(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】配線形成方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/20 20060101AFI20231027BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20231027BHJP
B41M 1/34 20060101ALI20231027BHJP
B41C 1/08 20060101ALI20231027BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H05K3/20 C
B41M1/10
B41M1/34
B41C1/08
H01L21/92 604F
(21)【出願番号】P 2020160867
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-07-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年3月4日 WekoPa Resort & Conference Centerで開催された「16th International Conference and Exhibition on DEVICE PACKAGING」において公開(発表)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510018649
【氏名又は名称】コネクテックジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056483(WO,A1)
【文献】特表2011-502194(JP,A)
【文献】特開2015-182278(JP,A)
【文献】特開2000-180862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/20
H01L 21/60
B41M 1/10
B41M 1/34
B41C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定パターンの凹部が形成された転写型の該凹部に導電性部材を充填し、この導電性部材が充填された前記転写型を凹凸を有する基板の表面に重ね合わせ、前記導電性部材を前記基板の表面に転写して該導電性部材により該基板の表面上に配線部を形成する方法であって
、
デュロメータA硬度が40~70の軟質性の
前記転写型を用意する準備工程と、
前記転写型を、前記基板の表面に重ね合わせた後、前記転写型が前記凹凸に追従するように変形して該転写型の表面が前記基板の表面に密着するように圧接させる圧接工程と、
を含むことを特徴とする配線形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の配線形成方法において、前記凹凸は、前記基板の表面に設けられたアスペクト比が1以上の配線
により形成される段差であ
り、前記圧接工程は、前記転写型を、前記基板の表面に重ね合わせた後、前記転写型が前記凹凸に追従するように変形して該転写型の表面が前記基板の表面および前記配線の上面に密着するように圧接させる工程であることを特徴とする配線形成方法。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記転写型は、シリコーン系高分子化合物を主成分とする主剤に硬化剤が混合された樹脂材料からなるものであることを特徴とする配線形成方法。
【請求項4】
請求項3記載の配線形成方法において、前記樹脂材料は、前記主剤と前記硬化剤とがほぼ5:1の混合比で混合されたものであることを特徴とする配線形成方法。
【請求項5】
請求項3,4いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記転写型は、所定パターンの凸部が形成された原版上に前記樹脂材料を設けた後、支持基板で加圧成形し、硬化処理を行うことで得られるものであることを特徴とする配線形成方法。
【請求項6】
請求項5記載の配線形成方法において、前記硬化処理は、常温で硬化させる常温硬化処理及び200℃以上の温度で加熱して硬化させる加熱硬化処理であることを特徴とする配線形成方法。
【請求項7】
請求項6記載の配線形成方法において、前記常温硬化処理は24時間以上かけて行うことを特徴とする配線形成方法。
【請求項8】
請求項6,7いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記硬化処理は、15℃~30℃に設定された空間内で48時間かけて前記常温硬化処理を行い、続いて、200℃~250℃、30分の前記加熱硬化処理を行うことを特徴とする配線形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に所定パターンの配線を形成する配線形成方法に関するものであり、特に凹凸を有する基板の表面への配線形成に好適な配線形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストを用いた配線形成は、従来の銅配線やハンダ等の金属による配線形成に比べて低温でプロセスを行うことができるため、これまで行えなかったプラスチック等のフィルム上への配線形成やチップ実装が可能である。
【0003】
従来、この導電性ペーストを用いた配線形成は、一般的に印刷法を用いて行われている。しかしながら、印刷法では形成可能な配線の最小線幅に限界があり、例えば、代表的なスクリーン印刷では約30μm幅の配線印刷が限界とされている。加えて、印刷法ではペースト又はインク状の導電性部材を用いるが、基板に印刷後、直ぐに硬化しないため、厚い配線(アスペクト比の高い配線)を形成した場合、配線がにじむ等して寸法精度が低下し、またペースト又はインク状の導電性部材が有する一定の粘度による流動により形状だれが発生してしまう。したがって、現状、印刷法で形成可能な配線のアスペクト比の上限はせいぜい0.5程度である。
【0004】
一方、転写型を用いた転写配線形成法(インプリント法)では、ナノレベルサイズまでの配線微細化と、導電性ペーストを硬化させて転写するので、アスペクト比1以上の配線形成も可能である。
【0005】
この転写型を用いた転写配線形成法に関し、本出願人は特開2016-58664号に開示される導電部を有する基板の製造方法(以下、「従来例」という。)を提案している。
【0006】
この従来例は、基板上に形成する配線パターンと同様のパターンに形成される凹部を備える型(特開2016-58664号では印刷版と表記)の前記凹部に導電性ペーストを充填し、この凹部に導電性ペーストが充填された型を基板に重ね合わせて圧接することで、この型の凹部に充填された導電性ペーストを基板に転写し、基板上に所定パターンの配線を形成するものである。
【0007】
しかしながら、従来例は、ハードレプリカモールドと称する硬質性の転写型が用いられているため、配線形成面に既に別の配線が形成されているなどして凹凸(段差)がある基板に対しては、
図2に示すように、凹凸により転写型14が基板11の表面に適正に接地(密着)できず、これにより、転写形成した配線13が特に基板11に予め形成された配線段差近傍で密着せず浮きあがった状態になってしまう不具合が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来の配線形成において、印刷による配線形成では高アスペクト比の配線を形成することができない問題があり、また、転写型を用いた配線形成では表面に凹凸がある基板に対しての適用性がない問題がある。
【0010】
したがって、表面に凹凸がある基板に高アスペクト比の配線形成を行う場合、現状は、表面に凹凸がある基板に対して平坦化処理を行い、基板表面を平坦化した後、転写型を用いた配線形成を行わなければならず、平坦化処理分の工数が増加しコストがかかってしまう問題がある。
【0011】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、表面に凹凸がある基板に対して、平坦化処理を行うことなく、転写型による転写配線形成を可能とする従来にない画期的な配線形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
所定パターンの凹部4aが形成された転写型4の該凹部4aに導電性部材2を充填し、この導電性部材2が充填された前記転写型4を凹凸を有する基板1の表面に重ね合わせ、前記導電性部材2を前記基板1の表面に転写して該導電性部材2により該基板1の表面上に配線部3を形成する方法であって、デュロメータA硬度が40~70の軟質性の前記転写型4を用意する準備工程と、前記転写型4を、前記基板1の表面に重ね合わせた後、前記転写型4が前記凹凸に追従するように変形して該転写型4の表面が前記基板1の表面に密着するように圧接させる圧接工程と、を含むことを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0014】
また、請求項1記載の配線形成方法において、前記凹凸は、前記基板1の表面に設けられたアスペクト比が1以上の配線により形成される段差であり、前記圧接工程は、前記転写型4を、前記基板1の表面に重ね合わせた後、前記転写型4が前記凹凸に追従するように変形して該転写型4の表面が前記基板1の表面および前記配線の上面に密着するように圧接させる工程であることを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0015】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記転写型4は、シリコーン系高分子化合物を主成分とする主剤に硬化剤が混合された樹脂材料からなるものであることを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0016】
また、請求項3いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記樹脂材料は、前記主剤と前記硬化剤とがほぼ5:1の混合比で混合されたものであることを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0017】
また、請求項3,4いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記転写型4は、所定パターンの凸部が形成された原版上に前記樹脂材料を設けた後、支持基板で加圧成形し、硬化処理を行うことで得られるものであることを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0018】
また、請求項5記載の配線形成方法において、前記硬化処理は、常温で硬化させる常温硬化処理及び200℃以上の温度で加熱して硬化させる加熱硬化処理であることを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0019】
また、請求項6記載の配線形成方法において、前記常温硬化処理は24時間以上かけて行うことを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【0020】
また、請求項6,7いずれか1項に記載の配線形成方法において、前記硬化処理は、15℃~30℃に設定された空間内で48時間かけて前記常温硬化処理を行い、続いて、200℃~250℃、30分の前記加熱硬化処理を行うことを特徴とする配線形成方法に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のようにするから、表面に凹凸がある基板に対しても、転写型を用いた転写配線形成が可能となる。
【0022】
したがって、例えば表面に凹凸がある基板に高アスペクト比の配線形成を行う場合、本発明を用いることで、これまで転写型を用いる場合に必要としていた平坦化処理が不要となり、その分の工数が削減され、スループットの向上やコスト削減の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施例の転写型を用いた場合の配線形成状態を示す説明図である。
【
図2】従来の転写型を用いた場合の配線形成状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
転写型4に形成された所定パターンの凹部4aに導電性部材2を充填し、この凹部4aに導電性部材2が充填された転写型4を基板1の表面に重ね合わせ圧接させる。
【0026】
この圧接により転写型4が基板表面の凹凸に追従して変形し、転写型4が基板表面に対して密着状態になる。
【0027】
これにより、転写形成した配線部3が基板1に予め形成された配線段差近傍においても浮きあがった状態(基板1に接地していない状態)となる不具合が生じないから、表面に凹凸がある基板に対して、平坦化処理を行わなくても転写型を用いた転写配線形成が可能となる。
【0028】
したがって、例えば表面に凹凸がある基板に高アスペクト比の配線形成を行う場合、本発明を用いることで、これまで転写型を用いる場合に必要としていた平坦化処理が不要となり、その分の工数が削減され、スループットの向上やコスト削減の効果が得られる。
【実施例】
【0029】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施例は、所定パターンの凹部4aが形成された転写型4の前記凹部4aに導電性部材2を充填し、この導電性部材2が充填された転写型4を凹凸を有する基板1の表面に重ね合わせ、前記凹部4a内で硬化させた導電性部材2を前記基板1の表面に転写して該導電性部材2により該基板1の表面上に配線部3を形成する配線形成方法である。すなわち、本実施例は、既に基板1上に配線が形成され、その配線により表面に凹凸(段差)がある基板1に、転写型4を用いたインプリント法により配線部3を転写形成する配線形成方法である。
【0031】
まず、本実施例で用いる転写型4及び導電性部材2について説明する。
【0032】
本実施例の転写型4は、所定パターンの凸部が形成された原版(マスターモールド)上に樹脂材料を滴下し、支持基板で加圧し成形した後、硬化処理を行うことで得られる一般的にソフトレプリカモールドと称される軟質性の転写型4である。
【0033】
具体的には、本実施例の転写型4は、シリコーン系高分子化合物を主成分とする主剤と硬化剤とを混合した樹脂材料を硬化させてなるシリコーン樹脂製で、硬さがデュロメータA硬度で40~70程度のものである。
【0034】
また、この転写型4に形成される凹部4aは、基板1に転写形成される配線部3の形状が順テーパー形状となるようなテーパー状(順テーパー状)の凹部に形成されている。
【0035】
詳細には、本実施例の転写型4は、以下のようにして製造されるものである。
【0036】
主剤となるPDMS(ポリジメチルシロキサン)と硬化剤とを混合比5:1で混合した樹脂材料を所定パターンの凸部が形成された原版上に滴下し、支持基板で加圧成形する。
【0037】
なお、このPDMSを主剤とする樹脂材料においては、従来、主剤と硬化剤との混合比は10:1程度とされているが、本実施例では、上記のように硬化剤の比率を多く(約2倍)している。これは、硬化後の転写型4の表面の粘着性(タック性)を低下させ、転写型4の表面上の導電性部材2を掻き取り易くするためである。
【0038】
続いて、加圧成形した樹脂材料を、常温(15℃~30℃、好ましくは25℃)で24時間以上、好ましくは48時間以上かけて硬化させる常温硬化処理を行う。なお、本実施例の常温硬化処理条件は、25℃、48時間としている。
【0039】
続いて、常温硬化処理した転写型4を原版から取り外し、この取り外した転写型4を、加熱装置(例えばホットプレート等)を用いて、200℃~300℃、好ましくは250℃で30分程度、加熱硬化処理を行い樹脂材料を本硬化させ、完成となる。
【0040】
また、上記製造方法により形成された転写型4の硬さは、デュロメータA硬度で60程度となる。
【0041】
なお、このPDMSを主剤とする樹脂材料においては、従来は、原版に滴下した樹脂材料を支持基板で加圧成形した後、100℃~150℃、10分~35分程度の加熱硬化処理が行われ、この加熱硬化処理により転写型を所定の硬度に硬化していたが、この従来の加熱硬化処理では、転写型と原版(主材料、ガラス)との熱膨張係数の差により、下限側の100℃の加熱硬化処理でも2%を超えるパターン収縮が生じてしまう。一方、本実施例では、硬化処理を上述のように常温硬化処理と加熱硬化処理の二段階処理とすることでパターン収縮を0.5%前後に抑えることができる。
【0042】
具体的には、本実施例においては、25℃、48時間の常温硬化処理後のパターン収縮は0.1%程度であり、250℃、30分の加熱硬化処理後のパターン収縮は0.6%程度である。
【0043】
また、本実施例に用いる導電性部材2は、導電性ペーストに活性光線硬化型樹脂が含有されてなる活性光線硬化型樹脂含有導電性ペーストである。
【0044】
すなわち、本実施例の配線形成方法は、導電性部材2を加熱により硬化させるのではなく、例えば紫外線等の活性化光線により硬化させるものである。
【0045】
具体的には、導電性ペーストは、Agペースト(ナノペースト含む)、Cuペースト(ナノペースト含む)、Auペースト(ナノペースト含む)、Ptペースト(ナノペースト含む)、Pdペースト(ナノペースト含む)、Ruペースト(ナノペースト含む)、Cペースト(ナノペースト含む)から選択可能であり、本実施例はAgペーストを用いている。
【0046】
また、本実施例は、平均粒子径が基板1に形成される配線部3の最小線幅の1/5~1/10に設定されている導電性ペーストを用いている。すなわち、例えば、最小L/S(ライン&スペース)=5μm/5μmの配線パターンを形成する場合、平均粒子径が0.5μm~1.0μmに設定されている導電性ペーストが用いられる。
【0047】
また、この導電性ペーストに含有される活性光線硬化型樹脂は、紫外線硬化型樹脂であり、導電性部材2中の体積含有率が20%~40%となるように導電性ペーストに含有されている。
【0048】
すなわち、本実施例の導電性部材2は、Agペーストと紫外線硬化型樹脂との体積比が6:4~8:2に設定されている紫外線硬化型樹脂含有Agペーストである。
【0049】
次に、本実施例の具体的な配線形成方法について説明する。
【0050】
本実施例の配線形成方法は、前述のとおり、所定パターンの凹部4aが形成された転写型4の前記凹部4aに導電性部材2を充填し、この導電性部材2が充填された転写型4を凹凸を有する基板1の表面に重ね合わせ、前記凹部4a内の導電性部材2を前記基板1の表面に転写して該導電性部材2により該基板1の表面上に配線部3を形成する配線形成方法である。
【0051】
すなわち、本実施例は、
図3に示すように、転写型4の凹部4aに導電性部材2を充填する導電性部材充填処理工程と、導電性部材2が充填された転写型4を基板1に重ね合わせる転写型重ね合わせ処理工程と、転写型4の凹部4aに充填された導電性部材2を硬化させる導電性部材硬化処理工程と、転写型4の凹部4a内で硬化させた導電性部材2を基板1に転写して基板1上に所定パターンの配線部3を形成する導電性部材転写処理工程とを有し、この順で処理が行われるものである。
【0052】
以下、本実施例の各処理工程について説明する。
【0053】
導電性部材充填処理工程は、転写型4を凹部4aの開口部が上向きになるようにセットし、上方から導電性部材2を凹部4aに充填した後、転写型4の表面や凹部4aから溢れ出ている導電性部材2を、掻き取り具(スキージ)を用いて掻き取り除去し、凹部4aのみに導電性部材2を充填する処理を行う工程である。
【0054】
なお、前述したように、本実施例に用いる転写型4は、従来よりも主剤に対する硬化剤の混合比率を大きくして、転写型4の表面の粘着性(タック性)を低下させているから、この導電性部材充填処理工程においては、転写型4の表面上の不要な導電性部材2をスムーズに掻き取り除去することができ、転写型4の表面に不要な導電性部材2が残留することが可及的に防止されることとなる。
【0055】
また、転写型重ね合わせ処理工程は、凹部4aに導電性部材2が充填された転写型4を基板1に重ね合わせ、加圧により転写型4を基板1に圧接させる工程である。
【0056】
本実施例では、転写型4としてデュロメータA硬度60の軟質性転写型4(ソフトレプリカモールド)を用いているから、
図1に示すように、転写型4を基板1に圧接させると、転写型4が基板1の凹凸、具体的には、基板1上に既に形成されている配線により形成される段差に追従して弾性変形し、転写型4の表面(凹部4aの開口部側)が基板1の表面及び基板1上に既に形成されている配線上面に接地(密着)した状態となる。
【0057】
また、導電性部材硬化処理工程は、転写型4の凹部4aに充填された導電性部材2を硬化させる工程であり、本実施例では、紫外線照射により導電性部材2を硬化させている。
【0058】
具体的には、紫外線照射を転写型4の凹部4aの底側から照射し、この転写型4の凹部4aに充填された導電性部材2の凹部内面との接触界面部分を硬化させ、導電性部材2の転写型4に対する離型性を向上させている。
【0059】
本実施例のように、導電性部材2を紫外線照射により硬化させることにより、加熱により硬化させる場合に比べて処理時間が大幅に短縮されることとなる。
【0060】
なお、この導電性部材硬化処理工程は、転写型4を基板1に重ね合わせる前、すなわち、転写型重ね合わせ処理工程の前に行っても良い。
【0061】
また、導電性部材転写処理工程は、基板1と重ね合わせた転写型4を基板1から離脱させ、転写型4の凹部4a内の導電性部材2を基板1に転写し、基板1上に所定パターンの配線部3を形成する。
【0062】
次に、本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0063】
本実施例は、転写型4としてデュロメータA硬度60の軟質性転写型4(ソフトレプリカモールド)を用いるから、表面に凹凸がある基板に対して、平坦化処理を行わなくても転写型を用いた転写配線形成(インプリント法による配線形成)が可能となる。
【0064】
これにより、例えば表面に凹凸がある基板に高アスペクト比(配線幅に対して配線高さが高く、段差が大きい配線)の配線形成を行う場合、これまでは平坦化処理が必要であったが、この平坦化処理が不要となり、その分の工数が削減され、スループットの向上やコスト削減の効果が得られる。
【0065】
また、本実施例に用いる転写型4は、従来の転写型に比べて表面の粘着性(タック性)が低いから、掻き取り具(スキージ)による導電性部材2の掻き取り処理の作業性が向上する。
【0066】
また、本実施例に用いる転写型4は、常温硬化処理と加熱硬化処理の二段階の硬化処理で硬化させたものであるから、パターン収縮を0.5%前後に抑えることができる。
【0067】
また、本実施例は、導電性部材2としてAgペーストに紫外線硬化型樹脂を含有させた紫外線硬化型樹脂含有Agペーストを用い、紫外線の照射により導電性部材2を硬化させるから、熱硬化型樹脂含有導電性ペーストを用いて加熱処理により硬化させる場合に比べてパターン変形が低減され、応力の発生も抑制され、完全転写が可能となり、さらに硬化時間が大幅に短縮されスループットが向上する。
【0068】
また、本実施例は、平均粒子径が配線部3の最小線幅の1/5~1/10に設定されているAgペーストを用いた導電性部材2を用いるから、基板1に形成される配線部3の形状が凹凸の少ない滑らかな形状となり、これにより配線部3間の局所的な電界集中が緩和され、配線部3の長期的信頼性が向上する。
【0069】
また、本実施例は、転写型4の凹部4aの形状がテーパー状(順テーパー状)に形成されているから、基板1上に転写形成される配線部3の形状が順テーパー形状となり、転写時の導電性部材2の転写型4の凹部4aからの離型性が向上し離脱がスムーズに行われ、導電性部材転写処理工程における歩留りが向上する。
【0070】
このように、本実施例は、上述したような画期的な作用効果を奏する従来にない画期的な配線形成方法となる。
【0071】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0072】
1 基板
2 導電性部材
3 配線部
4 転写型
4a 凹部