイート(SWEET)臭」とも称され
る。皮膚ガスとして放散されるラクトンC10及びラクトンC11は、30代以降で減少することが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
また、皮膚ガスとして酢酸が放散されることも確認されている(非特許文献2)。さらに、健康な人間の皮膚表面はpH 5.0前後の弱酸性に保たれており、この弱酸性の環境下では細菌などは増殖しにくいことが報告されている(非特許文献3)。さらには、本来弱酸性である皮膚表面のpHが高くなると皮膚表面の総菌数(黄色ブドウ球菌数を含む。)が増えることが報告されている(非特許文献4)。
【0006】
一方で、日本食物繊維学会が提唱した「ルミナコイド」という食物繊維を包括した概念が知られている。ルミナコイドは、非デンプン性のものとデンプン性のものとに大別される。非デンプン性ルミナコイドには、食物繊維、オリゴ糖、糖アルコール、レジスタントプロテイン、希少糖が挙げられる。食物繊維には、多糖類とリグニンが含まれ、多糖類としては、植物性多糖類、動物性多糖類、微生物性多糖類、化学修飾性多糖類が含まれる。デンプン性ルミナコイドには、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンが含まれる(非特許文献5)。
【0007】
ラクチュロースはルミナコイドの一つである。ラクチュロースが体内アンモニアに与える効果についても研究されている。例えば、1日3gのラクチュロースの摂取により4日ほどで糞便中のビフィドバクテリウム属細菌が顕著に増加するが、糞便中のアンモニアは有意に減少しないことが報告されている(非特許文献6)。また、1日4gのラクチュロースを2週間摂取しても糞便中のアンモニアは有意に減少しないことが報告されている(非特許文献7)。一方、300mgのマグネシウムとともに1.0gのラクチュロースを3週間摂取することにより、糞便中のアンモニアが有意に減少することが報告されている(非特許文献8)。
【0008】
また、高アンモニア血症により引き起こされると考えられている肝性脳症の患者では、ラクチュロースを60%シロップとして、初日は60mL程度を食後複数回に分けて摂取し、その後1日量30~90mLとして摂取することにより、血中アンモニア値が低下す
ることが報告されている(非特許文献9)。一方で、慢性血液透析患者においては、19.5gのラクチュロースを6週間摂取しても血中アンモニア値は変化しないことが報告されている(非特許文献10)。また、健常者に漸増運動負荷を与えた場合において、1日20mLのラクチュロースを3日間前投与することにより、該負荷時における血中アンモニア値の上昇が抑制されることが報告されている(非特許文献11)。
【0009】
しかし、通常の日常生活を送る健常者において、ルミナコイドが皮膚ガス放散を調節することは知られていない。具体的には、ルミナコイドがそれを摂取したヒトの皮膚ガスの放散を調節することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-144458号公報
【文献】国際公開2017/038799号
【文献】特許第6034118号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】“女性の「若い頃のニオイ」を解明!「若い頃の甘いニオイ」の正体は「ラクトンC10/ラクトンC11」 30代以降で「ラクトンC10/ラクトンC11」が減少し体臭が変わる”、[online]、2018年2月14日、ロート製薬、[令和1年5月10日検索]、インターネット<URL:https://www.rohto.co.jp/news/release/2018/0214_01/>
【文献】Jpn. J. Clin. Ecol., 25(2), 69-75 (2016)
【文献】山形医学 27(2), 99-108 (2009)
【文献】アレルギー 49(6), 463-471 (2000)
【文献】食品と開発 48(1), 15-17 (2013)
【文献】Microbial Ecology in Health and Disease 5:1, 43-50 (1992)
【文献】Milchwissenschaft 57 (6) (2002)
【文献】Microbial Ecology in Health and Disease 19:3, 184-190 (2007)
【文献】肝臓 14巻1号55-63 (1973)
【文献】日農医誌 47巻1号 864-871 (1999)
【文献】呼と循 38巻7号 693-697 (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ヒトの皮膚ガスの放散を調節できる皮膚ガス放散調節用組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、ルミナコイドがそれを摂取したヒトの皮膚ガスの放散を調節することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、ルミナコイドを有効成分とする皮膚ガス放散調節用組成物を提供する。
前記組成物は、体臭改善用であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記皮膚ガスがアンモニアであり、皮膚からのアンモニアの放散を減少させるための組成物であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記皮膚ガスがラクトンC10であり、皮膚からのラクトンC10の放散を増加させるための、又は
前記皮膚ガスがラクトンC11であり、皮膚からのラクトンC11の放散を増加させる
ための組成物であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記ルミナコイドの1日の摂取量が1g以上であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記ルミナコイドが、二糖を含む難消化性オリゴ糖、又は水溶性食物繊維であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記二糖を含む難消化性オリゴ糖がラクチュロースであることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記水溶性食物繊維がポリデキストロースであることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、医薬組成物であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、飲食品組成物であることを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚ガス放散調節用組成物は、ヒトの皮膚ガスの放散を調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書では、本発明の皮膚ガス放散調節用組成物を、「本発明の組成物」と記載することがある。本発明の組成物は混合物を含む概念であり、その成分が均一であるか不均一であるかを問わない。また、本発明における皮膚ガスは、例えば、特許第4654045号明細書に記載された、パッシブ・フラックス・サンプラー法で皮膚ガスを採取し、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)または吸光光度法で分析し、ヒトの皮膚ガスの放散フラックスとして測定することができる。
【0017】
本発明における皮膚ガスは、ヒトの皮膚から放散されるガスであれば特に制限されない。例えば、アンモニア、ラクトンC10(γ-デカノラクトン又はγ-デカラクトンともいう。)、ラクトンC11(γ-ウンデカノラクトン又はγ-ウンデカラクトンともいう。)、酢酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2-エチル-1-ヘキサノール、アセ
トアルデヒド、プロパナール、ブタナール、イソ吉草酸アルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、トランス-2-ヘキセ
ナール、トランス-2-ノネナール、プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、ヘキサン
酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、アセトン、メタノール、2-ブタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-デカノン、2-ウンデカノン、2-ドデカノン、2-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、ジアセチル、アセトイン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、酢酸エチル、酢酸シス-3-
ヘキセニル、ベンジルアセト酢酸、ブチルヒドロキシトルエン、ベンズアルデヒド、フェノール、トルエン、エチルベンゼン、m,p-キシレン、o-キシレン、スチレン、p-ジクロロベンゼン、ジェオスミン、インドール、スカトール、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、アリルメチルスルフィド、ジアリルジスルフィド、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-ノナノラクトン、バニリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0018】
本発明における皮膚ガス放散の調節は、皮膚ガスの放散を増加させる態様と減少させる態様とを含む。具体的に言えば、皮膚ガスの放散を増加させる態様とは、対象であるヒトがルミナコイドを投与された(本明細書では、「摂取した」場合を含む。)ときに、投与されない(本明細書では、「摂取しない」場合を含む。)ときよりも、皮膚ガスの放散が増加する態様をいう。逆に、皮膚ガスの放散を減少させる態様とは、対象であるヒトがルミナコイドを投与されたときに、投与されないときよりも、皮膚ガスの放散が減少する態
様をいう。
【0019】
本発明の組成物は、体臭改善用であることが好ましい。また、本発明における体臭は皮膚ガスから判断されるものが好ましい。本発明の組成物が体臭改善用である場合には、悪臭を減少させることが好ましく、また、芳香を増加させることも好ましく、その両者も好ましい。悪臭としてはアンモニア臭、加齢臭、ミドル脂臭、イソ吉草酸臭などが挙げられる。芳香としてはスイート臭などが挙げられる。
【0020】
アンモニア臭は、皮膚ガスがアンモニアであることに起因する。加齢臭は、皮膚ガスがノネナールであることに起因する。ミドル脂臭は、皮膚ガスがジアセチルであることに起因する。イソ吉草酸臭は、皮膚ガスがイソ吉草酸であることに起因する。スイート臭は、皮膚ガスがラクトンC10及び/又はラクトンC11であることに起因する。
【0021】
また、本発明の組成物は、皮膚表面を弱酸性に保つための組成物であることも好ましい態様としている。皮膚表面が弱酸性に保たれるのは皮膚ガスが酢酸である場合であり、皮膚表面のpH上昇が酢酸により抑制されることに起因する。したがって、本発明において皮膚表面を弱酸性に保つとは、皮膚表面のpH上昇を抑制することであり、本発明の組成物は、皮膚表面のpH上昇抑制のための組成物であってもよい。弱酸性は、pHとして、4.0~6.5であることが好ましく、4.5~6.0であることがより好ましく、さらに5.0~5.5であることがさらに好ましい。
【0022】
また、本発明の組成物は、皮膚表面の菌叢を整えるための組成物であることも好ましい態様としている。本来弱酸性である皮膚表面のpHが高くなると皮膚表面の総菌数(黄色ブドウ球菌数を含む。)が増加する。本発明の組成物により皮膚表面の菌叢が整えられるのは皮膚ガスが酢酸である場合であり、皮膚表面のpH上昇が酢酸により抑制される結果、皮膚表面の総菌数の増加が抑制されることに起因する。したがって、本発明において皮膚表面の菌叢を整えるとは、皮膚表面の総菌数の増加を抑制することであり、本発明の組成物は、皮膚表面の総菌数の増加抑制のための組成物であってもよい。
【0023】
ルミナコイドは、非デンプン性のものとデンプン性のものとに大別されることは既出の通りであるが、本発明のルミナコイドは、好ましくは、難消化性オリゴ糖(二糖を含む。)、又は水溶性食物繊維である。
前記難消化性オリゴ糖(二糖を含む。)としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)、セロオリゴ糖(セロビオース)、ミルクオリゴ糖等が挙げられ、好ましくはミルクオリゴ糖、より好ましくは、ミルクオリゴ糖の一つであるラクチュロースである。
前記水溶性食物繊維としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、大麦βグルカン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、グアーガム等が挙げられ、好ましくはポリデキストロースである。
【0024】
ルミナコイドのうち、例えばラクチュロースは、フラクトースとガラクトースからなる二糖類である。本発明のラクチュロースはパウダーの場合は無水物であっても水和物であってもよく、また溶液状であってもよい。尚、ラクチュロースは、ラクツロースと称されることがある。
【0025】
ラクチュロースは、公知の方法により製造することができる。
例えば、市販乳糖の10%水溶液に、水酸化ナトリウムを添加し、70℃の温度で30分間加熱し、冷却し、イオン交換樹脂により精製し、濃縮し、冷却し、結晶化し、未反応の乳糖を除去し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロースを約79%含有する。)のラクチュロース水溶液を得る。この水溶液をイオン交換樹脂カラムに通液し、ラクチュ
ロースを含む画分を採取し、濃縮し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロース約86%を含有する。)の精製ラクチュロース水溶液を得る(特開平3-169888号公報に記載の方法)。
さらに、前記の方法により得たラクチュロース水溶液(シロップ)を固形分含量約72%に濃縮し、この濃縮液を15℃に冷却し、ラクチュロース三水和物結晶を種晶として添加し、攪拌しながら7日間を要して5℃まで徐々に冷却し、結晶を生成させ、10日後に上澄液の固形分含量が約61%に低下した結晶を含む液から濾布式遠心分離器により結晶を分離し、5℃の冷水で洗浄し、乾燥させ、純度95%以上のラクチュロースの結晶を得ることができる(特開平6-228179号公報に記載の方法)。
【0026】
ラクチュロースは、市販されているものを使用することもできる。例えば、「ミルクオリゴ糖MLS(登録商標)-50」や、「ミルクオリゴ糖MLC(登録商標)-97」(いずれも森永乳業株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
ルミナコイドのうち、例えばポリデキストロースは、人工合成された水溶性食物繊維であり、ヒトの消化酵素では分解されない性質を有する。
ポリデキストロースは、グルコース、ソルビトール、クエン酸を混合して、高温で重合させたものであり、公知の方法により製造することができる。例えば、グルコース、ソルビトール、クエン酸を、89:10:1の重量比で混合後、又はグルコース、ソルビトール、リン酸を90:10:0.1の重量比で混合後、高温条件下で重合させることによって製造できる。
ポリデキストロースは、市販されているものを使用することもできる。また、ファイブミニプラス(登録商標)(大塚製薬株式会社製)にも、1本あたり5gのポリデキストロースが含まれている(大塚製薬株式会社、「Fibe-Mini製品情報」、[平成31年1月3
1日検索]、インターネット<URL:https://www.otsuka.co.jp/fib/products/>)。
【0028】
本発明の組成物におけるルミナコイドの含有量は、組成物の態様により適宜設定すればよい。その下限は特に限定されないが、組成物全量に対して、ルミナコイドの総量で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは67質量%以上である。一方、上限も特に制限されないが、組成物全量に対して、ルミナコイドの総量で、好ましくは100質量%以下であるが、97質量%以下、95質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0029】
本発明の組成物の投与量は、形態(剤形)、用法、対象の年齢、性別、疾患又は症状の種類、その程度、及びその他の条件等により適宜設定される。その下限は特に限定されないが、ルミナコイドの総量として、1日当たり、好ましくは0.005g以上、より好ましくは0.05g以上、さらに好ましくは0.1g以上、よりさらに好ましくは1g以上、特に好ましくは4g以上、さらに特に好ましく5g以上である。その上限も特に限定されないが、好ましくは15g以下であり、より好ましくは10g以下である。尚、投与量は摂取量と読み替えることができる。
【0030】
本発明の組成物の対象となる疾患又は症状としては、例えば、腋臭症、アトピー性皮膚炎、皮膚バリア破壊、肌荒れ、にきび等が挙げられるが、皮膚ガス放散調節によって予防又は治療され得る疾患又は症状であれば特に制限されない。
【0031】
本発明の組成物が錠剤である場合には、1日当たりの投与量や、飲みやすい錠剤の大きさ、投与数等を考慮して、錠剤中のルミナコイドの含有量を適宜決定することができる。例えば、ルミナコイドの1日の投与量を1gに設定した場合には、錠剤の質量を300mg、1日の投与錠数を4錠とし、1錠中のルミナコイドの含有量を総量で250mg(約83質量%)にすることができる。尚、錠剤は、例えば、本発明の組成物が医薬組成物で
ある場合にはそのまま錠剤と、飲食品組成物である場合には錠菓やサプリメント等と読み替えることができる。
【0032】
本発明の組成物は予防的に投与してもよく、維持療法に用いてもよい。また、投与態様は、形態(剤形)、対象の年齢、性別、その他の条件、対象の疾患又は症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。
なお、本発明の組成物は、いずれの場合も1日1回又は複数回に分けて投与することができる。また、数日又は数週間に1回の投与としてもよいが、毎日投与することが好ましい。また、投与期間は、3日以上が好ましく、1週(7日)以上がより好ましく、2週(14日)以上がさらに好ましい。よりさらに好ましくは、いずれの場合も毎日投与することである。
【0033】
本発明の組成物は、医薬組成物及び飲食品組成物として広く用いることができる。例えば、皮膚ガス放散調節用医薬組成物、皮膚ガス放散調節用飲食品組成物を提供することができる。以下、それぞれを「本発明の医薬組成物」、「本発明の飲食品組成物」と記載することがある。
【0034】
本発明の医薬組成物は、ルミナコイドを含有する限り特に制限されない。本発明の医薬組成物としては、ルミナコイドをそのまま使用してもよく、生理的に許容される液体又は固体の製剤担体を配合し製剤化して使用してもよい。
【0035】
本発明の医薬組成物の剤形は特に制限されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、及び点鼻剤等を例示できる。また、製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、又は注射剤用溶剤等の添加剤を使用することができる。
【0036】
また、前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0037】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0038】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0039】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0040】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0041】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0042】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の医薬組成物の投与時期は特に限定されず、対象となる疾患又は症状の予防方法又は治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。「治療」は「緩和」を含むものとする。
【0044】
本発明の医薬組成物は、単独で投与してもよいし、他の医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品、例えば、他の皮膚ガス放散調節用医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品;前記皮膚ガス放散調節によって予防又は治療され得る疾患又は症状に対する医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品等と併用してもよい。
【0045】
本発明の飲食品組成物は、ルミナコイドを含有する限り特に制限されない。本発明の飲食品組成物としては、ルミナコイドをそのまま使用してもよいが、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、飲食品であってもよく、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、グミ、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品);栄養補助食品等が挙げられる。
また、本発明の飲食品組成物は、サプリメントであってもよく、例えばタブレット状のサプリメントであってもよい。サプリメントである場合には、一日当りの食事量及び摂取カロリーについて他の食品に影響されることなく、ルミナコイドを摂取できる。
【0046】
本発明の飲食品組成物は、通常の飲食品の原料にルミナコイドを添加することにより製造することができ、ルミナコイドを添加すること以外は、通常の飲食品と同様にして製造することができる。ルミナコイドの添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で行ってもよい。また、添加したルミナコイドとは別に添加した細菌による発酵工程を経て、
本発明の飲食品組成物が製造されてもよい。そのような飲食品組成物としては、乳酸菌飲料、及び発酵乳等が挙げられる。
本発明の飲食品組成物の原料としては、通常の飲食品に用いられる原料を使用することができる。製造された飲食品組成物は、経口的に摂取することが可能である。
【0047】
本発明の飲食品組成物には、飲食品組成物の製造のための原料、及び食品添加物等で、飲食品組成物の製造工程又は製造後に飲食品組成物に添加されるものも含まれる。例えば、ルミナコイドとは別に添加した細菌は、発酵乳製造用スターターとして使用することができる。また、該細菌を、製造された発酵乳に後から添加することもできる。
【0048】
また、本発明の飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない限り、公知の又は将来的に見出されるプロバイオティクス効果を有する成分又はプロバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。例えば、本発明の飲食品組成物は、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;又は、フィッシュオイルと、ルミナコイドとを配合して製造することができる。
【0049】
本発明の飲食品組成物は、単独で摂取してもよいし、他の飲食品組成物若しくは飲食品又は医薬組成物若しくは医薬、例えば、他の皮膚ガス放散調節用医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品;前記皮膚ガス放散調節によって予防又は治療され得る疾患又は症状に対する医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品等と共に摂取してもよい。
【0050】
本発明の飲食品組成物は、皮膚ガス放散調節用との用途、好ましくは、体臭改善用、皮膚表面を弱酸性に保つため、又は皮膚表面の菌叢を整えるためとの用途が表示された飲食品組成物又は飲食品として販売することができる。また、本発明の飲食品組成物は、前記皮膚ガス放散調節、好ましくは体臭改善、皮膚表面を弱酸性に保つこと、又は皮膚表面の菌叢を整えることによって予防又は治療され得る疾患又は症状の予防用又は治療用との用途が表示された飲食品組成物又は飲食品として販売することができる。また、本発明の飲食品組成物又は飲食品には、「皮膚ガス放散調節用」、好ましくは「体臭改善用」、「皮膚表面を弱酸性に保つため」、又は「皮膚表面の菌叢を整えるため」等の表示をすることができる。また、これ以外でも、皮膚ガス放散調節、好ましくは体臭改善、皮膚表面を弱酸性に保つこと、又は皮膚表面の菌叢を整えることによって二次的に生じる効果を表す文言であれば、使用できることはいうまでもない。
【0051】
また、本発明の飲食品組成物は、プロバイオティクス効果を有する成分を含む場合には、プロバイオティクス等の用途(保健用途を含む)が表示された飲食品組成物又は飲食品として提供・販売することが可能である。また、飲食品組成物又は飲食品の摂取対象として、「皮膚ガスの放散を調節したい方」、好ましくは「体臭を改善したい方」、「体臭を予防したい方」、「体臭が気になる方」、「皮膚表面を弱酸性に保ちたい方」、又は「皮膚表面の菌叢を整えたい方」等と表示して提供・販売されることが可能である。
【0052】
前記「表示」とは、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為を意味し、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。
具体的には、本発明の飲食品組成物又は飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為、商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引渡し、譲渡若
しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が例示でき、特に包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等への表示が好ましい。
【0053】
また、表示としては、行政等によって許可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましい。例えば、保健機能食品など、より具体的には保健機能食品、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができ、その他消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を例示することができる。さらに詳細には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示等を例示することができる。
【0054】
さらに、本発明は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕皮膚ガス放散調節用組成物を製造するためのルミナコイドの使用。
〔2〕皮膚ガス放散調節によって予防又は治療され得る疾患又は症状の予防又は治療における使用のためのルミナコイド。
〔3〕ルミナコイドの予防的又は治療的有効量を、予防又は治療を必要とするヒト又は患者に投与することを含む、皮膚ガス放散調節によって予防又は治療され得る疾患又は症状の予防方法又は治療方法。
〔4〕皮膚ガス放散調節のためのルミナコイドの使用。
〔5〕皮膚ガス放散調節に用いられるルミナコイド。
〔6〕ルミナコイド又は皮膚ガス放散調節用組成物をヒトに投与する段階を含む、皮膚ガスの放散を調節する方法。
【実施例
【0055】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕ラクチュロースを摂取した場合の、ヒト皮膚からのアンモニアの放散フラックスの測定
20代~50代の男性7名、女性5名の計12名の健常被験者にオープン投与試験(自由摂取)を実施した。ラクチュロースとして4gの「ミルクオリゴ糖MLC(登録商標)-97」(森永乳業株式会社製)を流動層造粒機で水をバインダーとして造粒し、被験者に1日4g、2週(14日)にわたり摂取させた。
前記造粒物を摂取する1日前、摂取後14日目で、パッシブ・フラックス・サンプラー法を用いて皮膚ガスを採取し、イオンクロマトグラフィーでアンモニアの放散フラックスを測定した。
結果として、摂取1日前のアンモニアの放散フラックスの平均値に対する摂取後14日目のアンモニアの放散フラックスの平均値の割合(%)を表1に示す。ラクチュロースを摂取することで、摂取後14日目で皮膚からのアンモニアの放散フラックスが顕著に減少することがわかった(P < 0.05)。
【0057】
〔実施例2〕ポリデキストロースを摂取した場合の、ヒト皮膚からのアンモニアの放散フ
ラックスの測定
20代~30代の男性2名、女性2名の計4名の健常被験者にオープン投与試験(自由摂取)を実施した。5gのポリデキストロースを含む「ファイブミニプラス(登録商標)」(大塚製薬株式会社製)を、被験者に1日1本、2週(14日)にわたり摂取させた。
【0058】
尚、「ファイブミニプラス(登録商標)」(大塚製薬株式会社製)には、下記の栄養成分表示と原材料表示とがある(大塚製薬株式会社、「Fibe-Mini製品情報」、[平成31
年1月31日検索]、インターネット<URL:https://www.otsuka.co.jp/fib/products/>)。
栄養成分表示:1本(100ml)当たり、エネルギー 37kcal、タンパク質 0g、脂質0g、
炭水化物 14.2g(糖質 9.2g、食物繊維 5g)、食塩相当量 0.02g、ビタミンC 190mg、ビ
タミンE 2.0mg、β-カロテン 3mg
原材料名:ポリデキストロース(アメリカ製造)、砂糖、ぶどう糖果糖液糖、グレープフルーツ果汁、レモン果汁/酸味料、ビタミンC、香料、β-カロテン、ビタミンE、甘味料(ステビア)
【0059】
「ファイブミニプラス(登録商標)」を摂取する1日前、摂取後14日目で、パッシブ・フラックス・サンプラー法を用いて皮膚ガスを採取し、イオンクロマトグラフィーでアンモニアの放散フラックスを測定した。 結果として、摂取1日前のアンモニアの放散フラックスの平均値に対する摂取後14日目のアンモニアの放散フラックスの平均値の割合(%)を表1に示す。「ファイブミニプラス(登録商標)」を摂取することで、摂取後14日目で皮膚からのアンモニアの放散フラックスが顕著に減少することがわかった。
【0060】
〔比較例1〕ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) KB290を摂取した場合の、ヒト皮膚からのアンモニアの放散フラックスの測定
腸内環境を整えることが知られている、植物性乳酸菌を比較例として使用した。20代~50代の男性2名、女性2名の計4名の健常被験者にオープン投与試験(自由摂取)を実施した。100億個以上のLactobacillus brevis KB290を含む「植物性乳酸菌ラブレ カプセル」(カゴメ株式会社製)を、被験者に1日1カプセル、2週(14日)にわたり摂取させた。
【0061】
尚、「植物性乳酸菌ラブレ カプセル」(カゴメ株式会社製)には、下記の栄養成分表
示、原材料表示、使用しているアレルギー表示対象原料表示がある(カゴメ株式会社、「カゴメの通信販売 健康直送便」、[平成31年1月31日検索]、インターネット<U
RL:https://shop.kagome.co.jp/lineup_supple/labre-capsule/>)。
栄養成分表示(1粒/412 mg当たり):エネルギー 1~3 kcal、たんぱく質 0~0.1g、脂質 0~0.1g、炭水化物 0.3~0.4g、ナトリウム 0~1mg、カリウム 0.2~0.7mg、リン 0.3~0.7mg 、ラブレ菌(KB290株)100億個以上 ※製造時の配合菌数を表示しています。
原材料名:乳酸菌末(デンプン、還元麦芽糖水飴、乳酸菌)、HPMC、ステアリン酸カルシウム、(原材料の一部に大豆を含む)
使用しているアレルギー表示対象原料:大豆 ※この商品は、卵、乳、小麦、落花生、そば、えび、カニを含む製品と共通の設備で製造しています。
【0062】
「植物性乳酸菌ラブレ カプセル」を摂取する1日前、摂取後14日目で、パッシブ・
フラックス・サンプラー法を用いて皮膚ガスを採取し、イオンクロマトグラフィーでアンモニアの放散フラックスを測定した。
結果として、摂取1日前のアンモニアの放散フラックスの平均値に対する摂取後14日目のアンモニアの放散フラックスの平均値の割合(%)を表1に示す。「植物性乳酸菌ラブレ カプセル」を14日間摂取しても、実施例1、実施例2の場合ほど、アンモニアの
放散フラックスは減少しなかった。腸内環境を整えるものは植物性乳酸菌をはじめ、多々
存在するが、その中でも、難消化性オリゴ糖(実施例1)や水溶性食物繊維(実施例2)の方が、植物性乳酸菌(比較例1)よりも効果が高かった。
【0063】
【表1】
【0064】
〔実施例3〕ラクチュロースを摂取した場合の、ヒト皮膚からのラクトンC10又はラクトンC11の放散フラックスの測定
20代の男性5名、女性1名の計6名の健常被験者にオープン投与試験(自由摂取)を実施した。ラクチュロースとして4gの「ミルクオリゴ糖MLC(登録商標)-97」(森永乳業株式会社製)を流動層造粒機で水をバインダーとして造粒し、被験者に1日4g、2週(14日)にわたり摂取させた。
前記造粒物を摂取する1日前、摂取後3日目で、パッシブ・フラックス・サンプラー法を用いて皮膚ガスを採取し、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)でラクトンC10又はラクトンC11の放散フラックスを測定した。
結果として、摂取1日前のラクトンC10の放散フラックスの平均値に対する摂取後3日目のラクトンC10の放散フラックスの平均値の割合(%)を表2に示す。同様に、ラクトンC11についても表2に示す。ラクチュロースを摂取することで、摂取後3日目で皮膚からのラクトンC10及びラクトンC11のいずれについても、放散フラックスが顕著に増加することがわかった。
【0065】
【表2】
【0066】
〔実施例4〕ラクチュロースを摂取した場合の、ヒト皮膚からの酢酸の放散フラックスの測定
20代の男性5名、女性1名の計6名の健常被験者にオープン投与試験(自由摂取)を実施した。ラクチュロースとして4gの「ミルクオリゴ糖MLC(登録商標)-97」(
森永乳業株式会社製)を流動層造粒機で水をバインダーとして造粒し、被験者に1日4g、2週(14日)にわたり摂取させた。
前記造粒物を摂取する1日前、摂取後7日目で、パッシブ・フラックス・サンプラー法を用いて皮膚ガスを採取し、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)でラクトンの放散フラックスを測定した。
結果として、摂取1日前の酢酸の放散フラックスの平均値に対する摂取後7日目の酢酸の放散フラックスの平均値の割合(%)を表3に示す。ラクチュロースを摂取することで、摂取後7日目で皮膚からの酢酸の放散フラックスが顕著に増加することがわかった(p < 0.01)。
【0067】
【表3】