(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】真空ポンプ、除害装置、および排気ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20231027BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20231027BHJP
F04D 19/04 20060101ALN20231027BHJP
【FI】
F04B49/02 331B
F23G7/06 L ZAB
F23G7/06 N
F23G7/06 M
F04B49/02 331F
F04D19/04 H
(21)【出願番号】P 2020028707
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 良弘
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-057192(JP,A)
【文献】特開平07-246529(JP,A)
【文献】特開2014-231822(JP,A)
【文献】特開2003-129957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F23G 7/06
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを吸入して排出する真空ポンプであって、
駆動源としてのモータと、
前記モータの駆動を制御する第1コントローラと、を備え、
前記第1コントローラは、前記モータの状態を監視する
と共に、前記モータの状態が起動時および停止時を除く特定状態である場合に特定信号を外部に出力する
真空ポンプにおいて、
前記特定状態は、前記モータが通常運転中かつ前記モータの電流が所定の閾値を超えた状態であり、
前記第1コントローラは、前記特定状態の間、前記特定信号を前記外部に出力し、前記モータの電流が前記所定の閾値以下になってから、前記真空ポンプから排出された前記排気ガスが、前記真空ポンプの下流側に設置された除害装置に到達するまでの時間を超える時間が経過するまで、前記特定信号の前記外部への出力を継続する
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
請求項
1に記載の真空ポンプにおいて、
前記外部は、前記除害装置の動作を制御する第2コントローラである
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の真空ポンプにおいて、
前記第1コントローラは、前記モータが起動して通常運転になった時点から特定時間が経過するまで、前記特定信号の前記外部への出力を禁止する
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の複数の真空ポンプから排出された排気ガスが集合する系内に設置され、前記複数の真空ポンプから排出された排気ガスを除害する除害装置であって、
排気ガスを燃焼する燃焼炉と、
前記燃焼炉に燃料ガスを供給するために開閉する電磁弁と、
前記電磁弁の開閉動作を制御する
、前記外部としての第2コントローラと、を備え、
前記第2コントローラは、前記複数の真空ポンプ
のそれぞれの前記第1コントローラから入力された信号の合計数に基づいて前記電磁弁の開度を制御する
ことを特徴とする除害装置。
【請求項5】
請求項1に記載の複数の真空ポンプから排出された排気ガスが集合する系内に設置され、前記複数の真空ポンプから排出された排気ガスを除害する除害装置であって、
排気ガスを燃焼する燃焼炉と、
前記燃焼炉に燃料ガスを供給するために開閉する電磁弁と、
前記電磁弁の開閉動作を制御する
、前記外部としての第2コントローラと、を備え、
前記第2コントローラは、前記複数の真空ポンプ
のそれぞれの前記第1コントローラから入力されたモータ電流の合計値に基づいて、前記電磁弁の開度を制御する
ことを特徴とする除害装置。
【請求項6】
請求項1に記載の真空ポンプと、
請求項4または5に記載の除害装置と、を備える排気ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、除害装置、および排気ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等から排出される排気ガス中には有害成分が含まれているため、排気ガスを除害装置にて無害化する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、真空ポンプのモータを駆動するインバータの出力電力に基づいて、除害装置の運転を制御することが記載されている。特許文献1によれば、インバータの出力が閾値を上回ったか下回ったかにより除害装置の運転を停止・再開することで省エネルギ化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、除害装置の運転を真空ポンプのインバータの出力のみで制御すると、モータの加速時・減速時などで電力が増減した場合も除害装置の運転を停止・再開することとなる。そのため、特許文献1は、省エネルギ化の観点から改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気ガスを除害する際に省エネルギ化を図ることのできる真空ポンプ、除害装置、および排気ガス処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、排気ガスを吸入して排出する真空ポンプであって、駆動源としてのモータと、前記モータの駆動を制御する第1コントローラと、を備え、前記第1コントローラは、前記モータの状態を監視すると共に、前記モータの状態が起動時および停止時を除く特定状態である場合に特定信号を外部に出力する真空ポンプにおいて、前記特定状態は、前記モータが通常運転中かつ前記モータの電流が所定の閾値を超えた状態であり、前記第1コントローラは、前記特定状態の間、前記特定信号を前記外部に出力し、前記モータの電流が前記所定の閾値以下になってから、前記真空ポンプから排出された前記排気ガスが、前記真空ポンプの下流側に設置された除害装置に到達するまでの時間を超える時間が経過するまで、前記特定信号の前記外部への出力を継続することを特徴とする。
【0011】
また、上記構成において、前記外部は、前記除害装置の動作を制御する第2コントローラであることが好ましい。
【0012】
また、上記構成において、前記第1コントローラは、前記モータが起動して通常運転になった時点から特定時間が経過するまで、前記特定信号の前記外部への出力を禁止することが好ましい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、上記した本発明の一態様に係る複数の真空ポンプから排出された排気ガスが集合する系内に設置され、前記複数の真空ポンプから排出された排気ガスを除害する除害装置であって、排気ガスを燃焼する燃焼炉と、前記燃焼炉に燃料ガスを供給するために開閉する電磁弁と、前記電磁弁の開閉動作を制御する、前記外部としての第2コントローラと、を備え、前記第2コントローラは、前記複数の真空ポンプのそれぞれの前記第1コントローラから入力された信号の合計数に基づいて前記電磁弁の開度を制御することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、上記した本発明の一態様に係る複数の真空ポンプから排出された排気ガスが集合する系内に設置され、前記複数の真空ポンプから排出された排気ガスを除害する除害装置であって、排気ガスを燃焼する燃焼炉と、前記燃焼炉に燃料ガスを供給するために開閉する電磁弁と、前記電磁弁の開閉動作を制御する、前記外部としての第2コントローラと、を備え、前記第2コントローラは、前記複数の真空ポンプのそれぞれの前記第1コントローラから入力されたモータ電流の合計値に基づいて、前記電磁弁の開度を制御することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、上記した本発明の一態様に係る真空ポンプと、上記した本発明の別の態様に係る除害装置と、を備える排気ガス処理システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排気ガスを除害する際に省エネルギ化を図ることができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る排気ガス処理システムの全体構成図である。
【
図2】ターボ分子ポンプの内部構成を示す断面図である。
【
図4】TMPコントローラの制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】ターボ分子ポンプのモータの回転開始から停止までの間における、モータ回転数、モータ電流、およびプロセス信号の出力の変化を時間経過と共に示すタイムチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る排気ガス処理システムの全体構成図である。
【
図7】除害装置の運転状態の変化を示すタイムチャートである。
【
図8】除害装置の運転状態の変化を示すタイムチャートである(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る排気ガス処理システムの全体構成図である。
図1に示す排気ガス処理システムは、例えば、半導体製造装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置などにおけるプロセスチャンバ1から排出される排気ガス(プロセスガス、クリーニングガス)を無害化するために利用される。
【0020】
プロセスチャンバ1内では、化学気相反応を利用して成膜するCVD(Chemical Vapor Deposition)処理やエッチング処理等(以下、プロセス処理という)が行われ、プロセスチャンバ1において各種のガスが使用されている。このガスとしては、例えば、半導体素子、液晶パネル、太陽電池の製膜材料ガスであるシラン(SiH4)、NH3、H2や、プラズマCVD装置等のプロセスチャンバ内を例えばプラズマでクリーニングする際のクリーニングガスとして使用するNF3、CF4、C2F6、SF6、CHF3、CF6等のガス状フッ化物、窒素(N2)等の不活性ガスがある。
【0021】
プロセスチャンバ1には、この有害な排気ガスを除去するべく真空引きのために、真空ポンプの一例としてのターボ分子ポンプ(TMP)2が接続され、このターボ分子ポンプ2より下流側にドライポンプ(DRP)3がターボ分子ポンプ2と直列に接続されている。そして、プロセスチャンバ1の排気ガスを除去する際には、まずドライポンプ3で運転開始時にある程度真空引きした後に、さらにターボ分子ポンプ2で必要な低圧にまで真空引きする。なお、ドライポンプ3に代えてロータリーポンプが用いられても良いし、排気ガス処理システムの仕様に応じてドライポンプ3自体を省略することも可能である。
【0022】
プロセスチャンバ1からターボ分子ポンプ2およびドライポンプ3を介して排出された有害な排気ガスは、除害装置4で燃焼分解され、電気集塵装置5で電気集塵された後、セントラルスクラバー6に至るようになっている。このとき、排気ガスは、セントラルスクラバー6により多少の減圧をされつつ除害装置4、電気集塵装置5内に誘導される。なお、除害装置4と電気集塵装置5とが一つの装置として構成される場合もある。
【0023】
次に、排気ガス処理システムを構成する各装置のうち、特にターボ分子ポンプ2および除害装置4について詳しく説明する。なお、電気集塵装置5およびセントラルスクラバー6の構成は公知であるため、詳しい説明は省略する。
【0024】
図2は、ターボ分子ポンプ2の内部構成を示す断面図である。
図2に示すように、ターボ分子ポンプ2は、例えば、ガス排気機構としてターボ分子ポンプ機構部Ptとネジ溝ポンプ機構部Psを備えた複合ポンプである。外装体21の内部にはステータコラム23が立設されている。ステータコラム23の外側には回転体24が設けられている。また、ステータコラム23の内側には、回転体24をその径方向および軸方向に支持する支持手段としての磁気軸受MBや回転体24を回転駆動する駆動源(駆動手段)としてのモータMTなどの各種電装部品が内蔵されている。
【0025】
回転体24の内側には回転軸25が設けられており、回転軸25はステータコラム23の内側に位置し、かつ、回転体24に一体に締結されている。そして、回転軸25を磁気軸受MBで支持することにより、回転体24はその軸方向および径方向所定位置で、回転可能に支持される構造になっており、また、回転軸25をモータMTで回転させることにより、回転体24はその回転中心(具体的には回転軸25中心)回りに回転駆動される構造になっている。回転体24の外周面には複数の動翼26が設けられ、外装体21の内周面には複数の動翼26と対応する位置に複数の固定翼27が設けられている。
【0026】
こうして、ターボ分子ポンプ2は、回転体24の回転により吸気口21Aから上記した排気ガスを吸気し、吸気した排気ガスを排気口21Bから外部へ排気する。
【0027】
上記したモータMTの駆動は、ターボ分子ポンプコントローラ29(以下、TMPコントローラ29という)により制御されている。TMPコントローラ29(第1コントローラ)は、排気ガス処理システム全体を制御するメインコントローラ10および除害装置4を制御する除害装置コントローラ49(第2コントローラ)と電気的に接続されている。なお、TMPコントローラ29と除害装置コントローラ49とは一体で構成されても良い。
【0028】
TMPコントローラ29は、メインコントローラ10からの指令信号に従ってターボ分子ポンプ2のモータMTの駆動を制御すると共に、後述するプロセス信号を所定のタイミングで除害装置コントローラ49に出力する。例えば、TMPコントローラ29には、プロセスチャンバ1内でのCVD処理やエッチング処理等の制御信号(処理開始信号や処理停止信号など)が入力される。この制御信号が入力されると、TMPコントローラ29は、ターボ分子ポンプ2のモータMTを駆動したり停止したりする。
【0029】
TMPコントローラ29は、図示しないが、各種演算等を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、および他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェースを含むハードウェアと、記憶装置に記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。コントローラの各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。なお、TMPコントローラ29によるモータMTの制御の詳細については後述する。
【0030】
図3は、除害装置4の詳細を示す構成図である。
図3に示すように、除害装置4は、燃焼炉40と、水スクラバー装置41と、排水タンク42と、電磁弁45と、を備える。燃焼炉40は、プロセスチャンバ1から排気され、ターボ分子ポンプ2およびドライポンプ3を介して導入された排気ガスが流入する燃焼室40Aと、水スクラバー処理室40Bと、を含む。また、燃焼炉40には、燃料と空気とから成る混合燃料ガスが、電磁弁45を介して導入される。なお、燃料ガスとしては、メタンやプロパンガスが一般的に使われる。
【0031】
燃焼室40Aでは、排気ガスを高温で燃焼分解する。燃焼分解後の排気ガスは、水スクラバー処理室40Bに流入する。水スクラバー処理室40Bでは、シャワー水が噴霧されていて、このシャワー水噴霧領域に燃焼分解後の排気ガスを通すことにより、排気ガス中の粉塵(例えばシランの燃焼分解によって生じるシリカ粉末等)をシャワー水で捕獲したり、排気ガス中の水に溶け易いガス成分(例えばプロセスチャンバ1のクリーニングガスとして使用した3フッ化窒素の燃焼分解で発生するフッ酸)をシャワー水で捕集したりする等、燃焼分解後の排気ガス中から有害成分を除去する。除去した有害成分はシャワー水の排水とともに排水タンク42に流入する。
【0032】
水スクラバー装置41は、燃焼炉40の下流に設けられる。水スクラバー装置41は、筒状スクラバー外装ケース41Aの内側に、シャワー水領域部41Bと、表面積の増大を考慮したリング状充填物を設けたガス接触領域部41Cとを有するとともに、燃焼室40Aおよび水スクラバー処理室40Bで処理されたガス(燃焼分解及び洗浄集塵後の排気ガス)が、筒状スクラバー外装ケース41Aの下部から内部に流入するように構成してある。シャワー水領域部41Bのシャワー水はガス接触領域部41Cにも滴下により供給される。筒状スクラバー外装ケース41A内に流入した燃焼分解及び洗浄集塵後の排気ガスは、ガス接触領域部41Cを通って上方のシャワー水領域部41Bに流入する。この際、排気ガス中の粉塵は、ガス接触領域部41Cの表面積の増大を考慮したリング状充填物を設けた部分やシャワー水領域部41Bのシャワー水との接触によって捕獲される。
【0033】
排水タンク42は、水スクラバー処理室40Bおよび水スクラバー装置41からの排水を回収・貯留する。また、排水タンク42の水面上には排気ガスが流れる流路が形成されている。よって、除害装置4に導入された排気ガスは、燃焼室40A、水スクラバー処理室40B、排水タンク42の水面上、水スクラバー装置41を順に通って電気集塵装置5に送り出される。
【0034】
除害装置コントローラ49には、TMPコントローラ29からプロセス信号(特定信号)が入力され、このプロセス信号に基づいて、除害装置4の動作(運転)を制御する。具体的には、除害装置コントローラ49は、このプロセス信号が入力されている間、電磁弁45を開けて、混合燃料ガスを燃焼室40Aに向けて供給するよう制御する。なお、除害装置コントローラ49のハード構成およびソフト構成は、TMPコントローラ29と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0035】
次に、ターボ分子ポンプ2の制御について、
図4を用いて説明する。
図4は、TMPコントローラ29の制御処理の手順を示すフローチャートである。TMPコントローラ29は、モータMTの状態(回転数および電流値)を常時監視しており、ターボ分子ポンプ2の運転開始指令がTMPコントローラ29に入力されると、
図4に示す制御処理を開始する。
【0036】
まず、TMPコントローラ29は、モータMTの回転開始指令が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。モータMTの回転開始指令が入力された場合(ステップS1/Yes)、TMPコントローラ29は、モータMTの加速処理を行い(ステップS2)、モータMTが定格回転数に到達すると(ステップS3/Yes)、遅延時間aをリセットし(ステップS4)、プロセス中フラグをリセットする(ステップS5)。
【0037】
次いで、TMPコントローラ29は、モータMTの電流を読み込んで(ステップS6)、モータ電流と閾値I(所定の閾値)との大小を判定する(ステップS7)。モータ電流が閾値I以下である場合(ステップS7/No)には、TMPコントローラ29は、遅延時間aに“1”を加えて(ステップS8)、遅延時間aと所定時間dとの大小を判定する(ステップS9)。遅延時間aが所定時間dより大きい場合(ステップS9/Yes)には、TMPコントローラ29はプロセス中フラグをリセットし(ステップS10)、プロセス信号の出力をOFFにする。一方、遅延時間aが所定時間d以下の場合には、TMPコントローラ29は、ステップS10の処理をジャンプしてステップS13に移行する。
【0038】
ステップS7の判定において、モータ電流が閾値Iを超えている場合(ステップS7/Yes)には、ステップS11に進み、TMPコントローラ29は、遅延時間aをリセットし(ステップS11)、プロセス中フラグをセットする(ステップS12)。プロセス中フラグがセットされると、TMPコントローラ29は、プロセス信号を出力(ON)する。そして、ステップS13に進む。
【0039】
このように、モータMTが通常運転中において、モータ電流が閾値Iを超えている場合、すなわちプロセス処理中には、ステップS7/Yes→ステップS11→ステップS12→ステップS13/No→ステップS6→ステップS7/Yesの処理が繰り返されることで、プロセス信号の出力が継続することとなる。そして、モータ電流が閾値I以下になった場合には、ステップS8で遅延時間aが加算されるが、ステップS9で遅延時間aが所定時間dを超えるまでステップS10に進めないので、プロセス中フラグがリセットされない。つまり、プロセス処理が終了してモータ電流が閾値I以下になった後、所定時間dが経過するまで、プロセス信号の出力が継続される。この処理により、除害装置4は、プロセス処理の終了後も所定時間dが経過するまで運転を継続する。
【0040】
次いで、TMPコントローラ29は、モータMTの回転停止指令が入力されたか否かを判定し(ステップS13)、モータMTの回転停止指令が入力された場合(ステップS13/Yes)には、遅延処理(ステップS14)を行って、プロセス中フラグをリセットし(ステップS15)、モータMTの減速処理を行う(ステップS16)。次いで、TMPコントローラ29は、図示しないモータMTの回転数検出センサからの回転数検出信号に基づいて、モータMTの回転が実際に停止しているか否かを判定する(ステップS17)。TMPコントローラ29は、モータMTの回転が停止している場合には、ステップS1に戻り、モータMTの回転が停止していない場合にはステップS16に戻って、モータMTの減速処理(ステップS16)を実行する。
【0041】
一方、ステップS13において、モータMTの回転停止指令が入力されていない場合(ステップS13/No)には、ステップS6に戻る。また、ステップS1でNoの場合は、TMPコントローラ29は回転開始指令が入力されるまでステップS1で待機し、ステップS3でNoの場合はステップS2に戻る。
【0042】
次に、モータMTの運転状態と、モータMTの電流値の変化と、TMPコントローラ29から除害装置コントローラ49に出力するプロセス信号のON/OFF状態について、
図5を用いて説明する。
図5は、ターボ分子ポンプ2のモータMTの回転開始から停止までの間における、モータ回転数、モータ電流値、およびプロセス信号の出力の変化を時間経過と共に示すタイムチャートである。
【0043】
(a)モータMTの回転数の変化
時刻t1において、TMPコントローラ29にモータ回転開始指令が入力されると、TMPコントローラ29は、ターボ分子ポンプ2のモータMTの回転を開始する。モータMTは加速し、モータMTの回転数が増加する(
図4のステップS2参照)。そして、時刻t2のときにモータMTの回転数が定格回転数に到達する(
図4のステップS3参照)。モータMTの回転数が定格回転数に到達すると、モータMTの回転数は一定に保たれる。すなわち、時刻t2から時刻t10までの間、モータMTの回転数は定格回転数に保持されて通常運転中となる。時刻t10において、TMPコントローラ29にモータ回転停止指令が入力されると(
図4のステップS13/Yes参照)、ターボ分子ポンプ2のモータMTは減速し(
図4のステップS14参照)、最終的に時刻t12において停止する(
図4のステップS17/Yes参照)。
【0044】
(b)モータMTの電流の変化
モータ回転開始指令がTMPコントローラ29に入力された時刻t1から、モータMTの電流は瞬時に最大まで上昇し、モータMTの回転数が定格回転数に到達する時刻t2までモータMTの電流は最大値に保たれる。そして、時刻t2において、モータMTの電流はアイドリング時の値まで下がる。
【0045】
モータMTが通常運転中の期間(時刻t2~時刻10)において、プロセスチャンバ1内でプロセス処理が行われると、そのプロセス処理に伴ってプロセスチャンバ1から排気ガスが排出される。ターボ分子ポンプ2は排気ガスを吸入して吐出するためにモータ負荷が上昇し、モータ電流が一時的に上昇する。例えば、
図5のP1~P7の時点においてプロセス処理が行われると、モータ電流の上昇は、モータMTのアイドリング時の電流からモータ電流の最大値未満の範囲で負荷に応じて上昇する。本実施形態では、閾値IはモータMTのアイドリング状態の電流より大きく、モータ電流の最大値より小さい値に設定されており、例えば、モータ電流の最大値の25%程度に設定されている。よって、プロセス処理中は、モータ電流が閾値Iを超えた状態となる。別言すれば、モータ電流値が閾値Iを超えるとプロセス処理中であることが推測できる。
【0046】
(c)プロセス信号のON/OFF
モータMTが回転を開始し、定格回転数に到達し、プロセスチャンバ1によるプロセス処理が開始するまでの間(時刻t1~時刻t3)は、プロセス信号(特定信号)はOFFのままである(
図4のステップS5参照)。そして、モータMTが定格回転数で運転中(通常運転中)において、モータ電流値が閾値Iを超えた状態(特定状態)になる時刻t3のタイミングで、プロセス信号がONとなり、TMPコントローラ29から除害装置コントローラ49にプロセス信号が出力される(
図4のステップS12参照)。除害装置コントローラ49はプロセス信号が入力されると、電磁弁45を開けて混合燃料ガスを燃焼室40Aに導入して、排気ガスの除害処理を行う。
【0047】
そして、プロセス処理が終わる時刻t4から所定時間dが経過するとプロセス信号がOFFに切り換わる。すなわち、プロセス処理が開始する時刻t3からプロセス処理が終了して所定時間dが経過した時刻t5までの間(時刻t3~t5)、プロセス信号がONとなる。よって、時刻t3~時刻t5までの間、除害装置4の運転が行われ、時刻t5以降は除害装置4の運転は停止する。そして、時刻t6においてプロセス処理が開始されると、再びプロセス信号がONとなり、除害装置4が運転を開始し、時刻t8においてプロセス信号がOFFになると除害装置4の運転は停止する。
【0048】
ここで、本実施形態において、「除害装置4の運転を停止する」とは、除害装置4の運転を完全に停止にすることと、除害装置4を待機運転モード(待機運転状態)にして、排気ガスの除害処理を停止すること、との両方が含まれる。すなわち、少なくとも除害装置4による除害処理(除害運転)が停止されれば良い。なお、待機運転モードでは、除害装置4は、前述の混合燃料ガスの消費量が抑えられ、必要際限の燃焼状態が維持される状態となる。
【0049】
また、時刻t9にてプロセス処理が開始されると、プロセス信号がONとなり、モータ回転停止指令がTMPコントローラ29に入力された時刻t10から所定時間d経過後の時刻t11にプロセス信号がOFFとなる。すなわち、モータ回転停止指令から所定時間dが経過するまで、除害装置4は運転されることになる。
【0050】
ここで、所定時間dは、ターボ分子ポンプ2から除害装置4まで排気ガスが流れるのに要する時間を考慮して定められる。例えば、ターボ分子ポンプ2から排出された排気ガスが完全に除害装置4に導入されるまでの時間が10秒である場合、所定時間dは10秒より若干長い12秒に設定される。これは、ターボ分子ポンプ2から排出された排気ガスを除害装置4によって確実に除害するためである。
【0051】
以上のように構成された排気ガス処理システムによれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0052】
ターボ分子ポンプ2を制御するTMPコントローラ29が、モータMTの電流値(モータMTの状態)に基づいて、プロセス処理中であることを正確に検出できるため、メインコントローラ10やその他のコントローラからプロセス処理中である旨の信号をTMPコントローラ29に入力する必要がない。
【0053】
そして、除害装置コントローラ49はTMPコントローラ29から入力されたプロセス信号に基づいて、プロセス処理中のみ除害装置4の運転を行うよう制御することができる。そのため、除害装置4に常時、混合燃料ガスを供給する必要がなくなる。具体的には、プロセス処理中のみ、電磁弁45を開けて混合燃料ガスを燃焼炉40に供給できる。これにより、混合燃料ガスを無駄に除害装置4に供給することが防止でき、除害装置4を省エネ運転できる。
図5の例では、時刻t1~t3、時刻t5~t6、時刻t8~t9、時刻t11~t12の間、除害装置4の運転を停止できるため、時刻t1~時刻12まで除害装置4を運転する場合に比べて、大きな省エネ効果を期待できる。
【0054】
また、プロセス信号のOFFに遅延時間aを設けており、この遅延時間aは、ターボ分子ポンプ2から排出された排気ガスが確実に除害装置4に導入されるまでの時間(所定時間d)が考慮されているため、ターボ分子ポンプ2から排出された排気ガスを確実に除害装置4に導入して除害することができる。しかも、除害装置4はTMPコントローラ29からのプロセス信号に基づいて運転を制御するだけで良いため、除害装置コントローラ49の制御処理が簡単である。また、TMPコントローラ29と除害装置コントローラ49との間の信号の入出力のみで制御を行えるため、排気ガス処理システムの制御を簡素化できる利点もある。
【0055】
(第1実施形態の変形例)
上記した実施形態において、
図5に示すように、時刻t2から特定時間taだけプロセス信号の出力を禁止する構成にすることができる。モータMTが定格回転数になった直後はモータ電流が変動するため、プロセス処理中でないにもかかわらず、モータ電流が閾値Iを超える可能性がある。このような場合であっても、特定時間taだけプロセス信号の出力を禁止すれば、除害装置4がプロセス処理中でないにもかかわらず運転されることが防止され、より一層、省エネ運転が可能となる。なお、特定時間taはモータ電流の変動が小さくなる程度であれば良く、例えば、10秒程度にすれば良い。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る排気ガス処理システムについて説明する。第1実施形態では1つのターボ分子ポンプ2に対して1つの除害装置4が設置される構成であったが、第2実施形態では複数のターボ分子ポンプに対して1つの除害装置4が設置される構成である点が異なる。そのため、第2実施形態では、除害装置4の制御方法が第1実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に第2実施形態を説明する。
【0057】
図6は、本発明の第2実施形態に係る排気ガス処理システムの全体構成図である。
図6に示すように、第2実施形態では、プロセスチャンバ1A,1B,1Cに対してターボ分子ポンプ2A,2B,2Cが設置され、3つのターボ分子ポンプ2A,2B,2Cの下流にドライポンプ3および除害装置4が設置されて構成されている。なお、
図6では、電気集塵装置5およびセントラルスクラバー6の図示を省略している。
【0058】
除害装置4の除害装置コントローラ49には、ターボ分子ポンプ2A,2B,2Cの各TMPコントローラ(図示せず)からそれぞれプロセス信号A,B,Cが入力される。プロセス信号A,B,CのON/OFFについては、第1実施形態と同様である(
図4、5参照)。除害装置コントローラ49は、プロセス信号A,B,Cに基づいて、除害装置4の運転を制御する。
【0059】
第2実施形態では、除害装置4の運転レベルを予め4段階に設定している。運転レベル0は運転停止、運転レベル1は33%負荷運転、運転レベル2は66%負荷運転、運転レベル3は100%負荷運転である。これは、3つのプロセスチャンバ1A,1B,1Cに対して1つの除害装置4が設置されているため、除害装置4の運転レベルを運転停止(待機運転も含む)、33%負荷、66%負荷、100%負荷の4段階としたものである。
【0060】
なお、第2実施形態において、運転レベルの違いは、除害装置4に供給される混合燃料ガスの流量の違いである。例えば、運転レベル1は、電磁弁45(
図3参照)の開度が所定の開度(例えば33%)に設定され、混合燃料ガスの流量が100%負荷運転の約33%となる運転である。運転レベル2についても同様である。
【0061】
そして、除害装置コントローラ49は、プロセス信号の入力数(合計数)に応じて、運転レベルを切り換えて除害装置4を運転するよう制御している。具体的には、プロセス信号の入力数が0の場合は運転レベル0(除害運転停止)、1つの場合は運転レベル1、2つの場合は運転レベル2、3つの場合は運転レベル3が選択されるように制御プログラムが組まれている。
【0062】
図7は、除害装置4の運転状態の変化を示すタイムチャートである。
図7に示すように、プロセス信号A,B,Cが全てOFFの場合、プロセス信号の入力数は0なので、除害装置コントローラ49は除害装置4の運転を停止する。
【0063】
時刻t1において、プロセス信号Aおよびプロセス信号CがONとなって除害装置コントローラ49に入力されると、プロセス信号の入力数が2つとなり、除害装置コントローラ49は運転レベル2(66%負荷)で除害装置4を運転する。
【0064】
時刻t2において、プロセス信号AがOFFになると、プロセス信号の入力数が1つとなるため、除害装置コントローラ49は運転レベル1(33%負荷)で除害装置4を運転する。
【0065】
時刻t3において、プロセス信号A,B,Cが全てONになると、プロセス信号の入力数が3つとなるため、除害装置コントローラ49は運転レベル3(100%負荷)で除害装置4を運転する。
【0066】
時刻t4において、プロセス信号Aおよびプロセス信号CがOFFになると、プロセス信号の入力数が1つとなるため、除害装置コントローラ49は運転レベル1(33%負荷)で除害装置4を運転する。
【0067】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、混合燃料ガスの無駄な消費を抑えることができ、除害装置4の省エネ運転が可能となる。また、プロセス信号の入力がない場合には、除害装置4の運転を停止(運転レベル0)できるため、省エネ効果は高い。しかも、除害装置4の台数を低減できる効果も期待できる。
【0068】
また、排気ガス処理システムの系内を大気が流れる場合には、プロセスチャンバ1A,1B,1Cからターボ分子ポンプ2A,2B,2Cをバイパスして除害装置4に流れる。この場合、ターボ分子ポンプ2A,2B,2Cはアイドリング状態となり、モータ電流値が閾値Iを超えることはなく(
図5参照)、プロセス信号はOFFのままとなる。そのため、除害装置コントローラ49にプロセス信号が入力されなく、無駄に除害装置4が運転することがない。つまり、本実施形態は、プロセス処理中にのみ除害装置4を運転し、系内を大気が流れる場合には除害装置4の運転を停止できるため、省エネ効果が期待できる。
【0069】
(第2実施形態の変形例)
上記した第2実施形態では、除害装置コントローラ49に入力されたプロセス信号の入力数に基づいて、除害装置4の運転レベルを変更した。この構成に代えて、ターボ分子ポンプ2A,2B,2Cの各モータMTの電流値を除害装置コントローラ49に入力し、除害装置コントローラ49が各モータMTの電流値を合計して、その合計値に基づいて、除害装置4の運転レベルを変更しても良い。
【0070】
この場合、除害装置コントローラ49は、モータ電流の合計値が(a)アイドリング状態に相当する値であるか、(b)アイドリング状態に相当する値を超え、かつ閾値Ia以下であるか、(c)閾値Iaを超え、かつ閾値Ib以下であるか、(d)閾値Ibを超え、かつ閾値Ic以下であるかを判定し、その判定結果に基づいて運転レベルを決定する。
【0071】
なお、閾値Iaは、プロセス処理中に1台のターボ分子ポンプのモータに流れる電流に相当する値より若干高い値に設定され、閾値Ibは、プロセス処理中に2台のターボ分子ポンプのモータに流れる電流の合計値に相当する値より若干高い値設定され、閾値Icは、プロセス処理中に3台のターボ分子ポンプのモータに流れる電流の合計値に相当する値より若干高い値に設定される。
【0072】
図8は、変形例に係る除害装置4の運転状態の変化を示すタイムチャートである。
図8に示すように、モータ電流値A,B,Cの合計値はアイドリング状態に相当する値であるため、除害装置コントローラ49は除害装置4の運転を停止する(運転レベル0)。
【0073】
時刻t1において、モータ電流値A,B,Cの合計値は、閾値Iaを超え、かつ閾値Ib以下となるため、除害装置コントローラ49は運転レベル2(66%負荷)で除害装置4を運転する。
【0074】
時刻t2において、モータ電流値A,B,Cの合計値は、アイドリング状態に相当する値を超え、かつ閾値Ia以下となるため、除害装置コントローラ49は運転レベル1(33%負荷)で除害装置4を運転する。
【0075】
時刻t3において、モータ電流値A,B,Cの合計値は、閾値Ibを超え、かつ閾値Ic以下となるため、除害装置コントローラ49は運転レベル3(100%負荷)で除害装置4を運転する。
【0076】
時刻t4において、モータ電流値A,B,Cの合計値は、アイドリング状態に相当する値を超え、かつ閾値Ia以下となるため、除害装置コントローラ49は運転レベル1(33%負荷)で除害装置4を運転する。
【0077】
この変形例のようにモータ電流値を用いても、第2実施形態と同様に除害装置4の省エネ運転が可能となる。この変形例は、モータ電流値に基づいて運転レベルを変更しているので、プロセスチャンバ1A,1B,1Cの処理能力が異なる場合であっても、閾値Ia,Ib,Icを適宜設定することで、好適な除害装置4の運転が可能である。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0079】
例えば、除害装置4は、上記した燃焼式だけでなく、プラズマ式やその他の形式を採用できる。例えば、プラズマ式除害装置の場合は、プラズマ発生装置での消費電力を削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0080】
2 ターボ分子ポンプ(真空ポンプ)
4 除害装置
29 ターボ分子ポンプコントローラ(第1コントローラ)
40 燃焼炉
45 電磁弁
49 除害装置コントローラ(第2コントローラ)
MT モータ