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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 10/00 20060101AFI20231027BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20231027BHJP
   H02N 1/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G04C10/00 C
G04G19/00 Y
H02N1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020017200
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021124349
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊成
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真
(72)【発明者】
【氏名】瀬▲崎▼ 章吾
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027748(WO,A1)
【文献】特開昭56-143982(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146483(WO,A1)
【文献】特開2016-185022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 10/00
G04G 19/00
H02N 1/08, 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の回転子と、前記回転子に連結された回転軸と、前記回転子に設けられた帯電膜と、を有する回転部材と、
前記回転軸の軸方向において前記帯電膜と対向して配置されており、前記帯電膜と対向する電極が設けられた基板と、
前記回転軸を回転自在に支持する軸支部と、
前記軸支部を保持する保持板と、を有し、
前記保持板は、前記基板と別体であり、かつ前記基板に対して前記軸方向における前記帯電膜の側とは反対側に配置され、
前記保持板が、前記軸方向において前記帯電膜の側とは反対側から前記基板を支持し、
前記保持板は、前記軸支部と接する保持部と、該保持部と前記保持板の外側枠部とをつないでいる梁部とを備え、
前記保持部は、前記軸方向において前記基板と対向しており、
前記基板は、前記保持部に対して接着されている
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
前記基板および前記電極は、前記時計の外部空間から前記回転子を視認可能とする透明な基板および透明な電極である
請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記梁部は、前記保持部から放射状に延在する複数の梁を有する
請求項1または2に記載の時計。
【請求項4】
前記基板は、前記梁部に対して接着されている
請求項1から3の何れか1項に記載の時計。
【請求項5】
前記外側枠部は、前記梁部と一体で、かつ前記帯電膜の側とは反対側から前記基板の縁部を覆い、
前記基板は、前記外側枠部に対して接着されている
請求項1から4の何れか1項に記載の時計。
【請求項6】
前記複数の梁の本数は、少なくとも三本であり、
前記複数の梁は、前記回転軸の中心軸線を中心とする周方向に沿って等間隔で配置され、
前記基板は、前記複数の梁のそれぞれと接着されている
請求項3に記載の時計。
【請求項7】
前記軸支部は、前記軸方向において前記回転軸と対向し、前記回転軸を支持する受石と、前記軸方向における前記受石の位置を調整する調整機構と、を有し、
前記保持板は、前記調整機構を保持している
請求項1からの何れか1項に記載の時計。
【請求項8】
前記基板が前記軸支部に接着されている
請求項1に記載の時計。
【請求項9】
板状の回転子と、前記回転子に連結された回転軸と、前記回転子に設けられた帯電膜と、を有する回転部材と、
前記回転軸の軸方向において前記帯電膜と対向して配置されており、前記帯電膜と対向する電極が設けられた基板と、
前記回転軸を回転自在に支持する軸支部と、
前記軸支部を保持する保持板と、を有し、
前記基板は、前記電極が設けられた第一の面、および前記第一の面とは反対側の面である第二の面を有し、
前記保持板は、前記第二の面に配置され、かつ前記基板と一体であり、前記軸方向において前記帯電膜の側とは反対側から前記基板を支持する
ことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電力を用いた発電機構や駆動機構がある。特許文献1には、第1基板と、第1基板に対して相対移動可能に平行に配置された第2基板と、第1基板又は第2基板の一方に設置された第1帯電膜と、第1基板又は第2基板の他方に設置され、第1帯電膜と対向して設置された第1対向電極と、を有する静電誘導型発電器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-186424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対向して配置された電極と帯電膜との間には、静電力による引力が発生する。このため、第1基板の剛性が低い場合、電極が設けられた基板が変形し、電極と帯電膜との間のギャップ量が変動し、第1基板と第2基板の静電引力がより増加し、第2基板を支持する軸の摺動負荷が増加するため、発電効率が低下する。
【0005】
本発明の目的は、電極が設けられた基板の変形を抑制し、摺動負荷の変動を抑制することができる時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の時計は、板状の回転子と、前記回転子に連結された回転軸と、前記回転子に設けられた帯電膜と、を有する回転部材と、前記回転軸の軸方向において前記帯電膜と対向して配置されており、前記帯電膜と対向する電極が設けられた基板と、前記回転軸を回転自在に支持する軸支部と、前記軸支部を保持する保持板と、を有し、前記保持板が、前記軸方向において前記帯電膜の側とは反対側から前記基板を支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る時計は、回転軸を回転自在に支持する軸支部と、軸支部を保持する保持板と、を有する。保持板は、軸方向において帯電膜の側とは反対側から基板を支持する。本発明に係る時計は、電極が設けられた基板を保持板によって支持することで基板の変形を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る時計の平面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る時計の断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る回転部材および基板の構成を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る時計の断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る時計の断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る他の時計の断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る他の時計の断面図である。
図8図8は、変形例に係る時計の平面図である。
図9図9は、変形例に係る時計の断面図である。
図10図10は、変形例に係る他の時計の平面図である。
図11図11は、第3実施形態に係る基板の平面図である。
図12図12は、第3実施形態に係る時計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る時計につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[第1実施形態]
図1から図4を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、時計に関する。図1は、第1実施形態に係る時計の平面図、図2は、第1実施形態に係る時計の断面図、図3は、第1実施形態に係る回転部材および基板の構成を示す図、図4は、第1実施形態に係る時計の断面図である。図2および図4には、図1のII-II断面が示されている。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態に係る時計1は、指針4を有するアナログ電子時計である。図1および図2に示すように、時計1は、外装ケース2と、文字板3と、指針4と、回転部材5と、第一軸支部6と、第二軸支部8と、地板7と、受け板9と、基板10と、電極11と、を有する。なお、図1では、文字板3が省略されている。指針4は、秒針41、分針42、および時針43を有する。本実施形態の時計1は、後述するように、回転部材5の回転子51を視認可能とするスケルトン構造を有する。
【0012】
図2に示すように、外装ケース2は、ケース本体21と、裏蓋22と、を有する。ケース本体21の形状は、略筒形状である。以下の説明では、ケース本体21の軸方向を単に「軸方向Z」と称する。ケース本体21の内部空間は、軸方向Zの前面側および背面側のそれぞれに向けて開口している。裏蓋22は、ケース本体21における背面側の開口を閉塞する。透明な風防23は、ケース本体21における前面側の開口を閉塞している。
【0013】
外装ケース2の内部には、地板7および受け板9が配置されている。地板7は、様々なパーツを組み込む土台、支持板、内装ケーシングなどとして機能する。また、受け板9は、回転体の軸を支えたり、部品を固定・保持したりする機能を有する。地板7および受け板9は、ケース本体21に対して固定されている。受け板9は、地板7に対して背面側に位置している。文字板3は、地板7に対して前面側に配置されて地板7を覆っている。
【0014】
本実施形態の時計1は、回転部材5、基板10、および電極11を含む静電変換機構30を有する。静電変換機構30は、図示しない回転錘を含んでおり、基板10の電極11と回転部材5の帯電膜53との相対回転を利用して発電を行なう。つまり、静電変換機構30は、回転錘の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。基板10には、複数の電極11が設けられている。また、静電変換機構30は図示しない針を含んでおり、基板10の電極11に通電する回路と接続することで、回転部材5を回転させるモータであってもかまわない。基板10は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明な樹脂で形成されている。基板10の色は、無色であってもよい。基板10は、地板7に対して背面側に配置されている。本実施形態の基板10の形状は、図3に示すように円盤形状である。基板10には、回転部材5の回転軸52が挿通される貫通孔10cが設けられている。
【0015】
電極11は、基板10の背面10bに形成されている。電極11は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いて形成された膜である。電極11は、透明であり、実質的に無色である。つまり、本実施形態の基板10および電極11は、それぞれ透明な基板および電極である。本実施形態の電極11は、第一電極11aおよび第二電極11bを有する。従って、本実施形態の静電変換機構30は、二相式の発電機として機能する。図3に示すように、基板10の背面10bには、周方向に沿って第一電極11aおよび第二電極11bが交互に配置されている。第一電極11aおよび第二電極11bの形状は、扇形状である。つまり、第一電極11aおよび第二電極11bの幅は、半径方向Rの外側へ向かうに従って広がっている。第一電極11aおよび第二電極11bは、整流回路13を介して時計1の電池に接続されている。
【0016】
基板10は、地板7に対して接着されており、少なくとも地板7によって支持されている。図2に示すように、基板10の前面10aと地板7の背面7bとの間には、接着層12がある。接着層12は、基板10の前面10aと地板7の背面7bとを接着している層である。接着層12は、例えば、両面接着テープや接着剤である。地板7は、接着層12を介して基板10を支持している。
【0017】
図2および図3に示すように、回転部材5は、回転子51、回転軸52、および帯電膜53を有する。回転子51は、シリコン基板、帯電用の電極面が設けられたガラスエポキシ基板、あるいはアルミ板などの基板材料により形成された部材である。回転子51の形状は、例えば、円盤形状である。回転子51は、回転軸52に連結されており、回転軸52と一体回転する。回転軸52は、回転子51の中心部を板厚方向に貫通している。
【0018】
回転子51の前面51aには、複数の帯電膜53が形成されている。帯電膜53は、回転軸52を中心とする回転方向に沿って等間隔で配置されている。帯電膜53は、エレクトレット材料で構成されている薄膜である。本実施形態の帯電膜53は、マイナスの電位に帯電している。帯電膜53の形状は、扇形状である。つまり、帯電膜53の幅は、半径方向Rの外側へ向かうに従って広がっている。
【0019】
回転子51には、隣接する帯電膜53の間に貫通孔51cが形成されている。回転部材5は、第一軸支部6および第二軸支部8によって回転自在に支持される。第一軸支部6および第二軸支部8は、回転軸52の中心軸線X1を軸方向Zと一致させるように回転軸52を支持している。以下の説明では、回転軸52の中心軸線X1と直交する方向を「半径方向R」と称し、回転軸52の中心軸線X1を中心とする回転方向を「周方向C」と称する。半径方向Rおよび周方向Cは、軸方向Zと直交している。
【0020】
図1および図2に示すように、地板7は、梁部71、保持部72、および外側枠部73を有し、基板10とは別体に構成されている。梁部71、保持部72、および外側枠部73は、金属板等によって一体に形成されている。保持部72は、第一軸支部6と接して保持する部分である。よって、地板7は、軸支部6を保持する保持板に該当する。図1に示すように、平面視における保持部72の形状は、略円盤形状である。
【0021】
図2に示すように、第一軸支部6は、受石61および穴石62を有する。穴石62は、回転軸52が挿通される穴を有しており、軸方向Zと直交する方向において回転軸52を位置決めする。受石61は、軸方向Zにおいて回転軸52の先端と対向し、回転軸52を回転自在に支持する。第一軸支部6の受石61は、回転軸52に対して軸方向Zの前面側に配置されている。保持部72は、受石61および穴石62を保持している。受石61および穴石62は、例えば、保持部72に形成されている孔部に圧入されている。
【0022】
外側枠部73は、基板10の縁部10eを軸方向Zの前面側から覆う部分である。つまり、外側枠部73は、帯電膜53の側とは反対側から基板10の縁を覆っている。平面視における外側枠部73の形状は、基板10の縁部10eの形状に対応した円弧形状である。外側枠部73は、保持部72と同心上に位置していてもよい。
【0023】
梁部71は、保持部72と外側枠部73とをつないでいる。梁部71は、半径方向Rに沿って延在している。本実施形態の梁部71の形状は、周方向Cの幅が最も小さい部分においても板厚よりも大きい平板形状である。例示された梁部71の形状は、外側枠部73から保持部72へ近づくに従って周方向Cの幅が狭くなるテーパ形状である。
【0024】
本実施形態の地板7では、一つの梁部71によって保持部72と外側枠部73とがつながっている。梁部71の基端は、外側枠部73につながっている。言い換えると、梁部71は、外側枠部73に対して半径方向Rの中心に向けて突出している。梁部71の先端は、保持部72につながっている。例示された梁部71は、保持部72から外側枠部73まで12時の方向に向けて延在している。地板7は、回転子51と対向する窓部74を有する。窓部74は、梁部71、保持部72、および外側枠部73によって囲まれている。窓部74の形状は、略C字形状である。窓部74は、地板7を板厚方向に沿って貫通している。
【0025】
図2に示すように、文字板3は、窓部74に対応する窓部31を有する。窓部31の形状は、例えば、地板7の窓部74の形状と同一とされてもよい。この場合、文字板3は、地板7における窓部74以外の領域を軸方向Zの前面側から覆い隠す。つまり、梁部71、保持部72、および外側枠部73は、前面側から文字板3によって覆われる。
【0026】
受け板9は、第二軸支部8を保持している。第二軸支部8は、受石81および穴石82を有する。穴石82は、回転軸52が挿通される穴を有しており、軸方向Zと直交する方向において回転軸52を位置決めする。受石81は、軸方向Zにおいて回転軸52の先端と対向し、回転軸52を回転自在に支持する。第二軸支部8の受石81は、回転軸52に対して軸方向Zの背面側に配置されている。受石81および穴石82は、例えば、受け板9に形成されている孔部に圧入されている。
【0027】
図2に示すように、回転部材5は、第一軸支部6および第二軸支部8によって軸方向Zの両側から回転自在に支持されている。また、第一軸支部6および第二軸支部8は、軸方向Zにおいて回転部材5の帯電膜53を電極11と対向させるように回転軸52を支持している。帯電膜53と電極11とは、わずかな隙間を挟んで軸方向Zにおいて対向する。
【0028】
回転軸52には、歯車56が連結されている。歯車56は、歯車57と噛み合っている。歯車57には、軸方向Zに沿った回転軸を介して、図示しない回転錘が連結されている。回転錘は、ユーザの腕の動きなどを捉えて回転する錘である。歯車57は、回転錘と共に回転する。従って、回転子51は、回転錘の回転と連動して電極11に対して相対回転する。回転子51の帯電膜53が電極11に対して相対回転することにより、電極11において電位の変化が生じ、電流が発生する。発生する電流は、整流回路13によって整流されて図示しない電池に蓄電される。
【0029】
ここで、電極11と回転部材5の帯電膜53との間には、静電力による吸引力が作用する。つまり、図4に示すように、帯電膜53から電極11に対して静電力による吸引力F1が作用する。本実施形態の時計1は、吸引力F1による基板10の変形を抑制できるように構成されている。上記のように、本実施形態の時計1では、基板10が地板7に対して接着されている。地板7は、吸引力F1に抗して基板10を支持し、基板10の変形を規制する。よって、本実施形態の時計1は、帯電膜53と電極11との間のギャップ量の変動を抑制することができる。ギャップ量の変動が抑制されることで、回転部材5の回転負荷の増大が抑制され、発電効率が向上する。
【0030】
本実施形態の時計1では、基板10が少なくとも梁部71に対して接着されている。梁部71は、基板10を支持し、基板10の撓み変形を抑制することができる。基板10における電極11が設けられている部分が梁部71によって支持されることで、基板10の変形が生じにくい。接着層12において、梁部71と基板10とを接着している部分の平面形状は、例えば、梁部71の平面形状と同じ形状である。
【0031】
また、基板10は、保持部72および外側枠部73に対して接着されている。よって、図4を参照して説明するように、基板10の変形が抑制される。
【0032】
図4に示すように、電極11および基板10に対して、静電力による吸引力F1が作用する。保持部72は、基板10の中心部10dを支持することで中心部10dの浮き上がりを抑制する。吸引力F1により、基板10の中心部10dには、半径方向Rの外側に向かう力F2が作用する。保持部72は、この力F2に抗して半径方向Rに沿った中心部10dの移動を規制し、基板10の撓み変形を抑制することができる。つまり、保持部72は、基板10が帯電膜53に向けて撓むことを抑制する。接着層12において、保持部72と基板10とを接着している部分の平面形状は、例えば、保持部72の平面形状と同じ円環形状である。なお、中心部10dは、基板10の一部であって、例えば、電極11が形成されている部分よりも半径方向Rの内側の部分である。
【0033】
外側枠部73は、基板10の縁部10eを支持することで、縁部10eの浮き上がりを抑制する。吸引力F1により、基板10の縁部10eには、半径方向Rの内側に向かう力F3が作用する。外側枠部73は、この力F3に抗して半径方向Rに沿った縁部10eの移動を規制し、基板10の撓み変形を抑制することができる。つまり、外側枠部73は、基板10が帯電膜53に向けて撓むことを抑制する。接着層12において、外側枠部73と基板10とを接着している部分の平面形状は、例えば、外側枠部73の平面形状と同じ円環形状である。なお、縁部10eは、基板10の一部であって、例えば、電極11が形成されている部分よりも半径方向Rの外側の部分である。
【0034】
このように、本実施形態の時計1は、地板7に対する基板10の浮き上がりや、基板10の撓み変形を適切に抑制することができる。よって、本実施形態に係る時計1は、電極11と帯電膜53との間のギャップ量の変動を抑制することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る時計1は、回転部材5と、基板10と、第一軸支部6と、地板7と、を有する。回転部材5は、板状の回転子51と、回転子51に連結された回転軸52と、回転子51に設けられた帯電膜53と、を有する。基板10には、電極11が設けられている。電極11は、回転軸52の軸方向Zにおいて帯電膜53と対向して配置されており、かつ帯電膜53と対向している。第一軸支部6は、回転軸52を回転自在に支持する。地板7は、第一軸支部6を保持する保持板として機能する。地板7は、軸方向Zにおいて帯電膜53の側とは反対側から基板10を支持している。本実施形態の時計1は、地板7によって基板10を支持することで、基板10の変形を抑制することができる。
【0036】
本実施形態の基板10および電極11は、時計1の外部空間から回転子51を視認可能とする透明な基板および透明な電極である。ユーザから回転子51が視認可能となることで、時計1の意匠性や装飾性が向上する。また、回転子51が発電機構の一部である場合、静電変換機構30が発電を行なっているか否かをユーザが容易に確認できる。回転子51の回転状態をユーザに意識させることで、効率的な発電動作をユーザに促すことができる。
【0037】
本実施形態の地板7は、第一軸支部6と接する保持部72と、保持部72と地板7の外側枠部73とをつないでいる梁部71と、を有する。梁部71によって保持部72が外側枠部73とつながっていることで、地板7の剛性が向上する。
【0038】
本実施形態の地板7は、基板10と別体である。基板10は、梁部71に対して接着されている。よって、梁部71は、基板10を支持して基板10の変形を抑制することができる。
【0039】
本実施形態の時計1は、梁部71と一体である外側枠部73を有する。外側枠部73は、帯電膜53の側とは反対側から基板10の縁部10eを覆う。基板10は、外側枠部73に対して接着されている。これにより、外側枠部73によって基板10が支持され、基板10の変形が抑制される。
【0040】
本実施形態の保持部72は、軸方向Zにおいて基板10と対向している。基板10は、保持部72に対して接着されている。これにより、保持部72によって基板10が支持され、基板10の変形が抑制される。
【0041】
[第2実施形態]
図5を参照して、第2実施形態の時計1について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図5は、第2実施形態に係る時計の断面図、図6は、第2実施形態に係る他の時計の断面図、図7は、第2実施形態に係る他の時計の断面図である。第2実施形態の時計1において、上記第1実施形態の時計1と異なる点は、回転軸52のあがき量を調整する調整機構60を有する点である。
【0042】
図5に示すように、第2実施形態の第一軸支部6は、受石61、穴石62、調整ケース63、受けねじ64、調整ねじ65、および樹脂部66を有する。第一軸支部6の調整機構60は、調整ケース63、受けねじ64、および調整ねじ65を含む。調整機構60は、回転軸52と受石61との間の軸方向Zの隙間を調整することができる。
【0043】
調整ケース63は、地板7に設けられた孔部に嵌合している。調整ケース63は、有底の筒状の部材であり、軸方向Zの前面側に向けて開口する凹部を有する。調整ケース63の底壁部63aには、貫通孔63bが設けられている。穴石62は、貫通孔63bに圧入されている。
【0044】
受けねじ64および樹脂部66は、筒状の部材である。受けねじ64および樹脂部66は、調整ケース63の凹部に収容され保持されている。受けねじ64の内周面には、螺旋状のねじ山が形成されている。樹脂部66は、受けねじ64よりも凹部の奥側に挿入されている。受けねじ64は、例えば、調整ケース63の凹部に圧入されている。
【0045】
調整ねじ65は、受けねじ64と螺合するように形成された筒状の部材である。調整ねじ65の外周面には、受けねじ64のねじ山に対応する螺旋状のねじ山が形成されている。受石61は、調整ねじ65における軸方向Zの背面側に固定されている。調整ねじ65における軸方向Zの前面には、ドライバー等の工具に対応した溝が設けられている。
【0046】
調整ねじ65を受けねじ64に対して相対回転させることにより、軸方向Zにおける受石61の位置が調整される。第一軸支部6の調整機構60は、回転軸52の摺動性を調整して不要な摺動負荷を低減することができる。その結果、静電変換機構30における発電効率が向上する。また、回転子51が静電モータのロータである場合、静電モータにおける低消費電流化や高トルク化が実現される。
【0047】
調整ねじ65のねじ山は、樹脂部66の内周面にねじ溝を形成しながら受けねじ64と螺合する。従って、樹脂部66は、調整ねじ65の緩みを抑制することができる。樹脂部66は、静電変換機構30を電子機器に組み込むときの衝撃や、時計1が使用されるときの衝撃に対して調整ねじ65の緩みを抑制し、静電変換機構30の能力低下を防止することができる。
【0048】
第二軸支部8は、第一軸支部6の調整機構60と同様の調整機構を有していてもよい。言い換えると、回転軸52に対して軸方向Zの両側に調整機構が配置されてもよい。このような構成により、帯電膜53と電極11との軸方向Zにおける距離を所望の大きさに制御することが可能である。時計1の姿勢が変化しても帯電膜53と電極11との距離が所望の大きさに維持されることから、安定した発電が実現される。また、静電モータに関しては安定したモータ駆動が実現される。
【0049】
なお、図6に示すように、第一軸支部6が基板10に対して背面側に突出していてもよい。図6に示す第一軸支部6において、調整ケース63の背面63dは、基板10の背面10bよりも軸方向Zの背面側に位置している。調整ケース63の前面63cは、地板7の前面7aと実質的に同一面上に位置している。このような構成により、静電変換機構30の薄型化が実現される。
【0050】
図7に示すように、基板10が第一軸支部6に接着されていてもよい。接着層12は、地板7と基板10との間だけでなく、調整ケース63と基板10の間にも設けられている。基板10の前面10aは、接着層12を介して調整ケース63の背面63dに対して接着されている。このような構成により、基板10を支持する支持力が増加し、基板10の変形がより確実に抑制される。
【0051】
上記のように、本実施形態の第一軸支部6は、受石61と、調整機構60と、を有する。受石61は、軸方向Zにおいて回転軸52と対向し、回転軸52を支持する。調整機構60は、軸方向Zにおける受石61の位置を調整する機構である。保持部72は、調整機構60を保持している。調整機構60は、回転軸52の摺動負荷を調節し、静電変換機構30における効率の最適化を可能とする。
【0052】
[第1実施形態および第2実施形態の変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の変形例について説明する。図8は、変形例に係る時計の平面図、図9は、変形例に係る時計の断面図、図10は、変形例に係る他の時計の平面図である。図9には、図8のIX-IX断面が示されている。
【0053】
変形例の時計1において、上記各実施形態の時計1と異なる点は、例えば、梁部71が複数の梁71a,71bを有する点である。図8に示すように、梁部71は、第一梁71a、および第二梁71bを有する。保持部72は、二本の梁71a,71bを介して外側枠部73とつながっている。第一梁71aは、保持部72から外側枠部73まで9時の方向に向けて延在している。第二梁71bは、保持部72から外側枠部73まで3時の方向に向けて延在している。
【0054】
図9に示すように、基板10は、第一梁71a、保持部72、第二梁71b、および外側枠部73に対して接着されている。二本の梁71a,71bによって基板10が支持されることで、基板10の変形が生じにくい。二本の梁71a,71bの形状は、同一形状である。また、図8に示すように、二本の梁71a,71bの形状は、仮想線L1に関して対称な形状である。仮想線L1は、第一軸支部6の中心を通り、12時の方向および6時の方向に向けて延在する直線である。
【0055】
地板7には、二つの窓部74a,74bが形成されている。それぞれの窓部74a,74bは、二本の梁71a,71b、保持部72、および外側枠部73によって囲まれている。ユーザは、それぞれの窓部74a,74bから回転子51を視認できる。
【0056】
図10に示すように、梁部71は、三本以上の梁を有していてもよい。図10に示す梁部71は、保持部72、第一梁71c、第二梁71d、および第三梁71eを有する。第一梁71cは、保持部72から外側枠部73まで12時の方向に向けて延在している。第二梁71dは、保持部72から外側枠部73まで4時の方向に向けて延在している。第三梁71eは、保持部72から外側枠部73まで8時の方向に向けて延在している。つまり、第一梁71c、第二梁71d、および第三梁71eは、周方向Cに沿って等間隔で配置されている。
【0057】
基板10は、第一梁71c、第二梁71d、第三梁71e、保持部72、および外側枠部73に対して接着される。三本の梁71c,71d,71eによって基板10が支持されることで、基板10の変形が生じにくい。
【0058】
地板7には、三つの窓部74c,74d,74eが形成されている。窓部74cは、第一梁71c、第二梁71d、保持部72、および外側枠部73によって囲まれている。窓部74dは、第二梁71d、第三梁71e、保持部72、および外側枠部73によって囲まれている。窓部74eは、第三梁71e、第一梁71c、保持部72、および外側枠部73によって囲まれている。ユーザは、それぞれの窓部74c,74d,74eから回転子51を視認できる。
【0059】
なお、周方向Cにおける第一梁71c、第二梁71d、および第三梁71eの間隔は、等間隔には限らない。例えば、第一梁71cと第二梁71dとの間の角度は、第二梁71dと第三梁71eとの間の角度よりも小さくてもよい。
【0060】
上記のように、梁部71は、保持部72と外側枠部73とをつなぐ複数の梁を有していてもよい。基板10は、複数の梁に対して接着されている。複数の梁によって基板10が支持されることで、基板10の変形が好適に抑制される。複数の梁は、保持部72から互いに異なる方向に放射状に延在していることが好ましい。複数の梁は、相互の間の角度が均等となるように配置されてもよい。複数の梁の形状や幅は、同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、二本の梁が同一線上に配置されている場合、二本の梁の形状が同一とされてもよく、二本の梁の形状が対称な形状とされてもよい。
【0061】
[第3実施形態]
図11および図12を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記第1実施形態および第2実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図11は、第3実施形態に係る基板の平面図、図12は、第3実施形態に係る時計の断面図である。第3実施形態において、上記第1実施形態および第2実施形態と異なる点は、例えば、基板10と一体の梁部14が設けられている点である。
【0062】
図11に示すように、第3実施形態の基板10には、梁部14、保持部15、および補強部16が一体に設けられている。基板10、梁部14、保持部15、および補強部16は、例えば、透明な合成樹脂やガラスによって一体成型される。梁部14、保持部15、および補強部16は、ガラス板に対する切削加工により形成されてもよい。梁部14、保持部15、および補強部16は、基板10の前面10aに配置されている。つまり、梁部14、保持部15、および補強部16は、前面10aから軸方向Zの前面側に向けて突出している。
【0063】
保持部15は、第一軸支部6と接して保持する部分である。よって、本実施形態では、保持部15、梁部14、および補強部16が、保持板に該当し、保持板として基板10と一体に成形されている。保持部15には、保持孔15aが形成されている。第一軸支部6は、保持孔15aに嵌合される。平面視における保持部15の形状は、例えば、円形である。
【0064】
補強部16は、基板10の縁部10eに配置されている。平面視における補強部16の形状は、例えば、円形である。補強部16は、地板7等に対して固定される。
【0065】
梁部14は、保持部15と補強部16とをつないでいる。梁部14は、第一梁14aおよび第二梁14bを有する。第一梁14aおよび第二梁14bは、保持部15から互いに逆方向に向けて延在している。第一梁14aおよび第二梁14bは、保持部15から補強部16まで半径方向Rに沿って延在している。保持部15と補強部16とは二本の梁14a,14bによってつながっている。
【0066】
図12に示すように、第一軸支部6は、保持部15の保持孔15aによって保持される。第一軸支部6は、調整機構60を有していてもよい。本実施形態の時計1では、基板10と梁部14とが一体化されていることで、基板10の変形が抑制される。梁部14は、塗装等によって着色されてもよく、不透明とされてもよい。
【0067】
なお、梁部14、保持部15、および補強部16は、基板10に対して溶着等によって一体化されてもよい。この場合、例えば、梁部14、保持部15、および補強部16が一体成型された部材が基板10に対して一体化される。なお、梁部14は、三本以上の梁を有していてもよい。この場合、複数の梁は、保持部15から放射状に延在していることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態では、基板10に強度を持たせるため、梁部14や補強部16を設けたが、基板10そのものをたわまないように強度を持たせることができれば、梁部14や補強部16を設ける必要はない。
【0069】
[その他の変形例]
回転子51の前面51aだけでなく、背面にも帯電膜53が設けられてもよい。この場合、回転子51の背面側にも基板10および電極11が配置される。このような構成により、静電変換機構30による発電量を増加させることができる。また、静電モータの場合には駆動トルクを増加させることができる。
【0070】
時計1は、背面側から回転子51が視認可能なように構成されてもよい。この場合、例えば、裏蓋22の少なくとも一部が透明な部材で構成される。回転子51の背面側に透明な基板10および透明な電極11が配置されてもよい。この場合、背面側の基板10は、梁部71と同様の梁部によって支持されてもよい。
【0071】
上記第1実施形態および第2実施形態の梁部71は、地板7の一部には限定されない。梁部71は、外装ケース2に対して固定され、基板10を支持できるように構成されていればよい。
【0072】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 時計
2 外装ケース
3 文字板
4 指針
5 回転部材
6 第一軸支部
7 地板
7a:前面、 7b:背面
8 第二軸支部
9 受け板
10 基板
10a:前面、 10b:背面、 10c:貫通孔、 10d:中心部、
10e:縁部
11 電極
11a:第一電極、 11b:第二電極
12 接着層
13 整流回路
14 梁部
14a:第一梁、 14b:第二梁
15 保持部
16 補強部
21 ケース本体
22 裏蓋
23 風防
30 静電変換機構
31 窓部
41:秒針、 42:分針、 43:時針
51 回転子
51a:前面、 51c:貫通孔
52 回転軸
53 帯電膜
60 調整機構
61 受石
62 穴石
63 調整ケース
63a:底壁部、 63b:貫通孔、 63c:前面、 63d:背面
64:受けねじ、 65:調整ねじ、 66:樹脂部
71 梁部
71a:第一梁、 71b:第二梁、 71c:第一梁、 71d:第二梁、
71e:第三梁
72:保持部、 73:外側枠部、 74:窓部
81:受石、 82:穴石
F1:吸引力、 F2,F3:力
L1 仮想線
C:周方向、 R:半径方向、 Z:軸方向
X1 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12