(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】予備石灰処理汁から凝固物を分離する際の糖損失の減少方法、並びに凝固物の濃厚化方法、デカンタ型遠心分離機の使用、タンパク質含有画分及び予備石灰処理ビート汁
(51)【国際特許分類】
C13B 20/16 20110101AFI20231027BHJP
C13B 20/00 20110101ALI20231027BHJP
C13B 20/02 20110101ALI20231027BHJP
C13B 10/08 20110101ALI20231027BHJP
B04B 1/20 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C13B20/16
C13B20/00
C13B20/02
C13B10/08
B04B1/20
(21)【出願番号】P 2020512005
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2018073190
(87)【国際公開番号】W WO2019043035
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】102017215244.3
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515053771
【氏名又は名称】ズートツッカー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アジダリ ラド,モーセン
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101791593(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0017187(US,A1)
【文献】特表2008-533282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0007902(US,A1)
【文献】特公昭47-002351(JP,B1)
【文献】特開平11-318500(JP,A)
【文献】Sugar Industry,2011年,Vol. 136, No. 5,pp. 309-316
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C13B 5/00 - 99/00
B04B 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビート粗汁から清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分を製造する方法であって、以下の方法工程:
a)ビート粗汁を調製する方法工程、
b)方法工程a)で調製されたビート粗汁を予備石灰処理することで、得られた予備石灰処理汁中に形成される非ショ糖分からの凝固物を形成しながら、予備石灰処理汁を得る方法工程、
c)前記予備石灰処理汁中の固形分を15~25体積%(方法工程b)で調製された予備石灰処理汁の全体積に対して)に調整する方法工程、
d)円筒形区画及び円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、前記遠心ドラムの長手方向軸線と前記円錐形区画の母線との間の角度が6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備えた少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を使用して、方法工程c)で得られた予備石灰処理汁から凝固物を分離する方法工程、並びに
e)清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分の形態の分離された凝固物を得る方法工程
を含み、
前記方法工程d)で使用される少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大50%のトルクで動作させる、方法。
【請求項2】
前記予備石灰処理汁の固形分が、方法工程c)において少なくとも1つの分離除去装置によって調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法工程d)で使用される少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大40%のトルクで動作させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程f)において、前記方法工程e)で得られたタンパク質含有画分を、少なくとも1つの更なるデカンタ型遠心分離機を使用して濃厚化する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法工程f)で使用される少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大50%のトルクで動作させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法工程d)及び/又はf)で使用される少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大40%のトルクで動作させる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法工程e)で得られた清澄な予備石灰処理ビート汁の少なくとも一部を、更なる方法工程において、方法工程b)からの予備石灰処理汁と混合し、清澄な予備石灰処理ビート汁と混合された予備石灰処理汁が得られ、方法工程c)において前記固形分を調整し、引き続き方法工程d)において凝固物分離工程に供給する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記遠心ドラムの長手方向軸線と前記円錐形区画の母線との間の角度が8゜~10゜である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機の遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の角度がちょうど8゜である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法工程d)で使用される予備石灰処理汁が20体積%の固形分を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
方法工程b)に引き続き、方法工程b1)において、フロック形成を少なくとも1種のフロック形成助剤を添加して実施する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分がかなり減少した最良の清澄な予備石灰処理ビート汁の製造方法、及び予備石灰処理汁から分離された凝固物の改善された分離方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糖はビートから精製され、収穫されたビートはまず洗浄されて、なおも付着している土及び葉の残りの大部分がそこから取り除かれる。洗浄を経た後に、ビートは裁断機によりコセット(Schnitzel)へと削られる。そのコセットから、弱酸性化された熱水を使用して向流抽出することにより製糖が行われる。抽出液の酸性化により、ビート粗汁の濾過と共に、抽出されるコセットの圧搾性も促進される。抽出に際して得られたビート粗汁は、引き続き抽出物精製に供給される。通常、抽出物精製は、いわゆる石灰・炭酸抽出物精製(Kalk-Kohlensaeure-Extraktreinigung)によって、予備石灰処理と本石灰処理及び第1炭酸化(Carbonatation)と第2炭酸化、並びに第1炭酸化と第2炭酸化の後の沈殿物の分離の形態で行われる。抽出物精製は、ビート粗汁中に含まれる非ショ糖分(Nicht-Saccharosestoff)、特に高分子物質をできるだけ十分に除去するという課題を有する。この場合に、付加的な低分子物質が抽出物又はビート粗汁に到達しないよう、除去されるべき非ショ糖分はできるだけ分解されるべきでない。
【0003】
予備石灰処理(Vorkalkung)において、ビート粗汁は、穏やかな条件下で石灰乳の添加により徐々にアルカリ化される。予備石灰処理は、規定の量の水酸化カルシウム(石灰乳)を添加することで行われる。ビート粗汁のアルカリ化の結果として、抽出物中に存在する有機酸及び無機酸の中和、並びにカルシウムと不溶性塩又は難溶性塩を形成するアニオンの沈殿反応が生ずる。こうして、例えば、リン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩が非常に大幅に析出する。さらに、コロイド状に溶解された非ショ糖分が凝塊して、沈殿する。個々の構成成分、例えばシュウ酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、硫酸イオン等のアニオン又はペクチン及びタンパク物質等のコロイドの沈殿は、決められたpH範囲内で起こる。これらのpH範囲内で、同時に沈殿物の濃化が行われる。予備石灰処理の間に石灰乳を添加することによって、タンパク質の凝塊も引き起こされる。このタンパク質含量に基づき、上述の分離された非ショ糖分は、ビート粗汁からのタンパク質含有画分とも呼ばれる。
【0004】
引き続き行われる石灰乳の添加による本石灰処理の課題は、さもなくば糖汁を濃厚化する範囲で酸を形成しながら進行することとなる転化糖及び酸アミドの化学的分解にある。本石灰処理で添加される石灰乳は、第1炭酸化及び第2炭酸化に際しても大きな役割を担う。炭酸カルシウムの反応により、一連の可溶性非ショ糖分用の強力な吸収剤が供されると共に、適切な濾過助剤も供される。本石灰処理過程で消費されなかった石灰乳は、両方の炭酸化工程において炭酸化ガスとして二酸化炭素を導入することにより炭酸カルシウムへと転化される。炭酸化は2段階で行われる。第1炭酸化では、沈殿しフロック形成した非ショ糖分及びビート粗汁中に含まれる色素の一部が、形成された炭酸カルシウムに吸収結合される。第1炭酸化で得られるいわゆる第1泥状汁(Schlammsaft)は、濾過されるか、又はデカンタに送られ、その際に、泥状汁濃縮物へと濃厚化される。続く第2炭酸化では、いわゆる第2泥状汁が生じ、これは同様に濾過され、その際に濃厚化される。第1炭酸化及び第2炭酸化で濃縮された炭酸カルシウム泥漿(泥状汁濃縮物)は通常一緒にされ、圧搾される。この場合に、いわゆるライムケーキが生成する。このライムケーキは70%を上回る乾燥物質含量を有する貯蔵可能な生成物である。抽出物精製で精製された予備石灰処理ビート汁を更に処理することで、白砂糖が得られる。
【0005】
従来の石灰・炭酸抽出物精製の重大な不利点は、特に、全ての非ショ糖分の最大40%しかビート粗汁から除去されないため、比較的わずかな精製効果しか達成されないことにある。更なる不利点は、該方法が非常に大量の石灰乳を必要とすることにある。しかしながら、石灰・炭酸抽出物精製法で使用される石灰乳の製造、及び焼石灰を製造する際に生成する廃棄物の処分には、比較的費用がかかる。また、石灰炉及び糖汁精製設備からの二酸化炭素排出が非常に高い。さらに、石灰・二酸化炭素抽出物精製法に際して生ずる石灰及び分離された糖汁不純物からなるライムケーキは、肥料としてしか使用することができない。
【0006】
EP 1 682 683 Aから、以下の方法工程、すなわち石灰乳の添加によりビート粗汁を予備石灰処理して、非ショ糖分、つまりタンパク質含有画分を凝塊させる方法工程、少なくとも1種のフロック形成助剤を添加する方法工程、少なくとも1種の第1の分離除去装置を使用して予備石灰処理汁の凝固物を分離することで、清澄な予備石灰処理汁を得る方法工程、凝固物の分離後に得られる清澄な予備石灰処理汁を石灰乳の添加により本石灰処理する方法工程、並びに第1炭酸化及び任意選択で第2炭酸化を実施する方法工程を含む、ビート粗汁の抽出物精製のための方法が公知である。
【0007】
Fasol, Zuckerindustrie 135, 2010 (5, 228-294)からは、得られた凝固物を濃厚化して、それを引き続き圧搾パルプ(Pressschnitzel)に加えて乾燥させる準備をするために、種々の吐出角(Austragswinkel)を有するデカンタ型遠心分離機を使用することが公知である。
【0008】
しかしながら、この方法での不利点は、比較的高い糖損失、つまり分離された凝固物中の比較的高い割合の糖及び得られた清澄な予備石灰処理汁中の不所望に高い固形分であり、両方の現象は、結局は、できる限り高い糖含量の清澄な予備石灰処理汁と凝固物との依然として改善可能な分離工程に起因する。Fasolにより使用されるデカンタ型遠心分離機は特定の条件下では確かに別の構成よりも安定して動作するが、分離されるべき固形物画分の種々の粘性に基づき、依然として連続的な動作が可能でないことが不利であると判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Fasol, Zuckerindustrie 135, 2010 (5, 228-294)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、上述の欠点が克服される、ビート粗汁からの清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分の製造方法、並びに該方法により製造される生成物を提供することであり、特に予備石灰処理されたビート粗汁から凝固物が確実かつ正確に分離され、分離の間により少量の糖しか失われず、それにより特に清澄な予備石灰処理ビート汁が得られる方法を提供することである。同様に、本発明による方法は、連続的な動作様式が可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、その基礎をなす技術的課題を、特に独立請求項の教示を提供することにより解決する。特に、本発明は、その基礎をなす技術的課題を、a)ビート粗汁を調製する方法工程、b)方法工程a)で調製されたビート粗汁を予備石灰処理することで、得られた予備石灰処理汁中に形成される非ショ糖分からの凝固物を形成しながら予備石灰処理汁を得る方法工程、c)予備石灰処理汁中の固形分を15~25体積%(方法工程b)で調製された予備石灰処理汁の全体積に対して)に調整する方法工程、d)円筒形区画及び円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、上記遠心ドラムの長手方向軸線と上記円錐形区画の母線との間の角度が6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備えた少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を使用して、方法工程c)で得られた固形分15~25体積%を有する予備石灰処理汁から凝固物を分離する方法工程、並びにe)清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分を得る方法工程を含む、清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分の製造方法を提供することにより解決する。
【0013】
本発明は、その基礎をなす技術的課題を、本発明による方法によって製造される清澄な予備石灰処理ビート汁、及び本発明による方法によって製造され、好ましくは引き続き濃厚化されるタンパク質含有画分を提供することによっても解決する。
【0014】
したがって、本発明は、有利にかつ驚くべきことに、第1の方法工程a)において、ビート粗汁を、例えば抽出、特に向流抽出によって、好ましくはビート、特にビートコセットから調製し、更なる方法工程b)において、このビート粗汁の予備石灰処理を実施し、それにより予備石灰処理汁が生成し、その中に非ショ糖分からの凝固物が形成される方法を意図している。予備石灰処理汁の固形分は、本発明によれば方法工程c)において、15~25体積%(方法工程b)で使用される予備石灰処理汁の全体積に対して)に調整されるべきである。本発明は、後続の方法工程d)において、こうして得られた予備石灰処理汁からの凝固物を少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機によって、こうして得られた清澄な予備石灰処理ビート汁から分離することを意図している。本発明により使用されるデカンタ型遠心分離機は、少なくとも1つの円筒形区画及び円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の角度が、6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備える。それに続く方法工程e)において、清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分の形態の凝固物が得られる。
【0015】
本発明によれば、提供される手順において、円筒形区画及び円錐形区画を有する少なくとも1つのモーター駆動の回転遠心ドラムであって、遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の角度が6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備えた少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、15~25体積%(方法工程b)で使用される予備石灰処理汁の全体積に対して)の固形分を有する予備石灰処理汁からタンパク質含有画分を分離するために使用することが意図されている。こうして得られる清澄な予備石灰処理ビート汁は、低減した固形分を有し、それも別の吐出角、特に5゜で及び/又は予備石灰処理汁中の別の固形分、特に10体積%で同じ組成及び体積のビート粗汁を使用した手順と比較して有する。こうして得られるタンパク質含有画分は、増加した固形分、単位時間当たりに得られる低減した糖量(清澄な予備石灰処理ビート汁中の糖損失の減少に相当する)及び単位時間当たりに得られる増加した固形物量を有し、それも別の吐出角、特に5゜で及び/又は予備石灰処理汁中の別の固形分、特に10体積%で同じ組成及び体積のビート粗汁を使用した手順と比較して有する。
【0016】
本発明による方法は、驚くべきことに、同時に得られる単位時間当たりの増加した固形物量及び固形分並びにタンパク質含有画分のより少ない糖量で凝固物を分離することにより、凝固物の分離後に得られる清澄な予備石灰処理ビート汁中の、すなわち清澄液(Klarlauf)の従来技術に対して明らかに改善された、すなわち減少した固形分をもたらす。特に、その原理に縛られることなく、本発明により提供される方法において、本発明により意図される吐出角、すなわち遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の角度と、凝固物の分離のために使用される予備石灰処理汁中の本発明により使用される特定の固形分との特別な組合せも、清澄液中の明らかに減少した糖損失及び驚くべき低さの固形分をもたらすと思われる。特に、吐出角と特別に使用される固形分との本発明による組合せはまた、驚くべきことに、タンパク質含有画分の増加した固形物吐出と一緒に低減した糖量並びに増加した固形物量及び固形分を同時にもたらすと思われる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態では、方法工程b)において、予備石灰処理は、ビート粗汁に石灰乳を、特に100mlのビート粗汁当たり0.1g~0.3gのCaOのアルカリ度まで添加することによって実施される。特に、pH値は、10~12、特に10.5~12、特に10.5~11.5、特に11まで上昇する。
【0018】
本発明によれば、好ましい実施形態では、予備石灰処理後及び形成された凝固物の分離前に方法工程b1)において、予備石灰処理汁に少なくとも1種のフロック形成助剤、例えばポリアニオン性フロック形成剤、例えばコポリマー、例えばアクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー、特に約5百万~2千2百万のモル質量を有するコポリマーを、好ましくは1ppm~8ppmの濃度まで添加することが意図されている。
【0019】
特に好ましい実施形態では、方法工程c)において、固形分は、好ましくは17~23体積%、特に18~22体積%、特に20体積%に調整される。
【0020】
特に好ましい実施形態では、方法工程d)で使用されるべき予備石灰処理汁の固形分を、方法工程c)において、少なくとも1つの分離除去装置、特にデカンタ、例えば動的デカンタ又は静的デカンタ、例えば沈降装置によって調整することが意図されている。
【0021】
特に好ましい実施形態では、方法工程d)及び/又はf)における少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機の遠心ドラムの長手方向軸線と遠心ドラムの円錐形区画の母線との間の角度(本明細書では「吐出角」又は「ドラムの吐出角」とも解釈される)が6゜~10゜、好ましくは8゜~10゜、好ましくは8゜であることが意図されている。
【0022】
特に好ましい実施形態では、方法工程e)で得られる清澄な予備石灰処理ビート汁の少なくとも一部を、方法工程b)からの予備石灰処理汁と混合することが意図されている。方法工程c)では、引き続き固形分が調整され、引き続き方法工程d)において凝固物が分離される。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態では、方法工程f)において、方法工程e)で得られるタンパク質含有画分を、特に方法工程e)で得られるタンパク質含有画分を15~25体積%、特に20体積%のタンパク質含有画分の固形分にまで事前に希釈した後に濃厚化、すなわち濃縮することが意図されている。特にそして好ましくは、方法工程f)は、少なくとも1つの更なるデカンタ型遠心分離機を使用して実施される。特定の実施形態では、この更なるデカンタ型遠心分離機は、少なくとも1つの円筒形区画及び少なくとも1つの円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の角度が、6゜~10゜、有利には8゜~10゜、好ましくは8゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された少なくとも1つの押出スクリューを備える。特に好ましい実施形態では、上述の少なくとも1つの更なるデカンタ型遠心分離機による方法工程e)で得られるタンパク質含有画分の濃縮のために、この少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大50%で動作させる。
【0024】
本発明による手順は、方法工程a)~e)の順序、任意に方法工程f)も意図しており、特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、方法工程a)~e)、特にa)~f)からなり、すなわち方法工程a)~e)の間に、特に方法工程a)~f)の間に更なる方法工程は行われない。特に好ましい実施形態では、方法工程a)~e)、特にa)~f)が、正確に示される順序a)、b)、c)、d)、e)又はa)、b)、c)、d)、e)、f)で実施される本発明による方法が意図されている。本発明によれば、さらに、それらの方法工程を同時に、時間的に重複して又は続けて実施することが意図されている。特に、方法工程b)及びc)並びに方法工程d)及びe)は、互いに同時に又は時間的に部分的に重複して実施され得る。
【0025】
本発明はまた、本発明による方法の1つにより製造できる、特に製造されるタンパク質含有画分を提供する。
【0026】
本発明はまた、本発明による方法の1つにより製造できる、特に製造される清澄な予備石灰処理ビート汁を提供する。
【0027】
本発明はまた、清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分を得るための、円筒形区画及び円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、遠心ドラムの長手方向軸線と上記円錐形区画の母線との間の角度が6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備えたデカンタ型遠心分離機の使用に関する。
【0028】
本発明に関して、「ビート粗汁」とは、ビート、例えばビートコセットから、抽出法又は圧搾法によって得ることができ、特に、例えば拡散法における例えば65℃~75℃での向流抽出等の熱抽出法、電気穿孔法支援(Elektroporation gestuetzt)の抽出法又は圧搾法によって抽出される糖汁、つまり水性の糖含有媒体と解釈される。この糖に富んだビート粗汁は、糖(ショ糖)の他になおも、ビートの種々の有機成分及び無機成分(非ショ糖分と呼ばれる)を含有する。
【0029】
本発明に関して、「清澄な予備石灰処理ビート汁」とは、タンパク質含有画分の分離後に清澄液として得られる糖汁、つまり糖含有水性媒体と解釈される。清澄液は、本発明によれば、それが好ましい実施形態では本発明によれば低い固形分(体積%)、すなわち12体積%以下の固形分を有することを特徴とする。本発明によれば、好ましい実施形態では、清澄な予備石灰処理ビート汁中の固形分は、1~12体積%、特に1~10体積%、特に1~6体積%、特に2~12体積%、特に2~10体積%、特に2~6体積%、特に4~12体積%、特に4~10体積%、特に4~6体積%に達する。
【0030】
本発明に関して、ビート粗汁中に含まれる「非ショ糖分」とは、タンパク物質、多糖類及び細胞壁成分等の高分子物質並びに無機酸又は有機酸、アミノ酸及び鉱物物質等の低分子化合物と解釈される。細胞壁成分は、特にペクチン、リグニン、セルロース及びヘミセルロースである。これらの物質は、タンパク質の他に特に核タンパク質又は糖タンパク質が属するタンパク物質と同様に、親水性巨大分子としてコロイド分散形で存在する。有機酸は、例えば乳酸塩、クエン酸塩、ペクチン酸又はシュウ酸塩である。無機酸は、特に硫酸塩又はリン酸塩である。
【0031】
「予備石灰処理」とは、ビート粗汁に石灰乳を、特に100mlのビート粗汁当たり約0.1g~0.3gのCaOのアルカリ度まで添加することと解釈される。予備石灰処理では、ビート粗汁は、穏やかな条件下でアルカリ化され、その際、ビート粗汁のpH値は、約6から約11.5にまで上昇する。予備石灰処理は、ペクチン及びタンパク質等の非ショ糖分のフロック形成のためだけでなく、難溶性のカルシウム塩の沈殿のためにも用いられる。
【0032】
「石灰乳」とは、本発明によれば、特に、焼石灰(酸化カルシウム)と水との激しく発熱性の反応において形成され、予備石灰処理及び本石灰処理において石灰処理剤として使用される水酸化カルシウムと解釈される。予備石灰処理におけるビート粗汁への石灰乳の添加は、非ショ糖分の沈殿又は凝塊を凝固物の形態で引き起こす。
【0033】
本発明に関して、方法工程b)において予備石灰処理及び任意選択でフロック形成助剤の添加により凝固物の形態で分離されるビート粗汁の非ショ糖分は、「タンパク質含有画分」又は「コロイド画分」と呼ばれる。この非ショ糖分はアルカリ性であり、その有機的性質に基づき傷みやすく、チキソトロープ性である。その非ショ糖分は非ニュートン流体のように挙動し、特に粘性はせん断応力下でより低くなり、その応力後には再び初期粘性が存在する。
【0034】
本発明によれば、「凝固物」とは、フロック形成過程に基づいて形成されるビート粗汁中に存在する非ショ糖分の集塊物と解釈される。この凝固物は、特に、有機酸又は無機酸のアニオンとカルシウムとの反応によって形成される不溶性又は難溶性の塩、並びに通常はビート粗汁中にコロイド分散的に分散しているタンパク物質、多糖類及び細胞壁成分等の、特に親水性特性を有する述べられたビート粗汁の高分子成分を含む。特に、凝固物中に、したがってタンパク質含有画分中には、コロイド、特にペクチン、タンパク質、セルロース及びヘミセルロースと同様に、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びペクチン酸等のアニオンが存在する。フロック形成過程は、架橋性ポリマーの吸収によって凝集が起こるフロキュレーション、及び反発力の減少又は低下によって凝集が起こる凝塊に分けられる。フロック形成速度は、温度、pH値及び石灰乳の添加様式に依存する。個々の糖汁構成成分、例えばシュウ酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン及び硫酸イオン等のアニオン並びにペクチン及びタンパク質等のコロイドの沈殿は、決められたpH範囲内で起こり、その際、このpH範囲内で沈殿物の濃化が行われる。最大量のコロイドがフロック形成し、不溶性カルシウム塩の沈殿がほぼ完全となるpH値は、予備石灰処理の至適フロック形成点と呼ばれる。至適フロック形成点で沈殿が行われると、コロイド分散された高分子の糖汁成分の一様の安定なフロック形成が生じる。
【0035】
ペクチン及びタンパク質の沈殿及び凝塊は、決められた温度に依存した滞留時間を必要とする。本発明によれば、予備石灰処理が低温又は高温の予備石灰処理として実施され得ることが意図されている。好ましくは、低温の予備石灰処理は、約38℃~40℃の予備石灰処理温度で実施される。しかしながら、本発明によれば好ましくは、ビート粗汁への石灰乳の添加を高温の予備石灰処理として、55℃~75℃のビート粗汁の温度で実施する可能性もある。ビート粗汁の予備石灰処理のための石灰乳の添加は、本発明によれば好ましくは漸進的な予備石灰処理として行われる。漸進的な予備石灰処理とは、好ましくは石灰乳のゆっくりとした供給により又は少ない断続的な石灰乳の個別添加により、ビート粗汁のアルカリ度又はpH値を徐々に増加させて、特に至適pHをゆっくりと通過させることと解釈される。
【0036】
本発明によれば好ましくは、予備石灰処理の間のビート粗汁の漸進的なアルカリ化が、既にアルカリ化されたビート粗汁を通じた向流において、例えば炭酸化段階からの泥状汁濃縮物によって行われ得ることが意図されている。向流での漸進的なアルカリ化は、より高いアルカリ度の供給される糖汁と低減したアルカリ度の糖汁とを、混合域内で異なるアルカリ度勾配が生じ得ないように可能な限り素早く混ぜ合わせることを意味する。
【0037】
本発明によれば、方法工程e)において、方法工程d)で予備石灰処理汁から分離されたタンパク質含有画分を、好ましくは収集によって得ることが意図されている。更なる好ましい一実施形態では、本発明によれば、方法工程e)で得られるタンパク質含有画分を、好ましくは方法工程d)で使用されるような更なる本発明によるデカンタ型遠心分離機を使用することによって、任意の方法工程f)において濃厚化することが意図されている。本発明によれば、この「濃厚化」とは、タンパク質含有画分を35%~50%、好ましくは38%~45%、好ましくは45%の好ましい固形分にまで濃厚化することと解釈される(タンパク質含有画分中の固形分は、本発明の教示においては、特段の指示がない限り、全組成物の重量に対する)。
【0038】
本発明に関して、予備石灰処理汁の「固形分」とは、特に4000回転/分及び10分での遠心分離と上清の除去後に得られる予備石灰処理汁の、好ましくは体積%での割合と解釈される。
【0039】
本発明に関して、タンパク質含有画分の「固形分」とは、例えば乾燥による水の除去後に得られるタンパク質含有画分の、好ましくは重量%での割合と解釈される。
【0040】
本発明に関して、タンパク質含有画分の「固形物量」とは、方法工程e)で本発明により得られるタンパク質含有画分の、好ましくは1時間当たりキログラムでの、単位時間当たり質量と解釈される。この固形物量は、タンパク質含有画分の密度の測定後に、タンパク質含有画分の測定された単位時間当たり体積から計算される。
【0041】
本発明に関して、清澄な予備石灰処理ビート汁中の「固形分」とは、特に4000回転/分及び10分での遠心分離と上清の除去後に得られる清澄な予備石灰処理ビート汁の割合と解釈される。
【0042】
本発明に関して、タンパク質含有画分の「糖量」とは、凝固物の予備石灰処理汁からの分離後にタンパク質含有画分中に存在する糖の質量と解釈される。
【0043】
「デカンタ」又は「デカンター」、特に静的デカンタ又は動的デカンタとは、重力による沈降原理に従って、沈降した物質を液体から機械的に除去するために用いられる装置又は機器と解釈される。
【0044】
本発明によるデカンタ型遠心分離機は、少なくとも1つの円筒形区画及び少なくとも1つの円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムと該遠心ドラム中で回転可能に装着された少なくとも1つの押出スクリューと共に、少なくとも1つの供給口、少なくとも1つの中央排出口及び少なくとも1つの固形物吐出部を備える。
【0045】
特に好ましい実施形態では、方法工程d)及び/又はf)における遠心分離機の動作の間のトルクは、許容可能な最大トルクの最大50%、特に最大40%であることが意図されている。更なる好ましい一実施形態では、遠心分離機の動作の間のトルクは、許容可能な最大トルクの10%~50%、好ましくは20%~50%、好ましくは30%~50%、好ましくは10%~40%、好ましくは20%~40%、好ましくは30%~40%であることが意図されている。
【0046】
本発明に関して、「許容可能な最大トルク」とは、永続的な損傷を残すことなく、遠心分離機を動作することができる最大トルクと解釈される。
【0047】
本発明に関して、「永続的な損傷」とは、意図された動作を大きく損なう損傷、特に遠心分離機がもはや機能不能であるか、又は遠心分離機が本発明に関して品質的に不十分な生成物を製造する範囲内で、特に、例えば15体積%超の清澄液中の固形分を有する清澄な予備石灰処理ビート汁若しくは35重量%未満の固形分を有するタンパク質含有画分を製造する範囲内でその可能出力が低下することになる損傷と解釈される。
【0048】
本発明に関して、「フロック形成助剤」とは、コロイド状懸濁液中の粒子がフロックへと凝塊し、例えば沈降後に系から除去可能であるように粒子のゼータ電位に影響を及ぼす物質と解釈される。したがって、フロック形成助剤は、大抵は負に帯電した粒子の静電的反発作用を克服せねばならない。本発明によれば、フロック形成助剤は、沈降促進剤でもあり得る。
【0049】
「フロック形成助剤」又は「沈降促進剤」とは、本発明に関して、固形物粒子のより大きな単位又はフロックへの集塊化を引き起こす化合物と解釈される。フロックとして集塊化することにより、固形物は、そのより大きな質量に基づき顕著により迅速に沈降し得る。同時に、個々の粒子間の孔隙が拡大するため、沈降した泥漿中に存在する水を濾過又は遠心分離により容易に除去することができる。本発明により好ましく使用されるポリアニオン性フロック形成助剤は、液相中の粒子の分散に影響を及ぼすのではなく、架橋性ポリマーの吸収により粒子の凝塊を引き起こすため、いかなる凝塊作用も有しない。
【0050】
好ましい実施形態において本発明によりポリアニオン性フロック形成助剤として使用されるアクリルアミド及びアクリル酸ナトリウムからのコポリマーは、約5百万~約2千2百万の比較的大きな分子量を有する合成の水溶性有機高分子電解質である。これらの化合物のイオン性は、中程度から強度である。特に好ましくは、フロック形成助剤として、製品2440及び2540(Stockhausen社)並びにNA 945(Clarflok社)が使用される。
【0051】
更なる有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
本発明は例えば以下の態様を含む。
[項1]
ビート粗汁から清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分を製造する方法であって、以下の方法工程:
a)ビート粗汁を調製する方法工程、
b)方法工程a)で調製されたビート粗汁を予備石灰処理することで、得られた予備石灰処理汁中に形成される非ショ糖分からの凝固物を形成しながら、予備石灰処理汁を得る方法工程、
c)前記予備石灰処理汁中の固形分を15~25体積%(方法工程b)で調製された予備石灰処理汁の全体積に対して)に調整する方法工程、
d)円筒形区画及び円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、前記遠心ドラムの長手方向軸線と前記円錐形区画の母線との間の角度が6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備えた少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を使用して、方法工程c)で得られた予備石灰処理汁から凝固物を分離する方法工程、並びに
e)清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分の形態の分離された凝固物を得る方法工程
を含む、方法。
[項2]
前記予備石灰処理汁の固形分が、方法工程c)において少なくとも1つの分離除去装置によって調整される、項1に記載の方法。
[項3]
方法工程f)において、前記方法工程e)で得られたタンパク質含有画分を、少なくとも1つの更なるデカンタ型遠心分離機を使用して濃厚化する、項1又は2に記載の方法。
[項4]
前記方法工程e)で得られた清澄な予備石灰処理ビート汁の少なくとも一部を、更なる方法工程において、方法工程b)からの予備石灰処理汁と混合し、清澄な予備石灰処理ビート汁と混合された予備石灰処理汁が得られ、方法工程c)において前記固形分を調整し、引き続き方法工程d)において凝固物分離工程に供給する、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
前記遠心ドラムの長手方向軸線と前記円錐形区画の母線との間の角度が8゜~10゜である、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機の遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の角度がちょうど8゜である、項5に記載の方法。
[項7]
前記方法工程d)で使用される予備石灰処理汁が20体積%の固形分を有する、項1から6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記方法工程d)及び/又はf)で使用される少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大50%のトルクで動作させる、項1から7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
前記方法工程d)及び/又はf)で使用される少なくとも1つのデカンタ型遠心分離機を、許容可能な最大トルクの最大40%のトルクで動作させる、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
方法工程b)に引き続き、方法工程b1)において、フロック形成を少なくとも1種のフロック形成助剤を添加して実施する、項1から9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
清澄な予備石灰処理ビート汁及びタンパク質含有画分を得るためのデカンタ型遠心分離機の使用であって、デカンタ型遠心分離機が、円筒形区画及び円錐形区画を有するモーター駆動の回転遠心ドラムであって、前記遠心ドラムの長手方向軸線と前記円錐形区画の母線との間の角度が6゜~10゜である遠心ドラム、及び該遠心ドラム中で回転可能に装着された押出スクリューを備える、使用。
[項12]
項1から10のいずれか一項に記載の方法により製造できるタンパク質含有画分。
[項13]
項1から10のいずれか一項に記載の方法により製造できる清澄な予備石灰処理ビート汁。
【0052】
本発明を、以下の実施例に基づき、より詳細に説明する。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
ビートからの粗汁を、撹拌機構、ビート粗汁用の供給口及び排出口と共にpH電極も備えた加熱可能な容器中に入れて、55℃に加熱する。20分の期間にわたり、その粗汁に石灰乳を、予備石灰処理の至適フロック形成点のpH値になるまで徐々に添加する(100mlの糖汁当たり約0.1g~0.3gのCaO)。沈降速度を高めるために、引き続きポリアニオン性フロック形成助剤(Praestol 2540TR)を添加する。予備石灰処理汁を排出し、静的デカンタを用いて20体積%の固形分に調整し、遠心ドラムの長手方向軸線と円錐区画の母線との間の8゜の角度を有するデカンタ遠心機に供給し、許容可能な最大トルクの10%~30%で動作させる。予備石灰処理汁(供給物)は、デカンタ型遠心分離機に3000L/hで供給される。タンパク質含有画分を予備石灰処理汁から分離し、固形物吐出部を介してデカンタ型遠心分離機から取り出し、清澄な予備石灰処理ビート汁をデカンタ型遠心分離機の中央排出口から取り出す。この場合に、タンパク質含有画分の固形分は38重量%~42重量%であり、固形物量は192kg/hの乾燥物質である。タンパク質含有画分の糖量は15kg/hであり、清澄な予備石灰処理ビート汁中の固形分は4~6体積%である。
【0054】
[実施例2]
遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の種々の吐出角の比較
ビート粗汁を、実施例1でのように予備石灰処理し、3000L/h及び20体積%の固形分で遠心ドラムの長手方向軸線と円錐形区画の母線との間の5゜、8゜、10゜及び15゜のそれぞれの吐出角を有する種々のデカンタ型遠心分離機に供給する。異なるデカンタ型遠心分離機は、凝固物の分離を可能にするために、それぞれ異なるトルクで動作させる。それぞれ異なるデカンタ型遠心分離機により分離されたタンパク質含有画分及び清澄な予備石灰処理ビート汁は、この場合に清澄な予備石灰処理ビート汁の固形分に違いを有すると共に、タンパク質含有画分の糖量並びに固形物量及び固形分にも違いを有する(表1を参照)。5゜の角度を有するデカンタ型遠心分離機を使用することにより、タンパク質含有画分における増加した糖量並びに低い固形分(重量%での乾燥物質(TS))及び低減した固形物量(kg/h)がもたらされると共に、清澄な予備石灰処理ビート汁において増加した固形分(体積%)がもたらされる。8゜の角度を有するデカンタ型遠心分離機を使用することにより、特に清澄な予備石灰処理ビート汁が得られると共に、タンパク質含有画分における高い固形分、高い固形物量及び低減した糖量がもたらされる。10゜の角度を有するデカンタ型遠心分離機を使用することにより、同様にタンパク質含有画分の同等の糖量及び固形物量並びに固形分がもたらされる。15゜の角度を有するデカンタ型遠心分離機では、許容可能な最大トルクを短期間超過した場合でもタンパク質含有画分の予備石灰処理汁からの分離に至らない。
【0055】
【0056】
[実施例3]
供給物中の固形分の比較
実施例1に従って製造された予備石灰処理汁を、静的デカンタを用いて10体積%、20体積%及び30体積%の固形分に調整する。これらの様々に調整された予備石灰処理汁を、それぞれ8゜の吐出角を有するデカンタ型遠心分離機に供給する。異なる固形分を有する予備石灰処理汁の使用により、それぞれ異なる結果が得られる。
【0057】
10体積%の固形分を有する予備石灰処理汁を使用することにより、タンパク質含有画分の不十分な分離がもたらされ、30体積%の固形分を有する予備石灰処理汁を使用することにより、清澄液中の増加した固形分がもたらされる(表2を参照)。20体積%の固形分を有する予備石灰処理汁を使用することにより、非常に清澄な予備石灰処理ビート汁がもたらされると共に、タンパク質含有画分における高い固形分がもたらされる。
【0058】
【0059】
[実施例4]
実施例1に従って製造された15体積%の固形分を有する予備石灰処理汁を、10゜の吐出角を有するデカンタ型遠心分離機(実施例1に記載されるように動作させる)に供給する。得られた清澄な予備石灰処理ビート汁を収集し、更に処理する。36重量%の固形分を有するタンパク質含有画分を収集し、20体積%の固形分にまで希釈し、更なるデカンタ型遠心分離機に供給する。この更なるデカンタ型遠心分離機は8゜の吐出角を有し、許容可能な最大トルクの最大50%のトルクで動作させる。タンパク質含有画分を、更なるデカンタ型遠心分離機を用いて45重量%の固形分にまで濃厚化する。