(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】補強パネル及び補強構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20231027BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20231027BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20231027BHJP
【FI】
H01M50/242
B60R16/04 B
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2019136106
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519270439
【氏名又は名称】有限会社SEED
(73)【特許権者】
【識別番号】519269835
【氏名又は名称】和泉 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 尚矢
(72)【発明者】
【氏名】九門 光広
(72)【発明者】
【氏名】和泉 秀治
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046122(JP,A)
【文献】特開平10-323909(JP,A)
【文献】登録実用新案第3010981(JP,U)
【文献】特表2018-537308(JP,A)
【文献】特開2011-184024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298 等
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方側に突出する複数の凸部が前記基板に整列配置されると共に、
前記凸部の各々が五角形で突出するように形成され、
前記基板に整列配置されて列方向で並ぶ五角形の前記凸部が交互に上下方向を逆さにして形成されていることを特徴とする補強パネル。
【請求項2】
請求項1記載の前記補強パネルでバッテリーケースを構成し、
前記補強パネルの前記凸部がケース内側に突出するように設けられ、
前記バッテリーケースに自動車のバッテリーが収容され、
収容された前記バッテリーに前記凸部が当接若しくは隣接するように設けられることを特徴とする補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車部品等の各種部品の設置構造を補強する補強パネル及び補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部品等の設置構造を補強する補強パネルとして特許文献1、2の補強パネルが提案されている。特許文献1の補強パネルは、凹凸パネル片と平板パネル片で構成され、凹凸パネル片は、三角形状の平面部と、この平面部の一辺と底辺を共有する三角形状の底面を有する凹部を有し、凹部の三角形状の底面と平面部とが平面充填状態で配置され、平板パネル片は、その嵌合部に凹凸パネル片の凹部の突端部が嵌合され、突端部と嵌合部を接合して凹凸パネル片に取り付けられるようになっている。
【0003】
また、特許文献2の補強パネルは、基板の表面に多数の膨出部が平面充填状態で密に形成され、各膨出部を六角錐の先端部を除去して頂面を円形の平坦面にした形状で形成し、高剛性化を図っているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-112356号公報
【文献】特開2002-127942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の補強パネルは、凹凸パネル片と平板パネル片を重ねるように接合するものであるため、全体的なパネル厚が厚くなるため、狭い設置スペースに補強パネルを設置する必要がある場合には適応することが困難となる。また、凹凸パネル片と平板パネル片で構成されるものであるため、重量が嵩む、部品点数の増加で製造コストが高くなるという問題もある。
【0006】
また、特許文献2の補強パネルは、六角錐の先端部を除去して頂面を円形の平坦面にした形状の膨出部を基板を凹ませて形成し、この六角形の膨出部を辺を相互に隣接させて基板表面に平面充填状態で密に配列するものであるが、このような六角錐状の膨出部をプレス加工で形成する場合には塑性変形量が大きくなる。そのため、六角形の膨出部の辺を相互に隣接させて平面充填状態で密に配列するように基板を凹ませる加工は非常に困難なものになるという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、全体的なパネル厚を必要に応じて柔軟に薄くし、軽量化することができると共に、容易且つ低コストで製造することができる補強パネル、及びその補強パネルを備える補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の補強パネルは、別のパネル片が重ねて接合されない基板の一方側に突出する複数の凸部が前記基板に整列配置されると共に、全ての前記凸部の各々が平面充填状態で密に配列されない五角形で突出するように形成されていることを特徴とする。
これによれば、複数のパネル片を重ねて接合することが不要であるから、全体的なパネル厚を必要に応じて柔軟に薄くし、軽量化することができる。更に、補強パネルの軽量により、補強パネルの取扱性、運搬性を高めることができる。また、複数のパネル片を用いずとも製造することが可能であることから、製造コストを低減することができる。また、五角形の凸部は五角形の形状の特性から、平面充填状態で密に配列可能なものでないため、例えば塑性変形量の大きいプレス加工で製造する場合にも、それぞれの五角形の凸部を容易に加工して製造することができる。
【0009】
本発明の補強パネルは、五角形の前記凸部の各々が金属材の前記基板を変形して形成されていることを特徴とする。
これによれば、金属製の基板をプレス加工等で変形して、複数の五角形の凸部が整列配置された補強パネルを容易且つ低コストで製造することができる。また、金属製の基板の変形により、加工硬化を利用して補強パネルの強度、剛性をより高めることができる。更に、この補強パネルの強度、剛性の向上により、例えばアルミニウムなどより比重が軽く、材料自体の強度、剛性の低い金属材を用いて補強パネルを構成することも可能となる。また、例えばバッテリーケース等をアルミダイキャストで形成すると材料がADC12に限定されるなど材料が限定されるのに対し、本発明は金属製の基板をプレス加工等で変形して形成することにより、このような使用する材料の限定を無くすか或いは極めて少なくすることができ、使用材料の自由度を高めることができる。
【0010】
本発明の補強パネルは、前記基板に整列配置されて行方向で隣り合う五角形の前記凸部相互が頂点を重ねるように部分接触して形成されていることを特徴とする。
これによれば、補強パネル表面における複数の五角形の凸部が形成されている領域の密度を高め、補強パネルの強度、剛性をより高めることができる。また、五角形の凸部相互の頂点の部分接触を許容することにより、基板に凸部を形成する加工精度の許容範囲を広げ、製造作業を容易化できると共に、製品歩留まりの向上を図ることができる。また、隣り合う五角形の凸部相互の頂点を重ねるように部分接触させることにより、例えば塑性変形量の大きいプレス加工で製造する場合にも、それぞれの凸部の五角形の形状を維持でき、五角形の凸部の形状による強度、剛性の効果を安定して得ることができる。
【0011】
本発明の補強パネルは、前記基板に整列配置されて列方向で並ぶ五角形の前記凸部が離間配置されていることを特徴とする。
これによれば、例えばプレス加工等による変形の加工硬化を利用して補強パネルの断面剛性をより高められる形状とすることができ、補強パネルの強度、剛性を一層向上することができる。
【0012】
本発明の補強パネルは、基板の一方側に突出する複数の凸部が前記基板に整列配置されると共に、前記凸部の各々が五角形で突出するように形成され、前記基板に整列配置されて列方向で並ぶ五角形の前記凸部が交互に上下方向を逆さにして形成されていることを特徴とする。
これによれば、例えばプレス加工等による変形の加工硬化を利用して補強パネルの断面剛性をより高められる形状とすることができ、補強パネルの強度、剛性を一層向上することができる。
【0013】
本発明の補強構造は、本発明の補強パネルでバッテリーケースを構成し、前記補強パネルの前記凸部がケース内側に突出するように設けられ、前記バッテリーケースに自動車のバッテリーが収容され、収容された前記バッテリーに前記凸部が当接若しくは隣接するように設けられることを特徴とする。
これによれば、自動車のバッテリーを衝撃等に対して本発明の補強パネルで補強、保護することができる。また、複数の五角形の凸部が形成されて表面積が増加している補強パネルでバッテリーケースを構成することにより、バッテリーの排熱性、熱交換性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の補強パネルによれば、補強パネルの全体的なパネル厚を必要に応じて柔軟に薄くし、軽量化することができると共に、補強パネルを容易且つ低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による第1実施形態の補強パネルの斜視図。
【
図2】(a)は第1実施形態の補強パネルの平面図、(b)は同図(a)のA-A断面図、(c)は同図(a)のB-B断面図。
【
図3】本発明による第2実施形態の補強パネルの斜視図。
【
図4】(a)は第2実施形態の補強パネルの平面図、(b)は同図(a)のC-C断面図、(c)は同図(a)のD-D断面図。
【
図5】本発明による第3実施形態の補強パネルの斜視図。
【
図6】(a)は第3実施形態の補強パネルの平面図、(b)は同図(a)のE-E断面図、(c)は同図(a)のF-F断面図。
【
図7】本発明の補強パネルによる補強構造のバッテリーケースの例を示す斜視説明図。
【
図8】第1~第3実施形態の補強パネルと比較例のパネルの剛性解析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態の補強パネル〕
本発明による第1実施形態の補強パネル1は、
図1及び
図2に示すように、基板2の一方側に突出するようにして複数の凸部3が形成されているものであり、複数の凸部3が基板2に整列配置されている。凸部3の各々は基板2の一方側
で五角形で突出し且つ他方側
で五角形でへこむようにして形成されており、本実施形態では、略正五角形で略同一サイズで形成された
五角形の凸部3の各々が金属材の基板2をプレス加工等で変形して形成されている。
【0017】
基板2を金属材とする場合の金属材には、複数の五角形の凸部3を整列配置して形成した状態で補強パネルとしての所要の強度が得られる適宜の材料を用いることが可能であり、例えばステンレス、又はアルミニウム等の金属板材にプレス加工を施して変形し、複数の五角形の凸部3を整列配置した補強パネル1とすると良好である。尚、補強パネル1の材料或いは基板2の材料には、本発明の趣旨の範囲内で金属材以外の適宜の材料を用いることも可能である。
【0018】
第1実施形態の補強パネル1では、五角形の凸部3が横方向に並んだ行が縦方向に複数列(図示例では5列)で設けられており、図示例では奇数行で頂点が上向きになるように配置された略正五角形の凸部3が横方向に並設され、偶数行で頂点が下向きになるように配置された略正五角形の凸部3が横方向に並設され、一行毎交互に列方向に並ぶ略正五角形の凸部3の上下方向が逆さになるように配置されている。また、凸部3は千鳥配置されている。
【0019】
略正五角形の凸部3の高さ方向の中間に位置する頂点は、行方向で、換言すれば同行で横に隣り合う略正五角形の凸部3の対応する頂点と重なるように共通化して、横方向に並ぶ各々の凸部3が形成されている。即ち、基板2に整列配置されて行方向で隣り合う五角形の凸部3・3相互は頂点相互接触部4で頂点を重ねるように部分接触して形成されている。また、列方向に並ぶ略正五角形の凸部3は離間配置して形成されている。
【0020】
基板2の板厚と、凸部3の突出高さは本発明の趣旨の範囲内で適宜であるが、例えば基板2の板厚を0.5mm~2.0mm、凸部3の突出高さ(基板2の凸部3の突出側の表面から凸部3の突出先端までの高さ)を3mm~15mmとすると好適であり、これにより、補強パネル1の全体的なパネル厚を薄くし、多様な狭い設置スペースに補強パネル1を設置することが可能となり、補強パネル1の汎用性を非常に高めることができる。尚、基板2は、必要に応じて平板状或いは曲板状或いは筒板状とすることが可能である。
【0021】
また、基板2の板厚が0.5mm~2.0mm、凸部3の突出高さが3mm~15mmの場合、実用上の観点と本発明の効果を確実に発揮できる観点からは、第1実施形態の補強パネル1における、略正五角形の凸部3の底辺から最上端の頂点までの高さtの好適な範囲は10mm~50mm、上段に位置する凸部3・3の頂点相互接触部4と列方向で当該頂点相互接触部4の下段に位置する逆さの凸部3の底辺との間の距離h1の好適な範囲は5mm~50mm、上段に位置する逆さの凸部3の最下端の頂点と列方向で当該頂点の下段に位置する凸部3・3の頂点相互接触部4との間の距離h2の好適な範囲は0mm超50mm以下である。尚、距離h2を0mmとし、上段に位置する逆さの凸部3の最下端の頂点と列方向で当該頂点の下段に位置する凸部3・3の頂点相互接触部4を相互接触させ、重ねる構成の変形例とすることも可能である。
【0022】
第1実施形態の補強パネル1によれば、複数のパネル片を重ねて接合して形成することが不要であるから、全体的なパネル厚を必要に応じて柔軟に薄くし、軽量化することができる。更に、補強パネル1の軽量により、補強パネル1の取扱性、運搬性を高めることができる。また、複数のパネル片を用いずとも製造することが可能であることから、製造コストを低減することができる。また、五角形の凸部3は五角形の形状の特性から、平面充填状態で密に配列可能なものでないため、例えば塑性変形量の大きいプレス加工で製造する場合にも、それぞれの五角形の凸部3を容易に加工して製造することができる。
【0023】
また、五角形の凸部3の各々を金属材の基板2を変形して形成する場合には、金属製の基板2をプレス加工等で変形して、複数の五角形の凸部3が整列配置された補強パネル1を容易且つ低コストで製造することができる。また、金属製の基板2の変形により、加工硬化を利用して補強パネル1の強度、剛性をより高めることができる。更に、この補強パネル1の強度、剛性の向上により、例えばアルミニウムなどより比重が軽く、材料自体の強度、剛性の低い金属材を用いて補強パネル1を構成することも可能となる。また、例えばバッテリーケース等をアルミダイキャストで形成すると材料がADC12に限定されるなど材料が限定されるのに対し、金属製の基板2をプレス加工等で変形して形成することにより、このような使用する材料の限定を無くす或いは極めて少なくすることができ、使用材料の自由度を高めることができる。
【0024】
また、行方向で隣り合う五角形の凸部3・3相互の頂点を重ねるように部分接触して形成することにより、補強パネル表面における複数の五角形の凸部3が形成されている領域の密度を高め、補強パネル1の強度、剛性をより高めることができる。また、五角形の凸部3・3相互の頂点の部分接触を許容することにより、基板2に凸部3を形成する加工精度の許容範囲を広げ、製造作業を容易化できると共に、製品歩留まりの向上を図ることができる。また、隣り合う五角形の凸部3・3相互の頂点を重ねるように部分接触させることにより、例えば塑性変形量の大きいプレス加工で製造する場合にも、それぞれの凸部3の五角形の形状を維持でき、五角形の凸部3の形状による強度、剛性の効果を安定して得ることができる。
【0025】
また、列方向で並ぶ五角形の凸部3・3を離間配置することにより、或いは、列方向で並ぶ五角形の凸部3・3を交互に上下方向を逆さにして形成することにより、或いはその双方により、例えばプレス加工等による変形の加工硬化を利用して補強パネル1の断面剛性をより高められる形状とすることができ、補強パネル1の強度、剛性を一層向上することができる。
【0026】
〔第2実施形態の補強パネル〕
本発明による第2実施形態の補強パネル1aは、
図3及び
図4に示すように、基板2aの一方側に突出するようにして複数の凸部3aが形成されているものであり、複数の凸部3aが基板2aに整列配置されている。凸部3aの各々は、第1実施形態の凸部3と同様に、基板2aの一方側
で五角形で突出し且つ他方側
で五角形でへこむようにして形成されており、第2実施形態でも、略正五角形であ
る五角形で略同一サイズの凸部3aの各々が金属材の基板2aをプレス加工等で変形して形成されている。基板2aを金属材とする場合の金属材には第1実施形態における基板2を金属材とする場合と同様の材料を用いることが可能であり、又、補強パネル1aの材料或いは基板2aの材料には、本発明の趣旨の範囲内で金属材以外の適宜の材料を用いることも可能である。
【0027】
第2実施形態の補強パネル1aでは、五角形の凸部3aが横方向に並んだ行が縦方向に複数列(図示例では5列)で設けられており、図示例では全ての行で頂点が上向きで配置された略正五角形の凸部3aが横方向に並設されている。略正五角形の凸部3aの高さ方向の中間に位置する頂点は、行方向で、換言すれば同行で横に隣り合う略正五角形の凸部3aの対応する頂点と重なるように共通化して、横方向に並ぶ各々の凸部3aが形成されている。即ち、基板2aに整列配置されて行方向で隣り合う五角形の凸部3a・3a相互は頂点相互接触部4aで頂点を重ねるように部分接触して形成されている。また、列方向に並ぶ略正五角形の凸部3a・3a相互は離間配置して形成されており、列方向に並ぶ略正五角形の凸部3・3の上下方向は同じ向きになっている。また、凸部3aは千鳥配置されている。
【0028】
基板2aの板厚と、凸部3aの突出高さは本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、好適な基板2aの板厚と、凸部3aの突出高さは、第1実施形態の基板2の板厚と、凸部3の突出高さと同様である。尚、基板2aは、必要に応じて平板状或いは曲板状とすることが可能である。
【0029】
また、基板2aの板厚が0.5mm~2.0mm、凸部3aの突出高さが3mm~15mmの場合、実用上の観点と本発明の効果を確実に発揮できる観点からは、第2実施形態の補強パネル1aにおける、略正五角形の凸部3aの底辺から最上端の頂点までの高さtの好適な範囲は10mm~50mm、上段に位置する凸部3a・3aの頂点相互接触部4aと列方向で当該頂点相互接触部4aの下段に位置する凸部3aの最上端の頂点との間の距離h3の好適な範囲は3mm~50mm、列方向で下段に位置する凸部3a・3aの頂点相互接触部4aと列方向で当該頂点相互接触部4aの上段に位置する凸部3aの底辺との間の距離h4の好適な範囲は3mm~50mmである。
【0030】
第2実施形態の補強パネル1aによれば、第1実施形態の補強パネル1と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0031】
〔第3実施形態の補強パネル〕
本発明による第3実施形態の補強パネル1bは、
図5及び
図6に示すように、基板2bの一方側に突出するようにして複数の凸部3bが形成されているものであり、複数の凸部3bが基板2bに整列配置されている。凸部3bの各々は、第1、第2実施形態の凸部3、3aと同様に、基板2bの一方側
で五角形で突出し且つ他方側
で五角形でへこむようにして形成されており、第3実施形態でも、略正五角形であ
る五角形で略同一サイズの凸部3bの各々が金属材の基板2bをプレス加工等で変形して形成されている。基板2bを金属材とする場合の金属材には第1実施形態における基板2を金属材とする場合と同様の材料を用いることが可能であり、又、補強パネル1bの材料或いは基板2bの材料には、本発明の趣旨の範囲内で金属材以外の適宜の材料を用いることも可能である。
【0032】
第3実施形態の補強パネル1bでは、五角形の凸部3bが横方向に並んだ行が縦方向に複数列(図示例では5列)で設けられており、図示例では全ての行で頂点が上向きになるように配置された略正五角形の凸部3bが横方向に並設されている。また、凸部3bは千鳥配置されている。略正五角形の凸部3bの高さ方向の中間に位置する頂点は、行方向で、換言すれば同行で横に隣り合う略正五角形の凸部3bの対応する頂点と重なるように共通化して、横方向に並ぶ各々の凸部3bが形成されている。即ち、基板2bに整列配置されて行方向で隣り合う五角形の凸部3b・3b相互は頂点相互接触部4bで頂点を重ねるように部分接触して形成されている。
【0033】
また、上側に位置する略正五角形の凸部3bの底辺の一方の端部に位置する頂点或いは底辺の双方の端部に位置する頂点は、下側に位置する略正五角形の凸部3bにおける略正五角形の上部山形を構成する傾斜する上辺に重なるようにして、縦方向に並ぶ各々の凸部3bが形成されている。即ち、基板2bに整列配置されて列方向で隣り合う五角形の凸部3b・3b相互が一方の凸部3bの頂点と他方の凸部3bの辺を頂点辺接触部5bで重ねるように部分接触して形成されている。
【0034】
基板2bの板厚と、凸部3bの突出高さは本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、好適な基板2bの板厚と、凸部3bの突出高さは、第1実施形態の基板2の板厚と、凸部3の突出高さと同様である。尚、基板2bは、必要に応じて平板状或いは曲板状とすることが可能である。
【0035】
また、基板2bの板厚が0.5mm~2.0mm、凸部3bの突出高さが3mm~15mmの場合、実用上の観点と本発明の効果を確実に発揮できる観点からは、略正五角形の凸部3bの底辺から最上端の頂点までの高さtの好適な範囲は10mm~50mmである。
【0036】
第3実施形態の補強パネル1bによれば、第1、第2実施形態の補強パネル1、1aと対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0037】
〔本発明の補強パネルによる補強構造の例〕
次に、本発明の補強パネルによる補強構造の例について説明する。
図7に補強構造の例としてバッテリーケースの例を示す。
【0038】
図7のバッテリーケース10は、中空棒状の鋼材を枠状に配置して溶接或いはリベット締結等で固定してフレーム11を形成し、複数の第2実施形態の補強パネル1aを適宜折り曲げてケース底板とケース側壁を構成するようにフレーム11に配置し、フレーム11で支持される補強パネル1aをフレーム11に溶接或いはリベット締結等で固定して構成されている。バッテリーケース10には自動車のバッテリー12が収容される。本例では、補強パネル1aの凸部3aがケース内側に突出するように設けられ、収容されたバッテリー12に凸部3aが当接或いは隣接するように設けられる。尚、
図7では補強パネル1aを用いた例を示したが、これに代えて第1、第3実施形態の補強パネル1、1bを用いても良好である。
【0039】
このバッテリーケース10の補強構造の例によれば、自動車のバッテリー12を衝撃等に対して補強パネル1、1a、1b等で補強、保護することができる。また、複数の五角形の凸部3、3a、3bが形成されて表面積が増加している補強パネルでバッテリーケース10を構成することにより、バッテリー12の排熱性、熱交換性を高めることができる。特に、補強パネル1、1a、1bをバッテリー12に接触配置する場合には、バッテリー12の排熱性、熱交換性を飛躍的に高めることができる。
【0040】
〔第1~第3実施形態の補強パネルの剛性解析結果〕
次に、第1~第3実施形態の補強パネル1、1a、1bのCAE解析による剛性解析及びその結果について
図8に基づき説明する。この剛性解析では、4辺を完全拘束した、185mm×184mmの矩形パネルに平面方向に等分布で6.9kg負荷し、凸部を有するパネルには凸部の突出側から荷重を負荷することを条件とした。
【0041】
解析例番号1は、第1実施形態の補強パネル1に対応するものであり、185mm×184mmの矩形パネルに略正五角形の凸部3が同一配列・同一ピッチで全面に形成されている補強パネル1である。解析例番号1の補強パネル1における板厚は1.0mm、凸部3の突出高さは4mm、略正五角形の凸部3の底辺から最上端の頂点までの高さtは25.9mm、上段に位置する凸部3・3の頂点相互接触部4と、列方向で当該頂点相互接触部4の下段に位置する逆さの凸部3の底辺との間の距離h1は19mm、上段に位置する逆さの凸部3の最下端の頂点と、列方向で当該頂点の下段に位置する凸部3・3の頂点相互接触部4との間の距離h2は9.8mmとした。
【0042】
解析例番号2は、第2実施形態の補強パネル1aに対応するものであり、185mm×184mmの矩形パネルに略正五角形の凸部3aが同一配列・同一ピッチで全面に形成されている補強パネル1aである。解析例番号2の補強パネル1aにおける板厚は1.0mm、凸部3aの突出高さは4mm、略正五角形の凸部3aの底辺から最上端の頂点までの高さtは25.9mm、上段に位置する凸部3a・3aの頂点相互接触部4aと、列方向で当該頂点相互接触部4aの下段に位置する凸部3aの最上端の頂点との間の距離h3は12.7mm、列方向で下段に位置する凸部3a・3aの頂点相互接触部4aと、列方向で当該頂点相互接触部4aの上段に位置する凸部3の底辺との間の距離h4は10.2mmとした。
【0043】
解析例番号3は、第3実施形態の補強パネル1bに対応するものであり、185mm×184mmの矩形パネルに略正五角形の凸部3bが同一配列・同一ピッチで全面に形成されている補強パネル1bである。解析例番号3の補強パネル1bにおける板厚は1.0mm、凸部3bの突出高さは4mm、略正五角形の凸部3bの底辺から最上端の頂点までの高さtは25.9mmとした。
【0044】
解析例番号4は、比較例のパネルであり、185mm×184mmの矩形パネルである。解析例番号4のパネルは、凸部はなく全面に亘ってフラットな形状であり、その板厚は1.0mmとした。
【0045】
解析例番号5は、比較例のパネルであり、185mm×184mmの矩形パネルである。解析例番号5のパネルは、一方側に突出し且つ他方側に凹む略正三角形の凸部が同一配列・同一ピッチで全面に形成されているパネルである。解析例番号5のパネルでは、一行毎交互に列方向に並ぶ略正三角形の凸部の上下方向が逆さになるように配置され、凸部は千鳥配置されており、且つ列方向に並ぶ略正三角形の凸部は離間配置されている。また、行方向で隣り合う略三角形の凸部相互は底辺両端の頂点を重ねるように部分接触して形成されている。解析例番号5のパネルにおける板厚は1.0mm、凸部の突出高さは4mm、略正三角形の凸部の底辺から最上端の頂点までの高さは24.3mm、列方向で相互に対向する底辺間の距離は6.2mm、列方向で上下が同一向きの上段と下段の略正三角形の凸部について、上段の略正三角形の凸部の底辺の中点と下段の略正三角形の凸部の最上端の頂点との間の距離は25.7mmとした。
【0046】
解析例番号6は、比較例のパネルであり、185mm×184mmの矩形パネルである。解析例番号6のパネルは、一方側に突出し且つ他方側に凹む略正三角形の凸部が同一配列・同一ピッチで全面に形成されているパネルである。解析例番号6のパネルでは、全ての略正三角形の凸部の上下が同一方向とされ、各凸部は相互に離間して千鳥配置されている。解析例番号6のパネルにおける板厚は1.0mm、凸部の突出高さは4mm、略正三角形の凸部の底辺から最上端の頂点までの高さは24.3mm、列方向における下段の略正三角形の凸部の頂点から上段の略正三角形の凸部の底辺までの距離は2.7mmとした。
【0047】
図8の解析結果から明らかなように、第1~第3実施形態に対応する解析例番号1~3の補強パネル1、1a、1bは、いずれも比較例の解析例番号4~6のパネルに対して断面二次モーメントが大きく且つ変形量が少なく、比較例のパネルに比べて高い剛性を有することが分かる。
【0048】
また、解析例番号1~3の補強パネル1、1a、1b相互では、補強パネル1bよりも補強パネル1aの方が断面二次モーメントが大きく且つ変形量が少なくなっており、更に、補強パネル1aよりも補強パネル1の方が断面二次モーメントが大きく且つ変形量が少なくなっている。換言すれば、基板に五角形の凸部が整列配置される補強パネルでは、列方向で並ぶ五角形の凸部を離間配置した方がより高い剛性が得られ、又、列方向で並ぶ五角形の凸部を交互に上下方向を逆さにして形成した方がより高い剛性が得られ、又、その双方の構成を備える補強パネルとすることで、より一層高い剛性が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば自動車部品等の各種部品の設置構造を補強する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b…補強パネル 2、2a、2b…基板 3、3a、3b…凸部 4、4a、4b…頂点相互接触部 5b…頂点辺接触部 10…バッテリーケース 11…フレーム 12…バッテリー