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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】複合吸音層
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20231027BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20231027BHJP
   D04H 1/593 20120101ALI20231027BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20231027BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20231027BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20231027BHJP
   B60R 13/08 20060101ALN20231027BHJP
【FI】
G10K11/168
D04H1/4374
D04H1/593
D04H3/14
B32B5/26
G10K11/162
B60R13/08
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020539084
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2019051372
(87)【国際公開番号】W WO2019162849
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】18158093.7
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519395259
【氏名又は名称】ロウ アンド ボナー インク.
【氏名又は名称原語表記】Low & Bonar Inc.
【住所又は居所原語表記】1301 Sand Hill Road, Enka, NC 28728, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロニー オデル ラッシュ
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-215117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291068(US,A1)
【文献】特開2007-279649(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03246442(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/168
D04H 1/4374
D04H 1/593
D04H 3/14
B32B 5/26
G10K 11/162
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の不織布材料と第2の不織布材料とを含む複合吸音層であって、前記第1の不織布材料は、線密度が5~50dtexの範囲内であるフィラメントからなる熱接着された不織布材料であり、前記第2の不織布材料は、前記第1の不織布材料に連結したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布であり、前記複合吸音層の総質量は、100g/m~500g/mの範囲内である、複合吸音層。
【請求項2】
前記線密度が、5~25dtex、好ましくは6~20dtex、より好ましくは7~15dtexの範囲内である、請求項1記載の複合吸音層。
【請求項3】
前記第1の不織布材料が、第1の融解温度を有する第1のポリマーと、前記第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する第2のポリマーとを含む、請求項1または2記載の複合吸音層。
【請求項4】
前記第1のポリマーが、第1の単一成分フィラメントに含まれ、前記第2のポリマーが、第2の単一成分フィラメントに含まれる、請求項3記載の複合吸音層。
【請求項5】
前記第1のポリマーが、二成分フィラメントの第1の成分に含まれ、前記第2のポリマーが、二成分フィラメントの第2の成分に含まれる、請求項3記載の複合吸音層。
【請求項6】
前記第1のポリマーが、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートから選択されるポリエステルであるか、またはポリアミド、好ましくはポリアミド-6であるか、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリマーである、請求項から5までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項7】
前記第2のポリマーが、ポリアミドもしくはそのコポリマー、ポリエステルもしくはそのコポリマー、またはポリオレフィンもしくはそのコポリマーである、請求項から6までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項8】
前記第1の不織布材料が、ポリマーコーティング、好ましくはポリエチレンを含むか、またはポリエチレンからなるコーティングで含浸されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項9】
前記複合吸音層が、接着剤を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の複合吸音層。
【請求項10】
前記接着剤が、粉体接着剤である、請求項9記載の複合吸音層。
【請求項11】
前記粉体接着剤が、ポリエチレン粉末である、請求項10記載の複合吸音層。
【請求項12】
前記接着剤の質量が、10~100g/m、好ましくは10~50g/m、より好ましくは12~25g/mの範囲内である、請求項9から11までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項13】
前記第2の不織布材料が、線密度が3dtex以下であるステープルファイバーからなるカーディング加工済みのステープルファイバー不織布である、請求項1から12までのいずれか1項記載の複合吸音層。
【請求項14】
前記第2の不織布材料を構成するステープルファイバーが、2dtex以下の線密度を有する、請求項13記載の複合吸音層。
【請求項15】
前記第2の不織布材料を構成するステープルファイバーが、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートもしくはポリトリメチレンテレフタレートから選択されるポリエステル、ポリアミド、好ましくはポリアミド-6、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンもしくはポリプロピレン、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリマーから形成されている、請求項13または14記載の複合吸音層。
【請求項16】
前記第2の不織布材料が、少なくとも2種類の単一成分ステープルファイバーの混合物を含んでいる、請求項13から15までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項17】
前記第2の不織布材料を構成するステープルファイバーが、二成分ステープルファイバー、好ましくは芯鞘型二成分ステープルファイバー、サイドバイサイド型二成分ステープルファイバーまたは海島型二成分ステープルファイバーである、請求項13から16までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項18】
前記第2の不織布材料を構成するステープルファイバーが、芯鞘型二成分ステープルファイバーであり、ポリエステル芯、好ましくはポリエチレンテレフタレート芯と、ポリオレフィン鞘、好ましくはポリエチレン鞘を含む、請求項17記載の複合吸音層。
【請求項19】
前記複合吸音層がさらなる層、好ましくはポリオレフィン膜、より好ましくはポリエチレン(PE)膜からなる層を含む、請求項1から18までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項20】
前記複合吸音層のレイル値が、300Rayl~7500Raylの範囲内である、請求項1から19までのいずれか1項記載の複合吸音層。
【請求項21】
前記複合吸音層のレイル値が3500Rayl~7500Raylの範囲内である、請求項20記載の複合吸音層。
【請求項22】
前記複合吸音層の厚さが10mm以下である、請求項1から21までのいずれか1項記載の複合吸音層。
【請求項23】
前記複合吸音層は、DIN/ISO9073-3(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の縦方向の破断強度が、少なくとも150N/5cm、好ましくは少なくとも200N/5cm、より好ましくは少なくとも300N/5cmである、請求項1から22までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項24】
前記複合吸音層は、DIN/ISO9073-3(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の縦方向の破断伸びが、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%である、請求項1から23までのいずれか1項に記載の複合吸音層。
【請求項25】
請求項1から24までのいずれか1項記載の前記複合吸音層を含む、騒音振動ハーシュネス製品。
【請求項26】
基材に接着された請求項1から24までのいずれか1項記載の前記複合吸音層を含む、請求項25記載の騒音振動ハーシュネス製品。
【請求項27】
前記騒音振動ハーシュネス製品のレイル値が、3700Rayl~5500Raylの範囲内である、請求項25記載の騒音振動ハーシュネス製品。
【請求項28】
前記騒音振動ハーシュネス製品が、車用タフテッドカーペット、ダッシュボードシステムまたはトランクシステムである、請求項25から27までのいずれか1項記載の騒音振動ハーシュネス製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音層、特に自動車用途の吸音層に関する。
【0002】
車両の静音化に役立つ騒音振動ハーシュネス(NVH)製品などの製品、例えば車用タフテッドカーペットなどの自動車用床材製品またはダッシュボードシステムに吸音層を用いることができる。
【0003】
自動車用床材製品に吸音層として用いられる周知の製品は、例えば、フロイデンベルク製のEvolon(登録商標)などのマイクロファイバー不織布またはエアレイド不織布である。こうしたマイクロファイバー不織布またはエアレイド不織布の吸音層は、カーペットの裏側に配置される。しかし、一層のエアレイド不織布を使用した場合には、自動車産業における吸収および遮蔽の目標を超えることはおろか、満たすことも非常に難しい。
【0004】
しかし、吸音層の吸音性能の向上および/または騒音振動ハーシュネス(NVH)の完成品の軽量化を行う必要性が、なおも存在する。
【0005】
本発明は、騒音振動ハーシュネスの完成品の吸音性能を向上させ、かつ/またはその軽量化を可能にする吸音層を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の目的は、請求項1記載の複合吸音層により達成される。
【0007】
本発明による複合吸音層は、車両の静音化、軽量化および経済性の向上に役立つ騒音振動ハーシュネス(NVH)製品などの製品に使用することができる吸音層であり得る。この複合吸音層は、従来技術による、厚く、非常に高度なエアレイド吸音層に比べ、薄くて軽い硬質の吸音層と考えることができる。複合吸音層の総質量は、100g/m~500g/mの範囲内である。
【0008】
複合吸音層は、最終的な複合部材および/または最終的な騒音振動ハーシュネス製品における所望の通気抵抗(AFR)/レイル範囲値を目標としつつ、要求の厳しい自動車のプロセスに耐えることができる。複合吸音層は、異なる2つのレイル範囲、例えば、加工用のレイル範囲および既製品用のレイル範囲で利用することができる。例えば、既製品は、全範囲および/またはさらなる吸音支援を必要とする所望の領域のために戦略的に配置されるダイカット部品向けのAFR/レイル値を有していてもよく、また加工用製品は、加圧成形にともなって高温および低温を示す自動車のプロセス中に耐え、かつ所望のAFR/レイル範囲値へと進み得る全範囲のための半加工された吸音層であってもよい。
【0009】
車用タフテッドカーペットなどの自動車用床材製品の製造業者からの要求もしくはダッシュボードシステムにおける要求、および/または自動車製造業者からの要求に応じて、複合吸音層のレイル値は、300Rayl~7500Rayl、好ましくは500Rayl~5500Raylの範囲内であり得る。レイル値は固有音響インピーダンスであり、1Rayl=1Pa・s/mである。
【0010】
全範囲および/またはさらなる吸音支援を必要とする所望の領域のために戦略的に配置されるダイカット部品については、既製品である複合吸音層のレイル値は、500Rayl~5500Rayl、好ましくは3500Rayl~5500Raylの範囲内であってもよい。
【0011】
半加工された複合吸音層については、複合吸音層のレイル値は、300Rayl~1500Rayl、好ましくは500Rayl~1200Raylの範囲内であってよく、この半加工された複合吸音層は、加圧成形にともなって高温および低温を示す自動車のプロセス中に、3700Rayl~5500Raylの範囲内に及び得る。本発明による複合吸音層は、加圧成形にともなって高温および低温を示す自動車のプロセス中に直面する条件を利用し、騒音振動ハーシュネス(NVH)製品において3700Rayl~5500Raylの範囲内のレイル値を得ることができる。
【0012】
ASTM E1050によるインピーダンス管測定によって求めた場合、複合吸音層は、騒音振動ハーシュネス(NVH)製品によって、少なくとも10dB、好ましくは少なくとも20dBの低減を達成することが可能である。
【0013】
複合吸音層は、線密度が2~50dtexの範囲内であるフィラメントからなる熱接着された不織布材料である第1の不織布材料と、第1の不織布材料に連結したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布である第2の不織布材料とを含み、これにより、該複合吸音層は、相対的に軽量の騒音振動ハーシュネス(NVH)製品を可能にしつつ、該複合吸音層を含む騒音振動ハーシュネス製品の吸音性能を確保する所望の通気抵抗(AFR)またはレイル範囲を有することができる。
【0014】
複合吸音層は、デカップラである防音壁と考えることができ、例えば、消音が望まれ得る自動車業界、商業用または住居の床材および他の建築製品に用いることができる。
【0015】
複合吸音層は、好ましくはASTM E90に従って求められる優れた吸収性能および適度な音響透過損失(STL)性能を提供する。
【0016】
複合吸音層は、線密度が5~50dtexの範囲内であるフィラメントからなる熱接着された不織布材料である第1の不織布材料と、第1の不織布材料に連結したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布である第2の不織布材料とを少なくとも含み、複合吸音層の総質量は、100g/m~500g/mの範囲内である。
【0017】
第1の不織布材料は、線密度が5~25dtex、好ましくは6~20dtex、より好ましくは7~15dtexの範囲内であるフィラメントからなることが好ましく、それにより、第1の不織布材料の表面開放性を相対的に高くすることができ、それにより、複合吸音層を含む最終的な騒音振動ハーシュネス(NVH)製品、例えばタフテッドカーペットに対する所望の通気抵抗(AFR)またはレイル範囲に到達するようにいくらかの空隙率を維持しつつ、生繊維カーペットの裏側に、すなわちパイル糸がタフティングされる一次カーペット裏材に接着させるときに、あるいは、例えばエアレイド不織布、ニードルパンチ不織布、高級ビニルタイルまたは壁もしくは天井板などの他の基材の裏側に接着させるときに、複合吸音層の第1の不織布材料に、ポリマーコーティング、例えば、ポリエチレンを含むか、またはポリエチレンからなるコーティングを含浸させることができる。ポリマーコーティングを含浸させた場合に、線密度が5dtex未満であるフィラメントからなる不織布材料が(ほぼ)完全に塞がれることが観察された。これにより通気抵抗が非常に高いレベルにまで上がり、これにより、第1の不織布材料は、騒音振動ハーシュネス(NVH)製品に利用される使用目的に適さなくなる。
【0018】
第1の不織布材料にポリマーコーティングを含浸させたときに複合吸音層に保持される空隙率は、複合吸音層内へと進行し、複合吸音層内に吸収され、かつ消失される音に曲がりくねった経路を提供するのに十分である。本発明による複合吸音層は、軽量の床材製品、ダッシュおよびトランクシステムなどの騒音振動ハーシュネス(NVH)製品を得るための自動車のプロセスにおける温度および圧力に耐えることができる、多層で薄く、軽い、加工可能な吸音材を提供する。
【0019】
第1の不織布材料にポリマーコーティングを含浸させたときに複合吸音層に保持される空隙率は十分に低く、吸音層内をまっすぐ進行する音を阻止する。例えば、車両の外部からウインドウシールを通した音、エンジンおよび車輪の騒音が車両に侵入し得るか、または会話、ラジオなどからの音が車両の内部に存在し得る。これらの音は、窓ガラス、ダッシュボードおよびドアプラスチックのような硬質表面で反射され得る。フロアシステムの多孔性が高い場合、音は下部構造の金属に当たり、フロアシステムを通って車両室内に反射して再び戻るまでフロアシステムをまっすぐに進む。これは、車両室内の吸音効果にとって好ましくない。
【0020】
複合吸音層を、例えば、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布、高級ビニルタイル、壁もしくは天井板、壁紙、他の床材、壁もしくは天井製品などの他の基材と組み合わせて有利に用いることもできる。
【0021】
第1の不織布材料の表面開放性が相対的に高いため、複合吸音層の第1の不織布材料に対する通気抵抗(AFR)/レイル値が非常に低く、例えば、100Rayl未満である。しかし、第1の不織布材料を第2のカーディング加工済みのステープルファイバー不織布と組み合わせることで、複合吸音層にポリマーコーティングを含浸させたときに複合吸音層が完全に塞がれることを回避しつつ、複合吸音層の通気抵抗が十分に高くなることが保証される。
【0022】
複合吸音層は、接着材、好ましくは粉末接着剤を含んでもよい。この接着材は、複合吸音層の第1の不織布材料および/または第2の不織布材料に付着し、複合吸音層の通気抵抗をさらに上げることができる。複合吸音層に含まれる接着材の質量は、好ましくは10~100g/m、より好ましくは10~50g/m、より好ましくは12~25g/mの範囲内である。
【0023】
第1の不織布層の相対的に高い線密度のフィラメントにより、特にフィラメントを機械的に引っ張ることにより得られる高い弾性率をフィラメントが有する場合、複合吸音層の硬さが増加する。これは、多層の吸収体/デカップラである吸音層に有利であることがわかる。一実施形態では、第1の不織布層のフィラメントは芯鞘型二成分フィラメントであり、芯鞘型二成分フィラメントの交差での高頻度の熱接着点により複合吸音層の硬さがさらに増加する。
【0024】
複合吸音層の第1の不織布材料は、フィラメントの交差でフィラメントが接着される熱接着された不織布である。第1の不織布材料は、第1の融解温度を有する第1のポリマーと、第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する第2のポリマーとを含み、第2のポリマーが融解する、または少なくとも軟化する温度および圧力で第1の不織布材料を熱接着させることができ、フィラメントの交差する点、すなわち、フィラメントの交差で接着点を形成することが好ましい。
【0025】
複合吸音層の第1の不織布材料の第1のポリマーは、NVH製品、特に車用タフテッドカーペットを製作するプロセス時に発生する温度に耐えることができる任意のポリマーであってもよい。第1のポリマーは、ポリエステルであることが好ましい。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレート、またはポリアミド、例えばポリアミド-6など、またはそれらの混合物もしくはコポリマーから選択してよい。第1のポリマーは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0026】
複合吸音層の第1の不織布材料の第2のポリマーは、第1のポリマーより低い融解温度を有する任意のポリマーであってもよい。第2のポリマーは、例えばポリアミド-6などのポリアミドもしくはそのコポリマー、または例えばポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルもしくはそのコポリマー、または例えばポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィンもしくはそのコポリマーであることが好ましい。
【0027】
一実施形態では、第1のポリマーは、第1の単一成分フィラメントを形成し、第2のポリマーは、第2の単一成分フィラメントを形成してもよい。すなわち、第1のポリマーは、第1の単一成分フィラメントに含まれ、第2のポリマーは、第2の単一成分フィラメントに含まれる。
【0028】
他の実施形態では、第1のポリマーは、二成分フィラメントの第1の成分を形成し、第2のポリマーは、二成分フィラメントの第2の成分を形成してもよい。すなわち、第1のポリマーは、二成分フィラメントの第1の成分に含まれ、第2のポリマーは、二成分フィラメントの第2の成分に含まれ、それにより、複合吸音層の破断強度および/または硬さがさらに増加する。二成分フィラメントは、芯鞘型二成分フィラメント、サイドバイサイド型二成分フィラメントまたは海島型二成分フィラメントを含む任意の構成を有してもよい。二成分フィラメントは、芯鞘型二成分フィラメントであることが好ましい。
【0029】
複合吸音層の第2の不織布材料は、カーディング加工済みのステープルファイバー不織布である。第2の不織布材料は、熱接着されたカーディング加工済みのステープルファイバー不織布であってもよい。複合吸音層の第1の不織布層と第2の不織布層との双方を熱接着させる場合、複合吸音層は熱可塑性ポリマーのみから構成されてもよい。熱可塑性ポリマーは、複合吸音層の再利用性を向上させる。
【0030】
複合吸音層に含まれる第2の不織布材料は、線密度が6dtex以下、好ましくは3dtex以下、より好ましくは2dtex以下であるステープルファイバーからなることが好ましい。複合吸音層の第2の不織布材料に含まれるステープルファイバーの線密度が低減すると、一定の通気抵抗またはレイル値で複合吸音層の総質量を低減することができる。
【0031】
複合吸音層の第2の不織布材料のステープルファイバーは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートもしくはポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、例えばポリアミド-6などのポリアミド、例えばポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、またはそれらの混合物もしくはコポリマーを含む任意の好適な材料から形成されてもよい。
【0032】
複合吸音層の第2の不織布材料はまた、少なくとも2種類の単一成分ステープルファイバーの混合物を含んでもよい。
【0033】
複合吸音層の第2の不織布材料のステープルファイバーは、二成分ステープルファイバーであってもよい。二成分ステープルファイバーは、芯鞘型二成分ステープルファイバー、サイドバイサイド型二成分ステープルファイバーまたは海島型二成分ステープルファイバーを含む任意の構成を有してもよい。二成分ステープルファイバーは、芯鞘型二成分ステープルファイバーであることが好ましい。
【0034】
一実施形態では、複合吸音層の第2の不織布材料のステープルファイバーは、芯鞘型二成分ステープルファイバーである。芯鞘型二成分ステープルファイバーは、ポリエステル芯、より好ましくはポリエチレンテレフタレート芯、およびポリオレフィン鞘、より好ましくはポリエチレン鞘を含むことが好ましい。
【0035】
任意の好適な技術、例えば第1の不織布材料および/もしくは第2の不織布材料のポリマーを介した熱接着、例えば機械的ニードリングもしくは水流絡合による機械的接着、または接着剤を使用して、第1の不織布材料および第2の不織布材料を合わせて接合または連結させてもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、第1の不織布材料のフィラメントが機械的接着でいくらか損傷するため、複合吸音層の機械的特性、特に複合吸音層の破断強度および/または硬さを向上させるためには、熱接着により、または機械的接着を適用することなく接着剤を使用して、複合吸音層の第2の不織布材料を第1の不織布材料に連結させる。
【0037】
自動車のプロセス時に発生する温度および圧力条件で融解または少なくとも軟化し、複合吸音層の通気抵抗またはレイル値を増加するような接着剤を選択してもよい。
【0038】
接着剤は、接着膜、接着ウェブ、または粉体接着剤、例えばポリオレフィン粉体、例えばポリエチレン粉体などであってもよい。キスロールまたは吹き付け技術を使用して、エマルションまたは分散体として接着剤を施与してもよい。接着剤は、ポリエチレン粉体であることが好ましい。例えば、接着剤の質量は約20g/mであってもよい。接着剤は、複合吸音層の第1の不織布と第2の不織布との間に接着層を形成してもよい。接着層の質量を増加させると、複合吸音層のレイル値を増加させることができる。
【0039】
接着剤は、接着膜、特に有孔の接着膜であってもよく、複合吸音層の第1の不織布と第2の不織布との間に接着層を形成することができる。有孔の接着膜の質量を増加させると、あるいは接着膜の孔の大きさおよび/または数を減らすと、複合吸音層のレイル値を増加させることができる。
【0040】
複合吸音層は、例えばポリオレフィン膜、好ましくはポリエチレン(PE)膜からなるさらなる層を含んでもよい。さらなる層は、複合吸音層の防音透過/挿入損失(STL)を強化し、複合吸音層および/または騒音振動ハーシュネス製品に湿度制御および防湿性を提供する。
【0041】
本発明による複合吸音層は、相対的に低い質量で十分な吸音性能を提供することができる。これは、自動車産業において非常に望ましい。複合吸音層の質量は、有利には300g/m以下、好ましくは200g/m以下、より好ましくは150g/m以下であり得る。
【0042】
複合吸音層の第1の不織布材料の質量は、好ましくは20~150g/m、より好ましくは25~125g/m、さらにより好ましくは25~100g/m、最も好ましくは40~75g/mの範囲内である。
【0043】
複合吸音層に含まれる接着剤の質量は、好ましくは10~100g/m、より好ましくは10~50g/m、より好ましくは12~25g/mの範囲内である。
【0044】
複合吸音層の第2の不織布材料の質量は、好ましくは25~100g/m、より好ましくは40~75g/mの範囲内である。
【0045】
DIN/ISO9073-3(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の縦方向の破断強度は、少なくとも150N/5cm、好ましくは少なくとも200N/5cm、より好ましくは少なくとも300N/5cmであってもよい。
【0046】
また、複合吸音層の幅方向の破断強度は、少なくとも150N/5cm、好ましくは少なくとも200N/5cm、より好ましくは少なくとも300N/5cmであってもよい。
【0047】
DIN/ISO9073-3(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の縦方向の破断伸びは、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%であってもよい。
【0048】
また、複合吸音層の幅方向の破断伸びは、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%であってもよい。
【0049】
DIN/ISO9073-3(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の縦方向の2%の特定の伸びの荷重(LASE2)は、少なくとも80N/5cm、好ましくは少なくとも100N/5cm、より好ましくは少なくとも125N/5cmであってもよい。
【0050】
DIN/ISO9073-3(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の幅方向の2%の特定の伸びの荷重(LASE2)は、少なくとも50N/5cm、好ましくは少なくとも60N/5cm、より好ましくは少なくとも75N/5cmであってもよい。
【0051】
好ましい範囲の破断強度、破断伸びおよび/または2%の特定の伸びの荷重を有する複合吸音層は、自動車のプロセスにおいて発生する成形工程への適応に特に良好に適している。
【0052】
複合吸音層は、エアレイド不織布と組み合わせてもよい。しかし、エアレイド不織布を本発明による複合吸音層と組み合わせて、騒音振動ハーシュネス(NVH)製品、特に車用タフテッドカーペットなどの自動車用床材製品またはダッシュボードシステムにおいて類似の吸音性能を得る場合、エアレイド不織布を含む従来技術の吸音層と比べて、エアレイド不織布の質量を50%まで低減させることができる。
【0053】
騒音振動ハーシュネス(NVH)製品に対する吸収および/または遮蔽の目標を超える、または少なくとも満たすフロアシステムの総合的な吸音能力を強化するために、複合吸音層をエアレイド不織布と被覆カーペットの裏面との間に配置することが好ましい。
【0054】
床材製品の挿入による損失および吸音を強化するために、追加の、もしくは交換用の吸音層またはデカップラとして、商業用または住宅用の床材製品にも複合吸音層を有利に用いることができる。
【0055】
複合吸音層は、フロート仕上げの注入コンクリート床、壁もしくは天井板または壁紙において有利に用いることもできる。
【0056】
本発明による複合吸音層は、比較的薄い場合でも十分な吸音性能を提供することができる。DIN/ISO9073-2(1996年10月)に従って測定される複合吸音層の厚さは、有利には10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは2.5mm以下であってもよい。
【0057】
実施例1
線密度が2dtexであり、ステープルファイバー長が2インチ(5.1mm)である芯鞘型二成分ステープルファイバーからなる55.2g/mのカーディング加工済みのステープルファイバー不織布を準備した。二成分ステープルファイバーは、ポリエチレンテレフタレートからなる50質量%の芯部およびポリエチレンからなる50質量%の鞘部を含んでいた。オーブンの手前で、カーディング加工済みのステープルファイバー不織布に、2つのアプリケーターを用いてポリエチレン粉末9.2g/mを施与した。140℃のオーブンの出口のニップで、線密度が15dtexであり、ポリエチレンテレフタレートからなる76質量%の芯部およびポリアミド-6からなる24質量%の鞘部を含み、質量が50g/mである芯鞘型二成分フィラメントからなる不織布と、PE粉末を含む乾燥したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布とを組み合わせて、複合吸音層を形成した。
【0058】
複合吸音層の全平均質量は114.4g/mであり、平均厚さは0.5mmであった。複合吸音層の平均通気抵抗(AFR)は15Pa・s/mであり、これは390Raylに相当する。
【0059】
複合吸音層の縦方向の平均破断強度は326N/5cmであり、幅方向の平均破断強度は210N/5cmであり、縦方向の平均破断伸びは39%であり、幅方向の平均破断伸びは66%であり、縦方向の2%の特定の伸びの荷重は125N/5cmであり、幅方向の2%の特定の伸びの荷重は59N/5cmであった。
【0060】
実施例2
線密度が2dtexであり、ステープルファイバー長が2インチ(5.1mm)である芯鞘型二成分ステープルファイバーからなる75.3g/mのカーディング加工済みのステープルファイバー不織布を準備した。二成分ステープルファイバーは、ポリエチレンテレフタレートからなる50質量%の芯部およびポリエチレンからなる50質量%の鞘部を含んでいた。オーブンの手前で、カーディング加工済みのステープルファイバー不織布に、2つのアプリケーターを用いてポリエチレン粉末9.2g/mを施与した。140℃のオーブンの出口のニップで、線密度が15dtexであり、ポリエチレンテレフタレートからなる76質量%の芯部およびポリアミド-6からなる24質量%の鞘部を含み、質量が50g/mである芯鞘型二成分フィラメントからなる不織布と、PE粉末を含む乾燥したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布とを組み合わせて、複合吸音層を形成した。
【0061】
複合吸音層の全平均質量は134.5g/mであり、平均厚さは0.5mmであった。複合吸音層の平均通気抵抗は23Pa・s/mであり、これは598Raylに相当する。
【0062】
複合吸音層の縦方向の平均破断強度は378N/5cmであり、幅方向の平均破断強度は259N/5cmであり、縦方向の平均破断伸びは39%であり、幅方向の平均破断伸びは63%であり、縦方向の2%の特定の伸びの荷重は141N/5cmであり、幅方向の2%の特定の伸びの荷重は81N/5cmであった。
【0063】
実施例3
線密度が2dtexであり、ステープルファイバー長が2インチ(5.1mm)である芯鞘型二成分ステープルファイバーからなる75.3g/mのカーディング加工済みのステープルファイバー不織布を準備した。二成分ステープルファイバーは、ポリエチレンテレフタレートからなる50質量%の芯部およびポリエチレンからなる50質量%の鞘部を含んでいた。オーブンの手前で、カーディング加工済みのステープルファイバー不織布に、2つのアプリケーターを用いてポリエチレン粉末13.4g/mを施与した。140℃のオーブンの出口のニップで、線密度が15dtexであり、ポリエチレンテレフタレートからなる76質量%の芯部およびポリアミド-6からなる24質量%の鞘部を含み、質量が50g/mである芯鞘型二成分フィラメントからなる不織布と、PE粉末を含む乾燥したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布とを組み合わせて、複合吸音層を形成した。
【0064】
複合吸音層の全平均質量は138.7g/mであり、平均厚さは0.5mmであった。複合吸音層の平均通気抵抗は30Pa・s/mであり、これは780Raylに相当する。
【0065】
複合吸音層の縦方向の平均破断強度は410N/5cmであり、幅方向の平均破断強度は306N/5cmであり、縦方向の平均破断伸びは42%であり、幅方向の平均破断伸びは68%であり、縦方向の2%の特定の伸びの荷重は143N/5cmであり、幅方向の2%の特定の伸びの荷重は88N/5cmであった。
【0066】
実施例4
線密度が2dtexであり、ステープルファイバー長が2インチ(5.1mm)である芯鞘型二成分ステープルファイバーからなる75.3g/mのカーディング加工済みのステープルファイバー不織布を準備した。二成分ステープルファイバーは、ポリエチレンテレフタレートからなる50質量%の芯部およびポリエチレンからなる50質量%の鞘部を含んでいた。オーブンの手前で、カーディング加工済みのステープルファイバー不織布に、2つのアプリケーターを用いてポリエチレン粉末16.7g/mを施与した。140℃のオーブンの出口のニップで、線密度が15dtexであり、ポリエチレンテレフタレートからなる76質量%の芯部およびポリアミド-6からなる24質量%の鞘部を含み、質量が50g/mである芯鞘型二成分フィラメントからなる不織布と、PE粉末を含む乾燥したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布とを組み合わせて、複合吸音層を形成した。
【0067】
複合吸音層の全平均質量は142g/mであり、平均厚さは0.5mmであった。複合吸音層の平均通気抵抗は35Pa・s/mであり、これは910Raylに相当する。
【0068】
複合吸音層の縦方向の平均破断強度は422N/5cmであり、幅方向の平均破断強度は330N/5cmであり、縦方向の平均破断伸びは39%であり、幅方向の平均破断伸びは69%であり、縦方向の2%の特定の伸びの荷重は155N/5cmであり、幅方向の2%の特定の伸びの荷重は97N/5cmであった。
【0069】
実施例5
線密度が2dtexであり、ステープルファイバー長が2インチ(5.1mm)である芯鞘型二成分ステープルファイバーからなる100.3g/mのカーディング加工済みのステープルファイバー不織布を準備した。二成分ステープルファイバーは、ポリエチレンテレフタレートからなる50質量%の芯部およびポリエチレンからなる50質量%の鞘部を含んでいた。オーブンの手前で、カーディング加工済みのステープルファイバー不織布に、2つのアプリケーターを用いてポリエチレン粉末16.7g/mを施与した。140℃のオーブンの出口のニップで、線密度が15dtexであり、ポリエチレンテレフタレートからなる76質量%の芯部およびポリアミド-6からなる24質量%の鞘部を含み、質量が50g/mである芯鞘型二成分フィラメントからなる不織布と、PE粉末を含む乾燥したカーディング加工済みのステープルファイバー不織布とを組み合わせて、複合吸音層を形成した。
【0070】
複合吸音層の全平均質量は167g/mであり、平均厚さは0.6mmであった。複合吸音層の平均通気抵抗は55Pa・s/mであり、これは1430Raylに相当する。
【0071】
複合吸音層の縦方向の平均破断強度は494N/5cmであり、幅方向の平均破断強度は333N/5cmであり、縦方向の平均破断伸びは45%であり、幅方向の平均破断伸びは70%であり、縦方向の2%の特定の伸びの荷重は170N/5cmであり、幅方向の2%の特定の伸びの荷重は101N/5cmであった。