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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】表面メッシュの自動トリミング
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/20 20110101AFI20231027BHJP
   G06T 17/20 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G06T19/20
G06T17/20 500
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021532104
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019086159
(87)【国際公開番号】W WO2020127632
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】18214500.3
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520454453
【氏名又は名称】メディシム ナームロゼ ベンノートチャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ サムレ, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アッベロス, ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン リームプット, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】モルマンズ, ウォウター
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05854751(US,A)
【文献】特開2005-216219(JP,A)
【文献】国際公開第2017/139194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部境界(2)によって画定された内部メッシュ領域を含む開放表面メッシュ(1)をトリミングするための方法であって、前記方法が、
開放表面メッシュを受け取ることと;
前記開放表面メッシュをトリミングするための切り取り線を決定することと、ただし前記決定することは、
‐ 前記表面メッシュ上の量の空間分布の時間における進展を記述する拡散関数であって、以下のタイプの方程式によって特徴付けられる拡散関数を解き、そして前記外部境界に沿って前記方程式の解の関数値を特定する境界条件を適用することによって前記開放表面上の複数の位置に対する関数値を計算することと、
前記方程式中、vは空間位置であり、tは時間であり、∇・は発散演算子であり、Aは正定値行列であり、∇は勾配演算子であり、fは前記開放表面メッシュ上で規定された関数である、
‐ 前記関数値から1つ以上の等値線(12)を計算することと、ただしこれらの等値線はそれぞれ、同じ関数値の複数の表面メッシュ位置を結合する、
‐ 前記1つ以上の等値線(12)から、前記開放表面メッシュの対象領域を囲む等値線を選択することと、
‐ 前記選択した等値線を、トリミング後に維持すべき表面メッシュ領域を囲む切り取り線として用いるか、または前記選択した等値線を、切り取り線を規定するための後処理ステップにおける基準として用いることと、ただし前記切り取り線の軌跡は、前記選択した等値線と前記メッシュの外部境界との間に位置する、
を含む;及び
前記切り取り線と前記開放表面メッシュの外部境界との間の表面メッシュ領域を取り除くことによって、前記開放表面メッシュをトリミングすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記拡散関数は、メッシュ位置と外部境界との間の距離についての指標、メッシュ位置における面曲率を示す指標、またはメッシュ位置における色を示す指標から選択された、局所的な表面メッシュ特性の指標である独立変数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関数値を計算することは、前記拡散関数に対する定常状態解を計算することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記関数値を計算することは、前記関数の不均一な中間解を計算することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
【請求項6】
【請求項7】
前記熱拡散係数(α)および/または前記熱散逸係数(λ)は、メッシュ位置における面曲率を示す指標、メッシュ位置における色を示す指標、またはメッシュ位置と外部境界との間の距離についての指標に依存する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱拡散係数(α)および/または前記熱散逸係数(λ)は、頂点位置に対して決定した平滑化平均面曲率または平均面曲率に依存する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
【請求項10】
対象となる開放表面メッシュ領域を特定することは、前記均一間隔に配置された等値線のうちの1つを、(i)前記選択した等値線とそれに隣接する等値線との間の最小平均距離、(ii)前記選択した等値線内の最大全表面積、および(iii)前記選択した等値線内の最大合計平均または平滑化平均曲率の基準に基づいて、対象領域を囲む等値線として選択することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象となる表面メッシュ領域を囲む前記選択した等値線を、前記切り取り線として特定する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記切り取り線を、前記切り取り線を特定するための基準として前記選択した等値線を用いる後処理ステップにおいて特定し、前記後処理ステップでは、前記選択した等値線に対して、前記切り取り線を、前記選択した等値線と前記外部境界との間の最短距離が閾値を下回る位置では、前記外部境界の方に動かし、一方、前記切り取り線を、前記選択した等値線と前記外部境界との間の最短距離が前記閾値を上回る位置では、前記選択した等値線のレベルに実質的に維持する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記後処理ステップは、
適応された境界条件を用いて請求項1~8のいずれか1項に記載の拡散関数を前記メッシュ上で適用することによって、前記開放表面メッシュ上の複数の位置に対する関数値を再計算することと、
前記再計算した関数値から1つ以上の新しい等値線を計算することと、
前記1つ以上の新しい等値線から、前記開放表面メッシュの対象領域を囲む等値線を選択することと、
前記新たに選択した等値線を用いて、トリミング後に維持すべき表面メッシュ領域を囲む切り取り線を規定することと、
を含み、
前記適応された境界条件は、特定の解に対して有利であり、この特定の解では、最初の等値線と比べて前記新しい等値線の位置が、(i)前記最初に選択した等値線と前記外部境界との間の最短距離が閾値距離を下回る場合には、前記外部境界の方にシフトし、一方、(ii)この最距離が前記閾値距離を上回る場合には、実質的に維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記後処理ステップは、前記開放表面メッシュ内へと曲がり込んだクラックを画定する外部境界セグメントまたは前記表面メッシュから突き出たフラップ領域を画定する外部境界セグメントの境界頂点を検出することを含み、
前記検出することは、各外部境界頂点に対して、前記外部境界に沿った距離と、前記境界頂点を囲む領域内の前記外部境界頂点とそれに隣接する外部境界頂点との間のユークリッド距離とを決定することを含み、
第1の境界頂点とそれに隣接する境界頂点のうちのいずれか1つとの間のユークリッド距離に対する測地距離の比が閾値を上回った場合、前記境界頂点を、曲がり込んでいるかまたは突き出た外部境界セグメントの境界頂点として検出する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
曲がり込んでいるかまたは突き出た境界セグメントの開始点および終点を規定する入口頂点の対を、
曲がり込んでいるかまたは突き出た外部境界セグメント内にあると検出された各外部境界頂点に対して、ユークリッド距離に対する境界測地距離の比が最高である隣接する境界頂点を、対応する境界頂点として特定することと、
対応する境界頂点として互いに存在する検出した複数の頂点を、複数の候補入口頂点対として保持することと、
前記保持した複数の候補入口頂点対同士を比較して、ある候補入口頂点対の間の外部境界頂点が、別の候補入口頂点対の間の外部境界頂点の部分集合である場合、その候補入口頂点対を廃棄することと、
残りの候補入口頂点対を、曲がり込んでいるかまたは突き出た境界セグメントの入口頂点対として標示することと、
を含む方法を用いて特定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記入口頂点対を含む前記セグメントの個々の頂点と、最初に選択した等値線との間の最短距離のすべてが閾値距離を下回る場合には、前記入口頂点対によって規定された外部境界セグメントを、曲がり込んでいる外部境界セグメントとして標示する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記入口頂点対を含む前記セグメントの少なくとも1つの頂点と、最初に選択した等値線との間の最短距離が閾値距離を上回る場合には、前記入口頂点対によって規定された外部境界セグメントを、突き出たフラップ領域を画定する外部境界セグメントとして標示する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記後処理ステップはさらに、前記選択した等値線を前記曲がり込んでいる境界セグメントの方に再位置付けすることを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記後処理ステップは、(i)前記曲がり込んでいるかまたは突き出た外部境界セグメントに沿って適応された境界条件を用いて、前記開放表面メッシュ上で拡散関数を再適用することによって、新しい関数値を計算すること、(ii)前記新しい関数値から等値線を再計算すること、(iii)対象領域を囲む等値線として、選択した前記再計算した等値線のうちの1つを選択すること、及び(iv)前記選択された再計算した等値線を用いて、前記開放表面メッシュをトリミングするための切り取り線を決定することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
外部境界によって画定された内部メッシュ領域を含む開放表面メッシュをトリミングするための方法であって、前記方法が、
開放表面メッシュを受け取ることと;
トリミング後に維持すべき前記開放表面メッシュの領域を決定すること、ただし前記決定することは、
‐ 前記表面メッシュ上の量の空間分布の時間における進展を記述する拡散関数であって、以下のタイプの方程式によって特徴付けられる拡散関数を解き、そして前記外部境界に沿って前記方程式の解の関数値を特定する境界条件を適用することによって前記開放表面上の複数の位置に対する関数値を計算することと、
前記方程式中、vは空間位置であり、tは時間であり、∇・は発散演算子であり、Aは正定値行列であり、∇は勾配演算子であり、fは前記開放表面メッシュ上で規定された関数である、
‐ トリミング後に維持すべき開放表面メッシュ領域を特定することと、ただし前記領域は関数値が選択した範囲内にあるメッシュ位置をグループ分けする、
を含む;及び
トリミング後に維持すべきと特定した領域の外側の開放表面メッシュ領域を取り除くことによって、前記開放表面メッシュをトリミングすることと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記拡散関数は、メッシュ位置と外部境界との間の距離についての指標、メッシュ位置における面曲率を示す指標、またはメッシュ位置における色を示す指標から選択された、局所的な表面メッシュ特性の指標である独立変数を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
【請求項23】
前記開放表面メッシュは、口腔内領域の一部を表す口腔内の表面メッシュである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記口腔内の表面メッシュは、凸歯列弓と1つ以上の凹メッシュ領域とを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
歯科補綴物をデザインするための又は口腔外科的介入を計画するための方法であって、前記方法が、請求項23または24のいずれか1項に記載の方法に従って、外部境界によって画定された内部メッシュ領域を含む開放表面メッシュをトリミングすることを含む、方法。
【請求項26】
外部境界によって画定された内部メッシュ領域を含む開放表面メッシュをトリミングするためのシステムであって、前記システムは処理ユニットを含み、前記処理ユニットは、
開放表面メッシュを受け取ることと;
前記開放表面メッシュをトリミングするための切り取り線を決定することと、ただし前記決定することは、
‐ 前記表面メッシュ上の量の空間分布の時間における進展を記述する拡散関数であって、以下のタイプの方程式によって特徴付けられる拡散関数を解き、そして前記外部境界に沿って前記方程式の解の関数値を特定する境界条件を適用することによって前記開放表面上の複数の位置に対する関数値を計算することと、
前記方程式中、vは空間位置であり、tは時間であり、∇・は発散演算子であり、Aは正定値行列であり、∇は勾配演算子であり、fは前記開放表面メッシュ上で規定された関数である、
‐ 前記関数値から1つ以上の等値線を計算することと、ただしこれらの等値線は同じ関数値の複数の表面メッシュ位置を結合する、
‐ 前記1つ以上の等値線から、前記開放表面メッシュの対象領域を囲む等値線を選択することと、
‐ 前記選択した等値線を、トリミング後に維持すべき表面メッシュ領域を囲む切り取り線として用いるか、または前記選択した等値線を、切り取り線を規定するための後処理ステップにおける基準として用いることと、ただし前記切り取り線の軌跡は、前記選択した等値線と前記メッシュの外部境界との間に位置する、
を含む;及び
前記切り取り線と前記開放表面メッシュの外部境界との間の表面メッシュ領域を取り除くことによって、前記開放表面メッシュをトリミングすることと、
を行うように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、境界頂点と辺とによって画定された(delineated)内部メッシュ領域を含む3次元(3D)開放表面メッシュモデルの境界領域のトリミングを自動化するための方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、口腔内領域を表す開放表面メッシュのトリミングを自動化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実世界の物体の3Dモデルを用いることは、エンジニアリング、エンターテインメント、法的措置、および医療用途を含む多くの異なる用途において普及している。これらの3Dモデルは典型的に、3Dスキャニング装置を用いて収集したデータから構成されている。異なるタイプの3Dスキャニング装置が使用されており、これらは、3Dデータを取り込むために用いる技術に応じて分類することができる。各技術にはその独自の制限および利点が備わっている。光学式3Dスキャニング装置はその視野によって制限され、スキャニング装置の視野の中に持ち込める物体の表面からのみ3Dデータが収集される。さらに、物体またはその一部の3Dモデルを取得することは典型的に、多くの異なる方向から複数のスキャンを取り込んで物体の種々の側面でデータを収集する必要がある。これらのスキャンは互いに対して位置合わせされて、単一のデータセットにマージされる。3Dスキャニング装置は通常、3D表面データを点群として登録する。点群は、3Dデータのさらなる利用に応じて、モデル(たとえば、構造化点群、ポリゴンメッシュモデル、NURBS表面モデル、または編集可能な特徴ベースのCADモデル)に変換される。ポリゴン表面メッシュモデルには、多面体表面の形状を規定する頂点、辺、および面の集まりが含まれる。
【0003】
物体の一部のみをスキャンするとき、物体全体の3Dモデルは必要でないために、または物体のある部分は3Dスキャニング機器の視野の中に適切に収めることができないために、境界頂点と辺とによって画定された内部メッシュ領域を含む開放表面メッシュモデルを取得する。多くの場合に、このような開放表面メッシュの境界は、たとえば境界領域内でのスキャニングが不完全であるために、不規則であるかまたはギザギザしている。
【0004】
開放表面メッシュモデルの特定の例は口腔内の表面表現であり、たとえば、3D口腔内スキャナ(IOS)を用いて取得した歯列弓の表現である。このような口腔内スキャナを用いることは、時間が節約されて患者に生じる不便さが軽減されることが分かっているために、歯列弓のアナログ印象に対する代替案として普及している。さらに、口腔内スキャナを用いて取得した患者の歯列の表面モデルは、たとえば、この表面モデルを同じ患者の顎顔面領域のCBCTスキャンとマージすることによって、治療計画においてすぐに利用することができる。対照的に、アナログ印象は実験室に送って3Dスキャニングに対して準備する必要がある。しかし、口腔内の表面メッシュモデル(典型的に、口腔内スキャニングから得られる三角形メッシュモデル)の境界区域には、関連性がないかまたは不正確な情報を保持していて取り除く必要がある領域が含まれていることが多い。これらの偽スキャン領域はフラップ領域と言われ、人工産物データであるかまたは患者の唇、頬、舌、または後臼歯の部分を表す場合がある。さらに、口腔内のスキャン表面メッシュの境界は典型的にギザギザしているため、視覚的に満足できるものではなく、口腔内の表面モデルのさらなる処理を複雑にする場合がある。図1に示すのは、ギザギザした境界および大きなフラップ領域を伴う口腔内スキャンモデルである。これらのフラップ領域を取り除き、境界をある程度滑らかにするために、現在利用可能な口腔内スキャニングソフトウェアアプリケーションでは、ユーザが口腔内の表面モデルの境界領域を手動でトリミングすることが、該モデル上にトリミング用の切り取り線を示すことによって可能である。これは時間がかかるとともに、手動トリミングでは表面メッシュ境界を滑らかにすることが満足にはできない。したがって、開放表面メッシュ(口腔内の表面モデルを含む)の外部領域を自動的にトリミングして、メッシュモデルを変更することもメッシュモデルに人工的な表面領域を加えることもなくフラップ領域を取り除いて滑らかな境界を保証することが求められている。
【0005】
Bose(2009)は、3次元体積内に埋め込まれた開放表面を検出するためのレベルセット法について説明している。
【発明の概要】
【0006】
前述の目標を満たすかまたは少なくとも部分的に満たすために、本発明による方法、システム、およびコンピュータプログラムが独立請求項において規定されている。従属請求項では特定の実施形態が規定されている。
【0007】
一実施形態では、コンピュータによって、またはコンピュータのセットによって、方法が実施される(すなわち実行される)。方法には、開放表面メッシュを受け取ることが含まれ、開放表面メッシュは、3Dスキャニングシステムからのデータとしてまたは開放表面メッシュデータを含む電子ファイルとして受け取っても良い。本方法にはさらに、トリミング後に維持すべき該開放表面メッシュの領域を決定することと、維持すべき領域または該領域の外側の領域を該メッシュから取り除くことによって最終的に開放表面メッシュをトリミングすることとが、含まれる。維持すべき該領域を決定することには、
‐ 該開放表面メッシュ上の複数の位置に対する関数値を計算するステップと、ただし該関数値は、好ましくは局所的な表面メッシュ特性を示す指標に関連して、該メッシュ上で徐々に変化する、
‐ トリミング後に維持すべき開放表面メッシュ領域を特定するステップと、ただし該領域は、関数値が選択した範囲内にあるメッシュ位置をグループ分けする、が含まれていてもよい。
【0008】
より好ましくは、維持すべき該領域を決定することには、
‐ 該開放表面メッシュ上の複数の位置に対する関数値を計算するステップと、ただし該関数値は、好ましくは局所的な表面メッシュ特性を示す指標に関連して、該メッシュ上で徐々に変化する、
‐ 該関数値から1つ以上の等値線を計算するステップと、ただしこのような等値線は同じ関数値の表面メッシュ位置を結合する、
‐ 該開放表面メッシュの対象領域を囲む等値線を選択するステップと、
‐ トリミング後に維持すべき表面メッシュ領域を囲む切り取り線を規定するために、該選択した等値線を用いるステップと、が含まれていてもよい。
【0009】
好ましくは、本発明による方法は、ユーザとのやり取りを最小限にするように自動的に実行する。
【0010】
本発明はさらに、一実施形態では、開放表面メッシュを自動的にトリミングするためのシステムに関する。システムには、前述した方法の動作を行うように構成された処理ユニットが含まれている。
【0011】
また本発明は、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、および記憶媒体であって、コンピュータ上で実行されると、コンピュータに、前述した方法を行わせるかまたは前述したようにシステムの機能を実施させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、および記憶媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ギザギザした外部境界(2)といくつかの大きなフラップ領域(3)とを伴う口腔内の表面スキャン(1)の例を示す図である。
図2】その1-リング近傍(グレー区域)における頂点vのボロノイ区域A(A)および混合区域A (B)を示す図である。辺eij=(v,v)に対する角度αijおよびβijも示す。
図3】ノイズの多い境界を伴う2D玩具表面メッシュ上のヒートマップの黒白表現であり、フラップ(右)およびクラック(左)の図である。円形表面は半径が10mmである。境界を固定温度u(v)=1°に保持した状態でおよび他のすべての位置で熱散逸(λ=0.01)がある状態で、熱拡散を適用する。均一間隔に配置された温度にある20本の等値線を用いて、定常状態解が視覚化されている。
図4】人の頭部の3Dスキャンを表す偽上部境界を伴う開放表面メッシュの図である。熱拡散関数を適用することによってこのメッシュをトリミングするために切り取り線(5)を規定した。
図5】下顎(A)および上顎(B)の口腔内表面の単純化した表現である。典型的に、歯科診療では、暗い方のグレー区域を対象とし、一方で、明るい方のグレー区域を、口腔内の表面メッシュを処理するときにトリミングする。
図6】表面上の主曲率を設定する平面の図である(GFDLの下で分配されたSteve Garvieによる画像から適応させた)。
図7】内面頂点(A)および境界頂点(B)の1-リング近傍の概略図である。辺ベクトルは通常の矢印として表し、平均曲率法線κは太字の矢印として表している。
図8】曲率依存性の熱散逸係数(λ)を伴う熱拡散関数を、困難な口腔内の表面メッシュ上で適用することで得られる等値線を示すヒートマップの黒白表現である。
図9】口腔内の表面メッシュに適用された散逸的な熱拡散の定常状態解の図である。20本の等値線が視覚化されている。
図10】対象となるメッシュ領域を囲む等値線の自動選択において決定されて利用される種々の温度等値線変数を表す概略図である。
図11】(A)方程式(20)を用いて計算された温度閾値および(B)口腔内の表面メッシュ上に示された対応する選択した等値線u^の例の図である。
図12】セクション5で説明する後処理ステップから利益を受け得る口腔内の表面メッシュの例の図である。
図13】選択した等値線と、フラップ領域とクラックとをそれぞれ画定する外部境界セグメントの頂点との間の最短距離の概略図である。
図14】選択した等値線または切り取り線と表面メッシュの三角形との間の可能な交点の概略図である。
図15】クラックを画定する外部境界メッシュセグメントの概略図である。波線の一方向矢印は、所与の頂点に対して、ユークリッド距離に対する境界測地距離の比が最高である隣接する頂点を示す。完全な双方向矢印は、ユークリッド距離に対する境界測地距離の比が最高である隣接する頂点として互いに存在する外部境界頂点を示す。このような頂点によって候補入口頂点対が得られる。左側の候補入口対は入口対としては保持されない。なぜならば、この対に囲まれた外部境界頂点が、右側の候補入口対の部分集合を形成するからである。
図16】大臼歯部においてクラック(6)を伴う口腔内表面メッシュに対する種々の後処理ステップによって特定された切り取り線の比較の図である。
図17】熱拡散を(a)玩具表面メッシュおよび(b)口腔内スキャンに、1つの熱源および1つのヒートシンクを用いて適用した図である。(7)は、新たに見出した切り取り線を示し、(8)および(9)は、熱拡散方程式が再適用された熱源(10)およびシンク(11)を囲む局所区域を画定する線をそれぞれ示している。
図18】本発明の一実施形態によるシステムの典型的な実施態様の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、特定の実施形態に対して、ある図面を参照して説明するが、本発明はそれには限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。
【0014】
さらに、説明および特許請求の範囲における用語「第1」「第2」などは、同様の要素を区別するために用いており、必ずしも、順序を、時間的、空間的、ランク付け、または任意の他の方法で説明するためのものではない。当然のことながら、使用する用語は適切な状況の下では交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示したもの以外の他の順序で動作することができる。
【0015】
なお、特許請求の範囲で用いる用語「含む」は、その後に列記される手段に限定されると解釈すべきであり、他の要素またはステップを除外するものではない。したがって、言及したとおりに、提示した特徴、整数、ステップ、またはコンポーネントの存在を指定するものと解釈すべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップまたはコンポーネント、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。したがって、表現「手段AおよびBを含むデバイス」の範囲は、コンポーネントAおよびBのみからなるデバイスに限定すべきではない。本発明に関して、デバイスの唯一の関連性のあるコンポーネントはAおよびBであることを意味している。
【0016】
本明細書の全体にわたって「一実施形態」または「実施形態」に言及することは、実施形態と共に説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたっていろいろな場所で語句「一実施形態において」または「実施形態において」が現れた場合、必ずしもすべてが、同じ実施形態に言及するものでないが、そうである場合もあり得る。さらに、特定の特徴、構造、または特性を任意の好適な方法で組み合わせてもよいことは、本開示から、1つ以上の実施形態において、当業者には明らかである。
【0017】
同様に、当然のことながら、本発明の典型的な実施形態の説明において、本発明の種々の特徴はしばしば、本開示を合理化して種々の本発明の態様の1つ以上を理解することを助ける目的で、単一の実施形態、図、またはその説明においてひとまとめにされる。しかし、このような開示の方法は、特許請求の範囲に記載された発明が、各請求項において明確に説明したものよりも多い特徴を必要とする意図を反映していると解釈すべきではない。むしろ、後述の請求項で反映しているように、本発明の態様は、単一の前述で開示した実施形態のすべての特徴よりも少ないものの中にある。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書によってこの詳細な説明に明確に組み込まれており、各請求項は本発明の別個の実施形態として自立している。
【0018】
さらに、本明細書で説明するいくつかの実施形態には、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴が含まれているが、他の特徴は含まれず、異なる実施形態の特徴を組み合わせたものは、本発明の範囲内であって、異なる実施形態を構成することが意図されている。これは当業者であれば分かることである。たとえば、以下の特許請求の範囲では、請求項に記載された実施形態のいずれかを任意の組み合わせで用いることができる。
【0019】
なお、本発明のある特徴または態様を記述するときに特定の専門用語を用いることは、専門用語が本明細書において、専門用語が対応付けられる本発明の特徴または態様の任意の特定の特性を含むことに限定されると再定義されているという意味を含むものと解釈するべきでない。
【0020】
本明細書で示す説明では、多くの具体的な詳細について述べる。しかし当然のことながら、これらの具体的な詳細を用いずに本発明の実施形態を実施してもよい。他の場合では、本説明の理解が不明瞭にならないように、良く知られた方法、構造、および技術については詳細には示していない。
【0021】
「表面メッシュ」は、本明細書で用いる場合、多面体表面表現の形状を規定する頂点、辺、および面の集まりを含むポリゴン表面メッシュモデルを指す。当業者であれば分かるように、本発明の文脈内において用語「表面メッシュ」は、点間の近傍関係が規定されている組織化された点群を指してもよい。表面メッシュおよび組織化された点群は、3Dコンピュータグラフィックスにおいて用いられることが多い。たとえば、スキャニング装置(たとえば、3D口腔内スキャナなど)を用いて取得した3D表面データを、表面メッシュまたは組織化された点群としてデジタル的に記憶および/または表示することができる。
【0022】
「開放表面メッシュ」は、本明細書では、境界頂点と該境界頂点を接続する境界辺との外部境界によって画定された内部メッシュ領域を含む表面メッシュを指すために用いられる。これらの境界頂点は、それらが他の頂点によって十分に囲まれていないことを特徴とする。内部メッシュ領域には、表面データが無い区域を画定する複数の接続された境界頂点によって規定された1つ以上の孔が含まれていてもよい。本発明の中では、開放表面メッシュの外部境界は好ましくは、表面メッシュの接続された境界頂点の最長の伸びに対応する。
【0023】
「トリミング」は、本明細書では、開放表面メッシュの境界領域を取り除くことを指すために用いられる。典型的に、開放表面メッシュのトリミングには、当初のメッシュ表面上のメッシュ外部境界を完全または部分的に内側に再位置付けすることが伴う。
【0024】
「関数値」は、本明細書では、所与のメッシュ位置(たとえば、特定の頂点または2つの頂点を接続する辺上の位置)に対して該メッシュ上で関数を適用することによって計算された値を指すために用いられる。該関数には、局所的な表面メッシュ特性を独立変数として示す指標が含まれる。好ましい実施形態では、この関数は熱伝達関数であり、該関数値は仮想温度である。
【0025】
「等値線」は、本明細書では、同じ関数値のメッシュ位置を結合する、該開放表面メッシュ上でトレースされた線を指すために用いられる。本発明の文脈において、これらの等値線は、好ましくは開放表面メッシュの領域を囲む閉曲線を形成する。たとえば、開放表面メッシュ上で熱伝達関数を適用するとき、等値線は、該メッシュ上の同じ仮想温度の位置を接続する等温線に対応する。
【0026】
「曲率」は、本明細書で用いる場合、表面の平坦面からのずれを指す。平坦面からのこのようなずれは、「凸」(すなわち、外側に隆起する表面)または「凹」(すなわち、内側に隆起する表面)であってもよい。曲率を記述するための異なる指標が利用可能である。表面の曲率は複数の方向において決定できること(図6)を考えると、所与のメッシュ位置に対して、この指標によって種々の方向の曲率が単一値に結合されることが好ましい。このような指標の例は、セクション3.2で規定される「平均曲率」および「ガウシアン曲率」である。この定義に従うと、平均曲率は、所与の位置において、全体的な面曲率が凸である場合に正であり、全体的な曲率が凹である場合に負である。ある開放表面メッシュは局所的に、全体的な凸または凹曲率を伴う領域内で軽微な曲率変化を有する。この局所的な曲率変化から生じるノイズは、開放表面メッシュまたはその領域上で曲率指標(たとえば、平均曲率)を平滑化することによって解決することができる。
【0027】
「色」は、本明細書で用いる場合、知覚された光学特性(以下:色相、彩度、値、透光性、反射率のうちの1つ以上を含む)を指す。デジタル用途では、色データは、表面メッシュ位置に対応付けられるカラーコードとして利用可能とすることができる。このようなカラーコードは、着色剤値の組み合わせ、たとえば、加色空間における赤色(R)、緑色(G)、青色(B)(まとめてRGB)、または減色空間におけるシアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)、黒色(B)(まとめてCMYK)であってもよい。さらに、YCbCr、Y’CbCr、またはY Pb/Cb Pr/Cr(YCBCRまたはY’CBCRとも書かれる)は、ビデオおよびデジタル撮影システムにおける色画像パイプラインの一部として使用頻度が高い色空間群である(Y’はルーマ成分、CBおよびCRは青の色差成分および赤の色差成分、Yは輝度成分である)。
【0028】
「測地距離」は、本明細書で用いる場合、メッシュ内の2つのメッシュ頂点の間の距離(メッシュに沿って測定)を指し、すなわち、該頂点を接続する最短経路における辺の全長である。本発明の説明における異なる状況において、「境界測地距離」に言及する。この用語は、境界頂点間の最短距離(これらの境界頂点を接続する境界辺によって規定される経路に沿った)を指すために用いられる。
【0029】
3Dスキャニングデータから構成された3D表面メッシュモデルを用いることは、エンターテインメントから医療および歯科介入の計画までの多くの異なる用途において普及している。物体の一部のみの3D表面データを取得するとき、物体全体の3Dモデルは必要でないために、または物体のある部分は3Dスキャニング機器の視野の中に適切に収めることができないために、外部境界頂点とこれらの頂点を接続する辺とによって画定された内部メッシュ領域を含む開放表面メッシュモデルを取得する場合がある。多くの場合に、このような開放表面メッシュの境界は、たとえば境界領域内でのスキャニングが不完全であるために、不規則であるかまたはギザギザしている。さらに、開放表面メッシュの境界領域には、偶発的にスキャンされた対象ゾーンの外側の物体部分の表面データを含む延長部分または突き出たフラップ領域が含まれることがある。一般的に、開放表面メッシュモデルを示すときに不規則な偽境界領域は望ましくない。さらに、不必要または不正確なデータが境界領域にあると、ある用途においてメッシュモデルを適切に用いることが妨げられる場合がある。たとえば、別の2Dまたは3D画像上の開放表面メッシュを覆うと、該フラップ領域は、下に横たわる画像における関連情報を隠す場合がある。開放表面メッシュモデルの例は、3D口腔内スキャナ(IOS)を用いて取得した歯列弓を示す患者の口腔内の表面表現である。図1に、ギザギザした境界および大きなフラップ領域を伴う口腔内スキャンモデルを示す。偽境界領域を伴う開放表面メッシュの別の例は、図4に示す人の頭部の部分的にスキャンされた表面の3D表面メッシュである。これらのフラップ領域を取り除き、メッシュ境界をある程度滑らかにするために、表面メッシュを処理するための現在利用可能なソフトウェア製品では、ユーザが開放表面モデルの境界領域を手動でトリミングすることが、表示した表面モデル上にトリミング用の切り取り線を示すことによって可能である。この手動トリミングでは時間がかかるとともに、トリミングした開放表面メッシュの望ましい滑らかな境界は本当には得られない。したがって、本発明の目的は、開放表面メッシュ(口腔内表面モデルを含む)の境界領域の半自動または自動トリミングを可能にするコンピュータベースの方法を提供して、メッシュモデルを変更することもメッシュモデルに人工的な表面区域を加えることもなくフラップ領域を取り除いて滑らかな境界を保証することである。本発明のトリミング方法には典型的に、当初の表面メッシュ上のメッシュ外部境界を内側に再位置付けし、一方で、新しい表面を追加することまたはトリミング後に保持される表面メッシュの一部に変更を導入することを最小限にするかまたは回避することが伴う。
【0030】
最初のステップでは、本発明のコンピュータベースのトリミング方法には、開放表面メッシュを受け取ることが含まれる。この開放表面メッシュは、3Dスキャニングシステムからのデータとしてまたは開放表面メッシュデータを含む電子ファイルとして受け取ってもよい。本方法にはさらに、トリミング後に維持すべき該開放表面メッシュの領域を決定することと、維持すべき領域または該領域の外側の領域を該メッシュから取り除くことによって最終的に開放表面メッシュをトリミングすることと、が含まれる。維持すべき該領域を決定することには、
‐ 該開放表面メッシュ上の複数の位置に対する関数値を計算するステップと、ただし該関数値は、好ましくは局所的な表面メッシュ特性を示す指標に関連して、該メッシュ上で徐々に変化する、
‐ トリミング後に維持すべき開放表面メッシュ領域を特定するステップと、ただし該領域は、関数値が選択した範囲内にあるメッシュ位置をグループ分けする、が含まれていてもよい。
【0031】
より好ましくは、維持すべき該領域を決定することには、
‐ 該開放表面メッシュ上の複数の位置に対する関数値を計算するステップと、ただし該関数値は、好ましくは局所的な表面メッシュ特性を示す指標に関連して、該メッシュ上で徐々に変化する、
‐ 該関数値から1つ以上の等値線を計算するステップと、ただしこのような等値線は同じ関数値の表面メッシュ位置を結合する、
‐ 該開放表面メッシュの対象領域を囲む等値線を選択するステップと、
‐ トリミング後に維持すべき表面メッシュ領域を囲む切り取り線を規定するために、該選択した等値線を用いるステップと、が含まれていてもよい。
【0032】
典型的に、これらの関数値は該メッシュ上で関数を適用することによって計算され、該関数には、局所的な表面メッシュ特性を独立変数として示す指標が含まれる。好ましくは該値は、少なくとも、開放表面メッシュの外部境界全体と境を接する領域上に広がる複数の位置に対して計算し、より好ましくは該値は、メッシュ表面全体上に広がる位置に対して計算する。典型的に、関数値は少なくとも、開放表面メッシュまたはその任意の領域の頂点位置に対して計算する。ある実施形態では、2つの頂点間の辺上の位置に対する関数値を、該辺によって接続された頂点の関数値からの補間によって取得する。
【0033】
好ましくは、計算した関数値は、メッシュ位置と外部境界との間の距離についての指標、メッシュ位置における面曲率を示す指標、またはメッシュ位置における色を示す指標から選択された、局所的な表面メッシュ特性を示す指標に関連して変化する。好ましくは、該距離指標は、メッシュ位置と外部境界との間の測地距離またはユークリッド距離である。表面の曲率は複数の方向において決定できること(図6)を考えると、所与のメッシュ位置に対して、メッシュ曲率を記述する該指標によって種々の方向の曲率が単一値に結合されることが好ましい。したがって、特に好適な曲率指標はそれぞれガウシアン曲率および平均曲率であることが分かった。ある開放表面メッシュ(口腔内表面を表すものを含む)は、全体的な凸または凹曲率を伴う領域内において局所的な軽微な曲率変化を有していてもよい。このようなメッシュに対して、個々のメッシュ位置に対して求まった曲率指標を平滑化するかまたはぼかすことが好都合であることが分かった。異なるタイプのカラーコードが、メッシュ色を示す指標として用いるのに適している。ある実施形態においては、個々のメッシュ位置に対して求まった色指標を平滑化するかまたはぼかすことが好都合である。
【0034】
【0035】
したがって、対象領域を囲むように選択した等値線は、開放表面メッシュをトリミングするための切り取り線として機能し得る。代替的に、該選択した等値線を該切り取り線を規定するための基準として用いる後処理ステップを行う。たとえば、ユーザは、選択した等値線またはその一部の位置を表面メッシュモデルのディスプレイ上で動かすことによって、該切り取り線を手動で規定することができる。好ましくは、切り取り線は該選択した等値線から自動的に規定される。選択した等値線から切り取り線を自動的に規定するための好適な方策には、該外部境界と選択した等値線との間の最小距離が閾値距離を下回る場合には、メッシュ上の切り取り線を、選択した等値線よりも外部境界の近くに位置付け、一方で、該外部境界と選択した等値線との間の最小距離が該閾値距離を上回る場合には、切り取り線の位置を、選択した等値線の位置と実質的に一致するように規定することが含まれることが分かった。
【0036】
切り取り線を設定したら、開放表面メッシュを、該切り取り線と該開放表面メッシュの外部境界との間の表面メッシュ領域を取り除くことによってトリミングする。切り取り線が開放表面メッシュの1つ以上のポリゴンを切って進んで、少なくとも1つのポリゴン頂点が該等値線に囲まれた領域内にあり、少なくとも1つのポリゴン頂点がこの領域の外側にあるようにする。したがって、メッシュの該トリミングには、この線が開放表面メッシュの当初のポリゴンを切って進む新しい表面メッシュポリゴンを再構成するステップが含まれていることが好ましい。この再構成には典型的に、切り取り線が頂点間の辺と交差する位置に新しい境界頂点を導入することが含まれている。
【0037】
【0038】
特定の実施形態においては、ユーザはまた、内部メッシュ領域内の選択した頂点に対する境界条件を特定してもよく、その結果、該内部メッシュ頂点に対する該方程式の解の関数値が特定される。ユーザはたとえば、メッシュのディスプレイ上で内部メッシュ領域を示して、該メッシュ領域内の頂点に対する関数値を入力することによって、内部メッシュ頂点に対する境界条件を特定してもよい。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
熱拡散関数を伴うある実施形態においては、ユーザは、該頂点に対する高温関数値(たとえば、外部境界頂点に対して設定したものと同じ温度)または低温関数値のいずれかを設定することによって、選択した内部メッシュ領域の頂点に対する境界条件を特定してもよい。これらの設定によって、このような領域は、切り取り線を規定するために選択した等値線の内側または外側のどちらにある可能性が高いかが判定される。代替的に、選択した内部メッシュ領域の頂点を熱源またはヒートシンクとして規定する。この代替的なアプローチを用いるとき、熱拡散関数を適用するためには、力項Fを含むように調整された熱方程式(12)を用いる必要がある。力項Fは、ヒートシンクに対しては負であり、熱源に対しては正であり、他の内部頂点に対しては0である。
【0043】
前述したように、対象領域を囲むように選択した等値線はしたがって、開放表面メッシュをトリミングするための切り取り線として機能してもよいし、または本発明の方法には、選択した等値線を切り取り線を規定するための基準として用いる後処理ステップが含まれていてもよい。典型的に、切り取り線を、選択した等値線を該切り取り線を特定するための基準として用いる後処理ステップにおいて特定する。後処理ステップでは、選択した等値線に対して、該切り取り線を、選択した等値線と外部境界との間の最短距離が閾値を下回る位置では、外部境界の方に動かし、一方、該切り取り線を、選択した等値線と外部境界との間の最小距離が該閾値を上回る位置では、選択した等値線のレベルに実質的に維持する。一実施形態では、この後処理ステップは、適応された境界条件を用いて拡散関数を該メッシュ上で適用することによって、該開放表面メッシュ上の複数の位置に対する関数値を再計算することを伴う。その後に、該再計算した関数値から1つ以上の新しい等値線を計算する。これらの適応された境界条件は好ましくは、特定の解に対して、有利であるように設定され、この特定の解では、最初の等値線と比べて新しい等値線の位置が、(i)該最初に選択した等値線と外部境界との間の最小距離が閾値距離を下回る場合には、外部境界の方にシフトし、一方、(ii)この最小距離が該閾値距離を上回る場合には、実質的に維持される。たとえば、このような新しい等値線は、外部境界に沿った位置で温度を固定する境界条件を伴う熱拡散関数を用いて計算した関数値(仮想温度)から計算することができ、該位置と最初に選択した等値線との間の最短距離が閾値距離を下回る外部境界位置に対しては、温度を、該最小距離が該閾値距離を上回る外部境界位置に対する温度よりも低いレベルに設定する。好ましくは、該外部境界位置は外部境界頂点であり、該最短距離は、該外部境界頂点と選択した等値線の頂点との間の最短のユークリッド距離である。該表面メッシュが口腔内の表面メッシュである場合には、該閾値距離は好ましくは3mmに設定する。新しい等値線を計算した後で、該新しい等値線のうちの1つを該開放表面メッシュの対象領域を囲む等値線として選択する。最後に、この新たに選択した等値線を、トリミング後に維持すべき表面メッシュ領域を囲む切り取り線を規定する際に用いる。該新たに選択した等値線は、切り取り線として機能するか、または切り取り線を特定するためのさらなるステップにおいて基準として用いる。
【0044】
ある開放表面メッシュにはいわゆるクラックが含まれている。クラックは、スキャニングデータが無い細長い区域であり、表面メッシュ内へと曲がり込んだ(bends into)外部境界セグメントによって画定される(図16、6)。これらのクラックが、スキャニングが不完全であるためにデータが無いことに起因するときには、それらは人工物外部境界セグメントに対応付けられ、開放表面メッシュの望ましくないトリミングを起こす場合がある。したがって、このようなクラックを画定する外部境界セグメントを特定することが好都合であり得る。一実施形態では、本発明の方法には、前述したように対象となる表面メッシュ区域を囲む等値線を最初に選択することと、それに続いて後処理ステップが含まれる。後処理ステップには、該最初に選択した等値線を、クラックを画定して該開放表面メッシュ内に曲がり込むかまたは該メッシュの突き出たフラップ領域を画定する外部境界セグメントを特定するときに用いることが含まれる。該後処理ステップにはさらに、これらの曲がり込んでいる(in-bending)、または突き出た外部境界セグメントの一方または両方上でデータを用いて切り取り線を規定することが含まれる。第1のステップでは、該曲がり込んでいるかまたは突き出た外部境界セグメントを特定することには、各境界頂点に対して、外部境界に沿った距離(境界測地距離と言う)と、該境界頂点を囲む領域内での該外部境界頂点とそれに隣接する外部境界頂点との間のユークリッド距離と、を決定することが含まれる。隣接する境界頂点を包含するこの領域は、該外部境界頂点がその中心にある体積(典型的には球体または立方体)として想像することができる。好ましくは、該体積の直径は、クラックまたはフラップ領域の予想される幅の1~3倍、たとえば該幅の1.5~2倍である。開放表面メッシュが口腔内の表面メッシュである場合には、該体積の直径は、好ましくは2~10mm、たとえば4~8mm、たとえば6mmなどである。外部境界頂点が、曲がり込んでいるかまたは突き出た外部境界セグメントの頂点として検出されるのは、該外部境界頂点と該隣接する外部境界頂点との間の該ユークリッド距離に対する該境界測地距離の比が閾値を上回るときである。
【0045】
さらなるステップでは、曲がり込んでいるかまたは突き出た境界セグメントの開始点および終点を規定する入口頂点対を特定する。これらの入口頂点対を特定することには典型的に、
‐ 曲がり込んでいるかまたは突き出た外部境界セグメント内にあると検出された各外部境界頂点に対して、ユークリッド距離に対する境界測地距離の該比が最高である隣接する境界頂点を、対応する境界頂点として特定するステップと、
‐ 対応する境界頂点として互いに存在する検出した複数の頂点を複数の候補入口頂点対として保持するステップと、
‐ 該保持した複数の候補入口頂点対同士を比較して、ある候補入口頂点対の間の最短経路に沿った外部境界頂点が、別の候補入口頂点対の間の外部境界頂点の部分集合である場合、その候補入口頂点対を廃棄するステップと、
‐ 残りの候補入口頂点対を、曲がり込んでいるかまたは突き出た境界セグメントの入口頂点対として標示するステップと、が含まれる。
【0046】
該入口頂点対によって規定された外部境界セグメントをその後に、クラックを画定する曲がり込んでいる外部境界セグメント、または突き出たフラップ領域を画定する外部境界セグメントとして標示する。好ましくは、このような外部境界セグメントは、該セグメントの個々の頂点(入口対頂点を含む)のすべてと最初に選択した等値線との間の最短距離(好ましくは、ユークリッド距離)が閾値距離を下回る場合には、曲がり込んでいる外部境界セグメントとして標示する。口腔内の表面メッシュの場合には、この閾値距離は好ましくは1~10mm、たとえば2~6mm、たとえば3mmに設定する。このような外部境界セグメントを、該セグメントの少なくとも1つの頂点(入口対頂点を含む)と最初に選択した等値線との間の最短距離が閾値距離を上回る場合には、突き出たフラップ領域を画定する外部境界セグメントとして標示することが、さらに好ましい。口腔内の表面メッシュの場合には、この閾値距離は好ましくは、1~10mm、たとえば2~6mm、たとえば3mmに設定する。
【0047】
曲がり込んでいるおよび突き出た外部境界セグメントを該特定した後に、このデータを切り取り線を規定するために用いることができる。好ましくは、このような特定には、該曲がり込んでいる境界セグメントおよび/または突き出た境界セグメントに沿った特定の境界条件を用いて、該メッシュ上で該拡散関数を適用することによって関数値を再計算することが含まれる。これらの再計算した関数値から、1つ以上の新しい等値線を計算し、該等値線のうちの1つを対象領域を囲む等値線として選択する。新たに選択した等値線は、開放表面メッシュをトリミングするための切り取り線として機能してもよいし、またはさらなるステップにおける該基準として用いることができる。特定の例では、該後処理ステップには、外部境界に沿った位置に温度を固定する境界条件を伴う熱拡散関数を用いて、複数のメッシュ位置に対する関数値(仮想温度)を再計算することが含まれている。曲がり込んでいる外部境界セグメントにおける温度を、他の外部境界セグメントにおける温度よりも低く設定することによって、該曲がり込んでいるセグメント付近の内部メッシュ位置におけるメッシュ表面温度が相対的に低くなる。これらの表面メッシュ温度から計算した等値線は、曲がり込んでいる外部境界セグメントの方にシフトする傾向がある。代替的に、曲がり込んでいるセグメント内の外部境界頂点に対して境界条件を規定しない。その結果、やはり、これらの曲がり込んでいるセグメントの方に等値線がこのようにシフトする。
【0048】
さらなる実施形態には、後処理ステップであって、ユーザが、本発明の方法により取得した最初の切り取り線を見た後に、表面メッシュを編集して、該メッシュ上で熱拡散関数を再適用することによって決定したトリミング後に維持すべき表面メッシュ領域内のある選択したメッシュ領域を含むかまたは除外する後処理ステップが含まれる。このような編集には、該頂点に対する高温関数値(たとえば、外部境界頂点に対して設定したものと同じ温度)または低温関数値のいずれかを設定することによって、選択した内部メッシュ領域の頂点に対する境界条件を特定することが含まれていてもよい。これらの設定によって、該メッシュ上で熱拡散関数(12)を再適用するときに、このような領域は、切り取り線を規定するために選択した等値線の内側または外側のどちらにある可能性が高いかが判定される。代替的に、このような編集には、これらの選択した内部メッシュ領域の頂点を熱源またはヒートシンクとして規定することが含まれていてもよい。この代替的なアプローチを用いる場合、熱拡散関数を再適用するときには、力項Fを含むように調整された熱方程式(12)を用いる必要がある。力項は、ヒートシンクに対しては負であり、熱源に対しては正であり、他の内面頂点に対しては0である。
【0049】
力項によって規定されたヒートシンクまたは供給源の効果は典型的に、選択したメッシュ領域とその周囲の区域に限定されることを考慮すると、熱拡散関数(30)を局所的にのみ再適用することによって、この後処理ステップの計算時間を短くすることが可能であり得る。この実施形態による後処理ステップから、等値線を切り取り線を規定するために選択することができるのは、前述したとおりである。
【0050】
【0051】
口腔内の表面メッシュに対しては、局所的なメッシュ曲率を反映する指標を独立変数として含む関数を用いて計算した関数値から等値線を計算することによって、これらの等値線は、凹および凸メッシュ部分間の遷移領域においてより密に位置付けられる傾向があることが明らかになった。前述したように、該遷移領域においてこのように密に位置付けられることは、均一間隔に配置された等値線によって最良に観察された。このような等値線の局所的な密な間隔は、対象となる凸歯列弓領域を囲む等値線を自動的に選択するための手順において有用であることが分かった。一実施形態では、対象領域を囲む等値線を自動的に選択するステップには、以下の最適化基準を組み合わせた最適化関数を用いることが含まれた。(i)選択した等値線とそれに隣接する等値線との間の最小平均距離、(ii)選択した等値線内の最大全表面積、(iii)選択した等値線内での最大合計平均曲率。このように自動的に選択した等値線を、口腔内表面をトリミングするための切り取り線として用いるかまたは切り取り線を規定するための後処理ステップにおける基準として用いることは、前述したとおりである。
【0052】
本発明のトリミング方法は、スキャニング手順の最終ステップとしての3Dスキャニングソフトウェアにおいて特に有用であることが分かった。たとえば、口腔内スキャニングソフトウェアにおいて用いる場合、スキャニングセッションを、滑らかにトリミングされた口腔内の表面メッシュを用いて終わらせることができる。代替的に、本発明の方法を、スキャニング手順の出力を受け取って処理するソフトウェアアプリケーションにおける最初のトリミングステップとして用いる。たとえば、デジタル歯科用途では、様々なタイプのソフトウェアが、光学的スキャニング手順から得られる口腔内の表面メッシュを入力として用いる。CAD/歯科補綴物をデザインするためのCAMソフトウェアアプリケーションでは、口腔内の表面メッシュを補綴物をデザインするための基準として用いる。口腔内の表面メッシュは、このCAD/CAMソフトウェアによって受け取られて処理されたら、患者の口腔内状況の物理モデルを生成するためのラピッドプロトタイピング装置へエクスポートしてもよい。表面メッシュは通常、ラピッドプロトタイピングを促進するのに適した電子ファイルを生成する手順の一部としてトリミングされる。手術計画ソフトウェア(たとえば、移植または顎顔面手術計画ソフトウェア)も、口腔内の表面メッシュを入力として用いる。このような計画ソフトウェアでは、口腔内の表面メッシュが、患者の頭蓋骨の対応するCTスキャンデータとマッチングしてもよい。このようなマッチングでは多くの場合に、偽境界領域とマッチング処理との望ましくない干渉を回避するために口腔内の表面メッシュのトリミングを適切に行う必要がある。
【0053】
【0054】
【0055】
コタンジェント項は(3)ですでに計算してあったので、ボロノイ区域を効率的に計算することができる。しかし、鈍角三角形(90°よりも大きい角度を持つ三角形)が近傍(すなわち、1-リング)の隣接物の中にある場合、図2aから分かるように、ボロノイ領域は1-リングを越えて延びる。したがって、代替的な表面区域指標Aを[5]で規定した。これは図2bに視覚化されている。この例の中では、すべての頂点区域Aは好ましくは、混合された頂点区域Aである。
【0056】
【0057】
【0058】
開放表面メッシュは、熱を容易に伝える無限に薄い金属プレートと考えることができる。ある境界条件が与えられたら、開放表面メッシュ上の仮想温度分布を熱拡散方程式(12)を用いて計算することができる。結果として得られる、中間解または定常状態解の仮想の等温線または等値線によって、表面メッシュ境界領域をトリミングするための候補切り取り線が得られる。好ましくは、定常状態解を用いる。なぜならば、これは(12)の有限差離散化から導き出される連立一次方程式を解くことによって得られるからである。対照的に、中間解は(i)ある時間ステップを繰り返し用いること、(ii)停止基準を規定すること、(iii)異なる数値的安定性問題を取り扱うことが必要である。
【0059】
【0060】
図3に、熱拡散方程式(12)を、ギザギザした境界、外側のフラップ領域、および内側のクラックを伴う2D表面に適用した場合を示す。図3から、最高温度等値線以外はすべて、滑らかな軌跡を有しており、外部のノイズの多い境界と取り替えるための切り取り線を規定するために選択してもよいと結論することができる。
【0061】
2.1.三角形メッシュ上で偏微分方程式を解く
定常状態では、熱散逸方程式(12)~(13)を、ラプラスベルトラミ離散化(5)~(6)を用いて以下のように離散化することができる。
αM-1Cu(v)-Λu(v)=0
(αC-MΛ)u(v)=0
Lu(v)=0,(15)
ここでΛは各頂点iに対する対角行列(対角線上で定数λ)であり、u(v)は、各頂点vに対する温度の列ベクトルである。外部境界頂点に対してディリクレ境界条件を適用する。
u(v)=1°,(16)
【0062】
【0063】
この連立一次方程式は非常に希薄であり、適切な線形ソルバを用いることによって利用することができる。
【0064】
2.2.ヒトの頭部の3D表面メッシュ表現上で偏微分方程式を解く
Minoltaレーザスキャナを用いて人の頭部の3D画像を取得した。カメラの視野の縁において、データ取得は誤っていて不完全であった。図4に例示するように、この結果、3D開放表面メッシュは頭部の上部に偽フラップ領域(暗い領域)が生じた。熱散逸方程式を解くことで、セクション2.1によるこの表面メッシュによって仮想の等温線が得られた。この結果、上部の偽フラップ領域をトリミングするための切り取り線(5)を規定することができた。結果として、頭部の上部の滑らかな画定がなされた。
【0065】
3.面曲率分析に基づいて等値線を計算する
3.1.口腔内領域の曲率
図5に、口腔内領域の上部(上顎)および下部(下顎)部分の単純化モデルを示している。歯科医にとって特に関心のある領域(下顎および上顎と上顎の口蓋との両方の歯列弓または対応する歯のない顎骨領域を含む)を表示している。典型的に、唇、頬、または舌部分を表すモデルの領域についてはそれほど関心はない。さらに、これらの区域は口腔内スキャニング装置の視野に入れることが難しく、これらの領域に対するスキャニングデータは不完全または不正確となる。したがって、歯科目的で口腔内領域の表面メッシュモデルを処理するときには、これらの唇、頬、および舌領域をトリミング除去することが好都合である。興味深いことに、それほど関心がない領域(頬、唇、および舌領域)は典型的に、凹表面区域を有しており、一方で、歯列弓または顎骨領域は全体的に凸区域であることを特徴とする。口蓋は全体的に凹表面を有しているが、大部分は凸歯列弓によって囲まれている。このことから、口腔内領域を表す開放表面メッシュをトリミングするための好適な切り取り線を決定する際に、面曲率の分析を利用できることが分かる。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
4.2.対象となる表面メッシュ領域を含む等値線を自動的に選択するための閾値関数
前述したように口腔内表面に熱拡散方程式(14)を適用した後で、頂点温度u(v)が範囲[0°,1°]にある定常状態解が得られる。これは、境界条件u(v)=1°(16)と、熱散逸によって0°が最低温度となるような温度の指数関数的減衰が起きることと、による。滑らかな境界を得てフラップ領域を取り除くためには、三角形表面メッシュに対する切り取り線として好適な温度等値線を選択する必要がある。フラップ領域がなく比較的滑らかな境界を含む口腔内スキャンを表す表面メッシュを考えた場合、温度が1°に近い温度等値線が、表面メッシュをトリミングするための切り取り線に適し得ることが直感的に理解できる(取り除く必要がある表面がほとんどない)。他方で、大きなフラップ領域を伴う口腔内スキャンを表す表面メッシュに対しては、トリミング用の好適な切り取り線を規定するためには、温度が1°を十分に下回る温度等値線を選択する必要があると予想すべきである。
【0073】
図9では、20の等値線を伴う定常状態解の平面図および正面図を視覚化しており、結果的に、2つの等値線の間にS=19の領域が得られている。典型的に、局所的な熱散逸(14)が低い結果、凹フラップ領域における熱伝達が速くなった場合、外部境界領域における等値線は互いに対してもっと離間に配置される。歯列弓における等値線も、局所的な熱散逸が高いことに起因してこの領域が非常に冷たい(0°に近い)ために、もっと離間に配置される。凹フラップ領域(複数可)が凸歯列弓領域と境を接する遷移領域は、温度等値線がより密に離間配置されていることを特徴とする。表面メッシュをトリミングするための切り取り線を決定するのに適し得る等値線は典型的に、この領域内で見出される。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
5.後処理
セクション4で説明した曲率ベースの熱拡散および自動的な等値線選択によって全般的に、口腔内のメッシュをトリミングするための切り取り線として用いるのに適した選択した等値線が得られた。たとえば、図11bに示す口腔内のメッシュに対して選択した等値線によって、滑らかな切り取り線が得られ、歯列弓に沿って歯表面が保持された。しかし、ある口腔内の表面メッシュに対して、自動的に選択した等値線が、最も好適なトリミングに対する要件を十分に満たさなかったことが観察された。たとえば、口腔内の表面メッシュの外部境界のセグメントが大きなフラップ領域を構成し、一方で、別の外部境界セグメントが、突き出たセクションを伴うことなく比較的滑らかである場合、大きなフラップ領域の存在によって、自動的に選択した等値線の温度がやや低くなった。この等値線を切り取り線として用いると、このような場合には、当初の外部境界の該滑らかなセグメントに沿ってメッシュの過剰なトリミングが生じた(図12aに示すように)。他の口腔内の表面メッシュは、いわゆるクラックを構成した。クラックは、外部境界を口腔内表面の歯区域内に(典型的に大臼歯部内に)曲げるスキャニングプロセス中の不完全なデータ取り込みから生じる。このような口腔内のメッシュを、前述したように選択した等値線に対応する切り取り線を用いてトリミングすると、曲がり込んでいる外部境界と境を接する歯のその部分がトリミング除去された(図12bに示すように)。
【0078】
前述の場合では、選択した等値線を用いることを伴った後処理ステップにおいて、より好適な切り取り線を規定できることが分かった。興味深いことに、外部境界頂点と選択した等値線との間の最短距離によって、外部境界頂点はフラップ領域内または対象領域(たとえば、歯科区域)内のどちらにある可能性が高いかを評価することができる。これを図13に概略的に視覚化する。この距離が短いほど、外部境界頂点が、フラップ領域を画定する外部境界セグメントの一部でない可能性が高い。この距離が長いほど、外部境界頂点が、フラップ領域を画定するセグメントの一部である可能性が高い。この情報を用いて切り取り線を規定することができる。基本的に、この切り取り線の位置を、選択した等値線の位置に対応するように設定する。この等値線はフラップ領域と並んでいて、一方で、他の表面メッシュ領域内のこの等値線よりも外部境界の近くに位置付けられる。2つの後処理アプローチを作成した。すなわち、距離ベースのアプローチと、クラックを画定する外部境界セグメントの特定を伴うアプローチとである。これらの両アプローチは、切り取り線を規定するためにセクション4で説明したように選択した等値線を用いる。
【0079】
5.1.距離ベースのアプローチを用いて切り取り線を規定する
距離ベースのアプローチには、メッシュ表面上で熱拡散関数(14)を再適用することを伴う。各外部境界頂点の温度が、外部境界頂点と選択した等値線の頂点との間の最短のユークリッド距離に応じて固定されるように、境界条件を調整する。そのため、最初のステップにおいて、距離ベースのアプローチには、選択した等値線の頂点を決定することが伴う。その後、外部境界頂点の温度を該最短のユークリッド距離に対して設定し、調整した境界条件を用いて拡散関数を解く。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
5.2.クラックの検出によって切り取り線を規定する
セクション5.1の方法によって通常、口腔内の表面メッシュをトリミングするための許容できる切り取り線が得られる。しかし、口腔内のメッシュが歯または歯領域において顕著なクラックを構成する場合には、クラックを画定する外部境界セグメントの特定を伴う方法を用いることが好都合であり得る。クラックは典型的に、外部境界のセグメントによって画定されたメッシュ表面内の細長くて細い入口である。この特性を、後処理ステップとして、クラックを画定する外部境界セグメントを検出した後に、切り取り線を規定することによって、クラックと境を接するメッシュ領域がトリミング除去されることを回避する後処理ステップにおいて、利用することができる。この後処理ステップには、調整した境界条件を用いて熱拡散関数を(再)適用することが伴う。
【0088】
【0089】
(26)を上述の制約条件と組み合わせて用いることで、外部境界頂点のリストが得られる。外部境界頂点は、クラックまたはフラップ領域を画定する外部境界セグメント内にある。しかし、セグメントを画定する個別のクラックまたはフラップ領域に対する情報は得られない。これに関して、頂点対を特定する、各対はクラックまたはフラップ領域の入口または開始点を規定している。該リスト内の各外部境界頂点に対して、最大比率ωBiおよび対応する頂点vBjの両方を記憶する。2つの列記した外部境界頂点が互いに参照しているとき、それらを候補入口対として記憶する。その後、候補入口対を比較して、第1の候補入口対の間の外部境界頂点が第2の候補入口対の間の外部境界頂点の部分集合である場合には、第1の候補入口対を取り除く。これによって最終的に入口対のリストが得られる。各対は、クラックまたはフラップ領域を画定する外部境界セグメントを規定している。入口対を規定するための方法が、外部境界セグメントを画定するクラックに対して、図15に視覚化されている。
【0090】
最終ステップでは、クラック検出には、クラックを画定する外部境界セグメントを規定する入口対を、フラップ領域を画定するものと区別することが含まれる。これは、該入口対によって規定されたセグメントの各外部境界頂点と、選択した等値線の頂点との間の最短のユークリッド距離を決定することによって行う(5.11を参照のこと)。該外部境界頂点のうちの1つに対して、この最短距離が閾値dmax(ここでは3mmに設定する)を上回る場合には、該入口対は、フラップ領域を画定する外部境界セグメントを規定すると考えられ、他の場合には、該入口対は、クラックを画定する外部境界セグメントを規定すると考えられる。
【0091】
【0092】
第2の選択肢は、第2の熱伝達に対して境界条件を設定するときに、セグメントを画定するクラック内の外部境界頂点に対して温度を固定しないことである。この選択肢によって典型的に、さらにいっそうの保護が得られ、最終的にトリミングされるメッシュにクラック外部境界頂点のほとんどが含まれる。3つの後処理選択肢を、最初に選択した等値線を用いることと比較したものを、図16に示す。
【0093】
【0094】
7.内部メッシュ領域に対する条件を特定する
任意的に、ユーザは、本発明の方法により提案されたトリミング解法を見た後で、口腔内の表面メッシュのある領域を除外するかまたは含めることができる。この例では、これは、選択したメッシュ領域内の頂点をヒートシンクまたは熱源として表示することによって行う。これらの頂点を表示することは、口腔内の表面メッシュの表示された表現上でのメッシュ領域を熱源またはシンク領域としてマーキングすることによって行う。このマーキングに続いて、切り取り線を再推定することが、表面メッシュ上でまたは選択した領域およびその周囲を含むメッシュの部品上で、以下の熱拡散方程式を適用することで可能になる。
ここでFは力項であり、熱源内部頂点に対しては正であり、ヒートシンク内部頂点に対しては負であり、他の内部頂点に対してはゼロである。Fの大きさを調整して、熱源/シンクの影響の領域を決定することができる。この方程式は、セクション2.1で述べたものと同じ方法で解くことができる。必要な計算時間を限定するために、また力項によって規定されたヒートシンクまたは供給源の効果は典型的にその近くの周囲に限定されることを考慮して、選択した領域を含む区域とそれに隣接する区域内で局所的に解く(30)ことで十分であり得る。この局所区域は、供給源/シンク頂点のみを含むリストから始めて、反復的に、このリスト内の頂点の1-リング頂点をこのリストに加えることを、所定のボロノイ区域が覆われるまで行うことによって、決定することができる。玩具例に適用した熱源およびヒートシンクと口腔内の表面メッシュとの例を図17に示す。
【0095】
8.さらなる実施形態および考察
図18は、本発明の実施形態において使用し得るシステム700の典型的な実施態様の概略図である。
【0096】
図17によって例示するように、システム700には、バス755、処理ユニット753、メインメモリ757、ROM758、記憶デバイス759、入力デバイス752、出力デバイス754、および通信インターフェース756が含まれていてもよい。バス755には、システム700のコンポーネントの間の通信を可能にする経路が含まれていてもよい。
【0097】
処理ユニット753には、プロセッサ、マイクロプロセッサ、または命令をインタープリットして実行し得る処理ロジックが含まれていてもよい。メインメモリ757には、処理ユニット753が実行するための情報および命令を記憶し得るRAMまたは別のタイプの動的記憶デバイスが含まれていてもよい。ROM758には、処理ユニット753が使うための静的情報および命令を記憶し得るROMデバイスまたは別のタイプの静的記憶デバイスが含まれていてもよい。記憶デバイス759には、磁気的および/または光学的記録媒体とその対応するドライブとが含まれていてもよい。
【0098】
入力デバイス752には、ユーザがシステム700に情報を入力できるようにするメカニズム、たとえばキーパッド、キーボード、マウス、ペン、音声認識および/またはバイオメトリクスのメカニズムなどが含まれていても良い。出力デバイス754には、ユーザに情報を出力するメカニズム、たとえばディスプレイ、プリンター、スピーカなどが含まれていてもよい。通信インターフェース756には、システム700が他のデバイスおよび/またはシステムと(たとえば、前述したように画像装置等と)通信できるようにする、任意の送受信装置様のメカニズム(または受取部および送信部)が含まれていてもよい。たとえば、通信インターフェース756には、電気通信網を介して別のデバイスまたはシステムと通信するためのメカニズムが含まれていてもよい。
【0099】
システム700は、本明細書で説明したある動作または処理を行ってもよい。これらの動作は、コンピュータ可読媒体(たとえば、メインメモリ757、ROM758、および/または記憶デバイス759)に含まれるソフトウェア命令を処理ユニット753が実行することに応じて行ってもよい。コンピュータ可読媒体は物理または論理メモリデバイスとして規定してもよい。たとえば、論理メモリデバイスには、単一の物理メモリデバイス内のメモリ空間または複数の物理メモリデバイスにわたって分配されたメモリ空間が含まれていてもよい。メインメモリ757、ROM758、および記憶デバイス759にはそれぞれ、コンピュータ可読媒体が含まれていてもよい。記憶デバイス759の磁気的および/または光学的記録媒体(たとえば、読取可能なCDまたはDVD)にも、コンピュータ可読媒体が含まれていてもよい。ソフトウェア命令を、メインメモリ757内に、別のコンピュータ可読媒体(たとえば、記憶デバイス759)から、または通信インターフェース756を介して別のデバイスから読み込んでもよい。
【0100】
メインメモリ759に含まれるソフトウェア命令によって、本明細書で説明した動作または処理(たとえば、前述したステップ100、200、300、および400)を処理ユニット753が行ってもよい。代替的に、ハードワイヤード回路を、ソフトウェア命令の代わりにまたはソフトウェア命令と組み合わせて用いて、本明細書で説明した処理および/または動作を実施してもよい。このように、本明細書で説明した実施態様は、ハードウェアおよびソフトウェアのいずれかの特定の組み合わせに限定されない。
【0101】
さらなる本発明の実施形態では、前述した手順、ステップ、または処理のうちのいずれか1つを、コンピュータ実行可能命令を用いて、たとえば、コンピュータ実行可能な手順、方法などの形態で、何らかの種類のコンピュータ言語で、および/またはファームウェア上の埋め込みソフトウェア、集積回路などの形態で実行してもよい。
【0102】
本発明を、詳述した例に基づいて説明してきたが、詳述した例は、より良好な理解を当業者にもたらす働きをするだけであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって大きく規定される。
【0103】
参考文献
BISWAIJT BOSE:「Detecting Open Surfaces in Three Dimension」、電気工学およびコンピュータサイエンスにおける博士号に対する要件を部分的に満たすために電気工学およびコンピュータサイエンス学科に提出された学位論文。2009年6月1日、1~104ページ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18