(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231027BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20231027BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20231027BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20231027BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H01F27/29 P
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F27/29 123
H01F41/04 C
H01F27/28 104
(21)【出願番号】P 2019120684
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】寺内 直也
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/156051(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/132626(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128702(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0285494(US,A1)
【文献】特開2016-025180(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031880(WO,A1)
【文献】特開2003-017327(JP,A)
【文献】特開2019-067883(JP,A)
【文献】特開2020-198336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 41/04
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する基体と、
前記基体内においてコイル軸の周りに複数層に亘って巻回されており、第1端部及び前記第1端部よりも前記実装面の近くにある第2端部を有するコイル導体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記コイル導体の前記第1端部と前記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、
前記コイル導体の前記第2端部と前記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、
を備え、
前記第1引出導体の少なくとも一部は、前記コイル軸の方向から見たときに前記コイル導体の径方向内側にある前記基体の第1領域に設けられており、
前記基体は、前記コイル導体と前記第1引出導体との間の領域であって、前記コイル軸の方向から見たときに前記第1引出導体と前記コイル導体とが重複する重複領域に設けられた絶縁材を有し、
前記絶縁材は、前記基体の前記絶縁材以外の領域よりも高い絶縁性を有している、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1引出導体は、前記コイル軸の方向から見たときに前記コイル導体よりも径方向外側にある前記基体の第2領域と重複しないように配置されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記コイル軸の方向から見たときに前記コイル導体よりも径方向外側にある前記第2領域の面積に対する前記第1領域の面積の比が0.6以上である、
請求項
2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記絶縁材の体積抵抗率は、前記基体の前記絶縁材以外の領域の体積抵抗率よりも100Ω・cm以上大きい、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記実装面においてのみ前記基体と接している、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1外部電極及び前記第2外部電極の少なくとも一方は、前記実装面に沿って延びる第1主電極部と、前記実装面に接続されている前記基体の第1端面に沿って延伸する第1副電極部と、を有し、
前記コイル導体は、前記第1引出導体から離間している導体パターンを有し、
前記第1副電極部と前記導体パターンとの距離は、前記第1引出導体と前記導体パターンとの距離よりも長い、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1引出導体は、前記第1領域において前記コイル軸に沿って延びる軸部を有する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1引出導体の前記軸部は、前記コイル軸の方向から見たときに、前記第1外部電極と前記第2外部電極との中央よりも前記第1外部電極よりに設けられる、
請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1外部電極は、前記コイル軸の方向から見たときに前記第1引出導体と重複するように設けられ、
前記第1引出導体は、前記第1引出導体の前記軸部において前記第1外部電極と接続される、
請求項7又は請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1引出導体は、前記軸部の一方の端部と前記コイル導体の前記第1端部とを接続する第1接続部と、前記一方の端部よりも前記実装面の近くにある前記軸部の他方の端部と前記第1外部電極とを接続する第2接続部と、を有し、
前記コイル軸の方向から見たときに前記第1接続部は、前記第2接続部と重複している、
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の積層コイル部品を含む、回路基板。
【請求項12】
請求項11に記載の回路基板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁性材料から成る基体と、当該基体内において積層された複数の導体パターンを有するコイル導体と、を備える積層コイル部品が知られている。積層コイル部品の小型化が求められている。積層コイル部品が小型化されると磁性基体の内部にあるコイル導体及びコイル導体と外部電極とを接続する引出導体の配置の制約が厳しくなる。このため、コイル導体や引出導体の配置によっては磁束が磁性基体の特定の領域に集中してしまうことがある。基体中の磁束が集中する領域においては磁気飽和が発生しやすくなるので、基体内の特定領域への磁束の集中は、積層コイル部品の直流重畳特性の劣化に繋がる。
【0003】
特開2014-154839号公報(特許文献1)においては、コイル導体の形状及び配置を改善することにより積層コイル部品における磁気飽和を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、外部電極が実装面に配置される積層コイル部品におけるコイル導体及び引出導体の配置の改善についても提案されている。外部電極が実装面に配置される場合には、基体内にコイル導体の端部から実装面まで伸びる引出導体を設ける必要があるため、コイル導体及び引出導体の配置により強い制約が生じる。
【0006】
以上のように、コイル部品において磁気飽和の抑制が求められている。本発明の目的の一つは、基体内における磁気飽和を抑制することが可能な新規のコイル部品を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るコイル部品は、実装面を有する基体と、前記基体内においてコイル軸の周りに複数層に亘って巻回されており、第1端部及び前記第1端部よりも前記実装面の近くにある第2端部を有するコイル導体と、前記実装面に設けられた第1外部電極と、前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、前記コイル導体の前記第1端部と前記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、前記コイル導体の前記第2端部と前記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、を備える。一実施形態において、前記第1引出導体の少なくとも一部は、前記コイル軸の方向から見たときに前記コイル導体の径方向内側にある前記基体の第1領域に設けられている。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記第1引出導体は、前記コイル軸の方向から見たときに前記コイル導体よりも径方向外側にある前記基体の第2領域と重複しないように配置されている。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記コイル軸の方向から見たときに前記コイル導体よりも径方向外側にある前記第2領域の面積に対する前記第1領域の面積の比が0.6以上である。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記コイル導体と前記第1引出導体との間の領域であって、前記コイル軸の方向から見たときに前記第1引出導体と前記コイル導体とが重複する重複領域に設けられた絶縁材を有する。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記実装面においてのみ前記基体と接している。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第1外部電極及び前記第2外部電極の少なくとも一方は、前記実装面に沿って延びる第1主電極部と、前記実装面に接続されている前記基体の第1端面に沿って延伸する第1副電極部と、を有し、前記第1副電極部と前記コイル導体との距離は、前記第1引出導体と前記コイル導体との距離よりも長い。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記第1引出導体は、前記第1領域において前記コイル軸に沿って延びる軸部を有する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記第1引出導体の前記軸部は、前記コイル軸の方向から見たときに、前記第1外部電極と前記第2外部電極との中央よりも前記第1外部電極よりに設けられる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記第1外部電極は、前記コイル軸の方向から見たときに前記第1引出導体と重複するように設けられ、前記第1引出導体は、前記第1引出導体の前記軸部において前記第1外部電極と接続される。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記第1引出導体は、前記軸部の一方の端部と前記コイル導体の前記第1端部とを接続する第1接続部と、前記一方の端部よりも前記実装面の近くにある前記軸部の他方の端部と前記第1外部電極とを接続する第2接続部と、を有し、前記コイル軸の方向から見たときに前記第1接続部は、前記第2接続部と重複している。
【0017】
本発明の一実施形態は、上記のコイル部品を備える回路基板に関する。
【0018】
本発明の一実施形態は、上記の回路基板を備える電子部品に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁気飽和を抑制することが可能な新規のコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図3a】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3b】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3c】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3d】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3e】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3f】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3g】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図3h】
図1のコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図1のI-I線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図5a】本発明の他の実施形態に係るコイル部品のコイル軸に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【
図5b】本発明の他の実施形態に係るコイル部品における絶縁材31の配置を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るコイル部品のコイル軸に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層に設けられたコイル導体の一部及び平面引出部を模式的に示す平面図である。
【
図8a】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図8b】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図8c】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図8d】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図8e】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図8f】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図8g】本発明の他の実施形態によるコイル部品に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るコイル部品のコイル軸に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0022】
図1から
図4を参照して、本発明の一実施形態に係るコイル部品1について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るコイル部品1の斜視図であり、
図2は
図1に示したコイル部品1の分解斜視図であり、
図3a~
図3fはコイル部品1に含まれる磁性体層を模式的に示す平面図であり、
図4はコイル部品1のI-I線に沿った断面を模式的に示す断面図である。これらの図には、コイル部品1の一例として、様々な回路で受動素子として用いられる積層インダクタが示されている。積層インダクタは、本発明を適用可能な積層コイル部品の一例である。
図2においては、説明の便宜のために、外部電極の図示が省略されている。
【0023】
図示した実施形態のコイル部品1は、ランド部3を介して回路基板2に実装されている。このコイル部品1は、例えば、電子回路においてノイズを除去するために用いられるインダクタである。コイル部品1は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタであってもよいし、信号ラインにおいて用いられるインダクタであってもよい。
【0024】
添付の図面においては、互いに直交するL軸、W軸、及びT軸が示されている。各軸において、矢印が向いている方向がプラス方向で、プラス方向と反対の方向がマイナス方向である。本明細書においては、
図1及び
図2に示されているL軸、W軸、及びT軸を基準としてコイル部品1の構成部材の向きや配置を説明することがある。具体的には、後述するコイル導体25のコイル軸Xが延びる方向にT軸が延びており、コイル軸Xに垂直で且つ回路基板2の実装面に平行な方向にL軸が延びている。また、T軸及びL軸に直交する方向にW軸が延びる。本明細書においては、L軸に沿う方向をコイル部品1の長さ方向、W軸に沿う方向をコイル部品1の幅方向、T軸に沿う方向をコイル部品1の高さ方向ということがある。また、W軸方向及びL軸方向を含む面が延伸する方向を平面方向ということがある。
【0025】
図示の実施形態におけるコイル部品1は、基体10と、この基体10内に設けられたコイル導体25と、外部電極21と、外部電極22と、コイル導体25の一端と外部電極21とを電気的に接続する引出導体26と、コイル導体25の他端と外部電極22とを電気的に接続する引出導体27と、を備える。
【0026】
基体10は、磁性材料から直方体形状に形成されている。基体10は、コイル25が埋め込まれるコイル層20と、当該コイル層20の上面に設けられた上側カバー層18と、当該コイル層20の下面に設けられた下側カバー層19と、を備える。コイル層20と上側カバー層18との境界及びコイル層20と下側カバー層19との境界は、基体10の製法によっては、明瞭に確認できないことがある。図示の実施形態において、コイル層20は、磁性体層11~16を備え、上側カバー層18は、磁性材料から成る磁性体層18a~18dを備え、下側カバー層19は、磁性材料から成る磁性体層19a~19dを備える。磁性体層16は、コイル層20ではなく下側カバー層19の一部であってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、表面に酸化膜が設けられた複数の軟磁性金属粒子を結合させることによって形成される。隣接する軟磁性金属粒子は、互いの酸化膜を介して互いと結合される。隣接する軟磁性金属粒子は、酸化膜を介さずに直接結合されてもよい。軟磁性金属粒子間には空隙が存在していてもよい。この空隙の一部又は全部には樹脂が充填されていてもよい。本発明の一実施形態において、磁性基体10に含まれる樹脂は、例えば絶縁性に優れた熱硬化性の樹脂である。磁性基体10用の熱硬化性樹脂として、ベンゾシクロブテン(BCB)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンエーテルオキサイド樹脂(PPO)、ビスマレイミドトリアジンシアネートエステル樹脂、フマレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、又はポリビニルベンジルエーテル樹脂が用いられ得る。基体10は、互いに異なる磁性材料から成る2つ以上の領域を有していても良い。例えば、コイル層20と上側カバー層18とは、互いに異なる磁性材料から形成されてもよい。
【0028】
図示のように、本発明の一実施形態において、基体10はおおむね直方体状に形成される。基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに対向し、第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに対向し、第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに対向している。基体10が直方体形状に形成される場合には、第1の主面10aと第2の主面10bとは平行であり、第1の端面10cと第2の端面10dとは平行であり、第1の側面10eと第2の側面10fとは平行である。基体10の第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fはいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、基体10の8つの角部は、丸みを有していてもよい。このように、本明細書においては、基体10の第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fの一部が湾曲している場合や、基体10の角部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」というときには、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0029】
図1の実施形態において、第1の主面10aは基体10の上側にあるため、本明細書において第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2の主面10bが回路基板(不図示)と対向するように配置されるので、本明細書において第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。また、コイル部品1の上下方向に言及する際には、
図1の上下方向を基準とする。
【0030】
本発明の一実施形態において、コイル部品1は、長さ寸法(L軸方向の寸法)が0.2~6.0mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.1~4.5mm、厚さ寸法(T軸方向の寸法)が0.1~4.0mmとなるように形成される。これらの寸法はあくまで例示であり、本発明を適用可能なコイル部品1は、本発明の趣旨に反しない限り、任意の寸法を取ることができる。一実施形態において、コイル部品1は、低背に形成される。例えば、コイル部品1は、その幅寸法が厚さ寸法よりも大きくなるように形成される。
【0031】
コイル導体25は、基体10の内部に設けられている。言い換えると、コイル導体は、基体10に埋め込まれている。外部電極21及び外部電極22はいずれも、基体10の実装面10bに設けられている。図示の実施形態においては、外部電極21及び外部電極22はいずれも、実装面10bにおいてのみ基体10に接しており、第1の主面10a、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fには接していない。つまり、外部電極21及び外部電極22は、実装面10bのみに設けられている。外部電極21と外部電極22とは、長さ方向において互いから離間して配置されている。外部電極21と外部電極22との間には、不図示の絶縁材を設けてもよい。この絶縁材により、外部電極21と外部電極22との間隔が小さい場合でも絶縁性を確保することができる。
【0032】
次に、主に
図2を参照して、コイル部品1が有する積層構造についてさらに説明する。
図2には、積層プロセスによって作成されたコイル部品1の分解斜視図が示されている。
図2に示すように、コイル層20は、磁性体層11~16を備える。コイル層20においては、T軸方向のマイナス方向側からプラス方向側に向かって、磁性体層16、磁性体層15、磁性体層14、磁性体層13、磁性体層12、磁性体層11の順に積層されている。コイル部品1は、積層プロセス以外の様々な方法で作成されてもよい。例えば、コイル部品1は、積層構造を有するように薄膜プロセスにより作成されてもよい。
【0033】
磁性体層11~15の各々の上面には、導体パターンC11~C15が設けられる。導体パターンC11~C15は、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することにより形成される。この導電ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。導体パターンC11~C15は、これ以外の材料及び方法により形成されてもよい。導体パターンC11~C15、例えば、スパッタ法、インクジェット法、又はこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0034】
磁性体層11~磁性体層15の所定の位置には、ビアV1~V4がそれぞれ形成される。ビアV1~V4は、磁性体層11~磁性体層14の所定の位置に、磁性体層11~磁性体層14をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電材料を埋め込むことにより形成される。
【0035】
導体パターンC11~C15の各々は、隣接する導体パターンとビアV1~V4を介して電気的に接続される。このようにして接続された導体パターンC11~C15が、スパイラル状のコイル導体25を形成する。すなわち、コイル導体25は、導体パターンC11~C15及びビアV1~V4を有する。このように、コイル導体25は、コイル軸X周りの周方向に複数層(磁性体層11~15)に亘って巻回されている。つまり、コイル導体25は、コイル軸Xの方向から見たときには
図3a~
図3eに示されているようにコイル軸Xの周りの周方向に延びており、コイル軸Xを通る断面で見たときには
図4に示されているように上下方向に延びている。
【0036】
基体10は、第1領域R1と、第2領域R2とに区画される。第1領域R1は、コイル軸Xの方向から見たときに、平面方向又はコイル軸Xを中心とする径方向においてコイル導体25(すなわち、導体パターンC11~C15)よりも内側にある領域を意味してもよい。つまり、第1領域R1は、基体10のうちコイル導体25の径方向内側の内側面25dの内側の領域を表してもよい。第2領域R2は、コイル軸Xの方向から見たときに、平面方向又はコイル軸Xを中心とする径方向においてコイル導体25(すなわち、導体パターンC11~C15)よりも外側にある領域を意味してもよい。つまり、第2領域R2は、基体10のうちコイル導体25の径方向外側の外側面25cの外側の領域を表してもよい。コイル軸Xの方向から見たときに導体パターンC11~C15がコイル軸X周りの同一軌道にあり導体パターンC11~C15が互いに等しい幅を有していれば、導体パターンC11~C15を含む磁性体層11~15のいずれに関しても第1領域R1の形状及び面積は等しくなる。図示の実施形態では、導体パターンC11~C15は、コイル軸X周りの同一軌道上にある。導体パターンC11~C15が互いに異なる軌道上に存在する場合には、コイル軸Xに垂直な平面に導体パターンC11~C15の各々の形状を投影し、コイル軸周りの任意角度においてこの平面に投影された導体パターンC11~C15の内周面25dのうち径方向において最も内側にある部分を選択し、この選択された部分をコイル軸Xの周りで1周分つなぎ合わせることで得られる合成された内周面の内側を第1領域R1とすることができる。導体パターンC11~C15が互いに異なる軌道上に存在する場合における第2領域R2は、上記と同様の手法で合成された外周面に基づいて定められ得る。具体的には、コイル軸Xに垂直な平面に導体パターンC11~C15の各々の形状を投影し、コイル軸周りの任意角度においてこの平面に投影された導体パターンC11~C15の外周面のうち径方向において最も外側にある部分をコイル軸Xの周りで1周分つなぎ合わせることで得られる合成された外周面の径方向外側を第2領域R2とすることができる。
図4において、第1領域R1の境界を示す一点鎖線及び第2領域R2の境界を示す一点鎖線は、線図の見やすさのために、基体10の表面よりも若干内側の領域を通過している。第1領域R1の境界及び第2領域の境界は、基体10の表面と一致していても良い。また、第1領域R1の境界及び第2領域の境界は、コイル導体25と接していてもよい。
【0037】
一実施形態において、コイル導体25は、第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比が0.6以上1.0以下の範囲となるように構成及び配置される。コイル導体25は、第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比は、0.7以上0.9以下の範囲、0.75以上0.85以下の範囲、0.76以上0.84以下の範囲、0.77以上0.83以下の範囲、0.78以上0.82以下の範囲、又は0.79以上0.81以下の範囲とされてもよい。第2領域R2のうちコイル軸Xの方向から見たときのコーナー付近の領域は磁束が通りにくい領域である。本発明者の研究によれば、第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比が0.8近辺のときに特定の領域への磁束の集中が起こりにくく、したがって磁気飽和が起こりにくい。第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比が0.6よりも低くなると第1領域R1の面積が小さすぎて第1領域R1において磁束の集中が起こりやすくなる。他方、第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比が1.0よりも大きい場合には、第2領域R2において磁束の集中が起こりやすくなる。本発明の一実施形態においては、第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比が0.6以上1.0以下の範囲とすることにより磁束の集中を防止できる。
【0038】
コイル導体25は、引出導体26によって外部電極21に電気的に接続され、引出導体27によって外部電極22に電気的に接続される。図示のように、コイル導体25の一方の端部25aは、他方の端部25bよりも上方に配置されている。本明細書では、コイル導体25の一方の端部25aを第1端部25aといい、他方の端部25bを第2端部25bということがある。コイル導体25の一方の端部25aは、導体パターンC11の端部のうちビアV1に接続される端部と反対側の端部に相当する。また、コイル導体25の他方の端部25bは、導体パターンC15の端部のうちビアV4に接続される端部と反対側の端部に相当する。このように、コイル導体25の一方の端部25aは磁性体層11上にあり、コイル導体25の他方の端部25bは磁性体層15上にある。このため、コイル導体25の一方の端部25aは、他方の端部25bよりも実装面10b及び実装面10bに設けられた外部電極21及び外部電極22から遠位にある。言い換えると、コイル導体25の他方の端部25bは、一方の端部25aよりも実装面10b及び実装面10bに設けられた外部電極21及び外部電極22の近くにある。
【0039】
引出導体26は、コイル導体25の一方の端部25aと外部電極21との間に設けられる。図示の実施形態において、引出導体26は、コイル軸Xに沿って延びる軸部C23と、軸部C23の上端C23aとコイル導体25の一方の端部25aとを接続する平面引出部C21と、外部電極21からコイル軸Xに沿って上方に延びるビアC24と、軸部C23の下端C23bとビアC24の上端とを接続する平面引出部C22と、を有する。
【0040】
軸部C23は、基体10内にビアとして設けられてもよい。図示の実施形態では、磁性体層11~15に貫通孔が設けられ、この貫通孔に導電材料を埋め込むことにより軸部C23が形成されている。軸部C23の上端C23aは、軸部C23の下端C23bよりも外部電極21及び外部電極22から遠位にある。
【0041】
平面引出部C21は
図3aに示されているように磁性体層11の上面に設けられており、平面引出部C22は
図3fに示されているように磁性体層16の上面に設けられている。平面引出部C21、C22は、導体パターンC11~C15と同様に、導電材料から公知の様々な手法で形成され得る。
【0042】
ビアC24は、磁性体層16、19a~19dに設けられた貫通孔に導電材料を埋め込むことにより形成される。ビアC24は、平面引出部C22の径方向外側の端部から外部電極21までコイル軸Xに沿って延びる。
【0043】
引出導体27はコイル導体26の他方の端部25bと外部電極22との間に設けられる。引出導体27は、基体10内にビアとして設けられてもよい。図示の実施形態では、磁性体層15、16、19a~19dに貫通孔が設けられ、この貫通孔に導電材料を埋め込むことにより引出導体27が形成される。引出導体27は、コイル導体25の他方の端部25bから外部電極22までコイル軸Xに沿って延びている。一実施形態において、コイル軸Xの方向から見たときに引出導体27は、第2領域R2と重複しないように配置される。
【0044】
引出導体26は、図示のように、コイル軸Xの方向から見たときに少なくともその一部が第1領域R1にある。図示の実施形態では、平面引出部C21の全部、軸部C23の全部、及び平面引出部C22の一部が第1領域R1に配置されている。一実施形態においては、軸部C23の全部が第1領域R1に配置される。一実施形態において、引出導体26は、その全部が第2領域R2と重複しないように、第2領域R2よりも径方向の内側に配置される。図示の実施形態では、平面引出部C22の一部(径方向外側の端部)及びビア24が第1領域R1よりも径方向外側に配置されているが、依然として第2領域R2よりも径方向内側に配置されている。
【0045】
次に、コイル部品1の製造方法の一例を説明する。コイル部品1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、積層プロセスによるコイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0046】
まず、上側カバー層18を構成する磁性体層18a~18d、コイル層20を構成する磁性体層11~磁性体層16、及び下側カバー層19を構成する磁性体層19a~19dとなる磁性体シートを作成する。これらの磁性体シートは、結合材及び複数の金属磁性粒子を含む複合磁性材料から形成される。
【0047】
磁性体シートを作成するために、まずは、金属磁性粒子を準備する。磁性体シート用の金属磁性粒子は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)のうち少なくとも一つの元素を含む結晶質又は非晶質の金属又は合金から形成される。金属磁性粒子は、さらに、ケイ素(Si)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つの元素を含んでもよい。金属磁性粒子は、Fe及び不可避不純物から成る純鉄の粒子であってもよく、鉄(Fe)を含むFe基非晶質合金であってもよい。金属磁性粒子は、Feの含有比率が99.9wt%以上のカルボニル鉄粉であってもよい。
【0048】
一実施形態において、金属磁性粒子は、1μm~200μmの平均粒径を有する。金属磁性粒子は、互いに平均粒径の異なる2種類以上の金属磁性粒子を含んでもよい。例えば、複合磁性材料用の金属磁性粒子は、第1平均粒径を有する第1の金属磁性粒子と、この第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子と、を含んでもよい。一実施形態において、第2金属磁性粒子の平均粒径は、第1金属磁性粒子の平均粒径の1/10以下とされる。第2金属磁性粒子の平均粒径が第1金属磁性粒子の平均粒径の1/10以下の場合、第2金属磁性粒子が隣接する第1金属磁性粒子31の間の隙間に入り込み易く、その結果、基体10における金属磁性粒子の充填率(Density)を高めることができる。
【0049】
金属磁性粒子の表面には、金属磁性粒子同士のショートを防止するために絶縁膜が形成される。この絶縁膜は、金属磁性粒子の表面全体を覆うように形成されることが望ましい。上述のように、金属磁性粒子が互いに異なる平均粒径を有する3種類の金属磁性粒子を含む場合、平均粒径1μm以上の粉末は絶縁膜が設けられることが望ましく、平均粒径1μmより小さな金属磁性粒子または最も小さな平均粒径を有する第3の金属磁性粒子には絶縁膜が設けられなくともよい。これは、平均粒径が十分に小さな金属磁性粒子は、他の金属磁性粒子とショートしても渦電流損失への影響が軽微なためである。
【0050】
次に、上記のようにして絶縁膜が形成された金属磁性粒子の粒子群と結合材とを混練してスラリーを作成する。次に、上記のスラリーをドクターブレード法又はこれ以外の一般的な方法にてプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することでシート体を形成する。
【0051】
次に、上記のようにして作製された磁性体シートに対してコイル導体を設ける。具体的には、磁性体層11~磁性体層16及び磁性体層19a~19dとなる各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性体層11~磁性体層16となる磁性体シートの各々の上面に、導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに未焼成の導体パターン及び平面引出部を形成する。また、各磁性体シートに形成された各貫通孔に導電ペーストを埋め込む。このようにして各磁性体シートに形成された導体パターンは、焼成後にそれぞれ導体パターンC11~導体パターンC15、平面引出部C21、及び平面引出部C22となり、各貫通孔に埋め込まれた金属がビアV1~V5、軸部C23、ビアC24となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0052】
次に、磁性体層11~磁性体層16となる各磁性体シートを積層してコイル積層体を得る。磁性体層11~磁性体層16となる各磁性体シートは、当該各磁性体シートに形成されている導体パターンC11~C15の各々が隣接する導体パターンとビアV1~Va5を介して電気的に接続されるように積層される。
【0053】
次に、複数の磁性体シートを積層して上側カバー層18となる上側積層体を形成する。また、複数の磁性体シートを積層して下側カバー層19となる下側積層体を形成する。
【0054】
次に、下側積層体、コイル積層体、上側積層体をT軸方向の負方向側から正方向側に向かってこの順序で積層し、この積層された各積層体をプレス機により熱圧着することで本体積層体が得られる。本体積層体は、下側積層体、コイル積層体、及び上側積層体を形成せずに、準備した磁性体シート全てを順番に積層して、この積層された磁性体シートを一括して熱圧着することにより形成しても良い。次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0055】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を熱処理することで基体10が得られる。次に、このチップ積層体の下面(実装面)に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22には、必要に応じて、半田バリア層及び半田濡れ層の少なくとも一方が形成されてもよい。以上により、コイル部品1が得られる。
【0056】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。インダクタ1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のインダクタ1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のインダクタ1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0057】
続いて、
図5a及び
図5bを参照して、本発明の他の実施形態によるコイル部品101について説明する。
図5a及び
図5bに示されているコイル部品101は、絶縁材31を有する点でコイル部品1と異なっている。
図5aに示されているように、絶縁材31は、平面引出部C22の上面の一部を覆うように設けられている。一実施形態における絶縁材31は、
図5bに示されているように、コイル軸Xの方向から見たときに、コイル導体25と引出導体26との間の領域であって引出導体26とコイル導体25とが重複する重複領域を覆うように設けられる。
【0058】
絶縁材31は、基体10の絶縁材31以外の領域(例えば、磁性体層11~16、磁性体層18a~18d、磁性体層19a~19d)よりも高い絶縁性を有している。絶縁材31の材料としては、例えばガラス、ガラスにフィラー材を加えた材料、または熱酸化によって形成された酸化膜を有するFeを含む金属磁性材等が挙げられる。また、絶縁材31は、上記の材料の混合物によって構成されてもよい。絶縁材31を構成する材料の体積抵抗率は、例えば、基体10の絶縁材31以外の領域に比べ100Ω・cm以上大きいとされる。
【0059】
コイル部品1においては、ビアC24は外部電極21に接続されている一方で、導体パターンC15は導体パターンC11~C15のうち電気的に最も外部電極22の近く配置されている。したがって、ビアC24と導体パターンC15との間の領域に高い電圧がかかる。よって、コイル軸Xの方向から見たときに引出導体26とコイル導体25とが重複する重複領域において導体間の電圧が高くなる。絶縁材31は、この重複領域を覆うように配置されるので、絶縁材31により基体10における絶縁破壊を効果的に抑制することができる。
【0060】
続いて、
図6を参照して、本発明の他の実施形態によるコイル部品201について説明する。
図6に示されているコイル部品201は、絶縁材31に代えて絶縁層41を備える点でコイル部品101と異なっている。
図6に示されているコイル部品201は、磁性体層15に代えて絶縁層41を備えていてもよいし、磁性体層15の上面または下面に絶縁層41が設けられてもよい。絶縁層41は、L軸方向において第1の端面10cから第2の端面10dまで延び、W軸方向において第1の側面10eから第2の側面10fまで延びていてもよい。
【0061】
基体10を構成する積層構造の一つの層として絶縁層41を設けることにより、引出導体26とコイル導体25との間の絶縁信頼性をより高めることができる。また、絶縁層41は、基体10を構成する積層構造の一つの層として設けられるので、基体10において平面方向の一部にのみ設けられている絶縁材31と比べて作製が容易である。
【0062】
続いて、
図7を参照して、本発明の他の実施形態によるコイル部品301について説明する。
図7は、本発明の他の実施形態によるコイル部品301が有する磁性体層11を示す。
図7には、磁性体層11の上に設けられる導体パターンC111及び平面引出部C121も示されている。コイル部品301は、導体パターンC11に代えて導体パターンC111を備えており平面引出部C21に代えて平面引出部C121を備えている点でコイル部品1と相違しているが、これら以外の点は、コイル部品1と同じ構成を備えてもよい。よって、
図7には、磁性体層11のみを示し、磁性体層12~16及び磁性対応19a~19dについては説明を省略する。
【0063】
図示のとおり、平面引出部C121は、磁性体層11上において軸部C23の上端C23aからL軸のプラス方向に向かって延びている。平面引出部C121は、コイル軸Xの方向から見たときに、磁性体層16に設けられている平面引出部C22と重複するように設けられる。例えば、平面引出部C121及び平面引出部C22をコイル軸Xに垂直な投影面に平行に投影して得られる両者の像が80%以上の領域で重複している場合に、コイル軸Xの方向から見て平面引出部C22と平面引出部C121とが重複しているということができる。
【0064】
続いて、
図8a~
図8gを参照して、本発明の他の実施形態によるコイル部品401について説明する。
図8a~
図8gに示されているコイル部品401は、主に、引出導体26の軸部C23に代えて軸部C223を備えている点、及び、外部電極21及び外部電極22に代えて外部電極221及び外部電極222を備えている点でコイル部品1と異なっている。
【0065】
図8a~
図8eに示されているように、コイル部品401のコイル層20は、磁性体層11~15を含む。磁性体層11には導体パターンC211及び平面引出部C221が設けられている。磁性体層12~15には、コイル導体C12~C15が設けられている。これらの導体パターンC211及びC12~C15は、積層方向において隣接する導体パターンとビアV1~V4を介して接続されている。導体パターンC15の一方の端部からは、引出導体27が外部電極222までコイル軸Xに沿って延びている。
【0066】
平面引出部C221は、導体パターンC211のビアV1が接続されている端部と反対側の端部から第1領域R1に向かって延びている。平面引出部C221の導体パターンC211との接続位置と反対側の端部からは、軸部C223がコイル軸に沿う方向に延びている。磁性体層11~15及び磁性体層19a~19dの各々には貫通孔が形成されており、この貫通孔が軸部C223によって貫かれる。軸部C223は、平面引出部C221から外部電極221まで延伸している。
【0067】
図8aに示されているように、コイル軸Xの方向から見たときに軸部C223は、基体10のL軸方向における中央CよりもL軸方向の正方向にオフセットした位置に設けられている。外部電極221及び外部電極222は、コイル軸Xの方向から見た基体10のL軸方向における中央Cに対してL軸方向において対称に構成及び配置される。このため、基体10のL軸方向における中央Cは、コイル軸Xの方向から見たときの外部電極221と外部電極222との中央と考えることができる。つまり、軸部C223は、コイル軸Xの方向から見たときに外部電極221と外部電極222との中央よりもL軸方向の正方向にオフセットした位置に設けられている。したがって、コイル軸Xの方向からみたときに、軸部C223は、外部電極221と外部電極222との中央Cよりも外部電極221寄りの位置に設けられている。
【0068】
一実施形態において、外部電極221は、
図8gに示されているように、コイル軸Xの方向から見たときに軸部C223と重複するように構成及び配置される。一実施形態において、外部電極221は、外部電極222と対向する側面221aがコイル軸Xの方向から見たときに軸部C223よりもL軸方向の負方向にシフトした位置(軸部C223から中央Cに向かってシフトした位置)にあるように設けられる。よって、コイル部品401においては、軸部C223が外部電極221と直接接続される。言い換えると、軸部C223と外部電極221とを電気的に接続するために、軸部C223と外部電極221との間に平面方向に延びる別の引出導体を設ける必要がない。
【0069】
他の実施形態において、外部電極221は、外部電極222と対向する側面221aがコイル軸Xの方向から見たときに軸部C223と重複する位置又は軸部C223よりもL軸方向の正方向にシフトした位置にあるように設けられてもよい。この場合、軸部C223と外部電極221とを電気的に接続するために、コイル軸Xの方向から見たときに軸部C223から外部電極221に向かって延びる平面引出部が設けられる。軸部C223と外部電極221とは、この平面引出部を介して電気的に接続される。軸部C223は、外部電極221と外部電極222との中央Cよりも外部電極221寄りの位置に設けられているので、軸部C223と外部電極221との間に設けられる平面引出部の長さは、引出導体の軸部が基体10のL軸方向の中央に設けられた場合にその軸部と外部電極との間に設けられる平面引出部(例えば、
図3fにおける平面引出部C22)と比べて短くともよい。
【0070】
続いて、
図9を参照して、本発明の他の実施形態によるコイル部品501について説明する。
図9に示されているコイル部品501は、外部電極21に代えて外部電極521を備え、外部電極22に代えて外部電極522を備える点でコイル部品1と異なっている。
【0071】
図示の実施形態において、外部電極521は、基体10の実装面10bに沿って延びる主電極部521aと、基体10の第1の端面10cに沿って延びる副電極部521bと、を有する。外部電極522は、基体10の実装面10bに沿って延びる主電極部522aと、基体10の第2の端面10dに沿って延びる副電極部522bと、を有してもよい。
【0072】
外部電極521は、副電極部521bとコイル導体25との距離L2が、引出導体26の平面引出部C22とコイル導体25との距離L1よりも長くなるように構成及び配置される。図示の実施形態においては、副電極部521bとコイル導体25との距離L2は、副電極部521bと導体パターンC15との距離である。また、引出導体26の平面引出部C22とコイル導体25との距離L1は、引出導体26の平面引出部C22と導体パターンC15との距離である。引出導体26とコイル導体25との距離L1は、基体10の抵抗率に応じて、引出導体26とコイル導体25との間で絶縁破壊が起こらない長さに定められている。
【0073】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。上記の一実施形態において、引出導体26の少なくとも一部がコイル導体25の径方向内側にある第1領域R1に設けられている。これにより、引出導体26がコイル導体25の径方向外側にある第2領域R2に設けられている場合と比べて、コイル導体25の径を大きくすることができる。引出導体がコイル導体の外側に配置される従来のコイル部品では、引出導体とコイル導体との間の絶縁を確保する必要がある。このため、コイル導体の外側に配置された引出導体とコイル導体の間の距離を絶縁を確保できる程度に大きく設計すると、コイル導体の径方向外側の第2領域の面積が大きくなってしまい、コイル導体の径方向内側にある第1領域の面積を大きくすることが難しい。このため、従来のコイル部品においては、コイル導体の径方向外側の第2領域の面積に対する第1領域の面積の比は一般に0.5以下である。これに対し、上記の実施形態では、コイル導体25の径方向外側に引出導体を設けるためのスペースを確保する必要がないので、コイル導体25を大径化することができ、従来の引出導体が第2領域に配置されている従来のコイル部品と比べて第1領域の面積を大きくすることができる。本発明の一実施形態においては、第2領域R2の面積に対する第1領域R1の面積の比が0.6以上とされる。引出導体26を第1領域R1に配置することにより、このような第1領域R1の大面積化が実現される。このように、上記の実施形態における各コイル部品においては、第1領域の面積の第2領域の面積に対する比を従来よりも大きくすることができるので、第1領域における磁束の集中を緩和することで磁気飽和が抑制される。
【0074】
上記の一実施形態によるコイル部品101は、コイル導体25と引出導体26との間には絶縁材31が設けられる。この絶縁材31が、コイル導体25と引出導体26との間の電位差の大きい部分に設けられることにより、コイル導体25と引出導体26との間の領域で機材10に絶縁破壊が起きることを効果的に防止できる。他の実施形態によるコイル部品201は、絶縁層41を備える。この絶縁層41は、絶縁材31よりも簡易な製造工程でもうけられる。つまり、絶縁材31は、ある層の一部に設けられているため、当該層の作成に複雑な工程を要するのに対し、絶縁層41は層全体に延在してい、簡単な工程変更で作製される。このように、簡単な製造工程で作製される絶縁層41により、コイル導体25と引出導体26との間の領域で基体10に絶縁破壊が起きることを防止できる。
【0075】
上記の一実施形態において、外部電極21及び外部電極22は、実装面10bにおいてのみ基体10と接しており、他の面(例えば、第1端面10cなど)とは接していない。これにより、外部電極が実装面のみに設けられている内部導体(コイル導体及び引出導体)の配置に対する制約が厳しいコイル部品においても第1領域を大きくすることで磁気飽和を抑制することができる。
【0076】
上記の一実施形態において、外部電極521は、基体10の端面10cに設けられた副電極部521bにより、回路基板とコイル部品501との接合強度を向上させることができる。また、外部電極521において、副電極部521bとコイル導体25との距離L2は、引出導体26とコイル導体25との距離L1よりも長くなっているので、副電極部521bが存在しても外部電極521とコイル導体25間での絶縁破壊を防止できる。
【0077】
上記の一実施形態において、引出導体26の軸部C223は、外部電極221と外部電極222との中央Cよりも外部電極221よりに設けられる。これにより、軸部C223と外部電極221とを接続するための平面方向に延びる平面引出部が不要となるかその長さを短くすることができる。第1領域R1において平面方向に延びる平面引出部は、第1領域を貫通しコイル導体25の周りを回る磁束の流れを阻害するため、インダクタンスの減少や磁気飽和の原因となる。上記の実施形態によれば、このような平面方向に延びる平面引出部を用いずに軸部C223と外部電極221とを接続するか、または、軸部C223と外部電極221とを接続する平面引出部の長さを短くすることができるので、インダクタンスの減少や磁気飽和の発生を抑制することができる。また、このような構造によりコイル導体25の直流抵抗を減少させることができる。
【0078】
引出導体26の軸部C223が外部電極221と外部電極222との中央Cよりも外部電極221よりに設けられる場合には、引出導体26とコイル導体25との間の距離は、上記の距離L1以上となるように定められる。これにより、軸部C223が外部電極221と外部電極222との中央Cからオフセットした位置に設けられても軸部C223とコイル導体25との間での絶縁破壊を防止できる。
【0079】
上記の一実施形態においては、軸部23の上端C23aとコイル導体25とが平面引出部C121によって接続されている。この平面引出部C121は、コイル軸Xの方向から見て、軸部23の下端に接続されている平面引出部C22と平面引出部C121とが重複している。上記のように、平面方向に延びる平面引出部は、第1領域を貫通しコイル導体25の周りを回る磁束の流れを阻害する。上記の実施形態によれば、平面引出部C22と平面引出部C121とが重複しているので、平面引出部C22及び平面引出部C121による磁束の流れに対する影響を軽減することができる。
【0080】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1、101、201、301、401、501 コイル部品
10 基体
10b 実装面
21、22、221、222,521,522 外部電極
26、27 引出導体
31 絶縁材
41 絶縁層
C11~C15 導体パターン
C21、C22、C121、C122、C221、C222 平面引出部
C23、C223 軸部
R1 第1領域
R2 第2領域
X コイル軸