(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】橋梁の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20231027BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
(21)【出願番号】P 2019223432
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-08-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年9月19日および20日に、大興物産株式会社・横浜機材センター内にて、「床版更新システム」のデモンストレーションおよび実証実験の視察会を開催した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】南 浩郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 克哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大
(72)【発明者】
【氏名】征矢 陽光
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-191458(JP,A)
【文献】特開2001-090027(JP,A)
【文献】特開2005-307684(JP,A)
【文献】特開2006-028881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に延在する主桁上に
プレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の
前記床版を
前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版
上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用のレールを敷設すること
で、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版運搬台車が前記レール上を移動することにより、新たな
前記床版を運搬すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の
前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含
み、
前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、橋梁の構築方法。
【請求項2】
橋軸方向に延在する主桁上に
プレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の
前記床版を
前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版
上に、枕木を介して、床版架設機移動用のレールを敷設すること
で、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版架設機が前記レール上を移動しつつ、新たな
前記床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の
前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含
み、
前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、橋梁の構築方法。
【請求項3】
橋軸方向に延在する主桁上に
プレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の
前記床版を
前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版
上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の
第1レール
と床版架設機移動用の第2レールとを敷設すること
で、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版運搬台車が前記
第1レール上を移動することにより、新たな
前記床版を運搬すること
、
前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の
前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含
み、
前記敷設された前記第1レール及び前記第2レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、橋梁の構築方法。
【請求項4】
橋軸方向に延在する主桁上に
プレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の
前記床版を
前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版
上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の
第1レール
と床版架設機移動用の第2レールとを敷設すること
で、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版運搬台車が前記
第1レール上を移動することにより、新たな
前記床版を運搬すること
、
前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の
前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含
み、
前記敷設された前記第1レールが前記隙間の上にある状態で、かつ、前記隙間の上から前記第2レールが撤去された状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行う、橋梁の構築方法。
【請求項5】
一対の前記第1レールが一対の前記第2レール間に配置される、請求項3又は請求項4に記載の橋梁の構築方法。
【請求項6】
前記新たな前記床版は、最新に設置された前記床版の隣に設置されるものであり、
前記床版架設機により、前記新たな前記床版上に新たな前記枕木を設置し、
前記新たな前記枕木に新たな前記第1レールを支持させる、
請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の橋梁の構築方法。
【請求項7】
前記新たな前記床版は、最新に設置された前記床版の隣に設置されるものであり、
前記床版架設機により、前記新たな前記床版上に新たな前記枕木を設置し、
前記新たな前記枕木に新たな前記第2レールを支持させる、
請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の橋梁の構築方法。
【請求項8】
前記床版を新設床版とし、
前記橋梁において、既設床版の撤去を行った後に、前記新設床版の設置を行う、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の橋梁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋軸方向に延在する主桁上に床版を一方向に順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁は、一般に、複数の橋脚と、複数の橋脚に跨がって橋軸方向に複数並列に延在する主桁(橋桁)と、主桁上に並べられて路面を構成する鉄筋コンクリート製の床版と、を含んで構成される。
【0003】
かかる床版については、長年の使用によるコンクリートの劣化や内部の鉄筋の腐食などの理由で、架け替え(既設床版の撤去と新設床版の設置)が求められる場合がある。このため、様々な床版架け替え方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような床版の架け替えによる橋梁の再構築については、供用中の道路を対象とするものであるため、工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスを最小限にすることが最重要課題となる。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、床版の設置を含む橋梁の構築作業において、ソーシャルロスの低減のため、作業の効率化を図ることを課題とする。
より具体的には、新たに設置する床版の運搬及び/又は設置、床版同士の固定などの作業において、効率化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版運搬台車が前記レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行うことを特徴とする。
本発明の第2態様は、橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版架設機移動用のレールを敷設することで、前記レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版架設機が前記レール上を移動しつつ、新たな前記床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
前記敷設された前記レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の第3態様は、橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
前記敷設された前記第1レール及び前記第2レールが前記隙間の上にある状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行うことを特徴とする。
本発明の第4態様は、橋軸方向に延在する主桁上にプレキャストコンクリート製の床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の前記床版を前記床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版上に、枕木を介して、床版運搬台車移動用の第1レールと床版架設機移動用の第2レールとを敷設することで、前記第1レール及び前記第2レールを、前記枕木を介して、前記床版に支持させること、
移動可能な床版運搬台車が前記第1レール上を移動することにより、新たな前記床版を運搬すること、
前記第2レール上を移動可能な床版架設機により、前記新たな前記床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の前記隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含み、
前記敷設された前記第1レールが前記隙間の上にある状態で、かつ、前記隙間の上から前記第2レールが撤去された状態で、前記隙間に対する前記間詰めコンクリートの打設を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床版運搬台車及び/又は床版架設機を軌道車両とすることで、レールを設置する作業が必要となるものの、設置済みの床版などに局所的に大きな負荷がかかるのを抑制することができる。
床版同士の固定については、床版間に隙間を設けて、間詰めコンクリートで固定する方式とすることで、曲線路などで左右の隙間を変えて対応できるなど、柔軟性を増すことができる。
その一方、床版間に隙間を設けても、レール移動方式とすることで、床版運搬台車や床版架設機の移動に支障となることはない。
また、床版間の間詰めについては、作業タイミングにほぼ制約がないことから、まとめて実施することができ、作業効率の改善に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態として示す床版架設作業中のシステム全体の側面図
【
図15】床版架設作業完了後に間詰めコンクリートを打設する場合の説明図
【
図16】曲線路の場合の床版の架設方法を示す平面図
【
図17】他の実施形態として示す床版架設作業中のシステム全体の側面図
【
図18】上記他の実施形態での床版架設作業中の床版架設機の側面図
【
図19】上記他の実施形態での床版架設機及び床版運搬台車の正面図
【
図20】上記他の実施形態での床版運搬台車の側面図
【
図21】上記他の実施形態での間詰めコンクリート打設部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として示す床版架設作業中のシステム全体の側面図であり、床版架設機10と床版運搬台車30とが図示されている。
【0012】
図2は床版架設作業中の床版架設機10の側面図、
図3は床版架設機10及び床版運搬台車30の正面図、
図4は床版架設機10の平面図である。また、
図5は床版運搬台車30の側面図、
図6は床版運搬台車30の平面図である。
【0013】
図1、
図2及び
図3に示されるように、橋梁の主桁(橋桁)1は、H形鋼などにより構成されて橋軸方向に延在している。主桁1はまた、
図3からわかるように、本実施形態では4列構成である。
【0014】
床版2(2A、2B、2C、・・・、2H、・・・、2L、2M)は、床版架設機10により、1枚ずつ、主桁1の上に、主桁1の延在方向に並べられて、設置され、これにより路面を構成する。なお、床版2については、設置順に2A、2B、2C、・・・と記している。
【0015】
図1(及び
図2)では、床版架設作業は左から右へ矢印方向に進行する。従って、
図1の左側には、主桁1の上に設置済みの新設床版2A~2Mがあり、次に設置する新設床版2N(床版架設機10が吊り上げている設置用の新設床版2N)は、最新に設置された新設床版2Mに隣接する位置に設置されることになる。従って、
図1の左側が床版架設作業の進行方向(床版を順に並べる方向)で見て上流側、
図1の右側が床版架設作業の進行方向で見て下流側となる。
【0016】
また、床版架設作業の進行方向が床版架設機10の基本的な移動方向となる。従って、床版架設機10が
図1で右側に進むことを前進といい、逆に左側に進むことを後退という。また、床版架設機10の
図1で右側が前方、
図1で左側が後方となる。
【0017】
本実施形態において、床版2(2A、2B、2C、・・・)は、鉄筋入りプレキャストコンクリート製であり、その短辺を橋軸方向に沿わせ、長辺を橋軸直角方向に沿わせて、設置する。床版2の短辺の長さは例えば2.5m、長辺の長さは例えば10mである。
【0018】
橋軸方向に隣り合う床版2(例えば
図2の2Lと2M)は、30~40cm程度の隙間(
図2中のs)をあけて設置される。各床版2の長辺からはこの隙間に向かって鉄筋(定着用の継手;
図2中のj)が突出している。なお、この隙間には、床版2の設置後に、間詰めコンクリート(モルタル)が打設される。間詰め作業については後述する。
【0019】
床版架設機10は、設置済みの新設床版2A~2M上、特に本実施形態では新設床版2A~2M上にH形鋼などからなる枕木3を介して敷設されたレール4上を移動して、最新に設置された新設床版2Mの前方に新設床版2Nを設置する。
【0020】
このため、床版架設機10は、床版2上を移動可能な移動体11と、この移動体11に支持されて移動体11の移動方向前方に吊り点を有する床版揚重機構15とを含む。
【0021】
移動体11は、移動方向前側の第1台車12と移動方向後側の第2台車13とに分離構成され、これらの台車12、13は上下の連結部材14により連結されて一体的に移動する。
【0022】
床版揚重機構15は、移動体11の第1台車12に立設された支柱16に支持されて第1台車12の移動方向前方に張り出した桁17と、この桁17の先端側に設けられた吊り装置18とを含んで構成される。
吊り装置18は、少なくともシーブ又はワイヤ繰出し部を含み、ウインチなどの動力部は吊り装置18と一体でなくてもよい。吊り装置18は、床版運搬台車30から、床版2を吊り上げて受取り、床版設置位置の上方から床版2を吊り下ろすことで、床版2を所定の位置に設置することができる。
【0023】
ここにおいて、吊り装置18は桁17により支持され、桁17は移動体11(第1台車12)の移動方向前方に張り出しているため、吊り装置18自体を前後に移動させることなく、床版運搬台車30からの床版2の吊り上げ、床版設置位置への吊り下ろしが可能となる。
【0024】
また、床版2用の吊り装置18とは別に、補助の吊り装置19が桁17の前側に設けられる。この補助の吊り装置19は、床版2の設置と同時進行で枕木3及びレール4を設置する場合に、これらの吊り上げ、吊り下ろしに用いることができる。
【0025】
第1台車12が床版揚重機構15を搭載するのに対し、第2台車13は、カウンターウエイト20を搭載する。
【0026】
カウンターウエイト20は、第1台車12における床版揚重機構15の支持部(支柱16)から離れた吊り装置18の吊り点にかかる荷重によるモーメントを打ち消すためのものである。
【0027】
従って、吊り上げる床版2の荷重をFW、支柱16から吊り点までの距離(桁17の長さ)をL1、支柱16からカウンターウエイト20までの距離(連結部材14の長さ)をL2、とすると、カウンターウエイト20の重さCWは、下記のように設定する。
CW×L2≧FW×L1
CW≧FW×(L1/L2)
よって、L2>>L1とすることで、カウンターウエイト20(重さCW)の軽量化を図ることができる。
【0028】
本実施形態では、第1台車12と第2台車13は連結部材14で連結されているため、連結部材14の長さを調整することで、支柱16からカウンターウエイト20までの距離を長く設定することができる。従って、カウンターウエイト20の軽量化を図りやすい。そして、カウンターウエイト20の軽量化は床版への負荷軽減につながる。
【0029】
移動体11はまた、左右の接地部、本実施形態では左右の車輪(軌道輪)21で、床版2上(床版2上に枕木3を介して敷設された左右一対のレール4)に支持されていて、左右の接地部間、従って左右の車輪21間に、床版運搬台車30が通り抜けることのできる空間25を有する(
図3参照)。
【0030】
本実施形態では、移動体11の下方に通り抜け用の空間25を形成するための移動体11の左右の接地部として、車輪21を設けている。これにより、接地部で走行でき、接地部が走行部を兼ねることができる。また、特に軌道輪とすることで、通り抜け用の空間25の位置を安定させることができる。
【0031】
詳しくは、移動体11の第1台車(第1車輪保持部)12は、
図3に示されるように、第1台車12上に立設される支柱16と共に左右一対設けられ、左右の支柱16、16が比較的高位置で横つなぎ部材22により剛結されている。
また、桁17は、
図4の平面図に示されるように、左右の支柱16、16から前方に突設されて、先端側で横つなぎ部17aにより連結されている。従って、桁17は平面視でコ字形のフレーム形状をなしている。
【0032】
第2台車(第2車輪保持部)13についても同様で、第2台車13上に搭載されるカウンターウエイト20と共に左右一対設けられる。そして、左右の第2台車13、13にそれぞれ支柱23、23が設けられ、左右の支柱23、23が比較的高位置で横つなぎ部材24により剛結されている。
また、上下の連結部材14についても同様で、左右の第1台車12、12上の支柱16、16と左右の第2台車13、13上の支柱23、23とをつなぐように左右一対設けられる。
【0033】
従って、左右の第1台車12、12間、及び、左右の第2台車13、13間で、横つなぎ部材22、24及び横つなぎ部17aより下方に、床版運搬台車30が通り抜けることができる空間25が形成される。
【0034】
次に床版運搬台車30について、
図1、
図3、
図5及び
図6により説明する。
床版運搬台車30は、床版架設機10が設置する床版2Nを運搬(搬入)するもので、設置済みの新設床版2A~2M上、特に新設床版2A~2M上に枕木3を介して敷設された左右一対のレール5上を移動する。
床版運搬台車30用の左右一対のレール5は、床版架設機10用の左右一対のレール4と同じ枕木3を利用して、床版架設機10用の左右一対のレール4間に敷設される。
【0035】
床版運搬台車30は、橋軸方向(レール5の延在方向)に長い車体31と、車体31の下部に取付けられて左右一対のレール5上を転動する車輪(軌道輪)32と、を備えている。床版運搬台車30は、更に、車体31上に、床版2を積載しかつ向きを変えることができるターンテーブル33を備えている。
【0036】
ターンテーブル33は、車体31に支持されて水平面内を回転可能な円形の旋回部33aと、旋回部33a上に固定支持された長方形状の床版載置部33bとからなる。
【0037】
従って、床版運搬台車30は、ターンテーブル33の旋回部33aにより、床版載置部33bの長手方向を床版運搬台車30の移動方向に合わせることで、床版2を積載した状態で床版架設機10の前記空間25を通り抜けることができる。
床版運搬台車30は、また、ターンテーブル33の旋回部33aにより、床版載置部33bの向きを変えることで、床版載置部33b上に積載された床版2の向きを変え、床版2の長手方向を橋軸直角方向にして、設置時の方向に合わせることができる。
【0038】
次に、上記の床版架設機10と床版運搬台車30とを用いた床版架設作業について、
図7~
図13の工程図を参照しつつ、説明する。なお、
図7~
図13において、各図の(A)は側面図、(B)は平面図である。
【0039】
図7は床版2Mの設置を終えた状態で、床版架設機10は、未だ床版2Mを設置(増設)したときの床版設置位置にいる。床版運搬台車30は、次に設置する床版(床版2Mの前方に隣接させて次に設置する床版)2Nを積載して、床版架設機10の近くまで到達したところである。なお、床版運搬台車30において、設置用の床版2Nは、床版長手方向を橋軸方向に向けた状態で積載している。
【0040】
次に
図8に示すように、床版架設機10が床版設置位置より後方に移動すると共に、床版運搬台車30が、床版2Nを積載したまま、床版架設機10の通り抜け空間(
図3の25)を通って、床版架設機10の後方から前方へ進入する。
【0041】
次に
図9に示すように、床版運搬台車30において、ターンテーブル33(床版載置部33b)を90°回転させ、積載している床版2Nの向きを、床版長手方向が橋軸直角方向となるように、変更する。従って、
図10での床版架設機10の後退移動する位置は、床版架設機10の前方に、床版運搬台車30がターンテーブル33により床版2Nを旋回させ得るスペースができる位置である。
【0042】
次に
図10に示すように、床版架設機10が床版受取位置まで前方へ移動した後、床版架設機10が床版揚重機構15により床版運搬台車30から床版2Nを荷揚げする。
荷揚げ後、床版運搬台車30は、ターンテーブル33(床版載置部33b)を元の位置まで90°回転させて、退出に備える。
【0043】
次に
図11に示すように、床版運搬台車30が、空荷状態で、床版架設機10の通り抜け空間を通って、床版架設機10の前方から後方へ退出すると共に、床版架設機10が前進して床版受取位置から床版設置位置へ移動する。床版架設機10の床版受取位置から床版設置位置への移動距離はわずかである。
【0044】
次に
図12に示すように、床版架設機10が、床版揚重機構15により、新たに設置する床版2Nを荷卸しして、設置済みの床版2Mの前方に隣接させて、設置する。
このとき、床版運搬台車30は空荷状態で図外の新設床版の置き場へ移動している。
【0045】
次に
図13に示すように、今回設置した床版2Nの前縁上に、枕木3を設置し、床版2M上の枕木3と床版2N上の枕木3とにより支持させて、レール4を設置する。これらの設置には、床版揚重機構15の吊り装置18とは別の、補助の吊り装置19を用いることができる。
ここで設置する枕木3及びレール4は、床版運搬台車30により床版2Nと共に床版2N上に載せて運搬し、床版2Nの設置後に、床版2N上の所定位置に設置すればよい。
【0046】
床版運搬台車30用のレール5についても同様である。
すなわち、枕木3を共用し、床版2M上の枕木3と床版2N上の枕木3とにより支持させて、レール5を設置する。床版運搬台車30用の一対のレール5、5は、床版架設機10用の一対のレール4、4間に配置される。レール5の設置にも、床版揚重機構15の吊り装置18とは別の、補助の吊り装置19を用いることができる。
また、床版架設機10用のレール4と床版運搬台車30用のレール5とは、互いに連結して、一体物として取り扱うようにしてもよい。すなわち、同時に運搬し、同時に設置するのである。
【0047】
図13は床版2Nの設置を終えた状態で、床版架設機10は、未だ床版2Nを設置(増設)したときの床版設置位置にいる。床版運搬台車30は、次に設置する床版(床版2Nの前方に隣接させて次に設置する床版)2Oを積載して、床版架設機10の近くまで到達したところである。
図7と
図13とを比較すれば、床版架設作業が1枚分進行したことがわかる。
【0048】
本実施形態の床版架設システムは、床版上を移動して床版の増設を行う床版架設機10と、床版架設機10が増設する床版を運搬する床版運搬台車30と、を含み、
前記床版架設機10は、床版上を移動可能な移動体11と、移動体11に支持されて移動体11の移動方向前方に吊り点を有する床版揚重機構15と、を含み、
前記床版運搬台車30は、床版を積載した状態で、前記移動体11の移動方向で見て、前記移動体11の後方から前方へ、進入可能である。
【0049】
上記のシステムにより、床版の架設作業時は、床版運搬台車30が、床版架設機10の床版設置側である床版架設機10の前方まで進入して、新たに設置する床版を床版架設機10に受け渡すことできる。従って、床版受取り後、床版設置までの床版架設機10の移動距離を少なくすることができる。これにより、床版を吊った状態から、わずかな動作で、床版を安定的に設置できるようになる。
【0050】
また、本実施形態によれば、ターンテーブル33付きの床版運搬台車30を用い、床版架設機10の前方で床版の向きを変えることができ、これにより、床版架設機10にて床版の向きを変える必要がなくなる。これも床版の安定的な設置に寄与する。
【0051】
本実施形態では、以上の説明から明らかなように、下記A(A-1~3)及び/又はB(B-1~3)を特徴としている。
【0052】
(A-1)複数の床版を床版間に隙間sをあけて設置すること
(A-2)設置された複数の前記床版の上方に、床版運搬台車30移動用のレール5を敷設すること
(A-3)移動可能な床版運搬台車30が前記レール5上を移動することにより、新たな床版を運搬すること
【0053】
(B-1)複数の床版を床版間に隙間sをあけて設置すること
(B-2)設置された複数の前記床版の上方に、床版架設機10移動用のレール4を敷設すること
(B-3)移動可能な床版架設機10が前記レール4上を移動しつつ、新たな床版を設置すること
【0054】
あるいは、本実施形態について、下記C(C-1~3)及び/又はD(D-1~2)を特徴としていると記述することができる。
【0055】
(C-1)設置済みの床版の上方に敷設されたレール5上を移動可能な床版運搬台車30により、新たに設置する床版を運搬すること
(C-2)運搬された床版を設置済みの床版との間に隙間sをあけて設置すること
(C-3)設置された床版の上方に、敷設済みのレール5に連ねて、床版運搬台車30移動用のレール5を設置すること
【0056】
(D-1)設置済みの床版の上方に敷設されたレール4上を移動可能な床版架設機10により、設置済みの床版との間に隙間sをあけて、床版を設置すること
(D-2)設置された床版の上方に、敷設済みのレール4に連ねて、床版架設機10移動用のレール5を敷設すること
【0057】
そして、本実施形態では、床版設置位置より上流で(床版架設機10の通過後に、例えば、床版架設位置より後方で)、設置済みの床版2、2間の隙間s(
図14参照)に間詰めコンクリートを打設する。
【0058】
図14は床版間の間詰めコンクリート打設部の説明図で、
図14(A)は平面図、
図14(B)は拡大側面図である。
【0059】
図14(A)に示されているように、設置済みの床版2の長辺からは、この隙間sに向かって鉄筋(定着用の継手)jが突出している。従って、ここに間詰めコンクリートを打設することで、橋軸方向に隣り合う床版2、2を確実に固定することができる。なお、間詰めコンクリート打設空間の底部には、
図14(B)に示されているように、埋設型枠41が配置され、その上に間詰めコンクリート42が打設される。
【0060】
間詰めコンクリート42の打設タイミングについては、次のようにすることができる。
間詰めコンクリート42の打設は、できるだけ、まとめて行うことで、作業の効率化を図ることできる。
【0061】
間詰めコンクリート42の打設は、床版架設機10の通過後に可能となる。このとき、設置済みの床版2上には床版架設機10用のレール4と床版運搬台車30用のレール5とが存在する。
床版架設機10用のレール4は、床版架設機10が通過してしまえば、撤去可能となる。これに対し、床版運搬台車30用のレール5は、床版架設作業が完了するまで床版運搬台車30を運行させる必要から、床版架設作業の完了後に撤去可能となる。但し、床版架設機10用のレール4と床版運搬台車30用のレール5とを一体物としている場合は、両方とも床版架設作業の完了後に撤去可能となる。
【0062】
従って、床版架設作業の完了前に、間詰めコンクリートの打設を行う場合は、少なくともレール5がある状態で、レール5の下の間詰めコンクリート打設空間に向けて、間詰めコンクリートを打設する。
床版架設作業の完了後に、間詰めコンクリートの打設を行う場合は、レール5の撤去が可能であるので、制約なく、まとめて実施することができる。
【0063】
図15は床版架設作業完了後に間詰めコンクリートを打設する場合の説明図で、
図15(A)は床版架設作業の完了時の状態を示している。
図15(B)では、床版架設作業の完了後に、まとめて、橋軸方向に隣り合う床版2、2間に間詰めコンクリート42を打設している。
図15(C)では、間詰めコンクリート42の打設完了後に、床版2上にアスファルト塗装43を施している。
【0064】
図16は曲線路の場合の床版の架設方法を示す平面図であり、矩形のプレキャスト床版2を曲線形状に沿って配置し、床版2、2間の隙間形状(間詰めコンクリート42の形状)を平面視で台形型とすることにより、対応している。このように、床版2、2間に隙間を設けて、間詰めコンクリートで固定する方式とすることで、曲線路などで左右の隙間を変えて対応することができる。
【0065】
次に本発明の他の実施形態について、
図17~
図21により、説明する。
前述の実施形態では、床版架設機10及び床版運搬台車30のレール4、5は、床版2に(枕木3を介して)支持させて敷設しており、床版架設機10及び床版運搬台車30の荷重が設置済みの床版2にかかることになる。
【0066】
これに対し、
図17~
図21の実施形態は、床版架設機10及び床版運搬台車30の荷重を床版2同士を固定する前の設置済みの床版2にかけないようにしたものである。
【0067】
図17は他の実施形態として示す床版架設作業中のシステム全体の側面図、
図18はの床版架設作業中の床版架設機の側面図、
図19は床版架設機及び床版運搬台車の正面図、
図20は床版運搬台車の側面図である。
【0068】
これらの図からわかるように、主桁1上面における床版2、2間の部位に束部材3aを配置し、レール4、5を束部材3aに(枕木3を介して)支持させて敷設している。言い換えれば、レール4、5を、床版2を介することなく、主桁1に支持させて、敷設している。これにより、床版2に荷重をかけることなく、レール4、5を確実に支持することができる。
【0069】
この場合、枕木3と束部材3aとは一体化し、脚部(束部材)3a付きの枕木3とすることで、レール設置作業の効率化を図ることができる。
実際の取り扱いでは、1本の枕木3と、その下面側の本例では4個の束部材3aとは、予め一体化しておき、一体物、すなわち、束部材(脚部)3a付きの枕木3として取り扱う。これにより、主桁1に対する束部材(脚部)3aの着脱のみで、現場での枕木3の取付け・取外しが可能となり、レール設置作業の効率化を図ることができる。
【0070】
図17~
図20の実施形態の場合、間詰めコンクリートの打設は、束部材3aの撤去後、すなわち、レール4、5の撤去後でないと行うことができない。
このため、本実施形態では、間詰めコンクリートの打設は、レール4、5及び枕木3(束部材3a)の撤去後に行うことになる。
【0071】
【0072】
床版2、2間の主桁1上に束部材3aを設置するようにしたことに伴い、その部分では、床版2、2の各長辺から鉄筋(定着用の継手)jを突出させないようにしている(
図21(A)参照)。
そのため、当該部分には、床版2にメス型の継手44を埋設し、束部材3aの撤去後に、メス型の継手44に定着部材45を接続できるようにしている(
図21(B)参照)。
【0073】
なお、以上の説明では、新設床版の架設作業についてのみ説明したが、床版の架け替えを前提として、既設床版の撤去を行った後に、新設床版の設置を行うようにしてもよいことは言うまでもない。また、床版架設機及び床版運搬台車を2組用意して、それぞれを床版の架け替え箇所の前後に配置することにより、床版の架け替えを並行して作業することもできる。
【0074】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
なお、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
橋軸方向に延在する主桁上に床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の床版を床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版の上方に、床版運搬台車移動用のレールを敷設すること、
移動可能な床版運搬台車が前記レール上を移動することにより、新たな床版を運搬すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含む、橋梁の構築方法。
[請求項2]
橋軸方向に延在する主桁上に床版を順に並べて設置することにより、橋梁を構築する方法であって、
複数の床版を床版間に隙間をあけて設置すること、
設置された複数の前記床版の上方に、床版架設機移動用のレールを敷設すること、
移動可能な床版架設機が前記レール上を移動しつつ、新たな床版を設置すること、及び、
設置された複数の前記床版の間の隙間に間詰めコンクリートを打設すること、
を含む、橋梁の構築方法。
[請求項3]
前記間詰めコンクリートの打設は、前記レールの撤去前に行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の橋梁の構築方法。
[請求項4]
前記レールは、前記床版に支持させて敷設し、前記間詰めコンクリートの打設は、前記レールの下の前記床版間の隙間に対して行うことを特徴とする、請求項3記載の橋梁の構築方法。
[請求項5]
前記間詰めコンクリートの打設は、前記レールの撤去後に行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の橋梁の構築方法。
[請求項6]
前記レールは、前記主桁の前記床版間の部位に配置した束部材に支持させて敷設し、前記間詰めコンクリートの打設は、前記レール及び前記束部材の撤去後に行うことを特徴とする、請求項5記載の橋梁の構築方法。
【符号の説明】
【0075】
1 主桁
2(2A、2B、2C、・・・、2M、2N) 床版
3 枕木
3a 束部材(枕木脚部)
4 レール
5 レール
10 床版架設機
11 移動体
12 第1台車
13 第2台車
14 連結部材
15 床版揚重機構
16 支柱
17 桁
17a 横つなぎ部
18 吊り装置
19 補助の吊り装置
20 カウンターウエイト
21 車輪
22 横つなぎ部材
23 支柱
24 横つなぎ部材
25 通り抜け空間
30 床版運搬台車
31 車体
32 車輪
33 ターンテーブル
33a 旋回部
33b 床版載置部
41 埋設型枠
42 間詰めコンクリート
43 アスファルト塗装
44 メス型の継手
45 定着部材