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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】タンパク質症を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/439 20060101AFI20231027BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231027BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231027BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231027BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
A61K31/439
A61K45/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078459
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2017547448の分割
【原出願日】2016-03-09
(65)【公開番号】P2021119185
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/131,071
(32)【優先日】2015-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エイチ・セン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ラムヤ・シハブディン
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・セルジオ・サルディ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/129084(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/043068(WO,A1)
【文献】J Neurochem,2014年,129(5),884-894
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/439
A61K 45/00
A61P 25/00
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象において認知機能の喪失を低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬組成物であって、式(I)
【化1】
[式中、
1は、水素;
ハロゲン、もしくはシアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基;または、
ハロゲン;および、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基から独立して選択される1つもしくはそれ以上(例えば、1、2もしくは3個)の基によって場合により置換されている、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルオキシ、C2-6アルケニルオキシもしくはC2-6アルキニルオキシ基であり;
2およびR3は、1つもしくはそれ以上のハロゲンによって場合により置換されているC1-3アルキル基から、それぞれ独立して選択され;または、R2およびR3は一緒になっ
て、1つもしくはそれ以上のハロゲンによって場合により置換されている、シクロプロピルもしくはシクロブチル基を形成し;
4、R5およびR6は、水素;ハロゲン;ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基
;ならびに、ハロゲン;ヒドロキシもしくはシアノ基;および、C1-6アルキルオキシ基
から選択される1つもしくはそれ以上の基によって場合により置換されている、C1-6
ルキルまたはC1-6アルキルオキシ基から、それぞれ独立して選択され;
Aは、5または6員のアリールまたはヘテロアリール基である]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
1は、水素;フッ素;または、ハロゲン、もしくはヒドロキシ、チオもしくはアミノ
基によって場合により置換されている、メチルもしくはエチル基である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(i)R2およびR3は、1つまたはそれ以上のフッ素原子で場合により置換されている、メチルおよびエチル基から、それぞれ独立して選択される;
(ii)R4は、ハロゲン;ならびに、ハロゲンおよびC1-3アルキルオキシ基から選択される1つもしくはそれ以上の基によって場合により置換されている、C1-3アルキルま
たはC1-3アルキルオキシ基から選択される;ならびに/または
(iii)R5およびR6は、両方とも水素である、
請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
4は、フッ素または2-メトキシエトキシ基であり、R5およびR6は、水素である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
4は、基Aに対してベンゼン環のパラ位である、請求項1~4のいずれか1項に記載
の医薬組成物。
【請求項6】
Aは、ハロゲン;および、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、オキソまたはメチル基から独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換されているフェニルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
基-C(R23)-および-(C62456)は、1,3-または1,4-の関係
で基Aと結合する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
Aは、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
基-C(R23)-および-(C62456)は、1,3-の関係で基Aと結合す
る、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化合物または薬学的に許容される塩は、式(II)、(III)もしくは(IV)
【化2】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記化合物または薬学的に許容される塩は、式(V)
【化3】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩である、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記化合物または薬学的に許容される塩は、式(VI)、(VII)もしくは(VIII)
【化4】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物または薬学的に許容される塩は、式(IX)もしくは(XI)
【化5】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
4は、フッ素である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記化合物または薬学的に許容される塩は、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;ならびに薬学的に許容されるその塩から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記タンパク質症はタウオパシーである、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記タウオパシーは、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、ピック病、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化優位型認知症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、リポフスチン沈着症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症およびハンチントン病から選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記タンパク質症はシヌクレイノパシーである、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記シヌクレイノパシーは、レビー小体認知症、パーキンソン病および多系統萎縮症から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年3月10日に出願された米国仮出願第62/131,071号の優先権の利益を主張し、その開示は、その全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
本開示は、タンパク質症を処置するための方法、および前記方法における使用のためのキヌクリジン化合物に関する。本開示は、特に、タウオパシーおよび/またはシヌクレイノパシー、例えば、パーキンソン病を処置するためのキヌクリジン化合物の経口投与に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬において、タンパク質症は、ある種のタンパク質が、構造的に異常になって、それによって身体の細胞、組織、および器官の機能を破壊する種類の疾患を示す。タンパク質は、しばしば、それらの正常な立体配置に折りたたまれない。この誤って折りたたまれた状態において、タンパク質は、いくつかの方法で毒性になり(毒性機能の獲得)、またはタンパク質は、その正常な機能を失うことがある。タンパク質症としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、アミロイドーシスおよび広範囲の他の障害のような疾患が挙げられる。
【0004】
タンパク質症は、全人口にわたって広がっている。例えば、米国では、ほぼ100万人の人々がパーキンソン病を患って生きており、510万人ものアメリカ人がアルツハイマー病である。これらの疾患に対する治療法は現在なく、疾患および疾患の進行の根底となる分子機構の多くは分かっていない。
【0005】
タウオパシーは、特定の一種類のタンパク質症を形成する。これらは、典型的には、神経原線維変化またはピック体の形状で、リン酸化されたタウタンパク質の凝集体の存在によって、病理学的に特徴付けられた神経変性障害の集合である。これらの障害は、年齢に関係しており、しばしば、多かれ少なかれ遺伝する。例えば、MAPT(染色体17q21に位置するヒトの微小管結合タウタンパク質をコードする)の変異は、前頭側頭型認知症の遺伝性の症例の約30%を占める。いくつかのヒトのタウアイソフォームは、MAPTの選択的スプライシングによって生じることが知られており、この遺伝子における変異は、タンパク質の凝集および疾患の進行を引き起こすこれらのアイソフォームのレベルの変化をもたらす。
【0006】
タンパク質症の別の種類は、構造的に異常なα-シヌクレインタンパク質によって特徴付けられる。これらの疾患は、まとめて、シヌクレイノパシーとして知られている。α-シヌクレインは、ヒトのSNCA遺伝子によってコードされるタンパク質である。特に、α-シヌクレインは、凝集して、レビー小体によって特徴付けられる病理学的な障害における不溶性の原線維を形成することができる。これらの障害としては、例えば、パーキンソン病およびレビー小体認知症が挙げられる。
【0007】
タウおよびα-シヌクレインが関連する病態は、パーキンソン病の患者およびレビー小体認知症の患者において、連携して頻繁に認められる。これらの症例において、疾患は、タウオパシーおよびシヌクレイノパシーの両方として特徴付けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの壊滅的な疾患に対する治療法はないが、いくつかのタンパク質症の症状の軽減
を助けるのに有用な、多くの小分子の薬物がある。しかしながら、本技術分野において、タンパク質症、特に、パーキンソン病およびレビー小体認知症のようなタンパク質症に関連する症状を緩和または管理するのに有効な治療法を開発することが現実的に必要とされている。タンパク質症の根底にある病態生理を処置するのに有効な治療法を開発することが特に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ある種のキヌクリジン化合物が、タンパク質症の対象の組織におけるタンパク質の凝集を、低減する、回復に向かわせる、または予防することができることを確認した。本発明者らは、これらのキヌクリジン化合物が、タンパク質症の動物モデルにおける記憶欠損を回復することができることも確認した。これらの結果は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物による処置が、タンパク質症の根底にある病態生理を処置するのに有効であることを示す。
【0010】
したがって、第1の態様において、本発明は、対象におけるタンパク質症を処置する方法であって、式(I)
【化1】
[式中、
は、水素;
ハロゲン、もしくはシアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基;または、
ハロゲン;および、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基から独立して選択される1つもしくはそれ以上(例えば、1、2もしくは3個)の基によって場合により置換されている、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルオキシ、C2-6アルケニルオキシもしくはC2-6アルキニルオキシ基であり;
およびRは、1つもしくはそれ以上のハロゲンによって場合により置換されているC1-3アルキル基から、それぞれ独立して選択され;または、RおよびRは一緒になって、1つもしくはそれ以上のハロゲンによって場合により置換されている、シクロプロピルもしくはシクロブチル基を形成し;
、RおよびRは、水素;ハロゲン;ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基;ならびに、ハロゲン;ヒドロキシもしくはシアノ基;および、C1-6アルキルオキシ基から選択される1つもしくはそれ以上の基によって場合により置換されている、C1-6アルキルまたはC1-6アルキルオキシ基から、それぞれ独立して選択され;
Aは、5または6員のアリールまたはヘテロアリール基である]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
一実施形態において、Rは、水素;フッ素;または、ハロゲン、もしくはヒドロキシ、チオもしくはアミノ基によって場合により置換されている、メチルもしくはエチル基である。
【0012】
一実施形態において、RおよびRは、1つまたはそれ以上のフッ素原子で場合により置換されている、メチルおよびエチル基から、それぞれ独立して選択される。
【0013】
一実施形態において、Rは、ハロゲン;ならびに、ハロゲンおよびC1-3アルキルオキシ基から選択される1つもしくはそれ以上の基によって場合により置換されている、C1-3アルキルまたはC1-3アルキルオキシ基から選択される。一実施形態において、RおよびRは、両方とも水素である。1つの実施形態において、Rは、フッ素または2-メトキシエトキシ基であり、RおよびRは、水素である。一実施形態において、Rは、基Aに対してベンゼン環のパラ位である。
【0014】
一実施形態において、Aは、ハロゲン;および、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、オキソまたはメチル基から独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換されているベンジルである。一実施形態において、基-C(R)-および-(C)は、1,3-または1,4-の関係で基Aと結合する。
【0015】
別の実施形態において、Aは、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基である。一実施形態において、基-C(R)-および-(C)は、1,3-の関係で基Aと結合する。
【0016】
一実施形態において、本化合物は、式(II)、(III)もしくは(IV)
【化2】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0017】
一実施形態において、本化合物は、式(V)
【化3】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0018】
一実施形態において、本化合物は、式(VI)、(VII)もしくは(VIII)
【化4】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0019】
一実施形態において、本化合物は、式(IX)もしくは(XI)
【化5】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。一実施形態において、Rは、フッ素である。
【0020】
特定の実施形態において、本化合物は、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグから選択される。
【0021】
一実施形態において、タンパク質症は、タウオパシーである。一実施形態において、前記タウオパシーは、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、ピック病、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化優位型認知症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、リポフスチン沈着症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症およびハンチントン病から選択される。
【0022】
一実施形態において、前記対象は、それらのCNSにおいて(例えば、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて)、α-シヌクレインを含むタンパク質凝集体を有さない。
【0023】
一実施形態において、前記タウオパシーは、前記対象のCNSにおいて(例えば、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて)、タンパク質凝集体内のα-シヌクレインではなくタウタンパク質の存在によって特徴付けられるパーキンソン病である。
【0024】
別の実施形態において、タンパク質症は、シヌクレイノパシーである。一実施形態において、前記シヌクレイノパシーは、レビー小体認知症、パーキンソン病および多系統萎縮症から選択される。
【0025】
一実施形態において、前記方法は、対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0026】
一実施形態において、前記対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0027】
一実施形態において、前記対象は、前記タンパク質症を発症するリスクがあると診断されており、本方法は、対象におけるタンパク質症の発病および/または発症を、予防する、または遅らせる。
【0028】
一実施形態において、前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグは、全身的投与によって、例えば、非-非経口経路を介して、投与される。一実施形態において、前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグは、経口的に投与される。
【0029】
関連する態様において、本発明は、対象におけるタンパク質症を処置する方法における使用のための、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを提供する。別の関連する態様において、本発明は、対象におけるタンパク質症を処置する方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。ある実施形態において、タンパク質症を処置する方法は、本明細書に定義のものである。
【0030】
別の態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象の組織におけるタンパク質凝集体の蓄積を、低減する、回復に向かわせる、または予防する方法であって、前記タンパク質凝集体は、タウタンパク質および/またはα-シヌクレインを含み、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効量を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0031】
一実施形態において、タンパク質凝集体は、タウタンパク質の凝集体であり、前記タンパク質症は、タウオパシーである。一実施形態において、前記タウオパシーは、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、ピック病、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化優位型認知症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、リポフスチン沈着症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症およびハンチントン病から選択される。
【0032】
一実施形態において、前記対象は、前記組織中にα-シヌクレインを含むタンパク質凝集体を有さない。一実施形態において、前記タウオパシーは、パーキンソン病である。
【0033】
別の実施形態において、タンパク質凝集体は、α-シヌクレインの凝集体であり、前記タンパク質症は、シヌクレイノパシーである。一実施形態において、前記シヌクレイノパシーは、レビー小体認知症、パーキンソン病および多系統萎縮症から選択される。
【0034】
一実施形態において、前記方法は、対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0035】
一実施形態において、前記組織は、前記対象の、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンである。
【0036】
一実施形態において、前記対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0037】
一実施形態において、前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグは、全身的投与によって、例えば、非-非経口経路を介して、投与される。一実施形態において、前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグは、経口的に投与される。
【0038】
またさらなる態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法であって、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効量を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0039】
一実施形態において、タンパク質症は、タウオパシーである。一実施形態において、前記タウオパシーは、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、ピック病、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化優位型認知症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、リポフスチン沈着症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症およびハンチントン病から選択される。
【0040】
一実施形態において、前記対象は、それらのCNSにおいて(例えば、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて)、α-シヌクレインを含むタンパク質凝集体を有さない。
【0041】
一実施形態において、前記タウオパシーは、前記対象のCNSにおいて(例えば、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて)、タンパク質凝集体内のα-シヌクレインではなくタウタンパク質の存在によって特徴付けられるパーキンソン病である。
【0042】
別の実施形態において、タンパク質症は、シヌクレイノパシーである。一実施形態において、前記シヌクレイノパシーは、レビー小体認知症、パーキンソン病および多系統萎縮症から選択される。
【0043】
一実施形態において、前記方法は、対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0044】
一実施形態において、前記対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0045】
一実施形態において、前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグは、全身的投与によって、例えば、非-非経口経路を介して、投与される。一実施形態において、前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグは、経口的に投与される。
【0046】
一実施形態において、神経機能の喪失は、認知機能、自律神経機能および/または運動機能の喪失を含む。
【0047】
一実施形態において、神経機能の喪失は、認知機能の喪失を含む。一実施形態において、本方法は、対象における認知領域の変質を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。一実施形態において、本方法は、注意力および集中力、実行機能、記憶(例えば、作業記憶)、言語、視覚構成スキル、概念的思考、計算、見当識、意思決定、ならびに/または課題解決における変質を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0048】
一実施形態において、神経機能の喪失は、自律神経機能の喪失を含み、本方法は、起立性低血圧症、便秘症、嚥下障害、悪心、唾液分泌過多、多汗症ならびに/または尿および性的機能障害を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0049】
一実施形態において、神経機能の喪失は、運動機能の喪失を含み、本方法は、パーキンソニズムを、予防する、低減する、または回復に向かわせる。一実施形態において、本方法は、運動機能障害(例えば、振戦)、動作緩慢、硬直、姿勢の不安定および/またはバランス障害を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0050】
関連する態様において、本発明は、本明細書に定義の対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを提供する。別の関連する態様において、本発明は、本明細書に定義の対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0051】
またさらなる態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法であって、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0052】
一実施形態において、本方法は、認知症の初期症状(例えば、最近の会話、名前もしくは出来事の記憶の困難さ、ならびに/または無感情およびうつ)を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。一実施形態において、本方法は、認知症の末期症状(例えば、コミュニケーション障害、判断力の低下、見当識障害、混乱、行動変容、ならびに/または、話、嚥下および/もしくは歩行の困難さ)を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。
【0053】
関連する態様において、本発明は、本明細書に定義の対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを提供する。別の関連する態様において、本発明は、本明細書に定義の対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0054】
またさらなる態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における軽度認知障害を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法であって、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
関連する態様において、本発明は、本明細書に定義の対象における軽度認知障害を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを提供する。別の関連する態様において、本発明は、本明細書に定義の対象における軽度認知障害を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬剤形であって、経口的に投与される場合、タンパク質症であると診断されているヒト対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されているヒト対象の組織におけるタンパク質凝集体の蓄積を、予防する、低減する、または回復に向かわせるために十分な量の、前記化合物、塩またはプロドラッグを提供するために製剤化される、医薬剤形を提供する。
【0057】
一実施形態において、前記剤形は、経口的に投与される場合、パーキンソン病であると診断されているヒト対象、またはパーキンソン病を発症するリスクがあると診断されているヒト対象の組織におけるタウタンパク質含有凝集体の蓄積を、予防する、低減する、または回復に向かわせるために十分な量の、前記化合物、塩またはプロドラッグを提供するために製剤化される。
【0058】
別の実施形態において、前記剤形は、経口的に投与される場合、レビー小体認知症であると診断されているヒト対象、またはレビー小体認知症を発症するリスクがあると診断されているヒト対象の組織におけるα-シヌクレイン含有凝集体の蓄積を、予防する、低減する、または回復に向かわせるために十分な量の、前記化合物、塩またはプロドラッグを提供するために製剤化される。
【0059】
一実施形態において、前記組織は、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンである。
【0060】
一実施形態において、前記剤形は、前記タンパク質症を、処置する、または予防することができるさらなる薬剤を含む。
【0061】
またさらなる態様において、本発明は、(i)本明細書に定義の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;(ii)タンパク質症を、処置する、または予防することができるさらなる薬剤;および(iii)薬学的に許容される賦形剤、を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
一実施形態において、前記さらなる薬剤は、ドーパミン前駆体(例えば、L-DOPA)、ドーパミン作動薬(例えば、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、プラミペキソールまたはアポモルヒネ)、MAO-B阻害薬(例えば、ラサギリンまたはセレギリン)、抗コリン薬(例えば、オルフェナドリン、プロシクリジンまたはトリヘキシフェニジル)、β-グルコセレブロシダーゼ活性の賦活薬(例えば、アンブロキソールまたはアフェゴスタット)およびアマンタジンから選択される。
【0063】
別の実施形態において、前記さらなる薬剤は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、タクリン、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、またはメマンチン)である。
【0064】
一実施形態において、タンパク質症は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、ピック病、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化優位型認知症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、リポフスチン沈着症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症およびハンチントン病から選択されるタウオパシーである。一実施形態において、前記タウオパシーは、パーキンソン病である。
【0065】
別の実施形態において、タンパク質症は、レビー小体認知症、パーキンソン病および多系統萎縮症から選択されるシヌクレイノパシーである。
【0066】
一実施形態において、前記組成物は、例えば、非-非経口経路を介する全身的投与のために製剤化される。一実施形態において、前記組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0067】
関連する態様において、本発明は、治療における使用のための、本発明の医薬剤形、または医薬組成物を提供する。一実施形態において、医薬剤形、または医薬組成物は、本明細書に定義の方法における使用のためのものである。
【0068】
本明細書に開示の化合物、組成物および方法のさらなる特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、野生型(WT)およびタンパク質症モデル(Gba1D409V/D409V)両方のマウスに対して行った新規物体認識試験の結果を示すグラフである。無地のバーは、訓練中のターゲットの調査を示し、斜線のバーは、試験中のターゲットの調査を示す。白色のバー(図の左側)は、WTマウスにおける結果を示し、濃灰色のバー(図の真ん中)は、無処置のGba1D409V/D409Vマウスの結果を示し、薄灰色のバー(図の右側)は、化合物1で処置したGba1D409V/D409Vマウスの結果を示す。
図2図2は、野生型(WT)およびタンパク質症モデル(Gba1D409V/D409V)の両方のマウスに対して行った恐怖条件付け試験の結果を示すグラフである。図2Aは、文脈的記憶に関連する結果を示す。図2Bは、合図の記憶に関する結果を示す。白色のバー(図の左側)は、WTマウスの結果を示し、斜線のバー(図の真ん中)は、無処置のGba1D409V/D409Vマウスの結果を示し、黒色のバー(図の右側)は、化合物1で処置したGba1D409V/D409Vマウスの結果を示す。
図3図3は、野生型(WT)およびA53Tα-シヌクレインを過剰発現するタンパク質症モデルの両方のマウスに対して行った新規物体認識試験における試験中のターゲットの調査の結果を示すグラフである(訓練の結果は示さない)。白色のバー(図の左側)は、WTマウスの結果を示し、斜線のバー(図の真ん中)は、無処置のA53Tマウスの結果を示し、黒色のバー(図の右側)は、化合物1で処置したA53Tマウスの結果を示す。
図4図4は、野生型(WT)およびタンパク質症モデル(A53Tα-シヌクレインを過剰発現する)の両方のマウスに対して行った恐怖条件付け試験の結果を示すグラフである。図4Aは、文脈的記憶に関連する結果を示す。図4Bは、合図の記憶に関する結果を示す。白色のバー(図の左側)は、WTマウスの結果を示し、斜線のバー(図の真ん中)は、無処置のA53Tマウスの結果を示し、黒色のバー(図の右側)は、化合物1で処置したA53Tマウスの結果を示す。
図5図5は、野生型およびGba1D409V/D409Vマウスの両方における海馬のユビキチン凝集体の定量化を示すグラフである。図5Aは16週での結果を示し、図5Bは、40週での結果を示す。白色のバー(図の左端)は、WTマウスの結果を示し、無地のバー(図の左から2番目)は、4週での無処置のGba1D409V/D409Vマウスのベースラインレベルを示し、斜線のバー(図の右から2番目)は、無処置のGba1D409V/D409Vマウスの結果を示し、黒色のバー(図の右端)は、化合物1で処置したGba1D409V/D409Vマウスの結果を示す。
図6図6は、対照(図6A)または化合物1処置(図6B)のいずれかの、40週齢のGba1D409V/D409Vマウスの海馬のユビキチンの免疫反応性(緑色)を示す画像である。DAPI核染色は青色で示される。
図7図7は、野生型およびGba1D409V/D409Vマウスの両方におけるプロテイナーゼK抵抗性α-シヌクレイン凝集体の海馬の定量化を示すグラフである。図7Aは、16週での結果を示し、図7Bは、40週での結果を示す。ストライプのバー(図の左端)は、WTマウスの結果を示し、白色のバー(図の左から2番目)は、4週での無処置のGba1D409V/D409Vマウスのベースラインレベルを示し、斜線のバー(図の右から2番目)は、無処置のGba1D409V/D409Vマウスの結果を示し、黒色のバー(図の右端)は、化合物1で処置したGba1D409V/D409Vマウスの結果を示す。
図8図8は、対照(図8A)または化合物1処置(図8B)のいずれかの、40週齢のGba1D409V/D409Vマウスの海馬のプロテイナーゼK抵抗性α-シヌクレインの免疫反応性(赤色)を示す画像である。DAPI核染色は青色で示される。
図9図9は、野生型およびGba1D409V/D409Vマウスの両方における海馬のタウタンパク質凝集体の定量化を示すグラフである。図9Aは、16週での結果を示し、図9Bは、40週での結果を示す。白色のバー(図の左端)は、WTマウスの結果を示し、無地のバー(図の左から2番目)は、4週での無処置のGba1D409V/D409Vマウスのベースラインレベルを示し、斜線のバー(図の右から2番目)は、無処置のGba1D409V/D409Vマウスの結果を示し、黒色のバー(図の右端)は、化合物1で処置したGba1D409V/D409Vマウスの結果を示す。
図10図10は、対照(図10A)または化合物1処置(図10B)のいずれかの、40週齢のGba1D409V/D409Vマウスの海馬のタウタンパク質の免疫反応性(緑色)を示す画像である。DAPI核染色は青色で示される。
図11図11は、8月齢のA53Tマウスからの皮質組織のホモジネートにおけるα-シヌクレインの細胞内の局在化を示すグラフである。サイトゾルの可溶性α-シヌクレイン(図11A)、膜関連のα-シヌクレイン(図11B)、およびサイトゾルの不溶性α-シヌクレイン(図11C)のレベルを、無処置(左側の黒色のバー)および処置(右側の灰色のバー)マウスについて示す。
図12図12は、8月齢の野生型およびA53Tマウスの両方における海馬のユビキチン凝集体の定量化を示すグラフである。白色のバー(図の左端)は、WTマウスにおける結果を示し、無地のバー(図の左から2番目)は、無処置の6週齢のA53Tマウスにおけるベースラインレベルを示し、黒色のバー(図の右から2番目)は、無処置のA53Tマウスの結果を示し、灰色のバー(図の右端)は、化合物1で処置されたA53Tマウスの結果を示す。
図13図13は、対照(図13A)または化合物1処置(図13B)のいずれかの、8月齢のA53Tマウスの海馬のユビキチンの免疫反応性(緑色)を示す画像である。DAPI核染色は青色で示される。
図14図14は、8月齢の野生型およびA53Tマウスの両方における海馬のタウタンパク質凝集体の定量化を示すグラフである。白色のバー(図の左端)は、WTマウスにおける結果を示し、無地のバー(図の左から2番目)は、無処置の6週齢のA53Tマウスにおけるベースラインレベルを示し、黒色のバー(図の右から2番目)は、無処置のA53Tマウスの結果を示し、灰色のバー(図の右端)は、化合物1で処置されたA53Tマウスの結果を示す。
図15図15は、対照(図15A)または化合物1処置(図15B)のいずれかの、8月齢のA53Tマウスの海馬のタウタンパク質の免疫反応性(緑色)を示す画像である。DAPI核染色は青色で示される。
図16図16は、野生型(WT)およびタンパク質症マウスモデルGba1D409V/D409Vの両方のマウスに対して行った新規物体認識試験における試験中のターゲットの調査の結果を示すグラフである(訓練の結果は示さない)。黒色のバー(図の左側)は、WTマウスにおける結果を示し、白色のバー(図の真ん中)は、無処置のGba1D409V/D409Vマウスにおける結果を示し、灰色のバー(図の右側)は、化合物1で処置した症候性のGba1D409V/D409Vマウスにおける結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本開示の特定の実施形態を、ここに、製造およびスキームを参照して記載するが、そのような実施形態は、例としてのみであって、本開示の原理の適用を表すことができる、多くの可能な特定の実施形態の少数の単なる説明であることを理解すべきである。当業者には自明であろう様々な改変および変更は、本開示の利点をもたらし、添付の特許請求の範囲においてさらに定義されるように、本開示の精神および範囲の範囲内であるとみなされる。
【0071】
定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等である任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、代表的な方法、装置、および材料をここに記載する。本明細書に引用される全ての技術出版物および特許公開は、それらの全体を参照によって本明細書に組み入れる。本明細書において、本発明が、先行の発明によるそのような開示に先行する権利を有さないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0072】
本開示の実施は、別段の指示がない限り、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、および組換えDNAの従来の技術を用いるものであり、これは、本技術分野の技術の範囲内である。例えば、Michael R.GreenおよびJoseph Sambrook、Molecular Cloning(第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2012);Ausubelら編集のシリーズ(2007)、Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.、N.Y.);MacPhersonら、(1991)、PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press);MacPhersonら(1995)、PCR 2:A Practical Approach;HarlowおよびLane編集(1999)、Antibodies,A Laboratory Manual;Freshney(2005)、Culture of
Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第5版;Gaitら(1984)、Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;HamesおよびHiggins編集(1984)、Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999)、Nucleic Acid Hybridization;HamesおよびHiggins編集(1984)、Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes(IRL
Press(1986));Perbal(1984)、A Practical Guide to Molecular Cloning;MillerおよびCalos編集(1987)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory
);Makrides編集(2003)、Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;MayerおよびWalker編集(1987)、Immunochemical Methods in Cell
and Molecular Biology(Academic Press、London);Herzenbergら編集(1996)、Weir’s Handbook of Experimental Immunology;Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press(2002));Sohail(編集)(2004)、Gene Silencing by
RNA Interference:Technology and Application(CRC Press)を参照されたい。
【0073】
全ての数字表示、例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量等は、範囲を含めて、適切な場合には、0.1または1.0の増加により(+)または(-)に変動する近似である。全ての数字表示に「約」という用語が先行することを常に明確に示すわけではないことが理解されるべきである。本明細書に記載の試薬は単なる例であること、およびそのような同等物が本技術分野において公知であることを常に明確に示すわけではないことも理解されるべきである。
【0074】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が、他のものを明らかに指示しない限り、複数の対象を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞(cells)を含み、これらの混合物を含む。特定の記載がない限り、または文脈から自明ではない限り、本明細書で使用される場合、「または」という用語は包括的なものであることが理解される。「含む(including)」という用語は、本明細書において、「限定されないが、含む」という語句を、意味するものとして使用され、かつこの語句と互換可能に使用される。
【0075】
本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物および方法が、列挙された要素を含むが、他を排除するものではないことを意味することを意図する。組成物および方法を定義するために使用される場合、「から本質的になる(Consisting essentially of)」は、記載される目的についての組み合わせに対して、任意の本質的に重要な他の要素を排除することを意味する。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、単離方法および精製方法からの微量の混入物、ならびに、薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝食塩水、保存剤等を排除するものではない。「からなる(Consisting of)」は、他の成分、および本発明の組成物を投与するための実質的な方法における工程、または組成物を製造するためのプロセスの工程、もしくは意図する結果を達成するためのプロセスの工程の、微量を超える要素を排除することを意味する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。本明細書における「含む(comprising)」という用語の使用は、「から本質的になる(Consisting essentially of)」および「からなる(Consisting of)」を包含することを意図する。
【0076】
「タンパク質症」という用語は、ある種のタンパク質が、構造的に異常になり、および/または毒性的に蓄積し、それによって、身体の細胞、組織および器官の機能を破壊する疾患を示す。タンパク質は、しばしば、それらの正常な立体配置に折りたたまれない。この誤って折りたたまれた状態において、タンパク質は、毒性になり、またはそれらの正常な機能が失われることがある。タンパク質症の非限定的な例としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、パーキンソニズム、パーキンソン病、レビー小体による認知症(レビー小体認知症としても知られる)、ピック病、大
脳皮質基底核変性症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、ならびにリポフスチン沈着症、脳のβ-アミロイド血管障害、緑内障における網膜神経節細胞の変性、プリオン病、2型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病および他のトリプレットリピート病、アレキサンダー病、セイピノパシー(seipinopathies)、アミロイドニューロパチー、老人性全身性アミロイドーシス、セルピノパシー(serpinopathies)、アミロイドーシス、封入体筋炎/ミオパチー、マロリー小体、肺胞タンパク症、および重症疾患ミオパチー(CIM、critical illness myopathy)が挙げられる。
【0077】
本明細書において使用される場合、「シャペロン」という用語は、(タンパク質症における異常な)タンパク質に特異的に結合する、小分子、ポリペプチド、核酸等のような分子を示す。シャペロンは、タンパク質の少なくとも部分的な野生型の機能および/または活性を、回復または増強することができる(例えば、Patnaikら(2012)、J.Med.Chem.55:5734~5748を参照)。
【0078】
「対象」、「個体」、または「患者」は、本明細書において互換可能に使用され、脊椎動物、例えば哺乳動物を示す。哺乳動物としては、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、家畜、競技動物、ペット、ウマ、霊長類、およびヒトが挙げられる。一実施形態において、哺乳動物としては、ウマ、イヌ、およびネコが挙げられる。一実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0079】
「投与する」は、本明細書において、薬剤または薬剤を含有する組成物を、対象の身体内に薬剤があるようにする方法で、対象に提供する手段として定義される。このような投与は、限定されず、経口、経皮(例えば、膣、直腸、口腔粘膜)によって、注射(例えば、皮下、静脈内、非経口、腹腔内、CNS内)によって、または吸入(例えば、経口または経鼻)によって、を含むあらゆる経路による。医薬調製物は、当然ながら、それぞれの投与経路に適した形態によって投与される。
【0080】
疾患を「処置する」または「処置」としては、(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患の素因があるが、まだ疾患の症状を経験していないか、もしくは表れていない患者において、疾患の臨床症状が発症しないようにすること;(2)疾患を阻止すること、すなわち、疾患もしくはその臨床症状の発症を抑止もしくは低減すること;および/または(3)疾患を軽減すること、すなわち、疾患もしくはその臨床症状の退行をもたらすことが挙げられる。
【0081】
「処置」という用語に関連する「患う」という用語は、疾患であると診断されている、または疾患の素因がある、患者または個体を示す。患者は、その家系における疾患の病歴のため、または疾患に関連する遺伝子の変異の存在のために、疾患を「患うリスクがある」ということもできる。疾患のリスクがある患者は、疾患の特徴的な病態の全てまたはいくつかをまだ発症していない。
【0082】
「有効量」または「治療有効量」は、有益な、または所望の結果をもたらすために十分な量である。有効量は、1つまたはそれ以上の投与、適用、または投与量で投与することができる。このような送達は、個々の投与量単位が使用される期間、治療薬剤の生物学的利用率、投与経路等を含む、多くの変数に依存する。しかしながら、任意の特定の対象に対する本発明の治療薬剤の具体的な投与量のレベルは、例えば、使用される具体的な化合物の活性、対象の年齢、体重、全身の健康、性別、および食事、投与の時間、排泄の速度、薬物の併用、および処置されている特定の障害の重症度、ならびに投与の形態を含む、多くの因子に依存することが理解される。処置投与量は、一般的に、安全性および有効性
を最適化するために投与量設定することができる。典型的には、インビトロおよび/またはインビボの試験による投与量-効果の関係は、最初に、患者への投与のための適切な投与量に対する有用な指針を提供することができる。一般に、インビトロで有効であることが見出された濃度と釣り合った血清中濃度を達成するために有効である化合物の量を投与することが望ましいだろう。これらのパラメーターの決定は、十分に本技術分野の技術の範囲内である。これらの検討、ならびに有効な製剤および投与の手順は、本技術分野において周知であり、標準的なテキストに記載されている。この定義と一致して、本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、エクスビボ、インビトロ、またはインビボで、タンパク質症またはα-シヌクレイン、タウ、もしくは他のタンパク質凝集体の異常/レベルの上昇に関連する1つもしくはそれ以上の症状を処置する(例えば、改善する)ために十分な量である。
【0083】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、任意の標準的な薬学的な賦形剤を包含し、リン酸緩衝食塩水溶液、水、およびエマルジョン、例えば、油/水または水/油エマルジョンのような担体、ならびに様々な種類の湿潤剤が挙げられる。医薬組成物は、安定化剤および保存剤も含むことができる。担体、安定化剤、および補助剤の例については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第20版、Mack Publishing Co.、2000)を参照されたい。
【0084】
本明細書において使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、活性な薬物を放出するために生物体内で、自然にまたは酵素的のいずれかによる生体内変換を必要とする親薬物分子の薬理学的誘導体を意味する。例えば、プロドラッグは、ある種の代謝条件下で切断可能な基を有する本明細書に記載のキヌクリジン化合物の改変体または誘導体であり、それは、切断されると、本明細書に記載のキヌクリジン化合物、例えば、式Iの化合物になる。したがって、そのようなプロドラッグは、それらが、生理的条件下で加溶媒分解を受けたときに、または酵素的分解を受けたときに、インビボで薬学的に活性である。本明細書において、プロドラッグ化合物は、生体内で活性薬物を放出するために必要な生物内変換工程の数、および前駆体タイプの形態で存在する官能数の数に応じて、単一、二重、三重等と呼ぶことができる。プロドラッグ形態は、しばしば、哺乳類生物における、溶解性、組織適合性、または遅延放出の利点を提供する(Bundgard, Design of Prodrugs、7~9頁、21~24頁、Elsevier、Amsterdam、1985およびSilverman,「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」352~401頁、Academic Press、San Diego、Calif.、1992)。
【0085】
本技術分野において一般的に知られているプロドラッグは、例えば、酸性化合物と適切なアルコールとの反応によって製造されるエステル、酸性化合物とアミンとの反応によって製造されるアミド、塩基性基が反応して形成するアシル化された塩基誘導体等のような周知の酸誘導体が挙げられる。他のプロドラッグ誘導体は、生物学的利用率を高めるために、本明細書に開示される他の特徴と組み合わせることができる。このように、当業者であれば、例えば、遊離のアミノまたはヒドロキシ基を有する、特定の本開示の化合物を、プロドラッグに変換することができることは明らかであろう。プロドラッグとしては、本開示の化合物の遊離のアミノ、ヒドロキシもしくはカルボン酸基とペプチド結合を介して共有結合した、アミノ酸残基、または2もしくはそれ以上(例えば、2、3もしくは4個)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖を有する化合物が挙げられる。アミノ酸残基としては、3文字の記号で一般的に示される20種の天然に存在するアミノ酸が挙げられ、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デモシン、イソデモシン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリ
ン、オルニチンおよびメチオニンスルホンも挙げられる。プロドラッグとしては、任意の本明細書に開示の上記置換基と共有結合で結合した、カーボネート、カルバメート、アミド、またはアルキルエステル部分を有する化合物も挙げられる。
【0086】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、結果として、任意の実質的に望ましくない生物学的効果がなく、または、結果として、それが含有される医薬組成物の任意の他の成分との任意の有害な相互作用がなく、投与することができる本開示の化合物の、薬学的に許容される酸付加塩、または薬学的に許容される塩基付加塩を意味する。
【0087】
本明細書において使用される場合、「C1-6アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる、飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルを意味する。代表的なC1-6アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等が挙げられる。他のC1-6アルキル基は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。「C1-3アルキル」、「C1-4アルキル」等の用語は、同様の意味、すなわち、1~3(または4)個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる、飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルという意味を有する。
【0088】
本明細書において使用される場合、「C2-6アルケニル」という用語は、2~6個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる、不飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルを意味し、このフリーラジカルは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。代表的なC2-6アルケニル基としては、エテニル、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル、イソプロペニル、ブタ-1-エニル、2-メチル-プロパ-1-エニル、2-メチル-プロパ-2-エニル等が挙げられる。他のC2-6アルケニル基は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。
【0089】
本明細書において使用される場合、「C2-6アルキニル」という用語は、2~6個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる、不飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルを意味し、このフリーラジカルは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む。代表的なC2-6アルキニル基としては、エチニル、プロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル、ブタ-1-イニル、3-メチル-ブタ-1-イニル等が挙げられる。他のC2-6アルキニル基は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。
【0090】
本明細書において使用される場合、「C1-6アルキルオキシ」という用語は、1~6個の炭素原子(および対応する数の水素原子)ならびに酸素原子から実質的になる、飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルを意味する。C1-6アルキルオキシ基は、酸素原子を介して結合する。代表的なC1-6アルキルオキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ等が挙げられる。他のC1-6アルキルオキシ基は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。「C1-3アルキルオキシ」、「C1-4アルキルオキシ」等の用語は、同様の意味、すなわち、1~3(または4)個の炭素原子(および対応する数の水素原子)ならびに酸素原子から実質的になる、飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルという意味を有し、ここで、この基は、酸素原子を介して結合する。
【0091】
本明細書において使用される場合、「C2-6アルケニルオキシ」という用語は、2~6個の炭素原子(および対応する数の水素原子)ならびに酸素原子から実質的になる、不飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルを意味し、このフリーラジカルは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。C2-6アルケニルオキシ基は、酸素原子を介し
て結合する。代表的なC2-6アルケニルオキシ基は、エテニルオキシであり;他は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。
【0092】
本明細書において使用される場合、「C2-6アルキニルオキシ」という用語は、2~6個の炭素原子(および対応する数の水素原子)ならびに酸素原子から実質的になる、不飽和の直鎖状または分枝鎖状のフリーラジカルを意味し、このフリーラジカルは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む。C2-6アルケニルオキシ基は、酸素原子を介して結合する。代表的なC2-6アルケニルオキシ基は、エチニルオキシであり;他は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。
【0093】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、環を形成する5または6個の原子(すなわち、環原子)を有する芳香族のフリーラジカルを意味し、1~5個の環原子は、炭素であり、残りの1~5個の環原子(すなわち、ヘテロ環原子)は、窒素、硫黄および酸素からなる群から独立して選択される。代表的な5員のヘテロアリール基としては、フリル、チエニル、チアゾリル(例えば、チアゾール-2-イル)、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリルおよびチアジアゾリルが挙げられる。代表的な6員のヘテロアリール基としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、1,2,4-トリアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。他のヘテロアリール基は、本開示の利益を考えると、当業者には容易に明らかであろう。一般に、ヘテロアリール基は、典型的には、炭素原子を介して主構造と結合する。しかしながら、ある種の他の原子、例えばヘテロ環原子が主構造と結合することができることは、当業者には明らかであろう。
【0094】
本明細書において使用される場合、「アリール」という用語は、環を形成する5または6個の原子(すなわち、環原子)を有する芳香族のフリーラジカルを意味し、全ての環原子は炭素である。代表的なアリール基は、ベンジルである。
【0095】
本明細書において使用される場合、「脂肪族」という用語は、炭素および水素原子を含有する、例えば、1~9個の炭素原子を含有する、非芳香族化合物を意味する。脂肪族化合物は、直鎖状または分枝鎖状であって、1つまたはそれ以上の環構造を含有することができ、1つまたはそれ以上の炭素-炭素二重結合を含有することができる(ただし、化合物は、芳香族性を有する不飽和の環構造を含有しない)。代表的な脂肪族化合物としては、エタン、プロピレン、シクロブタン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0096】
本明細書において使用される場合、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。これらの用語は、互換可能に使用され、ハロゲンフリーラジカル基またはハロゲン原子等を示すことができる。当業者であれば、この用語が本開示において使用される文脈を考慮して、その識別を容易に確認することができるだろう。
【0097】
本明細書において使用される場合、「シアノ」という用語は、三重結合を介して窒素原子と連結された炭素原子を有するフリーラジカルを意味する。シアノラジカルは、その炭素原子を介して結合する。
【0098】
本明細書において使用される場合、「ニトロ」という用語は、その窒素原子を介して結合する、NOラジカルを意味する。
【0099】
本明細書において使用される場合、「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語
は、その酸素原子を介して結合する、OHラジカルを意味する。「チオ」という用語は、その硫黄原子を介して結合する、SHラジカルを意味する。
【0100】
本明細書において使用される場合、「アミノ」という用語は、窒素原子および1または2個の水素原子を有するフリーラジカルを意味する。このように、「アミノ」という用語は、一般に、第一級および第二級アミンを示す。これに関して、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、第3級アミンは、一般式RR’N-(式中、RおよびR’は、同一であっても、同一でなくてもよい炭素ラジカルである)によって表される。それにもかかわらず、「アミノ」という用語は、一般に、本明細書において、望ましくは第一級、第二級または第三級アミンを記載するために使用することができ、当業者であれば、この用語が本開示において使用される文脈を考慮して、その識別を容易に確認することができるだろう。
【0101】
本明細書において使用される場合、「オキソ」という用語は、二重結合を介して結合する酸素ラジカルを意味する。この酸素に結合する原子が炭素原子である場合、結合は、-(C=O)-として表すことができる炭素-酸素二重結合であり、これはケトンを示す。
【0102】
本明細書における任意の定義の変数における化学基のリストの列挙には、列挙された基の任意の単一の基または組み合わせとして、その変数の定義を含む。本明細書における変数または態様に関する実施形態の列挙には、任意の単一の実施形態、または任意の他の実施形態もしくはその部分との組み合わせとして、その実施形態を含む。
【0103】
本明細書において提供される任意の組成物または方法は、本明細書に提供される、1つまたはそれ以上の任意の他の組成物および方法と組み合わせることができる。
【0104】
以下の略号を本明細書において使用する。
A53T A53T変異を有するヒトα-シヌクレインを発現する遺伝子組換えマウス
ALS 筋萎縮性側索硬化症
AMTS 簡易精神試験スコア
ANOVA 分散分析
br ブロードシグナル
CDI カルボニルジイミダゾール
CIM 重症疾患ミオパチー
CNS 中枢神経系
CS 条件刺激
d 二重線
DAPI 4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール
dd 二重の二重線
DME ジメトキシエタン
DMSO-d6 ジメチルスルホキシド-d6
DMF ジメチルホルムアミド
DNA デオキシリボ核酸
DTBZ 炭素-11ジヒドロテトラベナジン
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
EtO ジエチルエーテル
EtMgBr エチルマグネシウムブロミド
EtOAc 酢酸エチル
FC 恐怖条件付け(試験)
GBA1 グルコセレブロシダーゼ1遺伝子
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HAS ヒト血清アルブミン
IQCODE 高齢者における認知機能低下に対するインフォアンケート
IPA イソプロピルアルコール
ITI 試験間の間隔
J カップリング定数
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
m 多重線
MAPT 微小管結合タウタンパク質遺伝子
MAO-B モノアミンオキシダーゼB
MMSE ミニメンタルステート検査
NOR 新規物体認識(試験)
PET 陽電子放射断層撮影
PIB 炭素-11ピッツバーグ化合物B
ppm 百万分率
pTau リン酸化タウタンパク質
rHA 組換えヒトアルブミン
s 一重線
SNCA α-シヌクレイン遺伝子
SPECT 単一光子放射断層撮影
SEM 標準誤差
TBME Tert-ブチルメチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
TWEEN20 ポリソルベート20
TWEEN80 ポリソルベート80
WT 野生型
UPLCMS 超高速液体クロマトグラフィー質量分析
US 無条件刺激
US-CS 無条件刺激-条件刺激
【0105】
化合物
本発明は、キヌクリジン化合物、およびタンパク質症に関連する治療方法におけるそれらの使用に関する。1つの態様において、キヌクリジンは化合物、式(I)
【化6】
[式中、
は、水素;
ハロゲン、もしくはシアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基;または、
ハロゲン、および、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基から独立して
選択される1つもしくはそれ以上(例えば、1、2もしくは3個)の基によって場合により置換されている、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルオキシ、C2-6アルケニルオキシもしくはC2-6アルキニルオキシ基であり;
およびRは、1つもしくはそれ以上(例えば、1、2もしくは3個)のハロゲンによって場合により置換されているC1-3アルキル基から、それぞれ独立して選択され;または、
およびRは一緒になって、1つもしくはそれ以上(例えば、1もしくは2個)のハロゲンによって場合により置換されている、シクロプロピルもしくはシクロブチル基を形成し;
、RおよびRは、水素;ハロゲン;ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基;ならびに、ハロゲン;ヒドロキシもしくはシアノ基;および、C1-6アルキルオキシ基から選択される1つもしくはそれ以上(例えば、1、2もしくは3個)の基によって場合により置換されている、C1-6アルキルまたはC1-6アルキルオキシ基から、それぞれ独立して選択され;
Aは、5もしくは6員のアリールまたはヘテロアリール基である]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0106】
一実施形態において、Rは、水素;ハロゲン;または、ハロゲン;およびシアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオもしくはアミノ基から独立して選択される1つもしくは2つの基によって場合により置換されている、C1-4アルキルもしくはC1-4-アルキルオキシ基である。別の実施形態において、Rは、水素;フッ素;または、ハロゲン、もしくはヒドロキシ、チオもしくはアミノ基によって場合により置換されている、メチルもしくはエチル基である。さらなる実施形態において、Rは、水素;または、1つもしくはそれ以上(例えば、1、2もしくは3個)のハロゲンによって場合により置換されている、メチル基である。またさらなる実施形態において、Rは、水素である。一実施形態において、Rは、キヌクリジン部分の窒素原子と結合しない。
【0107】
一実施形態において、RおよびRは、1つまたはそれ以上のハロゲンで場合によって置換されているC1-3アルキル基から、それぞれ独立して選択される。別の実施形態において、RおよびRは、1つまたはそれ以上のフッ素原子で場合により置換されている、メチルおよびエチル基から、それぞれ独立して選択される。さらなる実施形態において、RおよびRは、それぞれ、1~3個のフッ素原子で場合により置換されているメチルである。またさらなる実施形態において、RおよびRは、両方メチル基であるか、またはRおよびRは一緒になって、シクロプロピル基を形成するかのいずれかである。よりさらなる実施形態において、RおよびRは、両方メチル基である。
【0108】
一実施形態において、Rは、水素である。別の実施形態において、RおよびRは、両方とも水素である。別の実施形態において、R、RおよびRの少なくとも1つは、水素ではない。さらなる実施形態において、Rは、ハロゲン;ならびに、ハロゲン;および、シアノもしくはC1-3アルキルオキシ基から選択される1つもしくはそれ以上の基によって場合により置換されている、C1-3アルキルまたはC1-3アルキルオキシ基から選択される。別の実施形態において、Rは、ハロゲン;ならびに、ハロゲン;および、C1-3アルキルオキシ基から選択される1つもしくはそれ以上の基によって場合により置換されている、C1-3アルキルまたはC1-3アルキルオキシ基から選択される。またさらなる実施形態において、Rは、フッ素;ならびに、ハロゲン;および、シアノもしくはC1-3アルキルオキシ基から選択される1つまたはそれ以上の基によって場合により置換されているC1-3アルキルオキシ基から選択される。よりさらなる実施形態において、Rは、フッ素;ならびに、ハロゲン;および、シアノまたはC1-3アルキルオキシ基から選択される1つまたはそれ以上の基によって場合により置換され
ているC1-3アルキルオキシ基から選択され;RおよびRは、両方とも水素である。例えば、RおよびRが、両方とも水素である場合、Rは、フッ素または2-メトキシエトキシ基、例えば、フッ素であることができる。
【0109】
、RおよびRの全てが、水素以外である場合、これらの3つの基は、例えば、(基Aが1位で結合しているのに対して)2、4および6位でベンゼン環に結合することができる。R、RおよびRの1つのみが水素である場合、他の2つの基は、例えば、(基Aが1位で結合しているのに対して)2および3位、3および4位、または3および5位、例えば、3および5位でベンゼン環に結合することができる。R、RおよびRの2つが水素である場合、他の基は、2、3または4位、例えば、4位(すなわち、基Aに対してパラ位)でベンゼン環に結合することができる。一実施形態において、Rは、基Aに対してベンゼン環のパラ位である。
【0110】
一実施形態において、Aは、6員のアリール基、または5員のヘテロアリール基である。6員のアリール基および5員のヘテロアリール基の非限定的な例としては、ベンジル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられる。一実施形態において、6員のアリール基または5員のヘテロアリール基は、ベンジル、チエニル、チアゾリル、ピロリルおよびイミダゾリルから選択される。別の実施形態において、6員のアリール基または5員のヘテロアリール基は、ベンジルおよびチアゾリルから選択される。
【0111】
一実施形態において、Aは、ハロゲン;および、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、オキシまたはメチル基から独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換されているベンジルである。別の実施形態において、Aは、1または2つのハロゲンで場合により置換されているベンジルである。さらなる実施形態において、Aは、ハロゲン、例えば、フッ素で場合により置換されているベンジルである。またさらなる実施形態において、Aは無置換のベンジル基である。
【0112】
Aが6員のアリールまたはヘテロアリールである場合、結合される基-C(R)-および-(C)は、1,2-または1,3-または1,4-の関係、すなわち、互いに、オルト、メタまたはパラであることができる。一実施形態において、結合される基-C(R)-および-(C)は、1,3-関係である。別の実施形態において、結合される基は、1,4-関係である。
【0113】
一実施形態において、Aは、N、OおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基である。別の実施形態において、Aは、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基である。さらなる実施形態において、Aは、NおよびSから選択される2個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基である。またさらなる実施形態において、Aは、1つのヘテロ原子がNで、他方のヘテロ原子がSである、2個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール基である。よりさらなる実施形態において、Aは、チアゾリル基である。
【0114】
Aが、5員のヘテロアリール基である場合、結合される基-C(R)-および-(C)の少なくとも1つは、ヘテロアリール基の炭素原子に直接結合することができる。一実施形態において、結合される基-C(R)-および-(C)の両方は、ヘテロアリール基の炭素原子に直接結合する。一実施形態において、結合される基-C(R)-および-(C)は、互いに1,3-関係であり、例えば、それらは、単一の介在する原子、例えば、ヘテロ原子によって分割されたヘテロアリール基の炭素原子に、直接結合する。Aがチアゾリル基で
ある実施形態において、結合される基-C(R)-および-(C)は、4および2位で、それぞれ、直接結合することができる。
【0115】
したがって、一実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(II)
【化7】
[式中、R、R、RおよびAは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0116】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(III)
【化8】
[式中、R~R、およびAは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0117】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(IV)
【化9】
[式中、RおよびAは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0118】
一実施形態において、Rは、ハロゲン、例えば、フッ素である。したがって、キヌクリジン化合物は、式(V)
【化10】
[式中、Aは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグであることができる。
【0119】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(VI)
【化11】
[式中、R~Rは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0120】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(VII)
【化12】
[式中、R~Rは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0121】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(VIII)
【化13】
[式中、R~Rは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0122】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(IX)
【化14】
[式中、Rは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0123】
一実施形態において、Rは、ハロゲン、例えば、フッ素である。したがって、キヌクリジン化合物は、式(X)
【化15】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグであることができる。
【0124】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(XI)
【化16】
[式中、Rは、本明細書に定義の通りである]
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0125】
一実施形態において、Rは、ハロゲン、例えば、フッ素である。したがって、キヌクリジン化合物は、式(XII)
【化17】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグであることができる。
【0126】
一実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物1~化合物23、ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグからなる群から選択される。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
一実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物1、化合物2および化合物3、ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグから選択される。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物1および化合物3、ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグから選択される。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物1、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物2、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物3、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0130】
別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物1、化合物2および化合物3から選択される。一実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物1である。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物2である。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、化合物3である。
【0131】

塩基性の性質である本開示の化合物は、一般に、様々な無機および/または有機酸と、幅広い種類の異なる塩を形成することができる。そのような塩は、一般に、動物およびヒトへの投与のために薬学的に許容されるが、実際には、薬学的に許容されない塩として反応混合物から化合物を最初に単離し、次いで、単に、アルカリ性試薬での処理によって遊離の塩基性化合物に戻す変換を行い、続いて、遊離塩基を、薬学的に許容される酸付加塩に変換することがしばしば望ましい。塩基性化合物の酸付加塩は、従来技術を使用して、例えば、水性の溶媒媒体、または、例えば、メタノールもしくはエタノールのような適切な有機溶媒中で、実質的に当量の選択した鉱酸または有機酸で、塩基性化合物を処理することによって、容易に製造することができる。溶媒を注意深く蒸発させて、所望の固体の塩が得られる。正に荷電した、例えば、第4級アンモニウムを含有する本開示の化合物は、様々な無機および/または有機酸のアニオン成分と塩を形成することもできる。
【0132】
キヌクリジン化合物の薬学的に許容される塩を製造するために使用することができる酸は、非毒性の酸付加塩を形成することができるもの、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩もしくは重硫酸塩、リン酸塩もしくは酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、もしくは酸性クエン酸塩、酒石酸塩もしくは重酒石酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカレート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、およびパモ酸[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩のような、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩である。
【0133】
酸性の性質である本開示の化合物、例えば、テトラゾール部分を含有する化合物は、一般に、様々な無機および/または有機塩基と、幅広い種類の異なる塩を形成することができる。そのような塩は、一般に、動物およびヒトへの投与のために薬学的に許容されるが、実際には、薬学的に許容されない塩として反応混合物から化合物を最初に単離し、次い
で、単に、酸性試薬での処理によって遊離の酸性化合物に戻す変換を行い、続いて、遊離酸を、薬学的に許容される塩基付加塩に変換することがしばしば望ましい。これらの塩基付加塩は、従来技術を使用して、例えば、所望の薬理学的に許容されるカチオンを含有する水溶液で対応する酸性化合物を処理し、次いで、得られた溶液を、蒸発させて、例えば減圧下で乾燥することによって、容易に製造することができる。あるいは、それらは、酸性化合物の低級アルカノール溶液および所望のアルカリ金属アルコキシドを一緒に混合し、次いで、前記と同様の方法で、得られた溶液を、蒸発させて、乾燥することによって、製造することもできる。いずれの場合においても、反応の完全性および所望の固体の塩の最大の生成物収率を確実にするために、化学量論量の試薬を使用することができる。
【0134】
キヌクリジン化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を製造するために使用することができる塩基は、非毒性の塩基付加塩を形成することができるもの、例えば、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)、アルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)、アンモニウム、または他の水溶性アミン付加塩、例えば、N-メチルグルカミン(メグルミン)、低級アルカノールアンモニウムおよび他の有機アミンのそのような塩基のような、薬理学的に許容されるカチオンを含有する塩である。
【0135】
一実施形態において、薬学的に許容される塩は、コハク酸塩である。別の実施形態において、薬学的に許容される塩は、2-ヒドロキシコハク酸、例えば、(S)-2-ヒドロキシコハク酸塩である。別の実施形態において、薬学的に許容される塩は、塩酸塩(すなわち、HClとの塩)である。別の実施形態において、薬学的に許容される塩は、リンゴ酸塩である。
【0136】
プロドラッグ
本明細書に開示の薬学的に許容されるプロドラッグは、インビボで、本明細書に記載のキヌクリジン化合物に変換されることが可能な、キヌクリジン化合物の誘導体である。プロドラッグは、それ自身がいくらかの活性を有することができ、それらが、例えば、生理学的条件下での加溶媒分解または酵素分解を受けた場合に、インビボで薬学的に活性になる。本明細書に記載の化合物のプロドラッグを製造するための方法は、本開示に基づけば、当業者には明らかであろう。
【0137】
一実施形態において、キヌクリジン化合物のカルバメート部分は、修飾される。例えば、キヌクリジン化合物のカルバメート部分は、水、および/または1つもしくは2つの脂肪族アルコールの付加によって修飾することができる。この場合において、カルバメート部分の炭素-酸素二重結合は、ヘミアセタールまたはアセタール官能性であると考えることができる形をとる。一実施形態において、キヌクリジン化合物のカルバメート部分は、脂肪族ジオール、例えば1,2-エタンジオールの付加によって修飾することができる。
【0138】
一実施形態において、キヌクリジン化合物における1つもしくはそれ以上のヒドロキシ、チオまたはアミノ基は、修飾される。例えば、キヌクリジン化合物における1つもしくはそれ以上のヒドロキシ、チオおよび/またはアミノ基は、酸誘導体、例えば、エステル、チオエステル(もしくはチオールエステル)、および/またはアミドを形成するために修飾することができる。酸誘導体は、例えば、1つもしくはそれ以上のヒドロキシ、チオまたはアミノ基を含むキヌクリジン化合物をアセチル化剤と反応させることによって、形成することができる。アセチル化剤の例としては、無水酢酸のような無水物、塩化ベンジルのような酸塩化物、ジ-tert-ブチルジカーボネートのようなジカーボネートが挙げられる。
【0139】
立体化学
本開示の化合物の立体異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)および全ての光学異性体(例えば、R-およびS-エナンチオマー)、ならびにラセミ体、ジアステレオマー、およびそのような異性体の他の混合物は、本開示の範囲内である。
【0140】
一実施形態において、本明細書に定義のキヌクリジン化合物のキヌクリジン-3-イル基は、R-立体配置を有する。したがって、キヌクリジン化合物は、式(Ia)~(XIIa):
【化18】
【化19】
【化20】
の化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグからなる群から選択することができる。
【0141】
別の実施形態において、本明細書に定義のキヌクリジン化合物のキヌクリジン-3-イル基は、S-立体配置を有する。したがって、キヌクリジン化合物は、式(Ib)~(XIIb):
【0142】
【化21】
【化22】
【化23】
の化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグからなる群から選択することができる。
【0143】
一実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(Xb)の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(XIIb)の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0144】
一実施形態において、本明細書に定義のキヌクリジン化合物のキヌクリジン-3-イル基は、R-およびS-立体配置を有する異性体の混合物で存在する。例えば、キヌクリジン化合物は、式(Ia)および(Ib)、式(IIa)および(IIb)、式(IIIa)および(IIIb)、式(IVa)および(IVb)、式(Va)および(Vb)、式(VIa)および(VIb)、式(VIIa)および(VIIb)、式(VIIIa)および(VIIIb)、式(IXa)および(IXb)、式(Xa)および(Xb)、式(XIa)および(XIb)、および、式(XIIa)および(XIIb)の化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグからなる群から選択される化合物の混合物であることができる。一実施形態において、キヌクリジン化合物は、例えば、キヌクリジン-3-イル基のR-およびS-異性体が、およそ等量で存在する、ラセミ混合物として存在する。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、R-およびS-立体配置を有する異性体の混合物として存在し、ここで、R-およびS-異性体は、異なる量で存在する。一実施形態において、S-異性体は、少なくとも約5%、10%、25%、40%、70%、80%、90%、95%、97%、98%または99%、例えば、約100%のエナンチオマー過剰で存在する。別の実施形態において、R-異性体は、少なくとも約5%、10%、25%、40%、70%、80%、90%、95%、97%、98%または99%、例えば、約100%のエナンチオマー過剰で存在する。
【0145】
エナンチオマーが濃縮されたおよび/またはエナンチオピュアなキヌクリジン化合物を製造するための方法は、本開示に基づけば、当業者には明らかであろう。
【0146】
本開示の化合物は、エノールおよびイミン型、および、ケトおよびエナミン型を含む、いくつかの互変異性型、および幾何異性体、ならびにそれらの混合物で存在することができる。互変異性体は、溶液中で、互変異性の組み合わせの混合物として存在する。固体の形態においては、通常、1つの互変異性体が優勢である。1つの互変異性体を記載する場合であっても、全ての互変異性体は本開示の範囲内である。
【0147】
アトロプ異性体も本開示の範囲内である。アトロプ異性体は、回転的に制限された異性体に分離することができる化合物を示す。
【0148】
他の形態
本明細書に記載のキヌクリジン化合物の、薬学的に許容される水和物、溶媒和物、多形
体等は、本開示の範囲内である。本明細書に記載のキヌクリジン化合物は、アモルファス形態および/または1つもしくはそれ以上の結晶形態であることができる。
【0149】
同位体ラベル化合物も、本開示の範囲内である。本明細書において使用される場合、「同位体ラベル化合物」は、それぞれ、本明細書に記載の、その薬学的な塩およびプロドラッグを含む、本開示の化合物であって、その1つまたはそれ以上の原子が、天然で通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量を有する原子によって置き換えられた化合物を示す。本開示の化合物に組み込むことができる同位元素の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位元素、例えば、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clが、それぞれ挙げられる。
【0150】
医療適用
本明細書に記載の、キヌクリジン化合物、およびそれらを含有する医薬組成物は、治療、特に、対象におけるタンパク質症の治療的処置に有用である。本明細書に記載の方法に従って処置される対象としては、脊椎動物、例えば哺乳動物が挙げられる。特定の実施形態において、哺乳動物は、ヒト患者である。
【0151】
本発明は、対象におけるタンパク質症を処置するための方法であって、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。また、対象におけるタンパク質症を処置する方法における使用のための、本明細書に記載のキヌクリジン化合物も提供する。さらに、対象におけるタンパク質症を処置する方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の使用を提供する。一実施形態において、対象は、ヒト対象である。
【0152】
一実施形態において、本明細書に開示の方法において示されるタンパク質症は、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、パーキンソニズム、パーキンソン病、リティコ・ボディグ病、レビー小体による認知症、神経原線維変化優位型認知症、ボクサー認知症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、ならびにリポフスチン沈着症からなる群から選択される疾患である。一実施形態において、タンパク質症は、アルツハイマー病である。別の実施形態において、タンパク質症は、レビー小体による認知症である。別の実施形態において、タンパク質症は、パーキンソン病である。
【0153】
一実施形態において、タンパク質症は、タウオパシーである。タウオパシーは、タウの蓄積によって特徴付けられる神経変性障害である。代表的なタウオパシーとしては、例えば、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症、パーキンソン病、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化優位型認知症、嗜銀性顆粒病、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ症候群、リポフスチン沈着症、レビー小体による認知症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症およびハンチントン病が挙げられる。一実施形態において、タンパク質症は、シヌクレイノパシーである。シヌクレイノパシーの例としては、例えば、パーキンソン病、多系統萎縮症、およびレビー小体認知症が挙げられる。シヌクレイノパシーに分類されるいくつかの疾患は、タウタンパク質の蓄積も有し、タウオパシーに分類されるいくつかの疾患は、α-シヌクレインタンパク質の蓄積も有する。したがって、一実施形態において、タンパク質症は、α-シヌクレインおよびタウの蓄積によって特徴付けられる。
【0154】
本明細書に開示の方法は、タンパク質症である対象(例えば、ヒトのような哺乳動物)
を処置するために有用である。ある実施形態において、タンパク質症は、タンパク質凝集体が関連する。タンパク質の「凝集」とは、誤って折りたたまれたタンパク質が、細胞内または細胞外のいずれかで凝集する生物学的な現象を示す。これらのタンパク質凝集体は毒性がある場合がある。ある実施形態において、タンパク質凝集体は、ユビキチン、タウおよびα-シヌクレインからなる群から選択されるタンパク質を含む。
【0155】
ユビキチンは、真核生物のほぼ全ての組織において見出される小さなタンパク質である。これは、基質のタンパク質と結合することができる、76アミノ酸のタンパク質である。ユビキチンの付加は、タンパク質の分解;転写、翻訳、およびタンパク質の局在化の調節;またはタンパク質の活性/相互作用の調節をもたらすことができる。タウタンパク質は、微小管を安定化するために機能し、タウタンパク質は、細胞の異なる部分、例えば、膜、サイトゾルの可溶物、サイトゾルの不溶物において見出すことができる。これらは、中枢神経系のニューロン、およびアストロサイト、ならびにオリゴデンドロサイトに豊富に存在する。タウタンパク質(タウ包含、「pTau」)の過剰リン酸化は、対になったらせん状の線維および直線状の線維のもつれの自己組織化をもたらし、これは、アルツハイマー病および他のタウオパシーの病態形成に関与する。6つのタウアイソフォームは全て、アルツハイマー病の脳からの対になったらせん状の線維中に、過剰リン酸化状態でしばしば存在する。他の神経変性疾患において、ある種のタウアイソフォームにおいて濃縮された凝集体の沈着が報告されている。誤って折りたたまれると、そうでなければ非常に可溶性のタンパク質は、多くの神経変性疾患に寄与する極めて不溶性の凝集体を形成することができる。α-シヌクレインは、ヒトにおいて、SNCA遺伝子によってコードされるタンパク質である。α-シヌクレインは、細胞の異なる部分、例えば、膜、サイトゾルの可溶物、サイトゾルの不溶物において見出すことができる。タンパク質は、主に神経組織において見出され、新皮質、海馬、黒質、視床、および小脳において主に発現する。ニューロン以外に、タンパク質は、神経膠細胞およびメラニン形成細胞において見出すこともできる。α-シヌクレインは、ある場合において、レビー小体によって特徴付けられる病理学的状態において、凝集して不溶性の原線維を形成することができる。
【0156】
本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象の組織におけるタンパク質凝集体の蓄積を、低減する、回復に向かわせる、または予防する方法も提供する。本方法は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の有効量を対象に投与することを含む。関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象の組織におけるタンパク質凝集体の蓄積を、低減する、回復に向かわせる、または予防する方法における使用のための、本明細書に記載のキヌクリジン化合物を提供する。他の関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象の組織におけるタンパク質凝集体の蓄積を、低減する、回復に向かわせる、または予防する方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の使用を提供する。
【0157】
一実施形態において、タンパク質凝集体は、ユビキチン、タウタンパク質および/またはα-シヌクレイン、例えば、タウタンパク質および/またはα-シヌクレインを含む。別の実施形態において、タンパク質凝集体は、タウタンパク質またはα-シヌクレインを含む。一実施形態において、タンパク質凝集体は、タウタンパク質の凝集体およびα-シヌクレインの凝集体を含む。一実施形態において、対象は、前記組織中にα-シヌクレインを含むタンパク質凝集体を有さない。一実施形態において、タンパク質凝集体は、タウタンパク質の凝集体であり、対象は、前記組織中にα-シヌクレインを含むタンパク質凝集体を有さない。特定の実施形態において、タンパク質凝集体は、α-シヌクレインの凝集体であり、タンパク質症は、シヌクレイノパシーである。別の実施形態において、タン
パク質凝集体は、タウタンパク質の凝集体であり、タンパク質症は、タウオパシー、例えば、パーキンソン病である。
【0158】
一実施形態において、組織は、対象の中枢神経系のニューロン、例えば、対象の、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンである。別の実施形態において、対象は、それらの中枢神経系(CNS)において、例えば、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉中のニューロンにおいて、α-シヌクレインを含むタンパク質凝集体を有さない。さらなる実施形態において、タンパク質症は、対象の中枢神経系において、例えば、対象の、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて、タンパク質凝集体内のα-シヌクレインではなく、タウタンパク質の存在によって特徴付けられるパーキンソン病である。
【0159】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、特定の部分のα-シヌクレインを低減するのに有効である。一実施形態において、サイトゾルの不溶性のα-シヌクレインが低減される。別の実施形態において、膜関連のα-シヌクレインが低減される。さらなる実施形態において、細胞外のα-シヌクレインが低減される。実施形態において、凝集したα-シヌクレインは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%まで低減される。一実施形態において、凝集したα-シヌクレインは、α-シヌクレインの増加によって特徴付けられるタンパク質症ではない、対象(例えば、ヒトのような哺乳動物)のものとは顕著に異ならないレベルに低減される。
【0160】
本明細書に記載のキヌクリジン化合物の対象への投与によって、対象のCNS内で、例えば、脳の皮質組織内で、α-シヌクレインのプロセシングおよび局在化を変化させることができる。本明細書に記載の方法の一実施形態において、膜関連のα-シヌクレインおよび/または不溶性の細胞質のα-シヌクレインのレベルが低減される。ある実施形態において、膜関連のα-シヌクレインおよび/または不溶性の細胞質のα-シヌクレインのレベルが低減されるが、サイトゾルの可溶性のα-シヌクレインのレベルは低減されない(例えば、顕著に変化しない)。特定の実施形態において、対象は、シヌクレイノパシーであると診断されているヒト対象、またはシヌクレイノパシー、特に、パーキンソン病またはレビー小体認知症を発症するリスクがあると診断されているヒト対象である。
【0161】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、特定の部分のタウを低減するのに有効である。一実施形態において、サイトゾルの不溶性のタウが低減される。別の実施形態において、膜関連のタウが低減される。さらなる実施形態において、細胞外のタウが低減される。実施形態において、凝集したタウは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%まで低減される。一実施形態において、凝集したタウは、タウの増加によって特徴付けられるタンパク質症ではない、対象(例えば、ヒトのような哺乳動物)のものとは顕著に異ならないレベルに低減される。
【0162】
タンパク質症は、特に、中枢神経系に存在する場合、神経機能、例えば、認知機能、自律神経機能および/または運動機能の機能障害をもたらすことができる。本明細書に記載のキヌクリジン化合物の投与は、対象、例えば、タンパク質症に起因する認知障害を示す
対象における、神経機能の改善をもたらすことができる。したがって、本方法のある実施形態において、本明細書に記載のキヌクリジン化合物は、神経(例えば、神経性の)機能障害を有する対象に投与される。特定の実施形態において、キヌクリジン化合物の投与は、対象が、神経(例えば、神経性の)機能障害であると診断された後に開始される。認知障害の診断は、医師の日常的な技術の範囲内である。認知試験は、本技術分野において公知であり、例えば、簡易精神試験スコア(AMTS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、高齢者における認知機能低下に対するインフォアンケート(IQCODE)、認知障害のための試験を行う、一般医による認知の評価のような試験を挙げることができる。これらの試験は、例えば、記憶、判断スキル、課題解決スキル、意思決定スキル、注意持続時間、および言語スキルの機能障害を評価することができる。画像診断方法を、認知の低下を診断するために利用することもできる。例えば、単一光子放射断層撮影(SPECT)および陽電子放射断層撮影(PET)の機能的な神経画像処理の様式は、認知機能障害を評価するのに有用である。いくつかの態様において、神経機能の改善は、患者の認知機能を評価することによって測定される。例えば、軽度認知障害に関連する、認知の悪化は、異なる認知領域をモニタリングすることによって評価することもできる。認知領域としては、例えば、注意力および集中力、実行機能、記憶、言語、視覚構成スキル、概念的思考、計算、および見当識が挙げられる。タンパク質症に関連する他の機能障害の診断は、医師の日常的な技術の範囲内でもある。例えば、パーキンソン病の診断のための臨床基準は、運動および/または自律神経機能、例えば、動作の緩慢さ(動作緩慢)に加えて、硬直、静止時振戦、または姿勢の不安定のいずれかの機能障害を評価することを含む。ドーパミン(対症の処置)に対する応答性、および基底核におけるドーパミン性活性の低下もパーキンソン病の診断に役立てることができる。
【0163】
認知の低下、例えば、記憶の喪失を予防するための方法に関連して、放射性トレーサとして炭素-11ピッツバーグ化合物Bを使用するPET画像処理(PIB-PET)は、様々な種類のタンパク質症の予測的な診断に有用である。例えば、研究により、PIB-PETが、軽度認知障害の患者が2年以内にアルツハイマー病を発症するかを予測する際に、86%の正確性であることが見出されている。別の研究では、PIBまたは別の放射性トレーサである炭素-11ジヒドロテトラベナジン(DTBZ)のいずれかを使用することにより、軽度認知障害または軽度認知症の患者の4分の1超に対してより正確な診断をもたらした。
【0164】
本明細書に記載の方法は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせることができる。したがって、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法を提供する。本方法は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の有効量を対象に投与することを含む。関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための、本明細書に記載のキヌクリジン化合物を提供する。別の関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における神経機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の使用を提供する。神経機能の喪失は、認知機能、自律神経機能および/または運動機能の喪失を含むことができる。
【0165】
本明細書に記載の方法は、認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせることができる。したがって、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、
またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法を提供する。本方法は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の有効量を対象に投与することを含む。関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための、本明細書に記載のキヌクリジン化合物を提供する。他の関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知症の進行を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の使用を提供する。予防する、低減する、または回復に向かわせることができる認知症の症状としては、認知症の初期症状、例えば、最近の会話、名前もしくは出来事の記憶の困難さ、および無感情およびうつ、ならびに末期症状、例えば、コミュニケーション障害、判断力の低下、見当識障害、混乱、行動変容、および、話、嚥下および/または歩行の困難さが挙げられる。
【0166】
本明細書に記載の方法は、認知障害、例えば、軽度認知障害を、予防または処置するために使用することもできる。軽度認知障害は、予想される正常な老化による認知の低下と、認知症状のより深刻な低下との間の中間段階である。したがって、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知障害(例えば、軽度認知障害)を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法を提供する。本方法は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の有効量を対象に投与することを含む。関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知障害(例えば、軽度認知障害)を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための、本明細書に記載のキヌクリジン化合物を提供する。他の関連する態様において、本発明は、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象における認知障害(例えば、軽度認知障害)を、予防する、低減する、または回復に向かわせる方法における使用のための医薬品の製造における、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の使用を提供する。
【0167】
本発明の方法は、認知機能、自律神経機能および/または運動機能の喪失を、予防する、低減する、または回復に向かわせることができる。一実施形態において、神経機能の喪失は、認知機能の喪失を含む。ある実施形態において、本方法は、対象における認知領域の変質を、予防する、低減する、または回復に向かわせ、例えば、本方法は、注意力および集中力、実行機能、記憶(例えば、作業記憶)、言語、視覚構成スキル、概念的思考、計算、見当識、意思決定、課題解決等における変質を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。一実施形態において、神経機能の喪失は、自律神経機能の喪失を含む。ある実施形態において、本方法は、起立性低血圧症、便秘症、嚥下障害、悪心、唾液分泌過多、多汗症、尿機能障害、性的機能障害等を、予防する、低減する、または回復に向かわせる。一実施形態において、神経機能の喪失は、運動機能の喪失を含む。ある実施形態において、本方法は、パーキンソニズムを、予防する、低減する、または回復に向かわせる。パーキンソニズムとは、パーキンソン病様の症状をもたらす、様々な根底にある病態の臨床的定義であり;これらの病態は、パーキンソン病を含む多くの障害によって引き起こされる。本明細書に開示の方法によって、予防する、低減する、または回復に向かわせることができるパーキンソニズムの症状としては、例えば、振戦、動作緩慢、硬直、姿勢の不安定、バランス障害等のような運動機能障害が挙げられる。
【0168】
一実施形態において、対象は、その中枢神経系において、例えば、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて、α-シヌクレインを含むタンパ
ク質凝集体を有さない。一実施形態において、タンパク質症は、対象の中枢神経系において、例えば、対象の、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンにおいて、タンパク質凝集体内のα-シヌクレインではなくタウタンパク質の存在によって特徴付けられるパーキンソン病である。
【0169】
本発明の方法は、タンパク質症であると診断されているが、疾患状態に関連する典型的な症状、例えば、認知障害の兆候をまだ経験していない対象にとって有用である。本発明の方法は、例えば、対象における変異、またはタンパク質症を引き起こすことが知られている対象の家系に起因して、タンパク質症を発症するリスクがある対象にとっても有用である。本明細書に記載の方法の一実施形態において、対象は、前記タンパク質症を発症するリスクがあると診断されており、本方法は、対象におけるタンパク質症の発病および/または発症を、予防する、または遅らせる。
【0170】
例えば、グルコセレブロシダーゼ1遺伝子(GBA1)における変異は、リソソーム蓄積症であるゴーシェ病を引き起こし、ある種のタンパク質症の発症のリスクの増加と関連していることが知られている。GBA1における変異は、本技術分野において公知であり、例えば、L444P、D409H、D409V、E235AおよびE340Aの変異が挙げられる。したがって、一実施形態において、本発明の方法によって処置される対象は、1つまたはそれ以上のGBA1における変異を有する。一実施形態において、対象は、例えば、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2活性化因子欠損症、テイ・サックス病またはサンドホッフ病のような、リソソーム蓄積症を患っている。一実施形態において、対象は、ゴーシェ病を患っている。代替の実施形態において、本発明の方法によって処置される対象は、例えば、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2活性化因子欠損症、テイ・サックス病またはサンドホッフ病のような、リソソーム蓄積症を患っていない。一実施形態において、対象は、ゴーシェ病を患っていない。関連する実施形態において、対象は、GBA1における1つ(または2つ以上)の変異を有するが、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病)を患っていない。例えば、対象は、GBA1変異のヘテロ接合保因者であることができる。別の実施形態において、対象は、有害なGBA1変異を有さず、例えば、遺伝子は、野生型遺伝子によってコードされたタンパク質と、実質的に同じ構造、活性ならびに/または組織のレベルおよび分布を有するタンパク質をコードするという点で、実質的に正常に機能する。野生型GBA1配列は、本技術分野において公知であり、GenBankアクセッション番号NM000157.3(mRNA)が挙げられる。一実施形態において、対象は、GBA1におけるD409V変異を有さない。
【0171】
医薬組成物
本開示は、例えば、本明細書に開示の方法による使用のための、少なくとも1つの本明細書に記載のキヌクリジン化合物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物も提供する。薬学的に許容される賦形剤は、本技術分野において公知の任意のそのような賦形剤であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編集、1985)に記載のものが挙げられる。本開示の化合物の医薬組成物は、例えば、少なくとも1つの本開示の化合物を薬学的に許容される賦形剤と混合することを含む、本技術分野において公知の従来の手段によって製造することができる。
【0172】
したがって、1つの態様において、本発明は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬剤形であって、剤形は、投与される場合(例えば、経口的に投与される場合)、タンパク質症であると診断されている対象、またはタンパク質症を発症するリスクがあると診断されている対象(例えば、ヒト対象)の組織におけるタンパク質凝集体の蓄積を、予防する、低減する、または回復に向かわせるために
十分な量の前記化合物を提供するために製剤化される、医薬剤形を提供する。対象の組織は、黒質、大脳皮質、海馬、前頭葉および/または側頭葉のニューロンであることができる。
【0173】
一実施形態において、剤形は、パーキンソン病であると診断されている対象、またはパーキンソン病を発症するリスクがあると診断されている対象の組織におけるタウタンパク質含有凝集体の蓄積を、予防する、低減する、または回復に向かわせるために十分な量の前記キヌクリジン化合物を提供するために製剤化される。別の実施形態において、剤形は、パーキンソン病、レビー小体認知症またはアルツハイマー病、例えば、レビー小体認知症であると診断されている対象、またはそれらを発症するリスクがあると診断されている対象の組織におけるα-シヌクレイン含有凝集体の蓄積を、予防する、低減する、または回復に向かわせるために十分な量の前記キヌクリジン化合物を提供するために製剤化される。
【0174】
本発明の医薬組成物または剤形は、薬剤、ならびに他の担体、例えば、検出可能な薬剤、標識、補助剤、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝剤、塩、親油性の溶媒、保存剤、補助剤等のような、不活性もしくは活性な化合物または組成物を含有することができる。担体としては、薬学的な賦形剤および添加剤、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質および炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖およびオリゴ糖を含む、糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖等のような誘導体化された糖;ならびに、多糖またはポリマー糖)も挙げられ、これらは、単独でまたは組み合わせて存在することができ、単独または組み合わせて1~99.99重量%または体積%で含むことができる。代表的なタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)のような血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。代表的なアミノ酸/抗体成分は、緩衝能力においても機能することができ、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム等が挙げられる。炭水化物賦形剤も、本発明の範囲内にあることを意図しており、その例としては、限定されないが、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等のような単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等のような二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等のような多糖;ならびに、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールのようなアルジトールが挙げられる。
【0175】
使用することができる担体としては、緩衝剤またはpH調整剤が挙げられ;典型的には、緩衝剤は、有機酸または塩基から製造される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸もしくはフタル酸の塩のような有機酸塩;トリス、トロメタミン塩酸塩、またはリン酸緩衝剤が挙げられる。さらなる担体としては、ポリマー賦形剤/添加剤、例えば、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのようなシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、香味剤、抗菌剤、甘味剤、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」および「TWEEN80」のようなポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、およびキレート剤(例えば、EDTA)が挙げられる。
【0176】
本開示は、医薬組成物、および前記組成物を含むキットも提供し、これは、少なくとも1つの本明細書に記載のキヌクリジン化合物および少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な薬剤を含有する。これらの医薬組成物およびキットは、キヌクリジン化合物およびさ
らなる活性な薬剤を、同時に、連続して、および/または別々に投与することを可能にするように適合させることができる。例えば、キヌクリジン化合物およびさらなる活性な薬剤は、別々の剤形、例えば、別々の錠剤、カプセル剤、凍結乾燥剤もしくは液剤に製剤化することができ、またはそれらは、同じ剤形、例えば、同じ錠剤、カプセル剤、凍結乾燥剤もしくは液剤に製剤化することができる。キヌクリジン化合物およびさらなる活性な薬剤を同じ剤形に製剤化する場合、キヌクリジン化合物およびさらなる活性な薬剤は、例えば、錠剤のコア内に、混合物として実質的に存在することができ、または、それらは、例えば、同じ錠剤の別々の層に、剤形の別の領域に実質的に存在することができる。一実施形態において、医薬剤形は、タンパク質症、例えば、本明細書に記載のタンパク質症を、処置する、または予防することができるさらなる薬剤を含む。
【0177】
さらなる態様において、本発明は、(i)本明細書に記載のキヌクリジン化合物;(ii)さらなる活性な薬剤;および(iii)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、さらなる活性な薬剤は、タンパク質症、例えば、本明細書に記載のタンパク質症を、処置する、または予防することができる薬剤である。一実施形態において、さらなる活性な薬剤は、対象に経口的に投与される場合、タンパク質症を、処置する、または予防することができる。
【0178】
パーキンソン病のようなタンパク質症を処置することができるさらなる薬剤の例としては、例えば、ドーパミン前駆体(例えば、L-DOPA)、ドーパミン作動薬(例えば、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、プラミペキソールおよびアポモルヒネ)、MAO-B阻害薬(例えば、ラサギリンおよびセレギリン)、抗コリン薬(例えば、オルフェナドリン、プロシクリジンおよびトリヘキシフェニジル)、β-グルコセレブロシダーゼ活性の賦活薬(例えば、アンブロキソールおよびアフェゴスタット)およびアマンタジンが挙げられる。アルツハイマー病を処置することができる薬剤の例としては、例えば、タクリン、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、およびメマンチンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が挙げられる。
【0179】
一実施形態において、さらなる活性な薬剤は、シャペロンである。一実施形態において、シャペロンは、少なくとも部分的に、(タンパク質症において異常である)タンパク質の野生型の機能および/もしくは活性を、回復または増強することができる;安定な分子配座のタンパク質の形成を増強することができる;ERからの、別の細胞部位、例えば、天然の細胞部位へのタンパク質の輸送を誘発し、それによって、タンパク質のERに関連する分解を予防することができる;ならびに/または誤って折りたたまれたタンパク質の凝集を予防することができる。関連する実施形態において、シャペロンは、少なくとも部分的に、タンパク質の野生型の機能および/または活性を、回復または増強する。他の実施形態において、シャペロンは、細胞(例えば、タンパク質症、シヌクレイノパシー、タウオパシー等を患っている哺乳動物からの細胞)の残された活性を向上する。
【0180】
さらなる活性な薬剤は、例えば、検出可能な部分を含有することができる。検出可能な部分は、本技術分野において周知であり、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、物理学的、または化学的な手段によって検出することができる。代表的な部分としては、限定されないが、酵素、蛍光分子、粒子標識、高電子密度の試薬、放射標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはハプテン、または検出可能に作成されたタンパク質が挙げられる。さらなる活性な薬剤は、例えば、通常は、その薬剤の一部ではない、さらなる化学的および/または生物学的部分を含有することができる。これらの誘導体化された部分は、送達、溶解度、生物学的半減期、薬剤の吸収等を改善することができる。この部分は、薬剤の任意の望ましくない副作用等を低減または除去することもできる。これらの部分に関する概要は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第20版、Mack Publishing Co.、2000)(Pathanら
(2009)、Recent Patents on Drug Delivery &
Formulation、3:71~89も参照)に見出すことができる。薬剤は、部分と、共有結合的または非共有結合的に連結することができる。実施形態において、薬剤は、部分と、共有結合的に連結される。関連する実施形態において、部分の共有結合性の連結は、ポリヌクレオチド/ポリペプチドに対してN末端である。関連する実施形態において、部分の共有結合性の連結は、ポリヌクレオチド/ポリペプチドに対してC末端である。
【0181】
本明細書に記載の方法と組み合わせることができるタンパク質症のためのさらなる治療法としては、心理社会的介入、行動介入、回想療法、バリデーション療法、支持的精神療法、感覚間統合、認知再訓練、リハビリテーション、言語療法等が挙げられる。他の介入治療としては、手術、リハビリテーション、および食事管理が挙げられる。
【0182】
本開示のキヌクリジン化合物および医薬組成物は、動物またはヒトにおいて使用することができる。したがって、本開示の化合物は、経口、頬側、非経口(例えば、静脈内、筋肉内または皮下)、局所、直腸もしくは鼻腔内投与のための医薬組成物として、または吸入もしくはガス注入による投与に適した形態に製剤化することができる。特定の実施形態において、キヌクリジン化合物または医薬組成物は、例えば、非経口経路を介する全身的投与のために製剤化される。一実施形態において、キヌクリジン化合物または医薬組成物は、経口投与のために、例えば、固形の形態に製剤化される。このような投与様式、および適切な医薬組成物を製造するための方法は、例えば、Gibaldi’s Drug Delivery Systems in Pharmaceutical Care(第1版、American Society of Health-System Pharmacists、2007)に記載されている。
【0183】
医薬組成物は、その中の有効成分の、徐放、持続放出、または放出制御をもたらすように、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、所望の放出プロファイルをもたらすために割合を変えて使用して、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアに製剤化することができる。医薬組成物は、場合により、乳白剤を含有することもでき、例えば、腸溶性コーティングを使用することによって、場合により、遅らせる方法で、胃腸管の特定の部分において、有効成分のみを、または、有効成分を優先的に、放出する組成物にすることができる。包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。有効成分は、適切であれば、本技術分野において周知の、1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤(例えばRemington’sを参照)を用いて、マイクロカプセル化された形態にすることもできる。本開示の化合物は、当業者に周知の方法に従って、持続送達のために製剤化することができる。そのような製剤の例は、米国特許第3,119,742号明細書;米国特許第3,492,397号明細書;米国特許第3,538,214号明細書;米国特許第4,060,598号明細書;および米国特許第4,173,626号明細書に見出すことができる。
【0184】
経口投与のための固体の剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤等)において、有効成分は、1種またはそれ以上の薬学的に許容される、担体、賦形剤または希釈剤、例えば、クエン酸ナトリウム、もしくはリン酸二カルシウムおよび/または以下のいずれか:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、微結晶セルロース、リン酸カルシウムおよび/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロースおよび/またはアカシア;(3)保水剤、例えば、グリセリン;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウム;
(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリン;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ;(9)滑沢剤、例えば、タルク、シリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物;ならびに(10)着色剤と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合において、医薬組成物は、緩衝剤を含むこともできる。同様の種類の固形組成物は、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル剤における充填剤、および賦形剤、例えば、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、製造することもできる。
【0185】
錠剤は、場合により、1種またはそれ以上の付属成分とともに、圧縮または成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、および/または分散剤を使用して、製造することができる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤を用いて湿らせた粉末状有効成分の混合物を適切な機械で成形することによって作製することができる。錠剤、ならびに他の固形の剤形、例えば、糖衣剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、場合により、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、および本技術分野において周知の他のコーティングを用いて、得ること、または製造することができる。
【0186】
実施形態において、医薬組成物は、液体の形態で経口的に投与される。有効成分の経口投与のための液体の剤形としては、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。経口投与のための液体の調製物は、使用前に、水または他の適切な媒体を用いて構成するための乾燥製品として提供することができる。有効成分に加えて、液体の剤形は、本技術分野において通常使用される不活性希釈剤、例えば、水おまたは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有することができる。不活性希釈剤に加えて、液体の医薬組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、ならびに保存剤等のような補助剤を含有することができる。懸濁剤は、有効成分に加えて、懸濁化剤、例えば、限定されないが、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにこれらの混合物を含有することができる。適切な液体の調製物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは水素化された食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えばアーモンド油、油状のエステル、またはエチルアルコール);および/または保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、またはソルビン酸)を用いて、従来の手段によって製造することができる。有効成分は、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。
【0187】
頬側投与のために、本組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0188】
実施形態において、医薬組成物は、非経口的な手段、例えば、局所適用、経皮適用、注射等によって投与される。関連する実施形態において、医薬組成物は、注射、注入、また
は埋め込み(例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮下等)によって、非経口的に投与される。
【0189】
本開示の化合物は、従来のカテーテル法の技術を使用することを含む、注射による、または注入による、非経口的な投与のために製剤化することができる。注射のための製剤は、単位剤形、例えば、保存剤を加えて、アンプルまたは複数回投与量の容器で、提供することができる。本組成物は、油性もしくは水性媒体中の懸濁剤、液剤、または乳剤のような形態をとることができ、製剤化剤、例えば、当業者によって認識されている懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含有することができる。あるいは、有効成分は、使用前に、適切な媒体、例えば、滅菌発熱性物質除去蒸留水を用いて、再構成するための粉末の形態にすることができる。
【0190】
医薬組成物は、中枢神経系に直接投与することができる。したがって、ある実施形態において、本組成物は、血液脳関門を回避するように、中枢神経系に直接投与される。いくつかの実施形態において、本組成物は、直接的な脊髄注射によって投与することができる。実施形態において、本組成物は、くも膜下腔内注射によって投与される。いくつかの実施形態において、本組成物は、側脳室内注射によって投与する。実施形態において、本組成物は、大脳の側脳室内に投与される。実施形態において、本組成物は、大脳の両方の側脳室内に投与される。さらなる実施形態において、本組成物は、海馬内注射によって投与される。本組成物は、1回注射または複数回注射で投与することができる。他の実施形態において、本組成物は、複数の位置(例えば、中枢神経系の2つの部位)に投与される。
【0191】
医薬組成物は、無菌の注射剤の形態にすることができる。医薬組成物は、例えば、細菌保持フィルターを通すろ過により、または使用直前に、滅菌水、もしくはいくつかの他の滅菌注射用媒体に溶解することができる、無菌の固体の組成物の形態の滅菌剤を組み入れることにより、滅菌することができる。そのような粗生物を製造するために、有効成分は、非経口的に許容される液体媒体に、溶解または懸濁される。代表的な媒体および溶媒としては、限定されないが、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム、または適切な緩衝液の添加によって適切なpHに調節された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。医薬組成物は、1種またはそれ以上の保存剤、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチルまたはn-プロピルを含有することもできる。溶解性を改善するために、溶解増強剤もしくは可溶化剤を添加することができ、または溶媒は、プロピレングリコール等を10~60%w/w含有することができる。
【0192】
医薬組成物は、1種またはそれ以上の薬学的に許容される無菌の等張水溶液もしくは非水性溶液、分散剤、懸濁剤もしくはエマルジョン、または使用直前に無菌の注射用の溶液もしくは分散液に再構成することができる無菌の粉末を含有することができる。そのような医薬組成物は、抗酸化剤;緩衝液;静菌剤;製剤を、意図するレシピエントの血液と等張にする溶質;懸濁化剤;増粘剤;保存剤等を含有することができる。
【0193】
本発明の医薬組成物において使用することができる、適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射用の有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散剤の場合において必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。いくつかの実施形態において、有効成分の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射から化合物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水に難溶性の、結晶性またはアモルファス材料の液体の懸濁液の使用によって達成することができる。したがって、有効成分の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次に、これは、結晶サイズおよび結晶
形に依存することができる。あるいは、非経口投与された有効成分の遅れた吸収は、化合物を、油性の媒体に溶解または懸濁することによって、達成される。さらに、注射用の医薬形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような、吸収を遅らせる薬剤を含有させることによってもたらすことができる。
【0194】
非経口の放出制御組成物は、水性懸濁剤、マイクロスフェア剤、マイクロカプセル剤、磁性マイクロスフェア剤、油性液剤、油性懸濁剤、乳剤の形態にすることができ、または有効成分は、生体適合性の担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラント、または注入装置に組み入れることができる。マイクロスフェア剤および/またはマイクロカプセル剤の製造における使用のための材料としては、限定されないが、生分解性/生体内分解性のポリマー、例えば、ポリグラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)、およびポリ(乳酸)が挙げられる。非経口の放出制御製剤を製剤化する場合に使用することができる生体適合性の担体としては、デキストランのような炭水化物、アルブミンのようなタンパク質、リポタンパク質、または抗体が挙げられる。インプラントにおける使用のための材料は、非生分解性、例えば、ポリジメチルシロキサン、または生分解性、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)もしくはポリ(オルトエステル)等であることができる。
【0195】
局所投与のために、本開示の化合物は、軟膏剤またはクリーム剤として製剤化することができる。本開示の化合物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または保持注腸のような直腸組成物に製剤化することもできる。
【0196】
鼻腔内投与または吸入による投与のために、本開示の化合物は、患者によって押されたか、もしくはポンプされたポンプスプレー容器からの液剤もしくは懸濁剤の形態で、または適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを使用する、加圧容器もしくは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形式として、都合よく送達することができる。加圧されたエアロゾルの場合において、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって、測定することができる。加圧容器または噴霧器は、本開示の化合物の溶液または懸濁液を含有することができる。吸入剤または吸入器における使用のためのカプセル剤およびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、本開示の化合物、およびラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基材の混合粉末を含有して、製剤化することができる。
【0197】
一般に、本明細書に記載の薬剤および組成物は、対象におけるタンパク質症を処置または予防するための有効量または十分な量で投与される。典型的には、投与量は、例えば、年齢、健康状態、体重、性別、食事、投与の時間、および他の臨床的な因子に基づくこの範囲内で調節することができる。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0198】
タンパク質症の処置または予防のための平均的な成人のヒトに対する経口、非経口または頬側投与のための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の提案投与量は、約0.1mg~約2000mgである。ある実施形態において、提案投与量は、単位投与量当たりの有効成分が約0.2mg~約1000mgである。提案投与量の量にかかわらず、本化合物の投与は、例えば、1日あたり1~4回行うことができる。一実施形態において、経口投与のための投与量は、約0.5~約2000mg、例えば、約1~約750mgである。一実施形態において、中枢神経系への直接投与のための投与量は、約1μg~約1mg、例えば、約5μg~約0.5mg、または約10μg~約0.1mgである。平均的な成人のヒトにおいて、上記に示す状態の処置または予防のためのエアロゾル製剤は、エアロゾルのそれぞれ計量された投与量または「パフ(puff)」が、約1mg~約10g、
例えば、約2mg~約1gの本開示の化合物を含有するように、調節することができる。投与は、一日数回、例えば、2、3、4または8回、例えば、各回に1、2または3投与量を与えることができる。
【0199】
他の態様において、本発明は、治療における使用のための、例えば、本明細書に定義の方法における使用のための、本明細書に記載の剤形または医薬組成物を提供する。
【0200】
本明細書に一般的に記載してきたが、本発明をさらに説明するために、以下の非限定的な実施例を示す。
【実施例
【0201】
化学合成のための一般的手順
一般的手順A:トリホスゲンを用いるカルバメートの形成
室温のアミン塩酸塩(1当量)およびトリエチルアミン(3~4当量)のTHF中懸濁液(濃度約0.2M)に、トリホスゲン(0.35当量)を添加した。反応混合物を10分間撹拌し、少量のエーテル(1~2mL)を添加した。トリエチルアンモニウム塩をろ別して、澄明な、イソシアネートのTHF/エーテル中溶液を得た。
【0202】
室温のアルコール(1.5当量)のTHF中溶液(濃度約0.2M)に、NaH[60%、油状物](1.5当量)を添加した。反応混合物を15分間撹拌し、上記溶液(THF/エーテル中のイソシアネート)を滴下添加した。標準的なワークアップにおいて、反応物を、ブラインを用いてクエンチした。溶液を、EtOAcで抽出し、有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗製物をコンビフラッシュ(SiOカートリッジ、CHClおよびMeOH中の2NのNH)で精製して、対応するカルバメートを得た。
【0203】
一般的手順B:有機セリウムを用いるアルキル化
CeCl(4当量)のTHF中懸濁液(濃度約0.2M)を室温で1時間撹拌した。懸濁液を-78℃に冷却し、MeLi/エーテル[1.6M](4当量)を滴下添加した。有機セリウム錯体を、1時間かけて形成させ、ニトリル(1当量)のTHF中溶液(濃度2.0M)を滴下添加した。反応混合物を室温まで温め、18時間撹拌した。溶液を、0℃に冷却し、水(約1mL)を用いてクエンチし、続いて、沈殿が形成され、フラスコの底に沈殿するまで、50%の水酸化アンモニウムの水溶液(約3mL)を添加した。混合物を、セライトパッドを通してろ過し、濃縮した。粗製物を、HCl/ジオキサンの溶液[4.0M]で処理した。中間体のアリールプロパン-2-アミン塩酸塩を、エーテル中で粉砕し、次の工程でそのまま使用した。あるいは、粗製の遊離塩基のアミンを、コンビフラッシュ(SiOカートリッジ、CHClおよびMeOH中の2NのNH)で精製して、対応するアリールプロピルアミンを得た。
【0204】
一般的手順C:鈴木カップリング
アリールハライド(1当量)のDME/水[4:1]混合物中溶液(濃度約0.2M)に、ボロン酸(2当量)、パラジウム触媒(0.1~0.25当量)、および炭酸ナトリウム(2当量)を添加した。反応混合物を、150℃で25分超音波処理した。セライトプラグを通してろ過および濃縮後、粗生成物を、コンビフラッシュ(SiOカートリッジ、CHClおよびMeOH中の2NのNH)で精製して、対応するカップリング付加物を得た。
【0205】
代替法:アリールハライド(1当量)のトルエン/水[20:1]混合物中溶液(濃度約0.2M)に、ボロン酸(1.3~2.5当量)、パラジウム触媒(0.05~0.15当量)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.15~0.45当量)、およびリン酸カリ
ウム(5当量)を添加した。反応混合物を、150℃で25分超音波処理した。セライトプラグを通してろ過および濃縮後、粗生成物を、コンビフラッシュ(SiOカートリッジ、CHClおよびMeOH中の2NのNH)で精製して、対応するカップリング付加物を得た。
【0206】
一般的手順D:シクロプロパン化
-70℃で撹拌したアリールニトリル(1当量)およびTi(Oi-Pr)(1.7当量)の混合物に、EtMgBr[エーテル中3.0M](1.1当量)を滴下添加した。反応混合物を25℃まで温め、1時間撹拌した。上記混合物に、BF・Et0(3当量)を25℃で滴下添加した。添加後、混合物をさらに2時間撹拌し、次いで、HCl水溶液[2M]を用いてクエンチした。次いで、得られた溶液を、NaOH水溶液[2M]を添加することによって塩基性にした。有機物をエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせて、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc:10/1~1/1で溶出)によって精製して、対応する1-アリール-シクロプロパンアミンを得た。
【0207】
一般的手順E:鈴木条件を使用するビアリールカップリング
撹拌したアリールハライド成分(1当量)の5:1(v/v)ジオキサン/水中溶液(約0.15M)または5:1(v/v)N,N-ジメチルホルムアミド中溶液(約0.15M)に、アリールボロネートまたはアリールボロン酸成分(1~1.5当量)、炭酸ナトリウム(2~3当量)、および[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.05当量)を添加した。混合物を終夜加熱し(90℃)、次いで、セライトプラグを通してろ過した。セライトを酢酸エチルですすぎ、合わせたろ液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。残留物をシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0208】
一般的手順F:混成無水物を経て生成するイソシアネートを使用するカルバメートの形成/クルチウス転位の経路
撹拌したカルボン酸成分(1当量)のテトラヒドロフラン中溶液(約0.1M)に、トリエチルアミン(2当量)を添加した。反応物を、冷却し(0℃)、イソブチルクロロホルメート(1.5当量)で処理した。0℃で1時間後、アジ化ナトリウム(2当量)の水溶液(約1M)を添加し、反応物を室温まで温めた。終夜撹拌後、反応物を水で希釈して、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、炭酸水素ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。粗アシルアジドを、トルエンを用いる共蒸発によってさらに乾燥し、次いで、トルエン(約0.1M)に入れた。撹拌溶液を、2~2.5時間還流し、冷却し、アルコール成分(1.25~2当量)で処理した。反応物を、終夜加熱還流し、次いで、濃縮した。残留物を、酢酸エチルまたはクロロホルムのいずれかに入れて、炭酸ナトリウム水で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。粗生成物を、クロロホルム/メタノール(カルバメートより極性が低い)、またはクロロホルム/メタノール/アンモニア(カルバメートより極性が高い)の溶媒勾配を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【実施例1】
【0209】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(4’-フルオロビフェニル-3-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(化合物1)
一般的手順Cを使用して、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(3-ブロモフェニル)プロパン-2-イル]カルバメート(600mg、1.63mmol)、4-フルオロフェニルボロン酸(457mg、3.27mmol)および酢酸パラジウム(II)から、表題化合物を白色固体として得た(373mg;60%)。1H NMR
(400 MHz, CDCl3) δ 7.56 (s, 1H), 7.52 (dd, J = 5.4, 8.4 Hz, 2H), 7.42-7.38 (m,
3H), 7.12 (m, 2H), 5.18 (5, 1H), 4.62 (s, 1H), 2.66 (m, 6H), 1.72 (s, 6H), 2.01-0.83 (m, 5H) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 125.0, 124.0, 123.8, 116.0, 116.0, 71.3, 55.9, 55.5, 47.6, 46.7, 29.6, 25.6, 24.8, 19.8 ppm. 純度: 98.0% UPLCMS (210 nm); 保持時間0.95分; (M+1) 382.9. 元素分析: C23H27FN2O2・0.37(CHCl3)の計算値: C, 65.86; H, 6.47; N, 6.57. 実測値: C, 65.85; H, 6.69; N, 6.49.
【実施例2】
【0210】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物2)
撹拌した4-フルオロチオベンズアミド(8.94g、57.6mmol)のエタノール(70mL)中溶液に、エチル4-クロロアセトアセテート(7.8mL、58mmol)を添加した。反応物を、4時間加熱還流し、エチル4-クロロアセトアセテート(1.0mL、7.4mmol)の追加のアリコートで処理し、さらに3.5時間還流した。次いで、反応物を濃縮し、残留物を酢酸エチル(200mL)およびNaHCO水溶液(200mL)の間で分配した。有機層を、水層の逆抽出物(酢酸エチル、1×75mL)と合わせて、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)アセテートを、低融点のほぼ無色の固体として得た(13.58g、89%)。
【0211】
撹拌したエチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)アセテート(6.28g、23.7mmol)のDMF(50mL)中溶液に、水素化ナトリウム[60%鉱油中分散液](2.84g、71.0mmol)を添加した。泡状の混合物を、15分間撹拌し、氷浴中で冷却し、ヨードメタン(4.4mL、71mmol)を添加した。反応物を、冷却浴から室温までゆっくりと温めながら、終夜撹拌した。次いで、混合物を濃縮し、残留物を酢酸エチル(80mL)および水(200mL)の間で分配した。有機層を、第2の分割の水(1×200mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを無色油状物として得た(4.57g、66%)。
【0212】
撹拌したエチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエート(4.56g、15.5mmol)の1:1:1THF/エタノール/水(45mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(2.93g、69.8mmol)を添加した。反応物を、終夜撹拌し、濃縮し、水(175mL)に再溶解した。溶液を、エーテル(1×100mL)で洗浄し、1.0NのHCl(80mL)を添加して酸性化し、酢酸エチル(2×70mL)で抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸を、白色固体として得た(4.04g、98%)。この物質は精製することなく次の工程に使用した。
【0213】
撹拌し、冷却した(0℃)、2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸(4.02g、15.2mmol)のTHF(100mL)中溶液に、トリメチルアミン(4.2mL、30mmol)、続いて、イソブチルクロロホルメート(3.0mL、23mmol)を添加した。反応物を、さらに1時間、冷却して撹拌し、アジ化ナトリウム(1.98g、30.5mmol)の水(20mL)溶液を添加した。反応物を、冷却浴から室温までゆっくりと温めながら、終夜撹拌した。次いで、混合物を、水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。合わせた抽出物を、NaHCO水溶液(1×150mL)およびブライン(1×100mL
)で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。トルエン(2×50mL)を用いて共蒸発した後、得られた白色固体をトルエン(100mL)に入れ、4時間還流した。次いで、(S)-3-キヌクリジノール(3.87g、30.4mmol)を添加し、還流を終夜続けた。反応物を濃縮し、残留物を酢酸エチル(100mL)およびNaHCO水溶液(150mL)の間で分配した。有機層を、水(1×150mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られたオフホワイト固体を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(4.34g、73%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.96-7.88 (m, 2H), 7.16-7.04 (m, 3H), 5.55 (br s, 1H), 4.69-4.62 (m, 1H), 3.24-3.11 (m,
1H), 3.00-2.50 (m, 5H), 2.01-1.26 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 166.4, 165.1, 163.8 (d, J=250.3 Hz), 162.9, 155.0, 130.1 (d, J=3.3 Hz), 128.4 (d, J= 8.5 Hz), 115.9 (d, J= 22.3 Hz), 112.5, 71.2, 55.7, 54.2, 47.5, 46.5, 28.0, 25.5, 24.7, 19.6 ppm. 純度: 100 % UPLCMS (210 nmおよび254 nm); 保持時間0.83分; (M+1) 390.
【実施例3】
【0214】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物3)
一般的手順Eを使用して、エチル2-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートおよび4-(2-メトキシエトキシ)フェニルボロン酸を反応させ、エチル2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートをオフホワイト固体として製造した。撹拌したこの化合物(3.01g、8.78mmol)の1:1:1(v/v/v)テトラヒドロフラン/エタノール/水(45mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.47g、61.4mmol)を添加した。混合物を、終夜加熱還流し、次いで、濃縮した。残留物を、水に溶解し、1N塩酸(65mL)で処理し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固体として得た(2.75g、100%)。この中間体および(S)-キヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、表題化合物を、無色のガラス状固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.62-7.29 (m, 7H), 7.01 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 4.47-4.37 (m, 1H), 4.17-4.08 (m, 2H), 3.72-3.62 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.09-2.25 (m, 6H), 2.05-1.18 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 157.9, 154.5, 146.7, 137.4, 132.5, 127.5, 125.7, 125.2, 114.8, 70.4, 70.0, 66.9, 58.2, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. 純度: 100%, 100% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.87分; (M+H+) 439.5.
【実施例4】
【0215】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(ビフェニル-3-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(化合物4)
一般的手順Cを使用して、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(3-ブロモフェニル)プロパン-2-イル]カルバメート(600mg、1.63mmol)、フェニルボロン酸(398mg、3.27mmol)および酢酸パラジウム(II)から、表題化合物を白色固体として得た(379mg、64%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.61 (s, 1H), 7.56 (d, J= 7.4 Hz, 2H), 7.50-7.38 (m, 4H), 7.34 (m, 2H),
5.16 (s, 1H), 4.63 (s, 1H), 3.39-2.09 (m, 6H), 1.72 (s, 6H), 2.02-0.73 (m, 5H) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 154.8, 147.8, 141.6, 129.0, 129.0, 128.6, 127.5, 125.8, 125.0, 124.0, 71.6, 71.3, 55.9, 55.5, 47.6, 46.8, 31.5, 30.2, 30.0, 29.5, 25.6, 24.8, 19.8 ppm. 純度: 99% UPLCMS (210 nm); 保持時間0.84分; (M+1) 365.0.
元素分析: C23H28N2O2・0.29(CHCl3)の計算値: C, 70.02; H, 7.14; N, 7.01. 実測値:
C, 70.02; H, 7.37; N, 6.84.
【実施例5】
【0216】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(ビフェニル-4-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物5)
一般的手順Bを使用して、ブロモベンゾニトリル(2.00g、11.0mmol)を、対応する茶色油状物の2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミン(1.20g、51%)に変換した。
【0217】
一般的手順Aを使用して、2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミン(1.0g、4.7mmol)および(S)-キヌクリジン-3-オールから、(S)-キヌクリジン-3-イル2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-イルカルバメート(1.0g、58%)を茶色油状物として得た。
【0218】
一般的手順Cを使用して、上記ブロミド(200mg、0.540mmol)、フェニルボロン酸(133mg、1.10mmol)および[PdCl(pddf)]CHClから、表題化合物を白色固体として得た(70mg、35%)。1H NMR (500 MHz,
CDCl3) δ 7.60-7.53 (m, 4H), 7.47 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.42 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.33 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 5.26 (br s, 1H), 4.64 (m, 1H), 3.33-3.15 (m, 1H), 3.10-2.45 (m, 5H), 2.40-1.80 (m, 2H), 1.78-1.58 (m, 7H), 1.55-1.33 (m, 2H) ppm. 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ154.5, 146.1, 140.8, 139.5, 128.7, 127.2, 127.1, 127.1,
125.2, 70.9, 55.5, 55.1, 47.4, 46.4, 31.1, 29.5, 25.3, 24.5, 19.5 ppm. 純度: 100 % LCMS (214 nmおよび254 nm); 保持時間1.56分; (M+1) 365.
【実施例6】
【0219】
キヌクリジン-3-イル1-(ビフェニル-4-イル)シクロプロピルカルバメート(化合物6)
一般的手順Dを使用して、ブロモベンゾニトリル(3.00g、16.5mmol)を、対応する黄色固体の1-(4-ブロモフェニル)シクロプロパンアミン(1.80g、51%)に変換した。
【0220】
一般的手順Aを使用して、1-(4-ブロモフェニル)シクロプロパンアミン(1.0g、4.7mmol)およびキヌクリジン-3-オールから、キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピル-カルバメート(1.3g、75%)を白色の半固体として得た。
【0221】
一般的手順Cを使用して、上記カルバメート(400mg、1.12mmol)、フェニルボロン酸(267mg、2.22mmol)および[PdCl(pddf)]CHClから、表題化合物を粘性の油状物として得た(100mg、25%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.47 (d, J= 7.5 Hz, 2H), 7.43 (d, J= 8.0 Hz, 2H), 7.33 (t, J=
7.5 Hz, 2H), 7.26-7.15 (m, 3H), 5.93 (br s, 0.6H), 5.89 (br s, 0.4H), 4.67 (m, 1H), 3.20-3.06 (m, 1H), 2.88-2.42 (m, 5H), 1.98-1.08 (m, 9H) ppm. 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 155.0, 141.0, 139.7, 138.2, 127.7, 126.1, 126.0, 124.8, 124.1, 70.0, 54.5, 46.3, 45.4, 34.1, 24.3, 23.2, 18.3, 17.0 ppm. 純度: 100 % LCMC (214 nm
および254 nm); 保持時間1.52分; (M+1) 363.
【実施例7】
【0222】
(S)-キヌクリジン-3-イル1-(4’-フルオロビフェニル-4-イル)シクロプロピルカルバメート(化合物7)
一般的手順Cを使用して、(S)-キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル
)シクロプロピルカルバメート、4-F-フェニルボロン酸および[PdCl(pddf)]CHClから、表題化合物を白色固体として得た(45%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.06-7.83 (d, 1H), 7.69-7.66 (m, 2H), 7.59-7.55 (m, 2H), 7.29-7.22 (m, 4H), 4.56-4.54 (m, 1H), 3.13-2.32 (m, 6H), 1.91-1.19 (m, 9H) ppm. 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 163.2, 161.2, 156.4, 143.7, 136.9, 128.9, 128.8, 126.8, 125.6, 116.2, 116.0, 70.7, 55.8, 47.4, 46.4, 34.8, 25.7, 24.6, 19.6, 18.7, 18.6 ppm. 純度: > 97 % LCMS (214 nmおよび254 nm); 保持時間1.96分; (M+1) 381.2.
【実施例8】
【0223】
(S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[1-(2’,4’-ジフルオロビフェニル-4-イル)シクロプロピル]カルバメート(化合物8)
一般的手順Cを使用して、(S)-キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピルカルバメート(0.446g、1.22mmol)、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(0.386g、2.44mmol)およびPd(OAc)(0.015g、0.067mmol)から、表題化合物を褐色固体として得た(0.111g、23%)。1H NMR (CDCl3) δ 7.43 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 2H), 7.40-7.33 (m, 1H),
7.31 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 6.99-6.81 (m, 2H), 5.54 (d, J = 48.0 Hz, 1H), 4.82-4.65 (m, 1H), 3.30-3.07 (m, 1H), 2.98-2.44 (m, 5H), 1.97 (d, J = 32.7 Hz, 1H), 1.83 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 1.64 (s, 1H), 1.52 (s, 1H), 1.39 (s, 1H), 1.31 (d, J = 6.8 Hz, 4H) ppm. 13C NMR 主な回転異性体 (CDCl3) δ 162.2 (dd, J = 12.8, 249.1 Hz), 159.8 (dd, J = 11.8, 251.0 Hz), 156.9, 156.0, 142.6, 133.1, 131.3 (m), 128.9, 125.6, 124.9, 111.5 (dd, J = 3.9, 21.2 Hz) 104.4 (dd, J = 25.2, 29.4 Hz), 72.1, 71.6, 55.7, 47.4, 46.5, 35.7, 35.3, 25.5, 24.6, 24.4, 19.5, 18.1 ppm. 純度: LCMS
> 99.3 % (214 nmおよび254 nm); 保持時間0.90分; (M+1) 399.0.
【実施例9】
【0224】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[1-(4’-メトキシビフェニル-4-イル)シクロプロピル]カルバメート(化合物9)
一般的手順Cを使用して、キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピルカルバメート(0.485g、1.33mmol)、4-メトキシフェニルボロン酸(0.404g、2.66mmol)およびPd(OAc)(0.016g、0.071mmol)から、表題化合物を灰色固体として得た(0.337mg、65%)。1H NMR (CDCl3) δ 7.48 (dd, J = 8.6, 5.5 Hz, 4H), 7.29 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.96
(d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.58 (d, J = 48.7 Hz, 1H), 4.83-4.63 (m, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.20 (dd, J = 24.0, 15.5 Hz, 1H), 2.97-2.42 (m, 5H), 1.97 (d, J = 30.9 Hz, 1H), 1.81 (s, 1H), 1.75-1.33 (m, 3H), 1.28 (d, J = 6.8 Hz, 4H) ppm. 13C NMR 主な回
転異性体 (CDCl3) δ159.1, 156.0, 141.4, 139.0, 133.4, 128.0, 126.7, 125.9, 114.2, 71.5, 55.7, 55.3, 47.4, 46.5, 35.3, 25.5, 24.6, 19.6, 17.8 ppm. 純度: LCMS >97.1 % (214 nmおよび254 nm); 保持時間0.88分; (M+1) 393.4.
【実施例10】
【0225】
キヌクリジン-3-イル2-(5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-3-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物10)
撹拌し、冷却した(0℃)、エチル5-ブロモチオフェン-3-カルボキシレート(13.30g、56.57mmol)のTHF(100mL)中溶液に、メチルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル中溶液[3.0M](55.0mL、165mmol)を、20分間かけて滴下添加した。2時間後、反応溶液を濃縮した。残留物を、NHCl水溶液(200mL)に入れ、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2-(5-ブロモ
チオフェン-3-イル)プロパン-2-オールを淡琥珀色油状物として得た(8.05g、64%)。
【0226】
撹拌した2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-オール(8.03g、36.3mmol)の塩化メチレン(80mL)中溶液に、アジ化ナトリウム(7.08g、109mmol)、続いて、トリフルオロ酢酸(8.0mL;5~6分かけて滴下)を添加した。濃厚な懸濁液を、1.5時間撹拌し、水(350mL)で希釈し、酢酸エチル(1×200mL)で抽出した。有機層を、NaHCO水溶液(1×250mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮して、粗アジド生成物を得た。撹拌したこの物質のTHF(160mL)中溶液に、水(11mL)、続いて、トリフェニルホスフィン(23.8g、90.7mmol)を添加した。反応物を2日間撹拌し、濃縮した。得られた残留物を、酢酸エチル(250mL)に溶解し、1NのHCl水溶液(4×75mL)で抽出した。合わせた抽出物を、濃NHOHを用いて塩基性化し、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。次に、これらの抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、塩化メチレン/メタノール/アンモニア勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-アミンおよびトリフェニルホスフィンオキシドの混合物(比率:約70/30)を、粘性の琥珀色油状物として得た(1.32g、17%)。
【0227】
撹拌した3-キヌクリジノール(3.00g、23.6mmol)のTHF(100mL)中溶液に、4-ニトロフェニルクロロホルメート(5.94g、29.5)を添加した。4時間撹拌後、沈殿物をろ別し、THFですすぎ、ハウス真空下、フリット上で風乾した。ろ過ケーキを、酢酸エチル(150mL)に溶解し、NaHCO水溶液(1×150mL)および水(2×150mL)で洗浄した。有機層を、脱水し(NaSO)、濃縮して、粗4-ニトロフェニルキヌクリジン-3-イルカーボネート生成物を得て、これは、精製することなく次の工程に使用した。
【0228】
撹拌した2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-アミン(0.366g、1.66mmol)のTHF(10mL)中溶液に、4-ニトロフェニルキヌクリジン-3-イルカーボネート(0.571g、1.95mmol)および数粒の粒状4-(ジメチルアミノ)ピリジンを添加した。混合物を、終夜還流し、濃縮し、酢酸エチル(50mL)およびNaHCO水溶液(50mL)の間で分配した。有機層を、NaHCO水溶液(1×50mL)で再び洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた暗黄色のガム状物を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、キヌクリジン-3-イル(1-(5-ブロモチオフェン-3-イル)シクロプロピル)カルバメートをオフホワイト固体として得た(0.305g、49%)。
【0229】
一般的手順Cを使用して、キヌクリジン-3-イル(1-(5-ブロモチオフェン-3-イル)シクロプロピル)カルバメート(0.227g、0.742mmol)、4-フルオロフェニルボロン酸(0.208g、1.49mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.021g、0.075mmol)、リン酸カリウム(0.866、4.08mmol)および酢酸パラジウム(8.0mg、36μmol)から、表題化合物を灰色固体として得た(0.142g、49%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.60-7.45 (m,
2H), 7.24-7.19 (m, 1H), 7.10-6.97 (m, 3H), 5.23 (br s, 1H), 4.72-4.61 (m, 1H), 3.30-3.04 (m, 1H), 3.03-2.25 (m, 5H), 2.09-1.02 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 162.3 (d, J = 247.1 Hz), 154.5, 149.8, 143.6, 130.7, 127.4 (d, J = 8.1
Hz), 121.8, 118.9, 115.8 (d, J = 21.6 Hz), 70.8, 55.5, 53.4, 47.3, 46.4, 29.0, 25.4, 24.4, 19.4 ppm. 純度: 95.8 % UPLCMS (210 nmおよび254 nm); 保持時間0.90分; (M+1) 389.
【実施例11】
【0230】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(3-(4-フルオロフェニル)イソチアゾール-5-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物11)
撹拌した2-(3-(4-フルオロフェニル)イソチアゾール-5-イル)プロパン-2-アミン(1.21g、5.12mmol)のトルエン中溶液に、ホスゲンのトルエン中溶液[約1.9M](10.8mL、20.5mmol)を添加した。反応物を、2時間加熱還流し、次いで、濃縮した。残留物を、トルエン(2×15mL)を用いて共蒸発して、粗イソシアネート中間体を、金色油状物として得た。この物質を、トルエン(10mL)に入れ、(S)-3-キヌクリジノール(0.749g、5.89mmol)で処理した。反応物を、終夜加熱還流し、濃縮した。残留物を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(0.971g、49%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.09-8.00 (m, 2H), 7.87 (br s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.35-7.25 (m, 2H), 4.54-4.45 (m, 1H), 3.14-2.92 (m, 1H), 2.87-2.17 (m, 5H), 1.98-0.98 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 180.1, 165.6, 162.6 (d, J = 246.4 Hz), 154.7, 131.2 (d, J = 3.0 Hz), 128.7 (d, J = 8.4 Hz), 118.2, 115.7 (d, J = 21.8 Hz), 70.6, 55.3, 52.8, 46.9, 45.9, 29.9, 25.2, 24.2, 19.2 ppm. 純度: 100 % UPLCMS (210 nmおよび254 nm); 保
持時間0.82分; (M+1) 390.
【実施例12】
【0231】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物12)
撹拌したエチル3-アミノ-3-チオキソプロパノエート(20.00g、135.9mmol)のエタノール(120mL)中溶液に、2-ブロモ-4’-フルオロアセトフェノン(29.49g、135.9mmol)を添加した。混合物を、1時間還流し、濃縮し、酢酸エチル(300mL)およびNaHCO水溶液(400mL)の間で分配した。有機層を、水層の逆抽出物(酢酸エチル、1×100mL)と合わせ、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた薄茶色固体を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)アセテートをオフホワイト固体として得た(29.92g、83%)。
【0232】
撹拌し、冷却した(-78℃)、エチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)アセテート(10.00g、37.69mmol)のTHF(250mL)中溶液に、カリウムt-ブトキシドのTHF中溶液[1.0M](136mL、136mmol)を、15分かけて滴下添加し、続いて、18-クラウン-6(1.6mL、7.5mmol)を添加した。-78℃でさらに30分後、ヨードメタン(8.5mL)を、5分かけて滴下添加した。反応物を、さらに2時間冷却撹拌し、水(450mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を、ブライン(1×200mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。得られた茶色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパノエートを淡琥珀色油状物として得た(8.64g、78%)。
【0233】
撹拌したエチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパノエート(0.900g、3.07mmol)の1:1:1 THF/エタノール/水(15mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.451g、10.7mmol)を添加した。終夜撹拌後、反応物を、濃縮し、水(80mL)に再溶解した。溶液を、エーテル(1×50mL)で洗浄し、1NのHCl(15mL)を添加して酸性化し
、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパン酸を淡金色固体として得た(0.808g、99%)。
【0234】
撹拌し、冷却した(0℃)、2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパン酸(0.784g、2.96mmol)のTHF(25mL)中溶液に、トリエチルアミン(0.82mL、5.9mmol)、続いて、イソブチルクロロホルメート(0.58mL、4.4mmol)を添加した。反応物を、さらに1時間冷却撹拌し、アジ化ナトリウム(0.385g、5.92mmol)の水(7mL)溶液を添加した。反応物を、冷却浴から室温までゆっくりと温めながら、終夜撹拌した。次いで、混合物を、水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。合わせた抽出物を、NaHCO水溶液(1×150mL)およびブライン(1×100mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。トルエン(2×30mL)を用いて共蒸発後、得られたオフホワイト固体を、トルエン(25mL)に入れ、4時間還流した。次いで、(S)-3-キヌクリジノール(0.753g、5.92mmol)を添加し、還流を3時間続けた。反応物を濃縮し、残留物をクロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(0.793g、69%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.90-7.81 (m, 2H), 7.32 (s, 1H), 7.14-7.05 (m, 2H), 5.76 (br s, 1H), 4.72-4.65 (m, 1H), 3.26-3.10 (m, 1H), 3.03-2.37 (m, 5H), 2.05-1.23 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 177.6, 162.6 (d, J = 248.4 Hz), 154.8, 153.6, 130.8 (d, J = 3.2 Hz), 128.1 (d, J = 8.1 Hz), 115.9 (d, J = 21.7 Hz), 112.2, 71.6, 55.7, 47.4, 46.5, 29.1, 25.4, 24.7, 19.6 ppm. 純度: 100 % UPLCMS (210 nmおよび254 nm); 保持時間0.82分; (M+1)
390.
【実施例13】
【0235】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物13)
一般的手順Fを使用して、2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸(実施例3に記載のようにして製造)およびキヌクリジン-3-オールを反応させて、表題化合物を無色のガラス状固体として得た(23%)。NMRデータは実施例3のものと一致した。純度:100%、99.1%(210および254nm)UPLCMS;保持時間:0.87分;(M+H)439.0。
【実施例14】
【0236】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(3’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物14)
4-(2-メトキシエトキシ)フェニルボロン酸を3-(2-メトキシエトキシ)フェニルボロン酸に代えて、実施例3に概要を述べた反応順序を使用して、2-(3’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を製造した。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、表題化合物をガラス状の無色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.63-7.31 (m, 6H), 7.24-7.10 (m, 2H), 6.92 (dd, J = 8.2, 1.9 Hz, 1H), 4.51-4.34 (m, 1H), 4.21-4.08 (m, 2H), 3.72-3.64 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.09-2.26 (m, 5H), 2.04-1.22 (m, 9H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 158.9, 154.6, 147.6, 141.5, 137.6, 129.9, 126.3, 125.2, 118.9, 113.2, 112.5, 70.4, 70.0, 66.9, 58.2, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. 純度: 100%, 100% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.91分; 15 (M+H+) 439.4.
【実施例15】
【0237】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物15)
エチル2-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートをエチル2-(3-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートに代えて、実施例3に概要を述べた反応順序を使用して、2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-メチルプロパン酸を製造した。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、表題化合物を黄色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.62-7.20 (m, 7H), 7.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.48-4.35 (m, 2H),
4.18-4.08 (m, 2H), 3.72-3.62 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.10-2.19 (m, 6H), 2.10-1.10 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 158.0, 154.6, 148.8, 139.5, 133.1,
128.5, 127.7, 123.8, 123.2, 122.7, 114.8, 70.4, 69.9, 67.0, 58.2, 55.3, 54.5, 47.0, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. 純度: 97.4%, 94.6% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.88分; (M+H+) 439.3.
【実施例16】
【0238】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(3-メトキシプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物16)
撹拌した4-ヨードフェノール(10.05g、45.68mmol)のアセトニトリル(100mL)中溶液に、炭酸カリウム(6.95g、50.2mmol)および1-クロロ-3-メトキシプロパン(6.4mL、57.1mmol)を添加した。混合物を、終夜加熱還流し、次いで、濃縮した。残留物を、水に入れ、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。粗製物を、ヘキサン/酢酸エチル溶離剤を使用して、シリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、1-ヨード-4-(3-メトキシプロポキシ)ベンゼンを無色油状物として得た(4.39g、33%)。この中間体およびエチル2-メチル-2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)プロパノエートを、一般的手順Eに従って反応させて、エチル2-(4’-(3-メトキシプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを得た。撹拌したこの化合物(0.693g、1.94mmol)の1:1:1(v/v/v)テトラヒドロフラン/エタノール/水(10mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.326g、7.77mmol)を添加した。混合物を、終夜加熱還流し、次いで、濃縮した。残留物を、水に溶解し、1N塩酸(10mL)で処理し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(4’-(3-メトキシプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を、ワックス状のオフホワイト固体として得た(0.630g、99%)。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、表題化合物をガラス状の無色固体として得た(62%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.61-7.29 (m, 7H), 7.00 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 4.47-4.36 (m, 1H), 4.05 (t, J= 6.4 Hz, 2H), 3.48 (t, J=6.3 Hz, 2H), 3.26 (s, 3H), 3.10-2.25 (m, 6H), 2.04-1.74 (m, 4H), 1.65-1.23 (m, 9H) ppm.13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 158.0, 154.5, 146.7, 137.4, 132.4, 127.5, 125.7, 125.2, 114.8, 69.9, 68.5, 64.6, 57.9, 55.4, 54.2, 46.9, 46.0, 29.4, 29.0, 25.2, 24.1, 19.2 ppm. 純度: 97.7%, 98.2% (210および254
nm) UPLCMS; 保持時間: 0.96分; (M+H+) 453.5.
【実施例17】
【0239】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(ヒドロキシメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物17)
一般的手順Eを使用して、エチル2-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートおよび4-ホルミルフェニルボロン酸を反応させて、エチル2-(4’-ホルミル-
[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを、淡琥珀色固体として製造した。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-ホルミル-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートを、泡状の黄色固体として得た。撹拌したこの物質(0.755g、1.92mmol)の2:1(v/v)テトラヒドロフラン/エタノール(15mL)中溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.073g、1.93mmol)を添加した。45分後、反応物を、水で希釈し、クロロホルムで抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、シリカ上で濃縮した。クロロホルム/メタノール/アンモニア溶離剤を使用する、シリカのフラッシュクロマトグラフィーにより、表題化合物を白色固体として得た(0.323g、43%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.66-7.29 (m, 9H), 5.18 (t, J= 5.7 Hz, 1H), 4.53 (d, J= 5.7 Hz, 2H), 4.46-4.37 (m, 1H), 3.11-2.19 (m, 6H), 2.11-1.10 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6)
δ 154.7, 147.3, 141.5, 138.4, 137.7, 127.0, 126.2, 126.1, 125.3, 70.0, 62.6, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. 純度: 97.5%, 99.1 % (210およ
び254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.73分; (M+H+) 395.
【実施例18】
【0240】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-ヒドロキシエチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物18)
一般的手順Eを使用して、1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)-4-ブロモベンゼンおよびエチル2-メチル-2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)プロパノエートを反応させて、エチル2-(4’-(2-(ベンジルオキシ)エチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを無色のガム状物として製造した。撹拌したこの化合物(1.34g、3.33mmol)の1:1:1(v/v/v)テトラヒドロフラン/エタノール/水(18mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.698g、16.6mmol)を添加した。終夜加熱還流後、反応物を、濃縮し、水およびジエチルエーテルの間で分配した。得られたエマルジョンを、0.2N水酸化ナトリウム水溶液(5×50mL)で繰り返し抽出した。澄明な水層部分を、各回で取り出した。次いで、合わせた水層を、1.0N塩酸(80mL)で処理し、得られた白色固体の懸濁液を、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(4’-(2-(ベンジルオキシ)エチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固体として得た(1.20g、96%)。この化合物およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-ベンジルオキシエチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートを得た。撹拌したこの物質(0.435g、0.806mmol)のメタノール溶液に、1.0N塩酸(1mL)および10%パラジウム炭素(50%水;0.087g)を添加した。混合物を、真空および窒素パージのサイクルを数回繰り返し、最後の除去後に水素を充填した。1.25時間後、反応物を、セライトを通してろ過し、濃縮した。残留物を、炭酸ナトリウム水溶液に入れ、4:1(v/v)のクロロホルム/イソプロパノールで抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、シリカ上で濃縮した。クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用する、シリカのフラッシュクロマトグラフィーにより、精製された表題化合物を無色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.85-7.63 (m, 1H), 7.63-7.19 (m, 8H), 4.78-4.62 (m, 2H), 3.71-2.78 (m, 8H), 2.76 (t, J= 6.8 Hz, 2H), 2.26-1.96 (m, 2H), 1.96-1.40 (m, 9H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 153.8, 146.8, 138.7, 137.9, 137.6, 129.4, 126.3, 126.1, 125.3, 66.2, 62.1, 54.4, 52.8, 45.4, 44.5, 38.6, 29.5, 29.2, 24.0, 19.9, 16.6 ppm.
純度: 100%, 100% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.75分; (M+H+) 409.
【実施例19】
【0241】
キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-(3-メトキシプロポキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物19)
撹拌した4-メトキシチオベンズアミド(9.99g、59.7mmol)のエタノール(75mL)中懸濁液に、エチル4-クロロアセトアセテート(8.1mL、60mmol)を添加した。混合物を、4時間加熱還流し、冷却し、追加のエチル4-クロロアセトアセテート(0.81mL、6.0mmol)を添加し、還流に戻した。さらに4時間の加熱後、反応物を、濃縮し、酢酸エチルおよび炭酸水素ナトリウム水溶液の間で分配した。有機層を、さらなる酢酸エチル抽出物と合わせ、脱水し(NaSO)、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-メトキシフェニル)チアゾール-4-イル)アセテートを、淡琥珀色油状物として得た(14.51g、87%)。撹拌したこの化合物(14.48g、52.2mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(125mL)中溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液;6.27g、157mmol)を、15分かけて分割添加した。得られた赤色の懸濁液を、冷却し(0℃)、10分かけて滴下したヨードメタン(9.80mL、157mmol)で処理した。冷却浴を外して、反応物を4時間撹拌し、濃縮し、残留物を酢酸エチルおよび水の間で分配した。有機層を、水でさらに2回洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。残留物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-メトキシフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを淡琥珀色油状物として得た(14.12g、89%)。撹拌したこの中間体(14.12g、46.24mmol)の塩化メチレン(250mL)中溶液に、三臭化ホウ素(11.0mL、116mmol)を、5分かけて滴下添加した。終夜撹拌後、反応物を、メタノール(約20mL)をゆっくり添加することによってクエンチし、次いで、濃縮した。残留物を、メタノール(250mL)および濃硫酸(7.0mL)に入れた。撹拌溶液を、2時間加熱還流し、濃縮し、酢酸エチルおよび炭酸水素ナトリウム水溶液の間で分配した。有機層を、2回目の水層の酢酸エチル抽出物と合わせ、脱水し(NaSO)、濃縮して、メチル2-(2-(4-ヒドロキシフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを白色固体(12.56g、98%)として得た。撹拌した1-ブロモ-3-メトキシプロパン(1.66g、10.8mmol)のアセトン(30mL)中溶液に、フェノール中間体(2.00g、7.21mmol)および炭酸カリウム(1.25g、9.04mmol)を添加した。混合物を、終夜加熱還流し、ろ過し、濃縮した。残留物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、メチル2-(2-(4-(3-メトキシプロポキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートをかすかな琥珀色のガム状物として得た(2.47g、98%)。撹拌したこの化合物(2.45g、7.01mmol)の1:1:1(v/v/v)テトラヒドロフラン/エタノール/水(45mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.47g、35.0mmol)を添加した。終夜撹拌後、反応物を、濃縮し、水およびジエチルエーテルの間で分配した。水層を1.0N塩酸(40mL)で処理し、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(2-(4-(3-メトキシプロポキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固体として得た(2.19g、40 93%)。この化合物およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、表題化合物を軟らかいかすかな琥珀色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.82 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.36 (br s, 1H), 7.24 (br s, 1H), 7.03 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 4.49-4.41 (m, 1H), 4.07 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.48 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.26 (s, 3H), 3.09-2.26 (m, 6H), 2.02-1.91 (m, 2H), 1.91-1.03 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ165.8, 162.4, 160.0, 154.6, 127.5, 126.1, 114.9, 112.1, 70.1,
68.4, 64.8, 57.9, 55.4, 53.5, 46.9, 45.9, 28.9, 28.3, 25.2, 24.2, 19.2 ppm. 純
度: 100%, 100% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.87分; (M+H+) 460.
【実施例20】
【0242】
キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物20)
撹拌した2-ブロモエチルメチルエーテル(1.88g、13.5mmol)のアセトン中溶液に、メチル2-(2-(4-ヒドロキシフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエート(実施例19に記載のようにして製造、2.00g、7.21mmol)および炭酸カリウム(1.56g、11.3mmol)を添加した。終夜加熱還流後、混合物を、追加の2-ブロモエチルメチルエーテル(1.88g、13.5mmol)および炭酸カリウム(1.56g、11.3mmol)で処理した。反応物を、2晩目も加熱還流し、ろ過し、濃縮した。残留物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、メチル2-(2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを白色固体として得た(2.71g、90%)。撹拌したこの化合物(2.71g、8.08mmol)の1:1:1(v/v/v)テトラヒドロフラン/エタノール/水(50mL)中溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.70g、40.5mmol)を添加した。終夜撹拌後、反応物を、濃縮し、水およびジエチルエーテルの間で分配した。水層を、1.0N塩酸(41mL)で処理し、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮して、2-(2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固体として得た(2.57g、99%)。この化合物およびキヌクリジン-3-オールを、一般的手順Fに従って反応させて、表題化合物を淡琥珀色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.82 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.36 (br s, 1H), 7.24 (br s, 1H), 7.04 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.49-4.41 (m, 1H), 4.19-4.12 (m, 2H), 3.71-3.65 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.11-2.87 (m, 1H), 2.86-2.19 (m, 5H), 1.92-1.16 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ165.7, 162.9, 159.9, 154.6, 127.5, 126.2, 114.9, 112.2, 70.3, 70.1, 67.1, 58.2, 55.4, 53.5, 46.9, 45.9, 28.3, 25.2, 24.3, 19.2 ppm. 純度: 100%, 100% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.85分; (M+H+) 446.
【実施例21】
【0243】
キヌクリジン-3-イル2-(5-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピリジン-2-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物21)
一般的手順Eを使用して、5-ブロモピコリノニトリルおよび2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを反応させて、5-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピコリノニトリルを製造した。三塩化セリウム(8.05g、21.6mmol)をフラスコに仕込み、真空下、3時間、加熱(170℃)することによって乾燥した。固体を、テトラヒドロフラン(20mL)に入れ、30分間激しく撹拌した。懸濁液を、-78℃に冷却し、滴下した3.0Mのメチルリチウムのジエチルエーテル溶液(7.2mL、21.6mmol)で処理した。添加に続いて、反応物を、-78℃で1時間撹拌し、上記アリールボレート(1.83g、7.20mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を添加した。混合物を、-78℃で2時間維持し、次いで、室温まで温めた。この時点で、反応物を、水酸化アンモニウム水(10mL)を添加することによってクエンチし、セライトプラグを通してろ過した。ろ液を、酢酸エチルで抽出し、合わせた抽出物を、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。残留物を、酢酸エチル溶離剤を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2-(5-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピリジン-2-イル)プロパン-2-アミンを黄色固体として得た(0.800g、39%)。撹拌したこの中間体(0.500g、1.75mmol)の水(10mL)および濃塩酸(0.44mL)中懸濁液に、トルエン(10mL)を添加した。混合物を、冷却し(0℃)、1時間かけて、トリホスゲン(0.776g、2.62mmol)のトルエン(10mL)中溶液、および炭酸水素ナトリウム(2.2g、26mmo
l)の水(20mL)溶液で、同時に処理した。添加に続いて、反応物を、さらに30分間撹拌し、トルエンの上層を取り出して、脱水(NaSO)した。同時に、撹拌したキヌクリジン-3-オール(0.445g、3.64mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)中溶液を、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液;0.154g、3.85mmol)で処理した。この混合物を5分間撹拌し、次いで、粗イソシアネートのトルエン中溶液に添加した。反応物を10分間撹拌し、ブライン(5mL)を添加してクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮した。残留物を、逆相のシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を、薄黄色固体として得た(0.100g、13%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.70-8.70 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.83-7.81 (m, 1H), 7.49-7.47 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.45-7.43 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.03-7.01 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.63 (br s, 1H), 4.68-4.66 (m, 1H), 4.16 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.77 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.45 (s, 3H), 3.19-2.70 (m, 6H), 2.15-1.89 (m, 2H), 1.76 (s, 6H), 1.73-1.36 (m, 3H) ppm. 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 162.7, 158.9, 154.9, 145.9, 134.8, 134.3, 130.1, 128.1, 119.2, 115.2, 71.0, 70.8, 67.4, 59.2, 55.9, 55.7, 47.4, 46.5, 46.4, 27.9, 25.4, 24.6, 19.5 ppm. 純度: >99% (214および254 nm) LCMS; 保持時間: 1.32分; (M+H+) 440.2.
【実施例22】
【0244】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(3-シアノプロピル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物22)
撹拌した4-ブロモフェノール(17.1g、98.8mmol)のアセトニトリル(150mL)中溶液に、1-ブロモブチルニトリル(12.3mL、124mmol)および炭酸カリウム(15.0g、109mmol)を添加した。混合物を、終夜加熱還流し、冷却し、濃縮した。残留物を、水に入れ、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、脱水し(NaSO)、濃縮し、粗製物を、ヘキサン/酢酸エチル溶離剤を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4-(4-ブロモフェノキシ)ブタンニトリルを白色固体として得た(20.8g、88%)。撹拌したこの生成物のN,N-ジメチルホルムアミド(100mL)中溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(4.60g、18.1mmol)、酢酸カリウム(7.41g、75.5mmol)および[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-ジクロロパラジウム(II)錯体を、ジクロロメタン(0.616g、1.04mmol)と共に添加した。混合物を、終夜加熱還流し、次いで、濃縮した。残留物を、酢酸エチルに入れ、水およびブラインで洗浄した。有機層を、脱水し(NaSO)、濃縮し、粗生成物を、ヘキサン/酢酸エチル溶離剤を使用するシリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)ブタンニトリルを白色固体として得た(3.43g、79%)。この生成物およびキヌクリジン-3-イル(2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-イル)カルバメート(キヌクリジン-3-オールおよび2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミンを、一般的手順Fを使用して、反応させることによって製造)を、一般的手順Eに従って反応させて、表題化合物を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.67-7.26 (m, 7H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.50-4.33 (m, 1H), 4.08 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.14-2.18 (m, 8H), 2.04 (五重線, J = 6.7 Hz, 2H), 1.94-1.70 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 157.7, 154.5, 146.8, 137.4, 132.7, 127.6, 125.7, 125.2, 120.2, 114.9, 70.0, 65.8, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.7, 24.2, 19.2, 13.4 ppm. 純度: 100%, 98.9% (210および254 nm) UPLCMS; 保持時間: 0.88分;
(M+H+) 448.6.
【実施例23】
【0245】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(シアノメトキシ)-[1,1’-ビフェニル]
-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物23)
一般的手順Eを使用して、キヌクリジン-3-イル(2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-イル)カルバメート(キヌクリジン-3-オールおよび2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミンを、一般的手順Fを使用して、反応させることによって製造)および4-(シアノメトキシ)フェニルボロン酸を反応させて、表題化合物を淡琥珀色固体として製造した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.65 (d, J= 8.2 Hz, 2H), 7.60-7.31 (m, 5H), 7.15 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 5.21 (s, 2H), 4.53-4.30 (m, 1H), 3.18-2.19 (m, 6H), 2.05-1.18 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ155.8, 154.6, 147.2, 137.2, 134.4, 127.8, 126.0, 125.3, 116.7, 115.3, 70.0, 55.4, 54.2, 53.5, 46.9, 45.9, 29.4, 25.2, 24.2, 19.2 ppm. 純度: 100%, 100% (210および254 nm) UPLCMS;
保持時間: 0.85分; (M+H+) 420.3.
【実施例24】
【0246】
タンパク質症のマウスモデルにおける化合物1の組織分布
マウスモデルは、中枢神経系において、プロテイナーゼK抵抗性α-シヌクレイン、ユビキチンおよびタウ凝集体の進行性の蓄積を示すことが記載されている(Gba1D409V/D409V)。これは、例えば、パーキンソン病およびレビー小体認知症の患者におけるレビー神経突起において、タンパク質の沈着を示すことを暗示している。これらのマウスは、実証可能な海馬の記憶欠損も呈する。これらのマウスの脳および肝臓組織内における分布を、化合物1の経口投与に続いて、調査した。
【0247】
方法
Gba1D409V/D409Vマウス(マウスのGba1遺伝子の残基409に変異点を持つ)を、動物実験委員会によって承認された手順の下で飼育した。処置を、記載のようにして投与し、動物は、予定された時点または人道的なエンドポイントに至ったら、人道的に屠殺した。
【0248】
Gba1D409V/D409Vマウスのサブセットは、60mg/kg/日を与えるために計算された製剤を使用して、食物中に加えられた化合物1を投与された。薬物の投与は、仔を4週齢で離乳させたときに開始し、4または10月齢での安楽死まで継続した。脳および肝臓組織中の化合物1の濃度を、質量分析によって測定した(例えば、Ramanathanら、「The emergence of high-resolution MS as the premier analytical tool in the pharmaceutical bioanalysis arena」、Bioanalysis、2012年3月;4(5):467~469を参照)。
【0249】
結果
化合物1を含有する食餌を与えられたマウスは、217±12ng/g皮質組織;および10512±603ng/g肝臓組織の組織曝露を示し、すなわち、脳中の化合物1の濃度は、肝臓中の濃度の約2%であった。これらの結果は、化合物1が、血液脳関門を通過することを実証する。
【実施例25】
【0250】
化合物1の投与はGba1D409V/D409Vマウスにおける記憶欠損を改善する
Gba1D409V/D409Vマウスにおける記憶欠損の程度を、新規物体認識(NOR)試験および恐怖条件付け(FC)試験を使用して評価した。
【0251】
方法
Gba1D409V/D409Vマウスを、実施例24に従って、飼育し、処置した。
【0252】
マウスは、対照の食餌または化合物1の食餌を、実施例24の記載のようにして与えられた。
【0253】
NOR試験において、4月齢の野生型(WT)およびGba1D409V/D409Vマウスは、4週齢で化合物1の投与を開始し、3月齢(処置後2カ月)でNOR試験に供した。
【0254】
マウスを、個々に慣らして、オープンフィールドボックスを5分間探索させた。最初の訓練セッション(T1)の間、2つの同じ物体を、オープンフィールド内に、互いに14インチ離して、対称に配置した。動物を5分間探索させた。調査数を、盲検の研究者によって記録した。24時間の保持時間の後、動物を、その新規物体の認識について試験した(T2)。マウスをオープンフィールドボックスに5分間戻し、馴染みのある物体および新規物体を調査するのに費やした時間を記録した。
【0255】
統計学的分析を、Studentのt-検定または分散分析(ANOVA)、続いて、Newman-Keulsの事後検定によって行った。1サンプルのt-検定によって、新規性に対する嗜好性を、50%を超える時間、新規物体を調査することとして定義した。全ての統計学的分析は、GraphPad Prism v4.0(GraphPad
Software、サンディエゴ、カリフォルニア)を用いて行った。p<0.05の値を有意であるとみなした。
【0256】
10月齢の野生型(WT)およびGba1D409V/D409Vマウスを、FC記憶試験に供した。FC試験に関して、マウスを、4つのMed Associates(登録商標)の近赤外恐怖条件付けシステムチャンバー(セントオールバンズ、バーモント)で訓練した。マウスを、照明、中立の背景およびステンレス鋼の格子床で構成される、「文脈A」の文脈的恐怖チャンバーに置いた。マウスを、3回の遅延試行-以下に定義の合図手順で訓練した。マウスは、最初に文脈Aにおけるチャンバーを探索するために2分与えられ、その後、2000Hzの条件刺激(CS)の合図が与えられた。30秒後、1秒の0.6mAのフットショックの無条件刺激(US)を適用した。30秒の試験間隔(ITI)で、このUS-CS応答を3回繰り返した。24時間の保持期間の後、マウスを試験室に戻し、1時間部屋に慣らした。マウスを、再び、5分間文脈Aに置き、文脈に対するすくみを記録した。すくみ(呼吸を除く、動作の欠如として定義する)を、近赤外カメラシステムを使用して記録した。次いで、マウスをチャンバーから取り出し、そのそれぞれのケージに戻した。1時間後、マウスを、新規文脈である文脈Bのチャンバーに戻した。マウスを、新しい環境で3分間ケージを探索させ、続いて、訓練手順と同じITIで、3トーンの聴覚性合図を3分与えた。再び、新規な環境および合図に対するすくみを、近赤外カメラシステムを用いて評価した。文脈的記憶は、訓練文脈から、新規文脈におけるすくみを差し引いたすくみとして定義される。合図の記憶は、新規文脈における合図に対するすくみとして定義される。
【0257】
結果
NOR試験の結果を図1に示す。結果は、訓練(T1)または試験(T2)中のターゲットの調査の割合として表す。
【0258】
詳細には、訓練1(訓練、無地のバー)は、2つの類似の物体にさらされた場合に、物体の嗜好性を明らかにしなかった。24時間の保持期間の後、マウスは、新規物体を提示された。試験2(試験、斜線のバー)において、WTマウスは、新規物体を、有意に、より頻繁に調査した(p<0.05)。対照的に、無処置のGba1D409V/D409Vマウス(真ん中、斜線のバー)は、新規物体に対する嗜好性を示さず、認知障害を示した。化合物1で処置したGba1D409V/D409Vマウスは、試験の試行中に、新
規物体を提示された場合に、その記憶欠損の回復傾向を示した(右側、斜線のバー)。結果を、平均±SEMとして示す。水平の線は、50%のターゲットの調査の境界を画定し、これは、いずれの物体に対しても嗜好性がないことを示す。
【0259】
FC試験の結果を図2に示す。図2Aは、文脈的記憶に関連する結果を示す。図2Bは、合図の記憶に関する結果を示す。
【0260】
対照のGba1D409V/D409Vマウス(真ん中、斜線のバー)は、文脈的および合図のFC試験におけるすくみ応答の減少を示し、記憶機能障害を確認した。化合物1での処置(右側、無地のバー)は、文脈的パラダイムにおけるすくみ応答を改善し(図2A)、海馬の記憶の改善を示した。一方、化合物1の投与は、合図の記憶には効果がなく(図2B)、扁桃体の恐怖応答が、本明細書に記載のキヌクリジン化合物によって影響を受けないことを示唆した。
【実施例26】
【0261】
化合物1の投与はA53Tα-シヌクレインを過剰発現するマウスにおける記憶欠損を改善する
記憶欠損の程度を、新規物体認識(NOR)試験および恐怖条件付け(FC)試験を使用して、A53Tα-シヌクレインを過剰発現するマウスで評価した。これらのマウスは、α-シヌクレイノパシーを患うヒトにおいて観察されるものと同様の、α-シヌクレイン包含物を生じ、神経変性および重度の運動機能障害を示す。
【0262】
方法
PrP-A53T-SNCA遺伝子組換えマウス(「A53T」マウス)は、マウスPrPプロモーターの転写調節の下で、ヒトA53T-α-シヌクレインを発現する(M83系統)(Giassonら、「Neuronal alpha-synucleinopathy with severe movement disorder in mice expressing A53T human alpha-synuclein」、Neuron(2002)、34(4):521~533)。A53Tマウスを飼育し、実質的に実施例24の記載のようにして、処置した。
【0263】
マウスは、対照の食餌または化合物1の食餌を、実施例24の記載のようにして与えられた。
【0264】
NOR試験を、マウスに6週齢で化合物1を投与し、4.5月齢でNOR試験に供したことを除いて、実施例25に記載のようにして行った。
【0265】
FC試験も、マウスを8月齢で試験に供したことを除いて、実施例25に記載のようにして行った。
【0266】
結果
NOR試験の結果を図3に示す。結果は、試験(T2)中のターゲットの調査の割合として表す。訓練中、動物は、2つの類似の物体にさらされた場合に、物体の嗜好性を明らかにしなかった(データは示さない)。
【0267】
WTマウスは、新規物体を、有意に、より頻繁に調査した(左側のバー、p<0.05)。対照的に、A53Tマウスは、新規物体に対する嗜好性を示さず、認知障害を示した(真ん中、斜線のバー)。化合物1で処置したA53Tマウスは、試験の試行中に、新規物体を提示された場合に、その記憶欠損の回復傾向を示した(右側、斜線のバー)。結果を、平均±SEMとして示す。水平の線は、50%のターゲットの調査の境界を画定し、
これは、いずれの物体に対しても嗜好性がないことを示す。
【0268】
FC試験の結果を図4に示す。図4Aは、文脈的記憶に関連する結果を示す。図4Bは、合図の記憶に関する結果を示す。
【0269】
対照のA53Tマウス(真ん中、斜線のバー)は、文脈的および合図のFC試験におけるすくみ応答の減少を示し、記憶機能障害を確認した。化合物1での処置は、文脈的パラダイムにおけるすくみ応答を改善し(図4A、右側、無地のバー)、海馬の記憶の改善を示した。化合物1の投与は、合図の記憶に対して周辺の効果のみを示し(図4B、右側、無地のバー)、扁桃体の恐怖応答が、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の投与によって影響を受けないことを示唆した。理論に縛られることは望まないが、本発明者らは、これらのマウスモデルにおいて観察された記憶に対する効果が、これらの細胞内の毒性物質のレベルの低下に随伴する、マウスの神経組織内のタンパク質凝縮体の減少に起因すると仮定している(本明細書に記載のキヌクリジン化合物は、例えば、神経組織に対して悪影響を及ぼす場合があるスフィンゴ脂質の細胞内レベルを低下させることができる)。
【実施例27】
【0270】
化合物1の投与は、脳におけるタンパク質凝集を低減する
Gba1D409V/D409Vマウスの脳におけるタンパク質凝集を、低減および/または回復に向かわせる、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の能力を評価した。
【0271】
方法
野生型(WT)およびGba1D409V/D409Vマウスは、対照の食餌または化合物1の食餌を、実施例24の記載のようにして与えられた。タンパク質(ユビキチン、α-シヌクレインおよびタウタンパク質)の蓄積を、化合物1で処置または未処置の両方について、海馬の定量化およびタンパク質の免疫反応性によって測定した。Gba1D409V/D409Vマウスにおける4週齢のタンパク質レベルをベースラインレベルとして使用し;タンパク質レベルを、16および40週齢で測定した。
【0272】
組織学的分析のために、マウスを冷PBSで灌流した。脳を取り出し、10%(v/v)の中性緩衝ホルマリン中で、48時間、後固定した。次いで、組織を、30%スクロース中に入れ、包埋し、クリオスタット中で、20μmの切片にした。いくつかの組織を、室温で7分間、プロテイナーゼK(1:4希釈;DAKO、カーピンテリア、カリフォルニア)で前処理し、α-シヌクレインおよび他の凝集したタンパク質に曝露した。脳の切片を、10%(v/v)の血清を用いて、室温で1時間ブロックし、以下の抗体とともにインキュベートした:マウス抗ユビキチン(1:500;ミリポア、ビレリカ、マサチューセッツ)、ウサギ抗α-シヌクレイン(1:300;シグマ、セントルイス、ミズーリ)、およびマウス抗タウ(1:500、タウ-5、ミリポア、ビレリカ、マサチューセッツ)。次いで、脳の切片を、ロバ抗マウスAlexaFluor-488またはロバ抗ウサギAlexaFluor-555二次抗体(1:250希釈;インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア)のいずれかとともに1時間インキュベートした。α-シヌクレイン凝集体の定量化のために、シアニン3-チラミドシグナル増幅キットを使用した(パーキンエルマー、ウォルサム、マサチューセッツ)。核を、DAPI(シグマ、セントルイス、ミズーリ)を用いて染色した。切片を、アクアポリ/マウント(ポリサイエンス、ウォリントン、ペンシルバニア)を用いて、カバーガラスで覆った。
【0273】
形態計測分析のために、切片を、20倍の対物レンズを備えたニコンEclipse E800蛍光顕微鏡と組み合わせたSPOTカメラ(Diagnostic Instruments、スターリングハイツ、ミシガン)を用いて画像化した。CA1海馬の細胞層の外部の放線状層を、各動物について画像化した。動物あたり2または3切片を画像化
した。全ての画像を、変態分析(モレキュラーデバイス、サニーベール、カリフォルニア)のために、露出適合させた。ユビキチンおよびタウの定量化のために、凝集体をプラスにカウントするように全ての画像について同じ閾値を使用し、閾値の範囲を、各画像について、画素で記録した。α-シヌクレインの定量化のために、各画像を、閾値の範囲を使用して個別に分析して、凝集体の面積を正確に定量化し、可変のバックグラウンドシグナルを除外した。これらの手順を、遺伝子型または処置に対して盲検で実施した。閾値の範囲の割合を計算し、平均±SEMとして表した。
【0274】
結果
海馬のユビキチン凝集体の定量化を、図5A(16週齢、1群あたりn≧5)および図5B(40週齢、1群あたりn≧8)に示す。結果を、平均±SEMとして示す。異なる文字のバーは、互いに有意に異なる(p<0.05)。図6における画像は、40週齢のGba1D409V/D409Vマウスの対照(図6A)または化合物1処置(図6B)の海馬におけるユビキチンの免疫反応性(緑色)を示す。DAPI核染色は青色で示される。
【0275】
プロテイナーゼK抵抗性α-シヌクレイン凝集体の海馬の定量化を、図7A(16週齢、1群あたりn≧5)および図7B(40週齢、1群あたりn≧8)に示す。結果を、平均±SEMとして示す。異なる文字のバーは、互いに有意に異なる(p<0.05)。図8における画像は、40週齢のGba1D409V/D409Vマウスの対照(図8A)または化合物1処置(図8B)の海馬におけるプロテイナーゼK抵抗性α-シヌクレインの免疫反応性(赤色)を示す。DAPI核染色は青色で示される。
【0276】
海馬のタウタンパク質凝集体の定量化を、図9A(16週齢、1群あたりn≧5)および図9B(40週齢、1群あたりn≧8)に示す。結果を、平均±SEMとして示す。異なる文字のバーは、互いに有意に異なる(p<0.05)。図10における画像は、40週齢のGba1D409V/D409Vマウスの対照(図10A)または化合物1処置(図10B)の海馬におけるタウの免疫反応性(緑色)を示す。DAPI核染色は青色で示される。
【0277】
Gba1D409V/D409Vマウスは、ユビキチン、α-シヌクレインおよびタウタンパク質凝集体を、4~40週齢で蓄積する。本明細書に記載のキヌクリジン化合物での処置は、(i)40週齢でのユビキチン凝集体の蓄積を阻止し、野生型の対照に対してそのレベルを低減し;(ii)40週齢でのα-シヌクレイン凝集体の蓄積を低減し;および(iii)40週齢でのタウ凝集体の蓄積を阻止した。これらの結果の傾向は、16週齢でも観察された。
【0278】
本明細書に提示する結果は、インビボでプロセシングしたニューロンのα-シヌクレインおよびタウタンパク質に対する、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の効果を示し、タンパク質症を処置するために本明細書に記載のキヌクリジン化合物を投与することの治療可能性を実証する。
【実施例28】
【0279】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート遊離塩基の製造
工程1:ヨウ化メチルを用いるジメチル化
【化24】
【0280】
3N RBフラスコに、温度計、滴下漏斗、および窒素導入口を取り付けた。フラスコに窒素を流し、カリウムtert-ブトキシド(MW112.21、75.4mmol、8.46g、4.0当量、白色粉末)を秤量し、粉末漏斗からフラスコに添加し、続いて、THF(60mL)を添加した。カリウムtert-ブトキシドのほとんどを溶解させて、濁った溶液を得た。この混合物を、氷水浴中で、0~2℃(内部温度)に冷却した。別のフラスコにて、出発のエステル(MW265.3、18.85mmol、5.0g、1.0当量)をTHF(18mL+すすぎ用として2mL)に溶解し、滴下漏斗に移した。この溶液を、冷却した混合物に、添加中、内部温度を5℃未満に維持しながら、25~30分かけて滴下添加した。反応混合物を、再び0~2℃に冷却した。別のフラスコにて、ヨウ化メチル(MW141.94、47.13mmol、6.7g、2.5当量)のTHF(6mL)中溶液を準備して、滴下漏斗に移した。次いで、ヨウ化メチル溶液が入っていたフラスコをTHF(1.5mL)ですすぎ、次いで、既に澄明な無色のヨウ化メチルのTHF中溶液が入った滴下漏斗に移した。この溶液を、こげ茶色の反応混合物に、添加中、内部温度を10℃未満に常に維持しながら、30~40分かけて注意深く滴下添加した。添加終了後、わずかに濁った混合物を、さらに1時間撹拌し、その間、内部温度は0~5℃に低下した。0~5℃で1時間撹拌後、反応混合物を、5.0MのHCl水溶液(8mL)を5~7分かけてゆっくりと滴下添加することによってクエンチした。この添加中、内部温度を20℃未満に維持した。添加後、水(14mL)を添加し、混合物を2~3分間撹拌した。撹拌を停止し、2層を分離させた。次いで、2層を250mLの1N
RBフラスコに移し、可能な限り真空中で、THFを蒸発させて、THF/生成物および水の二相を得た。2層を分離させた。工程1の生成物のTHF溶液を、次の反応に使用した。
【0281】
工程2:LiOH一水和物を用いるエチルエステルの加水分解
【化25】
【0282】
THF中の粗エステルを、反応フラスコに添加した。別途、LiOH・HO(MW41.96、75.0mmol、3.15グラム、2.2当量)を、撹拌子の入った100mLビーカーに秤量した。水(40mL)を添加し、混合物を、全ての固体が溶解するまで撹拌し、澄明な無色溶液を得た。次いで、この水溶液を、エステルのテトラヒドロフラン(THF)中溶液の入った250mLのRBフラスコに添加した。冷却器をフラスコの首部に取り付け、窒素導入口を冷却器の上部に取り付けた。混合物を、16時間加熱還流
した。16時間後、加熱を停止し、混合物を室温に冷却した。THFを真空中で蒸発させて、茶色溶液を得た。エチルエステルの加水分解の終了について、茶色水溶液のアリコートを、HPLCおよびLC/MSによって分析した。水(15mL)を添加し、この塩基水溶液を、TBME(2×40mL)で抽出して、t-ブチルエステルを除去した。塩基性の水層を、氷水浴中で0~10℃に冷却し、撹拌しながら、濃HClをpH約1まで滴下添加して、酸性化した。このガム状固体の酸性水溶液にTBME(60mL)を添加し、混合物を振とうし、次いで激しく撹拌して、全ての酸をTBME層に溶解させた。2層を分液漏斗に移し、TBME層を分離除去した。淡黄色の酸性水溶液をTBME(40mL)で再抽出し、TBME層を分離し、先のTBME層と合わせた。酸性の水層を廃棄した。合わせたTBME層を、無水NaSOで脱水し、ろ過し、真空中で蒸発させて、TBMEを除去し、粗酸を、オレンジ/濃黄色油状物として得て、高真空下で暗黄色固体に固体化した。粗酸を秤量し、ヘプタン/TBME(3:1、5mL/g粗製物)中で、加熱することによって結晶化させて、酸を黄色固体として得た。
【0283】
工程3:NHOH・HClを用いるヒドロキサム酸の形成
【化26】
【0284】
カルボン酸(MW265.3、18.85mmol、5.0g、1.0当量)を秤量し、窒素下、25mLの1N RBフラスコに移した。THF(5.0mL)を添加し、酸はすぐに溶解して、澄明な暗黄色~茶色の溶液を得た。溶液を、氷浴中で、0~2℃(浴温)に冷却し、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI;MW162.15、20.74mmol、3.36g、1.1当量)を、10~15分かけて、少量に分割して、ゆっくりと添加した。氷浴を外し、溶液を、室温で1時間撹拌した。1時間撹拌後、溶液を、氷水浴中で、0~2℃(浴温)に再び冷却した。ヒドロキシルアミン塩酸塩(NHOH・HCl;MW69.49、37.7mmol、2.62g、2.0当量)を、この添加が発熱性なので、3~5分かけて、固体として、少量に分割して、ゆっくりと添加した。添加終了後、水(1.0mL)を、不均一な混合物に、2分かけて滴下添加し、反応混合物を、氷水浴中、0~10℃で5分間撹拌した。冷却浴を外し、反応混合物を、窒素下、室温で終夜、20~22時間撹拌した。溶液は、全てのNHOH・HClが溶解して、澄明になった。20~22時間後、反応混合物のアリコートを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。次いで、THFを真空中で蒸発させ、残留物を、ジクロロメタン(120mL)および水(60mL)に入れた。混合物を、分液漏斗に移し、振とうして、2層を分離させた。水層を廃棄し、ジクロロメタン層を、1N塩酸(HCl;60mL)で洗浄した。酸性層を廃棄した。ジクロロメタン層を、無水NaSOで脱水し、ろ過し、溶媒を、真空中で蒸発させ、粗ヒドロキサム酸を淡黄色固体として得て、これを、高真空下、終夜乾燥した。
【0285】
工程3の続き:環状中間体(未単離)へのヒドロキサム酸の変換
【化27】
【0286】
粗ヒドロキサム酸(MW280.32、5.1g)を、窒素導入口を取り付けた250mLの1N RBフラスコに移した。撹拌子を添加し、続いてアセトニトリル(50mL)を添加した。固体は、アセトニトリルに不溶性であった。黄色の不均一な混合物を窒素下で2~3分間撹拌し、CDI(MW162.15、20.74mmol、3.36g、1.1当量)を、室温で、一度に添加した。発熱は観察されなかった。固体はすぐに溶解し、澄明な黄色溶液を室温で2~2.5時間撹拌した。2~2.5時間後、アリコートを、HPLCおよびLC/MSによって分析したところ、所望の環状中間体へのヒドロキサム酸の変換を示した。
【0287】
次いで、アセトニトリルを、真空中で蒸発させて、粗環状中間体を、赤みがかった粘性の油状物として得た。油状物をトルエン(60mL)に入れ、赤みがかった混合物を、2時間、加熱還流し、この間に、環状中間体は、COを放出して、イソシアネートに転位した(下記参照)。
【化28】
【0288】
工程3の続き:遊離塩基へのイソシアネートの変換
【化29】
【0289】
反応混合物を、50~60℃に冷却し、(S)-(+)-キヌクリジノール(MW127.18、28.28mmol、3.6g、1.5当量)を、固体として一度に混合物に添加した。混合物を、18時間、再度加熱還流した。18時間後、アリコートを、HPLCおよびLC/MSによって分析したところ、所望の生成物へのイソシアネートの変換の
終了を示した。反応混合物を、分液漏斗に移し、トルエン(25mL)を添加した。混合物を水(2×40mL)で洗浄し、水層を分離した。合わせた水層をトルエン(30mL)で再抽出し、水層を廃棄した。合わせたトルエン層を1NのHCl(2×60mL)で抽出し、トルエン層(O-アシル不純物を含有)を廃棄した。合わせたHCl層を、撹拌子を入れた500mLのエルレンマイヤーフラスコに移した。この澄明な黄色/赤みがかったオレンジ色の撹拌溶液を、50%w/wのNaOH水溶液を滴下添加することによってpH10~12に塩基性化した。所望の遊離塩基を、撹拌子に絡みつく暗黄色のガム状固体として、溶液から沈殿させた。この混合物に、酢酸イソプロピル(100mL)を添加し、混合物を5分間激しく撹拌して、ガム状固体が酢酸イソプロピル中に入った。撹拌を停止し、2層を分離させた。黄色の酢酸イソプロピル層を分離し、塩基性の水層を酢酸イソプロピル(30mL)で再抽出した。塩基性の水層を廃棄し、合わせた酢酸イソプロピル層を、無水NaSOで脱水し、予め秤量したRBフラスコにろ過し、溶媒を真空中で蒸発させて、粗遊離塩基をベージュから褐色の固体として得て、これを高真空下、終夜乾燥した。
【0290】
工程3の続き:粗遊離塩基の再結晶
ベージュから褐色に着色した粗遊離塩基を秤量し、ヘプタン/酢酸イソプロピル(3:1、9.0mL溶媒/g粗遊離塩基)から再結晶させた。適切な量のヘプタン/酢酸イソプロピルを、撹拌子に沿って粗遊離塩基に添加し、混合物を、10分間加熱還流した(遊離塩基は、直ぐに部分的に溶解したが、加熱還流したら、溶解して、澄明な赤みがかったオレンジ色溶液を得た)。熱源を取り除き、混合物を、撹拌しながら室温まで冷却して、白色の沈殿が生じた。室温で3~4時間撹拌後、沈殿を、ブフナー漏斗を使用して、ホース真空下ろ別し、ヘプタン(20mL)で洗浄し、ブフナー漏斗上で、ホース真空下、終夜乾燥した。沈殿を結晶皿に写し、真空オーブン中、55℃で終夜乾燥した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.04 - 7.83 (m, 2H), 7.20 - 6.99 (m, 3H), 5.53 (s, 1H), 4.73 - 4.55 (m, 1H), 3.18 (dd, J = 14.5, 8.4 Hz, 1H), 3.05 - 2.19 (m, 5H), 2.0 - 1.76 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 166.38, 165.02, 162.54, 162.8-155.0 (d,
C-F), 130.06, 128.43, 128.34, 116.01, 115.79, 112.46, 71.18, 55.70, 54.13, 47.42, 46.52, 27.94, 25.41, 24.67, 19.58 ppm.
【実施例29】
【0291】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート塩の結晶形の製造
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートの結晶塩を、実施例28に記載のようにして製造した遊離塩基から形成することができる。
【0292】
例えば、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートの遊離塩基(約50mmol)を、室温でIPA(140ml)に溶解し、ろ過した。ろ液を、オーバーヘッドスターラーおよび窒素出入口を取り付けた1Lのr.b.フラスコに添加した。L-リンゴ酸(約50mmol)を、室温でIPA(100+30ml)に溶解し、ろ過した。ろ液を、上記の1Lフラスコに添加した。得られた溶液を、室温で(種晶とともに、または種晶なしで)、窒素下、4~24時間撹拌した。この間に、結晶が形成する。生成物をろ過によって集め、少量のIPA(30ml)で洗浄した。結晶性固体を、真空オーブン中、55℃で72時間乾燥して、所望のリンゴ酸塩を得た。
【0293】
他の塩、例えばコハク酸またはHClとの酸付加塩の結晶形は、同様の方法によって製造することができる。
【実施例30】
【0294】
化合物1の投与は、A53Tマウスの脳におけるα-シヌクレインの細胞内局在化に影響を及ぼす
A53Tマウスの脳におけるα-シヌクレインの細胞内局在化に影響を及ぼす本明細書に記載のキヌクリジン化合物の能力を評価した。
【0295】
方法
PrP-A53T-SNCA遺伝子組換えマウス(「A53T」マウス)を飼育し、実施例26に記載のようにして処置し、化合物1は、6週齢で開始し、8月齢での安楽死まで投与した。
【0296】
マウスは、対照の食餌または化合物1の食餌を、実施例24の記載のようにして与えられた。
【0297】
対照および処置されたA53Tマウスからの皮質組織のホモジネートを、連続的な分取に供して、サイトゾルの可溶物(トリス可溶性)、膜関連(トリトン可溶性)、およびサイトゾルの不溶物(SDS可溶性)のα-シヌクレインを分離した。各分画中のα-シヌクレインの濃度を、ヒトα-シヌクレインELISAキット(バイオレジェンド、サンディエゴ、カリフォルニア)を使用して定量化した。タンパク質濃度を、microBCAアッセイ(サーモサイエンティフィックピアース、ウォルサム、マサチューセッツ)を使用して測定した。
【0298】
結果
異なる分画中のα-シヌクレインの定量化を図11に示す。
【0299】
サイトゾルの可溶性のα-シヌクレインの平均レベルのわずかな増加が、化合物1で処置したマウスで観察された(図11A:左側のバーは無処置の対照マウスを示し、右側のバーは対照の値の114±8%である処置したマウスを示す;n=14、P=0.17)。膜関連のα-シヌクレインのレベルは、化合物1処置に反応して、著しく減少した(図11B:左側のバーは無処置の対照マウスを示し、右側のバーは対照の値の75±8%である処置したマウスを示す;n=14、P<0.05)。不溶性のα-シヌクレインのレベルも、化合物1処置に反応して、著しく減少した(図11C:左側のバーは無処置の対照マウスを示し、右側のバーは対照の値の81±3%である処置したマウスを示す、n=14、P<0.01)。
【0300】
これらの結果は、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の投与が、インビボでプロセシングおよび局在化したニューロンのα-シヌクレインに影響を及ぼすことを実証し、タンパク質症を処置するための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の治療可能性を説明する。
【実施例31】
【0301】
化合物1の投与は、A53Tマウスの脳におけるタンパク質凝集を低減する
A53Tマウスの脳におけるタンパク質凝集に対する本明細書に記載のキヌクリジン化合物の効果を、評価した。
【0302】
方法
実施例30の記載のようにして、A53Tマウスを飼育し、処置し、給餌した。タンパク質(ユビキチンおよびタウタンパク質)の蓄積を、タンパク質レベルを6週齢および8月齢で測定した以外は、実施例27の記載のようにして測定した。
【0303】
結果
海馬のユビキチン凝集体の定量化を図12に示す。結果を、平均±SEMとして示す。異なる文字のバーは、互いに有意に異なる(p<0.05)。左端の白色のバーは、8月齢の野生型マウスの脳におけるユビキチン凝集体のレベルを示す。「ベースライン」値は、A53Tマウスの6週齢でのタンパク質レベルを示す。右から2番目の黒色のバーは、8月齢の無処置のA53Tマウス(対照)の脳におけるユビキチン凝集体のレベルを示す。右側の灰色のバーは、化合物1で処置した、8月齢のA53Tマウスの脳におけるユビキチン凝集体のレベルを示す。
【0304】
図13の画像は、無処置の対照マウス(図13A)または化合物1で処置したマウス(図13B)のいずれかの、8月齢のA53Tマウスの海馬におけるユビキチンの免疫反応性を示す。
【0305】
海馬のタウタンパク質凝集体の定量化を図14に示す。結果を、平均±SEMとして示す。異なる文字のバーは、互いに有意に異なる(p<0.05)。左端の白色のバーは、8月齢の野生型マウスの脳におけるタウタンパク質凝集体のレベルを示す。「ベースライン」値は、A53Tマウスの6週齢でのタンパク質レベルを示す。右から2番目の黒色のバーは、8月齢の無処置のA53Tマウス(対照)の脳におけるタウタンパク質凝集体のレベルを示す。右側の灰色のバーは、化合物1で処置した、8月齢のA53Tマウスの脳におけるタウタンパク質凝集体のレベルを示す。
【0306】
図15の画像は、無処置の対照マウス(図15A)または化合物1で処置したマウス(図15B)のいずれかの、8月齢のA53Tマウスの海馬におけるタウの免疫反応性を示す。
【0307】
したがって、本明細書に記載のキヌクリジン化合物での処置は、A53Tマウスの脳におけるタンパク質凝集体の蓄積を低減することができる。特に、タウタンパク質凝集体のレベルの著しい低減が、化合物1で処置したマウスにおいて観察された。
【0308】
これらの結果は、インビボでプロセシングしたニューロンのタンパク質に対する本明細書に記載のキヌクリジン化合物の効果を実証し、本明細書に記載のキヌクリジン化合物が、異常なタンパク質凝集の病原性サイクルおよびタンパク質症に関連する機能的な欠損を妨害することができることを示唆した。これらの結果は、タンパク質症を処置するための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の治療可能性を説明する。
【実施例32】
【0309】
化合物1の投与は、ポスト症候性のGba1D409V/D409Vマウスの記憶異常を回復に向かわせる
症候性のGba1D409V/D409Vマウスの生化学的な異常および記憶欠損を直すための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の能力を評価した。
【0310】
方法
Gba1D409V/D409Vマウスを、実施例24に従って、飼育し、処置した。マウスは、対照の食餌または化合物1の食餌を、薬物の投与を、動物が約6月齢になったときに開始し、13月齢での安楽死まで継続したことを以外は、実施例24の記載のようにして与えられた。
【0311】
海馬の記憶を、マウスを、6月齢(処置前)および再度6カ月後の12月齢(処置後)に試験したこと以外は、実施例25に従ってNOR試験で評価した。
【0312】
結果
処置前のGba1D409V/D409Vマウスの試験は、マウスが、新規物体の想起における機能障害を示すことを確認した(示さない)。
【0313】
12月(処置後)でのNOR試験の結果を図16に示す。結果を、平均±SEMとして示す。水平の線は、50%のターゲットの調査の境界を画定し、これは、いずれの物体に対しても嗜好性がないことを示す。
【0314】
同齢の野生型マウス(左側の黒色のバー)は、新規物体を、有意に、より頻繁に調査した(n=13、p<0.01)。対照的に、無処置のGba1D409V/D409Vマウス(真ん中の白色のバー)は、新規物体に対する嗜好性を示さず、認知障害を示した。化合物1で処置した症候性のGba1D409V/D409Vマウス(右側の灰色のバー)は、試験の試行中に、不慣れな物体を調査する能力を回復した(n=13、p<0.05)。
【0315】
これらの結果は、投与をタンパク質症の症状が観察された後に開始する場合であっても、本明細書に記載のキヌクリジン化合物の投与が、タンパク質症に関連する記憶異常を回復に向かわせることができることを実証する。
【実施例33】
【0316】
化合物1の投与は、ポスト症候性のGba1D409V/D409Vマウスの脳におけるタンパク質凝集を低減する
症候性のGba1D409V/D409Vマウスの脳におけるタンパク質凝集を低減および/または回復に向かわせるための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の能力を評価した。
【0317】
方法
野生型(WT)およびGba1D409V/D409Vマウスを、薬物の投与を、動物が認知障害について症候性であるとき、例えば、約6月齢に、開始すること以外は、実質的に実施例27に記載のようにして、飼育し、処置した。
【0318】
タンパク質(ユビキチン、α-シヌクレインおよびタウタンパク質)の蓄積を、実質的に実施例27に記載のようにして、海馬の定量化およびタンパク質の免疫反応性によって測定した。
【0319】
結果
本明細書に記載のキヌクリジン化合物、例えば、化合物1の投与により、薬物の投与を認知障害の症状が観察された後に開始する場合であっても、Gba1D409V/D409Vマウスの脳におけるタンパク質凝集体(ユビキチン、α-シヌクレインおよび/またはタウタンパク質)の蓄積の測定可能な低減をもたらすと予想される。
【実施例34】
【0320】
化合物2の投与は、Gba1D409V/D409Vマウスにおける記憶欠損を改善する
Gba1D409V/D409Vマウスにおける記憶欠損を改善するための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の能力を、新規物体認識(NOR)試験および恐怖条件付け(FC)試験を使用して評価した。
【0321】
方法
Gba1D409V/D409Vマウスを、実質的に実施例24に記載のようにして、飼育し、処置した。マウスは、投与される化合物が化合物2であること以外は、対照の食
餌またはキヌクリジン化合物を含有する食餌を、実質的に実施例25に記載のようにして、与えられた。
【0322】
NOR試験およびFC試験を、実質的に実施例25に記載のようにして、行った。
【0323】
結果
化合物2の投与により、Gba1D409V/D409Vマウスにおける記憶欠損を改善すると予想される。
【実施例35】
【0324】
化合物2の投与は、脳におけるタンパク質凝集を低減する
Gba1D409V/D409Vマウスの脳におけるタンパク質凝集を低減および/または回復に向かわせるための本明細書に記載のキヌクリジン化合物の能力を評価した。
【0325】
方法
野生型(WT)およびGba1D409V/D409Vマウスは、投与される化合物が化合物2であること以外は、対照の食餌またはキヌクリジン化合物を含有する食餌を、実質的に実施例27に記載のようにして、与えられた。
【0326】
タンパク質(ユビキチン、α-シヌクレインおよびタウタンパク質)の蓄積を、実施例27に記載のようにして、海馬の定量化およびタンパク質の免疫活性によって測定した。
【0327】
結果
本明細書に記載のキヌクリジン化合物、例えば、化合物2の投与により、Gba1D409V/D409Vマウスの脳におけるタンパク質凝集体(ユビキチン、α-シヌクレインおよび/またはタウタンパク質)の蓄積の測定可能な低減をもたらすと予想される。
【0328】
本発明を、上記の実施形態と組み合わせて記載してきたが、前述の記載および実施例は、本発明を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更は、本発明に関係する当業者には明らかであろう。
【0329】
さらに、本発明の特徴または態様を、マーカッシュ群に関して記載する場合、当業者であれば、本発明が、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素または下位グループの構成要素に関して、それによって記載されることも認識するだろう。
【0330】
本明細書において言及する全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それぞれを個々に参照によって組み入れる場合と同じ程度に、それらの全体を参照によって特に組み入れる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書によって規制される。
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