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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/36 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
A62C37/36
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019214011
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021083650
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
(72)【発明者】
【氏名】森 智彦
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-071640(JP,A)
【文献】特開2010-042141(JP,A)
【文献】特開平04-364865(JP,A)
【文献】実開昭55-126855(JP,U)
【文献】国際公開第2015/025765(WO,A1)
【文献】特開2006-068294(JP,A)
【文献】特開昭62-281973(JP,A)
【文献】特開2019-005222(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0104261(KR,A)
【文献】米国特許第05183116(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災発生時に所定の不活性ガスを防護区画に放出して消火するガス系消火設備であって
前記不活性ガスを局所的に放出する局所放出手段と、
前記局所放出手段とは異なる、前記防護区画の全域に不活性ガスを放出する全域放出手段と、
を備え、
前記局所放出手段は、前記不活性ガスを局所的に放出する方向が前記防護区画の全域をカバーするように設置されたことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項2】
請求項1記載のガス系消火設備に於いて
前記防護区画で発生した火災の火源位置を検出する火源検出手段を備え、
前記局所放出手段は、前記火源検出手段で検出した火源位置に向けて、前記不活性ガスを局所的に放出することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項3】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、
前記局所放出手段は、前記火源検出手段で検出した火源位置を含む所定の想定火源空間に向けて、前記不活性ガスを局所的に放出することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項4】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、
前記想定火源空間の容積は、所定の実火源面積と防護区画の天井高さで決まる実火源空間に1以上の所定の安全率を乗じた容積とすることを特徴とするガス系消火設備。
【請求項5】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、火災時に、前記局所放出手段による局所放出と前記全域放出手段による全域放出を同時に行うことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項6】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、火災時に、前記局所放出手段による局所放出を開始し、所定時間後に前記全域放出手段による全域放出を開始することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項7】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、火災時に、前記全域放出手段による全域放出を開始し、所定時間後に前記局所放出手段による局所放出を開始することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項8】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、
前記局所放出手段は、前記想定火源空間を所定の酸素濃度以下とするに必要な所定の局所放出消火剤量の前記不活性ガスを局所放出し、
前記全域放出手段は、前記防護区画を前記所定の酸素濃度以下とするに必要な総放出消火剤量から前記局所放出消火剤量を差し引いた全域放出消火剤量の不活性ガスを全域放出することを特徴とするガス系消火設備。

【請求項9】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、
前記局所放出手段は、ノズルの放出方向を少なくとも一次元(1軸自由度)で変更可能な局所放出用噴射ヘッドを備え、
前記全域放出手段は、異なる放射方向に固定したノズルを複数有する全域放出用噴射ヘッドを備えることを特徴とするガス系消火設備。
【請求項10】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、
前記局所放出手段及び前記全域放出手段は、ノズルの放出方向を少なくとも一次元で変更可能な噴射ヘッドを各々備え、
前記局所放出手段は、火災時に、前記噴射ヘッドを火源位置に向けて前記不活性ガスを局所放出し、
前記全域放出手段は、火災時に、前記噴射ヘッドの放出方向を変更しながら前記不活性ガスを全域放出することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項11】
請求項記載のガス系消火設備に於いて、
前記防護区画にノズルの放出方向を少なくとも一次元で変更可能な局所放出用噴射ヘッドを複数備え、
前記局所放出手段は、火災時に、前記複数の局所放出用噴射ヘッドの何れか1つを火源位置に向けて前記不活性ガスを局所放出し、
前記全域放出手段は、火災時に、前記複数の局所放出用噴射ヘッドから放射方向を固定した状態で前記不活性ガスを全域放出することを特徴とするガス系消火設備。
【請求項12】
火災発生時に二酸化炭素を除く所定の不活性ガスを防護区画に放出して消火するガス系消火設備であって
前記防護区画で発生した火災の火源位置を検出する火源検出手段と、
前記火源検出手段で検出した火源位置に向けて、前記不活性ガスを局所的に放出する局所放出手段と、
を備え
前記局所放出手段は、前記不活性ガスを局所的に放出する方向が前記防護区画の全域をカバーするように設置されたことを特徴とするガス系消火設備。
【請求項13】
請求項1又は12記載のガス系消火設備に於いて、
前記防護区画は、所定の容積を有する空間であって、前記不活性ガスが放出される際に閉鎖空間となることを特徴とするガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に窒素等の不活性ガス(消火ガス)を防護区画に放出して消火するガス系消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス系消火設備といえば、ハロン1301消火設備がその代表的な消火設備であったが、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の結果、ハロンガスの生産中止が決定し、消火剤として使用制限が掛けられている。
【0003】
そのため二酸化炭素消火設備が代替設備として主流となったが、地球温暖化係数が高いこと、中毒性があり人体に悪影響を及ぼすことから、日本国内では環境に優しい、窒素消火設備が主流になりつつある。
【0004】
窒素消火設備の消火原理は、窒素を防護区画の全域に放出して酸素濃度を概ね15%以下に下げていくことにより燃焼を停止させる窒息効果による消火である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-061984号公報
【文献】特開2016-120035号公報
【文献】特開2007-050148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガス系消火設備には、固定式と移動式があり、固定式は全域放出方式と局所放出方式に分けられる。移動式はホースリール式であり、容器弁、ホース、ノズルを手動により操作し、対象物に不活性ガスを噴射して消火を行う。
【0007】
固定式の全域放出方式は、出火場所を密閉状態として噴射ヘッドから不活性ガスを放出し、酸素濃度を低下させ燃焼を停止させる。固定式の局所放出方式は、防護対象物に対し直接噴射ヘッドから不活性ガスを放出して消火する。
【0008】
また、法律上、固定式の局所放出方式は二酸化炭素消火設備のみに認められており、窒素、G541、IG55等の二酸化炭素以外の不活性ガスを用いたガス系消火設備には認められていない。
【0009】
この理由は、二酸化炭素の空気1に対する比重が1.52であり、比重が大きいことで散逸し難いこと、及び貯蔵容器に液体状態で充填されており、放出時には約30℃程度温度が低下することで高い冷却効果を有することから、火炎に対して直接的且つ集中的に消火ガスをかける局所放出方式としても有効に消火効果を発揮できることにある。
【0010】
これに対し窒素(IG100)、IG541(窒素52%、アルゴン40%、二酸化炭素8%)、IG55(窒素50%、アルゴン50%)は、放出時の温度低下はほとんどなく、窒素は比重0.97、IG55及びIG541は比重1.17であり、空気より軽いか同程度であり、特に窒素は空気より軽いため上方へ散逸し易く、長い間留まることができないため、火炎に効率的、効果的に働き掛け難く、局所放出方式には適さないとされている。
【0011】
この結果、ガス系消火設備においては、局所放出方式は二酸化炭素消火設備で限定的に採用されるものであり、閉鎖空間に対しては全域放出方式が広く使われるのが常識的であった。
【0012】
以上のように空気より軽いか同程度の比重の不活性ガスを局所放出方式に使用することは、開放空間に対する消火設備としては存在せず、この考え方が固定観念となっていること、また閉鎖空間でも相当大きな容積、面積を有する場合は擬開放空間となることから、擬開放空間を含む閉鎖空間の中でも局所放出方式の有効性は評価されず、採用されることはなかった。ここで、擬開放空間とは、閉鎖空間であっても相当大きな容積、面積を有する空間をいう。
【0013】
しかしながら、本願発明者が閉鎖空間を対象とした火災実験において、火源に対して局所的に二酸化炭素以外の不活性ガス、例えば窒素を放出することで直接火源に働きかける局所放出方式のガス消火を行ったところ、早期の消火或いは火炎の縮小化、火災の抑制に効果が高いことが、実験結果から導きだされ、二酸化炭素以外の不活性ガスについても局所放出方式を採用できる可能性が高いとの知見を得るに至った。
【0014】
本発明は、不活性ガスを防護区画に放出して消火する際に、新たに局所放出方式を採用し、これに全域放出方式を組み合わせることで、早期に且つ確実に消火可能とするガス系消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[第1発明]
(局所放出手段と全域放出手段
本発明は、火災発生時に所定の不活性ガスを防護区画に放出して消火するガス系消火設備であって
不活性ガスを局所的に放出する局所放出手段と、
局所放出手段とは異なる、防護区画の全域に不活性ガスを放出する全域放出手段と、
を備え、
局所放出手段は、不活性ガスを局所的に放出する方向が防護区画の全域をカバーするように設置されたことを特徴とする。
【0016】
(火源検出手段)
防護区画で発生した火災の火源位置を検出する火源検出手段を備え、
局所放出手段は、火源検出手段で検出した火源位置に向けて、不活性ガスを局所的に放出する
【0017】
(防護空間)
防護区画は、所定の容積を有する空間であって、不活性ガスが放出される際に閉鎖空間となる、
【0018】
ここで、防護区画とは、ガス系消火設備の消火対象とする区画のことで、壁、柱、床又は天井(天井のない場合は、はり又は屋根)が不燃材料で造られ、区画の開口部が、消火剤が放出される直前又は同時程度に自動的に閉鎖される構造の閉鎖された区画をいう。
【0019】
また以下の説明における防護空間とは、防護対象物の周囲0.6メートル離れた部分によって囲まれた部分をいい、壁、柱、床又は天井で囲まれた閉鎖空間の場合は、防護区画の内部空間が防護空間となる。また、防護空間となる閉鎖空間には、閉鎖空間でも相当大きな容積、面積を有する擬開放空間が含まれる。また、火源位置とは防護区画の中の火源が存在する位置領域をいう。
【0020】
(想定火源空間への局所放出)
局所放出手段は、火源検出手段で検出した火源位置を含む所定の想定火源空間に向けて、不活性ガスを局所的に放出する。
【0021】
(想定火源空間)
想定火源空間の容積は、所定の実火源面積と防護区画の天井高さで決まる実火災空間に1以上の所定の安全率を乗じた容積とする。ここで、実火源面積とは火源の大きさで決まる火源面積であり、例えば火災実験で使用する火皿であって、火源検出手段の検出感度あるいは検知能力によって決める火源面積とする。
【0022】
(第1放出制御)
火災時に、局所放出手段による局所放出と全域放出手段による全域放出を同時に行う。
【0023】
(第2放出制御)
火災時に、局所放出手段による局所放出を開始し、所定時間後に全域放出手段による全域放出を開始する。
【0024】
(第3放出制御)
火災時に、全域放出手段による全域放出を開始し、所定時間後に局所放出手段による局所放出を開始する。
【0025】
(局所放出と全域放出の消火剤量)
局所放出手段は、想定火源空間を所定の酸素濃度以下(概ね15%以下の所定値)とするに必要な所定の局所放出消火剤量の不活性ガスを局所放出し、
全域放出手段は、防護空間を所定の酸素濃度以下とするに必要な総放出消火剤量から局所放出消火剤量を差し引いた全域放出消火剤量の不活性ガスを全域放出する。
【0026】
(局所放出用噴射ヘッドと全域放出用噴射ヘッド)
局所放出手段は、ノズルの放出方向を一次元又は二次元に変更可能(1軸自由度又は2軸自由度で変更可能)な局所放出用噴射ヘッドを備え、
全域放出手段は、異なる放射方向に固定したノズルを複数有する全域放出用噴射ヘッドを備える。
【0027】
(噴射ヘッドによる局所放出と全域放出の併用)
局所放出手段及び全域放出手段は、ノズルの放出方向を一次元又は二次元に変更可能(1軸自由度又は2軸自由度で変更可能)な噴射ヘッドを各々備え、
局所放出手段は、火災時に、噴射ヘッドを火源位置に向けて不活性ガスを局所放出し、
全域放出手段は、火災時に、噴射ヘッドを旋回又は揺動しながら不活性ガスを全域放出する。
【0028】
(複数の局所放射用噴射ヘッドによる局所放出と全域放出)
防護区画にノズルの放出方向を少なくとも一次元で変更可能な局所放出用噴射ヘッドを複数備え、
局所放出手段は、火災時に、複数の局所放出用噴射ヘッドの何れか1つを火源位置に向けて不活性ガスを局所放出し、
全域放出手段は、火災時に、複数の局所放出用噴射ヘッドから放射方向を固定した状態で不活性ガスを全域放出する。
【0029】
[第2発明]
(局所放出のみのガス系消火設備)
本発明の別の形態にあっては、火災発生時に二酸化炭素を除く所定の不活性ガスを防護区画に放出して消火するガス系消火設備であって
防護区画で発生した火災の火源位置を検出する火源検出手段と、
火源検出手段で検出した火源位置に向けて、不活性ガスを局所的に放出する局所放出手段と、
を備え
局所放出手段は、不活性ガスを局所的に放出する方向が防護区画の全域をカバーするように設置されたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0030】
[第1発明の効果]
(局所消火と全域消火の効果)
本発明のガス系消火設備によれば、火源に対する局所消火と、閉鎖空間の雰囲気を不活性ガス富化とする全域消火の組み合わせにより、火源に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかける局所消火の利点と、閉鎖空間の全体的な酸素濃度を低下させる全域消火の利点を併せた消火効果が得られる。
【0031】
(局所放出の効果)
消火手段は、火源検出手段で検出した防護区画の火源位置に向けて不活性ガスを局所的に放出することで、火源の炎に直接的且つ集中的に不活性ガスを働きかけ、早期に所定の酸素濃度以下(概ね15%以下の所定値)に低下させることで燃焼を停止して消火することができる。また、早期の燃焼抑制又は停止により燃焼ガスの発生量が抑えられ、防護区画からの燃焼ガスの漏れとそれに伴う周囲環境の酸素濃度の低下を防止し、消防隊等による消火環境を確実に維持可能とする。
【0032】
局所消火によって放出された不活性ガスは閉鎖空間における不活性ガスの濃度上昇にも寄与し、全域消火としての効果も得られる。また、全域消火により閉鎖空間内の全体的な酸素濃度が低下することで、火源への酸素供給が妨害され、局所消火の消火効率が向上する効果が得られる。以上のように、局所消火・全域消火は相互に消火効果を得られる。
【0033】
ここで、火源の炎に直接的且つ集中的に不活性ガスを働きかける局所放出は、可能な限り短時間とすることで、爆発的な不活性ガスの放出に相当し、不活性ガスの爆発的な放出により火炎を吹き飛ばして消火し、高い延焼防止効果が得られる。
【0034】
また、空気と同等かそれよりも軽い不活性ガスを火源位置に局所放出して散逸しても、全域放出による全体的な酸素濃度の低下で補って局所放出による消火状態を維持することが可能となり、局所放出により炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけることで早期の消火を可能とする利点と、全域放出により全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させて消火する利点を併せた消火効果が得られる。
【0035】
(局所放出に全域放出を追加する効果)
また、消火手段はさらに、局所放出手段とは異なる、防護区画の全域に不活性ガスを放出する全域放出を行うことで、全域放出により全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させ、火源への酸素供給を妨げることにより、局所放出で火勢が弱まった後に、周囲からの酸素供給によって火勢が再度強くなることを防ぐことができる。また、局所放出で不活性ガスが散逸する欠点を全域放出による全体的な酸素濃度の低下で補って消火状態を維持可能することができる。
【0036】
(想定火源空間への局所放出による効果)
また、火源位置を含む所定の想定火源空間に向けて、不活性ガスを局所的に放出することで、火源の周囲の酸素濃度を局所的に所定の消火濃度以下に低下させることで空気富化の雰囲気から不活性ガス富化の雰囲気とし、空気と同等かそれより軽い不活性ガスが散逸しても、火源の周囲が不活性ガス富化の雰囲気となっていることで、炎に入ってくるのは酸素濃度の高いフレッシュエアーではなく不活性ガス富化エアーとすることができ、これによって空気より軽い不活性ガスが局所方式に適さないという欠点を補うことができる。
【0037】
(想定火源空間の効果)
また、想定火源空間は、所定の想定火源面積と防護区画の天井高さで決まる空間であり、防護区画の大きさに関わらず、火源位置を検出することで想定火源空間が防護区画内に一義的に設定され、そこに向けて不活性ガスを局所放出することで、前述した局所放出による消火効果が得られる。
【0038】
(第1放出制御の効果)
火災時に、局所放出と全域放出を同時に行うことで、局所放出により炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけ、全域放出により全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させ、また、局所放出で不活性ガスが散逸する欠点を全域放出による全体的な酸素濃度の低下で補って消火状態を維持可能とし、また、全域放出では不活性ガスを炎に直接働きかけることができない欠点を局所放出で補い、両者の消火効果を同時に得ることができる。
【0039】
(第2放出制御)
火災時に、局所放出を最初に開始し、タイムラグを設けて全域放出を開始することで、最初に炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけて消火し、その後に、全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させて消火を維持可能とする。局所放出のみとなる時間を設けることで、全域放出による気流が局所放出を妨害する虞がない時間を設けることができる。
【0040】
(第3放出制御)
火災時に、全域放出を最初に開始し、タイムラグを設けて局所放出を開始することで、最初に全体的な酸素濃度を下げ、続いて、炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけ、酸素濃度の下がった状態での局所放出により確実な消火を可能とする。
【0041】
(局所放出と全域放出のガス量の効果)
想定火源空間の局所放出に必要な局所放出消火剤量を想定火源空間の容積に基づき求め、防護空間の全域放出に必要な総消火剤量を防護空間の容積に基づき求め、その差を全域放出に必要な全域放出消火剤量として求めておくことで、防護空間を所定の酸素濃度以下とするに必要な総消火剤量は従来と同じであり、その中で局所放出に必要な消火剤量と全域放出に必要な消火剤量に分けて、例えば、局所放出用噴射ヘッドと全域放出用噴射ヘッドの単位時間当りの放出量に対応して、それぞれの消火剤量に応じた放出時間を決めて局所放出と全域放出を行い、局所放出と全域放出と組み合わせた不活性ガス量の放出による消火を可能とする。
【0042】
また、想定火源空間の消火に必要な局所放出消火剤量を優先的に求めていることから、防護区間内での開放空間となる想定火源空間に対し十分な量の不活性ガスを直接的且つ集中的に放出し、不活性ガスが空気と同等又はそれにより軽いことで散逸があっても、これを十分に補いながら、確実且つ早期の消火を可能とする。また、局所放出により想定火源空間(開放空間)から散逸した不活性ガスは全体的な酸素濃度の低下に寄与し、これに全域放出が加わることで、両者を合わせた放出により全体的な雰囲気の酸素濃度を効率良く下げることができる。
【0043】
(局所放出用噴射ヘッドと全域放出用噴射ヘッドの効果)
また、局所放出手段としてノズルの放出方向を一次元又は二次元に変更可能な局所放出用噴射ヘッドとすることで、火災検出手段で検出した火源位置に向けて不活性ガスを確実に放出でき、また、全域放出手段として異なる放射方向に固定したノズルを複数有する全域放出用噴射ヘッドとすることで、防護区画の全体的な酸素濃度を低下させる全域放出を迅速に行うことを可能とする。
【0044】
(噴射ヘッドによる局所放出と全域放出を併用する効果)
また、ノズルの放出方向を一次元又は二次元に変更可能な噴射ヘッドを局所放出手段と全域放出手段の両方に使用し、噴射ヘッドを火源位置に向けて局所放出することで局所放出用噴射ヘッドとして動作し、また、噴射ヘッドを旋回又は揺動しながら不活性ガスを全域放出することで全域放出用噴射ヘッドとして動作することができる。
【0045】
(複数の局所放射用噴射ヘッドによる局所放出と全域放出の効果)
また、防護区画にノズルの放出方向を少なくとも一次元で変更可能な局所放出用噴射ヘッドを複数備え、火災時に、複数の局所放出用噴射ヘッドの何れか1つを火源位置に向けて不活性ガスを局所放出し、一方、複数の局所放出用噴射ヘッドから放射方向を固定した状態で不活性ガスを全域放出することで、全域放出用噴射ヘッドを設けることなく、複数の局所放出用噴射ヘッドにより全域放射を行うことができる。
【0046】
[第2発明の効果]
第2発明は、二酸化炭素以外の空気より軽いか同等の不活性ガスを防護区画の火源位置に向けて局所放出することで、火源の炎に直接的且つ集中的に働きかけ、早期に所定の酸素濃度以下(15%以下の所定値)に低下させることで燃焼を停止可能とする。
【0047】
また、局所放出した不活性ガスが空気より軽いか同等のため散逸しても、周囲に散逸した消火ガスが全体的な酸素濃度を低下させることで局所放出による消火状態を維持することが可能となり、空気より軽いか同等の不活性ガスであっても局所放出により十分な消火効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】局所放出と全域放出を組み合わせた第1発明によるガス系消火設備の実施形態を示した説明図
図2】防護区画を透視して局所放出モデルを示した説明図
図3図2の防護区画を側面から示した説明図
図4】局所放出用噴射ヘッドの実施形態を示した説明図
図5】全域放出用噴射ヘッドの実施形態を示した説明図
図6】走査型火災検出装置を示した説明図
図7】局所放出と全域放出を同時に行う第1放出制御を示したタイムチャート
図8】局所放出と全域放出を順番に行う第2放出制御を示したタイムチャート
図9】全域放出と局所放出を順番に行う第3放出制御を示したタイムチャート
図10】局所放出を終了した後に全域放出を行う第4放出制御を示したタイムチャート
図11】全域放出を終了した後に局所放出を行う第5放出制御を示したタイムチャート
図12】局所放出のみの単独方式とした第2発明によるガス系消火設備を示した説明図
図13】火災検出装置と局所放出用噴射ヘッドを一体化した火災検出・消火ユニットの実施形態を示した説明図
図14図13の火災検出・消火ユニットの動作を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0049】
[ガス系消火設備の概要]
図1は局所放出と全域放出を組み合わせた第1発明によるガス系消火設備の実施形態を示した説明図である。図1に示すように、本実施形態のガス系消火設備は、空気より軽いか同程度の消火ガスとして、窒素、IG541又はIG55を使用する場合を例にとっており、電気室、サーバ室、機械室等の部屋等を防護区画10としている。防護区画10には、局所放出用噴射ヘッド12、全域放出用噴射ヘッド14、走査型火災検出装置16、火災感知器18-1,18-2、音響警報装置28を設けている。なお、局所放出用噴射ヘッド12は必要に応じて複数設ける。
【0050】
防護区画10となる部屋の外側には、制御盤20、火災報知設備の受信機22、操作箱として知られた手動起動装置24を設けている。局所放出用噴射ヘッド12は、防護区画10内の全ての局所放出用噴射ヘッド12の放出可能領域を組み合わせると防護区画10全域を消火対象に含む所定の各位置に設置し、旋回駆動部12aにより消火ガスの放出方向(放出軸)を一次元(1軸自由度)又は二次元(2軸自由度)で変更可能とする。
【0051】
例えば、防護区画10内に局所放出用噴射ヘッド12を1のみ配置する場合は、局所放出用噴射ヘッド12は、防護区画10全域を見渡すことのできる所定位置に設置する。例えば、防護区画10内に局所放出用噴射ヘッド12を2配置する場合は、第1の局所放出用噴射ヘッド12は第1の局所放出用噴射ヘッド12が配置された側を放出可能領域に含むようにし、第2の局所放出用噴射ヘッド12は第2の局所放出用噴射ヘッド12が配置された側を放出可能領域に含むようにし、防護区画10は両方を組み合わせた放出可能領域又は一部で重複する両方を組み合わせた放出可能領域に含まれるように設置する。
【0052】
防護区画10に設置した局所放出用噴射ヘッド12及び全域放出用噴射ヘッド14から火災時に消火ガス(窒素、IG541、IG55)を放出して消火するため、貯蔵容器30、集合管32、安全弁34、圧力スイッチ35、閉止弁36、選択弁38-1,38-2、起動用ガス容器40、閉止弁42-1,42-2、配管44,46及び換気設備の換気ダンパー25を設けている。
【0053】
制御盤20は、ガス系消火設備の全体的な制御を行う。制御盤20は手動モード又は自動モードの制御モードを設定できる。手動モードを設定した場合、人が火災を発見したときに、手動起動装置24の扉を開けて起動スイッチを操作することで制御盤20に起動信号を送信する。
【0054】
起動信号を受信した制御盤20は、遅延装置の動作により所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了するとガス放出条件が成立したと判定し、制御盤20からの起動信号により起動用ガス容器40のソレノイドに通電して開弁することで二酸化炭素などの起動ガスを放出し、貯蔵容器30を開栓すると共に選択弁38-1,38-2を同時あるいはタイムラグを設定して開き、配管44,46を介して防護区画10の局所放出用噴射ヘッド12及び全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給して噴射する。
【0055】
このとき制御盤20は、走査型火災検出装置16により検出した火源位置に直近の局所放出用噴射ヘッド12の放出方向(放出軸)が向くように制御しており、局所放出用噴射ヘッド12は火源位置に向けて消火ガスを直接的且つ集中的に放出して消火する。
【0056】
また、全域放出用噴射ヘッド14は防護区画10の天井側の例えば2箇所の複数箇所に配置しており、防護区画10全体をカバーするように消火ガスを全域放射して雰囲気の酸素濃度を低下して消火する。
【0057】
制御盤20は消火ガスの放出に先立ちスピーカを用いた音響警報装置28から消火ガスが放出されることを放送し、防護区画10内からの退避を促す。圧力スイッチ35は貯蔵容器30から消火ガスが放出されたことを検出し、制御盤20に検出信号を送り、防護区画10の放出表示灯26を点滅させる。換気ダンパー25は配管44に対する消火ガスの供給を受けて動作し、消火ガスが室外に漏れないように排煙口を閉じる。
【0058】
なお、閉止弁36は貯蔵容器30からの消火ガスの供給を手動で閉止し、閉止弁42-1,42-2は起動用ガス容器40からの起動ガスの供給を手動で閉止し、安全弁34はガス漏洩に伴う配管破損を防止するため異常な圧力増加で開放する。
【0059】
一方、自動モードを設定した場合、制御盤20は2系統の回線に接続された火災感知器18-1,18-2からの火災発報(2回線のAND発報)があった場合に遅延装置の動作により所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了するとガス放出条件が成立したと判定し、手動モードと同じ動作により局所放出用噴射ヘッド12及び全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給して噴射する。
【0060】
ここで、選択弁38-1、配管44及び局所放出用噴射ヘッド12は局所放出手段を構成し、選択弁38-2、配管46及び全域放出用噴射ヘッド14は全域放出手段を構成する。
【0061】
[局所放出モデル]
図2は防護区画を透視して局所放出モデルを示した説明図、図3図2の防護区画を側面から示した説明図である。
【0062】
(想定火源空間)
図2及び図3に示すように、本実施形態の局所放出モデルでは、防護区画10で火災が発生した場合、局所放出の対象空間として想定火源空間52を求める。
【0063】
想定火源空間52を求めるため、まず火源48に対応した火源位置の実火源面積FSと防護区画10の高さHからなる点線で示す直方体となる実火源空間50を求める。
【0064】
ここで、局所放出モデルの火源48は、火災実験で使用する火皿を想定している。火皿は薄い矩形の箱蓋を裏返した形状であり、火皿にヘプタン等の燃料を入れて着火することで火災実験の火源48として使用する。このため火皿の面積が火源48の実火源面積FSとなり、例えば実火源面積FS≒0.1m2とし、これは縦横33cm×33cmの火皿の大きさとなる。なお、実火源面積FS≒0.1m2は、走査型火災検出装置16の火災信号を発する感度として規定された火源の大きさに相当するが、勿論、より小さくしても良い。
【0065】
実火源空間50の実火源空間容積FQは、
実火源空間容積FQ
=(実火源面積FS)×(防護区画高さH) (式1)
となる。
【0066】
続いて、実火源空間50に基づき、安全率を考慮して周囲に広げた想定火源空間52を求める。このため、想定火源空間52の想定火源空間容積Q1は、
想定火源空間容積Q1
=(実火源面積FS)×(防護区画高さH)×(安全率K) (式2)
となる。
【0067】
(防護空間に対する安全率の考え方)
この安全率Kは、火源位置の周囲に仮に設けられたとする想定壁に基づき決まる値であり、実火源空間50のすべての部分から例えば0.6m離れた部分によって囲まれた部分から求められ、これを想定火源空間容積Q1とする。なお、防護区画10の高さは天井面までとするので想定火源空間52における高さも同じとする。
【0068】
また、安全率Kは任意に設定できるが、最大でも全域放出量より大きくなるような値をとることはない。すなわち、想定火源空間52が防護区画10を超えることのないように最大値が制限される。
【0069】
走査型火災検出装置16の感度を高感度(より小さい規模の火災を検出する感度)に設定することに連動して、安全率Kを小さくとっても良く、この場合、規定の火災(0.1m2)より小さい火源を検出することができれば、想定火源空間52の容積も小さくなる。
【0070】
(局所放出の消火剤量)
このように(式2)により想定火源空間52の想定火源空間容積Q1が求まると、局所放出用噴射ヘッド12から想定火源空間52の局所放出に必要な消火剤量、即ち局所放出消火剤量W1を求めることができる。なお、局所放出消火剤量W1は、二酸化炭素の場合は重量(kg)、窒素、IG541、IG55の場合は容積(m3)となる。
【0071】
一般に、局所放出方式の二酸化炭素消火設備の必要消火剤量W(kg)は次式で与えられる、
必要消火剤量W(kg)
=防護空間容積(=実火源空間容積FQ)Q(m3)×安全率K×防護区画の体積1m3当りの二酸化炭素消火剤の量V1(kg/m3
(式3)
となる。
【0072】
局所放出方式の二酸化炭素消火設備の単位体積(1m3)当りの消火剤の量Vは、消防法に準拠した場合は、
V=8-6a/A(kg/m3) (式4)
とされている。但し、
a:防護対象物の周囲に実際に設けられた壁の面積の合計(m2)、
A:防護空間の壁の面積(壁のない部分にあっては壁があると仮定した場合における当該部の面積)の合計(m2)、
となり、実火源空間50が開放空間の場合はa=0、Aは実火源空間50の周囲0.6m以内の想定周壁面積である。なお、(式4)には(式3)の安全率KがV=V1×Kとして内包している。
【0073】
想定火源空間52は開放空間であることから
V=8
となり、二酸化炭素の局所放出消火剤量W1(kg)は
W1=実火源空間容積FQ(m3)×V(=8) (式5)
となる。
【0074】
一方、窒素、IG541、IG55の場合は、(式2)(式3)における「二酸化炭素消火剤の量V1(kg/m3)」を、それぞれの単位消火剤必要量(防護空間1m3当りの窒素、IG541又はIG55の容積)に置き代え、安全率Kを前述した「防護空間に対する安全率の考え方」によって局所放出消火剤量W1(m3)を求められ、防護空間の容積に基づき求めた総消火剤量W0(m3)から局所放出消火剤量W1(m3)を引くことで全域放出消火剤量W2(m3)を求めることができる。
【0075】
単位消火剤必要量は、窒素の場合は0.516(m3/m3)、IG541の場合は0.472(m3/m3)、IG55の場合は0.477(m3/m3)、二酸化炭素の場合は1.2(kg/m3)となる。
【0076】
ここで、局所放出消火剤量W1及び全域放出消火剤量W2によって局所放出用噴射ヘッド12と全域放出用噴射ヘッド14からの消火ガスの放出量を直接制御することはできない。そこで局所放出用噴射ヘッド12が単位時間当りに放出する消火剤量をw1(kg/sec又はm3/sec)、全域放出用噴射ヘッド14が単位時間当りに放出する消火剤量をw2(kg/sec又はm3/sec)とすると、局所放出時間T1と全域放出時間T2を
T1=W1/w1
T2=W2/w2
として求めることができる。
【0077】
これにより図1に示した局所放出用の選択弁38-1をT1時間開放し、全域放出用の選択弁38-2をT2時間開放することで、局所放出消火剤量W1分の局所放出用噴射ヘッド12による局所放出54と、全域放出用噴射ヘッド14による全域放出消火剤量W2分の全域放出56を制御することができる。
【0078】
このような消火ガスの局所放出消火剤量W1及び全域放出消火剤量W2の防護空間での放出により、防護空間の酸素濃度は、窒素の場合は12.5%、IG541の場合は13.1%、IG55の場合は13.0%、二酸化炭素の場合は13.6%となり、何れも燃焼が停止する概ね15%以下の酸素濃度に低下させることができる。
【0079】
また、局所放出時間T1と全域放出時間T2の組み合わせによる放出開始から放出終了までの放出時間は、例えば放出時間の90%が60秒以内となるように、必要な機器の構成及び設定を行う。なお、局所放出用噴射ヘッド12による局所放出54と、全域放出用噴射ヘッド14による全域放出56の組み合わせについては後の説明で明らかにする。
【0080】
また、消火ガスの局所放出消火剤量W1及び全域放出消火剤量W2は、図2及び図3に示した想定火源空間52によらず、防護区画10の消火に必要な総消火剤量W0を所定の割合となるように局所放出消火剤量W1及び全域放出消火剤量W2に任意に按分しても良い。
【0081】
例えば、局所放出と全域放出を同程度としたい場合は、局所放出消火剤量W1及び全域放出消火剤量W2を総消火剤量W0の50%とする。また局所放出の度合いを高めたい場合には、例えば局所放出消火剤量W1を総消火剤量W0の70%とし、全域放出消火剤量W2を総消火剤量W0の30%とする。逆に、全域放出の度合いを高めたい場合には、例えば全域放出消火剤量W2を総消火剤量W0の70%とし、局所放出消火剤量W1を総消火剤量W0の30%とする。
【0082】
この調整は、局所放出のときの安全率を変動させること、及び、走査型火災検出装置16の感度を上げて想定火源空間を極小化することで、自由度を増すことができることに関連している。さらに防護区画10の大きさと想定火源空間の比率にも関連している。
【0083】
[局所放出用噴射ヘッド]
図4は局所放出用噴射ヘッドの実施形態を示した説明図である。図4に示すように、本実施形態の局所放出用噴射ヘッド12は一次元走査型(1軸自由度)を例にとっている。
【0084】
局所放出用噴射ヘッド12は、防護区画10の天井面に取付け固定する基台58の下側にヘッド本体60を配置し、ヘッド本体60の中に垂直軸80を中心に回転する回転体62を設けている。回転体62は内部流路64を備え、ヘッド本体60側の環状溝68に内部流路64が横方向で連通し、環状溝68はヘッド本体60に消火ガスを供給する配管接続口66に連通している。
【0085】
回転体62の下端はテーパー面とし、そこにノズル孔72を備えたノズル70とホーン73を装着し、垂直軸80に対し斜め下向きとなる放射角θの放出軸82を設定している。
【0086】
基台58の内部にはモータ74を組み込み、モータ74の出力軸76に回転体62を連結している。モータ74は減速ギア機構と回転位置を検出するロータエンコーダを内蔵し、リード線78を介して図1に示した制御盤20に接続している。
【0087】
図1の制御盤20は走査型火災検出装置16で火源48の位置を検出し、火源48の位置にノズル70からの放出軸82が向くようにモータ74の駆動により回転体62を旋回制御する。
【0088】
局所放出用噴射ヘッド12は、平面から見た放出軸82が、図2及び図3に示した防護区画10の全域をカバーするように、例えば防護区画10の側壁又はコーナー部の天井側に設置する。
【0089】
なお、局所放出用噴射ヘッド12は図4の実施形態に限定されず、放出軸を水平旋回走査と垂直旋回走査により火源位置に向くように二次元的に走査するようにしても良く(2軸自由度)、放射軸を防護区画10内の位置で発生する火源位置に向くようする適宜の実施形態が含まれる。
【0090】
[全域放出用噴射ヘッド]
図5は全域放出用噴射ヘッドの実施形態を示した説明図であり、図5(A)に正面を示し、図5(B)に下面を示す。
【0091】
図5に示すように、全域放出用噴射ヘッド14は、ヘッド本体84の上部に配管接続部89を備え、ヘッド本体84の下部に、センターノズル86を中心にその周囲に例えば6つのサイドノズル88を配置している。センターノズル86は垂直軸85の方向を放出軸とし、サイドノズル88は放出軸87を垂直軸85に対し斜め下向きに設定しており、複数方向に消火ガスを放出することで、防護区画10の全域放出を可能とする。
【0092】
なお、全域放出用噴射ヘッド14は本実施形態に限定されず、異なる複数方向に放射する構造であれば、適宜の噴射ヘッドを含む。
【0093】
[走査型火災検出装置]
図6は走査型火災検出装置を示した説明図である。図6に示すように、火災検出手段として機能する走査型火災検出装置16は、防護区画の天井コーナー部等に固定する本体90の下側に円錐状の水平旋回部92を設けている。水平旋回部92は水平走査モータ(ステップモータ)により本体90の垂直軸96周りに、水平基準線100から水平限界線102で決まる水平走査角θ1例えば0°~190°の範囲でステップ状に往復して水平旋回する。
【0094】
水平旋回部92の中には垂直走査モータで垂直回りに回転する回転ミラーが設けられ、回転ミラーの回転に伴い防護区画からの光が入射する検出光軸98は垂直走査窓94により真下の0°となる光軸垂直位置98aから水平方向に90°となる光軸水平位置98bまでの垂直走査角θ2の範囲で規制されて回転ミラーに入射する。回転ミラーに入射した光の反射光は光学系で集光されて瞬時視野が決定され、赤外線センサの受光面に集光されて電気信号に変換される。ここで、瞬時視野とは回転ミラーがある垂直走査角で停止していると仮定したときの監視視野である。
【0095】
防護区画に火源が存在する場合、水平旋回部92の水平旋回と回転ミラーの垂直回転で検出光軸98が火源に指向したときに赤外線センサから出力される受光信号が増加して火源が検出され、火源検出時の水平走査角θ1と垂直走査角θ2から防護区画の火源の位置が検出される。
【0096】
なお、火源位置を検出する火源検出手段は、図6の走査型火災検出装置16に限定されず、例えばITVカメラ等の監視カメラを防護区画に設置し、火災時の撮影画像から火源位置を検出しても良い。
【0097】
[局所放出と全域放出の組み合わせ]
(第1放出制御)
図7は局所放出と全域放出を同時に行う第1放出制御を示したタイムチャートであり、図7(A)は局所放出を示し、図7(B)は全域放出を示す。
【0098】
図7に示すように、時刻t1で火災が検出されると、制御盤20は、図2及び図3に示した局所放出モデルに基づき、局所放出時間T1と全域放出時間T2を決定する。手動モード又は自動モードでのガス放出条件の成立を判定すると、起動用ガス容器40を開弁して起動ガスにより貯蔵容器30を開栓すると共に選択弁38-1,38-2を開き、配管44,46を介して防護区画10の局所放出用噴射ヘッド12及び全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給し、局所放出用噴射ヘッド12から火源48に向けて消火ガスを局所放出し、同時に、全域放出用噴射ヘッド14から防護区画10の全体に向けて消火ガスを全域放射する。
【0099】
ここで、例えばT1<T2であったとすると、局所放出時間T1が経過した時刻t2で選択弁38-1を閉鎖して局所放出用噴射ヘッド12からの火源に対する消火ガスの局所放出を終了する。
【0100】
一方、全域放出用噴射ヘッド14からの消火ガスの全域放出は、時刻t2で局所放出を終了停止した後も継続しており、全域放出時間T2が経過した時刻t3で選択弁38-2を閉鎖して全域放出用噴射ヘッド14からの防護区画の全体に対する全域放出を終了する。
【0101】
このように第1放出制御は、局所放出と全域放出を火災時に同時に行うことで、両者の消火効果を同時に得ることができる。
【0102】
(第2放出制御)
図8は局所放出と全域放出を順番に行う第2放出制御を示したタイムチャートであり、図8(A)は局所放出を示し、図8(B)は全域放出を示す。
【0103】
図8に示すように、時刻t1で火災が検出されてガス放出条件の成立が判定されると、まず選択弁38-1を開き、配管44により局所放出用噴射ヘッド12に消火ガスを供給し、火源48に向けて消火ガスを局所放出する。
【0104】
続いて、時刻t2で所定の遅延時間Td1が経過すると、選択弁38-2を開き、配管46により全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給し、防護区画10の全体に向けて消火ガスを全域放射する。
【0105】
続いて、時刻t3で局所放出時間T1が経過すると選択弁38-1を閉じて局所放出用噴射ヘッド12からの消火ガスの局所放出を停止する。更に、時刻t4で全域放出時間T2が経過すると選択弁38-2を閉じて全域放出用噴射ヘッド14からの消火ガスの全域放出を停止する。
【0106】
ここで、遅延時間Td1は局所放出を開始してから全域放出を開始するまでのタイムラグを与えるものであり、局所放出が終了する前に全域放出を開始する必要があることから、局所放出時間T1より短い所定時間を設定する。
【0107】
このように第2放出制御は、局所放出を最初に開始し、タイムラグを設けて全域放出を開始することで、最初に火源の炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけて消火し、その後に、全体的な酸素濃度を所定濃度以下に速やかに低下させて消火を維持可能とする。
【0108】
また、局所放出と全域放出が重複して行われる時間帯(t2~t3)が存在することで、局所放出により炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけることで早期の消火を可能とする利点と、全域放出により全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させて消火する利点を併せた消火効果が得られる。
【0109】
(第3放出制御)
図9は全域放出と局所放出を順番に行う第3放出制御を示したタイムチャートであり、図9(A)は局所放出を示し、図9(B)は全域放出を示す。
【0110】
図9に示すように、時刻t1で火災が検出されてガス放出条件の成立が判定されると、まず選択弁38-2を開き、配管46により全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給し、防護区画10の全体に向けて消火ガスを全域放射する。
【0111】
続いて、時刻t2で所定の遅延時間Td2が経過すると、選択弁38-1を開き、配管44により局所放出用噴射ヘッド12に消火ガスを供給し、火源48に向けて消火ガスを局所放出する。
【0112】
続いて、時刻t3で全域放出時間T2が経過すると選択弁38-2を閉じて全域放出用噴射ヘッド14からの消火ガスの全域放出を停止する。更に、時刻t4で局所放出時間T1が経過すると選択弁38-1を閉じて局所放出用噴射ヘッド12からの消火ガスの局所放出を停止する。
【0113】
ここで、遅延時間Td2は全域放出を開始してから局所放出を開始するまでのタイムラグを与えるものであり、全域放出が終了する前に局所放出を開始する必要があることから、全域放出時間T2より短い所定時間を設定する。
【0114】
このように全域放出を最初に開始し、タイムラグを設けて局所放出を開始することで、最初に全体的な酸素濃度を下げ、続いて、炎に消火ガスを直接的且つ集中的に働きかけ、酸素濃度の下がった状態での局所放出により確実な消火を可能とする。
【0115】
また、全域放出と局所放出が重複して行われる時間帯(t2~t3)が存在することで、全域放出により全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させて消火する利点と、局所放出により炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけることで早期の消火を可能とする利点とを併せた消火効果が得られる。
【0116】
(第4放出制御)
図10は局所放出を終了した後に全域放出を行う第4放出制御を示したタイムチャートあり、図10(A)は局所放出を示し、図10(B)は全域放出を示す。
【0117】
図10の第4放出制御は、図8に示した第2放出制御の変形例であり、時刻t1で火災が検出されてガス放出条件の成立が判定されると、まず選択弁38-1を開き、配管44により局所放出用噴射ヘッド12に消火ガスを供給し、火源48に向けて消火ガスを局所放出する。
【0118】
続いて、時刻t2で局所放出が終了すると選択弁38-1を閉じて選択弁38-2を開き、配管46により全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給し、防護区画10の全体に向けて消火ガスを全域放射する。
【0119】
このように局所放出を最初に開始し、局所放出が終了したら全域放出を開始することで、最初に炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけて消火し、その後に、全体的な酸素濃度を所定の消火濃度に速やかに低下させて消火を維持可能とする。
【0120】
なお、第4放出制御は、防護区画10の容積や面積が比較的小さい場合に有効であり、防護区画10が大きいか相当大きな容積、面積を有する擬開放空間の場合は第1乃至第3放出制御とすることが望ましい。この点は次に説明する第5放出制御も同様である。
【0121】
(第5放出制御)
図11は全域放出を終了した後に局所放出を行う第5放出制御を示したタイムチャートであり、図11(A)は局所放出を示し、図11(B)は全域放出を示す。
【0122】
図11の第5放出制御は、図9に示した第3放出制御の変形例であり、時刻t1で火災が検出されてガス放出条件の成立が判定されると、まず選択弁38-2を開き、配管46により全域放出用噴射ヘッド14に消火ガスを供給し、防護区画10の全体に向けて消火ガスを全域放出する。
【0123】
続いて、時刻t2で全域放出が終了すると選択弁38-2を閉じて選択弁38-1を開き、配管44により局所放出用噴射ヘッド12に消火ガスを供給し、火源48に向けて消火ガスを局所放出する。
【0124】
このように全域放出を最初に開始し、全域放出が終了したら局所放出を開始することで、最初に全体的な酸素濃度を低下させて、燃焼速度を下げて火災面積を小さくし、その後に、炎に不活性ガスを直接的且つ集中的に働きかけて消火可能とする。
【0125】
[局所放出と全域放出を併用可能な噴射ヘッド]
本実施形態で使用する全域放出用噴射ヘッド14として、図4に示した一次元走査型の局所放出用噴射ヘッド12を用いても良い。局所放出用噴射ヘッド12を全域放出用噴射ヘッドとして使用する場合には、局所放出用噴射ヘッド12を垂直軸80回りに旋回又は揺動しながら消火ガスを放出することで、防護区画10に全体的に消火ガスが放出され、実質的に全域放出用噴射ヘッドとして動作することができる。
【0126】
[局所放出と全域放出を組み合わせた二酸化炭素消火設備]
上記の実施形態は、空気より軽いか同程度の消火ガスとして、窒素、IG541又はIG55を使用する場合を例にとっているが、空気より重い二酸化炭素についても、図1に示す消火設備を適用することで、火災時に、局所放出と全域放出を組み合わせた二酸化炭素の放出により消火を行う。
【0127】
これは、従来の固定式の二酸化炭素消火設備では全域放出方式と局所放出方式が単独個別的に設置されているが、固定式で局所放出方式と全域放出方式を組み合わせた混合放出方式は存在せず、本実施形態の局所放出と全域放出を組み合わせた固定式の二酸化炭素消火設備とすることで、局所放出により炎に二酸化炭素を直接的且つ集中的に働きかけて早期の消火を可能とする利点と、全域放出により全体的な酸素濃度を所定濃度以下に低下させて消火あるいは再着火を防止する利点を併せた消火効果に、二酸化炭素に固有な散逸性が低く放出時の温度低下が大きいという効果が更に加わることで、消火効果を一層高めることができる。
【0128】
[第2発明のガス系消火設備]
図12は局所放出のみの単独方式とした第2発明によるガス系消火設備を示した説明図である。
【0129】
図12に示すように、本実施形態は、防護区画10に局所放出用噴射ヘッド12を設け、また、走査型火災検出装置16、火災感知器18-1,18-2、音響警報装置28を設けている。さらに、防護区画10となる部屋の外側には、制御盤20、受信機22、手動起動装置24を設けている。
【0130】
局所放出用噴射ヘッド12は、防護区画10全域を見渡すことのできる所定位置に設置され、旋回駆動部12aにより消火ガスの放出方向を一次元(1軸自由度)又は二次元(2軸自由度)で変更可能としており、例えば図4に示したと同じものが用いられる。なお、局所放出用噴射ヘッド12は防護区画10の面積や容積が大きい場合は、複数台設けても良い。
【0131】
また、局所放出用噴射ヘッド12から火災時に二酸化炭素以外の消火ガスとして窒素、IG541又はIG55を放出して消火するため、貯蔵容器30、集合管32、安全弁34、圧力スイッチ35、閉止弁36、選択弁38、起動用ガス容器40、閉止弁42、配管44及び換気設備の換気ダンパー25を設けている。
【0132】
局所放出用噴射ヘッド12により消火ガスとして窒素、IG541又はIG55を局所放出して消火する局所放出モデルは図2及び図3と同じであり、前述した(式2)で求める容積の火源位置を含む想定火源空間52に向けて窒素、IG541又はIG55を局所放出する。
【0133】
本実施形態で局所放出用噴射ヘッド12からの局所放出に必要な窒素、IG541又はIG55の消火剤量は、(式3)の「二酸化炭素比重V1(kg/m3)」を、窒素、IG541、IG55の単位消火剤必要量に置き代えて求めた値となる。即ち、防護区画10に窒素、IG541又はIG55を全域放出して酸素濃度を下げて消火するために必要な消火剤量が、局所放出用噴射ヘッド12のみの局所放出に必要な窒素、IG541又はIG55の局所放出消火剤量となる。
【0134】
本実施形態によれば、防護区画10で火災が発生すると、制御盤20の手動モード又は自動モードの制御により局所放出用噴射ヘッド12から窒素、IG541又はIG55が火源位置に向けて直接的且つ集中的に放射され、早期に酸素濃度を局所的に所定の消火濃度以下に低下させて消火することができる。
【0135】
また、空気より軽いか同等の窒素、IG541、IG55を火源位置に局所放出して散逸しても、周囲に散逸した消火ガスが全体的な酸素濃度を低下させることで局所放出による消火状態を維持することが可能となり、早期の消火と消火状態の維持を可能とする。
【0136】
[火災検出・消火ユニット]
図13は火災検出装置と局所放出用噴射ヘッドを一体化した火災検出・消火ユニットの実施形態を示した説明図、図14図13の火災検出・消火ユニットの動作を示した側面図であり、図14(A)は通常時を示し、図14(B)は火災時を示す。
【0137】
図13及び図14に示すように、火災検出・消火ユニット104は前パネル106と装置本体108で構成する。前パネル106の上部には走査型火災検出部110を設けている。
【0138】
走査型火災検出部110は図6に示した走査型火災検出装置16と基本的に同じであり、本体90、水平旋回部92及び垂直走査窓94を備え、防護区画に火源が存在する場合、水平旋回部92の水平旋回と内部の回転ミラーの垂直回転で検出光軸が火源に指向したときに赤外線センサから出力される受光信号の増加から火源を検出し、火源検出時の水平走査角θ1と垂直走査角θ2および走査型火災検出部110の設置高さから防護区画の火源の位置を検出する。
【0139】
走査型火災検出部110の下には噴射ヘッドカバー114を設け、その下にヘッド旋回駆動部112を設けている。ヘッド旋回駆動部112はその垂直軸を走査型火災検出部110の垂直軸と同軸に設ける。
【0140】
噴射ヘッドカバー114の背後には、図14(A)に示す通常状態で、点線で示すように、ヘッド水平旋回部116の背後となる位置に局所放出用噴射ヘッド12を設け、装置本体108に収納して隠れた状態としている。ヘッド水平旋回部116はヘッド旋回駆動部112に設けたモータにより噴射ヘッドカバー114と一体に局所放出用噴射ヘッド12を水平旋回する。
【0141】
防護区画の火災時には、走査型火災検出部110が火源位置を検出し、図14(B)に示すように、ヘッド旋回駆動部112でヘッド水平旋回部116を水平旋回して前パネル106の前に局所放出用噴射ヘッド12を旋回し、且つ、ホーン73を備えた局所放出用噴射ヘッド12の放出軸82が、平面から見て、検出された火源位置に向く位置に旋回停止し、火源位置に向けて消火ガスを局所放出して消火する。
【0142】
このように走査型火災検出装置16と局所放出用噴射ヘッド12を一体化した火災検出・消火ユニット104によれば、図1のように、走査型火災検出装置16と局所放出用噴射ヘッド12を別々に配置し、走査型火災検出装置16で検出した火源位置を、局所放出用噴射ヘッド12から見た火源位置に座標変換する必要がなくなり、防護区画10全体を見渡せる最適な位置に火災検出・消火ユニット104を設置することで、簡単に火源位置の検出と火源位置に向けた消火ガスの局所放出が可能となる。
【0143】
[本発明の変形例]
(微噴霧放出)
上記の実施形態による局所放出用噴射ヘッド12及び又は全域放出用噴射ヘッド14として、例えば粒径10μm乃至200μmの水微噴霧と窒素を混合して放出する微噴霧噴射ヘッドを設けても良い。水微噴霧と窒素を混合した微噴霧放出により、水の冷却効果、気化熱による冷却効果、気化した水蒸気による窒息効果等に加え、必要とする窒素消火剤量を低減することができる。
【0144】
(防護区画)
上記の実施形態は、一つの部屋を防護区画とした場合を例にとっているが、複数の部屋に分かれている場合は、各部屋を一つの防護区画として必要とする設備機器を設置する。
【0145】
(局所放出用噴射ヘッドと全域放出用噴射ヘッドの配置)
防護区画に設置する局所放出用噴射ヘッドと全域放出用噴射ヘッドの配置数及び配置場所は、防護区画の面積、容積、形等に対応した最適な配置数及び配置位置とする。
【0146】
防護区画に局所放出用噴射ヘッドを複数設置する場合、火災時に火源に対して局所放出を行う噴射ヘッドと当該火災時における火源に対する局所放出を行わない噴射ヘッドを区別して放出しても良いし、局所放出を行う噴射ヘッドと行なわない噴射ヘッドとを区別せずに全ての噴射ヘッドから放出しても良い。
【0147】
区別して放出する際は、各局所放出用噴射ヘッド本体若しくは近傍に開閉弁を設け、電気的な命令等で開閉させるようにしても良い。区別せずに放出する際は、火源に対して局所放出を行う噴射ヘッドが放出する消火ガスが局所放出に必要な量を満たすように放出する。例えば、(局所放出に必要な量)×(防護区画内の全ての局所放出用噴射ヘッドの数)に基づいて消火ガスの貯蔵量を確保しておいても良い。
【0148】
(その他)
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0149】
10:防護区画
12:局所放出用噴射ヘッド
12a:旋回駆動部
14:全域放出用噴射ヘッド
16:走査型火災検出装置
18-1,18-2:火災感知器
20:制御盤
22:受信機
24:手動起動装置
25:換気ダンパー
26:放出表示灯
28:音響警報装置
30:貯蔵容器
32:集合管
34:安全弁
35:圧力スイッチ
36,42-1,42-2:閉止弁
38-1,38-2:選択弁
40:起動用ガス容器
44,46:配管
48:火源
50:実火源空間
52:想定火源空間
54:局所放出
56:全域放出
58:基台
60,84:ヘッド本体
62:回転体
64:内部流路
66:配管接続口
68:環状溝
70:ノズル
72:ノズル孔
73:ホーン
74:モータ
76:出力軸
78:リード線
80,85,96:垂直軸
82,87:放出軸
86:センターノズル
88:サイドノズル
90:本体
92:水平旋回部
94:垂直走査窓
98:検出光軸
98a:光軸垂直位置
98b:光軸水平位置
100:水平基準線
102:水平限界線
104:火災検出・消火ユニット
106:前パネル
108:装置本体
110:走査型火災検出部
112:ヘッド旋回駆動部
114:噴射ヘッドカバー
116:ヘッド水平旋回部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14