(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】静電容量方式の電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20231027BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/044 Z
(21)【出願番号】P 2020561158
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2019036442
(87)【国際公開番号】W WO2020129336
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2018237879
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】橋本 善之
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/098486(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/057862(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0228039(US,A1)
【文献】米国特許第09239639(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0068340(US,A1)
【文献】米国特許第09612671(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
前記筐体の軸心方向の一方の開口部から先端部が突出するように設けられ、軸心方向において前記先端部とは反対側の後端部が、前記筐体の中空部内に配設されている芯体ホルダーに挿脱可能に嵌合される芯体と、
前記筐体の前記一方の開口部近傍において、前記芯体の少なくとも前記先端部を除く部分を囲むようにして配置される導体からなる周辺電極と、
を備える静電容量方式の電子ペンであって、
前記芯体は、球体部と、前記球体部と連結されている軸心部とを有する導体からなる電極芯を備え、
前記電極芯の前記球体部は、前記周辺電極に囲まれることなく、前記筐体の軸心方向の一方の開口部から突出する前記先端部に配置されており、
前記電極芯の前記軸心部は、軸心方向に太さが異なる部位を有し、前記球体部と連結する連結部は前記球体部の直径よりも細く、前記芯体の前記後端部側の部位は前記球体部と連結する前記連結部よりも太くされており、
前記芯体が前記芯体ホルダーに嵌合されたときに、前記電極芯の前記軸心部の少なくとも前記周辺電極に囲まれない部位は、前記電極芯の前記球体部の直径よりも細くされている
と共に、前記電極芯の前記連結部よりも太い前記後端側の部位は、前記周辺電極に囲まれている
ことを特徴とする静電容量方式の電子ペン。
【請求項2】
前記電極芯の前記球体部と、少なくとも、前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位とは、樹脂により覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項3】
前記電極芯の前記球体部は、前記筐体の前記一方の開口部から突出し、前記軸心部の太さよりも大きい太さ部分を備える前記先端部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項4】
前記電極芯の前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位は、前記球体部と連結する前記連結部から前記後端側に向かって徐々に太くなるテーパー形状とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項5】
前記電極芯の前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位は、一定の太さとされている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項6】
前記電極芯の前記後端側の部位は、樹脂に覆われることなく露出しており、前記筐体内に設けられている信号発生回路の信号出力端と電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項7】
前記電極芯の前記後端側の部位は、樹脂に覆われることなく露出しており、導体からなる前記芯体ホルダーに嵌合されており、前記芯体ホルダーは前記筐体内に設けられている信号発生回路の信号出力端に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項8】
前記電極芯の前記球体部と、少なくとも、前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位とは、樹脂により覆われていると共に、
前記筐体の前記一方の開口部には、前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位を覆う前記樹脂の外周側面と対向する内壁面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記芯体は、前記筐体の中空部内において、前記先端部に印加される圧力に応じて軸心方向に変位可能とされており、
前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位を覆う前記樹脂の外周側面及び前記内壁面は、軸心方向に沿った面である
ことを特徴とする請求項8に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項10】
前記電極芯の前記軸心部の他端側を露出させる状態で、前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位が前記樹脂により覆われていると共に、前記露出されている前記電極芯の前記軸心部の他端側の前記樹脂との連結部分の外周側面は、前記樹脂の外周側面と面一となるようにされており、
前記筐体の前記開口部の前記内壁面は、前記樹脂の外周側面と前記電極芯の前記軸心部の他端側の前記樹脂との連結部分を含んで対向している
ことを特徴とする請求項8に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項11】
前記電極芯の前記球体部と、少なくとも、前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位とは、樹脂により覆われていると共に、前記球体部を覆う樹脂部分の太さは、前記軸心部の前記球体部の直径よりも細い部位を覆う樹脂部分の太さよりも大きいものとされており、
前記筐体の前記一方の開口部には、前記球体部を覆う樹脂部分の外周側面と対向する内壁面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記芯体は、前記筐体の中空部内において、前記先端部に印加される圧力に応じて軸心方向に変位可能とされており、
前記球体部を覆う樹脂部分の外周側面及び前記内壁面は、軸心方向に沿った面である
ことを特徴とする請求項11に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項13】
前記筐体内には、前記芯体ホルダーよりも後端側に筆圧検出部材が設けられており、
前記芯体ホルダーは、前記芯体の前記先端部に印加される圧力を前記筆圧検出部材に伝達する伝達部材とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【請求項14】
前記電極芯の前記球体部及び軸心部は、金属で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量方式の電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量方式の電子ペンは、位置検出装置の位置検出センサと静電結合により信号のやり取りをする。位置検出装置では、電子ペンと電界を通じて信号をやり取りしている位置検出センサ上の位置を検出することで、電子ペンのペン先により指示された位置を検出する。
【0003】
静電容量方式の電子ペンのペン先は、位置検出センサとの間で静電結合するために、導電性を有することが必要である。そのため、静電容量方式の電子ペンでは、導電性を有する材料で構成される芯体を、その先端を電子ペンの筐体の開口部から突出させると共に、芯体の先端とは反対側を筐体内に設けられる芯体ホルダーに嵌合させて、電子ペンの筐体内に係止させるように構成される(例えば特許文献1(WO2016/063420A1)参照)。
【0004】
従来、芯体は、所定の太さの棒状の金属で構成されているものが多い。導電性の金属粉などを混入して導電性を有するようにしたエラストマーなどの樹脂を棒状にした芯体も提案されている。この樹脂としてエラストマーを用いた芯体の場合には、電子ペンにより位置検出センサの入力面(筆記面)に対して位置指示して筆記するときの感触(書き味)を、筆記に適したものとすることが容易であるという利点がある。
【0005】
ところで、最近は、位置検出装置側で、筆記しているときの電子ペンの入力面に対する傾き角を検出することができるようにし、この検出した傾き角を、筆記跡の太さの制御に用いるなどの種々の用途に用いることが要望されるようになってきている。
【0006】
この電子ペンの入力面に対する傾き角の検出方法としては種々提案されており、芯体と位置検出センサとの静電結合から傾きを検出する方法も知られている。例えば、
図8(A)に示すような太さが一定の棒状の芯体100を電子ペンの芯体として用いている場合、芯体100が位置検出センサの入力面に対して、
図8(A)において実線で示すように垂直の状態のときには、
図8(B)に示すように、位置検出センサでは、電子ペンの芯体100との静電結合による指示位置軌跡は真円102として検出される。
【0007】
そして、芯体100が位置検出センサの入力面に対して、
図8(A)において破線で示すように傾いた状態のときには、
図8(C)に示すように、位置検出センサでは、電子ペンの芯体100との静電結合による指示位置軌跡は、芯体100が傾いている方向に、傾き角に応じた細長形状となる楕円形103として検出される。したがって、位置検出装置では、この楕円形103の細長形状(長円)から、電子ペンがいずれの方向に、いずれの傾き角で傾いているかを検出することができる。
【0008】
以上のことから分かるように、芯体と位置検出センサとの静電結合から傾きを検出する方法により電子ペンの入力面に対する傾き角を検出するためには、芯体の先端部のみならず、先端部に引き続く部分も位置検出センサと静電結合することが必要であり、芯体は、先端部のみならず先端部に引き続く後端側部分も太さが大きい方が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、導電性を有するようにされたエラストマーなどの樹脂で構成された芯体は、書き味を変更することが容易であるという点で優れている。しかしながら、エラストマーなどの樹脂は容易に変形し易いため、電子ペンのペン先に大きな筆圧を印加すると、芯体のペン先側が変形して、電子ペンの筐体の開口部に芯体が引っかかるようになり、筆記時に違和感を生じる恐れがあった。
【0011】
そこで、導電性を有するようにされたエラストマーなどの樹脂で構成された芯体は、ある程度太くして変形しにくくする必要があると共に、筐体の開口部と対向する部分の周囲は、より硬質の樹脂で補強するようにする必要があった。このため、細型化の要求が強くなっている最近の電子ペンの芯体としては、芯体も細型化が望ましいが、当該芯体の細型化が困難であり、電子ペンの細型化の支障となる恐れがあった。また、導電性を有するようにされたエラストマーなどの樹脂で構成された芯体は、導電性を確保するために、芯体を細くすることが困難であり、ある程度の太さを必要とするという問題もあった。
【0012】
これに対して金属からなる芯体を用いる場合には、細型にしても導電性を維持することが容易であり、筆圧が芯体のペン先側に印加された場合の強度も十分であるという利点がある。ただし、上述したように、電子ペンの傾き角の検出をする用途のためには太さを太くする必要があった。
【0013】
すなわち、導電性を有するようにされたエラストマーなどの樹脂で構成された芯体であっても、金属で構成された芯体であっても、電子ペンの傾き角を検出する用途を考慮したときには、先端部のみならず、先端部に引き続く後端側の部分も、ある程度太くして、位置検出センサとの静電結合を可能にする必要があった。
【0014】
しかしながら、このように芯体の太さを構成した場合には、先端部に引き続く後端側の部分の位置検出センサとの静電結合が電子ペンの指示位置に対して影響し、電子ペンを入力面に対して斜めに傾けている状態で直線を筆記するようにすると、位置検出装置での検出軌跡が直線にならずに、波線状になる(ウェイビング現象が生じる)という問題がある。
【0015】
以上の点に鑑み、この発明は、電子ペンの細型化の要請に応じて芯体の細型化を可能にすると共に、電子ペンの傾き角の検出が可能で、且つ、ウェイビング現象が生じないようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、
筒状の筐体と、
前記筐体の軸心方向の一方の開口部から先端部が突出するように設けられ、軸心方向において前記先端部とは反対側の後端部が、前記筐体の中空部内に配設されている芯体ホルダーに挿脱可能に嵌合される芯体と、
前記筐体の前記一方の開口部近傍において、前記芯体の少なくとも前記先端部を除く部分を囲むようにして配置される導体からなる周辺電極と、
を備える静電容量方式の電子ペンであって、
前記芯体は、球体部と、前記球体部と連結されている軸心部とを有する導体からなる電極芯を備え、
前記電極芯の前記球体部は、前記周辺電極に囲まれることなく、前記筐体の軸心方向の一方の開口部から突出する前記先端部に配置されており、
前記電極芯の前記軸心部は、軸心方向に太さが異なる部位を有し、前記球体部と連結する連結部は前記球体部の直径よりも細く、前記芯体の前記後端部側の部位は前記球体部と連結する前記連結部よりも太くされており、
前記芯体が前記芯体ホルダーに嵌合されたときに、前記電極芯の前記軸心部の少なくとも前記周辺電極に囲まれない部位は、前記電極芯の前記球体部の直径よりも細くされていると共に、前記電極芯の前記連結部よりも太い前記後端側の部位は、前記周辺電極に囲まれている
ことを特徴とする静電容量方式の電子ペンを提供する。
【0017】
上記の構成の電子ペンにおいては、芯体と位置検出センサとの静電結合により、電子ペンの傾きを検出するのではなく、周辺電極と位置検出センサとの静電結合を用いることで、電子ペンの傾き角を検出するように構成することができる。したがって、芯体は、電子ペンの傾きを検出するために、先端部に引き続く部分を太くする必要はない。
【0018】
上記の構成の電子ペンにおいては、芯体は、導体からなり、球体部と軸心部とを有する電極芯を備えるものとされる。そして、上記の構成の電子ペンは、電子ペンの筐体の一方の開口部から突出する先端部を備えると共に、その先端部に導体からなる電極芯の球体部が配置されている。このように、電極芯の先端は球体部であるので、電子ペンの入力面に対する傾き角に関係なく、位置検出センサと同様の静電結合状態となり、電子ペンの傾きに関係なく、位置検出装置で、正しく指示位置を検出することができる。
【0019】
そして、電極芯の軸芯部の球体部との連結部は、球体部の直径よりも細く構成されていると共に、芯体が、電子ペンの筐体内の芯体ホルダーに嵌合されたときに、電極芯の軸心部の少なくとも周辺電極に囲まれない部位は、電極芯の前記球体部の直径よりも細い部分となっている。このため、電極芯の軸心部の少なくとも周辺電極に囲まれない部位は、電子ペンを傾けたとしても、位置検出センサとの静電結合は弱くなる。したがって、電子ペンを入力面に対して傾けて直線を筆記したとしても、ウェイビング現象を軽減することができて、波線状になることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明による電子ペンの実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図2】この発明による電子ペンの実施形態で用いる芯体の構成例を説明するための図である。
【
図3】この発明による電子ペンの実施形態の要部の構成を説明するための図である。
【
図4】この発明による電子ペンの実施形態の電子回路の構成例を説明するための図である。
【
図5】
図4の電子回路の動作例を説明するために用いる図である。
【
図6】この発明による電子ペンの実施形態における傾き検出の動作を説明するために用いる図である。
【
図7】この発明による電子ペンの実施形態で用いる芯体の他の構成例を説明するための図である。
【
図8】従来の電子ペンによる傾き検出の動作を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、この発明による静電容量方式の電子ペンの実施形態の構成例を説明するための図であり、
図1(A)は、この実施形態の静電容量方式の電子ペン1の外観を示す図、
図1(B)は、その要部の構成を説明するための縦断面図である。
【0022】
この実施形態の電子ペン1の筐体10は、
図1(A)及び(B)に示すように、筒状の筐体本体部11のペン先側の開口に、円錐形状の筒状体からなるフロントキャップ12が嵌合されて取り付けられて構成されている。筐体本体部11は、使用者が電子ペン1を持って操作するときに、人体を通じてアース(地球アース)されるように、導電性材料、例えば金属で構成されている。また、フロントキャップ12は、絶縁性材料、例えば樹脂で構成されている。
【0023】
図1(B)に示すように、フロントキャップ12の先細となっているペン先側には、芯体20が軸心方向に自由に移動可能となるように挿通可能とされる開口部12aが設けられている。芯体20は、後述するように、導電性を有する構成とされており、フロントキャップ12の開口部12aから電子ペン1の筐体内に挿入されて、その先端部20aが外部に突出する状態で後述する芯体ホルダー30に保持されるように構成されている。この場合に、導電性を有する芯体20と、導電性材料からなる筐体本体部11とは、フロントキャップ12が介在することにより電気的に分離(絶縁)されている。
【0024】
筐体本体部11の中空部内には、
図1(A)及び(B)に示すように、基板載置台部401にプリント基板41が載置された基板ホルダー40と、電源としての電池42が収納されている。電池42としては、一次電池であっても、二次電池(充電式電池)であってもよい。筐体本体部11のペン先側とは反対側である後端側は、
図1(A)に示すように、バックキャップ13により閉塞されている。
【0025】
基板ホルダー40は、絶縁性の樹脂により構成され、電子ペン1の軸心方向となる長手方向において、基板載置台部401側とは反対側に、感圧用部品保持部402を有している。基板ホルダー40は、
図1(B)に示すように、筐体本体部11の中空部内に収納されたときに、電子ペン1の軸心方向となる長手方向に、感圧用部品保持部402と、基板載置台部401とが連続する構成とされている。感圧用部品保持部402は、内部の中空部に感圧用部品50(筆圧検出用の複数個の部品)を収納する中空部を備える筒状形状とされる。基板載置台部401は、プリント基板41を載置して保持するボート状の形状であって、筒状体を軸芯方向に略半分切断したような形状とされている。
【0026】
基板ホルダー40の感圧用部品保持部402内には、筆圧検出部を構成する感圧用部品50及び圧力伝達部材が収納される。この例の筆圧検出部は、芯体20に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサで構成される。
【0027】
この例の感圧用部品50は、
図1(B)に示すように、誘電体51と、端子部材52と、保持部材53と、導電部材54と、弾性部材55とで構成される複数個の部品からなる。端子部材52は、導電性材料例えばSUSからなり、円板状形状を有する誘電体51の一方の端面側に設けられて、当該感圧用部品50で構成される容量可変コンデンサの第1の電極を構成する。
【0028】
また、導電部材54は、例えば導電性ゴムで構成された円柱状形状の部材であり、保持部材53に保持されて、その端面が誘電体51の他方の端面側に対向するように配設されている。導電部材54の誘電体51との対向面は、例えばドーム状に形成されている。
【0029】
弾性部材55は導電性材料例えばSUSからなるコイルばねで構成されており、当該コイルばねの空間内に導電部材54を挿入するような状態で配設されている。導電部材54と弾性部材55とは電気的に接続されており、前記容量可変コンデンサの第2の電極を構成する。弾性部材55は、誘電体51と、保持部材53との間に配され、導電部材54を誘電体51から離間させる方向に常時付勢するように設けられている。
【0030】
基板ホルダー40の筒状の感圧用部品保持部402のペン先側の開口部側には、感圧用部品50を感圧用部品保持部402内に係止させると共に、芯体ホルダー30を収容するための筒状部32が設けられている。
【0031】
芯体ホルダー30は、導電性材料、例えばSUS(Steel Special Use Stainless)からなり、導電性弾性部材31を収納嵌合する凹穴を有する収納嵌合部301と、感圧用部品50の保持部材53に嵌合する棒状部302とが一体に形成されたものである。
【0032】
芯体20は、その先端部20aとは反対側が、導電性弾性部材31を介して導電性材料からなる芯体ホルダー30に嵌合されることにより、芯体ホルダー30に対して結合保持されている。そして、芯体ホルダー30の芯体20側とは反対側の棒状部302が、感圧用部品50の保持部材53に嵌合され、芯体20及び芯体ホルダー30が一体的に、芯体20の先端部20aに印加される圧力に応じて軸心方向に変位することにより、芯体20の先端部20aに印加される圧力(筆圧)が感圧用部品50に伝達されるように構成されている。
【0033】
したがって、この例においては、導電性弾性部材31を有する芯体ホルダー30は、芯体20に印加される圧力(筆圧)を感圧用部品50に伝達するための圧力伝達部材としての機能を備えるものとして構成されている。
【0034】
そして、
図1(B)に示すように、筒状部32内には、芯体ホルダー30を常に芯体20側に付勢するようにするコイルばね33が設けられている。このコイルばね33は、導電性金属などの導電性材料で構成されており、その一端は、図示は省略するが、プリント基板41に配設されている信号発信回路の出力端と電気的に接続されている。
【0035】
芯体ホルダー30は、導電性材料で構成されているので、この芯体ホルダー30に対して導電性弾性部材31を介して装着された導電性材料からなる芯体20は、このコイルばね33を通じて、プリント基板41に配設されている信号発信回路と電気的に接続されている。
【0036】
この例の電子ペン1においては、芯体20の先端部20a側に圧力(筆圧)が印加されると、芯体20は、電子ペン1の筐体本体部11内の方向に軸心方向に変位するようになる。すると、芯体20が嵌合されている芯体ホルダー30が、芯体20と一体的に軸心方向に変位するので、感圧用部品50の弾性部材55の弾性力に抗して、導電部材54を誘電体51側に変位させる。すると、導電部材54と誘電体51との両者の接触面積が、印加された圧力に応じて変化して、筆圧検出部で構成される容量可変コンデンサの静電容量が印加された圧力に応じて変化する。したがって、この筆圧検出部で構成される容量可変コンデンサの静電容量から、筆圧を検出することができる。
【0037】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、
図1(B)に示すように、芯体20の先端部20a側を除く部分の周囲を囲むように、導電体材料からなる周辺電極60がフロントキャップ12内に配設されている。この例では、周辺電極60は、導電性の金属線がコイル状に形成されて構成されている。そして、この例では、基板ホルダー40の感圧用部品保持部402のペン先側の外周部に嵌合して、絶縁材料の樹脂で構成されている筒状の周辺電極保持部61が設けられいる。この周辺電極保持部61は、フロントキャップ12の内壁面との間に空間を形成するように、フロントキャップ12の内壁面と相似形の筒状形状とされている。
図1(B)に示すように、この筒状の周辺電極保持部61の外周面とフロントキャップ12の内壁面との間の空間に、周辺電極60は配設されている。この周辺電極60を構成するコイル部材は、
図1(B)では図示を省略したが、プリント基板41の回路部品と電気的に接続されている。
【0038】
また、開口部12aより内側のフロントキャップ12の中空部内には、軸心方向に沿って形成されている筒状部121が形成されている。周辺電極60は、周辺電極保持部61と、この筒状部121とにより、導電性の芯体20とは電気的に分離(絶縁)された状態となるようにされている。
【0039】
次に、芯体20の構成について説明する。
図2(A)は、芯体20の外観側面図であり、
図2(B)は、芯体20の縦断面図である。
【0040】
図2(A)に示すように、芯体20は、この例では、外観上は、断面が円形の棒状の芯体本体部20bの軸心方向の一端側に、円錐形状の先端部20aが形成された形状とされている。この例では、円錐形状の先端部20aの円錐底面の直径D1は、芯体本体部20bの直径よりも大きくされて、先端部20aと芯体本体部20bとの間に段部20cが生じるように構成されている。
【0041】
芯体本体部20bは、この実施形態では、先端部20aとの連結部側では、前記先端部20aの円錐底面の直径D1よりも小さい直径D2の円柱形状部とされている。また、芯体本体部20bの、感圧用部品50の保持部材53との嵌合側は、保持部材53の嵌合孔の大きさに合わせて、芯体本体部20bの先端部20aとの連結部側の直径D2よりも小さい直径D3の円柱形状部とされている。したがって、この例では、芯体本体部20bは、直径がD2の円柱形状部と、直径がD3の円柱形状部とを備えて、両円柱形状部の間に段部20dが生じる状態とされている。
【0042】
図2(B)及び
図1(B)に示すように、芯体20は、この実施形態では、導電性部材の例としての金属からなる電極芯21を備え、この電極芯21の軸心方向のペン先側の部分を絶縁性の樹脂22で覆った構成とされている。樹脂22としては、この例では、硬質の樹脂が用いられ、例えばPOMで構成されている。
【0043】
電極芯21は、
図2(B)及び
図1(B)に示すように、球体部211と軸心部212とを備えるもので、この例では金属の一体物として構成されている。なお、球体部211と軸心部212とを別部材として、両者を結合するように構成しても勿論よい。
【0044】
電極芯21の球体部211は、芯体20の先端部20a内に位置するように構成されている。換言すれば、球体部211を樹脂22で覆って、円錐形状の先端部20aが形成されるものである。なお、この実施形態では、芯体20の先端部20aの芯体本体部20bとの連結部側の軸心方向の所定長さ部分22aは、直径D1の円柱形状となるように、樹脂22により先端部20aが形成されている。すなわち、先端部20aの芯体本体部20bとの連結部側の所定長さの円柱状形状部分22aは、軸心方向に沿う側周面を備える状態とされている。
【0045】
電極芯21の軸心部212は、この例では、軸心方向において、太さが異なる3つの部位212a、212b及び212cとを備える。
【0046】
部位212aは、
図2(B)及び
図1(B)に示すように、球体部211との連結部を備え、球体部の直径Doよりも小さい径を有し、樹脂22により覆われている部分である。以下、この部位212aを、電極心細軸芯部と称する。この電極芯細軸心部212aは、この例では、
図2(B)及び
図1(B)に示すように、球体部211との連結部が最も細く、球体部211から離れるにしたがって径が徐々に大きくなるテーパー状に形成されている。
図2(B)に示すように、この例では、電極芯細軸心部212aの最大直径は、球体部の直径Doよりも小さい直径Dsとなるようにされている。
【0047】
電極芯細軸心部212aの球体部211との連結部近傍は、芯体20の先端部20a内になっており、先端部20aの樹脂22により覆われている。そして、電極芯細軸心部212aの残りの部分は、樹脂22により覆われて、直径D2の円柱形状部22bを構成する。この場合に、電極芯細軸心部212aの残りの部分は、この直径D2の円柱形状部22bの中心部近傍に位置するようにされる。直径D2の円柱形状部22bの周側面は、軸心方向に沿う面となっている。
【0048】
部位212bは、樹脂22により覆われた直径D2の円柱形状部22bと同一の直径とされ、樹脂22により覆われることなく露出している部位である。この部位を、以下電極芯太軸心部と称することにする。この電極芯太軸心部212bの周側面は、
図2(A)及び(B)、また、
図1(B)に示すように、樹脂22により覆われた直径D2の円柱形状部22bの周側面とは面一となる。
【0049】
部位212cは、樹脂22により覆われることなく露出している部位であって、電極芯太軸心部212bから後端側に伸びる直径D3の円柱形状部を形成する部位である。以下、この部位212cを、電極芯尾端部と称する。この電極芯尾端部212cの端部は、
図1(B)に示すように、芯体ホルダー30に対して導電性弾性部材31を介して嵌合される。
【0050】
前述したように、芯体ホルダー30は、導電性のコイルばね33を通じてプリント基板41に配設されている信号発信回路の出力端に電気的に接続されている。したがって、プリント基板41に配設されている信号発信回路の出力端は、導電性のコイルばね33、芯体ホルダー30及び導電性弾性部材31を介して、芯体20の電極芯尾端部212cに電気的に接続される。すなわち、プリント基板41に配設されている信号発信回路からの出力信号は、芯体20の電極芯21に供給され、この電極芯21の球体部211との静電結合を通じて位置検出センサに信号が送出される。
【0051】
なお、
図1(B)に示すように、芯体20は、芯体ホルダー30に収納されている導電性弾性部材31に対して容易に挿入嵌合され、また、所定の力で引っ張ることで、芯体20を芯体ホルダー30から容易に引き抜くことができる。
【0052】
次に、芯体20を電子ペン1のフロントキャップ12の開口部12aから筐体10内に挿入して芯体ホルダー30に嵌合したときの、当該芯体20と周辺電極60との位置関係及び筐体10のペン先側のフロントキャップ12の開口部12aなどとの関係も含めて、
図3を参照しながら説明する。
図3は、この実施形態の静電容量方式の電子ペン1のペン先側の縦断面の拡大図である。
【0053】
この
図3及び
図1(B)に示すように、芯体20が芯体ホルダー30に嵌合されている状態では、芯体20の電極芯21が外部に露出している部分である電極芯太軸心部212b及び電極芯尾端部212cは、周辺電極60で覆われている空間内に位置するようにされている。そして、この例では、さらに、電極芯細軸心部212aが樹脂22により覆われて直径D2とされている部分22bの内、電極芯太軸線部212bとの連結部側の所定長さ部分が、周辺電極60で覆われている空間内に位置するようにされている。この周辺電極60により覆われている電極芯部分は、当該周辺電極60により静電シールドされることにより位置検出センサとは静電結合し難くなり、芯体20の電極芯21から送出される信号としては、ほぼ無視できる状態となる。
【0054】
そして、芯体20の電極芯細軸心部212aの先端部20a側の部分は、周辺電極60で覆われている空間外となっているが、当該電極芯細軸心部212aの先端部20a側の部分は、球体部211の直径Doよりも小さい径となっている。このため、周辺電極60で覆われている空間外となっている電極芯細軸心部212aの先端部20a側の部分は、球体部211と位置検出センサとの静電結合に比べて弱い結合状態となり、芯体20の電極芯21から送出される信号としては、ほぼ無視できる状態とすることができる。
【0055】
なお、この実施形態では、電極芯細軸心部212aはテーパー形状を有しているので、
図3に示すように、周辺電極60で覆われている空間外となっている電極芯細軸心部212aの部分の最大径Ds´は、電極芯細軸心部212aの最大径Dsよりも小さくなり、位置検出センサとの静電結合を、より弱い結合状態することができる。
【0056】
この結果、この実施形態の電子ペン1においては、芯体20の電極芯21の先端の球体部211からの信号送出のみが位置検出センサに対して優勢となって、冒頭で述べたようなウェイビング現象を軽減することができる。そして、電極芯21の先端は球体部211であるので、電子ペン1の位置検出センサの入力面に対する傾き角に関係なく、位置検出センサと同様の静電結合状態とすることができる。したがって、この実施形態の電子ペンによれば、後述するようにして周辺電極60を用いて電子ペンの傾き角を検出することができると共に、芯体20の先端部20aにより直線の軌跡を入力したときでも波線状になるウェイビングを防止することができるという顕著な効果を奏する。
【0057】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、細型化された芯体20が、斜め方向の力を受けたときの防御を、電子ペン1の筐体10の一部を構成するフロントキャップ12の開口部12a近傍の構成を工夫すると共に、芯体20の構成を、上述のような構成としたことにより実現するようにしている。
【0058】
すなわち、
図3に示すように、フロントキャップ12の開口部12aは筒状に形成されて、軸心方向に沿う方向の内壁面12bが形成されている。この場合に、開口部12aの直径は、芯体20の円錐形状の先端部20aの芯体本体部20bとの連結側の円柱形状部22aの直径D1よりも若干大きくされている。そして、
図3に示すように、芯体20が電子ペン1に装着された状態では、先端部20aの直径D1の円柱形状部22aの周側面と、開口部12aの内壁面12bとが空隙を介して対向している状態となる。したがって、電子ペン1が入力面に対して傾けられて、芯体20の先端部20aに斜め方向の圧力が加わった時には、先端部20aの直径D1の円柱形状部22aの周側面が開口部12aの内壁面12bに衝合することで芯体20が大きく歪曲するのを防止することができる。
【0059】
さらに、フロントキャップ12の開口部12aの内側には、上述したように、筒状部121が設けられている。この筒状部121の内径は、芯体本体部20bの円柱形状部22bの最大径D2よりも若干大きくされている。芯体20が芯体ホルダー30に嵌合された状態では、芯体本体部20bの先端部20a側の円柱形状部22bが、この筒状部121内を挿通されている状態となる。
【0060】
したがって、
図3に示すように、芯体20が電子ペン1に装着された状態では、芯体20の芯体本体部20bの直径D2の円柱形状部22bの周側面と、筒状部121の内壁面121aとが空隙を介して対向している状態となる。これにより、電子ペン1が入力面に対して傾けられて、芯体20の先端部20aに斜め方向の圧力が加わった時には、芯体本体部20bの直径D2の円柱形状部22bの周側面が筒状部121の内壁面121aに衝合することで、芯体20が大きく歪曲するのを防止することができる。
【0061】
この場合に、この例では、筒状部121の内壁面121aは、
図3に示すように、電極芯21の、芯体本体部20bの直径D2の円柱形状部22bの周側面と面一となっている電極芯太軸心部212bに亘って形成されている。したがって、芯体20の芯体本体部20bの樹脂22の部分である直径D2の円柱形状部22bのみならず、金属の電極芯太軸心部212bとの連結部の筒状部121で保護される状態となる。
【0062】
なお、上述の例では、電極芯21の電極芯細軸心部212aの一部も周辺電極60により覆われている空間内とするようにしたが、この例では、電極芯細軸心部212aは、最大径が球体部211の直径Doよりも小さいので、電極芯細軸心部212aの全体を周辺電極60により覆われている空間外にするように構成してもよい。
【0063】
また、上述の例では、電極芯尾端部212cの径は、電極芯太軸心部212bの径よりも小さくしたが、芯体ホルダー30との嵌合が可能である太さであれば、電極芯尾端部212cの径は、電極芯太軸心部212bの径と同一であってもよい。
【0064】
[電子ペン1の信号処理回路の構成例]
図4は、この実施形態の電子ペン1の信号処理回路の構成例を示すブロック図である。すなわち、この実施形態の電子ペン1の信号処理回路は、
図4に示すように、コントローラ501と、信号発信回路502と、開閉スイッチ回路503及び切替スイッチ回路504とを備える。そして、コントローラ501の端子Pcは、筆圧検出部を構成する可変容量コンデンサ50Cと抵抗Rの並列回路を介して接地されている。
【0065】
コントローラ501は、例えばマイクロプロセッサで構成されており、電子ペン1の処理動作を制御する制御回路を構成するもので、図示は省略するが、駆動電源の例としての電池42から電源電圧が供給されている。コントローラ501は、信号供給制御回路の機能を備えるもので、信号発信回路502を制御したり、スイッチ回路503,スイッチ回路504のそれぞれをスイッチング制御したりする。
【0066】
また、コントローラ501は、可変容量コンデンサ50Cの芯体20の先端部20aに印加される筆圧に応じた容量変化を監視することで、電子ペン1の芯体20の先端部20aに印加される筆圧を検出する。この実施形態では、コントローラ501は、芯体20の先端部20aに印加される筆圧に応じた静電容量値となっている可変容量コンデンサ50Cの放電時間から筆圧を検出する。
【0067】
すなわち、コントローラ501は、芯体20の先端部20aに印加される筆圧の検出に際しては、先ず、可変容量コンデンサ50Cの一端が接続されている端子Pcをハイレベルとすることで可変容量コンデンサ50Cを充電する。次いで、コントローラ501は、端子Pcを、当該端子Pcの電圧を監視する入力状態に切り替える。このとき、可変容量コンデンサ50Cに蓄えられた電荷はこれと並列に接続された抵抗Rによって定まる放電時定数で放電され、可変容量コンデンサ50Cの両端電圧は徐々に低下する。コントローラ501は、端子Pcを入力状態に切り替えてから、可変容量コンデンサ50Cの両端電圧が、予め定めた閾値電圧以下に低下するまでの時間Tpを求める。この時間Tpは、求める筆圧に相当するものであり、コントローラ501は、この時間Tpから、複数ビットの筆圧値を求める。
【0068】
信号発信回路502は、この実施形態では、所定周波数f1、例えば周波数f1=1.8MHzの交流信号を発生する発振回路を備える。コントローラ501は、この信号発信回路502を構成する発振回路に制御信号CTを供給することで、当該発振回路をオン、オフ制御する。したがって、信号発信回路502を構成する発振回路は、コントローラ501からの制御信号CTに応じて、発生する交流信号を断続させ、これにより、信号発信回路502は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調信号からなる信号Scを発生する。つまり、コントローラ501によって信号発信回路502を構成する発振回路を制御することにより、信号発信回路502はASK変調信号を生成する。ASK変調に代えて信号発信回路502で生成される信号をOOK(On Off Keying)変調信号、FSK(Frequency Shift Keying)変調信号、あるいはその他の変調信号とするようにしてもよい。
【0069】
信号発信回路502からの信号Scは、図示を省略したアンプで増幅された後、この実施形態では、開閉スイッチ回路503を通じて芯体20の電極芯21に供給されると共に、切替スイッチ回路504の一方の固定端子sに供給される。この切替スイッチ回路504の他方の端子gは接地されている。そして、この切替スイッチ回路504の可動端子は、周辺電極6に接続されている。
【0070】
そして、コントローラ501からの切替制御信号SWにより開閉スイッチ回路503がオン、オフ制御されると共に、切替スイッチ回路504が端子sと端子gとに切り替えられる。
【0071】
この実施形態の電子ペン1では、コントローラ501による制御により、
図5(A)に示すように、位置検出期間Taと、傾き検出期間Tbとを時分割により交互に実行するように信号処理回路が構成されている。位置検出期間Taと、傾き検出期間Tbとの切替制御は、開閉スイッチ回路503及び切替スイッチ回路503が、
図5(B)に示すように、コントローラ501からの切替制御信号SWにより切り替え制御されることによりなされる。
【0072】
位置検出期間Taでは、信号処理回路においては、コントローラ501からの切替制御信号SWにより開閉スイッチ回路503がオンとされて、信号発信回路502の出力端が芯体20の電極芯21に接続されると共に、切替スイッチ回路504は、端子g側に切り替えられて、周辺電極60が接地される。
【0073】
そして、この位置検出期間Taでは、信号発信回路502は、コントローラ501からの制御信号CTにより、位置検出用信号と筆圧の情報とを発生し、この位置検出用信号と筆圧の情報とが、芯体20の電極芯21から送出される。位置検出用信号は、周波数f1の連続波信号(バースト信号)とされる。また、筆圧の情報は、コントローラ501で上述のようにして検出して得た複数ビットの筆圧値の情報により周波数f1の信号が変調されたASK信号とされる。そして、この例では、位置検出期間Taでは、先ず、位置検出用信号が、次いで、筆圧の情報が、芯体20の電極芯21から送出される。
【0074】
この位置検出期間Taでは、周辺電極60は接地されているので、芯体20の電極芯21の内、周辺電極60により覆われている空間に存在する部分は、静電シールドされて、位置検出センサと静電結合しないようにされている。したがって、周辺電極60により覆われている空間外に存在する芯体20の電極芯21の部分は、静電シールドはされないが、当該部分は、電極芯21の球体部211と電極芯細軸心部212aであるので、位置検出センサとの間では、ほぼ球体部211のみが静電結合する状態となる。このため、位置検出装置では、電子ペン1による指示位置を正確に検出することができると共に、球体部211以外の部分の静電結合を非常に弱いものとすることができるので、ウェイビング現象を軽減することができる。
【0075】
次に、傾き検出期間Tbでは、コントローラ501からの切替制御信号SWにより開閉スイッチ回路503がオフとされて、信号発信回路502の出力端の、芯体20の電極芯21との接続が切断されると共に、切替スイッチ回路504は、端子s側に切り替えられて、信号発信回路502の出力端が周辺電極60に接続される。
【0076】
そして、この傾き検出期間Tbでは、信号発信回路502は、コントローラ501からの制御信号CTにより、傾き検出用信号として、位置検出用信号と同様の周波数f1の連続波信号(バースト信号)を発生する。なお、この傾き検出期間Tbにおいても、傾き検出用信号に引き続いて筆圧の情報(ASK信号)を発生するようにしてもよい。
【0077】
したがって、この傾き検出期間Tbでは、傾き検出用信号が周辺電極60を通じて位置検出センサに送出される。位置検出装置では、位置検出センサを通じて得た検出信号から、電子ペン1の傾き角を検出する。
【0078】
この位置検出装置での電子ペン1の傾き角の検出の方法について、
図6を参照して説明する。
【0079】
図6(A)の模式図に示すように、位置検出センサ201の入力面に対して、電子ペン1の芯体20が垂直の状態にあるときには、位置検出期間Taでは、芯体20の電極芯21と位置検出センサ201との間で静電結合し、その静電結合する領域OBaは、
図6(B)に示すように、真円の領域となる。一方、傾き検出期間Tbでは、周辺電極60と位置検出センサ201との間で静電結合し、その静電結合する領域OBbは、
図6(C)に示すように、リング状の領域となる。
【0080】
また、
図6(D)の模式図に示すように、位置検出センサ201の入力面に対して、電子ペン1の芯体20が傾いている状態にあるときには、位置検出期間Taにおいて芯体20の電極芯21と位置検出センサ201との間で静電結合する領域OBaは、
図6(E)に示すように、ほぼ真円の領域のままとなる。一方、傾き検出期間Tbにおいて周辺電極60と位置検出センサ201との間で静電結合する領域OBbは、
図6(F)に示すように、傾き角に応じると共に傾きの方向に長く伸びた楕円形状の領域となる。
【0081】
したがって、位置検出装置では、
図6(F)に示した領域OBbの楕円形状の長円方向の長さから電子ペン1の傾き角の大きさを検出することができ、また、
図6(E)に示した電子ペン1の指示位置を起点とした領域OBbの楕円形状の長円方向を検出することにより、電子ペン1の傾きの方向を検出することができる。
【0082】
なお、
図4の例では、傾き角を検出する用途とされる周辺電極60には、芯体20の電極芯21に供給する周波数f1の信号を用いるようにしたが、芯体20の電極芯21に供給する信号の周波数と、周辺電極60に供給する信号の周波数とを異ならせてもよい。その場合には、位置検出装置では、電極芯21からの信号と、周辺電極60からの信号とを区別することができるので、上述のように、位置検出期間と傾き検出期間とを時分割で繰り返すするのではなく、電極芯21からの信号と、周辺電極60からの信号とを同時に位置検出センサに送出するようにしてもよい。
【0083】
[芯体及び電極芯の他の構成例]
上述した実施形態の芯体20の電極芯21においては、電極芯細軸心部212aはテーパー形状としたが、これに限られるものではない。
図7(A)は、その一例を示す芯体20Aを示すもので、上述の実施形態の芯体20と同一の部分には、同一の参照符号を付してある。この例の場合の電極芯21Aの電極芯細軸心部212Aaは、球体部211との連結側は直径Daの最細部212Aa1と、電極芯太軸心部212Abとの連結側は直径がDaより大きく、電極芯太軸心部212Abの直径D2よりは小さい直径Dbの中太部212Aa2とを有するものとされる。なお、この例における電極芯太軸心部212Abと電極芯尾端部212Acは、上述の例の電極芯の電極芯太軸心部212bと電極芯尾端部212cとは軸心方向の長さが異なるだけで、直径は同じとされている。
【0084】
なお、この例の場合に、中太部212Aa2が周辺電極60で覆われている空間内に存在するように構成されている場合には、当該中太部212Aa2の太さは、球体部211の直径Do以上であってもよい。上述した例の芯体20のテーパー形状の電極芯細軸心部212aにおいても、当該電極芯細軸心部212aの電極芯太軸心部212b側の径は、電極芯太軸心部212bは、周辺電極60で覆われている空間内に存在するように構成されている場合には、球体部211の直径Do以上であってもよい。
【0085】
また、
図7(B)は、更に他の例の芯体20Bの構成例を示すもので、この例においても、上述の実施形態の芯体20と同一の部分には、同一の参照符号を付してある。この例の場合の電極芯21Bの電極芯細軸心部212Baは、球体部211との連結部から電極芯太軸心部212Bbに至る部分の全てを球体部211の直径Doよりも小さい直径Daとされている。その他は、上述の実施形態と同様である。
【0086】
なお、上述の芯体の例では、電極芯の内、樹脂で覆われていない部分である電極芯太軸心部と電極芯尾端部とは太さを変更するようにしたが、電極芯太軸心部と電極芯尾端部とは同じ太さとしてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、電極芯太軸心部の径は、電極芯細軸心部を覆う樹脂22の部分の径と同一として面一とするようにしたが、電極芯細軸心部と電極芯太軸心部との連結部が、筒状部121よりも後端側にあって、筒状部121の壁面212aと対向する位置にないときには、電極芯太軸心部の径は、電極芯細軸心部を覆う樹脂22の部分の径とは異なっていてもよい。
【0088】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の実施形態の電子ペンにおいては、周辺電極60は、導電性のコイルばねの構成としたが、これに限られるものではなく、導電材により筒状に構成されるものであればどのようなものであってもよい。
【0089】
また、周辺電極60は、上述の実施形態では、単一部品としたが、円周方向に分割した複数個の導電部材で構成してもよい。
【0090】
なお、上述の実施形態では、筆圧検出部の感圧用部品は、誘電体を端子部材と導電部材とで挟持することで可変容量コンデンサを構成するようにしたが、例えば特開2013-161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする、MEMS(Micro Elector Mechanical Systems)素子からなる可変容量コンデンサとして構成され半導体素子を用いて構成することもできる。
【0091】
また、上述の実施形態では、芯体の電極芯とプリント基板の回路との電気的な接続は、導電性のコイルばねを用いた構成としたが、これに限られるものではない。そして、芯体の電極芯尾端部が嵌合される芯体ホルダーとプリント基板の回路とを電気的に接続するように構成するだけでなく、芯体の電極芯尾端部と、プリント基板の回路とを電気的に接続するように構成してもよい。
【0092】
なお、上述の実施形態では、芯体は断面形状が円形である場合として説明したが、断面形状は、円形ではなく、多角形であってもよい。
【0093】
また、芯体の電極芯は、上述の実施形態では、金属としたが、硬質の材料であれば、金属でなくともよい。
【符号の説明】
【0094】
1…電子ペン、10…筐体、11…筐体本体部、12…フロントキャップ、20,20A,20B…芯体、21,21A,21B…電極芯、22…樹脂、30…芯体ホルダー、40…基板ホルダー、41…プリント基板、50…感圧用部品、60…周辺電極、211…球体部、212,212A,212B…芯体本体部、212a,212Aa,212Ba…電極芯細軸心部