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特許7374025コンクリート養生マット、コンクリート湿潤状態監視装置、コンクリート養生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】コンクリート養生マット、コンクリート湿潤状態監視装置、コンクリート養生装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20231027BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20231027BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20231027BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E21D11/00 Z
E21D11/10 Z
G01N27/22 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020041815
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143495
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕介
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-59327(JP,A)
【文献】特開2012-172375(JP,A)
【文献】特開2007-183245(JP,A)
【文献】特開2015-165072(JP,A)
【文献】特開2018-179995(JP,A)
【文献】特開平4-350257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0084508(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111452203(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-2303169(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されたコンクリートの表面に敷設され前記コンクリートを湿潤状態に維持するマット本体と、
一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、前記マット本体の内部に組み込まれて前記マット本体の湿潤状態に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーと、
を備えることを特徴とするコンクリート養生マット。
【請求項2】
前記マット本体は一定幅と、この幅と直交する長さとを有し、
前記湿潤センサーは、前記マット本体の長さ方向に間隔をおき前記マット本体の幅方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部と、前記マット本体の幅方向の端部において前記マット本体の長手方向において隣り合う前記第1延在部の端部間を接続する複数の接続延在部とを備え、
前記マット本体の長さ方向の一端に位置する前記第1延在部は、前記マット本体の幅方向の端部から突出されている、
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート養生マット。
【請求項3】
前記マット本体が複数の領域に分割して設定され、
前記湿潤センサーは、前記複数の領域のそれぞれに互いに分離独立して組み込まれている、
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート養生マット。
【請求項4】
前記マット本体は一定幅と、この幅と直交する長さとを有し、
前記領域は、前記マット本体の一定の長さ毎に分割して設定されている、
ことを特徴とする請求項3記載のコンクリート養生マット。
【請求項5】
前記領域において、前記湿潤センサーは、前記マット本体の長さ方向に間隔をおき前記マット本体の幅方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部と、前記マット本体の幅方向の端部において前記マット本体の長手方向において隣り合う前記第1延在部の端部間を接続する複数の接続延在部とを備え、
前記領域において前記マット本体の長さ方向の一端に位置する前記第1延在部は、前記マット本体の幅方向の端部から突出されている、
ことを特徴とする請求項4記載のコンクリート養生マット。
【請求項6】
打設されたコンクリートの表面に敷設され前記コンクリートを湿潤状態に維持するマット本体と、一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、前記マット本体の内部に組み込まれて前記マット本体の湿潤状態に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーとを有するコンクリート養生マットと、
前記湿潤センサーの静電容量に対応して変化する物理量を測定する物理量測定部と、
前記物理量測定部で測定された前記物理量に基づいて前記マット本体が乾燥状態にあるか否かを判定する湿潤判定部と、
前記湿潤判定部により前記マット本体が乾燥状態にあると判定された場合に、表示部によって警告表示を行なう警告部と、
を備えることを特徴とするコンクリート湿潤状態監視装置。
【請求項7】
打設されたコンクリートの表面に敷設され前記コンクリートを湿潤状態に維持するマット本体と、一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、前記マット本体の内部に組み込まれて前記マット本体の湿潤状態に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーとを有するコンクリート養生マットと、
前記マット本体に給水を行なう給水部と、
前記湿潤センサーの静電容量に対応して変化する物理量を測定する物理量測定部と、
前記物理量測定部で測定された前記物理量に基づいて前記マット本体が乾燥状態にあるか否かを判定する湿潤判定部と、
前記湿潤判定部により前記マット本体が乾燥状態にあると判定された場合に、前記給水部による給水を実行させる給水制御部と、
を備えることを特徴とするコンクリート養生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート養生マット、コンクリート湿潤状態監視装置、コンクリート養生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水和反応と呼ばれる水とセメントの化学反応により強度が発現することから、打設されたコンクリートの養生を行なう際には、コンクリートの表面の湿潤状態を保持することが重要となる。
そのため、コンクリートの表面をコンクリート養生マットで覆い、コンクリート養生マットに給水してコンクリートの表面を湿潤状態に保ち、コンクリート養生マットが乾燥したならば給水を行なうようにしている。
コンクリート養生マットの湿潤状態を検知する技術として特許文献1には以下の技術が開示されている。
すなわち、リボン型の金属シートを2枚用意し、これら金属シートからなる2つの電極をコンクリートの表面とコンクリート養生マットの間に設置し、2つの電極間に電圧を印加して充電させたのち、電荷を放電して残留電圧を測定し、その残留電圧が所定値より低下したならばコンクリート養生マットが乾燥し湿潤状態が保たれていないと判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-3240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、電極が金属シートで構成されていることから、水分にさらされることによって電極が劣化することが懸念される。
また、コンクリート表面とコンクリート養生マットとの間に電極を設置する作業が必要となることから作業の効率化を図る上で改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は、耐久性の向上を図ると共に作業の効率化を図る上で有利なコンクリート養生マットを提供することにある。また、そのようなコンクリート養生マットを用いたコンクリート湿潤状態監視装置、コンクリート養生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、コンクリート養生マットであって、打設されたコンクリートの表面に敷設され前記コンクリートを湿潤状態に維持するマット本体と、一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、前記マット本体の内部に組み込まれて前記マット本体の湿潤状態に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーとを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記マット本体は一定幅と、この幅と直交する長さとを有し、前記湿潤センサーは、前記マット本体の長さ方向に間隔をおき前記マット本体の幅方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部と、前記マット本体の幅方向の端部において前記マット本体の長手方向において隣り合う前記第1延在部の端部間を接続する複数の接続延在部とを備え、前記マット本体の長さ方向の一端に位置する前記第1延在部は、前記マット本体の幅方向の端部から突出されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記マット本体が複数の領域に分割して設定され、前記湿潤センサーは、前記複数の領域のそれぞれに互いに分離独立して組み込まれていることを特徴とする。
また、本発明は、前記マット本体は一定幅と、この幅と直交する長さとを有し、前記領域は、前記マット本体の一定の長さ毎に分割して設定されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記領域において、前記湿潤センサーは、前記マット本体の長さ方向に間隔をおき前記マット本体の幅方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部と、前記マット本体の幅方向の端部において前記マット本体の長手方向において隣り合う前記第1延在部の端部間を接続する複数の接続延在部とを備え、前記領域において前記マット本体の長さ方向の一端に位置する前記第1延在部は、前記マット本体の幅方向の端部から突出されていることを特徴とする。
また、本発明は、コンクリート湿潤状態監視装置であって、打設されたコンクリートの表面に敷設され前記コンクリートを湿潤状態に維持するマット本体と、一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、前記マット本体の内部に組み込まれて前記マット本体の湿潤状態に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーとを有するコンクリート養生マットと、前記湿潤センサーの静電容量に対応して変化する物理量を測定する物理量測定部と、前記物理量測定部で測定された前記物理量に基づいて前記マット本体が乾燥状態にあるか否かを判定する湿潤判定部と、前記湿潤判定部により前記マット本体が乾燥状態にあると判定された場合に、表示部によって警告表示を行なう警告部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、コンクリート養生装置であって、打設されたコンクリートの表面に敷設され前記コンクリートを湿潤状態に維持するマット本体と、一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、前記マット本体の内部に組み込まれて前記マット本体の湿潤状態に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーとを有するコンクリート養生マットと、前記マット本体に給水を行なう給水部と、前記湿潤センサーの静電容量に対応して変化する物理量を測定する物理量測定部と、前記物理量測定部で測定された前記物理量に基づいて前記マット本体が乾燥状態にあるか否かを判定する湿潤判定部と、前記湿潤判定部により前記マット本体が乾燥状態にあると判定された場合に、前記給水部による給水を実行させる給水制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコンクリート養生マットによれば、一対の電極線を絶縁材で被覆して細長形状に形成され、マット本体の湿潤状態に応じて一対の電極線間に生じる静電容量が変化する湿潤センサーをマット本体の内部に組み込んだ。
したがって、湿潤センサーがマット本体により保護されるため、コンクリート養生マットを繰り返して使用しても湿潤センサーの耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、湿潤センサーは一対の電極線を絶縁体で被覆しているので、一対の電極線が水分によって劣化することを抑制でき、湿潤センサーの耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、コンクリートの養生作業に際しては、コンクリート養生マットをコンクリートの表面に設置して、コンクリート養生マットに給水するだけで済み、湿潤センサーを別途引き回す手間がかからないため、コンクリートの養生に要する作業の効率化を図る上で有利となる。
また、湿潤センサーが、マット本体の長さ方向に間隔をおきマット本体の幅方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部と、マット本体の幅方向の端部においてマット本体の長手方向において隣り合う第1延在部の端部間を接続する複数の接続延在部とを備え、マット本体の長さ方向の一端に位置する第1延在部を、マット本体の幅方向の端部から突出させるようにすると、湿潤センサーがマット本体の全域にわたって偏ることなく配置されるため、マット本体の全域にわたって乾燥状態にあるか否かを確実に判定する上で有利となる。
また、マット本体を複数の領域に分割して設定し、湿潤センサーを、複数の領域のそれぞれに互いに分離独立して組み込むと、マット本体の各領域毎の乾燥状態を的確に判定する上で有利となる。
また、マット本体が一定幅と、この幅と直交する長さとを有し、領域を、マット本体の一定の長さ毎に分割して設定すると、マット本体に対して効率的に複数の領域を設定する上で有利となる。
また、領域において、湿潤センサーが、マット本体の長さ方向に間隔をおきマット本体の幅方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部と、マット本体の幅方向の端部においてマット本体の長手方向において隣り合う第1延在部の端部間を接続する複数の接続延在部とを備え、領域においてマット本体の長さ方向の一端に位置する第1延在部が、マット本体の幅方向の端部から突出させるようにすると、湿潤センサーがマット本体の各領域において領域の全域にわたって偏ることなく配置されるため、各領域における乾燥状態を的確に判定する上で有利となる。
また、本発明のコンクリート湿潤状態監視装置によれば、コンクリート養生マットの内部に組み込まれた湿潤センサーの静電容量に対応して変化する物理量を測定し、測定された物理量に基づいてマット本体が乾燥状態にあるか否かを判定し、マット本体が乾燥状態にあると判定された場合に、表示部によって警告表示を行なうようにした。
したがって、作業者は、コンクリート養生マットが乾燥状態にあることを簡単にかつ確実に把握して、コンクリート養生マットに対する給水作業を行なうことができ、コンクリートの養生作業を効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明のコンクリート養生装置によれば、コンクリート養生マットの内部に組み込まれた湿潤センサーの静電容量に対応して変化する物理量を測定し、測定された物理量に基づいてマット本体が乾燥状態にあるか否かを判定し、マット本体が乾燥状態にあると判定された場合に、自動的にコンクリート養生マットに対する給水を行なうため、省人化を図りつつ、コンクリート養生マットに対する給水作業を行なうことができ、コンクリートの養生作業を効率的に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態のコンクリート養生マットと打設されたコンクリートを示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態のコンクリート養生マットの使用状態を説明する断面図である。
図3】湿潤センサおよび物理量測定部の説明図である。
図4】コンクリート養生マットを用いたコンクリート湿潤状態監視装置の構成を示すブロック図である。
図5】コンクリート湿潤状態監視装置の使用方法を説明するフローチャートである。
図6】コンクリート養生マットを用いたコンクリート養生装置の構成を示すブロック図である。
図7】コンクリート養生装置の使用方法を説明するフローチャートである。
図8】マット本体の複数の領域のそれぞれに湿潤センサーが互いに分離独立して組み込まれている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態のコンクリート養生マットおよびコンクリート湿潤状態監視装置について図面を参照して説明する。
まず、コンクリート養生マットについて説明する。
図1図2に示すように、コンクリート養生マット10は、マット本体12と、湿潤センサー14とを備えている。
マット本体12は、打設されたコンクリート16の表面1602に敷設されコンクリート16を湿潤状態に維持するものである。
マット本体12は、吸水性および保水性を有する材料、例えば、ウレタンフォームや不織布あるいは合成繊維などの材料からシート状に構成され、あるいは、それら複数種類の材料を積層してシート状に構成された保水層を備えている。
また、保水層からの水分の蒸発を抑制するためコンクリート16の表面1602と反対側に位置する保水層の面にフィルムを貼り付けてもよい。
マット本体12は、一定幅Wと、この幅Wと直交する長さLとを有し、例えば、幅W=1m、長さL=30m~50m程度の寸法で形成されている。
【0009】
図3に示すように、湿潤センサー14は、一対の電極線18と、一対の電極線18を被覆する絶縁材20とを含んで構成され、細長状に形成されている。
本実施の形態では、絶縁材20(湿潤センサー14)は、電極線18が並べられた方向の幅と、幅よりも小さい厚さと、幅よりも大きな長さを有する帯板状を呈している。
一対の電極線18は、絶縁材20の内部で絶縁材20の幅方向に一定の間隔をおいて平行して延在している。
図1図2に示すように、湿潤センサー14は、マット本体12の内部に組み込まれてマット本体12の湿潤状態に応じて一対の電極線18間に生じる静電容量が変化するものである。
【0010】
湿潤センサー14は、複数の第1延在部22と、複数の接続延在部24とを備えている。
複数の第1延在部22は、マット本体12の長さL方向に間隔をおきマット本体12の幅W方向のほぼ全長にわたって延在している。
複数の接続延在部24は、マット本体12の幅W方向の端部においてマット本体12の長手方向において隣り合う第1延在部22の端部間を接続している。
マット本体12の長さL方向の一端に位置する第1延在部22は、マット本体12の幅W方向の端部から突出されており、突出した第1延在部22は、電圧検知部36(図3参照)に接続されている。
このように湿潤センサー14は、マット本体12の幅W方向および長さL方向のほぼ全域にわたって配置されている。
【0011】
次に、コンクリート湿潤状態監視装置について説明する。
図4に示すように、コンクリート湿潤状態監視装置26は、上記のコンクリート養生マット10に加えて、物理量測定部28と、湿潤判定部30と、表示部32と、警告部34とを備えている。物理量測定部28と、湿潤判定部30と、表示部32と、警告部34は単一の筐体(不図示)に組み込まれている。
本実施の形態では、物理量測定部28の一部を構成する後述の電圧検知部36(図3参照)と、湿潤判定部30と、警告部34はコンピュータによって構成されている。
すなわち、コンピュータはCPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
コンピュータは、CPUが制御プログラムを実行することにより、電圧検知部36、湿潤判定部30、警告部34として機能する。
【0012】
物理量測定部28は、湿潤センサー14の静電容量に対応して変化する物理量を測定するものである。
図3に示すように、本実施の形態では、物理量測定部28は、入力端子2802と、直流電源2804と、固定抵抗2806と、出力端子2808と、電圧検知部36を含んでいる。
入力端子2802は、一対の電極線18の一端に接続されている。
直流電源2804は、入力端子2802に接続され、両電極線18間に一定の直流電圧Vinを印加する。
固定抵抗2806は、一対の電極線18間に生じる静電容量の変化に応じた充電電圧Etを取り出すものである。
出力端子2808は、固定抵抗2806の両端に接続して設けられている。
電圧検知部36は、出力端子の出力電圧Voutを検知するものである。
【0013】
絶縁被覆された一対の電極線18の間には、一対の電極線18の間及びその周囲に存在する物体の比誘電率に応じたコンデンサC1が形成される。
ここで、空気の比誘電率は1であり、水の比誘電率は80.4である。
このコンデンサC1はレベルセンサー24の長さ方向に沿って並列に接続されたものとなる。
したがって、マット本体12が湿潤している状態、すなわち湿潤センサー14の周囲に水分が存在した状態で形成されるコンデンサC1の静電容量は、マット本体12が乾燥している状態、すなわち湿潤センサー14の周囲に水分が存在しない状態で形成されるコンデンサC1の静電容量よりも大きな値となる。
すなわち、マット本体12の湿潤状態の度合いが高いほど(水分が多いほど)コンデンサC1の静電容量は大きな値となり、マット本体12の湿潤状態の度合いが低いほど(水分が少ないほど)コンデンサC1の静電容量は小さな値となる。
言い換えると、マット本体12の水分量に応じてコンデンサC1の静電容量は変化する。
【0014】
そこで、入力端子2802から両電極線18間に一定の直流電圧Vinを印加し、両電極線18に電荷を与え、両電極線18間の出力電圧Voutを電圧検知部36で測定する。
この場合、出力電圧Vout=Et/(R+2r)の関係が成立することになる。ただし、Rは固定抵抗2806の抵抗値、rは電極線18の固有抵抗である。
【0015】
電圧検知部36による出力電圧Voutの測定結果は、コンデンサC1の静電容量の大きさによって変化し、したがって、出力電圧Voutの測定結果は、マット本体12の湿潤状態(水分量)によって変化する。
そこで、実験により、マット本体12の湿潤状態(水分量)が低く、マット本体12への給水が必要な状態における出力電圧Voutの値を測定し、その値をしきい値電圧Vrとして決定しておけば、Vout<Vrとなった時点でマット本体12が乾燥状態であり給水が必要な状態であると判定することができる。
なお、本実施の形態では、物理量測定部28が湿潤センサー14の静電容量に対応して変化する物理量として電圧(出力電圧Vout)を測定する場合について説明したが、物理量は限定されるものではなく、物理量測定部28が湿潤センサー14の静電容量そのものを物理量として測定するものであってもかまわない。
しかしながら、本実施の形態のようにすると、物理量測定部28の構成が簡素化され、コストダウンを図る上で有利となる。
【0016】
図4に示すように、湿潤判定部30は、物理量測定部28で測定された物理量(電圧値)に基づいてマット本体12が乾燥状態にあるか否かを判定するものである。
本実施の形態では、湿潤判定部30は出力電圧Voutとしきい値電圧Vrとを比較し、Vout<Vrとなった時点でマット本体12が乾燥状態であり給水が必要な状態であると判定する。
【0017】
表示部32は、警告表示を行なうものであり、本実施の形態では、LEDランプで構成されている。
警告部34は、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に、表示部32によって警告表示を行なうものである。
本実施の形態では、警告部34は、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に、表示部32を点滅させ警告表示を行なう。
また、警告部34は、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定されない場合に(マット本体12が湿潤状態にある場合に)、表示部32を滅灯させる。
このような警告表示を行なうことによって、ひと目でマット本体12の湿潤状態(乾燥状態)を把握することができる。
なお、表示部32の警告表示の形態は、点滅に限定されるものではなく、例えば、表示部32を赤色と緑色の2色で発光可能なLEDランプで構成し、マット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に表示部32を赤色で点灯させ、そうでないと判定された場合に表示部32を緑色で点灯させてもよい。
また、表示部32に代えてスピーカーを設け、警告部34によってスピーカーから警告音を発生させてもよい。警告の形態は従来公知の様々な警告の方法を用いることができる。
また、コンクリート湿潤状態監視装置26に無線回線を介して通信可能な通信部を設けると共に、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に、警告部34によってマット本体12が乾燥状態にある旨を示す警告情報を生成させるようにしてもよい。
この場合、警告情報を通信部から無線回線を介して外部の端末、例えば、スマートフォンやタブレット型端末、パーソナルコンピュータなどに送信し、端末によって警告情報を表示させるようにするなど任意である。
このようにすると、コンクリート湿潤状態監視装置26から離れた箇所にいる作業員であっても、端末を介してマット本体12が乾燥状態にある旨を知ることができ、コンクリート16の養生作業を効率的に行なう上で有利である。
【0018】
次に、本実施の形態のコンクリート養生マット10およびコンクリート湿潤状態監視装置26の使用方法について図5のフローチャートを参照して説明する
コンクリート16が型枠内に打設されたならば、コンクリート16の上方を向いた表面1602にその表面1602の全域を覆うようにコンクリート養生マット10を広げて載置し(ステップS10)、湿潤センサー14の一端を物理量測定部28の電圧検知部36に接続し、コンクリート湿潤状態監視装置26を稼働状態とする(ステップS12)。
次いで、コンクリート養生マット10(マット本体12)の全域に給水し、コンクリート養生マット10の全域を湿潤状態としてコンクリート16の養生が可能な状態とする(ステップS14)。
【0019】
湿潤判定部30は、電圧検知部36によって検出された出力電圧Voutが基準電圧Vr未満か否かに基づいてコンクリート養生マット10が乾燥状態にあるか否かを判定する(ステップS16)。
ステップS16の判定結果が否定ならばステップS16に戻る。
ステップS16の判定結果が肯定ならば、警告部34によって表示部32が点滅され、コンクリート養生マット10の乾燥状態の警告表示がなされる(ステップS18)。
表示部32による警告表示を認識した作業員は、コンクリート養生マット10に対して給水を行ない、コンクリート養生マット10を湿潤状態にさせる(ステップS20)。
コンクリート養生マット10が湿潤状態となることで電圧検知部36によって検出された出力電圧Voutが基準電圧Vr以上となることで、湿潤判定部30によりコンクリート養生マット10が乾燥状態に無いと判定され、これにより警告部34によって表示部32が滅灯されて警告表示が解除され(ステップS22)、ステップS16に戻る。
このような動作を繰り返すことによって湿潤状態が維持されたコンクリート養生マット10によってコンクリート16が効果的に養生され、コンクリート16の水和反応によりコンクリート16が硬化し強度が発現する。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態のコンクリート養生マット10によれば、一対の電極線18を絶縁材20で被覆して細長形状に形成され、マット本体12の湿潤状態に応じて一対の電極線18間に生じる静電容量が変化する湿潤センサー14をマット本体12の内部に組み込んだ。
したがって、湿潤センサー14がマット本体12により保護されるため、コンクリート養生マット10を繰り返して使用しても湿潤センサー14の耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、湿潤センサー14は一対の電極線18を絶縁体で被覆しているので、一対の電極線18が水分によって劣化することを抑制でき、湿潤センサー14の耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、コンクリート16の養生作業に際しては、コンクリート養生マット10をコンクリート16の表面1602に設置して、コンクリート養生マット10に給水するだけで済み、湿潤センサー14を別途引き回す手間がかからないため、コンクリート16の養生に要する作業の効率化を図る上で有利となる。
【0021】
また、本実施の形態のコンクリート養生マット10では、一定幅Wと、この幅Wと直交する長さLとを有し、湿潤センサー14は、マット本体12の長さL方向に間隔をおきマット本体12の幅W方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部22と、マット本体12の幅W方向の端部においてマット本体12の長手方向において隣り合う第1延在部22の端部間を接続する複数の接続延在部24とを備え、マット本体12の長さL方向の一端に位置する第1延在部22は、マット本体12の幅W方向の端部から突出されているが、マット本体12の内部に組み込まれる湿潤センサー14の形状は実施の形態に限定されず、任意である。
しかしながら、本実施の形態のようにすると、湿潤センサー14がマット本体12の全域にわたって偏ることなく配置されるため、マット本体12の全域にわたって乾燥状態であるか否かを確実に判定する上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態のコンクリート湿潤状態監視装置26では、コンクリート養生マット10の内部に組み込まれた湿潤センサー14の静電容量に対応して変化する物理量を測定し、測定された物理量に基づいてマット本体12が乾燥状態にあるか否かを判定し、マット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に、表示部32によって警告表示を行なうようにした。
したがって、作業者は、コンクリート養生マット10が乾燥状態にあることを簡単にかつ確実に把握して、コンクリート養生マット10に対する給水作業を行なうことができ、コンクリート16の養生作業を効率的に行なう上で有利となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態に係るコンクリート養生装置38について図6を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態のコンクリート養生装置38は、第1の実施の形態のコンクリート養生マット10を用いて自動的に給水を行なうようにしたものである。
【0024】
図6に示すように、コンクリート養生装置38は、コンクリート養生マット10と、物理量測定部28と、湿潤判定部30と、給水制御部40と、給水部42を備えている。
コンクリート養生マット10と、物理量測定部28と、湿潤判定部30とは第1の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
給水部42は、コンクリート養生マット10に対して給水を行なうものであり、例えば、貯水タンクから供給される水をコンクリート養生マット10まで供給する管路と、管路の端部に設けられコンクリート養生マット10に水を散水する散水口と、管路に設けられた電磁弁などを含んで構成されている。
給水制御部40は、コンピュータによって構成され、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に、給水部42による給水を実行させるものである。
すなわち、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定された場合に、一定時間電磁弁を開弁してコンクリート養生マット10に対して給水を行なう。また、湿潤判定部30によりマット本体12が乾燥状態にあると判定されない場合に、電磁弁を閉弁してコンクリート養生マット10に対する給水を停止する。
【0025】
次に、コンクリート養生装置38の使用方法について図7のフローチャートを参照して説明する。
コンクリート16が型枠内に打設されたならば、コンクリート16の上方を向いた表面1602にその表面1602の全域を覆うようにコンクリート養生マット10を広げて載置する(ステップS50)。
また、コンクリート養生マット10に対して給水ができるように給水部42を設置する(ステップS52)。
次いで、湿潤センサー14の一端を物理量測定部28の電圧検知部36に接続し、コンクリート養生装置38を稼働状態とする(ステップS54)。
次いで、給水部42によりコンクリート養生マット10(マット本体12)の全域に給水し、コンクリート養生マット10の全域を湿潤状態としてコンクリート16の養生が可能な状態とする(ステップS56)。
【0026】
湿潤判定部30は、電圧検知部36によって検出された出力電圧Voutが基準電圧Vr未満か否かに基づいてコンクリート養生マット10が乾燥状態にあるか否かを判定する(ステップS58)。
ステップS58の判定結果が否定ならばステップS58に戻る。
ステップS58の判定結果が肯定ならば、給水制御部40により給水部42を制御して一定時間、コンクリート養生マット10に対して給水を行ない(ステップS60)、ステップS58に戻る。
このような動作を繰り返すことによって自動的にコンクリート養生マット10への給水が実行されることでコンクリート養生マット10の湿潤状態が維持され、湿潤状態が維持されたコンクリート養生マット10によってコンクリート16が効果的に養生され、コンクリート16の水和反応によりコンクリート16が硬化し強度が発現する。
【0027】
このようなコンクリート養生装置38によれば、コンクリート養生マット10が乾燥状態になると、自動的にコンクリート養生マット10に対する給水を行なうため、省人化を図りつつ、コンクリート養生マット10に対する給水作業を行なうことができ、コンクリート16の養生作業を効率的に行なう上で有利となる。
【0028】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態のコンクリート養生マット10について図8を参照して説明する。
第3の実施の形態は、マット本体12が複数の領域Aに分割して設定されると共に、湿潤センサー14は、複数の領域Aのそれぞれに互いに分離独立して組み込まれている点が第1の実施の形態と異なっている。
第3の実施の形態では、図6に示すように、マット本体12は一定幅Wと、この幅と直交する長さLとを有している。
領域Aは、マット本体12の一定の長さΔL毎に分割して設定されている。
領域Aにおいて、湿潤センサー14は、マット本体12の長さL方向に間隔をおきマット本体12の幅W方向のほぼ全長にわたって延在する複数の第1延在部22と、マット本体12の幅W方向の端部においてマット本体12の長手方向において隣り合う第1延在部22の端部間を接続する複数の接続延在部24とを備えている。
領域Aにおいてマット本体12の長さL方向の一端に位置する第1延在部22は、マット本体12の幅W方向の端部から突出されている。
【0029】
第3の実施の形態のコンクリート養生マット10によれば、マット本体12の各領域A毎に乾燥状態であるか否かをきめ細かく判定することができる。
例えば、幅Wが1m、長さLが50mのマット本体12の場合、長さL方向の全域にわたって、湿潤状態、すなわち、マット本体12に含まれる水分量が均一になるとは限らず、気温や風の状態、打設されたコンクリート16の体積などの影響によって、ある領域Aでは湿潤状態が維持されていても、別のある領域Aでは乾燥状態となることが想定される。
この場合、単一の湿潤センサー14をマット本体12の内部に組み込んだ場合は、50mにわたるマット本体12の全体での平均的な乾燥状態であるか否かの判定はできるものの、きめ細かく乾燥状態にあるか否かを判定することは難しい。
したがって、マット本体12の各領域A毎に第1の実施の形態で説明したコンクリート湿潤状態監視装置26を適用すれば、マット本体12の各領域A毎の湿潤状態に基づいて乾燥状態となった領域Aに対してきめ細かく警告を行なうことができ、乾燥状態と判定された領域Aに対して適切に給水を行なうことができ、効率的にかつきめ細かくコンクリート16の養生作業を行なう上で有利となる。
また、マット本体12の各領域A毎に第2の実施の形態で説明したコンクリート養生装置38を適用すれば、マット本体12の各領域A毎の湿潤状態に基づいて乾燥状態と判定された領域Aに対してきめ細かく給水を行なうことができ、省人化を図りつつ効率的にかつきめ細かくコンクリート16の養生作業を行なう上で有利となる。
【0030】
なお、第3の実施の形態では、一定幅Wと、この幅と直交する長さLとを有するマット本体12を、マット本体12の一定の長さΔL毎に分割して複数の領域Aを設定した場合について説明したが、複数の領域Aの設定は任意である。
ただし、本実施の形態のようにすると、一定幅Wと、この幅と直交する長さLとを有するマット本体12に対して効率的に複数の領域Aを設定する上で有利となる。
【0031】
また、第3の実施の形態では、領域Aにおいて、湿潤センサー14は、複数の第1延在部22と複数の接続延在部24とを備え、領域Aにおいてマット本体12の長さL方向の一端に位置する第1延在部22は、マット本体12の幅W方向の端部から突出されたものとしたが、マット本体12の各領域Aに組み込まれる湿潤センサー14の形状は実施の形態に限定されず、任意である。
しかしながら、本実施の形態のようにすると、湿潤センサー14がマット本体12の各領域Aにおいて領域Aの全域にわたって偏ることなく配置されるため、各領域Aにおける乾燥状態であるか否かを確実に判定する上で有利となる。
【0032】
また、実施の形態では、コンクリート養生マット10をコンクリート16の上方を向いた表面(上面)1602に載置した場合について説明したが、コンクリート養生マット10をコンクリート16の側方を向いた表面(側面)に重ね合わせて載置してもよいことは無論である。
【符号の説明】
【0033】
10 コンクリート養生マット
12 マット本体
14 湿潤センサー
16 コンクリート
1602 表面
18 電極線
20 絶縁材
22 第1延在部
24 接続延在部
26 コンクリート湿潤検知装置
28 物理量測定部
2802 入力端子
2804 直流電源
2806 固定抵抗
2808 出力端子
30 湿潤判定部
32 表示部
34 警告部
36 電圧検知部
38 コンクリート養生装置
40 給水制御部
42 給水部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8