(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】容器の製造方法及びその容器
(51)【国際特許分類】
B29C 49/78 20060101AFI20231027BHJP
B29C 49/64 20060101ALI20231027BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
B29C49/78
B29C49/64
B65D1/02 100
(21)【出願番号】P 2021500712
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 NL2019050433
(87)【国際公開番号】W WO2020013694
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-15
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】515337626
【氏名又は名称】フラニックス・テクノロジーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス・アントーニウス・フィッセル
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー・ガブリエル・ファン・ベルケル
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532606(JP,A)
【文献】特開2008-238722(JP,A)
【文献】特開平11-314269(JP,A)
【文献】特開平01-157828(JP,A)
【文献】特開2009-197167(JP,A)
【文献】特表2015-507684(JP,A)
【文献】特表2018-510800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の製造方法であって、以下の工程:
- ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含むプリフォームを準備する工程;
- 前記プリフォームを延伸ブロー成形して容器を形成する工程であって、延伸ブロー成形が、110℃~140℃の範囲内の温度、及び100℃の参照温度において0.03~3s
-1の範囲内の相当ひずみ速度で、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)の自然延伸比よりも大きな比にまで上記プリフォームを延伸するステップを含む工程、
を含み、
前記相当ひずみ速度は、延伸ロッド速度をプリフォームの高さで割ることによって計算し、ウイリアムズ-ランデル-フェリー(Williams-Landel-Ferry)の式を用いて参照温度に対して校正され、
【数1】
式中、a
Tはシフト係数であり、C
1及びC
2は粘弾性定数であり、Tは試験温度であり、T
0は100℃の参照温度であり、式(1)において、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)に対して、C
1=8.40及びC
2=51.15℃である、
方法。
【請求項2】
緩和ステップを含み、緩和ステップが、
- a)15~30バールの範囲内のブロー圧力における延伸ブロー成形;及び/又は
- b)30W/(mK)未満の熱伝導率を有する材料を含む型を使用すること;及び/又は
- c)スチーム又は水を、延伸ブロー成形中に容器に導入すること;及び/又は
- d)未延伸ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)のガラス転移温度とブロー成形型温度との間の温度において、又はブロー成形型温度において、アニーリングをすること;及び/又は
- e)最大50℃/sの冷却速度で冷却するステップを施すこと、
によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォームを、予め核形成されたプリフォームとして準備する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
70℃~150℃の範囲の型温度を有するブロー成形型を使用することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プリフォームが、0.80~1.3dL/gの範囲の固有粘度を有するポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)樹脂から作られている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた収縮挙動を有する、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含む容器、好ましくはボトルを製造するための方法、及び容器、特にそのような挙動を示すボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)(PEF)は、例えば、容器、特に食品又は飲料の容器の材料として使用することができる100%バイオベースでありかつリサイクル可能なポリマーである。PEFのバリア性及び熱特性は、従来のPETよりも優れている。PEFは二酸化炭素及び酸素などのガスに対する改善されたバリア特性を示し、パッケージされた製品のより長い貯蔵寿命をもたらす。しかし、バリア特性及び機械的特性は、なおいくつかの用途、例えば、熱いものを充填する容器(ホット・フィルド・コンテナ)におけるには制限がある。PEFは、延伸中にボトルの側壁においてわずか10~15%の結晶化度にしか達せず、ボトルのブロー成型中に25%の結晶化度に容易に達するPETと比較して高い収縮を生じる。結晶性は、収縮を減らし、バリア特性及び機械的特性を向上させることが知られている。以前の研究(Codouら, “Glass transition dynamic and cooperativity length of poly(ethylene 2,5-furandicarboxylate) compared to poly(ethylene terephthalate”(ポリ(エチレンテレフタレート)と比較したポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)のガラス転移動力学及び協同的長さ), Phys. Chem. Chem. Phys, 2016, 18, 16647-16658)では、PEFのガラス転移に対する静止状態での結晶化(quiescent crystallization)の影響は、結晶の量/サイズとガラス転移の間の強い関係を明らかには示しておらず、これは、PETで起こることとは大きく異なる。PEFはアモルファス結晶相と静止結晶相の間の弱い相互作用を示しており、これはPEFの低いネットワーク密度に起因している。したがって、静止状態での結晶化は高温挙動を改善せず、したがってPEFの収縮を低下させない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Codouら,Phys. Chem. Chem. Phys, 2016, 18, 16647-16658
【文献】C. Combeaudら, “Thermal and mechanical behavior of polyethylene 2,5-furandicarboxylate during stretching”, N.I.C.E. 2016 カンファレンス, 2016年10月17日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、PEFを含み且つ収縮が低減された容器、並びにそのような容器を製造するための方法を提供することである。
【0005】
これは、驚くべきことに、歪みによって誘起された結晶性PEF(stain-induced crystalline PEF)を含む容器によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のまとめ
したがって、本発明の第1の側面によれば、本発明は、容器、好ましくはボトルを製造するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む。
- ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含むプリフォームを準備する工程;
- 上記プリフォームを延伸ブロー成形して容器を形成する工程であって、延伸ブロー成形が、105℃~145℃の範囲、好ましくは110℃~140℃の範囲内の温度、及び100℃の参照温度において0.001~10s-1の範囲、好ましくは0.03~3s-1の範囲の相当ひずみ速度(equivalent axial strain rate)で、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)の自然延伸比(natural draw ratio)よりも大きな比に、上記プリフォームを延伸するステップを含む、工程。
【0007】
第2の側面によれば、本発明は、ひずみ誘起結晶性ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含む容器、好ましくは本発明の第1の側面による上記の方法に従って製造された容器に関する。
【0008】
本発明で使用されるプリフォームは、任意の量のポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含むことができる。特に、それは、80~100質量%の量でポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含む。ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)はさらに添加剤、例えば、安定剤、着色剤、耐衝撃性改良剤などを含んでいてもよい。そのような添加剤の量は、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)及び添加剤の組み合わせ物に基づいて、適切には20質量%を超えない。
【0009】
最も好ましい実施形態では、プリフォームは、任意選択により場合によっては通常の添加剤と共に、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、3Dプリントされたプラスチックインサートを備えたスチール製の型の詳細写真である。
【
図2】
図2は、収縮テスト後の8オンス(237mL)ボトルの写真である。ロゴの変形は小さい。
【
図3】
図3は、PEFボトルのさまざまな位置での透過におけるX線測定のデバイ-シェラー(Debye-Scherrer)プロットである。
【
図4】
図4は、 (左から右へ)一軸延伸PEF試験片(カップル2)、PEFボトルのラベル領域の上部からの試験片のWAXS(広角X線散乱)パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、ガラス転移温度と溶融温度との間の物理的状態に対応する状態、すなわちゴム状プラトーとして知られている領域においてPEFを延伸することにより、20℃より大きなガラス転移温度の上昇をもたらすモルフォロジー、特にひずみで誘起された結晶化度を作り出すことが可能であるという認識を含む。さらに、秒単位のタイムスケールで収縮が発生し始める開始温度を100℃より高くまで上昇させることができる。したがって、得られた容器は改善された高温特性を示し、且つ熱間充填用途に使用することができる。この挙動の変化は、静的結晶化後には観察されない。
本出願においては、C. Combeaudら, “Thermal and mechanical behavior of polyethylene 2,5-furandicarboxylate during stretching”(延伸時のポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートの熱的及び機械的挙動), N.I.C.E. 2016 カンファレンス, 2016年10月17日において提示されたひずみ速度を用いる。
【0012】
そのプレゼンテーションによれば、長さが5mmより長く、幅が4mmのPEFの長方形の片(ストリップ)をPEFシートから作り出し、それをクランプで5mmのクランプ距離にクランプ止めし、90℃から140℃までの温度(5℃のステップで)において、0.1Hzから50Hz(10Hz当たり20の点)まで周波数掃引にかけた。そのひずみの振幅は5μm(0.1%のひずみ)で一定に保たれた。その結果貯蔵弾性率が決定された。この貯蔵弾性率を、ウイリアムズ-ランデル-フェリー(Williams-Landel-Ferry, WLF)の式:
【数1】
(式中、a
Tはシフト係数であり、C
1及びC
2は粘弾性定数であり、Tは試験温度であり、T
0は100℃の参照温度である)
を使って、マスター曲線にシフトさせた。ここで、以下のパラメータ:C
1=8.40及びC
2=51.15℃を用いると、WLFの式を用いてPEFの温度依存性の良好な記述が得られることが発見された。本出願において、C
1及びC
2のこれらの値を、実際に決定されたひずみ速度値からの相当ひずみ速度の決定に使用する。
【0013】
マスター曲線は、特定の延伸条件にさらされたときのPEFの機械的応答を示している。ここでは、WLFの式及び見出されたマスター曲線を使用して、任意の延伸条件(温度及びひずみ速度ε’)からそのマスター曲線上の任意の位置へと置き換えるために使うことができるという仮定を適用する。この仮定は、異なる延伸条件を有するが、f・aT=ε’aTに従うマスター曲線上では同じ位置となる〔したがって、動的機械熱分析(dynamic mechanical thermal analysis, DMTA)試験時の周波数は、延伸時の一軸公称ひずみ速度と等価(equivalent)であるとみなされる〕、一軸延伸試験によって検証される。同じ相当ひずみ速度(ε’aT)をもつ全ての組(カップル)は、延伸したときに同じ機械的応答を示し、これが上記の仮定の妥当性を強めている。
【0014】
本発明はさらに、有益な耐熱性は、延伸温度及び相当ひずみ速度によって、延伸量及び延伸条件に起因する影響を受けるという認識を含む。ポリマーの自然延伸比(NDR)より低い比への延伸は、配向したメソ相を生じることはなく、配向したメソ相の形成には、分単位(静止結晶化に適している)に代えて秒単位で結晶構造を発達させること(ひずみ誘起結晶化;strain induced crystallization, SIC)が必要とされる。したがって、相当ひずみ速度で表される延伸速度が重要である。その温度とともに、延伸速度、したがって相当ひずみ速度は、より高い耐熱性を有するモルフォロジーをもたらす。その後の冷却条件もここでの役割を果たす。
【0015】
以下に、本発明の実施形態を記述する。本明細書に記載された実施形態は、別段の明示的な記載がされていない場合、組み合わせることができる。
【0016】
好ましくは、本方法は、緩和ステップを含む。ブロー成形中及びブロー成形後の試験片のガラス転移を超える温度における高緩和の時間は、PEFにおけるさらに低減した収縮と、向上した熱安定性を可能にする。結果として得られるより高い結晶化度はまた、その他の特性、例えば、ガスバリア特性及び機械的特性にも有益でありうる。
【0017】
この緩和ステップは、好ましくは、以下のように実施される。
- a)15~30バールの範囲内のブロー圧力における延伸ブロー成形(ストレッチブロー成形);及び/又は
- b)30W/(mK)未満の熱伝導率を有する材料を含む、好ましくはポリマー材料を含む、なおさらに好ましくは0.01~5W/(mK)の熱伝導率を有する材料を含む型を使用する;及び/又は
- c)スチーム又は水、好ましくは50~100℃の温度のものを、延伸ブロー成形中に、容器に導入する;及び/又は
- d)未延伸ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)のガラス転移温度とブロー型温度との間の温度、又はブロー型温度において、好ましくは85℃~120℃の範囲の温度、あるいはより好ましくは90℃~110℃の間の温度の型を使用して、アニーリングをする;及び/又は
- e)最大50℃/sの冷却速度をもつ冷却ステップを備える。
【0018】
緩和ステップの主な目的は、熱安定性のある結晶モルフォロジーの形成を促進するために、ブロー成形された容器をある時間、昇温した温度に保つことを可能にすることである。このような時間は、適切には0.5~20秒、好ましくは1~10秒の範囲であってよい。
【0019】
オプションa)においては、低圧の使用は、容器の形成がいくらか長く続くことを可能にし、それにより、結晶化するための追加の時間が樹脂に与えられる。
【0020】
オプションb)においては、従来のスチール金型を使用した場合と比較して、容器と型の間の熱伝導が低下するので、成形された容器の冷却が遅くなる。標準のブロー成形時には、ひとたび容器が金型に接触すると、容器の冷却は非常に急速である(<<1秒)。材料のモルフォロジーにとって、約1秒又は1秒より長い冷却時間をとることは有益である。
【0021】
オプションc)においては、水及び/又はスチームの熱量は、水及び/又はスチームの温度に応じて、容器のゆっくりとした冷却をもたらす。
【0022】
オプションd)においては、型は昇温した温度に保たれ、それによって結晶化を促進するために十分長い時間、容器がこの昇温した温度に保たれる。このオプションでは、所望の温度を維持するために適切な熱伝導媒体を使用してもよい。
【0023】
オプションe)においては、0.5~20秒、好ましくは1~10秒のあいだ、容器を冷却することを達成できる任意のその他の方法が考えられる。
【0024】
延伸したサンプルを延伸温度又はそのガラス転移温度に近いか又はそれより高く保つことが、結晶の形成を促進し、結晶の完全性を向上させる。より長い時間はまた、結晶化度、そして主に結晶相の完全性を促進する。収縮が起こり始める開始温度もまた、容器を昇温した延伸後温度に一定時間、容器を保つことでさらに高くなる。
【0025】
本発明の一実施形態では、プリフォームは、予め核形成されたプリフォームとして準備される。予め核形成されたプリフォームとは、PEF樹脂の結晶核を含むプリフォームと理解される。予め核形成されたプリフォームは、より低い自然延伸比を有する。したがって、ひずみ硬化によって結晶度を誘発しやすく、SICがより有利になる。さらに、そのような予め核形成されたプリフォームを、その剛性を失う前に、したがって加熱中にその形状を失う前に、より高い温度に加熱することができる。より高いブロー温度において、延伸速度がアモルファス相を配向させるのに十分に高く、したがってひずみ硬化が進行しつつある場合、分子鎖は、より大きな移動性を有し、かつ冷却したときに結晶を形成する、より大きな見込みがある。予めの核形成(予備核形成)は、静止法で、又は溶融加工中に流動誘起結晶化を使って行うことができる。予備核形成は、核剤を含むPEF樹脂を調製することによっても行うことができる。
【0026】
70℃~100℃の範囲の型温度のブロー型を使用することが有利である。それは、プリフォームが、0.80~1.3dL/g、好ましくは0.87~1.1dL/gの範囲内に固有粘度(intrinsic viscosity, IV)をもつポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)樹脂から作られている場合にさらに好ましい。本質的に、プリフォームのIVが高ければ高いほど、SICを形成する可能性が高くなり、この方法によって収縮についての性能が向上する。より高いIVのプリフォームでは、材料のより低い自然延伸比に対応し、かつ低収縮製品を得るために、ブロー成形中の加工条件を、より高い引張り温度及び/又はより低い延伸速度とより低い全体的な延伸比となるように変更することが必要になる。プリフォームのIVの上限は内部応力によって与えられ、これは容器が到達できる可能なIVの上限を与える。
【0027】
上で述べたように、本発明の第2の側面は、容器、好ましくは本発明の第1の側面による方法に従って製造され、ひずみ誘起結晶性ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)を含む容器に関する。上で説明したように、PEFのひずみ誘起結晶化が、高温下でのより良好な収縮挙動、及びそれによって高温充填用途のための容器を可能にする。本発明の第2の側面による容器は、第1の側面による方法との関連で説明した利点を共有する。ひずみ誘起結晶性の存在は、X線回折によって確認できる。静止結晶化はX線スペクトルにハローを示すが、ひずみ誘起結晶性はスペクトルにブロット(しみのような模様)を示す。
【0028】
好ましくは、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)は、10~40%、より好ましくは20~35%の範囲の結晶化度を有する。そのような高い結晶化度により、有利な高温耐性が改善される。これに関連して、100%の結晶化度については、Codouら, Phys. Chem. Chem. Phys., 2016, 18, 16647-16658に記載されている。
【0029】
プリフォームに使用されるポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)は、典型的には、80~85℃のガラス転移温度を有し、これは非配向ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)の値である。プリフォームが本発明に従って延伸された後、配向されたサンプルのガラス転移温度はより高くなる。有利なことには、上記の容器のポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)は、ISO6721-11に準拠して、引張りモードで動的機械分析装置を使用して、損失弾性率のピークから決定して、95℃より高いガラス転移温度を有する。容器のPEFのガラス転移温度は、収縮が始まる開始温度を示している。したがって、例えば、熱い飲料を、収縮なしに容器中に充填することができる。本発明の一実施形態では、容器は、85℃より高い、好ましくは100℃より高い収縮開始温度を有する。
【0030】
好ましくは、容器はボトルである。
【0031】
図面の詳細な説明
ブロー成形ボトルの様々な部分の収縮及びモルフォロジーについての本発明の効果を示すために、
図1~4を参照する。
【0032】
0.87dL/gのIVをもつPEF樹脂を、13.7gの質量をもつPEFプリフォームに射出成形した。これらのプリフォームを、115℃のプリフォーム温度にて、12オンス(355mL)の容量のボトルへとブロー成形した。ボトルの型はスチールから作られており、ボトル上にロゴを印刷するためにボトルの肩に3D印刷されたプラスチックのインサートを有していた(
図1を参照されたい)。
【0033】
全てのボトルを、100℃の水をボトルに注ぎ、15分間そのまま保持する試験にかけた。その結果生じたボトル形状を
図2に示している。ボトルの形状は、インサートの位置の周りで明らかに歪みが少なく、このことはブロー成形後に型から受ける冷却速度の影響を示しており、冷却速度は、型のこの部分のより低い熱伝導度によって、プラスチックインサートに接触している材料でより低くなるであろう。
【0034】
図3にデバイ-シェラープロットとして示した透過X線スキャンから得られたデータは、この観察を裏付けている。ロゴの周りのスキャンについてにのみ、結晶化の証拠が観察される(
図3.4)。
【0035】
さらに、一軸延伸された試験片の結晶構造は、ボトルに見られるモルフォロジーとは全く異なって見える。WAXSによって観察したボトルの結晶構造を
図4に示す。一軸延伸条件では、テクスチャードファイバーの結晶構造に似て、配向した結晶構造の明確な存在が観察され(左側の図を参照されたい)、その一方、従来技術によるボトルの壁には、結晶の明確な証拠は観察されない(右側の図)。これはまた、PEFボトルの収縮性能、したがって熱充填用途における性能を改善する可能性を示している。
【0036】
以下で、本発明のいくつかの例を説明する。
【0037】
例1:一軸延伸後の、収縮の低下を伴うガラス転移温度の上昇
0.89dL/gのIV(固有粘度)をもつPEF樹脂を、公称厚さ0.7mmのシートに押し出した。続いて、40mの全長、14mmの最大幅、8mm×8mmの平行断面をもつドッグボーン形状の引張試験片をそのシートから作った。各引張試験片を、延伸前に、5分間加熱して、試験片全体にわたり均一な温度を得た。続いて、各試験片を6の延伸比にまで延伸し、圧縮空気を使用してできるだけ速く冷却した。使用した延伸装置は非商用のものである。
【0038】
上記のPEF引張棒の延伸された領域に以下の様々な特性試験:収縮挙動及び熱転移についてのDMTA;結晶化度、アモルファス相のタイプ、及び熱転移についての示差走査熱量測定(DSC)、を行った。結果の値は下で見ることができる。DSC測定は、メトラー・トレド(Mettler Toledo)のTOPEM技術を用い、10℃/分の加熱速度を用いて実施した。DMTA測定は、1Hzの周波数、0.1%のひずみ振幅、及び1℃/分の加熱速度で実施した。ひずみにより誘起された結晶化の量(Xsic)の決定は、Codouら “Glass transition dynamic and cooperativity length of poly(ethylene 2,5-furandicarboxylate) compared to poly(ethylene terephthalate1)”, Phys Chem. Chem. Phys., 2016, 18, 16647-16658に概説されている方法にしたがって行う。延伸後のガラス転移温度は、ISO6721-11に準拠して測定し、損失弾性率(E”)の最大値から得られる。ガラス状ポリマーの剛性の尺度として、60℃で測定した貯蔵弾性率(E’)を報告する。収縮は、ガラス状(~60℃)とゴム状のプラトー(~160℃)との間の試験片の長さの差から決定し、開始温度は収縮が起こり始める温度である。得られた値を表1に示す。延伸された物品、例えばボトルについては、剛性及び耐熱性の両方に主に関心がもたれる。
【0039】
表1中の値は、適切な条件での延伸が、延伸された物品が顕著に収縮し始める温度を高くすることを示している。サンプル10はほぼ完全にアモルファス(つまり、わずか3%の結晶化度)であり、85℃の開始温度を有し、103℃の開始温度をもつ最も安定なサンプル(サンプル6)と対照される。後者のサンプルはTgについても最も高い値を有しており、これは0.05~5s-1の間の相当ひずみ速度で延伸されたサンプルの収縮の開始温度の良い指標である。サンプル12は、出発樹脂の結果を示している。
【0040】
表1の結果は、収縮に抗する耐熱性についての最適値が、容器が高い剛性を有する場合よりも、より高い相当ひずみ速度の場合で見られることをさらに示している。
【0041】
【0042】
サンプル6~11は本発明による。それらは低くなった収縮の挙動を示している。さらに、サンプル6及び7は、相当ひずみ速度が0.03~3s-1の好ましい範囲内にある場合、収縮が低下するだけでなく、開始温度も向上することを示している。
【0043】
例2:SBM中の緩和の影響
この試験では、0.92dL/gのIVをもつPEFのプリフォームを、8オンス(237mL)のボトルへと延伸ブロー成形(SBM)した。ブロー成形は、表2に示すプリフォーム温度及びブロー圧力で行った。相当ひずみ速度(ε’・aT)の値は、延伸ロッド速度をプリフォームの高さで割ることによって計算し、本明細書中に示したWLFの式を用いて参照温度に対して校正した。結果の値を表2に示す。
【0044】
いくつかのSBM加工パラメータを試験して、結果として得られるPEF容器の収縮に影響を及ぼすことを発見した。結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
様々な加工条件でブロー成形したボトルを収縮試験にかけ、試験中、ボトルを特定の温度の水で満たす。ボトルを15秒間満たされたままにしておき、その後、空にする。続いて、ボトルの縁いっぱいまでの容積を測定し、これを試験前のボトルの元の容積と比較する。この試験を、70℃、85℃、及び100℃の水を用いて実施する。85℃と100℃における収縮性能はブロー成形条件に明らかに左右され、主に、ブロー成形ステップ中のより高いプリフォーム温度及び相当ひずみ速度による影響を受けている。ボトルタイプB3は、120℃の温度のプリフォームからブロー成形されており、85℃及び100℃の水で満たした後、顕著に低い量の収縮をもたらした。
【0047】
得られた配向量を、Atago NAR-4T屈折計を使用して測定する。軸方向と円周方向の向きの違いは、それぞれΔNx及びΔNyで表される。これらのパラメータの定義は次のとおりである。
【0048】
【0049】
パラメータ「n」は平均屈折率を表す。ΔPパラメータは、最終構造中の配向の量の尺度であり、最も少ない量の収縮を有するボトルが最も高くなることを示している。
【0050】
例3:
0.90dL/gのIVをもつPEF樹脂を、0.3mmの厚さのシートに押し出し成形した。次に、一軸試験片をそのシートから作り、様々な温度/延伸速度の組み合わせで延伸した。延伸比4にまで延伸した後、緩和のために、試験片をその延伸温度において3分間保持する。この緩和時間は、産業的に実施可能なプロセスにおいては魅力的でない可能性がある。より好ましい時間は、0.5~20秒の範囲である。下の表中に、DMTAデータを示しており、これは2℃/分の加熱速度及び1Hzの周波数及び0.1%の(引張り)ひずみ振幅で測定したものである。表3は、非延伸(参照)のサンプル、及び様々な延伸条件で延伸したいくつかのサンプルについて、2℃/分の加熱速度及び1Hzの周波数及び0.1%の引張ひずみ振幅でDMTA温度掃引によって測定した、ガラス転移温度についての様々な指標の値を示している。
【0051】
【0052】
表3の結果は、延伸がガラス転移温度のいくつかの指標に大きく影響することを明確に示しており、貯蔵弾性率が最大値に達する温度が最大で33℃上昇している。サンプル4~6は本発明による。それらはTgの優れた上昇を示し、かつ10%未満の収縮を有している。サンプル7は、出発樹脂の結果を示している。