(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ブラケット及びブラケット付き光ユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 6/46 20060101AFI20231027BHJP
【FI】
G02B6/46
(21)【出願番号】P 2020546058
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2019035740
(87)【国際公開番号】W WO2020054776
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-21
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514175922
【氏名又は名称】スミトモ エレクトリック ライトウェイブ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】沖 栄輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎祐
(72)【発明者】
【氏名】生川 久比古
(72)【発明者】
【氏名】横地 隆径
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇史
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-515740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0029353(US,A1)
【文献】特開2011-222638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00- 6/02
G02B 6/245-6/25
G02B 6/46- 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ユニットをラックに取り付けるためのブラケットであって、
第1面及び当該第1面の反対側の第2面を含む第1壁部と、前記第1壁部に対して交差する方向に前記第2面から前記第1面とは逆に伸びる突起と、を有するブラケット本体であって、前記第1壁部を前記第1面から前記第2面に向かって貫通する穴が設けられた、ブラケット本体と、
前記第1壁部の前記穴を通るように配置され、前記第1壁部に対して回転可能に構成された留め具であって、前記第2面と略平行な押さえ面を含む第1フックを有する、留め具と、
を備え、
前記第1フックの前記押さえ面は、
前記留め具の周方向の一部のみに設けられており、少なくとも前記留め具が初期位置から第1係止位置まで回転した際、前記第1壁部の前記第2面との間に第1空隙を画定するように前記第2面と対向する、ブラケット。
【請求項2】
前記留め具は、前記第1壁部の前記第1面の側に設けられ、当該留め具を回転させるように構成されたハンドルを有し、
前記ブラケットは、前記ハンドルと前記ブラケット本体との間に配置される弾性部材を更に備える、
請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記留め具は、
当該留め具を回転させるように構成されたハンドルを有し、前記第1面の側に設けられる第1回転部材と、
前記第1フックを有し、前記第2面の側に設けられる第2回転部材と、を有し、
前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体的に回転するように前記第1回転部材が前記第2回転部材に取り付けられている、
請求項1又は請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記留め具は、前記第2面と略平行な押さえ面を有する第2フックを更に有し、前記第2フックは前記留め具の回転軸に沿った方向において前記第1フックとは異なる位置に設けられており、
前記第2フックの前記押さえ面は、少なくとも前記留め具が初期位置から第2係止位置まで回転した際、前記第1壁部の前記第2面との間に第2空隙を画定するように前記第2面と対向する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のブラケット。
【請求項5】
前記第1空隙の距離は、前記回転軸に沿った方向において、前記第2空隙の距離よりも短い、請求項4に記載のブラケット。
【請求項6】
前記留め具は、前記第1フックと前記第2フックとがその外周に設けられる筒部を更に有し、前記第1フックと前記第2フックとが前記筒部の周方向における逆側に配置されている、
請求項4又は請求項5に記載のブラケット。
【請求項7】
前記ブラケット本体は、当該ブラケット本体を前記光ユニットに固定するための構造を含む第2壁部を有し、当該第2壁部には切欠きが設けられており、
前記留め具が前記初期位置から前記第1係止位置へと回転した際に前記第2フックが前記切欠きに収納される、又は、前記留め具が前記初期位置から前記第2係止位置へと回転した際に前記第1フックが前記切欠きに収納される、
請求項4から請求項6の何れか1項に記載のブラケット。
【請求項8】
前記ブラケット本体は、当該ブラケット本体を前記光ユニットに固定するための構造を含む第2壁部を有する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のブラケット。
【請求項9】
前記第1壁部と前記第2壁部とは、前記第1壁部が広がる方向と前記第2壁部が広がる方向とが交差するように連なっている、
請求項8に記載のブラケット。
【請求項10】
前記突起は、前記留め具が通される前記穴よりも上方に位置するように前記第1壁部に設けられている、
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のブラケット。
【請求項11】
前記第1フックの前記押さえ面は、前記光ユニットを前記ラックに取り付ける際に、前記ラックのアングルを前記第1壁部の前記第2面と共にその間に挟み込むことにより、固定するように構成されている、
請求項1から請求項10の何れか1項に記載のブラケット。
【請求項12】
少なくとも1つの、請求項1から請求項
11の何れか1項に記載のブラケットと、
複数の光ファイバが内部に収納された光ユニットと、を備え、
前記ブラケット本体が前記光ユニットに固定されている、
ブラケット付き光ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブラケット及びブラケット付き光ユニットに関する。
本出願は、2018年9月12日出願の米国特許出願第16/128,621号に基づく優先権を主張し、前記米国特許出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ファイバモジュールラックシステムを開示する。このシステムでは、複数の光学カセットが搭載された光ユニットの両端に一対のL字型のブラケットが取り付けられており、これらのブラケットをラックにネジ留めすることにより、光ユニットが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0010432号明細書
【発明の概要】
【0004】
本開示は、光ユニットをラックに取り付けるためのブラケット(bracket)を提供する。このブラケットは、ブラケット本体(bracket body)と留め具(fastener)とを備える。ブラケット本体は、第1面及び第1面の反対側の第2面を含む第1壁部と、第1壁部に対して交差する方向に第2面から第1面とは逆に伸びる突起と、を有する。ブラケット本体には、第1壁部を第1面から第2面に向かって貫通する穴が設けられる。留め具は、第1壁部の穴を通るように配置され、第1壁部に対して回転可能に構成されている。留め具は、第2面と略平行な押さえ面を含む第1フックを有する。第1フックの押さえ面は、少なくとも留め具が初期位置から第1係止位置まで回転した際、第1壁部の第2面との間に第1空隙を画定するように第2面と対向する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る一対のブラケットにより、光ユニットが一対のラックに取り付けられている状態(第1係止位置)を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るブラケットの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すブラケットの一構成部品であるブラケット本体を裏側から視た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すブラケットの一構成部品である留め具を裏側から視た斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、留め具を裏側から視た際の分解斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、ブラケットが非係止状態(初期位置)にある場合を示す正面図である。
【
図6B】
図6Bは、ブラケットが非係止状態(初期位置)にある場合を示す側面図である。
【
図7A】
図7Aは、光パネルの一端(右端)がブラケットによりラックに取り付けられている状態(第1係止位置)を表側から視た斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、光パネルの一端(右端)がブラケットによりラックに取り付けられている状態(第1係止位置)を裏側から視た斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る一対のブラケットにより、光パネルが一対のラックに取り付けられている状態(第2係止位置)を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るブラケットの分解斜視図である。
【
図10A】
図10Aは、光パネルに搭載される光コネクタモジュールを前方から視た斜視図である。
【
図11】
図11は、光コネクタモジュールの内部での配線の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載の光ユニットは、光ユニットに固定されたブラケットをネジ等によりラックに取り付けることにより、ラックに固定される。しかしながら、取り付ける光ユニットの数が増えると、光ユニットの数の分、ネジ留め作業を行う必要があり、取り付け作業に時間と手間がかかる。そこで、光ユニットのラックへの取り付けをより簡易に行える取付け手段の提供が望まれている。
【0007】
[本開示の効果]
本開示によれば、光ユニットをラックにより簡易に取り付けることができる。
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一実施形態に係るブラケットは、光ユニットをラックに取り付けるためのブラケットであり、ブラケット本体と留め具とを備える。ブラケット本体は、第1面及び当該第1面の反対側の第2面を含む第1壁部と、第1壁部に対して交差する方向に第2面から第1面とは逆に伸びる突起と、を有する。ブラケット本体には、第1壁部を第1面から第2面に向かって貫通する穴が設けられる。留め具は、第1壁部の穴を通るように配置され、第1壁部に対して回転可能に構成されている。留め具は、第2面と略平行な押さえ面を含む第1フックを有する。第1フックの押さえ面は、少なくとも留め具が初期位置から第1係止位置まで回転した際、第1壁部の第2面との間に第1空隙を画定するように第2面と対向する。
【0009】
このブラケットには、ラックに設けられた穴に挿入して光ユニットをラックに対して仮固定するための突起と、ラックの前板(アングル)を挟み込んで固定することができる、ブラケット本体の第1壁部の第2面及び留め具の第1フックの押さえ面とが設けられている。そして、このブラケットでは、かかる突起をラックの穴に挿入した後、留め具を初期位置から第一係止位置まで回転させることで、第2面と押さえ面との間にラックの前板(アングル)を容易に挟み込むことができる。このブラケットによれば、ブラケットをネジ留め等によりラックに取り付ける必要がなく、操作の容易な回転動作等により光ユニットをラックに取り付けられるため、取り付け作業時間を短縮することができる。また、光ユニットをラックにより簡易に取り付けることができる。ここで、「初期位置」は、留め具によって光ユニットがラックに固定される(回転)前の位置であり、「第1係止位置」は、回転された留め具によって光ユニットが第1板厚を有するラックに固定された際の位置である。
【0010】
一実施形態として、留め具は、第1壁部の第1面の側に設けられ、当該留め具を回転させるように構成されたハンドルを有してもよい。ハンドルを有する留め具により、留め具の回転動作を容易に行える。また、ブラケットは、ハンドルとブラケット本体との間に配置される弾性部材を更に備えてもよい。弾性部材を設けることにより、第2面と押さえ面とによるラックの挟み込みに付勢力を提供することができ、光パネルをラックに対してより確実に固定させることができる。
【0011】
一実施形態として、留め具は、当該留め具を回転させるように構成されたハンドルを有し、第1面の側に設けられる第1回転部材と、第1フックを有し、第2面の側に設けられる第2回転部材と、を有してもよい。第1回転部材と第2回転部材とが一体的に回転するように第1回転部材が第2回転部材に取り付けられている。留め具を第1回転部材及び第2回転部材といった別部材から構成することにより、ブラケット本体への留め具の取り付け構成を簡素化できる。
【0012】
一実施形態として、留め具は、第2面と略平行な押さえ面を有する第2フックを更に有してもよく、第2フックは留め具の回転軸に沿った方向において第1フックとは異なる位置に設けられている。第2フックの押さえ面は、少なくとも留め具が初期位置から第2留め位置まで回転した際、第1壁部の第2面との間に第2空隙を画定するように第2面と対向していてもよい。異なる位置に設けられる第1フック及び第2フックにより、このブラケットは、異なる板厚のパネルの前板(アングル)に対応することができる。この場合において、第1空隙の距離は、回転軸に沿った方向において、第2空隙の距離よりも短くてもよい。ここで、「第2係止位置」は、回転された留め具によって光ユニットが第2板厚を有するラックに固定された際の位置である。第2板厚は、第1板厚と異なってもよく、また厚くてもよい。
【0013】
一実施形態として、留め具が第1フック及び第2フックを有する場合において、留め具は、第1フックと第2フックとがその外周に設けられる筒部を更に有してもよい。第1フック部材と第2フック部材とが筒部の周方向における逆側に配置されていてもよい。この場合、例えば、第1の板厚のラックにブラケットを固定する場合には第1回転方向に留め具を回し、第2の板厚のラックにブラケットを固定する場合には逆の第2回転方向に留め具を回す、といった操作方法を容易に実現することができ、直感的な操作を提供できる。
【0014】
一実施形態として、留め具が第1フック及び第2フックを有する場合において、ブラケット本体は、当該ブラケット本体を光ユニットに固定するための構造を含む第2壁部を有してもよく、当該第2壁部には切欠きが設けられている。留め具が初期位置から第1係止位置へと回転した際に第2フックが切欠きに収納されてもよく、又は、留め具が初期位置から第2係止位置へと回転した際に第1フックが切欠きに収納されてもよい。この場合、ラックへの係止に用いない方のフックを収納することができるため、ブラケットの全体構成をよりコンパクトにできる。
【0015】
一実施形態として、ブラケット本体は、当該ブラケット本体を光ユニットに固定するための構造を含む第2壁部を有してもよい。第1壁部と第2壁部とは、第1壁部が広がる方向と第2壁部が広がる方向とが交差するように連なっていてもよい。この場合、光ユニットの側面を第2壁部によってブラケットに固定させることができるため、光ユニット及びブラケット間の固定をより強固にすることができる。
【0016】
一実施形態として、突起は、留め具が通される穴よりも上方に位置するように第1壁部に設けられていてもよい。ラックの孔に挿入して仮留めするための突起をこのように上方に配置することにより、第1フック等で固定する前の仮固定時のブラケットがラックから落ちづらくなり、ブラケットのラックへの固定をより簡易に行うことができる。
【0017】
本開示の一実施形態に係るブラケット付き光ユニットは、少なくとも上述した何れかの実施形態に係るブラケットと、複数の光ファイバが内部に収納された光ユニットと、を備えている。ブラケット本体は、光ユニットに固定されている。このようなブラケット付き光ユニットによれば、光ユニットをラックにより簡易に取り付けることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るブラケット及びブラケット付き光ユニットについて、以下に図面を参照して説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るブラケットによって一対のラックに光ユニットを取り付ける構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る一対のブラケット1により、光ユニットPが一対のラックR1,R2に取り付けられている状態を示す斜視図である。光ユニットPには、例えば、複数の光コネクタモジュールM(
図10Aから
図10C及び
図11を参照)が搭載されており、それぞれを窓P1からP4の部分から嵌め込むようにしてその内側に挿入する。
図1では省略しているが、光コネクタモジュールMには、前面に複数のLCアダプタA1(まとめてLCアダプタパネル)が設けられ、背面にMPOアダプタA2が設けられている。光コネクタモジュールMの内部では、
図11に示すように、MPOアダプタA2に内部にて接続されるMPOコネクタC2から分配された単心の光ファイバFそれぞれが、前面側のLCアダプタA1にLCコネクタC1によって接続される。なお、光コネクタモジュールMのLCアダプタA1及びMPOアダプタA2の外側には、別のLCコネクタ及びMPOコネクタ付きのコード又はケーブルがそれぞれ接続される。
図10Aから
図10Cでは、上記のLCアダプタA1の外側に接続されるLCコネクタのみを図示している。このように光ユニットPは、複数の光ファイバが内部に収納され、本体の前面(図示前方)からコードが、本体の裏面から複数の光ファイバを纏めた光ケーブルまたはコードが、引き出される。
【0020】
光ユニットPは、横長構成の筐体を含んで構成されており、19インチラック(EIA規格)等のラックR1,R2にその両端が固定される。ラックR1,R2のアングルR1a,R2aには、複数の留め孔Hが上下方向に連続して設けられている。ラックのアングルには、例えば、アングル厚が薄いタイプ(例えば、厚さ2.3mm)と厚いタイプ(例えば、厚さ6mm)とがあり、
図1には、アングル厚が薄いタイプのラックR1,R2が示されている。本実施形態では、光ユニットPは、一対のブラケット1によってラックR1,R2に固定される。なお、
図1には、1つの光ユニットPのみを取り付けた構成を開示しているが、これに限定されず、多数の光ユニットPをブラケット1によってラックR1,R2に取り付けることができる。ブラケット1の詳細な構成については後述するが、ブラケット1は、ネジ等によって光ユニットPの側面に固定されるものの、ラックR1,R2への取り付けにはネジ等を使用せず、留め孔Hへ挿入される突起13による仮留め(
図7B参照)と、留め具S(フック33等)の回転動作によりラックR1,R2のアングルR1a,R2aを挟み込むことによる本留め(
図7B参照)とによって、光ユニットPをラックR1,R2に固定する。
【0021】
次に、
図2から
図5A及び5Bを参照して、本実施形態に係るブラケット1の構成について説明する。
図2は、ブラケット1の分解斜視図である。
図3は、ブラケット1の一構成部品であるブラケット本体10を裏側から視た斜視図である。
図4は、ブラケット1の一構成部品である留め具Sを裏側から視た斜視図である。
図5Aは、留め具Sを表側から視た際の分解斜視図であり、
図5Bは、留め具Sを裏側から視た際の分解斜視図である。なお、
図2から
図5A及び5Bでは、
図1に示すブラケット1の内、右側のブラケットの構成について説明するが、左側のブラケット1の構成は、光ユニットPの長手方向の中心を中心線として、右側のブラケット構成を線対称にした左右対象構造を有しており、その説明を省略する。ブラケット1は、
図2に示すように、ブラケット本体10と、回転部材20,30を有する留め具Sと、弾性部材40と、を備えている。ネジ50は、回転部材20,30を相互に固定する。
【0022】
ブラケット本体10は、
図2及び
図3に示すように、第1壁部11と第2壁部12とを有している。第1壁部11と第2壁部12は、第1壁部11が広がる面方向と第2壁部12が広がる面方向とが直角を形成するように連なっており、L字形状を画定する。第1壁部11と第2壁部12は、T字形状を画定するように連なってもよいし、直角以外の角度で交差するように連なってもよい。第1壁部11は、前面11aとその逆側の後面11bとを含む。第1壁部11には、前面11aから後面11bに向かって貫通する穴11cが設けられている。穴11cには、回転部材20,30を含んで構成される留め具Sが挿通されるように配置される。穴11cには、留め具Sの回転動作を調整(回転部材30の突起38が嵌合)するための4つの溝11d(0度/90度/180度/270度)が設けられている。また、第1壁部11の前面11aには、貫通穴11cの外周部分を覆うように環状体14が設けられている。環状体14内にはOリング等の弾性部材40が収納される。留め具Sの回転動作をより確実に固定するため、留め具Sのハンドル21の内側に設けられる突起25(例えば
図4を参照)に係合可能な一対の突起15が環状体14の外周に設けられていてもよい。一対の突起15のそれぞれは、環状体14の周方向の反対側に位置するように設けられている。
【0023】
第1壁部11の後面11bには、前面11aとは逆に伸びる突起13が設けられている。突起13は、先端がテーパを為す微小な略円柱形状のピンであり、
図1に示すラックR1,R2の留め孔Hに対応した位置決めや落下防止といった機能を奏するために用いられる。突起13が留め孔Hに挿入されることにより、ブラケット1をラックR1,R2に対して仮留めすることができる。突起13は、貫通穴11cよりは上方のやや外側に位置している(ラックに係止する際には、この部分にラックR1等が位置する)。突起13は、貫通穴11cよりも下方に設けてもよいが(貫通穴11cを突起13よりも上方に設けてもよいが)、貫通穴11cを上方に設ける構成により、ブラケット1のラックR1,R2への仮留めを安定化させることができ、その後の本固定作業を容易なものにすることができる。
【0024】
ブラケット本体10の第2壁部12には、ブラケット本体10を光ユニットPの側面に固定するための複数の孔12a(本実施形態では一例として2×2の4個の孔)が設けられている。これらの孔12aを介してネジ留めすることにより、ブラケット本体10が光ユニットPに固定される。また、第2壁部12の孔12aよりは第1壁部11寄りの箇所には、切欠き12bが設けられている。切欠き12bには、留め具Sの回転部材30に設けられたフック33又は34のうち、ラックR1,R2への固定に使用されていない方のフックが収納される。これにより、ブラケット1の構成をコンパクトにすることができる。このような構成を有するブラケット本体10は、例えば、アルミニウム等の金属ダイカストによって形成される。ブラケット本体10は、プラスチック樹脂から形成されてもよい。
【0025】
留め具Sは、
図2及び
図4に示すように、回転部材20及び30を含んで構成されており、回転部材20及び30が一体的に回転するようにネジ50により回転部材20が回転部材30に取り付けられている。留め具Sでは、第1壁部11の前面11a側に設けられる回転部材20と、第1壁部11の後面11b側に設けられる回転部材30とが、第1壁部11に設けられた貫通穴11cを通るように両側から挿入されて、ネジ留めされる。その際、回転部材20と第1壁部11の前面11aとの間に(環状体14の内側に)、Oリング等の弾性部材40が挿入される。この弾性部材40の挿入により、回転部材20に固定される回転部材30が軸方向に沿った微小な範囲で移動することができるようになる。留め具Sを構成する回転部材20及び30は、例えば、アルミニウム等の金属ダイカストにて形成される。回転部材20及び30は、プラスチック樹脂から形成されてもよい。
【0026】
回転部材20は、
図4及び
図5A及び5Bに示すように、留め具Sを回転させるためのハンドル21と、回転部材30を取り付ける際に回転部材30を受ける円板部22と、回転部材30と一体になって回転するためのキー23とを含む。キー23は、溝35に挿入される。回転部材20には、ネジ50を挿通させるための貫通穴24がその内部に設けられている。また、回転部材20には、ハンドル21の回転を固定するための突起25が設けられている。上述したように、突起25がブラケット本体10の何れかの突起15に係合することにより、ハンドル21の回転が固定される。
【0027】
回転部材30は、
図4及び
図5A及び5Bに示すように、筒形状の本体部31と、本体部31から外方に向かって突出する引っ掛け部32と、本体部31から外方に向かって突出するフック33及び34と、溝35と、を含む。本体部31には軸方向に沿った、ネジ50用の雌ねじが形成されている。引っ掛け部32は、後面11b側から貫通穴11cに挿入された回転部材30がそれ以上、前方に行かないように支持する部分である。フック33及び34は、初期位置からラックに光ユニットを固定する係合位置へと留め具Sが回転した際に、ブラケット1の第1壁部11の後面11bとの間にラックR1,R2のアングルR1a,R2aを挟み込んで、ブラケット1をラックR1,R2に本固定するための部分である。各フック33及び34は、後面11bと略平行な押さえ面33a,34aを有しており、留め具Sが初期位置から係合位置へと回転した際、押さえ面33a又は34aと後面11bとの間に所定の空隙が画定される。フック34は、留め具Sの回転軸Gに沿った方向において、フック33とは異なる位置に設けられており、より具体的には、フック33がフック34よりも手前(第1壁部11寄り)に設けられている。このため、回転部材30では、フック33の押さえ面33aと後面11bとの間に設けられる空隙の距離が、回転軸Gに沿った方向において、フック34の押さえ面34aと後面11bとの間に設けられる空隙の距離よりも短くなっている。この所定の空隙には、ラックのアングルが配置される。つまり、所定の空隙の距離はアングル厚に対応しており、本実施形態では、前方に位置するフック33が薄いタイプのアングル厚(2.3mm)に対応しており、後方に位置するフック34が厚いタイプのアングル厚(6mm)に対応している。このように、
図2等に示す例では、2種類以上のアングル厚を有するラックに対応することができる。また、フック33及び34は、筒形状の本体部31の周方向における逆側(180度)に配置されている。このようにフック33及び34が周方向において相互に最も離れた位置に配置されていることにより、一方のフック33を用いてラックR1,R2への本固定を行った場合、他方のフック34がその本固定を邪魔しないようにすることができる。
【0028】
次に、
図6A及び6Bと
図7A及び7Bを参照して、このような構成を有するブラケット1によって、光ユニットPの一端(右端)をラックR1に取り付ける方法について説明する。なお、左右対称構造のブラケット1によって光ユニットPの他端(左端)をラックR2に取り付ける方法も同様である。
図6Aは、ブラケットが非係止状態(初期位置)にある場合を示す正面図であり、
図6Bは、ブラケットが非係止状態(初期位置)にある場合を示す側面図である。
図7Aは、光ユニットPの一端(右端)がブラケット1によりラックR1に取り付けられている状態を表側から視た斜視図であり、
図7Bは、光パネルの一端(右端)がブラケット1によりラックR1に取り付けられている状態を裏側から視た斜視図である。
【0029】
図6A及び
図6Bに示すように、ブラケット1によって光ユニットPをラックR1に取り付ける前の初期位置では、ブラケット1のハンドル21は上下方向に沿って先端が上方に向かうようになっており、これに対応して、フック33及び34も本体部31に対して上下方向に位置するような回転方向の位置となっている。より具体的には、薄板用のフック33が下方に、厚板用のフック34が上方に向かうように位置している。そして、このようなブラケット1の突起13を、まずはラックR1の所定の留め孔Hに挿入して、ブラケット1をラックR1に仮留めする。
【0030】
ブラケット1のラックR1への仮留めが終了すると、留め具Sのハンドル21を内側(光ユニットP側)に90°回す。これにより、
図7A及び
図7Bに示すように、ハンドル21の動きに連動して回転部材20,30も90°回転し、薄板用のフック33(押さえ面33a)がブラケット1の中心から外側に向かった領域に配置されるラックR1のアングルR1aを、第1壁部11の後面11bと共にその間に挟み込むことにより、固定する。この際、フック33は、後面11bにアングルR1aを押し込むように圧をかける。また、回転部材20の突起25が一方の突起15に係合するため、回転部材20等が回転し過ぎて固定が外れてしまうことが抑制される。ラックR1は、突起13の留め孔Hへの挿入による仮固定と、フック33と後面11bとの挟み込みによる本固定の2箇所での取り付けにより、ブラケット1に対して固定される。ブラケット1が光ユニットPにネジ留めされているため、ラックR1へのブラケット1の固定により、光ユニットPはラックR1の所定の箇所に固定される。この際の固定に用いられないフック34は、内側に回転し、第2壁部12の切欠き12bに収納される。
【0031】
ラックのアングルが厚板の場合、
図8に示すように、ブラケット1のラックR3,R4のアングルR3a,R4aへの仮留めが終了した後、留め具Sのハンドル21を外側に90°回す。これにより、ハンドル21の動きに連動して回転部材20,30も90°回転し、厚板用のフック34(押さえ面34a)がブラケット1の中心から外側に向かった領域に配置されるラックR3,R4のアングルR3a,R4aを、第1壁部11の後面11bと共に挟み込むことにより、固定する。この際、回転部材20の突起25が他方の突起15に係合するため、回転部材20等が逆側に回転し過ぎて固定が外れてしまうことが抑制される。この際の固定に用いられないフック33は、内側に回転し、第2壁部12の切欠き12bに収納される。
【0032】
以上、本開示の実施形態に係るブラケット1には、ラックに設けられた留め孔Hに挿入して光ユニットPをラックに対して仮固定するための突起13と、ラックのアングルをその間に挟み込んで固定することができるブラケット本体10の第1壁部11の後面11b及び留め具Sのフック33,34の押さえ面33a,34aとが設けられている。そして、ブラケット1では、突起13をラックの留め孔Hに挿入した後、留め具Sを初期位置から係止位置まで回転させることで、後面11bと押さえ面33a又は34aとの間にラックのアングルを容易に挟み込むことができる。このようなブラケット1によれば、ブラケットをネジ留め等によりラックに取り付ける必要がなく、操作が比較的容易な回転動作により光ユニットPをラックに取り付けられるため、取り付け作業時間を短縮することができる。
【0033】
本実施形態では、留め具Sは、第1壁部11の前面11aの側に設けられ、当該留め具Sを回転させるように構成されたハンドル21を有している。ハンドル21を有しているため、留め具Sの回転動作を容易に行える。また、ブラケット1は、ハンドル21とブラケット本体10との間に配置される弾性部材40を備えている。弾性部材40(Oリング)を両者の間に設けることにより、後面11bと押さえ面33a又は34aとによるラックの挟み込みに付勢力を提供して、光ユニットPをラックに対してより確実に固定させることができる。
【0034】
本実施形態では、留め具Sは、当該留め具を回転させるように構成されたハンドル21を有し、前面11aの側に設けられる回転部材20と、フック33,34を有し、後面11bの側に設けられる回転部材30とを有している。留め具Sを回転部材20,30といった別部材から構成することにより、ブラケット本体10への留め具Sの取り付け構成を簡素化できる。
【0035】
本実施形態では、留め具Sは2つのフック33,34を有しており、フック34は留め具Sの回転軸に沿った方向においてフック33とは異なる位置に設けられている。このように異なる位置に設けられるフック33,34により、ブラケット1は、異なる板厚のパネルのアングルに対応することができる。
【0036】
本実施形態では、留め具Sは、フック33,34がその外周に設けられる本体部31を更に有しており、フック33及び34が本体部31の周方向における逆側に配置されている。この場合、例えば、第1の板厚のラックにブラケットを固定する場合には第1の回転方向に留め具を回してフック33でアングルを固定し、第2の板厚のラックにブラケットを固定する場合には逆の第2の回転方向に留め具を回してフック34でアングルを固定する、といった操作方法を容易に実現することができる。
【0037】
本実施形態では、ブラケット本体10は、当該ブラケット本体を光ユニットPに固定するための孔12aを含む第2壁部12を有している。第2壁部12には切欠き12bが設けられている。留め具Sが初期位置からフック33による係止位置へと回転した際にフック34が切欠き12bに収納されてもよい。また、逆に留め具Sが初期位置からフック34による係止位置へと回転した際にフック33が切欠き12bに収納されてもよい。この構成により、ラックへの係止に用いない方のフックを収納することができ、ブラケット1の全体構成をよりコンパクトにできる。
【0038】
本実施形態では、ブラケット本体は、当該ブラケット本体を光ユニットPに固定するための構造を含む第2壁部12を有している。光ユニットPの側面を第2壁部12によってブラケット1に固定させるため、光ユニットP及びブラケット1間の固定をより強固にすることができる。
【0039】
本実施形態では、突起13は、留め具Sが通される穴11cよりも上方に位置するように第1壁部11に設けられている。ラックの孔Hに挿入して仮留めするための突起13を上方に配置することにより、仮固定時のブラケット1がラックから落ちづらくなり、ブラケット1のラックへの固定をより簡易に行うことができる。
【0040】
なお、本実施形態に係る一対のブラケットが予め取り付けられたブラケット付き光ユニットによれば、光ユニットをラックにより簡易に取り付けることができる。
【0041】
以上、本実施形態に係るブラケットやブラケット付きの光ユニットについて説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。例えば、上記の実施形態に係るブラケットは、ラックのアングルが薄い場合と厚い場合の2種類に対応できるブラケットについて説明したが、
図9に示すように、1種類の厚さのアングルに対応するブラケット1aであってもよい。ブラケット1aの留め具(回転部材60)には、押さえ面62aを有するフック62が1つ設けられている。フック62の突出方向は、ハンドル61の延在方向と同じであり、上記の実施形態と同様に、直感的に操作することができる。なお、
図9には、留め具を1つの部材から構成する例を示しているが、留め具は、上述した実施形態に示すように複数の部材から構成されてもよいし、単体の部材から構成されてもよい。
図9に示す例の場合であっても、回転部材60がブラケット本体10aの貫通穴11eに通されて、押さえ面62aによってアングルが固定され、光ユニットPがラックに固定される。
【符号の説明】
【0042】
1…ブラケット、10,10a…ブラケット本体、11…第1壁部、11a…前面、11b…後面、11c,11e…貫通穴、11d…溝、12…第2壁部、12a…孔、12b…切欠き、13…突起、14…環状体、15…突起、20…回転部材、21…ハンドル、22…円板部、23…キー、24…貫通穴、25…突起、30…回転部材、31…本体部、32…引っ掛け部,33,34…フック、33a,34a…押さえ面、35…溝、38…突起、40…弾性部材、50…ネジ、60…回転部材、61…ハンドル、62…フック、62a…押さえ面、A1…LCアダプタ、A2…MPOアダプタ、C1…LCコネクタ、C2…MPOコネクタ、F…光ファイバ、H…留め孔、M…光コネクタモジュール、P…光ユニット(光パネル)、P1,P2,P3,P4…窓、R1,R2,R3,R4…ラック、R1a,R2a,R3a,R4a…アングル、S…留め具。