IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルセロールミタルの特許一覧

<>
  • 特許-コーティングされた非導電性基板 図1
  • 特許-コーティングされた非導電性基板 図2
  • 特許-コーティングされた非導電性基板 図3a
  • 特許-コーティングされた非導電性基板 図3b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】コーティングされた非導電性基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20231027BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231027BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231027BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231027BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
C09D201/00
C09D7/61
B05D7/24 303B
B05D7/24 302Z
B05D7/24 301R
B05D7/24 303E
B05D7/00 K
B05D7/24 302U
B05D7/24 302V
B05D7/24 302T
B05D7/24 302Q
B05D7/24 302S
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302X
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020569755
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2019054844
(87)【国際公開番号】W WO2019239302
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/054427
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス-アルバレス,アベル
(72)【発明者】
【氏名】ペレス・ビダル,オスカル
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス・マルティネス,カルロス・ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス・アルバレス,ホセ・パウリーノ
(72)【発明者】
【氏名】スアレス・ガルシア,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ブランコ・イグレシアス,ウーゴ
(72)【発明者】
【氏名】メルコンミゲル,ホルヘ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040211(JP,A)
【文献】特表2016-500714(JP,A)
【文献】特開2017-119846(JP,A)
【文献】特開2017-141444(JP,A)
【文献】国際公開第2017/132734(WO,A1)
【文献】特表2017-513003(JP,A)
【文献】特開2017-218373(JP,A)
【文献】特開2013-035966(JP,A)
【文献】特開2017-178979(JP,A)
【文献】特表2011-510905(JP,A)
【文献】米国特許第06648552(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第107236286(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B05D 1/00 - 7/26
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET吸着法によって測定した比表面積300 /g未満を有する還元型酸化グラフェンと少なくとも1つの熱硬化性ポリマーとを含む塗料で少なくとも部分的に、少なくとも片面がコーティングされた非導電性基板であって、前記塗料で直接コーティングされ、
非導電性基板は、ジオメンブレン、ジオテキスタイル、又はジオシンセティッククレイライナーであり、
還元型酸化グラフェンは、1つ以上の層を含んで形成されるナノプレートレットの形態であり、
還元型酸化グラフェンの横方向のサイズは、40~80μmの間であり、
該横方向のサイズは、還元型酸化グラフェンの層の最大の長さであり、
還元型酸化グラフェン中の酸素の重量パーセントは、2~10%の間であり、
塗料中の還元型酸化グラフェンの濃度は、0.5~4重量%の間である、
非導電性基板。
【請求項2】
還元型酸化グラフェンの横方向のサイズが60~80μmの間である、請求項1に記載の非導電性基板。
【請求項3】
熱硬化性ポリマーが、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂及びフェノール性樹脂又はそれらの混合物の中から選択される、請求項1又は2に記載の非導電性基板。
【請求項4】
非導電性基板が、ストリップ状の塗料でコーティングされて、塗装された非導電性基板の部分と塗装されていない非導電性基板の部分とが交互に形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の非導電性基板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の非導電性基板の製造方法であって、連続する以下のステップ、
A.BET吸着法によって測定した比表面積が300 /g未満の還元型酸化グラフェン、熱硬化性モノマー、硬化剤及び任意選択的に溶媒を混合するステップ、
B.非導電性基板に前記混合物を堆積するステップ、及び
C.硬化ステップ
を含み、
非導電性基板が、ジオメンブレン、ジオテキスタイル、又はジオシンセティッククレイライナーであり、
還元型酸化グラフェンは、1つ以上の層を含んで形成されるナノプレートレットの形態であり、
還元型酸化グラフェンの横方向のサイズは40~80μmの間であり、
該横方向のサイズは、還元型酸化グラフェンの層の最大の長さであり、
還元型酸化グラフェン中の酸素の重量パーセントは、2~10%の間であり、
堆積した塗料中の還元型酸化グラフェンの濃度は、0.5~4重量%の間である、
方法。
【請求項6】
ステップA)において、溶媒が、キシレン、n-ブタノール、エチルベンゼン、ナフサ又はそれらの混合物の中から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の非導電性基板、又は請求項5若しくは6に従って入手可能である非導電性基板を用いて水漏れを検出する方法であって、以下の連続するステップ、
a)電子システムを使用して、少なくとも部分的にコーティングされた前記非導電性基板に電圧を印加するステップ、
b)少なくとも部分的にコーティングされた前記非導電性基板に電気回路が形成されたときに水漏れを検出するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
ステップI)において、電子システムが、電源システムと、水漏れを示すことができるエミッタとを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の非導電性基板、又は請求項5若しくは6に従って入手可能である非導電性基板を用いてひずみ変形を検出する方法であって、以下の連続するステップ、
1.電子システムを使用して、少なくとも部分的にコーティングされた前記非導電性基板に電圧を印加するステップ、
2.少なくとも部分的にコーティングされた前記非導電性基板の変形後の電気抵抗変化を測定するステップ
を含む、方法。
【請求項10】
ステップ1)において、電子システムが、バッテリー及び電源システムを備える、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型酸化グラフェン及び熱硬化性ポリマーを含む塗料で少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板であって、塗料で直接コーティングされた非導電性基板、このコーティングされた非導電性基板の製造方法、漏れ及びひずみ変形を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、鉱業、電子産業、プラスチック配管システム、衣料産業及び自動車又は航空宇宙産業で使用されるエンジニアリングプラスチックに適している。
【0003】
保水施設(例えば、ダム及び池)又は水誘導設備(例えば、排水路及び運河)を建設する際に使用される遮水層として、ジオメンブレン、ジオテキスタイル又はジオシンセティッククレイライナー(GCL)を使用することが知られている。これらのテキスタイルは大規模に展開することができ、数千平方メートルに及ぶ可能性がある。ジオテキスタイルは多くの目的に役立ち得るが、主としてそれ自体で水の侵入に対するバリアにはならない。遮水性が必要な場合は、通常、追加の防水層が使用される。ジオシンセティッククレイライナー(GCL)は、防水プラスチック膜及び/又は粘土を含む複合材料であり得る。粘土の裏張りは、保水施設を防水する伝統的な方法である。これらは、伝統的な粘土土工よりも優れた性能を提供し、貯水池及び埋立地で使用される。ジオメンブレンは、非常に透過性の低い合成メンブレンライナーであり、人工の事業、構造又はシステムにおける流体(又はガス)の移動を制御するために、地盤工学関連の材料とともに使用される。
【0004】
GCLは通常、少なくとも3つの層を含み、すなわち、2つのジオシンセティック層の間に粘土の層が挟まれている。粘土を挟むために使用される2つのジオシンセティック層は、織布又は不織布のジオテキスタイル、ジオグリッド、ジオネット又はジオメンブレンの任意の組み合わせであり得る。例えば、構造は、ジオグリッド又はジオネットの強化層又は裏打ち層及び不織布ジオテキスタイルを含み得る。強化層は、織布のテキスタイル又はネットであり得る。粘土はベントナイトであることが多く、ポリマー結合剤及び/又は安定剤などの添加剤を含む場合がある。
【0005】
池のライナー及びGCLなどの遮水層は、通常、その遮水性を維持するために損傷から保護する必要がある。ライナーに小さな穴があると、特に時間の経過とともに、重大な水漏れが発生する可能性がある。場合によっては、例えば、水が汚染され、環境を保護するために保持又は管理されている鉱業廃棄物を封じ込める場合、少量の漏れが重大な影響を及ぼし、重大な環境被害を引き起こす可能性があり、修復には多額の費用がかかる可能性がある。このような用途では、ライナーの完全性は重要であり、その完全性を常に判定及び監視する機能も重要である。
【0006】
バリア性の完全性の検査には、絶縁バリアの表面に電圧を印加し、適切な条件下でバリア材料の欠陥を通って回路を形成できる電気的検査を含めることができる。回路を形成するためには、電圧が印加されるバリアの反対側に電気伝導メカニズムが必要である。非常に弱い電解質であっても、バリアの下に存在する場合、欠陥を通って検査装置に至る回路を形成するのに十分な電流を流すことができる。例えば、粘土は塩分及び水分を含んでいるため、多くの場合十分な電解質である。
【0007】
導電性経路の形成を支援するために、水を構造の一部として使用して、検査工程を容易にすることができる。粘土が乾燥している場合、電解質として機能しないため、導電性検査メカニズムは信頼できなくなる。複数層の絶縁体がバリア層に存在する場合、回路を形成するための信頼できるメカニズムは存在しない。
【0008】
特許出願国際公開第2017/132734号は、漏れを検出するためにグラフェンを組み込んだ導電性テキスタイルを開示している。テキスタイルへのグラフェンの組み込みは、繊維を形成する前にグラフェンをポリマーに混合することを含む様々な方法によって達成することができる。繊維又はテキスタイルをグラフェンでコーティングして導電性テキスタイルを作製することも可能である。グラフェンは、ポリマー中のグラフェンの分散を促進するために、粉末として、又は流体中の分散液として存在することができる。グラフェンをポリマーに組み込む適切な方法としては、グラフェンのポリマーへの溶融配合、グラフェンによるポリマーのその場重合及び溶液混合が挙げられる。実施例では、エタノール、キシレン、水、又はアクリルに分散したグラフェンを使用して、ジオテキスタイルをコーティングした。水に分散した酸化グラフェンをジオテキスタイルに堆積もした。その後、クエン酸を使用して酸化グラフェンをグラフェンに還元した。
【0009】
特許出願国際公開第2017/177269号は、漏れを検出するために導電性テキスタイルを組み込んだジオシンセティッククレイライナーを開示している。上記テキスタイルは、導電性繊維を組み込むか、又は導電性コーティングでコーティングすることができる。導電性繊維は、好ましくはグラフェンを含むか、又はグラフェンでコーティングされ、又はテキスタイル自体がグラフェンでコーティングされ得る。テキスタイルへのグラフェンの組み込みは、繊維を形成する前にグラフェンをポリマーに混合することを含む多くの方法によって達成することができる。繊維又はテキスタイルをグラフェンでコーティングして導電性テキスタイルを作製することも可能である。グラフェンは、ポリマー中のグラフェンの分散を促進するために、粉末として、又は流体中の分散液として存在することができる。グラフェンをポリマーに組み込む方法としては、グラフェンのポリマーへの溶融配合、グラフェンによるポリマーのその場重合及び溶液混合が挙げられる。
【0010】
グラフェンのポリマーへの溶融配合、グラフェンによるポリマーのその場重合及び溶液混合は、熱可塑性ポリマーに使用される技術である。
【0011】
しかしながら、国際公開第2017/177269号及び国際公開第2017/132734号の両方の特許出願では、グラフェンであろうと酸化グラフェンであろうと、ジオテキスタイル上に堆積される前にキシレン、エタノール、水などの溶媒に分散されると、グラフェンのジオテキスタイルへの付着性が悪くなり、熱可塑性プラスチックは粘性ポリマーであることが知られているため、グラフェンがジオテキスタイル上に堆積して溶融する前にアクリルに分散されると、グラフェンの分散不良のリスクが高くなる。付着性及び分散性が悪いと、漏れの検出品質が低下する可能性がある。
【0012】
さらに、非導電性基板のジオメンブレン、ジオテキスタイル、又はGCLのひずみ変形を評価する必要がある。実際、自然災害(例えば、地震)などの極限状況又は摩耗などの通常の状況で発生する欠陥を早期に検出するために、このような製品の状態を監視するには、非常に感度の高いひずみ検知デバイスが大いに必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2017/132734号
【文献】国際公開第2017/177269号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、非導電性基板の漏れ検出の品質を改善することである。さらに、その目的は、とりわけ基板の寿命を改善するために、上記非導電性基板のひずみ変形を検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これは、請求項1に記載の少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板を提供することによって達成される。コーティングされた鋼基板はまた、請求項2~16の任意の特徴を含むことができる。
【0016】
本発明はまた、請求項17~22に記載の、少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板の製造方法を包含する。
【0017】
本発明はまた、請求項23~25に記載の、少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板を用いて漏れを検出する方法を包含する。
【0018】
本発明はまた、請求項26~27に記載の、少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板を用いてひずみ変形を検出する方法を包含する。
【0019】
最後に、本発明は、請求項28に記載の少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板の使用を包含する。
【0020】
以下の用語が定義される。
【0021】
- 還元型酸化グラフェンとは、還元された酸化グラフェンを意味する。還元型酸化グラフェンは、ケトン基、カルボキシル基、エポキシ基及びヒドロキシル基を含むいくつかの酸素官能基を有するグラフェンの1つ又はいくつかの層を含み、
- バイオポリマーは、生物によって生成されるポリマーであり、言い換えれば、ポリマー生体分子である。バイオポリマーには、共有結合してより大きな構造を形成するモノマー単位が含まれている。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0023】
本発明を説明するために、特に以下の図面を参照して、非限定的な例の様々な実施形態及び試行について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による還元型酸化グラフェンの1つのナノプレートレットの例を示す。
図2】本発明による還元型酸化グラフェンのいくつかのナノプレートレットの例を示す。
図3a】漏れ検出の例を示す。
図3b】漏れ検出の別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、表面積300m.gr-1未満を有する還元型酸化グラフェンと少なくとも1つの熱硬化性ポリマーとを含む塗料で少なくとも部分的に、少なくとも片面が、コーティングされた非導電性基板であって、上記塗料で直接コーティングされた非導電性基板に関する。
【0026】
理論に縛られることを望まないが、300m.gr-1未満の表面積を有する還元型酸化グラフェンと熱硬化性ポリマーとを含む塗料は、非導電性基板によく付着し、コーティングされた非導電性基板の寿命を延ばすと思われる。実際、熱硬化性ポリマーのおかげで、還元型酸化グラフェンは塗料中に高度に分散し、検出品質の向上につながると考えられる。最後に、非導電性基板に堆積した塗料は、漏れ及びひずみ変形を検出できる簡単でシンプルなシステムである。
【0027】
好ましくは、還元型酸化グラフェンは、290m.gr-1未満の表面積を有する。好ましくは、還元型酸化グラフェンは、200m.gr-1を超える表面積を有する。表面積が300m.gr-1以上の場合、塗料の感度が高すぎてバックグラウンドノイズも検出されるため、したがって非導電性基板の漏れ検出の品質は低下するように思われる。
【0028】
還元型酸化グラフェンは、特許出願PCT/IB2017/000348又はPCT/IB2018/053416に開示されているように、キッシュグラファイトから製造することができる。PCT/IB2018/053643に開示されているように、電極スクラップからも製造することができる。
【0029】
好ましくは、非導電性基板は両面がコーティングされている。
【0030】
好ましい実施形態では、コーティングされた非導電性基板は保護層で覆われている。保護層は熱硬化性ポリマーで作製することができる。この場合、コーティングされた非導電性基板は腐食などから保護される。
【0031】
好ましくは、還元型酸化グラフェンの横方向のサイズは、1~80μmの間、より好ましくは40~80μmの間、有利には60~80μmの間である。
【0032】
好ましくは、還元型酸化グラフェン中の酸素の重量パーセントは、2~20%の間であり、好ましくは2~10%の間である。実際に、理論に縛られることを望まないが、酸素の割合が塗料の導電率及び電気抵抗に役割を果たすと考えられる。
【0033】
好ましくは、還元型酸化グラフェンは、バイオポリマーによって官能化されていない。実際に、理論に縛られることを望まないが、バイオポリマーは漏れ及びひずみ変形の検出の感度を低下させる可能性があると考えられる。
【0034】
好ましくは、還元型酸化グラフェンは、1つ以上のナノプレートレットの形態である。実際に、理論に縛られることを望まないが、ナノプレートレットは電気が流れる塗料中の経路を容易に形成できるように思われるため、還元型酸化グラフェンの形態が検出に役割を果たし得ると考えられる。図1は、還元型酸化グラフェンの1つのナノプレートレットの例を示す。横方向のサイズはX軸を通る層の最大の長さを意味し、厚さはZ軸を通る層の高さを意味し、ナノプレートレットの幅はY軸を介して示される。図2は、還元型酸化グラフェンのいくつかのナノプレートレットの例を示す。
【0035】
有利には、塗料の厚さは2mm未満の間、好ましくは50~500μmの間である。
【0036】
好ましくは、塗料中の還元型酸化グラフェンの濃度は、0.05~10重量%の間、好ましくは0.05~7重量%の間、有利には0.5~4重量%の間である。実際に、理論に縛られることを望まないが、上記の濃度で還元型酸化グラフェンを有することは、上記の範囲では熱硬化性樹脂の内部に形成されたナノ粒子のネットワークの導電性が変形に対してより感度が高く、より小さなひずみを検出することができるため、ひずみの場合の検出感度をさらに改善できると思われる。
【0037】
好ましくは、塗料は熱可塑性ポリマーを含まない。特に、塗料はアクリルポリマーを含まない。実際、熱可塑性樹脂は塗料の粘度を高め、還元型酸化グラフェンの分散が悪くなるため、したがってコーティングされた非導電性基板の品質が低下すると考えられる。
【0038】
有利には、熱硬化性ポリマーは、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素/ポリウレタン、加硫ゴム、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン樹脂、ベンゾオキサジン、ポリイミド、ビスマレイミド、シアン酸エステル、ポリシアヌレート、フラン、シリコーン樹脂、チオライト及びビニルエステル樹脂又はそれらの混合物の中から選択される。
【0039】
好ましくは、ポリマーのモル質量分布は1300以下であり、有利には、700~1200の間である。
【0040】
好ましくは、非導電性基板は、テキスタイル又はプラスチック基板である。特に、テキスタイルは、ジオメンブレン、ジオテキスタイル又はジオシンセティッククレイライナーである。好ましくは、ジオメンブレン、ジオテキスタイル又はジオシンセティッククレイライナーは、織布又は不織布である。
【0041】
好ましい実施形態では、プラスチック基板は、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミドファミリー、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレート又はそれらの混合物の中から選択される。
【0042】
好ましくは、プラスチック基板は、ポリ-4-ビニルフェノール、ポリエーテルスルホン又はポリジメチルシロキサンを含まない。実際に、理論に縛られることを望まないが、これらのポリマーの存在は検出感度を低下させる可能性があると考えられる。
【0043】
有利には、塗料は二酸化チタン又は銅を含まない。
【0044】
好ましくは、非導電性基板は、塗料ストリップでコーティングされて、塗装された非導電性基板と塗装されていない非導電性基板とを交互に形成する。
【0045】
別の実施形態では、非導電性基板は、塗料の1つの完全な層でコーティングされている。
【0046】
本発明の第2の目的は、本発明による少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板の製造方法であって、連続する以下のステップ、
A.還元型酸化グラフェン、熱硬化性モノマー、硬化剤及び任意選択的に溶媒を混合するステップ、
B.混合物を非導電性基板に堆積するステップ、及び
C.硬化ステップ
を含む方法である。
【0047】
好ましくは、ステップB)において、混合ステップは、
i.300m.gr-1未満の表面積を有する還元型酸化グラフェンと熱硬化性ベースポリマー及び任意選択的に溶媒とを混合するステップ、
ii.硬化剤を添加するステップ、
iii.ステップB)で得られた混合物を混合するステップ
を実行する。
【0048】
好ましくは、ステップA)において、溶媒は、キシレン、n-ブタノール、エチルベンゼン、ナフサ、n-ブチルアセテート、トルエン、環状炭化水素、イソプロパノール及びベンジルアルコール又はそれらの混合物等の中から選択される。
【0049】
好ましくは、ステップA)において、熱硬化性モノマーは、エポキシ樹脂、エステル、ウレタン、尿素/ポリウレタン、加硫ゴム、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン樹脂、ベンゾオキサジン、イミド、ビスマレイミド、シアン酸エステル、シアヌレート、フラン、シリコーン樹脂、チオライト及びビニルエステル樹脂又はそれらの混合物から選択される。
【0050】
有利には、ステップA)において、硬化剤は、ポリアミド、フェノール、アミン及び重付加イソシアネート又はそれらの混合物の中から選択される。
【0051】
好ましくは、ステップB)において、コーティングを堆積するステップは、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、フィルムコーティング、コイルコーティング、ブラシコーティング又はスパチュラコーティングによって実行される。
【0052】
好ましくは、ステップC)において、硬化ステップは、室温で乾燥することによって実行される。
【0053】
本発明の第3の目的は、本発明による少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板を用いて漏れを検出する方法であって、以下の連続するステップ、
a)電子システムを使用して、少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板に電圧を印加するステップ、
b)少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板に電気回路が形成されたときに漏れを検出するステップ
を含む方法である。
【0054】
理論に縛られることを望まないが、図3a及び図3bに示されるように、コーティングされた非導電性基板が漏れを検出すると、電気回路が形成されると考えられる。実際に、最初は、塗料2でコーティングされた非導電性基板1は、電圧源3によって印加された電圧の印加があっても、開電気回路を形成するように思われる。コーティングされた非導電性基板は、例えば、鉱業廃棄物4上に堆積される。漏れ5があると、導電性流体(例えば、水)が非導電性基板1上に存在する塗料2と接触し、回路を閉じる。次に、エミッタ6が漏れを示す。
【0055】
好ましくは、ステップI)において、電子システムは、電源システムと、漏れを示すことができるエミッタとを備える。例えば、電源システムはバッテリーである。好ましくは、エミッタは光である。好ましくは、ステップII)において、光は発光ダイオード(LED)である。この場合、漏れが発生して電気回路が閉じると、電子システムがLEDをオンにする。又は、エミッタは、漏れの影響を受けた領域のマップを表示することによって漏れを示すことができるコンピュータである。
【0056】
本発明の第4の目的は、本発明による少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板を用いてひずみ変形を検出する方法であって、以下の連続するステップ、
1.電子システムを使用して、少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板に電圧を印加するステップ、
2.少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板の電気抵抗変化を測定するステップ
を含む方法である。
【0057】
理論に縛られることを望まないが、塗料において、還元型酸化グラフェンナノ粒子が導電性ネットワークを形成すると考えられる。材料にひずみがかかると、熱硬化性よりも強いネットワークの内部形状が重要な様式で変化する。その結果、塗料の電気抵抗が変化する。
【0058】
この場合、好ましくは、電気抵抗の相対的変化と機械的ひずみεとの比であるゲージ係数は5を超える。
【0059】
好ましくは、ステップ1)において、電子システムは、電源システムを含む。好ましくは、それはバッテリーである。
【0060】
最後に、本発明の最後の目的は、漏れ又はひずみ変形を検出するために、本発明による少なくとも部分的にコーティングされた非導電性基板の使用である。
【0061】
本発明は、情報提供のみを目的として実施された試行で説明される。それらは制限的ではない。
【実施例
【0062】
[実施例1]
<導電率試験>
異なるナノ粒子を、700~1200の間のモル質量分布を有するエポキシ樹脂、700以下のモル質量分布を有するビスフェノールA-(エピクロルヒドリン)エポキシ樹脂及びキシレンと混合した。DISPERMATと呼ばれるデバイスを使用して混合物を混合及び分散させた。次に、ポリアミドを含む硬化剤を混合物に加えてから混合した。混合物をポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)基板上に堆積させた。
【0063】
次に、バッテリーを含む電子システムを使用して、すべての試行に電圧(10V)を印加した。電気抵抗を測定した。表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)によって測定した。すべての試行の導電率を計算した。
【0064】
結果を以下の表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
試行1~4は、試行5及び6と比較して、高い導電率を示し、したがって漏れ及びひずみ変形を検出する感度が高いことを示す。
【0067】
[実施例2]
<漏れ検出試験>
酸素が1~5重量%で横方向のサイズが約20μmの還元型酸化グラフェンのナノプレートレットを、700~1200の間のモル質量分布を有するエポキシ樹脂、700以下のモル質量分布を有するビスフェノールA-(エピクロルヒドリン)エポキシ樹脂又キシレンと混合した。キシレン、n-ブタノール、エチルベンゼン及びナフサを含む溶媒を加えた。DISPERMATと呼ばれるデバイスを使用して混合物を混合及び分散させた。次に、ポリアミドを含む硬化剤を混合物に加えてから混合した。混合物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作製された不織布ジオテキスタイル上に堆積させた。その後、室温で乾燥させた。
【0068】
コーティングされたジオテキスタイルは、貫通させて小さな穴を開け、2層の鉱業廃棄物の間に配置した。バッテリー及びLEDを備えた電子システムを、コーティングされたジオテキスタイルに接続した。鉱業廃棄物の上部に水を注いだ。コーティングされたジオテキスタイルの穴を通って水が流れると、電気回路が形成され、LEDがオンになる。
【0069】
同じ試験を、ジオテキスタイル上に塗料が交互になるように塗料ストリップを堆積することによって、実行した。水がコーティングされたジオテキスタイルと接触したとき、スイッチがオンになったLEDは、水と接触しているジオテキスタイルに最も近いLEDであった。したがって、ジオテキスタイルが広範囲の場合(すなわち、数百メートル)、水漏れの位置と点灯しているLEDとの間の相関関係により、水漏れが発生した場所をすばやく確認できる。
【0070】
[実施例3]
<ひずみ変形試験>
異なるナノ粒子を、700~1200の間のモル質量分布を有するエポキシ樹脂、700以下のモル質量分布を有するビスフェノールA-(エピクロルヒドリン)エポキシ樹脂及びキシレンと混合した。DISPERMATと呼ばれるデバイスを使用して混合物を混合及び分散させた。次に、ポリアミドを含む硬化剤を混合物に加えてから混合した。混合物をポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)基板上に堆積させた。
【0071】
次に、すべての試行で引張荷重を加え、電気抵抗の相対的変化と機械的ひずみεとの比であるゲージ係数を決定した。表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)によって測定した。比較として、constantan(R)で得た従来のひずみゲージ感度を追加した。
【0072】
結果を以下の表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
試行7~10は、従来のひずみゲージと比較して、高いゲージ係数を示し、したがってひずみ変形を検出する感度が高いことを示す。
図1
図2
図3a
図3b