(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】長さが変動する病院用ベッドでの使用に適した動的フォームマットレス
(51)【国際特許分類】
A61G 7/065 20060101AFI20231027BHJP
A47C 27/08 20060101ALI20231027BHJP
A47C 20/08 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
A61G7/065
A47C27/08 A
A47C20/08 Z
(21)【出願番号】P 2021068323
(22)【出願日】2021-04-14
(62)【分割の表示】P 2018137908の分割
【原出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-07-19
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503278256
【氏名又は名称】ヒル-ロム サービシズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】ダレル ボーグマン
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス ペロ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス イー.ボーグマン
(72)【発明者】
【氏名】ケルシー,ジー.エイケン
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520002(JP,A)
【文献】特表2008-534144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/065
A47C 27/08
A47C 20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を画定するフォームフレームと、
前記空間内に配置された袋アセンブリと、
前記フォームフレームおよび前記袋アセンブリを包むカバーと、を備えるマットレスであって、
前記マットレスは、関節動作式のフレームと係合するようにされており、
前記マットレスは、少なくとも1つの突出部をさらに含み、前記少なくとも1つの突出部は前記袋アセンブリに固定され、かつ、前記関節動作式のフレームに係合して前記関節動作式のフレームの動きに応答して前記袋アセンブリの動きを制御するように構成され、前記袋アセンブリは、前記関節動作式のフレームの部材が動いたときに前記袋アセンブリが前記フォームフレームに対して一定の範囲で動くことができるように前記フォームフレームと係合されている、マットレス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの突出部が前記カバーの底面からのびる複数の突出部を含み、前記複数の突出部それぞれは、前記関節動作式のフレームの複数の部分に形成された受け部に入り、複数箇所で
前記マットレスを前記関節動作式のフレーム固定するようにされている、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記袋アセンブリに固定された前記少なくとも1つの突出部は、前記フォームフレームには固定されていない、請求項2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記袋アセンブリは、前記袋アセンブリを前記カバーに固定するプレートを含む、請求項1に記載のマットレス。
【請求項5】
前記カバーは、前記袋アセンブリを前記カバーに固定するために前記袋アセンブリの前記プレートを受けるポケットを含む、請求項4に記載のマットレス。
【請求項6】
前記袋アセンブリは、スリーブが形成された、袋アセンブリのカバーをさらに含み、前記プレートは前記スリーブの中に配置され、前記スリーブに対して移動可能である、請求項5に記載のマットレス。
【請求項7】
前記フォームフレームに固定され、かつ、前記関節動作式のフレームに係合して前記関節動作式のフレームの動きに応答して前記フォームフレームの一部の動きを制御するように構成された少なくとも1つの突出部を有し、
前記フォームフレームに固定された前記突出部は、前記フォームフレームに固定されたプレートと接続されている、請求項1に記載のマットレス。
【請求項8】
前記フォームフレームに固定された前記プレートは、スリーブによって、前記プレートが前記スリーブ内で移動するように前記フォームフレームに固定されている、請求項7に記載のマットレス。
【請求項9】
前記プレートを前記フォームフレームに固定する前記スリーブは、接着剤によって前記フォームフレームに固定されている、請求項8に記載のマットレス。
【請求項10】
前記フォームフレームは、長さが可変である穴のあいたフットセクションを含む、請求項9に記載のマットレス。
【請求項11】
前記袋アセンブリは、複数のフォーム充填袋を含み、前記フォーム充填袋は各々、マニホールドによって相互に接続され、前記マニホールドは非動力型の逃がし弁を有し、前記逃がし弁は、前記袋アセンブリ内の圧力が、前記逃がし弁のあらかじめ定められた限界を超えた場合に前記袋アセンブリから空気を放出するように構成され、前記フォーム充填袋は各々、第1の層と第2の層とを含む、請求項1に記載のマットレス。
【請求項12】
第1の群の前記複数のフォーム充填袋は第1の性能を有し、第2の群のフォーム充填袋は、前記第1の性能とは異なる第2の性能を有し、性能の差がゆえに、患者支持装置に支持される患者に対する支持が、前記
マットレスの頭部の部分と胴の部分とで変化する、請求項11に記載のマットレス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの突出部は前記カバーの底面からのびる複数の
突出部を含み、前記複数の突出部は、前記関節動作式のフレームの複数の部分に形成された受け部に入り、複数箇所で前記
マットレスを前記関節動作式のフレーム固定するようにされている、請求項12に記載のマットレス。
【請求項14】
前記袋アセンブリに固定された前記複数の突出部は、前記フォームフレームには固定されていない、請求項13に記載のマットレス。
【請求項15】
前記袋アセンブリは、前記袋アセンブリを前記カバーに固定するプレートを含む、請求項11に記載のマットレス。
【請求項16】
前記カバーは、前記袋アセンブリを前記カバーに固定するために前記袋アセンブリの前記プレートを受けるポケットを含む、請求項15に記載のマットレス。
【請求項17】
前記袋アセンブリは、スリーブが形成された、袋アセンブリのカバーをさらに含み、前記プレートは前記スリーブの中に配置され、前記袋アセンブリの前記プレートが前記袋アセンブリの残りの部分に対して一定の範囲で運動できるように前記スリーブに対して移動可能である、請求項16に記載のマットレス。
【請求項18】
前記フォームフレームに固定され、かつ、前記関節動作式のフレームに係合して前記関節動作式のフレームの動きに応答して前記フォームフレームの一部の動きを制御するように構成された少なくとも1つの突出部を有し、
前記フォームフレームに固定された前記突出部は、前記フォームフレームに固定されたプレートと接続されている、請求項11に記載のマットレス。
【請求項19】
前記フォームフレームに固定された前記プレートは、スリーブによって、前記プレートが前記スリーブ内で移動するように前記フォームフレームに固定されている、請求項18に記載のマットレス。
【請求項20】
前記フォームフレームは、長さが可変である穴のあいたフットセクションを含む、請求項9に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年7月27日に出願された米国特許仮出願第62/537,943号による優先権の利益を主張するものであり、その内容を明示的に本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、臨床環境で使用するためのマットレスに関する。特に、本開示は、患者が乗っているときにマットレスの表面に加わる界面圧を制御するのに自己調節技術を利用した非動力型マットレスに関する。
【背景技術】
【0003】
病院用ベッドのフレームなどの患者支持装置で患者に合わせて何かを調節したり体位を決めたりしやすくするために、部材を連動させるより高度な仕組みが含まれるようになってきているため、フレーム上の支持面/マットレス支持部も次第に複雑な位置におかれるようになってきている。マットレスの構成要素がフレームに対して相対的に移動すると、患者からみてマットレス構成要素が不適切な状態で配置される可能性がある。場合によっては、マットレスのカバーの内側で中にある構成要素が移動し、マットレスの性能が低下することがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示には、添付の特許請求の範囲に記載した特徴および/または特許可能な主題を含み得る以下の特徴が、単独または任意の組み合わせで、1つ以上含まれる。
【0005】
本開示の第1の態様によれば、患者支持装置は、フォームフレームと、袋アセンブリと、カバーとを備える。フォームフレームは、空間を画定する。袋アセンブリは、この空間内に配置される。袋アセンブリは、フォーム材が充填された複数の袋を含み、フォーム材が充填された袋は各々、マニホールドによって相互接続され、袋アセンブリ内の圧力があらかじめ定められた限界を超えた場合に、袋アセンブリから空気を放出するための逃がし弁を有する。カバーは、フレーム構造体と袋アセンブリとを包み、関節動作式のフレームと係合して、関節動作式のフレームの動きに応答してフォームフレームおよび袋アセンブリの一部の動きを制御するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、カバーは、当該カバーの底面から延びる複数の突出部を含み、これらの突出部は、関節動作式のフレームの一部に形成された受け部に入って、複数箇所でカバーを関節動作式のフレームに固定するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、突出部の少なくとも1つがフォームフレームに固定され、突出部のうちの第2の少なくとも1つが袋アセンブリに固定され、第2の少なくとも1つの突出部はカバーに固定されていない。
【0008】
いくつかの実施形態では、袋アセンブリは、突出部から離れた第2の位置でカバーに固定されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、カバーはポケットを含むように構成され、このポケットには、第2の位置で袋アセンブリをカバーに固定するために袋アセンブリの一部が入る。
【0010】
いくつかの実施形態では、袋アセンブリはプレートを含み、このプレートは、袋アセンブリのプレート以外の部分に比して浮き上がって、袋アセンブリとカバーとを第2の位置で相互に接続する。
【0011】
いくつかの実施形態では、袋アセンブリは、袋アセンブリのカバーに形成されたスリーブを含み、プレートがスリーブ内に配置されてスリーブに対して移動可能である。
【0012】
いくつかの実施形態では、プレートは、半剛性であるが、ポケットの中に入るだけの十分な柔軟さである。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の突出部は、袋のカバーに固定されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の突出部は、フォームフレームに固定されたプレートに接続されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、プレートは、当該プレートがスリーブの中で浮くようにして、スリーブによってフォームフレームに固定されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、スリーブは、接着剤によってフォームフレームに固定されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、フォームフレームは、長さが可変である穴のあいたフットセクションを含む。
【0018】
本開示の第2の態様によれば、患者支持装置は、空間を画定するフォームフレームと、この空間内に配置された袋アセンブリと、フレーム構造体および袋アセンブリを包んでいるカバーと、を備える。袋アセンブリは、フォーム材が充填された複数の袋を含む。フォーム材が充填された袋は各々、マニホールドによって相互接続されている。このマニホールドは、非動力型の逃がし弁を有し、逃がし弁は、袋アセンブリ内の圧力が逃がし弁のあらかじめ定められた限界を超えた場合に、袋アセンブリから空気を放出するように構成されている。カバーは、フレーム構造体と袋アセンブリとを包み、関節動作式のフレームと係合して、関節動作式のフレームの動きに応答してフォームフレームおよび袋アセンブリの一部の動きを制御するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、カバーは、当該カバーの底面から延びる複数の突出部を含んでもよく、これらの突出部は、関節動作式のフレームの一部に形成された受け部に入って、複数箇所でカバーを関節動作式のフレームに固定するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、突出部の少なくとも1つがフォームフレームに固定されていてもよく、突出部のうちの第2の少なくとも1つが袋アセンブリに固定されていてもよく、第2の少なくとも1つの突出部はカバーに固定されていない。
【0021】
いくつかの実施形態では、袋アセンブリは、突出部から離れた第2の位置でカバーに固定されていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、カバーはポケットを含むように構成されていてもよく、このポケットには、第2の位置で袋アセンブリをカバーに固定するために袋アセンブリの一部が入る。
【0023】
いくつかの実施形態では、袋アセンブリはプレートを含んでもよく、このプレートは、袋アセンブリのプレート以外の部分に比して浮き上がって、袋アセンブリとカバーとを第2の位置で相互に接続してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、袋アセンブリは、袋アセンブリのカバーに形成されたスリーブを含んでもよく、プレートがスリーブ内に配置されてスリーブに対して移動可能であってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、プレートは、半剛性でポケットの中に入るだけの十分な柔軟さであってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2の突出部は、袋のカバーに固定されていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の突出部は、フォームフレームに固定されたプレートに接続されていてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、プレートは、当該プレートがスリーブの中で浮くようにして、スリーブによってフォームフレームに固定されていてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、スリーブは、接着剤によってフォームフレームに固定されていてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、フォームフレームは、長さが可変である穴のあいたフットセクションを含んでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、フォーム材が充填された袋は各々、第1の層と第2の層とを含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の群のフォーム材が充填された複数の袋は、第1の性能を有してもよい。第2の群のフォーム材が充填された袋は、第1の性能とは異なる第2の性能を有してもよい。いくつかの実施形態では、この性能の差がゆえに、患者支持装置に支持される患者に対する支持が患者支持装置の頭部の部分と胴の部分とで変わってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、袋は各々、当該袋のエンクロージャの壁に形成された透明な窓を含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、特定の袋の性能が色でコード化されていてもよく、透明な窓は、使用者が袋の色を識別して、この色を関連づけることによって特定の袋の性能を把握できるように配置されていてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、フォーム材が充填された複数の袋のうちのいくつかは、袋アセンブリの圧力が大気圧よりも低くなった場合に開いて大気がそれぞれの袋に入るように構成された非動力型のチェックバルブを含んでもよい。
【0036】
さらに他の特徴を単独で、あるいは上記に列挙した特徴および/または特許請求の範囲に列挙した特徴などの他の任意の特徴と組み合わせたものにも、特許性のある主題が含まれることがある。そのような他の特徴は、現段階で把握できている実施形態を実施する最良の形態を例示する様々な実施形態の詳細な説明を考慮すれば、当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
詳細な説明では、特に添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、ベッドフレームと、ベッドフレーム上に支持されたマットレスとを含む患者支持装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すマットレスの主要な構成要素の分解組立図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すマットレスの一部を省略した詳細な分解組立図であり、
図3では裏表を逆にして、ベッドフレームの様々な部材の移動時にマットレスの構成要素の動きを制御するためにどのようにしてマットレスの構成要素同士を固定するのかを示す。
【
図5】
図5は、
図1に示すマットレスの袋アセンブリの組立図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す袋アセンブリの左側面図であり、
図8では袋アセンブリの上下を逆にしてある。
【
図10】
図10は、
図5に示す袋アセンブリの袋の側面図であり、袋のフォーム構造体を示すために一部を切り欠いて示してある。
【
図11】
図11は、
図5に示す袋アセンブリの別の袋の側面図であり、袋のフォーム構造体を示すために一部を切り欠いて示してある。なお、
図11のフォーム構造体は、
図10のフォーム構造体とは異なる。
【
図14】
図14は、
図1に示すマットレスのフォームフレームの穴のあいたフットセクションの一部の平面図である。
【
図15】
図15は、
図1に示すマットレスのフォームフレームの穴のあいたフットセクションの平面図である。
【
図16】
図16は、
図1に示すマットレスのフォームフレームの穴のあいたフットセクションの右側面図である。
【
図17】
図17は、
図1に示すマットレスの底側のカバーから延びて、ベッドフレームのデッキ部材の開口に係合するように構成されたつまみの斜視図である。
【
図18】
図18は、
図1に示すベッドフレームのヘッドデッキに形成され、
図17に示すつまみが入るように構成された開口部を示す図である。
【
図19】
図19は、
図1に示すベッドフレームのフットデッキに形成され、
図17に示すつまみが入るように構成された開口部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1を参照すると、患者支持装置10が例示的に病院用ベッド10として実現されている。
図1に示す図は、病院用ベッド10のほぼ左側、フットエンド側の位置からみた図である。向きを定めるために、病院用ベッド10の説明では、患者を病院用ベッド10に仰臥位で寝かせた向きを基準にする。このため、患者を病院用ベッド10に仰臥位で寝かせたときに患者の両足に最も近い端が、病院用ベッド10のフットエンド12である。病院用ベッド10には、フットエンド12と反対側にヘッドエンド14がある。患者が病院用ベッド10に仰臥位で横たわっているときの患者の左が左側16であり、患者の右が右側18である。病院用ベッド10の長手方向の長さというときは、ほぼ病院用ベッド10のヘッドエンド14とフットエンド12との間にのびる線で表される方向をいう。同様に、病院用ベッド10の横方向の幅とは、ほぼ左側16と右側18との間にのびる線で表される方向をいう。
【0039】
病院用ベッド10は、リフトシステム22を支えるベースフレーム20を含む。リフトシステム22は、このリフトシステム22によって上部フレーム24がベースフレーム20に対して垂直移動するように、ベースおよび上部フレーム24と係合している。リフトシステム22は、ヘッドエンド連結部27とフットエンド連結部29とを含む。連結部27および29は各々独立に動作可能であり、上部フレーム24のヘッドエンド14が上部フレーム24のフットエンド12よりも低い位置にあるときの傾斜位置まで病院用ベッド10を動かすように動作することができる。また、上部フレーム24のフットエンド12が上部フレーム24のヘッドエンド14よりも低い位置にある逆傾斜位置まで病院用ベッド10を動かすこともできる。
【0040】
上部フレーム24は、ロードフレーム26を支持する。ロードフレーム26は、このロードフレーム26に対して移動可能なヘッドデッキ28を支持する。また、ロードフレーム26は、同じくロードフレーム26に対して移動可能な関節動作式のシートデッキ30と、固定式シートデッキ32も支持する。さらに、ロードフレーム26には、関節のように動作してロードフレーム26に対して移動可能なフットデッキ34も支持されている。
図1に示す例示的な実施形態のフットデッキ34では、フットデッキ34の長さを変更するのに、フットデッキ34を電動で枢動できるほか、フットデッキ34を手で伸ばしたり縮めたりすることもできる。他の実施形態では、フットデッキ34の電動での枢動をなくし、付随する動きを手作業で行うか、この動きが関節動作式のシートデッキ30の動きに従うようにしてもよい。また、いくつかの実施形態では、フットデッキ34の伸縮の動力をアクチュエータによって与えてもよい。
【0041】
フットデッキ34には、第1の部分36と、第1の部分36に対して移動してフットデッキ34の大きさを変化させる第2の部分38とが含まれる。第2の部分38は、第1の部分36に対してほぼ長手方向に移動し、フットデッキ34の長手方向の長さを変えることで病院用ベッド10の長手方向の長さを変化させる。
【0042】
第2の部分38にはフットパネル40が支持され、第2の部分38の上面42から垂直にのびて病院用ベッド10のフットエンド12で隔壁を形成している。ベースフレーム20の直立構造体46上にヘッドパネル44が位置し、垂直にのびて病院用ベッド10のヘッドエンド14で隔壁を形成している。ヘッドデッキ28から左ヘッドサイドレール48が支持され、
図1に示す上昇位置と従来技術において知られているような下降位置との間で移動可能である。右ヘッドサイドレール50も、下降位置と
図1に示す上昇位置との間で移動可能である。
図1に示すように、上昇位置では、サイドレール48および50が上昇位置にあるときに、これらのサイドレール48および50は病院用ベッド10のマットレス54の上面52よりも上にのびている。下降位置では、左ヘッドサイドレール48の上縁56が上面52よりも下にある。
【0043】
病院用ベッド10は、それぞれロードフレーム26に直接支持された左フットサイドレール58と右フットサイドレール60も含む。サイドレール48、50、58、60は各々、上面52より低い位置まで下降するように動作可能である。なお、ヘッドデッキ28が移動する際、ヘッドサイドレール48および50と患者との相対位置が維持されるようにするために、これらのヘッドサイドレールがヘッドデッキ28と一緒に移動することに注意されたい。これは、ヘッドサイドレール48、50がいずれもヘッドデッキ28によって支持されているためである。
【0044】
図2および
図3を参照すると、マットレス54に、コア68が含まれる。コア68は、フォームフレーム72と係合する袋アセンブリ70を含む。フォームフレーム72は穴のあいたフットサポート62を含み、このフットサポート62が長手方向の一対のボルスタ74および76に連結されている。長手方向のボルスタ74および76は、マットレス54のヘッドエンド14でボルスタ74と76との間に横方向にのびるヘッダー78によって、互いに接続されている。また、コア68は、一体に固着されて上側のフォームサポート65を形成するフォーム上層64とフォーム下層66とを含む。長手方向のボルスタ74および76は、フットサポート62、ボルスタ74および76、ヘッダー78、フォームサポート65が一緒になって袋アセンブリ70が配置されてコア68を形成する空間80を画定するようにして、穴のあいたフットサポート62に固定されている。マットレス54は、下側のカバー82と上側のカバー84を含み、これらのカバーは、当技術分野で知られているように、ファスナーでまとめて固定される。さらに、マットレス54には、コア68を完全に包み込むようにコア68の外側に巻かれたファイヤーバリアアセンブリ126も含まれる。
【0045】
図5および
図6に示すように、袋アセンブリ70は、8つの袋96、98、100、102、104、106、107、108を含む。これらの袋は、袋108が袋アセンブリ70のフットエンド12側、袋96がヘッドエンド14側に位置した状態で配置されている。各袋96、98、100、102、104、106、107、108は、ウレタンをコーティングしたナイロンからなる外側のエンクロージャ110を含み、この外側のエンクロージャが、空気を通さないエンクロージャとなる。
図10および
図11に示すように、各エンクロージャ110の内部は2層のフォーム構造体である。
図10において、フォーム構造体112は、上層114と下層116とを含む。フォーム層114および116は互いに固着されている。フォーム構造体112は荷重が加わると変形可能であるが、弾力で膨らんでエンクロージャ110の内側の空間を満たす。同様に、
図11を参照すると、下層146に固着された上層144が異なるフォーム構造体142に含まれている。フォーム構造体142と112とで異なる性能特性にするために、層144および146に用いられているフォーム材と層114および146とは異なる。例示的な実施形態では、袋96、98、100がフォーム構造体112を含むのに対し、袋102、104、106、107、108はフォーム構造体142を含む。このような違いがあることから、袋アセンブリ70の袋96、98、100を含むヘッド部分では、袋102、104、106、107、108を含む袋アセンブリ70の胴の部分と比較すると、支持の状態が異なる。
【0046】
図7、
図10および
図11を参照すると、エンクロージャ110は各々、その壁150に設けられた透明な窓148を含むように構成されている。窓148は、層114と116または層144と146との間の境界面の上に位置するため、使用者がエンクロージャ110の中にある素材を見ることができる。これにより、使用者は、エンクロージャ110の中身を区別して、フォーム構造体112と142のどちらがエンクロージャ110に含まれるのかを判断することができる。例示的な実施形態では、上層114または144、下層116または146のうちの一方の色が異なる。このため、窓148から見える色を比較することで、組み立てる者が特定のエンクロージャ110の特性を把握して、特定の袋を、袋96、98、100のうちの1つとしてヘッド部分に配置するか、袋102、104、106、107、108のうちの1つとして胴の部分に配置するかを決定することができる。
【0047】
各エンクロージャ110の左側16には、圧力逃がし弁またはチェックバルブ118がある。チェックバルブ118は各々、バルブ118に加わる圧力がそのバルブのリリーフ圧を超えると開くように構成されている。袋アセンブリ70の配置では、バルブ118は、いずれか1つのエンクロージャ110の内圧が大気圧を下回ると対応するバルブ118が開き、大気からの空気がそれぞれのエンクロージャ110に流れることができるように配置されている。
【0048】
袋アセンブリ70の右側18では、各エンクロージャ110がそれぞれの出口120を含む。各出口120がマニホールドチューブ122に接続され、どのエンクロージャ110も出口120とマニホールドチューブ122を介して互いに流体連通するようになっている。マニホールドチューブ122は、圧力チェックバルブ124で終端している。圧力チェックバルブ124は、マニホールドチューブ内の圧力がチェックバルブ124のリリーフ圧を超えると、チェックバルブ124が開いて大気への圧力の排出を可能にするように構成されている。チェックバルブであるバルブ118によって、エンクロージャ110からバルブ118を通って大気まで空気が流れることはない点を理解されたい。エンクロージャから大気まで空気が流れる唯一の流路は、マニホールドチューブ122と圧力チェックバルブ124を通る。同様に、いずれかのエンクロージャ110に流入する唯一の経路は、それぞれのバルブ118を通る流路である。
【0049】
このため、マットレス54は自己調整して、袋96、98、100、102、104、106、107、108それぞれの内圧をチェックバルブ124のリリーフ圧より低圧に維持する。荷重のない状態で特定の袋96、98、100、102、104、106、107、108の入口のバルブ118が動作すると、大気からの空気がそれぞれの袋96、98、100、102、104、106、107、108にすみやかに充填される。この手法によって、様々な袋96、98、100、102、104、106、107、108の内圧を比較的迅速に調節して、患者に対する支持圧を制御しやすくなる。
【0050】
袋アセンブリ70で空気の力で支持可能な重量よりも患者のほうが重い場合、マニホールドチューブ122と圧力チェックバルブ124の圧力を逃がすことで、それぞれの袋96、98、100、102、104、106、107、108のフォーム構造体112で患者を支持することが可能になる。このように、マットレス54によって、大きめの患者が病院用ベッド10のデッキ表面に底づきしないように保護しつつ、空気式マットレスの利点が提供される。また、特定の袋96、98、100、102、104、106、107、108の荷重がなくなったときに、バルブ118を介して空気を吸引する真空を発生させるべくエンクロージャ110を拡げる目的でもフォーム構造体112が役立つことを、理解されたい。
【0051】
図10の例示的な実施形態では、フォーム構造体112と142は同様の構造を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、異なる袋96、98、100、102、104、106、107、108において、フォーム構造体体112の層114、116またはフォーム構造体142の層144、146の特性が異なっていてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、フォーム構造体112、142は単一の層であってもよく、3つ以上の層を含んでもよい。
【0052】
ベッド10では、デッキ34の一部分36に対する一部分38の動きを含むいくつかの部材が複雑に連動して動作するため、マットレス54には、この複雑な連動動作と併用するのに適した適応手段がいくつかある。たとえば、長手方向のボルスタ74、76は各々、当該長手方向のボルスタ74、76のヘッドデッキ28と関節動作式のシートデッキ30とが交わる部分に配置された一連のレリーフスリット128を含むように形成されている。レリーフスリット128によって、ヘッドデッキ28の上昇時に長手方向のボルスタ74および76の範囲が拡大する。レリーフスリット128を設けることで、材料がわずかに除去されるが、スリット128の位置でフォームが膨らむことができる。これとは対照的に、関節動作式のシートデッキ30とフットデッキ34との間の境界面に、一連の切欠き130が設けられている。切り欠き130はほぼ三角形であり、長手方向のボルスタ74および76の下面132側のほうが多くの材料が除去され、下面132から離れた先端に向かって切り欠き130が次第に狭くなっている。切り欠き130があることで、関節動作式のシートデッキ30とフットデッキ34との間の境界面の部分において、長手方向のボルスタ74および76の長さが伸び縮みする。表面132で材料を除去すると、長手方向のボルスタ74および76の材料が膨らまないように、フットデッキ34が関節動作式のシートデッキ30に対して下方向に移動する際に切り欠き130を潰すことができる。
【0053】
袋96、98、100、102、104、106、107、108は各々、カバー172のそれぞれのスリーブ156、158、160、162、164、166、168、170の中に配置されている。カバー172は、ベッド10のフレームおよびデッキ部材の複雑な連動動作の間、袋96、98、100、102、104、106、107、108がいくらか相対移動することはできるものの、袋96、98、100、102、104、106、107、108同士の関係がカバー172によって維持されるように、スリーブ156、158、160、162、164、166、168、170を単一の構造体として形成するように縫合された布帛で形成されている。これにより、袋96、98、100、102、104、106、107、108が外れることがなくなり、適切な向きが維持される。
【0054】
ベッド10の可動部材に対するマットレス54の動きを制御するために、
図3に示すように、下側のカバー82の底面182から、4つのつまみ174、176、178、180が延びている。つまみ174、176、178、180は、同じように配置されており、つまみ174の詳細を
図17に示す。つまみ174には、台186から延びる柄184に連結された球体182が含まれる。ヘッドデッキ28は、
図18に示すような溝状開口部188を含むように形成されている。溝状開口部188は、広いほうの部分190が薄い部分192まで次第に狭くなるように、キーホール効果で形成されている。溝状開口部188にはデッキ28上で横方向に延びる長手方向の軸194があり、広いほうの部分がデッキ28の外側にくるように溝状開口部が配置されている。デッキの反対の外側には溝状開口部188の鏡像である第2の溝状開口部が配置されているが、ここではつまみ178が溝状開口部188の中に配置され、つまみ180が鏡像である溝の中に配置されるようになっている。当然の傾向として、つまみ178および188が溝状開口部のそれぞれの狭い部分192に押し込まれる。別構成のキーホール開口部196が、
図19に示すように、表面42を貫通してデッキ34の第2の部分38に設けられている。第2の部分38のフットエンド12に近い側に円形の開口部198が配置され、柄184がスロット200に押し込まれるように、つまみ174および176が各々、それぞれのキーホール開口部196の円形の開口部198に入る。つまみ174、176、178、180がそれぞれデッキ28およびデッキ34と係合すると、マットレス54がデッキ28、30、34と一緒に移動するように、デッキ28、30、34の動きが直接マットレス54に伝達される。
【0055】
つまみ174および176は
図3に示すプレート202に固定され、プレート202は、ナット204およびワッシャー206(
図4参照)によって、ナット204がつまみ174および176のねじ付きの柄208にはまった状態で穴のあいたフットサポート62のフットエンド12に固着されている。プレート202は、穴のあいたフットサポート62に固着されたスリーブ210(
図14参照)に配置されている。プレート202は、必要に応じて、スリーブ210で矢印212の方向に自由に移動する。
【0056】
つまみ178および180は、
図3に示すそれぞれのプレート214および216に固定されている。カバー172はフラップ218を含むように形成され、つまみ178および180がそれぞれのナット204によって固定されると、プレート214および216はフラップ218に固定される。プレート214および216とフラップ218は互いに協働し、下側のカバー82に対して袋アセンブリ70を制御して移動させることができる。さらに、袋アセンブリ70のカバー172のスリーブ170の底にはスリーブ222が形成され、このスリーブ222に配置されたプレート220によって、袋アセンブリ70は下側のカバー82にも固定される。プレート220は、それぞれポケット228および230に入る2つのフランジ224および226を含む。ポケット228および230は、材料232、234のフラップを下側のカバー82の上面236に接合することによって、下側のカバー82に形成されている。フランジ224、226がフラップ232、234の下で摺動してポケット228、230に入ることができるように、プレート220は可撓性である。このように、フランジ224、226がポケット228、230の中に配置された状態で、袋アセンブリ70は、プレート214、216およびつまみ178、180によってヘッドエンド14で下側のカバー82に固定され、袋アセンブリ70のフットエンド12は下側のカバー82に固定される。
【0057】
デッキ28、30、34の移動時、マットレス54は全体がつまみ174、176、178、180で固定されるのに対し、袋アセンブリ70は、プレート214、216およびつまみ178、180と協働する、ポケット228、230に配置されたフランジ224、226によって、定位置に維持される。デッキ34の第2の部分38が第1の部分36に対して移動する際、穴のあいたフットセクション62は、袋アセンブリ70に対して自由に伸び縮みすることができる。これは、穴のあいたフットセクション62および袋アセンブリ70の位置を制御して、デッキ28、30、32、34の適切な部分に配置する一助となる。ここで
図20を参照すると、カバー82の穴のあいたフットセクション62の一部の下にくる領域にポケット240が形成されるように、布帛のフラップ238がカバー82の表面236に接合されている。ポケット240の中にはプレート242が入り、下側のカバー82の、デッキ34の第1の部分36と第2の部分38との間の境界面に重なる部分を補強する働きをする。これにより、デッキ34の第1の部分36と第2の部分38との間の境界面の移動時に、下側のカバー82が寄ってしまうことがなくなる。
【0058】
デッキ30とデッキ34との相対的な動き、穴のあいたフットセクション62と袋アセンブリ70との間の境界面がたわむことがある。このたわみは、境界面でフォーム部材が寄ることなくなされなければならない。穴のあいたフットセクション62には、マットレス54の上にある患者のかかとを楽な状態にする比較的柔らかいフォーム材が含まれる。フォーム構造体112および142は、患者の臀部と胴を支持するために比較的硬くなっている。
図15および
図16を参照すると、体位の変化に対応し、ベッド10から出るためにベッド10のフットエンド12のほうに身体をずらす際に患者が経験する「沈み込み」感を抑えるために、穴のあいたフットセクション62を改変して、穴のあいたフットセクション62の穴のあいた本体248から延びる片持ち部材246の下にフォームブロック244を含むようにする。このフォームブロック244は、本体248および片持ち部材246の材料よりも剛性が高くなるような密度のブロックである。フォームブロック244は、ボルスタ74および76とフォームブロックとで実矧が形成されるように、材料を除去して形成されている。片持ち部材246がボルスタ74および76と重なって、一様な上面250となる。
【0059】
再び
図3を参照すると、下側のカバー82は、四隅にある4本のリネン留め用の紐270、272、274、276をはじめとして、下面182に形成された複数の構造物を含む。リネン留め用の紐270、272、274、276はウレタンをコーティングしたナイロン布であり、それぞれ紐270、272、274、276の端で下側のカバー82の基布286に縫い付けられている。紐270、272、274、276は、使用者が紐270、272、274または276の下にシーツなどのリネンの隅を差し込んで、リネンをマットレス54の下に固定できるように構成されている。同様に、4本のハンドル278、280、282、284が基布に縫い付けられ、使用者がマットレス54を運ぶことができるように配置されている。2つのトラベルガード288および290を、それぞれつまみ174、176および178、180上に配置することが可能である。トラベルガード288および290はフォーム材を含み、それぞれつまみ174、176および178、180に着脱自在に固定され、つまみ174、176、178、180を覆ってマットレス54の運搬時につまみ174、176、178、180が破損するのを防いでいる。
【0060】
本開示は、特定の実施形態を示しているが、添付の特許請求の範囲に記載された主題から逸脱することなく形態および詳細に対する様々な変更が可能であることは、当業者に理解されるであろう。