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特許7374063搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20231027BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
E04G21/16
E02D27/32 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020187063
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076613
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-060059(JP,A)
【文献】特開昭56-049890(JP,A)
【文献】特開2009-287312(JP,A)
【文献】特開平07-279433(JP,A)
【文献】特開昭51-016730(JP,A)
【文献】特開平11-147690(JP,A)
【文献】特開2015-137488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E02D 27/00-27/52
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭基礎と直接基礎のいずれか一方の基礎のフーチングの上に、搭状構造物を構成する搭体を立て起こす、搭体の立て起こしシステムであって、
前記フーチングに対して順に、ウインチと、仮設ポストと、側面視L型の架台とが設置され、該架台はL型の隅角部をピン支点として該フーチングに回動自在に設置されており、
前記ウインチから延設するワイヤが、前記仮設ポストの備える第一シーブを介し、前記架台の備える第二シーブに巻き回され、該第一シーブを介し、該ウインチの近傍に設置されている第三シーブを介して、該ウインチに巻き取り自在に配設されており、
倒れ姿勢の前記架台に前記搭体が搭載され、前記ウインチの作動により該架台が前記ピン支点を中心に回動することにより、前記フーチングの上に該搭体が立て起こされるようになっていることを特徴とする、搭体の立て起こしシステム。
【請求項2】
前記基礎が、本設フーチングを備えた本設基礎と、仮設フーチングを備えた仮設基礎とを有し、
前記ピン支点が前記仮設フーチングに設けられており、
立て起こされた前記搭体を前記本設フーチングに横移動させる重機をさらに有していることを特徴とする、請求項1に記載の搭体の立て起こしシステム。
【請求項3】
前記フーチングにアンカーが固定され、
前記アンカーに接続される前記ワイヤが、前記第一シーブを介し、前記第二シーブに巻き回され、該第一シーブを介し、前記第三シーブを介して前記ウインチに巻き取り自在に配設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の搭体の立て起こしシステム。
【請求項4】
前記架台はジャッキを備えており、
前記フーチングのうち、前記架台が立て起こされた際に前記ジャッキに対応する位置にはサンドルが配設されており、
前記ジャッキによる前記搭体の荷重受けと、前記サンドルの一部撤去とが繰り返されることにより、前記フーチングへの前記搭体の立て起こしが行われるようになっていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の搭体の立て起こしシステム。
【請求項5】
前記第一シーブ、前記第二シーブ、及び前記第三シーブの間に前記ワイヤが多重巻きされており、
前記第三シーブを介して前記ワイヤが前記ウインチに巻き取られるようになっていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の搭体の立て起こしシステム。
【請求項6】
基礎のフーチングの上に、搭状構造物を構成する搭体を立て起こす、搭体の立て起こし設置方法であって、
前記フーチングに対して順に、ウインチと、仮設ポストと、側面視L型の架台とが設置され、該架台はL型の隅角部をピン支点として該フーチングに回動自在に設置されており、
前記ウインチから延設するワイヤが、前記仮設ポストの備える第一シーブを介し、前記架台の備える第二シーブに巻き回され、該第一シーブを介し、該ウインチの近傍に設置されている第三シーブを介して、該ウインチに巻き取り自在に配設されており、
倒れ姿勢の前記架台に前記搭体を搭載し、前記ウインチを作動させることにより、該架台を前記ピン支点を中心に回動させて、前記フーチングの上に該搭体を立て起し、
立て起こされた前記搭体を、重機にてフーチングの所定位置に横移動させて設置することを特徴とする、搭体の立て起こし設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風のエネルギーを利用した風力発電は高い設備利用率での電力供給が可能であることから、有望な再生可能エネルギーの一つとなっている。風力発電には、洋上風力発電と陸上風力発電があり、陸上風力発電施設は、例えば山岳地域等に建設される。
山岳地域等に陸上風力発電施設を建設するに当たり、必要に応じて建設場所までのアクセス道路を造成し、建設敷地の造成を経て、風車基礎が施工される。次に、風車部材である、タワー(搭体)、ブレード(翼)とハブからなるローター、ナセル(発電機)等がアクセス道路を介して輸送される。タワーは一般に、60m乃至100m程度と長いことから、山間部にある既存道路や造成された新設道路にてタワーを搬送するに当たり、タワーは15m乃至20m程度の複数の搭体に分割され、建設現場へ搬送される。
分割された搭体は、最大で例えば90t程度の重量を有している。そのため、搭体の立て起こしには、メインクレーンの他に介添え用のクレーンを要し、二台のクレーンが同時に動きながら搭体の立て起こしを行うことから、広範な施工ヤードが必要になる。しかしながら、上記するように山岳地域において広範な施工ヤードを造成するのは困難であり、広範な施工ヤードの造成に起因して工期の長期化と工費の高騰が課題となる。
【0003】
ここで、特許文献1には、建設構造物の構成メンバーである柱部材等を現場で垂直に建て起こし、所定位置に効率的かつ安全に移動させることのできる、建起装置が提案されている。この建起装置は、両端部にストッパを有する走行レールを設置した架台と、走行レールに沿って移動するL型端部受け台車とを有し、L型端部受け台車の垂直面および水平面には、ゴムパット等からなる滑り防止板が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-24141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建起装置によれば、柱部材等を現場で垂直に建て起こし、所定位置に効率的かつ安全に移動させることが可能になる。特許文献1に記載の建起装置を上記する搭体の立て起こしに適用することにより、建起装置がL型端部受け台車を備えていることから、上記する介添え用のクレーンを不要にでき、一台のクレーンにて搭体の立て起こしを行うことが可能になる。
しかしながら、立て起こした搭体を走行レールに沿って横移動させることから、横方向に延設する走行レールを設置するための施工ヤードを要することになり、広範な施工ヤードの施工を解消する上で、十分な効果が得られるかは定かでない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、高くて重量のある搭体の立て起こしに際して、広範な施工ヤードを不要にできる、搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による搭体の立て起こしシステムの一態様は、
杭基礎と直接基礎のいずれか一方の基礎のフーチングの上に、搭状構造物を構成する搭体を立て起こす、搭体の立て起こしシステムであって、
前記フーチングに対して順に、ウインチと、仮設ポストと、側面視L型の架台とが設置され、該架台はL型の隅角部をピン支点として該フーチングに回動自在に設置されており、
前記ウインチから延設するワイヤが、前記仮設ポストの備える第一シーブを介し、前記架台の備える第二シーブに巻き回され、該第一シーブを介し、該ウインチの近傍に設置されている第三シーブを介して、該ウインチに巻き取り自在に配設されており、
倒れ姿勢の前記架台に前記搭体が搭載され、前記ウインチの作動により該架台が前記ピン支点を中心に回動することにより、前記フーチングの上に該搭体が立て起こされるようになっていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、基礎のフーチングの上に順に、ウインチと、仮設ポストと、側面視L型の架台とが設置され、架台がL型の隅角部をピン支点としてフーチングに回動自在に設置され、ウインチから延設するワイヤが、仮設ポストの備える第一シーブ(滑車)を介し、架台の備える第二シーブに巻き回され、第一シーブを介し、ウインチの近傍に設置されている第三シーブを介して、ウインチに巻き取り自在に配設されていることにより、ウインチの作動によってピン支点を中心に架台を回動させ、フーチングの上に搭体を立て起こすことが可能になる。従って、高くて重量のある搭体の立て起こしに際して、広範な施工ヤードと重機の双方が不要になる。
尚、立て起こされた搭体をフーチングの所定位置に横移動させる際には、例えば一台のクレーン等の重機にて搭体を吊り上げて移動させることから、搭体の横移動の際には一台のクレーンは必要になるが、上記する介添え用のクレーンは不要になる。また、本態様では、立て起こされた搭体の横移動のための走行レールも不要であることから、走行レールの敷設のためのヤードの確保も不要になる。
本発明の立て起こし対象である搭体は、既述する陸上風力発電施設を構成するタワーの分割体をはじめとして、様々な高い重量物が含まれる。搭体が陸上風力発電施設を構成するタワーの分割体の場合は、搭状構造物は、分割体が積層された陸上風力発電施設を構成するタワー、もしくは、このタワーにローターやナセルが取り付けられた陸上風力発電施設となる。
【0009】
ここで、基礎には、杭基礎と直接基礎が含まれるが、倒れ姿勢で搭体が搭載された架台を、ウインチの作動によりピン支点を中心に回動させて立て起こすに当たり、架台からフーチングに作用する水平力に対する水平反力が得られやすい杭基礎が好ましい。また、基礎は、その全体が本設基礎であってもよいし、本設基礎と仮設基礎の双方のフーチングの壁面が当接している形態の基礎であってもよい。
【0010】
仮設ポストは、搭体と同程度の高さを有し、その頂部に第一シーブが取り付けられているのが好ましい。側面視L型の架台は、例えば、搭体の脚部に対応する鋼製の脚部フレームと、搭体の側面に対応する長尺で鋼製の側面フレームとを備え、双方のフレームが鋼製の補強部材等で補強されることにより、搭体が載置された状態で架台が立て起こされる際の当該架台の姿勢を保持できる剛性が確保される。
この形態の架台では、例えば側面フレームの頂部に第二シーブが取り付けられているのがよい。このように、仮設ポストの頂部にある第一シーブと、架台の側面フレームの頂部にある第二シーブに対して、ウインチから延設するワイヤが巻き回されていることにより、可及的に少ない牽引力によって搭体が載置された架台をウインチにて回動させ、搭体を立て起こすことが可能になる。また、架台に取り付けられている第二シーブが動滑車となることによっても、ウインチによる牽引力を可及的に低減しながら搭体の立て起こしが可能になる。
【0011】
また、本発明による搭体の立て起こしシステムの他の態様において、前記基礎が、本設フーチングを備えた本設基礎と、仮設フーチングを備えた仮設基礎とを有し、
前記ピン支点が前記仮設フーチングに設けられており、
立て起こされた前記搭体を前記本設フーチングに横移動させる重機をさらに有していることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、基礎が、本設フーチングを備えた本設基礎と、仮設フーチングを備えた仮設基礎とを有し、架台のピン支点が仮設フーチングに設けられていることにより、仮設基礎の上に搭体が立て起こされた後、重機にて搭体が本設基礎に移載される。例えば、本設基礎が杭基礎である場合、仮設基礎は直接基礎とし、本設基礎と仮設基礎の双方のフーチングの壁面を当接させる(連続させる)ことにより、本設基礎の平面寸法を大きくすることなく、仮設基礎から伝達される搭体立て起こし時の水平力に対する水平反力を、本設フーチング上に設置した、ウインチ及び第三シーブの水平力にて相殺することが可能になり、より詳細には、以下で記載するアンカーを含めて、ウインチと、アンカーと、第三シーブの水平力にて相殺することが可能になる。また、仮設ポストを本設基礎の本設フーチング上に設置することにより、仮設ポスト専用の基礎の施工を不要にできる。
【0013】
また、本発明による搭体の立て起こしシステムの他の態様は、前記フーチングにアンカーが固定され、
前記アンカーに接続される前記ワイヤが、前記第一シーブを介し、前記第二シーブに巻き回され、該第一シーブを介し、前記第三シーブを介して前記ウインチに巻き取り自在に配設されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、ウインチの近傍にアンカーが固定され、アンカーにその一端が接続されるワイヤが第一シーブを介して第二シーブに巻き回され、第一シーブを介し、さらに第三シーブを介してウインチに巻き取られることにより、ワイヤ反力をアンカーを介して基礎のフーチングにて得ることができ、基礎が杭基礎の場合は、フーチングを介してアンカー反力を杭基礎にて得ることができる。すなわち、この形態では、ウインチと、アンカー反力と、第三シーブは、架台が回動する際の水平反力と相殺されることになり、基礎は水平抵抗力を必要としない。
【0015】
また、本発明による搭体の立て起こしシステムの他の態様において、前記架台はジャッキを備えており、
前記フーチングのうち、前記架台が立て起こされた際に前記ジャッキに対応する位置にはサンドルが配設されており、
前記ジャッキによる前記搭体の荷重受けと、前記サンドルの一部撤去とが繰り返されることにより、前記フーチングへの前記搭体の立て起こしが行われるようになっていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、架台がジャッキを備え、フーチングのうち、架台が立て起こされた際にジャッキに対応する位置にサンドルが配設されていることにより、搭体が立て起こされる過程でその重心がピン支点を超えた後の搭体の回動方向前方への急激な倒れ込みを、サンドルに対してジャッキが載置されるクッション作用により抑止することができる。
サンドルにてジャッキを支持した後、ジャッキダウンして搭体の荷重を別途のサンドルに盛り替え、ジャッキを支持するサンドルの一部を取り除き、ジャッキアップして再度ジャッキにて荷重を受け、別途のサンドルの一部を取り除く一連の工程を繰り返し行うことにより、双方のサンドルが徐々に取り除かれて、フーチング上に搭体を載置することができる。
【0017】
また、本発明による搭体の立て起こしシステムの他の態様は、前記第一シーブ、前記第二シーブ、及び前記第三シーブの間に前記ワイヤが多重巻きされており、
前記第三シーブを介して前記ワイヤが前記ウインチに巻き取られるようになっていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、ウインチの近傍に第三シーブが設置され、第一シーブ、第二シーブ、及び第三シーブの間にワイヤが多重巻きされていることにより、架台に取り付けられている第二シーブが動滑車であることと、ワイヤの多重巻きとにより、ウインチによる牽引力を可及的に低減しながら、一本のワイヤに作用する張力を低減でき、ワイヤの断面低減を図ることができる。ここで、各シーブには、ワイヤの多重巻きを実現するシーブブロックが適用されるのが好ましい。
【0019】
また、本発明による搭体の立て起こし設置方法の一態様は、
基礎のフーチングの上に、搭状構造物を構成する搭体を立て起こす、搭体の立て起こし設置方法であって、
前記フーチングに対して順に、ウインチと、仮設ポストと、側面視L型の架台とが設置され、該架台はL型の隅角部をピン支点として該フーチングに回動自在に設置されており、
前記ウインチから延設するワイヤが、前記仮設ポストの備える第一シーブを介し、前記架台の備える第二シーブに巻き回され、該第一シーブを介し、該ウインチの近傍に設置されている第三シーブを介して、該ウインチに巻き取り自在に配設されており、
倒れ姿勢の前記架台に前記搭体を搭載し、前記ウインチを作動させることにより、該架台を前記ピン支点を中心に回動させて、前記フーチングの上に該搭体を立て起し、
立て起こされた前記搭体を、重機にてフーチングの所定位置に横移動させて設置することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、既述する本発明の搭体の立て起こしシステムを適用することにより、高くて重量のある搭体の立て起こしに際して、広範な施工ヤードと重機を不要としながら、搭体の立て起こしを行うことができる。搭体が立て起こされた後は、クレーン等の一台の重機にてフーチングの所定位置へ搭体を横移動させて設置することにより、搭体の立て起こしからフーチングの所定位置への設置までの全工程を、可及的に狭い施工ヤードの中で効率的かつ安全に実施することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法によれば、高くて重量のある搭体の立て起こしに際して、広範な施工ヤードを不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る搭体の立て起こしシステムの一例の側面図であって、倒れ姿勢の架台に搭体が搭載されている状態を示す図である。
図2】第一シーブ、第二シーブ、及び第三シーブを構成するシーブブロックの一例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る搭体の立て起こしシステムにおいて、搭体が搭載されている架台が立て起こされている途中の状態を示す図である。
図4】実施形態に係る搭体の立て起こしシステムにおいて、搭体が立て起こされた状態を示す図であって、さらに搭体が横移動されて本設基礎に設置された状態をともに示す図である。
図5図4のV方向矢視図であって、搭体が立て起こされている状態の搭体の立て起こしシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係る搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0024】
[実施形態に係る搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る搭体の立て起こしシステムと搭体の立て起こし設置方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る搭体の立て起こしシステムの一例の側面図であって、倒れ姿勢の架台に搭体が搭載されている状態を示す図であり、図3は、搭体が搭載されている架台が立て起こされている途中の状態を示す図であり、図4は、搭体が立て起こされた状態を示す図であって、さらに搭体が横移動されて本設基礎に設置された状態をともに示す図である。また、図5は、図4のV方向矢視図であって、搭体が立て起こされている状態の搭体の立て起こしシステムの平面図である。
【0025】
図1に示すように、搭体の立て起こしシステム70が立て起こし対象とする搭体Tは、例えば、陸上風力発電施設を構成するタワーの分割体である。タワーの全長は60m乃至100m程度であり、その分割体である搭体Tは15m乃至20m程度の長さを有しており、その重量は最大で例えば90t程度である。
【0026】
搭体の立て起こしシステム70は、基礎10と、ウインチ30と、仮設ポスト40と、搭体Tが載置される架台20とを有し、さらに、立て起こされた搭体Tを横移動させるクレーン等の重機(図示せず)を有している。尚、搭体Tの立て起こしの過程において、重機は不要である。
【0027】
基礎10は、搭体Tが設置される本設基礎15と、搭体Tが載置された架台20を支持する仮設基礎18とを有する。本設基礎15は、鉄筋コンクリート製の本設フーチング11(フーチングの一例)と、本設フーチング11を支持する複数の杭12とを有し、本設フーチング11の上面には搭体Tを直接支持する鉄筋コンクリート製の台座13が設けられている。本設基礎15を構成する杭12には、鋼管杭やPHC杭等の既製杭の他、場所打ち杭等が適用される。尚、本設基礎が図示例のように杭基礎でなく、直接基礎であってもよいが、後述するように、架台20を回動させて搭体Tを立て起こす際に作用する水平力に対して、ウインチ30とアンカー50と以下で説明する第三シーブ63の水平力が相殺することから、搭体Tを立て起こす際に作用する水平力に対する特別な抵抗体は不要となる。
【0028】
一方、搭体Tの立て起こしの際に搭体Tの重量を支持する仮設基礎18は、鉄筋コンクリート製の直接基礎であり、仮設基礎18を構成する仮設フーチング(フーチングの一例)の上面には、立て起こされた搭体Tを支持する台座19が設けられている。仮設基礎18は、文字通り、搭体Tの立て起こしの仮設時において架台20を支持することから、施工コストの観点からも直接基礎であることが好ましい。尤も、図示例以外にも、基礎の全体が本設基礎である(仮設基礎を含まない)形態であってもよい。
【0029】
本設フーチング11の一つの側面11aと、仮設フーチング18の一つの側面18aは相互に当接している。ここで、本設フーチング11と仮設フーチング18には圧縮力しか作用しないことから、アンカー等を介して構造的に連結していてもよいし、単に側面11a、18a同士が当接するのみの形態であってもよい。
【0030】
仮設フーチング18の上面において、台座19の一方側には、架台20を構成するピン支点24が設置され、他方側(本設フーチング側)には、併設する二組のサンドル27(図1には、一組のサンドル27のみ図示)が設置されている。サンドル27は、H形鋼等の形鋼材や角形鋼管等が井桁状に複数段に亘って積み重ねられることにより、形成される。
【0031】
架台20は、側面視L型を呈しており、搭体Tの脚部に対応する鋼製の脚部フレーム22と、搭体Tの側面に対応する長尺で鋼製の側面フレーム21とを備え、双方のフレームが複数の鋼製の補強部材23で補強されている。架台20の側面視L型の隅角部にはピン支点24が設けられており、ピン支点24が仮設フーチング18に対して回動自在に設置されている。
【0032】
架台20の脚部フレーム22の下面のうち、架台20が立て起こされた際に二組のうちの一組のサンドル27に対応する位置には、ジャッキ25が設けられている。
【0033】
本設フーチング11の上面には、台座13を挟んでウインチ30と仮設ポスト40が設置されている。尚、図示例の形態以外にも、本設フーチング11にウインチ30のみが設置され、仮設フーチング18に仮設ポスト40と架台20が設置される形態であってもよい。いずれの形態であっても、仮設ポスト40が本設フーチング11等の上に設置されることにより、仮設ポスト40に固有の基礎の施工を不要にできる。
【0034】
以上より、相互に水平方向に連続する本設フーチング11と仮設フーチング18の上には、図1の左側から順に、ウインチ30と、仮設ポスト40と、架台20が設置されている。
【0035】
仮設ポスト40の頂部には第一シーブ61が設置されており、架台20の側面フレーム21の端部(ピン支点24から遠い側の端部)には第二シーブ62が設置されている。さらに、本設フーチング11のうち、ウインチ30の近傍には第三シーブ63が設置されている。これらのシーブ60はいずれも、図2に示すように複数のワイヤを巻き回すことのできる、シーブブロックにより形成されている。
【0036】
本設フーチング11のうち、第三シーブ63の近傍にはアンカー50が固定されている。ウインチ30から延設するワイヤ35は、第三シーブ63を介し、仮設ポスト40の頂部の第一シーブ61を介し、架台20の備える第二シーブ62に巻き回され、第一シーブ61を介し、第三シーブ63に巻き回され、これを複数回繰り返す多重巻きの後に、ワイヤ35の端部がアンカー50に接続されている。ここで、第三シーブ63と第一シーブ61は定滑車となり、第二シーブ62は動滑車となる。
【0037】
立て起こしシステム70の平面図である図5に示すように、本設フーチング11の上には、二基のウインチ30と二基の仮設ポスト40が設置され、一基のウインチ30及び仮設ポスト40が組みを成して対応している。平面視矩形枠状の側面フレーム21のうち、搭体Tを挟んで反対側の側面フレーム21の両端にそれぞれ二つの第二シーブ62が設置されている。一基のウインチ30近傍の第三シーブ63と、仮設ポスト40の備える第一シーブ61と、一つの第二シーブ62に対して固有のワイヤ35が多重巻きされ、ワイヤ35の端部が固有のアンカー50に接続されている。図示例の立て起こしシステム70は、二基のウインチ30を同期作動させることにより、二組の多重巻きのワイヤ35を介して搭体Tを安定的に立て起こす構成のシステムである。ここで、図5に示すワイヤ35は例えば六重巻きされており、二組で総計十二本のワイヤ35が多重巻きされている。
【0038】
図1に戻り、ウインチ30を作動することにより、ワイヤ35がX1方向に巻き取られ、多重巻きされたワイヤ35がウインチ30側へX2方向に引き寄せられることにより、搭体Tが搭載された倒れ姿勢の架台20がピン支点24を中心にX3方向へ回動され、搭体Tが立て起こされる。
【0039】
この際、架台20の立て起こしの際に生じる水平力が、仮設フーチング18を介して本設フーチング11にY1方向に伝達されるが、ウインチ30とアンカー50と第三シーブ63の水平力がY2方向に伝達され、双方の水平力が相殺される。
【0040】
また、架台20に取り付けられている第二シーブ62が動滑車であることと、ワイヤ35が多重巻きされていることにより、ウインチ30による牽引力を可及的に低減しながら、一本のワイヤ35に作用する張力を低減させることができ、ワイヤ35の断面低減を図ることができる。
【0041】
また、仮設ポスト40の頂部に第一シーブ61が設置され、架台20の側面フレーム21の頂部(端部)に第二シーブ62が設置され、本設フーチング11に第三シーブ63が設置され、ウインチ30から延設するワイヤ35がこれらのシーブ60に巻き回されていることにより、てこの原理に基づき、可及的に少ない牽引力によって搭体Tが載置された架台20をウインチ30にて回動させ、搭体Tを立て起こすことが可能になる。
【0042】
図2に示すように、二基のウインチ30を同期作動させ、ピン支点24を介して、搭体Tが載置された架台20を徐々にX3方向に回動させながら立て起こしていく。そして、搭体Tが立て起こされる過程でその重心Gがピン支点24からの鉛直線Lを超えた段階で、搭体Tはその回動方向前方へ急激に倒れ込むことになる。
【0043】
しかしながら、立て起こしシステム70では、仮設フーチング18に設置されているサンドル27に対して、架台20の備えるジャッキ25がX4方向に載置されることにより、そのクッション作用で搭体Tの急激な倒れ込みを抑止することができる。
【0044】
上記するように、サンドル27に対してジャッキ25が載置され、架台20の回動による搭体Tの立て起こしが停止された後、ジャッキ25による搭体Tの荷重受けと、サンドル27の一部撤去とが繰り返されることにより、仮設フーチング18への搭体Tの立て起こしが行われる。
【0045】
具体的には、併設する二組のサンドル27が仮設フーチング18の上に設置され、いずれのサンドル27ともにH形鋼等の形鋼材や角形鋼管等が井桁状に複数段に亘って積み重ねられている。そして、双方のサンドル27の高さに違いを持たせておき、最初にジャッキ25が載置される側のサンドル27の高さを、ジャッキ25の高さ分だけ低く設定しておく。
【0046】
一方のサンドル27にジャッキ25が載置された際に、他方のサンドル27の上端レベルよりもジャッキアップされたジャッキ25の高さを高くすることにより、ジャッキ25と当該ジャッキ25を支持するサンドル27にて搭体Tの重量を支持させる。
【0047】
次に、ジャッキ25をジャッキダウンすることにより、今度は、他方のサンドル27の高さをジャッキ25よりも高くし、搭体Tの重量を他方のサンドル27にて支持させる(荷重の受け替え)。この状態で、ジャッキ25を支持するサンドル27の一部を撤去し、当該サンドル27の高さを低くした後、ジャッキアップして搭体Tの重量をジャッキ25にて支持させる。
【0048】
次に、他方のサンドル27(ジャッキ25を支持していないサンドル27)の高さを低くし、ジャッキダウンすることにより、高さの低くされた他方のサンドル27に搭体Tの重量を支持させる。
【0049】
以上の工程を繰り返すことにより、図4に示すように、最終的にサンドル27が取り除かれ、仮設フーチング18の上のジャッキ25と台座19を介して、搭体Tを衝撃無く立て起こすことができる。
【0050】
仮設フーチング18の上に搭体Tが立て起こされた後、一台のクレーン等の重機(図示せず)にて搭体Tを吊り上げ、短い距離をY3方向に横移動させることにより、搭体Tを本設フーチング11の上面にある台座13に設置する。
【0051】
図示する搭体の立て起こしシステム70と、これを用いた搭体の立て起こし設置方法によれば、山岳地域等の広範な施工ヤードの確保が困難な施工現場において、陸上風力発電施設を構成するタワーに代表される高くて重量のある搭体Tの立て起こしに際して、広範な施工ヤードと複数の重機の使用を不要にできる。
【0052】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0053】
10:基礎
11:本設フーチング(フーチング)
12:杭
13:台座
15:本設基礎
18:仮設基礎(仮設フーチング、フーチング)
19:台座
20:架台
21:側面フレーム
22:脚部フレーム
23:補強部材
24:ピン支点
25:ジャッキ
27:サンドル
30:ウインチ
35:ワイヤ
40:仮設ポスト
50:アンカー
60:シーブ
61:第一シーブ
62:第二シーブ
63:第三シーブ
70:搭体の立て起こしシステム(立て起こしシステム)
T:搭体
G:重心
図1
図2
図3
図4
図5