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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
B60R21/264
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020074119
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169293
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-076011(JP,A)
【文献】特開2014-196092(JP,A)
【文献】特開2014-196093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された第1ガス発生剤、および第1点火装置と、
前記ハウジング内に配置され、前記第1点火装置とは独立して作動する第2点火装置と、
前記ハウジング内を上下に分割する隔壁部材であって、前記第1点火装置の作動により燃焼される前記第1ガス発生剤が収容される第1燃焼室を上側に形成し、前記第2点火装置の作動により燃焼される第2ガス発生剤が収容される第2燃焼室を下側に形成する隔壁部材と、
前記ハウジングに設けられ、前記第1燃焼室と該ハウジングの外部とを連通させるガス排出口と、
前記隔壁部材に設けられ、前記第1ガス発生剤が燃焼することによって前記第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となった場合に閉塞状態から該第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させる連通状態になる連通部であって、前記第1燃焼室を画定する前記ハウジングの部位の強度よりも開口圧力が小さい連通部と、
を備える、ガス発生器。
【請求項2】
前記ハウジングの前記第2燃焼室を画定する部位の少なくとの一部に設けられた脆弱部を更に備え、
前記脆弱部の開裂圧力は、前記連通部の前記開口圧力よりも大きい、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記脆弱部の開裂圧力は、前記ハウジングの前記第1燃焼室を画定する部位の強度よりも小さい、
請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記ハウジングの前記第2燃焼室を画定する部位の少なくとの一部に形成され、該ハウジングの部材厚さが他部より薄い薄肉部である、
請求項2又は請求項3に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記連通部は、前記隔壁部材の少なくとも一部に形成され、該隔壁部材の部材厚さが他部より薄い薄肉部である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記隔壁部材に設けられ、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させる流通孔と、
前記第1燃焼室の側から前記流通孔を覆うことで該流通孔を閉塞する閉塞部材と、
を更に備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記連通部は、前記隔壁部材を貫通して形成された貫通孔と、前記第1燃焼室の側から該隔壁部材に貼着されて該貫通孔を閉塞するシール部材と、を有し、前記第1燃焼室内が前記異常燃焼圧力以上となった場合に前記シール部材が開裂することで該第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記連通部は、前記第2ガス発生剤が燃焼することによって該第2燃焼室内が前記第1燃焼室内よりも高い圧力となった場合に前記シール部材の少なくとも一部が前記隔壁部材から剥離することで該第2燃焼室と前記第1燃焼室とを連通させる、
請求項7に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記隔壁部材に設けられ、前記第1ガス発生剤が燃焼したときは開口せず、前記第2ガス発生剤が燃焼したときに開口して、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させる流通孔を有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点火装置によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生剤を燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスを所望の動作を実現するための動力源として供給するガス発生器が知られている。特許文献1には、ハウジング内が分離板で第1室と第2室に区切られ、第1室及び第2室がガス発生剤を収容する2段式のインフレータが記載されている。特許文献2には、ハウジング内部の収容空間にガス発生剤が配置されたガス発生器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7950693号明細書
【文献】特開2014-196092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス発生器においてガス発生剤の異常燃焼が生じると、ガス発生器のハウジングが破壊されて、当該ガス発生器の部材や破片等が周囲に飛散する虞がある。この異常燃焼は、ガス発生器の外部から伝わる衝撃によってガス発生剤が粉砕されたり、ガス発生器が搭載された車両等において火災が発生した場合等で生じる可能性がある。ガス発生剤の異常燃焼が生じた場合に、ガス発生器の部材が周囲に飛散するのは安全性面において好ましくない。
【0005】
本開示は、上記した問題に鑑み、ガス発生器の安全性を向上し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のガス発生器では、ハウジング内を上下に分割する隔壁部材に設けられ、第1ガス発生剤が燃焼することによって第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となった場合に閉塞状態から連通状態になる連通部を設けた。
【0007】
具体的には、本開示のガス発生器は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された第1点火装置と、前記ハウジング内に配置され、前記第1点火装置とは独立して作動する第2点火装置と、前記ハウジング内を上下に分割する隔壁部材であって、前記第1点火装置の作動により燃焼される第1ガス発生剤が収容される第1燃焼室を上側に形成し、前記第2点火装置の作動により燃焼される第2ガス発生剤が収容される第2燃焼室を下側に形成する隔壁部材と、前記ハウジングに設けられ、前記第1燃焼室と該ハウジングの外部とを連通させるガス排出口と、前記隔壁部材に設けられ、前記第1ガス発生剤が燃焼することによって前記第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となった場合に閉塞状態から該第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させる連通状態になる連通部であって、前記第1燃焼室を画定する前記ハウジングの部位の強度よりも開口圧力が小さい連通部と、を備える。
【0008】
連通部の開口圧力は、ハウジングの第1燃焼室を画定する部位の強度よりも小さい。なお、連通部の開口圧力が当該部位の強度よりも小さいとは、当該部位を破壊するのに必要な力よりも、連通部が開口状態となるのに必要な力が小さいということである。このため
、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合には、第1燃焼室を画定するハウジングの部位が破壊される前に連通部が優先的に開口状態になる。また本開示での「異常燃焼圧力」とは、例えばガス発生剤の燃焼表面積の極端な増加、ガス発生剤の経年変化、または何らかの原因によるガス排出経路の閉塞等のガス発生器の通常作動時には発生しない現象が原因で燃焼室内の圧力が設計圧力を上回りハウジングの強度以上に上昇する圧力のことである。本開示のガス発生器は、第1ガス発生剤の異常燃焼が生じて第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となった場合であっても、第1燃焼室を画定するハウジングの部位が破壊される前に連通部が連通状態となり、圧力を第2燃焼室に開放させて、ハウジング内の全体の圧力(第1燃焼室および第2燃焼室内の圧力)を低下させることができる。これによって、ガス発生器は、第1ガス発生剤の異常燃焼が生じた場合にガス発生器の部材が飛散するのを抑制できるため、安全性を向上できる。
【0009】
上記のガス発生器は、前記ハウジングの前記第2燃焼室を画定する部位の少なくとの一部に設けられた脆弱部を更に備え、前記脆弱部の開裂圧力は、前記連通部の前記開口圧力よりも大きくてもよい。ここで、脆弱部の開裂圧力が連通部の開口圧力よりも大きいとは、連通部が開口状態となるのに必要な力よりも、脆弱部を起点としてハウジングの第2燃焼室を画定する部位が開裂するのに必要な力が大きいということである。このため、第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となって連通部が開口状態となり、第1燃焼室と第2燃焼室が連通して第1燃焼室および第2燃焼室が同じ圧力となった場合であっても、その圧力が脆弱部の開裂圧力以下である場合は脆弱部が開裂しない。これによって、ガス発生器は、ハウジングの第2燃焼室を画定する部位の不必要な開裂を抑制できる。
【0010】
上記のガス発生器において、前記脆弱部の開裂圧力は、前記ハウジングの前記第1燃焼室を画定する部位の強度よりも小さくてもよい。脆弱部の開裂圧力が第1燃焼室を画定するハウジングの部位の強度よりも小さいとは、当該部位を破壊するのに必要な力よりも、脆弱部を起点としてハウジングの第2燃焼室を画定する部位が開裂するのに必要な力が小さいということである。このため、第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となって連通部が連通状態となり、且つ、第1燃焼室および第2燃焼室内の圧力がさらに上昇し脆弱部の開裂圧力以上になった場合に、脆弱部に応力を集中させ、ハウジングの第1燃焼室を画定する部位が破壊される前に脆弱部を起点としてハウジングの第2燃焼室を画定する部位を優先的に開裂させる。ガス発生器は、第1ガス発生剤の異常燃焼が生じて第1燃焼室および第2燃焼室内が異常燃焼圧力より圧力が高くなった場合であっても、ハウジングの第1燃焼室を画定する部位が破壊される前にハウジングの第2燃焼室を画定する部位が開裂し、ハウジング外部に圧力を開放させることができる。また一般的に、ガス発生器が車両に搭載されるエアバッグシステムに用いられる場合にはガス排出口を有する第1燃焼室側が車両の乗員側に対向するように配置される。ガス発生器は、第1ガス発生剤の異常燃焼が生じた場合にガス発生器の部材が乗員側に飛散するのを抑制できるため、安全性を向上できる。
【0011】
上記のガス発生器において、前記脆弱部は、前記ハウジングの前記第2燃焼室を画定する部位の少なくとの一部に形成され、該ハウジングの部材厚さが他部より薄い薄肉部であってもよい。
【0012】
上記のガス発生器において、前記連通部は、前記隔壁部材の少なくとも一部に形成され、該隔壁部材の部材厚さが他部より薄い薄肉部であってもよい。
【0013】
上記のガス発生器は、前記隔壁部材に設けられ、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させる流通孔と、前記第1燃焼室の側から前記流通孔を覆うことで該流通孔を閉塞する閉塞部材と、を更に備えていてもよい。
【0014】
上記のガス発生器において、前記連通部は、前記隔壁部材を貫通して形成された貫通孔と、前記第1燃焼室の側から該隔壁部材に貼着されて該貫通孔を閉塞するシール部材と、を有し、前記第1燃焼室内が前記異常燃焼圧力以上となった場合に前記シール部材が開裂することで該第1燃焼室と前記第2燃焼室とを連通させてもよい。ガス発生器は、第1ガス発生剤の異常燃焼が生じて第1燃焼室内が異常燃焼圧力以上となった場合にシール部材が開裂することで第1燃焼室と第2燃焼室とを連通させる。シール部材を第1燃焼室側から開裂させるのに必要な力は、ハウジングの第1燃焼室を画定する部位を破壊するのに必要な力よりも小さい。ガス発生器は、第1ガス発生剤の異常燃焼が生じた場合にガス発生器の部材が飛散するのを抑制できるため、安全性を向上できる。
【0015】
上記のガス発生器において、前記連通部は、前記第2ガス発生剤が燃焼することによって該第2燃焼室内が前記第1燃焼室内よりも高い圧力となった場合に前記シール部材の少なくとも一部が前記隔壁部材から剥離することで該第2燃焼室と前記第1燃焼室とを連通させてもよい。ガス発生器の通常の作動時において、第2ガス発生剤が燃焼することによって第2燃焼室内が第1燃焼室内よりも高い圧力となった場合にシール部材の少なくとも一部が隔壁部材から剥離することで第2燃焼室と第1燃焼室とが連通する。これにより、ガス発生器は、第2ガス発生剤の燃焼ガスを第1燃焼室を通じてガス排出口から放出できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の技術によれば、ガス発生器の安全性を向上可能できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係るガス発生器の軸方向の断面図である。
図2図2は、実施形態2に係るガス発生器の軸方向の断面図である。
図3図3は、実施形態3に係るガス発生器の軸方向の断面図である。
図4図4は、実施形態1に係るガス発生器の隔壁部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、請求項によってのみ限定される。
【0019】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るガス発生器100の軸方向の断面図である。なお、本実施形態に係るガス発生器100は、後述するように2つの燃焼室がガス発生器100の中心軸CAに対して上下に配置され、各燃焼室に対応する点火装置及びガス発生剤が配置されたいわゆるデュアルタイプのガス発生器である。ガス発生器100は、ハウジング1と、内筒部材4と、隔壁部材5と、フィルタ6と、第1点火器10と、第2点火器20と、を備える。ハウジング1内の空間は、隔壁部材5によって、第1点火器10及び第1ガス発生剤110が収容される第1燃焼室11と、第2点火器20及び第2ガス発生剤120が収容される第2燃焼室12と、に分割されている。隔壁部材5には、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通する流通孔15が形成されている。
【0020】
ガス発生器100は、各燃焼室内に充填されたガス発生剤を第1点火器10と第2点火器20とによって燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング1に形成されたガス排出口13から放出するように構成されている。以下、ガス発生器100の各構成について詳しく説明する。
【0021】
ハウジング1は、金属製の上部シェル2及び下部シェル3を有する。上部シェル2及び下部シェル3は、有底略円筒形状を有し、互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されている。これにより、ハウジング1は、軸方向の両端が閉じた短尺円筒状に形成される。ここで、ハウジング1の軸方向に沿う方向をガス発生器100の上下方向と定義し、上部シェル2側(図1の紙面における上側)をガス発生器100の上側とし、下部シェル3側(図1の紙面における下側)をガス発生器100の下側とする。
【0022】
上部シェル2は、上側周壁部21と天板部22を有する。天板部22は、上面視で概ね円形状を有する。上側周壁部21は、天板部22の周囲を囲み、天板部22から概ね垂直下方に延在する環状の壁面を形成している。上側周壁部21の上端側に天板部22が繋がっており、上側周壁部21の下端側に上部シェル2の開口部が形成されている。上部シェル2は、上側周壁部21と天板部22によって凹状の内部空間を形成している。上部シェル2の内部空間内に第1ガス発生剤110が充填される第1燃焼室11が形成される。また、上側周壁部21の下端側には、上部シェル2の開口部から天板部22に向かって順に、嵌合壁部24、突き当て部23が形成されている。嵌合壁部24は、突き当て部23を介して上側周壁部21と繋がっている。嵌合壁部24の内径は、上側周壁部21の内径より大きく形成されている。
【0023】
下部シェル3は、下側周壁部31と底板部32を有する。底板部32は、天板部22と同様に上面視で概ね円形状を有する。下側周壁部31は、底板部32の周囲を囲み、底板部32から概ね垂直上方に延在する環状の壁面を形成している。下側周壁部31の下端側に底板部32が繋がっており、下側周壁部31の上端側に下部シェル3の開口部が形成されている。下部シェル3は、下側周壁部31と底板部32によって凹状の内部空間を形成している。下部シェル3の内部空間内に第2ガス発生剤120が充填される第2燃焼室12が形成される。また、底板部32には、第1点火器10が固定される第1嵌合孔321と第2点火器20が固定される第2嵌合孔322とが形成されている。下側周壁部31の外径は、上部シェル2の嵌合壁部24の内径と概ね同等に形成されており、下側周壁部31が上部シェル2の嵌合壁部24に嵌入されている。
【0024】
上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とによって、ハウジング1には、天板部22と底板部32とを接続する筒状の周壁部が形成されている。
【0025】
また、上部シェル2の上側周壁部21には、ガス排出口13が周方向に並んで複数形成されている。ガス排出口13は、シールテープ14により閉塞されている。このシールテープ14には、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が用いられる。シールテープ14によりハウジング1内の気密性が確保されている。
【0026】
内筒部材4は、内部に第1点火器10が収容される筒状の部材である。内筒部材4は、下部シェル3の底板部32に接合される基端部41と、基端部41に繋がるとともに基端部41から上方に延在する周壁部42と、周壁部42に繋がる接続部43と、接続部43に繋がるとともに周壁部42よりも縮径して接続部43から上方に延在する嵌合部44と、嵌合部44に繋がるとともに該嵌合部44から内側に曲がって終端し、その端縁によって内筒部材4の開口部を形成する先端部45と、を有する。図1に示すように、内筒部材4は、基端部41が下部シェル3の底板部32における第1嵌合孔321の近傍に当接し、且つ、第1嵌合孔321に固定された第1点火器10が内筒部材4の内部に収容されるように、底板部32に固定されている。また、内筒部材4の周壁部42及び嵌合部44は上部シェル2の天板部22に向かって上方に延在した状態となっている。
【0027】
隔壁部材5は、ハウジング1内を上下に分割し、第1燃焼室11をハウジング内の上側に形成し、第2燃焼室12をハウジング1内の下側に形成する。隔壁部材5は、ハウジン
グ1の軸方向と概ね直交する方向に延在してハウジング1の内部空間を上下に分割する円盤状の分割壁部51と、分割壁部51に繋がるとともに該分割壁部51の周縁から下部シェル3の下側周壁部31の内周面に沿って上方に延在する筒状の嵌合壁部52と、嵌合壁部52に繋がるとともに該嵌合壁部52の上端からハウジング1の径方向外側に延在する終端部53と、を有する。図1に示すように、終端部53が下部シェル3の下側周壁部31の上端面に配置されることで、隔壁部材5が下部シェル3によって支持されている。
【0028】
図1に示すように、ハウジング1の内部空間は、隔壁部材5によって、ハウジング1の軸方向における天板部22側(上側)に位置する第1燃焼室11と、ハウジング1の軸方向における底板部32側(下側)に位置する第2燃焼室12と、に分割される。第1燃焼室11は、ガス排出口13を介してハウジング1の外部(即ち、ガス発生器100の外部)と連通している。また、分割壁部51には、内筒部材4が貫通する貫通孔511が形成されている。また、嵌合部44の一部及び先端部45が第1燃焼室11内に突出するように内筒部材4が貫通孔511を貫通しており、内筒部材4の内部空間は、先端部45に形成された開口部を介して上部シェル2の上側周壁部21の内部空間と繋がることで、第1燃焼室11の一部を形成している。なお、内筒部材4の内部には、内筒部材4の内部空間を上下に仕切る、仕切部材が配置されてもよい。内筒部材4の内部空間のうち当該仕切部材よりも下方側の空間に第1点火器10と伝火薬が収容されていてもよい。この構成によれば、第1点火器10の作動により伝火薬が燃焼し、その燃焼ガスによって第1ガス発生剤110を燃焼させることができる。仕切部材は、伝火薬の燃焼ガスによる第1ガス発生剤110の着火を妨げないように、伝火薬の燃焼ガスにより速やかに燃焼、溶融又は消滅する材料で形成される。
【0029】
第1燃焼室11には、第1点火器10(本開示でいう「第1点火装置」の一例)と該第1点火器10の作動により燃焼される第1ガス発生剤110とが収容されている。第1点火器10は、下部シェル3の第1嵌合孔321に固定され、内筒部材4の開口部から天板部22側に突出しないように内筒部材4内に収められた状態となっている。また、第1燃焼室11における天板部22と第1ガス発生剤110との間には、第1ガス発生剤110の振動を抑制するために、第1ガス発生剤110を付勢するリテーナ7が配置されている。
【0030】
第2燃焼室12には、第2点火器20(本開示でいう「第2点火装置」の一例)と該第2点火器20の作動により燃焼される第2ガス発生剤120とが収容される。第2点火器20は、下部シェル3の第2嵌合孔322に固定されている。第2点火器20は、第1点火器10と独立して作動する。第2燃焼室12における隔壁部材5と第2ガス発生剤120との間には、第2ガス発生剤120の振動を抑制するために、第2ガス発生剤120を付勢するリテーナ8が配置されている。
【0031】
第1点火器10及び第2点火器20は、金属製のカップ体C1、C2の内部に収容された点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物を外部に放出することで、第1ガス発生剤110及び第2ガス発生剤120を燃焼させる。なお、第1点火装置は、第1点火器10のみで構成されていてもよいし、第1点火器10の外部に配置された伝火薬や点火薬を含んで構成されていてもよい。同様に、第2点火装置は、第2点火器20のみで構成されていてもよいし、第2点火器10の外部に配置された伝火薬や点火薬を含んで構成されていてもよい。
【0032】
第1ガス発生剤110には、比較的燃焼温度の低いガス発生剤が用いられる。第1ガス発生剤110の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。また、第1ガス発生剤110には、
例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0033】
第2ガス発生剤120にも、第1ガス発生剤110と同様のものを用いることができる。なお、第1ガス発生剤110や第2ガス発生剤120は、上述のものに限定されない。また、第1ガス発生剤110と第2ガス発生剤120は、同種類、同一形状、同一寸法のガス発生剤であってもよいし、別種類、別形状、別寸法のガス発生剤であってもよい。
【0034】
また、隔壁部材5において内筒部材4の嵌合部44が貫通する貫通孔511の径は、嵌合部44の外径よりも大きく形成されている。これにより、内筒部材4の外周面と貫通孔511の内壁との間には、内筒部材4を取り囲む環状の隙間が形成されている。当該隙間によって、隔壁部材5に設けられ、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる流通孔15が形成される。流通孔15は、第1ガス発生剤110が燃焼したときは開口せず、第2ガス発生剤120が燃焼したときに開口するように、閉塞部材9によって閉塞されている。閉塞部材9は、内筒部材4の外周面と貫通孔511の内壁との間の環状の隙間を完全に覆う大きさで内筒部材4の嵌合部44に圧入されており、第1燃焼室11側から流通孔15を覆うことで流通孔15を閉塞する。閉塞部材9は、第2ガス発生剤120の燃焼ガスの燃焼圧力を受けて移動することで、流通孔15を開口させる。また、例えば、閉塞部材9は、第1燃焼室11側から流通孔15を閉塞し、第2ガス発生剤120の燃焼ガスの燃焼圧力により開裂するシールテープであってもよい。なお、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる方法は、内筒部材4と隔壁部材5との間に隙間を形成する方法に限られず、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させることが可能であれば、適宜変更可能である。例えば、隔壁部材5や内筒部材4に貫通孔を設けることで、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させてもよい。
【0035】
また、ハウジング1内には、第1燃焼室11及び第2燃焼室12で発生した燃焼ガスの冷却及び濾過を行うフィルタ6が設けられている。フィルタ6は、筒形状を有し、第1燃焼室11をフィルタ6の内側に含み、ガス排出口13がフィルタ6の外側に位置するように、第1燃焼室11とガス排出口13との間に配置されている。フィルタ6は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されている。フィルタ6は、第1ガス発生剤110及び第2ガス発生剤120が燃焼することによって発生した燃焼ガスを冷却するとともに燃焼残渣を捕集する。フィルタ6は、その中心軸がハウジング1の軸方向と平行となり、上端部が上部シェル2の天板部22に支持され、下端部が隔壁部材5の嵌合壁部52の環状段差部に支持された状態で、ハウジング1内に設けられている。これにより、第1燃焼室11に収容された第1ガス発生剤110がハウジング1の径方向においてフィルタ6に取り囲まれた状態となる。また、フィルタ6とガス排出口13が形成された上側周壁部21との間には、環状の間隙16が形成されている。間隙16は、フィルタ6の周囲に環状のガス通路を形成している。この間隙16により燃焼ガスがフィルタ6の全領域を通過するので、フィルタ6の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。
【0036】
本実施形態に係るガス発生器100が通常作動をした場合は、第1点火器10が作動し、これによって第1ガス発生剤110が燃焼し第1燃焼室11内で燃焼ガスが発生する。燃焼ガスによって第1燃焼室11の圧力が所定値以上になるとシールテープ14が開裂して燃焼ガスを排出する。また、第1点火器10の作動後に第2点火器20が作動し、これによって第2ガス発生剤120が燃焼し第2燃焼室12内で燃焼ガスが発生する。燃焼ガスによって第2燃焼室12の圧力が所定値以上になると閉塞部材9が嵌合部44に沿って第1燃焼室11側に摺動することで流通孔15が開口し、第1燃焼室11と第2燃焼室12が連通する。ガス発生器100は、第1ガス発生剤110及び第2ガス発生剤120が燃焼することによって発生する燃焼ガスをガス排出口13から排出してエアバッグ等に供給する。
【0037】
ここで、本実施形態に係るガス発生器100は、隔壁部材5に設けられた連通部60を備える。上述のようにガス発生器が通常作動をした場合には、第1燃焼室11内の圧力は異常燃焼圧力にはならないので、連通部60は開裂しない。第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じることによって第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合に、閉塞状態から第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる連通状態になる。具体的には、連通部60は、隔壁部材5の分割壁部51に形成され、分割壁部51の部材厚さが他部より薄い薄肉部である。この薄肉部は、分割壁部51の上面側(第1燃焼室11側)に形成された切り欠きによって形成される。第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合に連通部60に応力を集中させることで連通部60が開口し、これによって、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる連通状態になる。なお、連通部60は、隔壁部材5の上面視において、円形線状に連続的に形成されていてもよいし、円形点線状に不連続的に形成されていてもよい。連通部60は、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合に隔壁部材5の少なくとも一部が第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる連通状態になるように構成されていればよい。なお、連通部60は、ガス発生器100の非作動状態および第1ガス発生剤110の通常燃焼時には閉塞状態を維持する。また、連通部60は、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合に閉塞状態から連通状態となれば、薄肉部以外によって構成されていてもよい。
【0038】
本実施形態に係るガス発生器100において、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じて第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合に、連通部60が連通状態となる。これにより、第1燃焼室11内の燃焼ガスを第2燃焼室12内に流入させることができ、第1燃焼室11内の圧力を低下させることができる。
【0039】
また一般的に、ガス発生器は車両に搭載されるエアバッグシステムに用いられる。2つの燃焼室が上下に配置されたデュアルタイプのガス発生器がエアバッグシステムに用いられる場合にはガス排出口が形成された上側の燃焼室側にエアバッグが取り付けられる。このため、ガス発生器は、上側の燃焼室が当該車両の乗員に対向するように配置される。上記特許文献1に記載された2段式のインフレータは、2つの燃焼室が上下に配置されたデュアルタイプであり、上側の第1室側にガス排出口が形成されている。このインフレータが車両に搭載された場合に、上側の第1室内の第1ガス発生剤が異常燃焼を起こして第1室内が異常燃焼圧力以上となると、第1室内側のハウジングが破壊される虞がある。この場合、車両の乗員に向かってインフレータの部材や破片が飛散する虞があり、安全性面において好ましくない。
【0040】
また、上記特許文献2に記載されたガス発生器は、乗員側とは反対側の非乗員側の下部側シェルに脆弱部を形成することによって、エアバッグ装置が装備された車両等において火災が発生した場合等に生じる所謂オートイグニッション動作時に当該脆弱部を起点として下部側シェルに破断を生じさせる。しかしなら、特許文献2に記載された技術を特許文献1に記載された2段式のインフレータに仮に適用したとしても、上側の第1室内でガス発生剤の異常燃焼を生じてしまうと、乗員に対向して配置される第1室内側のハウジングが破壊されてしまう可能性を低減させることはできない。
【0041】
一方、本実施形態に係るガス発生器100は、デュアルタイプのガス発生器であり、車両に搭載されるエアバッグシステムに用いられる場合には、天板部22側を当該車両の乗員側に向けてステアリングホイール内やダッシュ-ボード内等に配置される。ここで、連
通部60の開口圧力は、第1燃焼室11を画定するハウジング1の部位、すなわち上側周壁部21及び天板部22の強度よりも小さい。なお、連通部60の開口圧力が上側周壁部21及び天板部22の強度よりも小さいとは、上側周壁部21及び天板部22を破壊するのに必要な力よりも、連通部60が開口状態となるのに必要な力が小さいということであ
る。このため、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合には、上側周壁部21および天板部22が破壊される前に連通部60が優先的に開口状態になる。本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じて第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合であっても、ハウジング1の上側周壁部21及び天板部22が破壊される前に連通部60が連通状態となり、第1燃焼室11内の圧力を低下させることができる。これによって、本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じた場合にガス発生器100の部材が飛散するのを抑制できるため、安全性を向上できる。
【0042】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るガス発生器100について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器100の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。図2は、実施形態2に係るガス発生器100の軸方向の断面図である。
【0043】
本実施形態に係るガス発生器100は、ハウジング1の底板部32の一部に設けられた脆弱部61を備える。具体的には、脆弱部61は、底板部32に形成され、底板部32の部材厚さが他部より薄い薄肉部である。この薄肉部は、底板部32の上面側(第2燃焼室12側)に形成された切り欠きによって形成される。なお、脆弱部61は、底板部32の上面視において、円形線状に連続的に形成されていてもよいし、円形点線状に不連続的に形成されていてもよい。なお、脆弱部61は、ハウジング1の第2燃焼室12を画定する部位の少なくとも一部、すなわち、下側周壁部31および底板部32の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0044】
脆弱部61の開裂圧力は、第1燃焼室11を画定する上側周壁部21および天板部22の強度よりも小さい。脆弱部61の開裂圧力が上側周壁部21および天板部22の強度よりも小さいとは、上側周壁部21及び天板部22を破壊するのに必要な力よりも、脆弱部61を起点として底板部32が開裂するのに必要な力が小さいということである。このため、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となって連通部60が連通状態となり、且つ、第1燃焼室11および第2燃焼室12内の圧力(ハウジング1内部全体の圧力)がさらに上昇した場合に、脆弱部61に応力を集中させ、上側周壁部21および天板部22が破壊される前に脆弱部61を起点として底板部32を優先的に開裂させる。本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じて第1燃焼室11および第2燃焼室12内が異常燃焼圧力より圧力が高くなった場合であっても、ハウジング1の上側周壁部21及び天板部22が破壊される前に底板部32が開裂し、第1燃焼室11および第2燃焼室12内の圧力を低下させることができる。これによって、本実施形態に係るガス発生器100は、車両に搭載されるエアバッグシステムに用いられる場合には、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じた場合にガス発生器100の部材が乗員側に飛散するのを抑制できるため、安全性を向上できる。なお、脆弱部61は、上側周壁部21および天板部22よりも優先的に底板部32を開裂させることができれば、薄肉部以外によって構成されていてもよい。
【0045】
また、脆弱部61の開裂圧力は、連通部60の開口圧力よりも大きい。脆弱部61の開裂圧力が連通部60の開口圧力よりも大きいとは、連通部60が開口状態となるのに必要な力よりも、脆弱部61を起点として底板部32が開裂するのに必要な力の方が大きいということである。このため、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となって連通部60が開口状態となり、第1燃焼室11と第2燃焼室12が連通して第1燃焼室11および第2燃焼室12が同じ圧力となった場合であっても、その圧力が脆弱部61の開裂圧力以下である場合は脆弱部61が開裂しない。このため、本実施形態に係るガス発生器100は、底板部32の不必要な開裂を抑制できる。脆弱部61の開裂圧力と連通部60の開口圧力の大小関係は、各薄肉部の厚さによって調整されてもよいし、上面視において不連続に形
成される場合の各薄肉部のピッチによって調整されてもよい。
【0046】
また、ガス発生器100が車両に搭載されるエアバッグシステムに用いられる場合には、当該車両が衝突し、この際の衝突衝撃が比較的小さい場合には第1点火器10のみが作動し、第2点火器20が作動しない場合もある。この場合において、本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じて第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合には、連通部60が連通状態となり、第1燃焼室11内の圧力を低下させることがきる。なお、この状態で第1燃焼室11および第2燃焼室12内の圧力が脆弱部61の開裂圧力以下である場合は脆弱部61を開裂させない。このため、本実施形態に係るガス発生器100は、底板部32の不必要な開裂を抑制できる。
【0047】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るガス発生器100について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器100の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。図3は、実施形態3に係るガス発生器100の軸方向の断面図である。
【0048】
本実施形態に係るガス発生器100において、貫通する貫通孔511の径は、内筒部材4の外周面と貫通孔511の内壁との間には隙間が形成されない程度に形成されている。このため、本実施形態では、流通孔15が形成されず、閉塞部材9も配置されていない。
【0049】
また、本実施形態に係るガス発生器100は、上記実施形態1、2において隔壁部材5の分割壁部51に設けられていた連通部60を有していない。図4は、本実施形態に係るガス発生器100の隔壁部材5を抜き出して示す隔壁部材5の平面図である。図4に示すように、本実施形態に係るガス発生器100は、連通部60に代えて、隔壁部材5の分割壁部51を貫通して形成された貫通孔62と、貫通孔62を閉塞するシールテープ63とを有する。このシールテープ63には、片面に粘着部材が塗布されたステンレス等が用いられる。なお、本実施形態において、貫通孔62は複数形成されているが、貫通孔62は必要な開口面積を確保できれば少なくとも1つ形成されていてもよいが、シールテープ63との組み合わせで本実施形態における「連通部」が発現できるようにする。また、シールテープ63は、第1燃焼室11側から分割壁部51に貼着されている。このように配置されたシールテープ63は、第1燃焼室11側からかかる力(圧力)では開裂し難く、第2燃焼室12側からかかる力(圧力)では開裂し易くなる。
【0050】
本実施形態に係るガス発生器100の通常の作動時において、第2ガス発生剤120が燃焼することによって第2燃焼室12内が第1燃焼室11内よりも高い圧力となった場合にシールテープ63の少なくとも一部が分割壁部51から剥離することで第2燃焼室12と第1燃焼室11とが連通する。これにより、ガス発生器100は、第2ガス発生剤120の燃焼ガスを第1燃焼室11を通じてガス排出口13から放出できる
【0051】
また、本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じて第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合にシールテープ63が開裂することで第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる。本実施形態において、隔壁部材5に設けられ、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となった場合に閉塞状態から第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通させる連通状態になる連通部は、貫通孔62とシールテープ63とで構成される。そしてシールテープ63は、分割壁部51のうち第1燃焼室11側から配置されているため、第1燃焼室11側から作用するシールテープ63の開裂圧力は、第2燃焼室12から作用する場合よりも大きくなる。ただし第1燃焼室11側からの圧力によってシールテープ63が開裂するのに必要な力は、第1燃焼室11を画定する上側周壁部21および天板部22を破壊するのに必要な力よりも小さい。このため、本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じて第1燃焼室1
1内が異常燃焼圧力以上となった場合であっても、ハウジング1の上側周壁部21及び天板部22が破壊される前にシールテープ63が開裂することによって連通部が連通状態となり、第1燃焼室11内の圧力を低下させることができる。これによって、本実施形態に係るガス発生器100は、第1ガス発生剤110の異常燃焼が生じた場合にガス発生器100の部材が飛散するのを抑制できるため、安全性を向上できる。
【0052】
また、本実施形態に係るガス発生器100は、上記実施形態2と同様に脆弱部61を備えていてもよい。脆弱部61の開裂圧力は、第1燃焼室11側から作用するシールテープ63の開裂圧力よりも大きい。このため、第1燃焼室11内が異常燃焼圧力以上となってシールテープ63が開裂し第1燃焼室11と第2燃焼室12が連通して第1燃焼室11および第2燃焼室12が同じ圧力となった場合であっても、その圧力が脆弱部61の開裂圧力以下である場合は脆弱部61を開裂しない。このため、本実施形態に係るガス発生器100は、底板部32の不必要な開裂を抑制できる。
【0053】
<その他の実施例>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、上述した種々の形態は、可能な限り組み合わせることができる。例えば、上記実施形態例に係るガス発生器は、高さ方向の長さが上面視における外径よりも短いディスク形状を有するものであったが、例えば、軸方向の長さが上面視における外径よりも長いシリンダ型形状を有するガス発生器に本開示の技術を適用してもよい。
【0054】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・・ハウジング
2・・・・上部シェル
3・・・・下部シェル
4・・・・内筒部材
5・・・・隔壁部材
6・・・・フィルタ
7・・・・リテーナ
8・・・・リテーナ
9・・・・閉塞部材
10・・・第1点火器
11・・・第1燃焼室
12・・・第2燃焼室
20・・・第2点火器
60・・・連通部
61・・・脆弱部
62・・・貫通孔
63・・・シールテープ
100・・ガス発生器
110・・第1ガス発生剤
120・・第2ガス発生剤
図1
図2
図3
図4