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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】結束テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/21 20180101AFI20231027BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231027BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20231027BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C09J7/21
C09J7/38
B32B5/02 Z
B65D63/10 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021514919
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016089
(87)【国際公開番号】W WO2020213521
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019077578
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楯 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-503538(JP,A)
【文献】国際公開第2011/081132(WO,A1)
【文献】特表2004-524376(JP,A)
【文献】特開2006-210228(JP,A)
【文献】特表2006-520863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
B32B 1/00-43/00
D04H 3/011、3/16
B65D 63/10
H01B 7/18
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる基材層と、粘着層とを有する結束テープであって、
前記基材層が、少なくとも2種類の異なる形状又は異なる大きさを有する融着部を備える、結束テープ。
【請求項2】
前記融着部が、熱エンボス加工により前記不織布の繊維を熱融着して形成されたものである、請求項1に記載の結束テープ。
【請求項3】
耐スクレープ摩耗回数が100回以上である、請求項1又は2に記載の結束テープ。
【請求項4】
前記基材層の総面積に対する、少なくとも1種類の前記融着部の面積が5%以上であり、前記融着部の合計面積が20~50%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項5】
前記不織布を構成する繊維がポリエステル繊維である、請求項1から4のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項6】
前記不織布の目付が50~200g/mである、請求項1から5のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項7】
前記不織布の見かけ密度が0.1~0.4g/cmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項8】
前記不織布を構成する繊維の繊維径が3~30μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項9】
前記基材層の厚みが300~600μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項10】
線の結束用である、請求項1から9のいずれか一項に記載の結束テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の配線には、電線類を結束テープ等で所定の形状に束ねたものが用いられている。このような電線類は、通常、エンジンルーム内や、ボディーと内装材との間などの狭い隠蔽個所に設置されている。そのため、エンジンの振動や走行時の揺れによって振動し、周辺の壁などに接触して打音や擦過音を発するという問題がある。
【0003】
電線等結束用の結束テープには、通常、ポリ塩化ビニルテープを基材としたものが多く用いられているが、消音性が求められる用途においては、綿不織布等からなる基材層と、粘着層とを備える結束テープが用いられている。このように、不織布からなる基材層を有する結束テープを用いることで、電線類が自動車内部の周辺の壁等に接触した際に、前記不織布がクッション材となって、打音や擦過音を低減することができる。このような消音性能を有する結束テープとして、例えば、特許文献1には、機械的又は湿式配置で強化されたウェブに、結合剤を添加した不織布からなる基材層を備える接着テープが記載されている。
【0004】
ところで、上述のような不織布からなる基材層を有する結束テープにおいては、テープの巻き直し時や、テープロールからテープを引き出す際に、基材層が上下2層に剥離する「層割れ」と呼ばれる現象が生じる場合がある。このような「層割れ」が生じた部分は、結束テープとして使用できないため、新たなテープに取り替える必要があり、作業効率が低下するという問題がある。
このような層割れの現象を抑制できる結束テープとして、例えば、特許文献2には、部分的に熱融着された不織布に、ウレタン樹脂とポリエチレンワックスとを結合剤として添加した基材層を備える消音テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2004-524376号公報
【文献】特開2006-210228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の消音テープは、耐摩耗性が低いという問題がある。
そこで本発明は、消音性を有する結束テープであって、層割れを抑制でき、かつ耐摩耗性にも優れる結束テープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本願発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも2種類の異なる形状を有する融着部を形成した不織布を基材層として用いることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]不織布からなる基材層と、粘着層とを有する結束テープであって、前記基材層が、少なくとも2種類の異なる形状を有する融着部を備える、結束テープ。
[2]前記融着部が、熱エンボス加工により前記不織布の繊維を熱融着して形成されたものである、[1]に記載の結束テープ。
[3]耐スクレープ摩耗回数が100回以上である、[1]又は[2]に記載の結束テープ。
[4]前記基材層の総面積に対する、少なくとも1種類の前記融着部の面積が5%以上であり、前記融着部の合計面積が20~50%である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[5]前記不織布を構成する繊維がポリエステル繊維である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[6]前記不織布の目付が50~200g/mである、[1]から[5]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[7]前記不織布の見かけ密度が0.1~0.4g/cmである、[1]から[6]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[8]前記不織布を構成する繊維の繊維径が3~30μmである、[1]から[7]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[9]前記基材層の厚みが300~600μmである、[1]から[8]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[10]電線等の結束用である、[1]から[9]のいずれか一項に記載の結束テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消音性を有する結束テープであって、層割れを抑制でき、かつ耐摩耗性にも優れる結束テープを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[結束テープ]
本発明の結束テープは、不織布からなる基材層と、粘着層とを有する結束テープであって、前記基材層が、異なる形状を有する少なくとも2種類の融着部を備えることを特徴とする。
【0010】
(基材層)
本発明の結束テープにおける基材層は、不織布からなる。すなわち、「不織布からなる基材層」とは、不織布を構成する繊維を織らずに組み合わせたシート状の基材のことを意味する。
本発明の不織布からなる基材層は、少なくとも2種類の異なる形状を有する融着部を備えている。本発明の1つ態様において、基材層の融着部は、前記基材層の粘着層が積層されている面とは異なる面側に設けられていることが好ましい。すなわち、基材層の最外層に設けられていることが好ましい。
前記融着部は、不織布を構成する繊維同士が接合することによって、不織布表面に凹み部として形成されている。前記融着部は、機械的処理によって形成されていてもよく、エンボス加工によって形成されたものであってもよい。本発明の1つの態様においては、前記融着部は、熱エンボス加工により前記不織布の繊維を熱融着して形成されたものであることが好ましい。このような融着部を有することにより基材層の層割れが抑制されやすくなり、かつ結束テープの耐摩耗性がより向上する。すなわち、少なくとも2種類の異なる形状を有する融着部を前記基材層に備えることで、摩耗時に働く水平方向の応力緩和が大きくなり、耐摩耗性が向上する。
基材層は、少なくとも2種類の融着部を有しており、前記融着部は、2~5種類が好ましく、2~3種類であることが特に好ましい。
基材層における融着部は、少なくとも1種類の融着部の面積が、基材層の総面積に対して、5%以上であることが好ましく、10~20%であることがより好ましい。また、基材層の総面積に対する前記融着部の合計面積は、20~50%であることが好ましく、25~40%であることがより好ましい。少なくとも1種類の融着部の面積が5%以上であれば、摩耗時に働く水平方向の応力緩和の効果が得られやすくなる。また、融着部の合計面積が前記範囲内であれば、摩耗時に働く水平方向の応力緩和の効果が得られやすくなる。なお、前記融着部の面積は、基材層の融着部が形成されている側の面の総面積に対する値である。
【0011】
本発明の1つの態様において、「異なる形状を有する融着部」には、融着部の形状そのものが異なるだけでなく、その大きさが異なるものも含まれる。
融着部の形状は、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、円形状(真円又は楕円形)、又はひし形状(ひし形やそれに類似する形状)等の形状が挙げられる。
融着部の形状が円形状である場合、その直径は、0.5~1.4mmが好ましく、0.6~1.2mmがより好ましい。なお、融着部が楕円形である場合、前記の直径は、楕円の長軸の長さを意味する。本発明の1つの態様において、融着部が円形状である場合は、融着部として、その直径が0.9~1.4mm、好ましくは1.0~1.2mmである融着部Aと、直径が0.5~0.9mm、好ましくは0.6~0.8mmである融着部Bとを少なくとも含むことが好ましい。
また、前記融着部がひし形状である場合、その面積は、0.2~1.6mmが好ましく、0.2~1.2mmがより好ましい。本発明の1つの態様においては、融着部がひし形状である場合、融着部として、その面積が0.6~1.6mm、好ましくは0.8~1.2mmである融着部Iと、面積が0.2~0.8mm、好ましくは0.2~0.5mmである融着部IIとを少なくとも含むことが好ましい。
本発明の1つの態様においては、層割れの抑制、及び耐摩耗性がさらに向上しやすくなることから、融着部の形状はひし形状であることが好ましい。
融着部は、不織布上にランダムに配置されていてもよく、直線状又は格子状に配置されていてもよい。
【0012】
本発明の1つの態様において、融着部が円形状である場合は、不織布からなる基材層の、1cm×1cmの範囲に、前記融着部Aが10~40個配置されていることが好ましく、10~30個配置されていることがより好ましい。また、前記融着部Bが、基材層の1cm×1cmの範囲に、10~40個配置されていることが好ましく、10~30個配置されていることがより好ましい。融着部A及び融着部Bが前記範囲内で配置されていることにより、基材層の層割れを抑制する効果がより高くなる。また、結束テープの耐摩耗性がより向上しやすくなる。
また、本発明の1つの態様において、融着部がひし形状である場合は、不織布からなる基材層の、1cm×1cmの範囲に、前記融着部Iが10~50個配置されていることが好ましく、15~40個配置されていることがより好ましい。また、前記融着部IIが、基材層の1cm×1cmの範囲に、10~50個配置されていることが好ましく、15~40個配置されていることがより好ましい。融着部I及び融着部IIが前記範囲内で配置されていることにより、基材層の層割れを抑制する効果がより高くなる。また、結束テープの耐摩耗性がより向上しやすくなる。
【0013】
基材層に用いられる不織布としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、スパンボンド法で作成された不織布、スパンレース法で作成された不織布、メルトブロー法で作成された不織布等を用いることができる。また、不織布は単層であってもよく、複数の層からなる積層不織布であってもよい。また積層不織布の場合、複数の方法で作成された不織布を積層させたものであってもよい。このうち、機械的強度の観点から、スパンボンド法で作成された不織布を用いることが好ましい。
また、不織布の目付は、50~200g/mであるものが好ましく、60~140g/mであるものがより好ましい。不織布の目付が前記範囲内であれば、テープ重量の増加を抑えられ、かつ耐摩耗強度が得られやすい。また、その空隙率としては、40~90%が好ましい。
また、見かけ密度としては、0.1~0.4g/cmが好ましく、0.2~0.4g/cmであることがより好ましい。不織布の見かけ密度が前記範囲内であれば、耐摩耗強度を保ちつつ結束後の電線類等の柔軟性が得られやすくなる。
【0014】
不織布を構成する繊維としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち、高い耐摩耗性と消音性を両立し、かつ耐熱性向上の観点から、ポリエステル繊維が好ましい。
不織布を構成する繊維の繊維径は、耐摩耗性と柔軟性との観点から、3~30μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。不織布の繊維径が前記範囲内であれば、電線類等の結束品の柔軟性を保ちつつ高い耐摩耗強度の効果が得られやすくなる。
【0015】
基材層の厚みは、300~600μmであることが好ましく、300~500μmであることがより好ましい。基材層の厚みが前記範囲内であれば、クッション性を保ちつつ結束後の電線類等の柔軟性が得られやすくなる。なお、基材層の厚みは、融着部が設けられていない部分をJIS B 7503に規定するダイヤルゲージを用いて3箇所測定し、その平均の値のことを意味する。
【0016】
本発明の結束テープにおいて、基材層に設けられた融着部は、前述の通り、熱エンボス加工により前記不織布を構成する繊維を熱融着して形成されたものであることが好ましい。すなわち、本発明の融着部を形成するための凸部が表面に形成された熱エンボスロールと、フラットロールとの間に不織布を挟み込んで加圧することによって形成されたものであることが好ましい。熱エンボス加工は、少なくとも2種類の異なる形状の凸部がその表面に形成されているエンボスロールを用いて一段階で行われてもよく、複数のエンボスロールを用いて多段階で行われてもよい。
熱エンボス加工を施す際の温度としては、不織布を構成する繊維によって適宜調整されればよいが、例えば、ポリエステル繊維からなる不織布を用いる場合は、180~250℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。
【0017】
(粘着層)
本発明の粘着層は、粘着剤により構成されていることが好ましい。粘着剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来結束テープに用いられている粘着剤を適宜用いることができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を用いることができる。
【0018】
前記アクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーを主成分とするものを用いることができる。
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシ基含有不飽和単量体の重合体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、n-ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
カルボキシ基含有不飽和単量体としては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記アクリル系ポリマーは、上記に例示したような(メタ)アクリル酸アルキルエステルやカルボキシ基含有不飽和モノマー以外のその他のモノマーを含む共重合体とすることもできる。
その他のモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル等の含窒素(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニリテン、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明の1つの態様において、粘着層を構成する粘着剤として、アクリル系粘着剤を用いる場合、前記アクリル系粘着剤に含まれる低分子量成分が、基材層の不織布を透過する現象(裏抜け)を防止する観点から、前記アクリル系ポリマーが架橋されていることが好ましい。
アクリル系ポリマーの架橋方法としては、例えば、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)を照射する方法、任意の架橋剤を添加する方法等が挙げられる。
任意の架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、多官能イソシアネート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、前記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物(SIPS、SEBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、及びブチルゴム(IIR)等からなる群より選択される少なくとも1つのゴム成分に、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂等からなる群より選択される少なくとも1つの粘着付与剤を適宜配合したもの等が挙げられる。
【0023】
シリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴムに、シリコーンレジンやシリコーンオイル等を適宜配合したもの等が挙げられる。
【0024】
ウレタン系粘着剤としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のポリイソシアネートとを反応させてなるものが挙げられる。
【0025】
粘着層を形成する粘着剤には、前述の粘着剤に任意の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の1つの態様においては、粘着層を構成するための粘着剤としては、粘着強度の制御や耐熱性の観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
粘着層の厚みとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、5~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
また、粘着層は、複数の層から構成されていてもよい。粘着層が複数の層から構成される場合、粘着層の総厚みが前記範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0028】
(中間層)
本発明の1つの態様においては、前記基材層と粘着層との間に、中間層を設けてもよい。中間層としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、各種フィルム、クロス等を用いることができる。
【0029】
本発明の結束テープは、その総厚みが、300~700μmであることが好ましく、300~500μmであることがより好ましい。結束テープの総厚みが前記範囲内であれば、クッション性を保ちつつ結束後の電線類等の柔軟性が得られやすくなる。
【0030】
本発明の結束テープは、ISO6722に準拠した測定方法で得られる耐スクレープ摩耗回数が100回以上であることが好ましい。前述の通り、本発明の結束テープは、少なくとも2種類の異なる形状を有する融着部を前記基材層に備えることで、摩耗時に働く水平方向の応力緩和が大きくなるため耐摩耗性に優れている。なお、耐スクレープ摩耗回数は、具体的には、以下の方法で測定した値のことを指す。
<耐スクレープ摩耗回数の測定方法>
直径10mmの鋼棒に結束テープを長手方向に50mmの長さで1層貼り付ける。次に、直径0.45mmのピアノ線を結束テープの基材層側に接触させ、7Nの荷重をかけて、60回/分の速度で長手方向15.5mmの距離を往復運動させる。このときピアノ線は結束テープを擦過し、結束テープが貫通するまでの往復回数を耐スクレープ摩耗回数とする。
【0031】
[結束テープの製造方法]
本発明の結束テープの製造方法としては、例えば、前述の熱エンボス加工によって、不織布の一方の面に融着部を形成して基材層とし、その後、前述の粘着剤を前記基材層に直接塗布して粘着層を形成する方法、一旦、別のシートに塗布した粘着剤を前記基材層に転写する方法等が挙げられる。なお、粘着層を形成するための粘着剤は、前記基材層の融着部が形成されている面とは異なる面側に塗布して粘着層とすることが好ましい。
基材層や別のシートへの粘着剤の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアナイフコート法等が挙げられる。
【0032】
[用途]
前述の通り、本発明の結束テープは、基材層の層割れを抑制でき、さらに耐摩耗性にも優れている。また、消音性も有しているため、これらの性能が要求される分野、例えば、自動車の電線類等結束用の結束テープとして好適に用いることができる。なお、当然ながら本実施形態の結束テープは、その用途が電線類等の結束用に限定されるわけではない。
【0033】
本発明の結束テープのその他の好ましい態様は、不織布からなる基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた粘着層とを有する結束テープであって、前記基材層が、少なくとも2種類の異なる形状を有する融着部を備え、前記融着部が前記基材層の最外層に設けられている、結束テープである。前記不織布の目付は、50~200g/mであることが好ましく、前記不織布の見かけ密度は、0.1~0.4g/cmであることが好ましい。また、前記不織布の繊維径は、3~30μmであることが好ましい。また、前記基材層の厚みは、300~600μmであることが好ましい。また、前記融着部の形状はひし形状であることが好ましく、その面積が0.6~1.6mm、好ましくは0.8~1.2mmであるひし形状の融着部Iと、面積が0.2~0.8mm、好ましくは0.2~0.5mmであるひし形状の融着部IIとを少なくとも有することが好ましい。
【実施例
【0034】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
(基材層の作成)
繊維径20μm、目付100g/m、見かけ密度0.29g/mのポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布に、240℃の温度で熱エンボス加工を施し、前記不織布に融着部1と融着部2とを形成して基材層を得た。得られた基材層の厚みは、350μmであった。なお、融着部1は面積が0.8mmのひし形状とし、融着部2は、面積が0.4mmのひし形状とした。また、基材層の総面積に対する融着部1の面積は20%であり、融着部2の面積は10%であった。また、融着部の合計面積は30%であった。
【0036】
(結束テープの作成)
水溶性のアクリル酸エステルエマルジョン(商品名:「アクリセット(登録商標)SKE-4851」、(株)日本触媒製)100質量部に対し、エポキシ硬化剤(商品名:「TETRAD(登録商標)-C」、三菱ガス化学(株)製)1質量部を配合してアクリル系粘着剤のエマルジョンを調製した。塗工量が固形分で40g/mとなるように前記エマルジョンをシリコーン系剥離紙(商品名:「KP-8」、リンテック(株)製)に塗工し、前記基材層の融着部が形成されていない側の面に転写して粘着層を形成して、結束テープを得た。得られた結束テープの、層割れ、消音性、及び耐摩耗性を、以下の手順に沿って評価した。結果を表1に示す。
【0037】
<層割れの評価>
幅19mm×長さ250mmの結束テープの基材層上に、幅19mm×長さ200mmの結束テープの粘着面を重ね合わせ、50℃の温度下で24時間保持した後、室温まで冷却した。ついで、基材層上に接着された結束テープを端部から約90度上方に勢いよく手で引っ張って引き剥がして層割れの有無を確認し、層割れ及びほぐれが生じなかったものを合格とした。
【0038】
<消音性の評価>
以下の方法で結束テープの減衰値を測定し、以下の評価基準に沿って消音性を評価した。
板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させ、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させた。その際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時の音圧を測定した。鋼棒単体で測定した音圧値をブランクとし、鋼棒の衝撃位置に結束テープを1層貼り付けて測定した音圧値とブランクとの差異を減衰値とした。また、以下の評価基準に沿って消音性を評価し、A評価を合格とした。
(評価基準)
A:減衰値が5dB以上。
B:減衰値が5dB未満。
【0039】
<耐摩耗性の評価>
直径10mmの鋼棒に結束テープを長手方向に50mmの長さで1層貼り付けた。直径0.45mmのピアノ線を結束テープの基材層側に接触させ、7Nの荷重をかけて、60回/分の速度で長手方向15.5mmの距離を往復運動させた。このときピアノ線は結束テープを擦過し、結束テープが貫通するまでの往復回数を耐スクレープ摩耗回数とした。また、以下の評価基準に沿って耐摩耗性を評価し、A評価を合格とした。
(評価基準)
A:耐スクレープ摩耗回数が100回以上。
B:耐スクレープ摩耗回数が100回未満。
【0040】
[実施例2~7、比較例1]
不織布及び融着部の構成を、表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法にて結束テープを作成した。また各例の結束テープについて、実施例1と同様の方法で、層割れ、消音性、及び耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、「PET」は、ポリエチレンテレフタレート繊維を意味し、「PP」はポリプロピレン繊維を意味する。また、表1中、実施例2~7及び比較例1の「アクリル系粘着剤」は、実施例1で用いたものと同じ粘着剤を意味する。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す通り、本発明の構成を満たす実施例1~7の結束テープは、層割れが抑制され、さらに消音性、耐摩耗性にも優れていた。一方、基材層に1種類の融着部のみを形成した比較例1の結束テープでは、層割れは抑制できたものの、耐摩耗性が低かった。以上の結果から、本発明の結束テープは、層割れを抑制でき、消音性及び耐摩耗性にも優れることが確認された。