(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】チューブ及びチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
H05K9/00 L
(21)【出願番号】P 2019167997
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 一智
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-097278(JP,A)
【文献】特開2004-158618(JP,A)
【文献】特開2016-127429(JP,A)
【文献】特開2016-048713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01B 7/20
H01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状又は筒状の芯棒の外周面に第1の膜を成膜する工程と、
前記第1の膜に対する密着性が前記芯棒の前記外周面よりも高い内周面を有しかつ熱収縮性を有する管状体の内側に前記芯棒を挿入する工程と、
前記管状体を加熱して前記管状体を収縮させ、前記管状体の前記内周面を前記第1の膜に密着させる工程と、
前記管状体の内側から前記芯棒を除去する工程と、を含むことを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項2】
前記管状体は、可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載のチューブの製造方法。
【請求項3】
前記第1の膜は、金属膜からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のチューブの製造方法。
【請求項4】
前記第1の膜を成膜する工程において、前記金属膜をスパッタリングによって前記芯棒の前記外周面に成膜することを特徴とする請求項3に記載のチューブの製造方法。
【請求項5】
前記芯棒の前記
外周面は、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のチューブの製造方法。
【請求項6】
前記芯棒は、棒状又は筒状の芯体及び前記芯体の表面に形成されたポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂膜を有し、
前記芯棒を除去する工程は、前記芯体を前記樹脂膜から引き抜く工程と、前記樹脂膜を前記第1の膜から剥離する工程と、を含むことを特徴とする請求項5に記載のチューブの製造方法。
【請求項7】
前記芯棒は、前記管状体よりも高い温度で収縮し、
前記芯棒を除去する工程は、前記管状体を前記第1の膜に密着させた後において、前記芯棒を前記管状体が収縮する温度よりも高い温度でさらに加熱して前記芯棒を収縮させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のチューブの製造方法。
【請求項8】
前記芯棒は、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン又はポリエチレンからなり、
前記芯棒を除去する工程は、前記芯棒を有機溶剤によって溶かす工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電磁シールドケーブルなどに用いられるチューブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールドケーブルは、電磁波をケーブル内に閉じ込めることができる。このため、電磁波を種々の出射口まで導波させる導波管の構成パーツとしても使用され得る。特許文献1には、螺旋状に巻き付けられた管状電磁波シールド体と熱収縮チューブとからなる電磁波シールド熱収縮チューブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブは、電磁波に限らず、液体やガスなど、種々の物質をその内部に閉じ込め又は運搬可能に構成することができる。また、チューブは、特定の対象物質のみを透過させる構成を有することで、フィルタとしても機能することができる。筒状に形成したチューブは、このように種々の用途に用いられることができる。
【0005】
また、種々の用途に用いられることを考慮すると、チューブは、例えば、可撓性を有することが好ましい。そして、チューブは、例えば、どのような形状に変形した場合でも、その閉じ込め機能又はフィルタ機能を維持することが好ましい。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高い閉じ込め性能、またはフィルタ性能を有するチューブ及びその製造方法を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、棒状又は筒状の芯棒の外周面に第1の膜を成膜する工程と、第1の膜に対する密着性が芯棒の外周面よりも高い内周面を有しかつ熱収縮性を有する管状体の内側に芯棒を挿入する工程と、管状体を加熱して管状体を収縮させ、管状体の内周面を第1の膜の表面に密着させる工程と、管状体の内側から芯棒を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項9に記載の発明は、管状の基体と、基体の内周面に配された第1の膜と、第1の膜の内周面に配され、フッ素樹脂からなりかつ第1の膜に対する密着性が基体よりも低い第2の膜と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施例1に係るチューブの製造フローを示す図である。
【
図4A】実施例1に係るチューブの製造途中における断面図である。
【
図4B】実施例1に係るチューブの製造途中における断面図である。
【
図4C】実施例1に係るチューブの製造途中における断面図である。
【
図4D】実施例1に係るチューブの製造途中における断面図である。
【
図4E】実施例1に係るチューブの製造途中における断面図である。
【
図5】実施例1に係るチューブの他の製造フローを示す図である。
【
図6A】実施例1に係るチューブを他の製造フローで製造した場合の製造途中における断面図である。
【
図6B】実施例1に係るチューブを他の製造フローで製造した場合の製造途中における断面図である。
【
図6C】実施例1に係るチューブを他の製造フローで製造した場合の製造途中における断面図である。
【
図7】実施例1の変形例に係るチューブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係るフレキシブルチューブ(以下、単にチューブと称する)10の側面図である。
図2は、チューブの断面図である。
図2は、
図1における2-2線に沿った断面図である。
図1及び
図2を用いて、チューブ10について説明する。
【0012】
チューブ10は、円筒状の基体11及び基体11の内周面に形成された金属膜(第1の膜)12からなる。例えば、基体11は、樹脂材料からなる。また、基体11は、可撓性を有する。例えば、基体11は、ポリオレフィンからなる。
【0013】
金属膜12は、電磁波、本実施例においてはテラヘルツ波に対して反射性を有する。すなわち、チューブ10は、例えば、金属膜12の内部にテラヘルツ波を閉じ込める可撓性の電磁波シールドとして機能する。例えば、金属膜12は、銅膜からなる。
【0014】
図3は、チューブ10の製造フローを示す図である。また、
図4A~
図4Fの各々は、チュー部10の製造途中における断面図である。
図3及び
図4A乃至
図4Fを用いて、チューブ10の製造方法について説明する。
【0015】
[芯棒20の形成(
図4A参照)]
まず、筒状の芯体21の外周面に樹脂膜22を成膜し、芯棒20を形成する(工程S01)。本実施例においては、芯体21として、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと称する)からなる筒状体を準備した。そして、樹脂膜22として、極薄のPTFEからなる筒状体を準備し、樹脂膜22の筒状体に芯体21を挿入した。このようにして、芯棒20が形成される。
【0016】
本実施例においては、芯体21として、約4~5mmの外径を有し、約0.3~0.4mmの厚さを有するPTFEの管状体を準備した。また、樹脂膜22としては、芯体21の外形よりもわずかに(約0.01~0.03mm)大きい内径を有し、約0.05~0.1mmの厚さを有するPTFEフィルムからなる管状体を準備した。
【0017】
なお、PTFEフィルムからなる管状体の樹脂膜22の筒状体に芯体21を挿入することに代えて、芯体21の外周部に、樹脂膜22として、PTFEからなる平面フィルムを巻き付けることで、芯棒20を形成するようにしてもよい。この場合、樹脂膜22としては、約0.05~0.1mmの厚さを有するPTFEフィルムを準備し、樹脂膜22を芯体21に巻き付ける際には、樹脂膜22の内径がわずかに(約0.01~0.03mm)芯体21の外形よりも大きくなるように、樹脂膜22の巻き付け量及び巻き付け力を調整すればよい。
【0018】
[金属膜12の成膜(
図4B参照)]
次に、芯棒20の外周面、本実施例においては樹脂膜22の外周面に金属膜12を成膜する(工程S02)。本実施例においては、スパッタリングによって金属膜12を芯棒20の外周面に成膜する。より具体的には、芯棒20をスパッタリング装置に搭載し、芯棒20を回転させながら、芯棒20の外周面に銅を膜状に形成した。本実施例においては、金属12として、約0.5~10μmの銅膜を芯棒20上に成膜した。
【0019】
[基体11の形成(
図4C及び
図4D参照)]
続いて、熱収縮性の樹脂からなる可撓性の管状体11Pの内側に芯棒20を挿入する(工程S03)。そして、管状体11Pを加熱することで管状体11Pを収縮させ、管状体11Pの内周面を金属膜12に密着させる(工程S04)。これによって、管状体11Pの内周面に金属膜12が転写される。また、収縮した管状体11Pは、内周面に金属膜12が形成された基体11となる。
【0020】
本実施例においては、管状体11Pとして、収縮後に内径が約4~4.3mmとなる厚さが約0.4~0.6mmのポリオレフィン管を準備した。そして、管状体11Pを約100℃で加熱した。また、例えば、収縮後の基体11は、約5~5.5mmの外径を有する。
【0021】
[芯棒20の除去(
図4E参照)]
続いて、芯棒を金属膜12から除去する。本実施例においては、まず、基体11を支持しながら、樹脂膜22から芯体21を引き抜く(工程S05)。そして、樹脂膜22を金属膜12から剥離する(工程S06)。本実施例においては、樹脂膜22の内径よりもわずかに小さな外径を有する棒状の剥離具の先端に、基体11の一端側に位置する樹脂膜22の端部を結合した後、基体11の内部に押し込んでいくことで、樹脂膜22を金属膜12から剥離した。
【0022】
なお、金属膜12を容易に管状体11Pに密着させかつ樹脂膜22を金属膜12から容易に剥離することを考慮すると、樹脂膜22は、管状体11P(すなわち基体11)よりも金属膜12に対して低い密着性(例えば化学的親和性)を有することが好ましい。これによって、安定して金属膜12を基体11に転写することができる。
【0023】
上記したように形成されたチューブ10においては、基体11の内周面に、非常に安定した一様な膜厚を有する金属膜12を有する。また、基体11の内周面上に金属膜12の断裂部などがほとんど形成されない。従って、チューブ10を曲げたりした場合でも、金属膜12の機能、すなわち本実施例においてはテラヘルツ波のシールド特性がほとんど低下しない。従って、チューブ10は、高い閉じ込め性能を有するフレキシブルチューブとして、種々の環境下でも良好に使用されることができる。
【0024】
なお、上記においては、芯棒20がPTFEからなる芯体21を有する場合について説明した。しかし、芯体21及び芯棒20の構成はこれに限定されない。例えば、芯体21は、樹脂膜22を一時的に支持することが可能な種々の材料及び形状を有していればよく、芯棒20は、金属膜12を一時的に支持することが可能な種々の材料及び形状を有していればよい。
【0025】
また、上記においては、芯棒20がPTFEからなる樹脂膜22を有する場合について説明した。しかし、樹脂膜22の構成はこれに限定されない。樹脂膜22は、例えば上記した密着性を有していれば、PTFEに限定されない。例えば、樹脂膜22は、パーフルオロアルコキシアルカンであってもよい。例えば、樹脂膜22は、フッ素樹脂からなっていればよい。
【0026】
また、上記においては、芯棒20が芯体21及び樹脂膜22からなる場合について説明した。しかし、芯棒20の構成はこれに限定されない。例えば、芯棒20は、円筒形状を有する場合に限定されない。例えば、芯棒20は、角筒形状を有していてもよいし、楕円筒形状を有していてもよい。芯棒20は、棒状又は筒状の形状を有していればよい。換言すれば、基体11は、円筒形状に限定されず、棒状又は筒状の形状を有していればよい。
【0027】
また、例えば、芯棒20は、樹脂膜22を有していなくてもよい。例えば、芯棒20が芯体21のみからなり、芯体21の側面に直接金属膜22を成膜してもよい。なお、この場合、芯棒20及び管状体11Pとの間の金属膜11に対する密着性を考慮すると、芯棒20は、少なくとも外周面がフッ素樹脂からなっていることが好ましい。
【0028】
また、管状体11P(基体11)は、その金属膜12に対する密着性が芯棒20よりも高ければよく、この場合、芯棒20は、棒状又は筒状の種々の材料からなっていればよい。すなわち、棒状又は筒状の芯棒20と、金属膜22に対する密着性が芯棒20よりも高い内周面を有しかつ熱収縮性を有する管状体11Pと、を用いてチューブ10が形成されていればよい。
【0029】
なお、芯棒20の他の材料の例として、芯棒20は、塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)からなっていてもよい。このような材料で芯棒20を形成した場合、芯棒20を有機溶剤中で溶かすことで、容易に芯棒20を除去することができる。すなわち、この場合、芯棒20を除去する工程は、芯棒20を有機溶剤によって溶かす工程を含んでいればよい。
【0030】
また、芯棒20の他の例として、芯棒20は、基材11(管状体11P)よりも高い温度で収縮する仕様に設定されていてもよい。この場合、基材11の形成から芯棒20の除去までを一連の加熱工程によって行うことができる。
【0031】
図5は、チューブ10の他の製造フローを示す図である。また、
図6A~
図6Cの各々は、チュー部10の当該他の製造フローの途中における断面図である。
図5及び
図6A乃至
図6Cを用いて、チューブ10の他の製造方法について説明する。
【0032】
まず、熱収縮性の芯棒20Aを準備し、これに金属膜12を成膜する(工程S11)。次に、金属膜12の外周面に芯棒20Aよりも低い温度で収縮する熱収縮性の管状体11Pを配置し(工程S12、
図6A)、これを加熱することで管状体11を収縮させて金属膜12に密着させ、基材11を形成する(工程S13、
図6B)。
【0033】
そして、さらに基材11、金属膜12及び芯棒20Aを加熱することで、芯棒20Aを収縮させて金属膜12から芯棒20Aを剥離する(工程S14、
図6C)。例えば、芯棒20Aは、150℃で収縮する樹脂材料からなる。
【0034】
換言すれば、芯棒20は、管状体11Pよりも高い温度で収縮するように構成されている場合、芯棒20を除去する工程は、管状体11Pを金属膜12に密着させた後において、芯棒20を管状体11Pが収縮する温度よりも高い温度でさらに加熱して芯棒20を収縮させる工程を含む。
【0035】
チューブ20は、例えばこのようにしても形成することができる。この場合でも、金属膜12は基材11に非常に安定した膜厚及び密着性で成膜されることができる。従って、高い閉じ込め性能を有するチューブ10を提供することができる。
【0036】
なお、本実施例においては、金属膜12が基体11の内周面上に一様に成膜されている場合について説明した。しかし、金属膜12の構成はこれに限定されない。例えば、チューブ10を電磁波のシールドケーブルとして用いる場合、当該対象となる電磁波の波長以下の周期で、金属膜12の一部又は全部が基体11にパターニングされて成膜されていてもよい。これによって、例えば、チューブ10の一部に任意の特定の伝送特性や可撓性、強靭性などを持たせることができる。
【0037】
なお、当該パターニングされた金属膜12は、例えば、芯棒20にパターニングされたマスクを形成し、当該マスクの上から金属材料を成膜した後、当該マスクを除去することで、容易に形成することができる。また、管状体11Pへの転写についても、上記した方法によって容易に行うことができる。すなわち、上記したチューブ10の製造方法は、高い自由度で金属膜12を円筒状の基体11の内周面に成膜する方法であるということもできる。
【0038】
また、金属膜12は、上記したように、基体11に対して非常に薄い膜厚を有する。このような薄い金属膜12であっても、上記した方法によって、基体11の内周面に容易に成膜することができる。例えば、10μm以下の膜厚であれば、十分に安定した膜厚の金属膜12を成膜することができる。
【0039】
図7は、本実施例の変形例に係るチューブ10Aの断面図である。本実施例においては、チューブ10Aは、金属膜12の内周面に樹脂膜22を有する点を除いては、チューブ10と同様の構成を有する。例えば、チューブ10Aは、
図3に示したフローのうち、工程S06を省略した場合に形成されるチューブ10と同様の構成を有する。
【0040】
より具体的には、樹脂膜22は、チューブ10の機能によっては、除去されなくてもよい。例えば、本実施例においては、チューブ10は、テラヘルツ波のシールドケーブル又は導波管の構成パーツとして用いられることが想定される。この場合、例えば、樹脂膜22は、テラヘルツ波の光学波長以下の膜厚(例えば上記した厚さ)を有する場合、樹脂膜22を除去したチューブ10と同様のシールド性能を有する。従って、樹脂膜22が金属膜12の内周面に残っていてもよい。
【0041】
本変形例においては、樹脂膜22は、金属膜12の機能を維持しつつ、金属膜12を保護する保護膜として機能する。従って、金属膜12の劣化が抑制され、高い閉じ込め性能を長期に亘って維持することが可能なチューブ10Aとなる。
【0042】
換言すれば、例えば、本変形例においては、チューブ10Aは、管状の基体11と、基体11の内周面に成膜された金属膜12(第1の膜)と、金属膜12の内周面に配置されたフッ素樹脂からなる樹脂膜22(第2の膜)と、を有する。これによって、例えば高い電磁波の閉じ込め性能を有するチューブ10Aを提供することができる。
【実施例2】
【0043】
図8は、実施例2に係るチューブ30の断面図である。チューブ30は、基体11の内周面に金属膜12に代えて抵抗膜31を有する点を除いては、チューブ10と同様の構成を有する。
【0044】
本実施例においては、チューブ30は、基体11の内周面に形成され、電気抵抗を有する抵抗膜31を有する。また、本実施例においては、抵抗膜31は、電圧の印加によって発熱するように構成されている。抵抗膜31は、例えば、カーボン抵抗膜からなる。
【0045】
チューブ30は、例えば、チューブ30の内部に液体又はガスを格納して運搬する運搬具として使用されることができる。例えば、チューブ30には、抵抗膜31の端部に電圧を印加するための端子(図示せず)が設けられている。この端子に電圧を印加することで、抵抗膜31が発熱し、これによって内部の液体又はガスを加熱することができる。
【0046】
また、チューブ30は、例えば
図3に示すフローの工程S02において金属膜12に代えて抵抗膜31を成膜することを除いては、同様のフローを経て形成することができる。従って、安定した膜厚の抵抗膜31が基体11の内周面に設けられたチューブ30を容易に形成することができる。このように基体11の内周面に抵抗膜31を形成することで、高い液体又はガスの閉じ込め性能を有するチューブ30及びその製造方法を提供することができる。
【実施例3】
【0047】
図9は、実施例3に係るチューブ40の断面図である。チューブ40は、基体11の内周面に金属膜12に代えて高分子膜41を有する点を除いては、チューブ10と同様の構成を有する。
【0048】
本実施例においては、チューブ40は、基体11の内周面に形成され、高分子材料からなる高分子膜41を有する。また、本実施例においては、高分子膜41は、特定の物質(例えば液体又はガス)を透過させるように構成されている。チューブ40は、当該特定の物質のみを透過させ、他の物質をチューブ40内に留めるフィルタとして使用されることができる。
【0049】
また、チューブ40においても、例えば
図3に示すフローの工程S02において金属膜12に代えて高分子膜41を成膜することを除いては、同様のフローを経て形成することができる。従って、安定した膜厚の高分子膜41が基体11の内周面に設けられたチューブ40を容易に形成することができる。このように基体11の内周面に高分子膜41を形成することで、高いフィルタ性能を有するチューブ40及びその製造方法を提供することができる。
【0050】
上記した種々の実施例において説明したように、例えば、チューブ10(又はチューブ30若しくは40)の製造方法は、棒状又は筒状の芯棒20(又は芯棒20A)の外周面に第1の膜(例えば、金属膜12、抵抗膜31又は高分子膜41)を成膜する工程(例えば工程S02又はS11)と、第1の膜に対する密着性が芯棒20の外周面よりも高い内周面を有しかつ熱収縮性を有する管状体11Pの内側に芯棒20を挿入する工程(例えば工程S03又はS12)と、管状体11Pを加熱して管状体11Pを収縮させ、管状体11Pの内周面を第1の膜に密着させる工程(例えば工程S04又はS13)と、管状体11Pの内側から芯棒20を除去する工程(例えば工程S05及びS06又はS14)と、を含む。従って、高い閉じ込め性能を有するチューブ10の製造方法を提供することができる。
【0051】
また、例えば、チューブ10Aは、管状の基体11と、基体11の内周面に配された第1の膜(例えば、金属膜12、抵抗膜31又は高分子膜41)と、第1の膜の内周面に配され、フッ素樹脂からなりかつ第1の膜に対する密着性が基体11よりも低い第2の膜(例えば樹脂膜22)と、を有する。従って、高い閉じ込め性能を有するチューブ10Aを提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、30、40 チューブ
11 基体
12 金属膜
31 抵抗膜
41 高分子膜