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  • 特許-発泡粒子の製造装置および製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】発泡粒子の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
C08J9/18 CFD
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019158793
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038282
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】戎井 昌英
(72)【発明者】
【氏名】村上 恭亮
(72)【発明者】
【氏名】古川 龍二
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053274(JP,A)
【文献】特開2013-144733(JP,A)
【文献】特開2002-069225(JP,A)
【文献】特開2001-240694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡槽内へ発泡剤を供給し、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液を、前記発泡槽内で前記熱可塑性樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し加圧した後、前記発泡槽内の内圧よりも低圧雰囲気下に放出することによって発泡させる発泡工程と、
前記発泡剤の供給量を調節することにより、前記発泡工程中の前記発泡槽内の気層の圧力を一定に保つ圧力制御工程と、
前記発泡工程中に前記発泡槽内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽内へ水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む、発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記水蒸気供給工程では、前記発泡剤とともに前記水蒸気を前記発泡槽へ供給する、請求項1に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記圧力制御工程では、前記発泡剤を前記発泡槽の内温以上の温度に加熱して前記発泡槽へ供給する、請求項1または2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記発泡剤は、炭酸ガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂粒子の基材樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、または脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液を収容する発泡槽と、
前記発泡槽を加熱する加熱部と、
発泡剤を前記発泡槽へ供給する発泡剤供給部を有し、前記発泡剤の供給量を調節することにより前記発泡槽内の気層の圧力を一定に保つための圧力制御部と、
前記発泡槽内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽内へ水蒸気を供給する水蒸気供給部と、を備えた、発泡粒子の製造装置。
【請求項7】
前記水蒸気供給部は、前記発泡剤供給部へ水蒸気を供給する供給管を有し、前記発泡剤とともに水蒸気を前記発泡槽へ供給する、請求項6に記載の発泡粒子の製造装置。
【請求項8】
前記発泡剤供給部は、前記発泡槽の内温以上の温度に前記発泡剤を加熱する発泡剤加熱部を備えた、請求項6または7に記載の発泡粒子の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、発泡槽内で分散剤を含む水中にポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、ついで揮発性発泡剤を添加し、高温高圧下に保って揮発性発泡剤を含浸させたのち、低圧雰囲気下に放出する方法(以下、除圧発泡法)により製造されることは知られている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いて良好な型内発泡成形体を得るためには、(品質1)発泡粒子の発泡倍率、(品質2)発泡粒子の示差走査熱量計法により測定される2つの融解ピークのうち高温側の融解ピークの熱量比率(以下、DSC比と記載することもある)、および(品質3)発泡粒子の気泡径(セル径)について、それぞれ適正な範囲でコントロールする必要がある。
【0004】
例えば特許文献1および2には、ポリオレフィン系樹脂粒子を発泡槽から放出する際に、低圧雰囲気を特定の蒸気雰囲気(特定温度の雰囲気)として発泡粒子を水蒸気に接触させる技術が開示されている。これによりポリオレフィン系樹脂粒子を発泡槽から放出する瞬間に生じる発泡粒子の発泡倍率のバラツキを低減している。
【0005】
また、特許文献3には、ポリオレフィン系樹脂粒子を発泡槽から放出する間、ポリオレフィン系樹脂粒子の放出途中に測定した発泡粒子の発泡倍率の測定結果をフィードバックして、発泡槽内の圧力を調整する技術が開示されている。このように発泡槽内の圧力を調整することにより、時間経過に伴い変動する発泡粒子の発泡倍率に対して、発泡粒子の発泡倍率を適正な範囲に制御している。
【0006】
一方、特許文献4には、ポリオレフィン系樹脂粒子の放出途中に、発泡槽内の温度または圧力に特定の操作を実施することによって、発泡粒子のDSC比を適正な範囲に制御する技術が開示されている。
【0007】
このように、発泡槽から放出する間、発泡槽内および低圧雰囲気の温度あるいは圧力を精度よくコントロールすることにより、良好な型内発泡成形体を得るポリオレフィン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-069225号公報
【文献】特開2002-338724号公報
【文献】特開2007-218588号公報
【文献】特開2002-226621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術では、発泡槽から放出する発泡工程の特に後半において、前記品質1~3が安定しない課題があった。そして、除圧発泡法による発泡工程において、発泡工程後半の発泡粒子の品質の悪化が、発泡槽の内温の急激な低下によるものであることが判明した。特許文献1~4に記載の技術には、発泡工程後半の温度低下を抑制することについて、改善の余地がある。
【0010】
本発明の一態様は、発泡工程後半の発泡槽の内温低下を抑制し得る発泡粒子の製造装置および製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る発泡粒子の製造方法は、発泡槽内へ発泡剤を供給し、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液を、前記発泡槽内で前記熱可塑性樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し加圧した後、前記発泡槽内の内圧よりも低圧雰囲気下に放出することによって発泡させる発泡工程と、前記発泡剤の供給量を調節することにより、前記発泡工程中の前記発泡槽内の気層の圧力を一定に保つ圧力制御工程と、前記発泡工程中に前記発泡槽内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽内へ水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発泡粒子の製造装置は、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液を収容する発泡槽と、前記発泡槽を加熱する加熱部と、発泡剤を前記発泡槽へ供給する発泡剤供給部を有し、前記発泡剤の供給量を調節することにより前記発泡槽内の気層の圧力を一定に保つための圧力制御部と、前記発泡槽内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽内へ水蒸気を供給する水蒸気供給部と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、発泡工程後半の発泡槽の内温低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】発泡工程中の発泡槽の気層の圧力の状態を模式的に示した図である。
図2】本発明の実施形態1に係る発泡粒子の製造装置の概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る発泡粒子の製造装置の変形例の概略構成を示す図である。
図4】上側のグラフは、除圧発泡による発泡工程中の発泡槽内の内温変化を示し、下側のグラフは、発泡粒子の発泡倍率Xp、DSC比、およびセル径の経時的変化を示す。
図5】上段は、除圧発泡法により発泡工程に使用される発泡槽の構成を模式的に示す図であり、中段および下段は、発泡槽へ供給する炭酸ガスを加熱したときと当該炭酸ガスを加熱していないときとの間で発泡槽の内温変化を比較した比較結果を示すグラフであり、中段は、発泡工程中の発泡槽へ供給される炭酸ガスの温度変化を示し、下段は、発泡工程中の発泡槽の内温変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔本発明の一実施形態の概要〕
図4の上側のグラフは、除圧発泡による発泡工程中の発泡槽内の内温変化を示し、図4の下側のグラフは、発泡粒子の(品質1)発泡倍率Xp、(品質2)DSC比、および(品質3)セル径の経時的変化を示す。図4の上側のグラフに示されるように、除圧発泡法による発泡粒子の製造方法では、発泡工程の後半の発泡槽の内温が急激に低下する。そして、このような発泡工程後半の発泡槽の内温低下に伴って、図4の下側のグラフに示されるように、発泡粒子の(品質1)~(品質3)が悪化している。具体的には、発泡粒子の発泡倍率Xpが低下し、DSC比が上昇し、セル径が微細化している。
【0016】
図5の上段は、除圧発泡法により発泡工程に使用される発泡槽の構成を模式的に示す図である。図5の上段の図に示されるように、発泡槽1には、ポリオレフィン系樹脂粒子を含む分散液Aを撹拌する撹拌部3が設けられている。発泡槽1の周囲には、ジャケット部2が設けられている。そして、ジャケット部2には、蒸気が供給される。ジャケット部2に供給される蒸気によって、発泡槽1は加熱され、発泡槽1の内温が発泡工程に必要な温度になる。発泡工程中、ジャケット部2に供給される蒸気により、発泡槽1の内温は、例えば150℃に加熱される。
【0017】
また、発泡槽1には、発泡剤として炭酸ガス(CO)が供給されており、発泡槽1の気層の圧力を一定に維持するために、炭酸ガスの発泡槽1への供給量が調節されている。炭酸ガスの発泡槽1への供給量が調節されることにより、発泡槽1の気層の圧力は、例えば3MPaに維持される。
【0018】
発泡工程後半での発泡槽1の内温低下の原因として、まず、本願発明者は、次の要因を考えた。すなわち、(I)発泡工程後半では分散液Aの液面が低くなるので、ジャケット部2から分散液Aへの伝熱面積が小さくなることによって発泡槽1の内温が低下する。(II)分散液の発泡工程中に発泡槽に供給される炭酸ガスの温度が発泡工程中の発泡槽1の内温よりも低いため、当該炭酸ガスが供給されることによって発泡槽1の内温が低下する。尚、発泡工程後半の発泡槽1の気層の圧力は、低下することなく一定に保持されている。それゆえ、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下は、発泡槽1の気層の圧力低下に伴う内温低下ではない。
【0019】
そこで、本願発明者は、発泡槽1へ供給される炭酸ガスの温度を発泡槽1の内温程度に高くしたとき、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下が抑制されるか否か検討した。より具体的には、本願発明者は、発泡槽1へ供給する炭酸ガスを加熱したときと当該炭酸ガスを加熱していないときとの間で、発泡槽1の内温変化を比較した。図5の中段および下段は、比較結果を示すグラフであり、中段は、発泡工程中の発泡槽1へ供給される炭酸ガスの温度変化を示し、下段は、発泡工程中の発泡槽1の内温変化を示す。
【0020】
図5の中段のグラフ「COの温度変化」に示されるように、発泡槽1へ供給する炭酸ガスを加熱したとき、発泡工程中、炭酸ガスの温度は、120℃~150℃の間で変化し、発泡槽1の内温(150℃)に近い温度となっている。一方、発泡槽1へ供給する炭酸ガスを加熱しないとき、発泡工程中、炭酸ガスの温度は、50℃~90℃の間で変化し、発泡槽1の内温(150℃)よりもはるかに低い。
【0021】
図5の下段のグラフ「発泡槽の内温変化」に示されるように、発泡槽1へ供給する炭酸ガスを加熱することによって、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下がある程度改善された。しかし、発泡槽1の内温と同等の温度まで加熱した炭酸ガスを供給しても十分に改善されず発泡工程末期での温度低下は著しかった。それゆえ、炭酸ガスの加熱だけでは発泡工程後半での発泡槽1の内温低下が抑制されないことが示された。
【0022】
そこで、本願発明者は、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下を抑制し得る製造装置の開発を目指してさらに鋭意開発を行った。そして、本願発明者は、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下の原因として、発泡工程中の発泡槽1の気層内の水蒸気分圧に着目し、鋭意検討した。
【0023】
図1は、発泡工程中の発泡槽1の気層の圧力(内圧Pと記載することもある)の状態を模式的に示した図である。なお、図1では、発泡槽1の内温を150℃としている。また、発泡工程中、発泡槽1の気層は、内圧Pに維持されている。
【0024】
図1に示されるように、発泡工程の直前では、発泡槽1の内圧Pは、発泡槽1へ供給される炭酸ガスの分圧Pと、分散液Aから発生する水蒸気の分圧P(150℃飽和水蒸気)との合計である。発泡槽1の内圧Pを3MPaに設定したとき、分圧Pは、2.63MPaとなり、分圧Pは、0.37MPaとなる。
【0025】
そして、発泡工程中では、発泡槽1での分散液Aが発泡槽1の底部から排出され、分散液Aの液面が低下する。これに伴い、発泡槽1の気層の容積が大きくなる。このため、水蒸気の分圧Pは、徐々に低下する一方、炭酸ガスの分圧Pは、徐々に高くなる。このとき、水蒸気の分圧Pが低下するので、発泡槽1内の飽和水蒸気圧を維持するために、分散液Aでは気層へ蒸発(気化)が起こり、周囲より気化熱が奪われる。発泡工程中、前記気化熱、炭酸ガスの温度上昇にかかる熱、および発泡槽1からの放熱による熱量の損失は、ジャケット部2へ供給される蒸気によってカバーされる。
【0026】
さらに、発泡工程後半では、分散液Aの液面がさらに低下する。そして、これに伴い、発泡槽1の気層の容積がさらに大きくなり、発泡槽1の容積の大部分が気層の容積となる。このため、発泡槽1の気層の内圧Pは、略全圧が炭酸ガスの分圧Pとなる。それゆえ、発泡工程後半では、分散液Aの気化熱が大きくなる。また、ジャケット部2に供給される蒸気の分散液Aへの伝達面積が小さくなるので、分散液Aの気化熱による熱量の損失は、ジャケット部2へ供給される蒸気によって補われ得ない。このため、発泡工程後半では、分散液Aの周囲の部材から気化熱が奪われ続け、発泡槽1の内温が著しく低下すると本願発明者は考えた。
【0027】
さらに、本願発明者は、発泡工程を通して発泡槽1の気層内の水蒸気の分圧Pを一定にすれば、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下を抑制できるという知見を見出し、本発明の実施形態に至った。
【0028】
なお、上述した水蒸気の分圧に関する知見は、発泡剤として炭酸ガスを用いた発泡工程に限らず、他の発泡剤を用いた発泡工程にも当てはまる。
【0029】
〔本発明の一実施形態の説明〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る発泡粒子の製造装置10の概略構成を示す図である。図2では、発泡剤として炭酸ガスを用いた製造装置10が一例として示されている。製造装置10に使用される発泡剤は、炭酸ガスに限定されず、後述する発泡剤であればよい。
【0030】
図2に示されるように、本実施形態に係る製造装置10は、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液を収容する発泡槽1と、ジャケット部2(加熱部)と、撹拌部3と、圧力制御部4と、水蒸気供給部5と、を備えている。
【0031】
発泡槽1は、除圧発泡法によりポリオレフィン系樹脂粒子からポリオレフィン系樹脂発泡粒子を得るための槽であればよい。通常、発泡槽1の下部には、低圧雰囲気へ分散液Aを放出するための放出弁が設けられている。
【0032】
ジャケット部2は、発泡槽1を加熱する加熱部である。ジャケット部2は、発泡槽1の周囲を取り囲むように設けられている。ジャケット部2には、蒸気が供給される。ジャケット部2に供給される蒸気によって、発泡槽1は加熱され、発泡槽1の内温が発泡工程に必要な温度になる。
【0033】
撹拌部3は、発泡槽1内の分散液Aを撹拌する部材である。撹拌部3は、例えば、撹拌翼を有する撹拌棒と、当該撹拌棒を回転するモーターと、を備えている。
【0034】
圧力制御部4は、発泡剤として炭酸ガスを発泡槽1へ供給する炭酸ガス供給部4a(発泡剤供給部)を有する。圧力制御部4は、炭酸ガスの発泡槽1への供給量を調節することにより発泡槽1内の気層の圧力を一定に保つために構成されている。より具体的には、圧力制御部4は、炭酸ガス供給部4aから発泡槽1へ炭酸ガスを供給するための供給管4bと、発泡槽1内の内圧Pを制御するための制御弁4cと、を備えている。制御弁4cは、供給管4bに設けられており、発泡槽1への炭酸ガスの供給量を調節するための弁である。発泡槽1内の内圧Pの測定値に基づいて、圧力制御部4は、内圧Pが一定になるように、制御弁4cにより炭酸ガスの供給量を調節する。なお、圧力制御部4は、後述の発泡剤を発泡槽1へ供給する発泡剤供給部を備えていればよく、当該発泡剤供給部は、炭酸ガス供給部4aに限定されない。
【0035】
圧力制御部4は、炭酸ガスの発泡槽1への供給量を調節することができる要素または部材で構成されていればよい。例えば、圧力制御部4は、発泡槽1の内圧Pをモニタリングするモニタリング部と、当該モニタリング部によりモニタリングされた内圧Pが、所定の圧力(例えば3MPa)を超える、あるいは下回ったときに使用者に通知する通知部と、を備えた構成であってもよい。この通知部の通知情報に基づき、使用者が制御弁4cを操作し、炭酸ガスの発泡槽1への供給量を調節する。
【0036】
また、圧力制御部4は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。このような圧力制御部4を備えたことによって、内圧Pの自動調節を実現することができる。
【0037】
この場合、本実施形態に係る製造装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0038】
水蒸気供給部5は、発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、発泡槽1内へ水蒸気を供給する。水蒸気供給部5は、炭酸ガス供給部4aの供給管4bと接続した供給管5aと、制御弁5bと、を有する。水蒸気供給部5は、供給管5aを介して、炭酸ガスとともに水蒸気を発泡槽1へ供給するように構成されている。制御弁5bは、水蒸気の流量を調節するための弁であり、供給管5aに設けられている。
【0039】
水蒸気供給部5は、発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、制御弁5bにより水蒸気の供給量を調節する。例えば、発泡槽1の容積が3mであり、発泡槽1の内温が150℃に調節されている場合、水蒸気の供給量は、5~50kg/hrであり、好ましくは10~30kg/hrである。水蒸気供給部5は、制御弁5bを調節することにより、上記範囲内の一定量の水蒸気を供給管4bへ供給する。ここで、発泡槽1に供給される炭酸ガスの流量は略一定である。このため、供給管4bへ供給する水蒸気の流量を一定とすることによって、発泡槽1内での炭酸ガスの分圧および水蒸気の分圧は、おのずと一定となる。
【0040】
ここで、発泡槽1には、炭酸ガスと水蒸気との混合物が供給される。このため、発泡槽1へ供給する水蒸気の元圧、すなわち、水蒸気供給源から放出される水蒸気の圧力は、発泡槽1の内圧Pよりも高圧である必要がある。それゆえ、水蒸気供給部5の水蒸気供給源として、高圧蒸気を放出する高圧ボイラーが使用される。
【0041】
本実施形態に係る製造装置10によれば、水蒸気供給部5は、発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、発泡槽1内へ水蒸気を供給する。このため、発泡工程中、発泡槽1内の水蒸気分圧は一定となるので、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下を抑制できる。
【0042】
本実施形態に係る発泡粒子の製造方法は、例えば製造装置10を用いて発泡粒子を製造する方法である。より具体的には、本実施形態に係る発泡粒子の製造方法は、発泡槽1内へ発泡剤を供給し、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液Aを、発泡槽1内で熱可塑性樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し加圧した後、発泡槽1内の内圧よりも低圧雰囲気下に放出することによって発泡させる発泡工程と、前記発泡剤の供給量を調節することにより、前記発泡工程中の発泡槽1内の気層の圧力を一定に保つ圧力制御工程と、発泡工程中に発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、発泡槽1内へ水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む。そして、前記水蒸気供給工程では、前記発泡剤とともに前記水蒸気を前記発泡槽1へ供給する。なお、本実施形態に係る発泡粒子の製造方法に使用される製造装置は、当該製造方法を実現可能な構成を有する製造装置であればよく、図2に示す製造装置10に限定されない。
【0043】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂粒子の基材樹脂は、一般的な公知の発泡性の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびこれらの混合物等が挙げられる。前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、またはポリエステル系樹脂であり、より好ましくはポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、または脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂である。ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン単位を50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含む樹脂のことである。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン等のポリエチレン類;プロピレンホモポリマー;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体等のα-オレフィン-プロピレンランダム共重合体、並びに、α-オレフィン-プロピレンブロック共重合体等のポリプロピレン類;プロピレンホモポリマー、ポリブテン等のその他のポリオレフィンホモポリマー類;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。また、ポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族系ポリエステル樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフラレート)(PBAT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。また、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0044】
これらの内でも、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、およびプロピレン-1-ブテンランダム共重合体が、発泡粒子とするときに良好な発泡性を示すため、好適に使用される。
【0045】
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂は、通常、発泡粒子を製造し易いように、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、且つ円柱形状、楕円形状、球形状、立方体形状、直方体形状等の樹脂粒子に予め加工しておくことが好ましい。なお、樹脂粒子はペレットとも称する。
【0046】
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂粒子は、一粒の重量が 0.1~30mgであることが好ましく、0.3~10mgであることがより好ましい。
【0047】
熱可塑性樹脂に添加剤を加える場合には、前記熱可塑性樹脂粒子の製造前に、ブレンダー等を用いて熱可塑性樹脂と添加剤とを混合することが好ましい。添加剤の具体例としては、セル造核剤(単に造核剤とも称する)が挙げられる。また、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素系発泡剤を使用する場合には、造核剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、ベントナイト、硫酸バリウム等のような無機造核剤が一般に使用される。セル造核剤の添加量は、使用する熱可塑性樹脂の種類、セル造核剤の種類によって異なるので一概には規定できないが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、概ね0.001重量部以上、2重量部以下であることが好ましい。
【0048】
また、空気、窒素、二酸化炭素等の無機発泡剤を使用する場合には、前記無機造核剤および/または親水性物質を使用することが好ましい。水系分散物の分散媒として水を使用する場合には、熱可塑性樹脂中に水が含浸し、含浸した水が他の発泡剤と共にあるいは単独で発泡剤として作用する。
【0049】
前記親水性物質は、熱可塑性樹脂に含浸される水分量を多くするように作用する。親水性物質の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛等の無機物質;あるいは、グリセリン、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物;ポリエチレングリコール、またはポリエチレンオキシド等のポリエーテル、ポリエーテルのポリプロピレン等への付加物、およびこれらのポリマーアロイ;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン-(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の重合体;等の有機物が挙げられる。これら親水性物質は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0050】
親水性物質の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0 .005重量部以上、2重量部以下であることが好ましく、0.005重量 部以上、1重量部以下であることがより好ましい。親水性物質の種類および量を調整することにより、熱可塑性樹脂発泡粒子の平均気泡径を調整することができる。
【0051】
更に、熱可塑性樹脂粒子の製造時には、必要により着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系加工安定剤、ラクトン系加工安定剤、金属不活性剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダートアミン系光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸中和剤、結晶核剤、アミド系添加剤等の添加剤を、熱可塑性樹脂の特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0052】
発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性の炭化水素系発泡剤、および空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガスを用いることが可能である。無機ガスを用いる場合は、比較的高い発泡倍率の発泡粒子が得られやすいことから、二酸化炭素が好ましい。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0053】
本発明の一実施形態に係る分散液は分散媒として水を含む。以下、分散媒として水を含む物を水系分散媒と呼ぶ。メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も、水系分散剤として使用することができる。
【0054】
水系分散媒においては、熱可塑性樹脂粒子同士の融着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤の具体例としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、酸化チタン、塩基性 炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が挙げられる。これらの中でも、第三リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンが、少ない使用量でも発泡槽1内の熱可塑性樹脂粒子を含んでなる水系分散物を安定的に分散させることができるため、より好ましい。
【0055】
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の具体例としては、例えば、N-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型;硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型;および、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型;等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。また、分散助剤として、マレイン酸共重合体塩;ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤;および、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩;等の多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
【0056】
分散助剤として、スルホン酸塩型の陰イオン界面活性剤を使用することが好ましく、さらには、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種もしくは2種類以上の混合物を用いることが好ましい。また、アルキルスルホン酸塩を使用することがより好ましく、疎水基として炭素数10~18の直鎖状の炭素鎖を持つアルキルスルホン酸塩を使用することが、熱可塑性樹脂の発泡粒子に付着する分散剤を低減することができるため、特に好ましい。
【0057】
そして、本発明の一実施形態においては、分散剤として第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンから選ばれる1種以上と、分散助剤としてn-パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが特に好ましい。
【0058】
分散剤および分散助剤の使用量は、その種類、または用いる熱可塑性樹脂の種類および使用量に応じて異なる。通常、分散剤は、水系分散媒100重量部に対して、0.1重量部以上、5重量部以下で配合することが好ましく、0.2重量部以上、3重量部以下で配合することがより好ましい。分散助剤は、水系分散媒100重量部に対して、0.001重量部以上、0.3重量部以下で配合することが好ましく、0.001重量部以上、0.1重量部以下で配合することがより好ましい。また、熱可塑性樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好にするため、通常、水系分散媒100重量部に対して、20重量部以上、100重量部以下で使用することが好ましい。前記構成であれば、熱可塑性樹脂粒子を発泡槽1内で水系分散媒中に安定に分散させることができる。
【0059】
(本実施形態の変形例)
図3は、本実施形態に係る製造装置10の変形例の概略構成を示す図である。この変形例としての製造装置10Aは、炭酸ガス供給部4aが炭酸ガス加熱部4dを備えた点が図2に示す構成と異なる。
【0060】
炭酸ガス加熱部4dは、発泡槽1の内温以上の温度に炭酸ガスを加熱する。製造装置10Aでは、水蒸気供給部6により発泡槽1の気層内の水蒸気分圧が一定になっているのに加え、さらに、炭酸ガス加熱部4dによって発泡槽1へ供給される炭酸ガスの温度が発泡槽1の内温以上になっている。上述のように、発泡槽1へ供給する炭酸ガスを発泡槽1の内温と同程度に加熱することによって、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下が改善された(図5参照)。発泡槽1へ供給する炭酸ガスの温度が発泡槽1の内温以上であれば、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下の改善効果は高くなると考えられる。それゆえ、製造装置10Aによれば、発泡工程後半での発泡槽1の内温低下をさらに抑制できる。
【0061】
本実施形態に係る発泡粒子の製造方法の変形例は、例えば製造装置10Aを用いて発泡粒子を製造する方法である。より具体的には、本実施形態に係る発泡粒子の製造方法の変形例は、上述の圧力制御工程にて、前記炭酸ガスを前記発泡槽1の内温以上の温度に加熱して前記発泡槽1へ供給する方法である。
【0062】
なお、本実施形態の変形例において、発泡槽1へ供給する炭酸ガスは、発泡槽1の内温以上の温度に加熱されていればよい。
【0063】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(まとめ)
本発明の態様1に係る発泡粒子の製造方法は、発泡槽1内へ発泡剤を供給し、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液Aを、前記発泡槽1内で前記熱可塑性樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し加圧した後、前記発泡槽1内の内圧よりも低圧雰囲気下に放出することによって発泡させる発泡工程と、前記発泡剤の供給量を調節することにより、前記発泡工程中の前記発泡槽1内の気層の圧力を一定に保つ圧力制御工程と、前記発泡工程中に前記発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽1内へ水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む構成である。
【0065】
本発明の態様2に係る発泡粒子の製造方法は、態様1において、前記水蒸気供給工程では、前記発泡剤とともに前記水蒸気を前記発泡槽1へ供給してもよい。
【0066】
本発明の態様3に係る発泡粒子の製造方法は、態様1または2において、前記圧力制御工程では、前記発泡剤を前記発泡槽1の内温以上の温度に加熱して前記発泡槽1へ供給することが好ましい。すなわち、本発明の態様3に係る発泡粒子の製造方法は、発泡槽1内へ発泡剤を供給し、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液Aを、発泡槽1内で熱可塑性樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し加圧した後、発泡槽1内の内圧よりも低圧雰囲気下に放出することによって発泡させる発泡工程と、前記発泡剤を前記発泡槽1の内温以上の温度に加熱して発泡槽1へ供給し、当該発泡剤の供給量を調節することにより、前記発泡工程中の発泡槽1内の気層の圧力を一定に保つ圧力制御工程と、発泡工程中に発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、発泡槽1内へ水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、を含む構成である。
【0067】
本発明の態様4に係る発泡粒子の製造方法は、態様1~3のいずれかにおいて、前記発泡剤は、炭酸ガスであることが好ましい。
【0068】
本発明の態様5に係る発泡粒子の製造方法は、態様1~4のいずれかにおいて、前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、または脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0069】
本発明の態様6に係る発泡粒子の製造装置10、10Aは、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液Aを収容する発泡槽1と、前記発泡槽1を加熱する加熱部(ジャケット部2)と、発泡剤を前記発泡槽1へ供給する発泡剤供給部(炭酸ガス供給部4a)を有し、前記発泡剤の供給量を調節することにより前記発泡槽1内の気層の圧力を一定に保つための圧力制御部4と、前記発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽1内へ水蒸気を供給する水蒸気供給部5と、を備えた構成である。
【0070】
本発明の態様7に係る発泡粒子の製造装置10、10Aは、態様6において、前記水蒸気供給部5は、前記前記発泡剤供給部(炭酸ガス供給部4a)へ水蒸気を供給する供給管5aを有し、前記発泡剤とともに水蒸気を前記発泡槽1へ供給する構成であってもよい。
【0071】
本発明の態様8に係る発泡粒子の製造装置10Aは、態様6または7において、前記前記発泡剤供給部(炭酸ガス供給部4a)は、前記発泡槽1の内温以上の温度に前記発泡剤を加熱する発泡剤加熱部(炭酸ガス加熱部4d)を備えた構成であることが好ましい。すなわち、本発明の態様5に係る発泡粒子の製造装置10Aは、熱可塑性樹脂粒子と水とを含む分散液Aを収容する発泡槽1と、前記発泡槽1を加熱する加熱部(ジャケット部2)と、前記発泡槽1の内温以上の温度に発泡剤を加熱させて前記発泡槽1へ供給する発泡剤供給部(炭酸ガス供給部4a)を有し、前記発泡剤の供給量を調節することにより前記発泡槽1内の気層の圧力を一定に保つための圧力制御部4と、前記発泡槽1内の水蒸気分圧が一定になるように、前記発泡槽1内へ水蒸気を供給する水蒸気供給部5と、を備えた構成である。
【0072】
本発明の態様9に係る発泡粒子の製造装置10、10Aは、態様6~8のいずれかにおいて、前記発泡剤は、炭酸ガスであることが好ましい。
【0073】
本発明の態様10に係る発泡粒子の製造装置10、10Aは、態様6~9のいずれかにおいて、前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、または脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、緩衝包装材、物流資材、断熱材、土木建築部材、自動車部材などの製造に使用される発泡粒子に好適に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 発泡槽
2 ジャケット部(加熱部)
4 圧力制御部
4a 炭酸ガス供給部(発泡剤供給部)
5 水蒸気供給部
10、10A 製造装置
図1
図2
図3
図4
図5