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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】直交減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20231027BHJP
   F16H 57/038 20120101ALI20231027BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F16H57/038
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019235384
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021102996
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】リー ビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ビィヤオ
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4074590(US,A)
【文献】英国特許出願公告第1090342(GB,A)
【文献】特開2019-173897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0119794(US,A1)
【文献】特開2004-263739(JP,A)
【文献】特開2005-308070(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2282206(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 57/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、前記入力軸の回転を減速する減速機構と、減速された回転を出力し、第1ファンを駆動するための出力軸と、前記減速機構を収納するケーシングと、を備え、前記入力軸と前記出力軸が直交する直交減速装置であって、
前記ケーシングは、
第1側面に形成されて前記出力軸を支持する軸受孔と、
前記軸受孔に向かう方向に沿って設けられたフィンと、
前記第1側面に隣接する第2側面に前記出力軸の軸線方向に沿って設けられた溝部と、を有し、
前記溝部は、前記第1ファンにより発生する風が沿って流れるように形成され、
前記入力軸のうち前記ケーシングから突出した部分に配置された第2ファンを有し、
前記第2側面は、入力軸側側面と前記入力軸側側面よりも出力軸側に配置される出力軸側側面を有し、
前記ケーシングは、前記入力軸側側面から前記出力軸側側面に向かって外形が徐々に大きくなり、前記第2ファンからの風を滑らかに流す流動面部を有する、
直交減速装置。
【請求項2】
記フィンは、前記入力軸の軸線方向に沿って設けられ、前記第2ファンの風を前記軸受孔に誘導する、
請求項1に記載の直交減速装置。
【請求項3】
前記フィンは複数設けられ、
前記流動面部は、隣り合う2つの前記フィンの間の底面に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の直交減速装置。
【請求項4】
前記軸受孔の開口部を閉止する軸受孔蓋部材を有し、
前記軸受孔蓋部材は、前記開口部よりも前記第2側面側に凹む凹部を有する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の直交減速装置。
【請求項5】
前記溝部は、複数設けられ、前記ケーシングの前記第2側面から凹むように設けられるとともに、
当該複数の溝部の端から端までの幅が、前記軸受孔の幅よりも大きい、
請求項4に記載の直交減速装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記軸受孔が設けられる部分が、全て単一の素材で一体的に形成されている、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の直交減速装置。
【請求項7】
前記減速機構は歯車部材を含み、
前記ケーシングは、前記歯車部材を内部に組み込むための孔部と、当該孔部を閉止する蓋部材と、を有する、
請求項6に記載の直交減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力軸と出力軸が直交する直交減速装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。直交減速装置では、ギヤの噛み合い部や軸受で生じた発熱によりケーシングの温度が上昇するため、特に周囲の環境温度が高い場合などにはこれを冷却する必要が生じる。このような場合には、ケーシングから外部に取り出した潤滑剤を冷却してケーシング内に戻す循環装置などを設けていたが、装置構成が煩雑化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-263739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ケーシングを簡便な構成で好適に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る直交減速装置は、入力軸と、前記入力軸の回転を減速する減速機構と、減速された回転を出力し、第1ファンを駆動するための出力軸と、前記減速機構を収納するケーシングと、を備え、前記入力軸と前記出力軸が直交する直交減速装置であって、
前記ケーシングは、
第1側面に形成されて前記出力軸を支持する軸受孔と、
前記軸受孔に向かう方向に沿って設けられたフィンと、
前記第1側面に隣接する第2側面に前記出力軸の軸線方向に沿って設けられた溝部と、を有し、
前記溝部は、前記第1ファンにより発生する風が沿って流れるように形成され、
前記入力軸のうち前記ケーシングから突出した部分に配置された第2ファンを有し、
前記第2側面は、入力軸側側面と前記入力軸側側面よりも出力軸側に配置される出力軸側側面を有し、
前記ケーシングは、前記入力軸側側面から前記出力軸側側面に向かって外形が徐々に大きくなり、前記第2ファンからの風を滑らかに流す流動面部を有する構成とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ケーシングを簡便な構成で好適に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る直交減速装置が適用されたクーリングタワーを示す断面図である。
図2】(a)本実施形態に係る直交減速装置を斜め前側上方から見た斜視図であり、(b)直交減速装置を斜め前側下方から見た斜視図である。
図3】(a)本実施形態に係る直交減速装置の側面図であり、(b)直交減速装置を斜め後側下方から見た斜視図である。
図4】本実施形態に係る直交減速装置の側断面図である。
図5】ケーシングの表面を流れる空気流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る直交減速装置1が適用されたクーリングタワー100を示す断面図である。
この図に示すように、本実施形態に係る直交減速装置1は、特にその用途は限定されず種々の用途に使用可能であるが、例えばクーリングタワー100に適用される。
クーリングタワー100は、空調用の冷凍機などで使用される冷却水や、原油の精製時などのプロセス流体などを冷却するための冷却塔である。このクーリングタワー100は、タワー部110内に導入した温められた冷却水W1を、散水装置120で充填材130の表面に散布し、滴下する水W2にクーリングファン140で取り入れた外気A1を当てる。これにより水W2の一部を蒸発させ、残りを冷却し、タワー部110の底部に溜まった冷却水W3をポンプにより空調装置等に循環させる。
クーリングファン140は、タワー部110の上部に設けられ、タワー部110内で蒸発した水分を上方の外気に放出する。このクーリングファン140は、直交減速装置1を介してモータ150に連結されている。直交減速装置1は、モータ150の動力を減速して出力し、クーリングファン140を駆動する。
なお、クーリングタワーは、図1に示す開放式以外にも種々の方式が存在し、本実施形態の直交減速装置1はあらゆる方式のクーリングタワー(のクーリングファン駆動用)に使用可能であり、例えば密閉式、吸込通風型あるいは押込通風型の空冷式熱交換器(エアフィンクーラー)にも使用可能である。
【0010】
[直交減速装置の構成]
続いて、直交減速装置1の構成について説明する。
図2(a)、(b)は、直交減速装置1を斜め前側上方及び斜め前側下方から見た斜視図であり、図3(a)、(b)は、直交減速装置1の側面図と、直交減速装置1を斜め後側下方から見た斜視図であり、図4は、直交減速装置1の側断面図である。
図2図4に示すように、直交減速装置1は、順次連結されて動力を伝達する入力軸20、中間軸30及び出力軸40と、これらの軸を収容するケーシング50とを備える。
【0011】
入力軸20は、軸線方向を略水平に向けて配置され、中間軸30及び出力軸40は、各々の軸線方向を入力軸20と略直交する上下方向に向けて配置されている。これら入力軸20、中間軸30及び出力軸40は、各々とケーシング50との間に配置された軸受21、31、41に軸支されている。また、入力軸20、中間軸30及び出力軸40は、各々の軸線が互いに同一平面内に位置している。
なお、以下の説明では、入力軸20に沿った方向(図4の紙面左右方向)を「前後方向」、前後方向と直交する図4の紙面垂直方向を「左右方向」、出力軸40に沿った方向(図4の紙面上下方向)を「上下方向」として、直交減速装置1の向き等を規定する。また、「前後方向」のうち、入力軸20がケーシング50から露出した側を「前側」、その反対側を「後側」とする。
【0012】
入力軸20の後側の先端にはベベルピニオン22が形成されている。このベベルピニオン22は、中間軸30に一体的に回転するように連結されたベベルギヤ32と噛合している。中間軸30には、外周面に中間ギヤ33が形成されている。この中間ギヤ33は、出力軸40に一体的に回転するように連結された出力ギヤ42と噛合している。
入力軸20は、前側の先端がケーシング50から露出しており、当該先端にモータ150(図1参照)が連結されて動力(回転運動)が入力される。出力軸40は、上端がケーシング50から露出しており、クーリングファン140(図1参照)に連結される。
【0013】
このような構成により、入力軸20に入力された回転運動は、ベベルピニオン22及びベベルギヤ32のギヤセットと、中間ギヤ33及び出力ギヤ42のギヤセットとを介して減速されつつ出力軸40に伝達され、出力軸40からクーリングファン140に出力される。ここで、ベベルピニオン22、ベベルギヤ32、中間軸30、中間ギヤ33及び出力ギヤ42は、入力軸20の回転を減速して出力軸40に伝達する減速機構を構成する。ただし、この減速機構は、ケーシング50に収納され、入力軸20の回転を減速して出力軸40に伝達するものであれば、その具体構成は特に限定されない。例えば、ベベルピニオン22とベベルギヤ32のギヤセットは、ハイポイドギヤやウォームギヤなどのギヤセットであってもよい。
【0014】
また、入力軸20のうち、ケーシング50から露出(突出)した前側部分の先端には、ファン(羽根車)23が配置されている(図4では図示省略)。ファン23は、入力軸20の回転に伴って回転し、後方のケーシング50に向けて送風する。
【0015】
ケーシング50は、前後方向にやや長尺な略直方体状に形成された一体の鋳造部品(鋳鉄製)である。このケーシング50は、前面51、後面52、上面53、下面54、及び左右両側面55、55を有する。
なお、図1、2では、前面51及び側面55の中程の高さに、上下方向に直交する向きの出っ張りが図示されているが、これはパーティングライン(鋳型の合わせ目の線)であり、ケーシング50が上下に分割される分割線ではない。
【0016】
ケーシング50の前面51には、円形状の貫通孔51aが形成されている。貫通孔51aには、軸受21を介して入力軸20を軸支する軸支持部材56が取り付けられている。軸支持部材56は、前後方向に沿った略円筒状に形成され、後半部が貫通孔51aからケーシング50内に挿入された状態でケーシング50に固定されている。軸支持部材56の前端には、入力軸20との間の隙間をシールするシール部材25が設けられている。
【0017】
ケーシング50の後面52には、貫通孔52aが形成されている。貫通孔52aは、左右方向に幅広な形状であって、ベベルギヤ32及び出力ギヤ42の歯車部材が通過可能な大きさに形成されている。この貫通孔52aは、組立時にベベルギヤ32及び出力ギヤ42をケーシング50内に組み込むための孔部である。組立時には、中間ギヤ33及び出力ギヤ42が貫通孔52aからケーシング50内に入れられ、ケーシング50内で中間軸30及び出力軸40に取り付けられる。貫通孔52aは、蓋部材521で閉止される。
【0018】
ケーシング50の上面53及び下面54には、中間軸30を支持するための第1軸受孔53a、54aと、出力軸40を支持するための第2軸受孔53b、54bとが形成されている。第1軸受孔53a、54aは、同軸上に略同一の内径に形成され、それぞれ軸受31が内嵌されて、当該軸受31を介して中間軸30を軸支する。第2軸受孔53b、54bは、同軸上に略同一の内径に形成され、それぞれ軸受41が内嵌されて、当該軸受41を介して出力軸40を軸支する。下面54の第1軸受孔54a及び第2軸受孔54bは、その開口部に近い高さ(深さ)位置で、蓋部材541、542により閉止されている。蓋部材541、542は、熱伝導の良好なものが好ましい。ケーシング50は、第1軸受孔53a、54a及び第2軸受孔53b、54bが設けられる部分が、全て単一の素材で一体的に形成されている。
【0019】
ケーシング50の上面53は、前端で前面51と滑らかに連なり、平坦面状に形成されている。
ケーシング50の上面53には、略平板状のトップカバー57が取り付けられている。トップカバー57は、第1軸受孔53aの上方に位置する挿通孔57aから出力軸40を露出させるとともに、第2軸受孔53bを閉止する。挿通孔57a内には、トップカバー57と出力軸40との間の隙間をシールするシール部材58が設けられている。
また、トップカバー57は、ケーシング50の上面53に形成されたオイル循環孔53cを閉止している。オイル循環孔53cは、第1軸受孔53aの前方に形成されており、入力軸20に取り付けられたスプラッシャー24によりケーシング50内で上方に巻き上げられた潤滑剤を上面53の上側に出す。この潤滑剤は、上面53の上側から第1軸受孔53a内の軸受31に供給され、ケーシング50内に戻される。
【0020】
ケーシング50の下面54は、前端から後方に向かうに連れて、次第に下方に位置するように形成されている。本実施形態では、ケーシング50の下面54は、後方に向かってこの順に段階的に下方に位置する前端部54c、中段部54d及び後半部54eを有する。
このうち、下面54の前端部54cには、前後方向に沿った複数(本実施形態では5つ)のフィン544が立設されている。複数のフィン544は、左右方向に均等間隔で並設されている。隣り合う2つのフィン544の間の底面は、滑らかな凹状の湾曲面状に形成され、下面54の前端と中段部54dとを連結している。これら複数のフィン544は、入力軸20に設けられたファン23の風を、下面54の後半部54eに形成されて出力軸40を支持する第2軸受孔54bに誘導する。
なお、フィン544の数量、間隔、高さは特に限定されない。
【0021】
下面54の中段部54dには、中間軸30を支持する第1軸受孔54aが開口している。
下面54の後半部54eには、出力軸40を支持する第2軸受孔54bが開口している。
また、下面54の後半部54eには、クーリングタワー100上部のベース台160(図1参照)に固定される4つの脚部543が設けられている。これら4つの脚部543は、下面54の後半部54eのうち、第2軸受孔54bを中心とするその斜め前後左右の四隅に配置されている。ただし、前側の2つの脚部543は、下面54の後半部54eよりもやや前側に配置され、第1軸受孔54aの左右両側に位置している。各脚部543は、下面54の後半部54eよりも下方に突設されている。
【0022】
ケーシング50の両側面55の前半部は、前端が前面51と滑らかに連なるとともに、後半部に向かうに連れて次第に側方に位置するように滑らかな面状に形成されている。
また、ケーシング50の側面55の後半部には、出力軸40の軸線方向(上下方向)に沿った複数(本実施形態では2つ)の溝部551が設けられている。複数の溝部551は、前後方向に並設され、その下端が2つの脚部543の間でケーシング50の下面54の後半部54eと連なっている。また、複数の溝部551は、出力軸40を支持する第2軸受孔53b、54bに対し、側面55と直交する左右方向から見て重なる位置に配置されている。
なお、溝部551の数量、幅、深さは特に限定されない。ただし、通過する風による冷却効率や製造しやすさなどの観点から、多すぎず細すぎないのが好ましい。例えば、各溝部551は、下面54に形成された、隣り合う2つのフィン544の間の間隔よりも広い幅に形成されるのが好ましい。また、2つの溝部551の端から端までの幅Wが、第2軸受孔53b、54bの前後方向の幅(すなわち、内径D)よりも大きいのが好ましい。
【0023】
[直交減速装置の動作]
続いて、直交減速装置1の動作について説明する。
直交減速装置1では、モータ150の動力が入力されて入力軸20が回転すると、この運動がベベルピニオン22及びベベルギヤ32のギヤセットを介して減速されて中間軸30に伝達された後、中間ギヤ33及び出力ギヤ42のギヤセットを介してさらに減速されて出力軸40に伝達される。こうして、減速された動力が出力軸40からクーリングファン140に出力され、当該クーリングファン140が回転駆動される。
【0024】
このとき、直交減速装置1では、入力軸20の回転に伴ってファン23も回転し、当該ファン23が後方のケーシング50に向けて送風する。
図5(a)に示すように、ファン23からの風のうち、ケーシング50の上側への空気流F1は、ケーシング50の前面51から上面53へ滑らかに流れた後、当該上面53及びトップカバー57上を後方に向かって流れて、これら上面53及びトップカバー57を冷却する。
また、ファン23からケーシング50の両側方への空気流F2(図5(a)では左側方のもののみ図示)は、ケーシング50の前面51から側面55へ滑らかに流れた後、この側面55上を後方に向かって滑らかに流れて当該側面55を冷却する。
【0025】
また、図5(b)に示すように、ファン23からケーシング50の下側への空気流F3は、ケーシング50の前面51から下面54へ滑らかに流れた後、この下面54上を後方に向かって、前端部54c、中段部54d、後半部54eの順番に流れる。
このうち、下面54の前端部54cを流れる空気流F3は、前後方向に沿って立設された複数のフィン544により、後方に向けて案内されつつ、当該フィン544からケーシング50の前側部分の熱を除去して冷却する。
前端部54cから中段部54dに流れた空気流F3は、当該中段部54dに形成された第1軸受孔54a(蓋部材541)周辺を通過してさらに後方へ流れる。このとき、空気流F3は、下面54の第1軸受孔54a(蓋部材541)周辺を冷却し、主に第1軸受孔54a内で中間軸30を支持する軸受31での発熱を除去する。
中段部54dから後半部54eに流れた空気流F3は、当該後半部54eに形成された第2軸受孔54b(蓋部材542)周辺を通過して冷却し、主に第2軸受孔54b内で出力軸40を支持する軸受41での発熱を除去する。
【0026】
下面54の第2軸受孔54b周辺を通過した空気流F3は、そのまま後方へ流れるものと、左右両側方に流れるものとに分岐する。
このうち、両側方に流れたものは、2つの脚部543の間を通って、ケーシング50の側面55を流れる空気流F4(図5(b)では左側面のもののみ図示)となる。空気流F4は、ケーシング50の下面54から側面55の複数の溝部551に流入する。そして、この空気流F4は、複数の溝部551内を当該溝部551に沿って上方に流れ、主に出力軸40での発熱を除去してケーシング50を冷却する。
【0027】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、ケーシング50が、入力軸20に設けられたファン23の風を下面54の第2軸受孔54bに誘導するフィン544と、下面54に隣接する側面55に出力軸40の軸線方向に沿って設けられた溝部551とを有する。
そのため、ファン23の風は、ケーシング50下面54の第2軸受孔54b周辺を通過した後に、側面55の溝部551に沿って上方へ流れる。これにより、出力軸40を支持する軸受41や出力ギヤ42の噛み合い部での発熱を、ファン23の風によって好適に除去することができる。
したがって、外部に取り出した潤滑剤を冷却してケーシング内に戻す場合などに比べ、ケーシング50を簡便な構成で好適に冷却することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、各溝部551が、隣り合う2つのフィン544の間の間隔よりも広い幅に形成されているので、フィン544間を通過した空気流F3を、好適に溝部551に流入させることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、第2軸受孔54bと複数の溝部551とが、左右方向から見て重なる位置に配置されている。
そのため、複数の溝部551を流れる空気流F4により、第2軸受孔53b、54bを好適に冷却できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、複数の溝部551の端から端までの幅Wが、第2軸受孔53b、54bの前後方向の幅(内径D)よりも大きい。
そのため、複数の溝部551を流れる空気流F4により、第2軸受孔53b、54bをより好適に冷却できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、ケーシング50は、出力軸40を支持する第2軸受孔53b、54bが設けられる部分が、全て単一の素材で一体的に形成されている。つまり、ケーシング50は、上側の第2軸受孔53bを有する部分と、下側の第2軸受孔54bを有する部分とが別体になっていない上下一体型のケーシングである。
そのため、上側と下側とが別体とされた上下分割型のケーシングと異なり、側面に固定用のフランジを設ける必要がない。ひいては、このフランジにより溝部551の形成が妨げられることがなく、ケーシング50の側面55に好適に溝部551を設けることができる。
さらに、ケーシング50が、ベベルギヤ32や出力ギヤ42の歯車部材を内部に組み込むための貫通孔52aと、当該貫通孔52aを閉止する蓋部材521とを有するので、ケーシング50を上下分割型にする必要なく、好適に歯車部材を内部に収容できる。
【0032】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、フィン544が、入力軸20に設けられたファン23からの風を第2軸受孔54bに誘導することとした。しかし、本発明に係るフィンは、出力軸を支持する第2軸受孔に向けて風を導くように(すなわち、第2軸受孔に向かう方向に沿って)設けられていればよく、その具体的な位置や形状は特に限定されない。
【0033】
また、上記実施形態では、入力軸20に設けられたファン23の風でケーシング50を冷却することとした。しかし、このファン23は、ケーシング50に向けて送風する別の送風手段に替えてもよい。あるいは、特に送風手段を設けなくともよく、例えば外部の自然風などでもフィンや溝部によりケーシング50を好適に冷却できる。なお、上記実施形態では、直交減速装置1が駆動するクーリングファン140により上方への風が発生するため、この風を利用してケーシング50をさらに冷却することができる。
【0034】
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 直交減速装置
20 入力軸
22 ベベルピニオン
23 ファン
30 中間軸
32 ベベルギヤ(歯車部材)
33 中間ギヤ
40 出力軸
41 軸受
42 出力ギヤ(歯車部材)
50 ケーシング
51 前面
52 後面
52a 貫通孔
521 蓋部材
53 上面
53a 第1軸受孔
53b 第2軸受孔
54 下面
54a 第1軸受孔
54b 第2軸受孔
D 内径
54c 前端部
54d 中段部
54e 後半部
541 蓋部材
542 蓋部材
543 脚部
544 フィン
55 側面
551 溝部
W 幅
F1~F4 空気流
図1
図2
図3
図4
図5