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特許7374196ヘリコバクターピロリ連関疾患に対する遺伝子マーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ヘリコバクターピロリ連関疾患に対する遺伝子マーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20231027BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20231027BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231027BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021538034
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2019018607
(87)【国際公開番号】W WO2020139021
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0171846
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ユン・リ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヘ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・オ
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057362(JP,A)
【文献】特表2018-526988(JP,A)
【文献】特表2014-518640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF21(fibroblast growth factor 21.Gene ID:26291)遺伝子の発現量を測定する製剤を含む、ヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用組成物。
【請求項2】
CTH(cystathionine g-lyase.Gene ID:1491)またはCREBRF(cAMP responsive element binding protein.Gene ID:153222)遺伝子の発現量を測定する製剤を追加で含む、請求項1に記載のヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用組成物。
【請求項3】
DLL4(delta-like 4.Gene ID:54567)、FGF18(fibroblast growth factor 18.Gene ID:8817)、FOS(Fos proto-oncogene、AP-1 transcription factor subunit.Gene ID:2353)、PDK1(phosphoinositide-dependent kinase-1、Gene ID:5170)、PTPRN(receptor-type tyrosine-protein phosphatase-like N、Gene ID:5798)、CLIC4(chloride intracellular channel 4.Gene ID:25932)、PTPRB(protein tyrosine phosphatase、receptor type B.Gene ID:5787)、PPP1R15A(protein phosphatase 1 regulatory subunit 15A.Gene ID:23645)、PTPRH(protein tyrosine phosphatase、receptor type H.Gene ID:5794)、DDIT3(DNA damage inducible transcript3.Gene ID:1649)、BIRC3(baculoviral IAP repeat containing3.Gene ID:330)、FOXO3(forkhead box O3.Gene ID:2309)、BCL2(BCL2、apoptosis regulator.Gene ID:596)、PRKCE(protein kinase C epsilon.Gene ID:5581)、CHMP4C(charged multivesicular body protein 4C.Gene ID:92421)、CLDN14(claudin 14.Gene ID:23562)、SLC7A11(solute carrier family 7 member 11.Gene ID:23657)、BOC(BOC cell adhesion associated、oncogene regulated.Gene ID:91653)、AJUBA(ajuba LIM protein.Gene ID:84962)、LMO7(LIM domain 7.Gene ID:4008)、MMP24(matrix metallopeptidase 24.Gene ID:10893)、C3orf58(divergent protein kinase domain 2A.Gene ID:205428)、KLF10(Kruppel like factor 10.Gene ID:7071)、CSGALNACT1(chondroitin sulfate N-acetylgalactosaminyltransferase 1.Gene ID:55790)、CEP120(centrosomal protein 120.Gene ID:153241)、CHAC1(ChaC glutathione specific gamma-glutamylcyclotransferase 1.Gene ID:79094)、ASNS(asparagine synthetase(glutamine-hydrolyzing).Gene ID:440)、NFE2L2(nuclear factor、erythroid 2 like 2.Gene ID:4780)、RIOK3(RIO kinase3.Gene ID:8780)、TXNIP(thioredoxin interacting protein.Gene ID:10628)、MTR(5-methyltetrahydrofolate-homocysteine methyltransferase.Gene ID:4548)、IFRD1(interferon related developmental regulator 1.Gene ID:3475)、ADGRA2(adhesion G protein-coupled receptor A2.Gene ID:25960)、TBX4(T-box 4.Gene ID:9496)、OVOL2(ovo like zinc finger 2.Gene ID:58495)、ACVRL1(activin A receptor like type 1.Gene ID:94)、ALB(albumin.Gene ID:213)、JADE1(jade family PHD finger 1.Gene ID:79960)、MLLT11(MLLT11、transcription factor 7 cofactor.Gene ID:10962)、ADORA1(adenosine A1 receptor.Gene ID:134)、TNFRSF8(TNF receptor superfamily member 8.Gene ID:943)、NLRP12(NLR family pyrin domain containing 12.Gene ID:91662)、CASP14(caspase 14.Gene ID:23581)、LTA(lymphotoxin alpha.Gene ID:4049)、SMAGP(small cell adhesion glycoprotein.Gene ID:57228)、NEO1(neogenin precursor1.Gene ID:4756)、MTSS1(MTSS1、I-BAR domain containing.Gene ID:9788)、TSPAN32(tetraspanin32.Gene ID:10077)、CLDN8(claudin 8.Gene ID:9073)、MYBPH(myosin binding protein H.Gene ID:4608)、SGCE(sarcoglycan epsilon.Gene ID:8910)、CDH15(cadherin 15.Gene ID:1013)、ARHGAP6(Rho GTPase activating protein 6.Gene ID:395)、ZFP36L2(ZFP36 ring finger protein like 2.Gene ID:678)、EHF(ETS homologous factor.Gene ID:26298)、SLAMF6(SLAM family member 6.Gene ID:114836)、HLA-DPB1(major histocompatibility complex、class II、DP beta 1.Gene ID:3115)、SSC5D(scavenger receptor cysteine rich family member with 5 domains.Gene ID:284297)、CCR4(C-C motif chemokine receptor 4.Gene ID:1233)、CCR7(C-C motif chemokine receptor 7.Gene ID:1236)、KLRG1(killer cell lectin-like receptor subfamily G member 1.Gene ID:10219)、BLNK(B cell linker.Gene ID:29760)、IGFBP1(insulin-like growth factor=binding protein 1.Gene ID:3484)、GIF(MIF、macrophage migration inhibitory factor.Gene ID:4282)遺伝子、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される遺伝子の発現量を測定する製剤を追加で含む、請求項2に記載のヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用組成物。
【請求項4】
前記遺伝子の発現量を測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAの量を測定する製剤、前記遺伝子から発現されたタンパク質の量を測定する製剤、またはこれら2つ全てである、請求項1に記載のヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用組成物。
【請求項5】
前記遺伝子のmRNAの量を測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAまたはcDNAに特異的に結合するプライマーまたはプローブを含む、請求項4に記載のヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用組成物。
【請求項6】
前記遺伝子から発現されたタンパク質の量を測定する製剤は、前記遺伝子から発現されたタンパク質に特異的な抗体またはアプタマーを含む、請求項4に記載のヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用組成物。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の組成物を含むヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断用キット。
【請求項8】
ヘリコバクターピロリに感染した患者のサンプルから試料DNAを準備するステップ;
前記試料DNAを請求項1から6の何れか一項に記載の組成物を用いて増幅するステップ;及び
前記増幅の結果からヘリコバクターピロリ感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現の程度を確認するステップ;
を含むヘリコバクターピロリに感染した患者においてヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断のために必要な情報を提供する方法。
【請求項9】
前記遺伝子の発現の程度を確認するステップは、前記遺伝子のmRNAの量、前記遺伝子から発現されたタンパク質の量、またはこれら2つ全てを測定するものである、請求項8に記載のヘリコバクターピロリに感染した患者においてヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断のために必要な情報を提供する方法。
【請求項10】
前記遺伝子のmRNAの量を測定することは、前記遺伝子のmRNAまたはcDNAに特異的に結合するプライマーまたはプローブを用いるものである、請求項9に記載のヘリコバクターピロリに感染した患者においてヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断のために必要な情報を提供する方法。
【請求項11】
前記遺伝子から発現されたタンパク質の量を測定することは、前記遺伝子から発現されたタンパク質に特異的な抗体またはアプタマーを用いるものである、請求項9に記載のヘリコバクターピロリに感染した患者においてヘリコバクターピロリの感染による胃癌の診断のために必要な情報を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)連関疾患の診断及び治療に有用に用いることができる遺伝子マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
1983年、オーストラリアの微生物学者であるマーシャル(Marchall)とウォレン(Warren)は、初めてB型胃炎患者の胃粘膜生検組織で曲がった細菌を発見し、前記細菌を培養してカンピロバクター属(Campylobacter genus)と連関された新たな種の細菌であることを究明して以来、ヘリコバクターピロリと胃炎及び消化性潰瘍などの上部胃腸管疾患との間の連関性に対する活発な研究がなされてきた。ヘリコバクターピロリは、グラム陰性桿菌として薄い膜で覆われた鞭毛があり、多量のウレアーゼ(urease)を放出し、大便-口腔経路を介して伝播されるものと知られており、1994年には、世界保健機構(WHO)が確実な発癌因子であると明らかにして世界的に注目を浴びている病源菌である。
【0003】
現在、ヘリコバクターピロリによる疾病の発病メカニズムは、食物とともに胃内腔に入ってきた細菌が、強い運動性を有した鞭毛を用いて胃の粘液層を突き抜け、胃粘液層内の胃の上皮細胞層の上部と細胞間の接合部に生食しながら、多量のウレアーゼを分泌して粘液層をアルカリ性に変化させることにより、ガストリンによる胃酸分泌の促進を異常に過多に誘導し、結局、炎症及び潰瘍をもたらすものと知られている。また、ヘリコバクターピロリが胃腺癌(gastric adenocarcinoma)発病の重要な危険要素であることを究明した最近の研究報道により、世界保健機構ではヘリコバクターピロリを第1群発癌物質に指定した。
【0004】
特に、ヘリコバクターピロリによる感染は、韓国をはじめとした発展途上国で多く発生するものと報告されており、上部胃腸管の症状がない5,732名を対象に実施した全国疫学調査の結果によると、ヘリコバクターピロリ感染率は、全国民で46.6%であり、16歳以上の大人で69.4%、特に、40代において78.5%という高い感染率を示すことが確認された。また、消化性潰瘍患者1,031名を対象にヘリコバクターピロリ感染率を調査した結果、胃潰瘍患者の66%及び十二指膓潰瘍患者の79%がヘリコバクターピロリに感染したものと確認され、胃及び十二指膓同伴の潰瘍患者の71%がヘリコバクターピロリに感染したものと報告された。
【0005】
多数の疾病状態は、遺伝子DNAのコピー(copy)数の変化または特定遺伝子の転写水準の変化による(例えば、開始制御、RNA前駆体の提供、RNAプロセッシングなどによる)多様な遺伝子の発現水準の差を特徴とする。例えば、遺伝物質の損失及び獲得は、悪性転換(malignant transformation)及び進行において重要な役割を担う。このような獲得及び損失は、少なくとも2種類の遺伝子、すなわち、腫瘍遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子によって「駆動される(driven)」ものと考えられる。腫瘍遺伝子は、腫瘍発生の陽性調節因子であり、腫瘍抑制遺伝子は、腫瘍発生の陰性調節因子である。よって、特定の遺伝子(例えば、腫瘍遺伝子または腫瘍抑制遺伝子)の発現(転写)水準の変化は、多様な疾患、例えば、癌の存在及び進行に対する道標として機能する。
【0006】
ヘリコバクターピロリの感染は、前記遺伝子発現パターンの一部または全部を反転させる。よって、このような遺伝子の一部または全部の発現パターンの変化は、治療剤の効能をモニターしたり予測する方法として用いられ得る。遺伝子発現変化の分析は、関心のある標的組織(例えば、腫瘍)またはいくつかの代用細胞集団(例えば、末梢血白血球)で行われてよい。後者の場合、遺伝子発現の変化と効能(例えば、腫瘍収縮または非成長(non-growth))の相関関係は、効能に対するマーカーとして用いようとする遺伝子発現パターンの変化に対して特に強力でなければならない。従来、ヘリコバクターピロリ感染を検出することができる多数の診断用製剤が本技術分野に公知となっている(特許文献1及び特許文献2)。
【0007】
しかし、現在までヘリコバクターピロリの感染によりその発現パターンが変化し得る特定の遺伝子群に対する情報と、このような情報を用いてヘリコバクターピロリ連関疾患の発生、進行及び予後を診断または予測する方法に対してはほとんど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第2003-0001506号公報
【文献】韓国公開特許第2000-0033013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、ヘリコバクターピロリの感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現量を測定する製剤を含むヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用組成物、及び前記組成物を用いてヘリコバクターピロリ連関疾患を有する患者の診断、予後の予測及び治療戦略の決定に助けとなる方法を提供することを課題とする。
【0010】
また、本出願は、哺乳動物組織または細胞サンプルにおいて、ヘリコバクターピロリ感染によりその発現が特異的に変化する遺伝子群を確認及び分析する方法を提供し、前記遺伝子群をバイオマーカーとして哺乳動物個体においてヘリコバクターピロリ連関疾患を診断し治療効果を予測する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するため、本出願の一側面は、ヘリコバクターピロリの感染により発現が増減する遺伝子の発現量を測定する製剤を含むヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用組成物及びキットを提供する。
【0012】
本出願の他の側面は、ヘリコバクターピロリに感染した患者の生物学的試料からヘリコバクターピロリの感染により発現が増減する遺伝子のmRNA、または前記遺伝子から発現されるタンパク質が存在する量を測定し、正常である個体の試料から測定した量と比較するステップを含むヘリコバクターピロリ連関疾患の診断または予後予測の情報を提供する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本出願は、ヘリコバクターピロリの感染に関し、その発現が特異的に増加または減少する遺伝子群を確認し、ヘリコバクターピロリの感染が回復する場合、前記遺伝子群の発現が正常状態に回復することを確認した。よって、本発明の組成物及びキットは、ヘリコバクターピロリ連関疾患の診断や予後の予測に効果的に用いることができる。
【0014】
但し、本出願の効果は、前記で言及した効果に制限されるものではなく、言及されていないまた他の効果は、下記の記載から本技術分野の通常の技術者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヘリコバクターピロリの感染によりその発現が特異的に増加する遺伝子の種類を示すグラフである。
図2】ヘリコバクターピロリが感染し特定の遺伝子の発現が増加した細胞株に本出願のキムチ抽出物を処理することにより、その発現が正常状態に回復する遺伝子のリストを示すヒートマップ(Heatmap)及び電気泳動写真である。
図3】ヘリコバクターピロリの感染によりその発現が特異的に減少する遺伝子の種類を示すグラフである。
図4】ヘリコバクターピロリが感染し特定の遺伝子の発現が減少した細胞株に本出願のキムチ抽出物を処理することにより、その発現が正常状態に回復する遺伝子のリストを示すヒートマップ及び電気泳動写真である。
図5】動物モデルにおいて、ヘリコバクターピロリの感染により増加したERストレス遺伝子の発現が、本出願のキムチ抽出物を処理することにより正常状態に回復することを示すグラフである。
図6】動物モデルにおいて、ヘリコバクターピロリの感染により減少した抗酸化関連遺伝子の発現が、本出願のキムチ抽出物を処理することにより正常状態に回復することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本出願の内容を具体的に説明する。
【0017】
本明細書において、別に定義されない限り、本明細書で用いられた全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者により通常理解されるものと同一の意味を有する。一般的に、本明細書で用いられた命名法及び以下に記述する実験方法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
1.ヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用組成物及びキット
本出願は、ヘリコバクターピロリの感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現量を測定する製剤を含むヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用組成物、及び前記組成物を含むヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用キットを提供する。本出願の一具現形態において、前記ヘリコバクターピロリの感染により発現が増加する遺伝子は、FGF21(fibroblast growth factor 21.Gene ID:26291)、CTH(cystathionine g-lyase.Gene ID:1491)、CREBRF(cAMP responsive element binding protein.Gene ID:153222)、DLL4(delta-like 4.Gene ID:54567)、FGF18(fibroblast growth factor 18.Gene ID:8817)、FOS(Fos proto-oncogene、AP-1 transcription factor subunit.Gene ID:2353)、PDK1(phosphoinositide-dependent kinase-1、Gene ID:5170)、PTPRN(receptor-type tyrosine-protein phosphatase-like N、Gene ID:5798)、CLIC4(chloride intracellular channel 4.Gene ID:25932)、PTPRB(protein tyrosine phosphatase、receptor type B.Gene ID:5787)、PPP1R15A(protein phosphatase 1 regulatory subunit 15A.Gene ID:23645)、PTPRH(protein tyrosine phosphatase、receptor type H.Gene ID:5794)、DDIT3(DNA damage inducible transcript3.Gene ID:1649)、BIRC3(baculoviral IAP repeat containing3.Gene ID:330)、FOXO3(forkhead box O3.Gene ID:2309)、BCL2(BCL2、apoptosis regulator.Gene ID:596)、PRKCE(protein kinase C epsilon.Gene ID:5581)、CHMP4C(charged multivesicular body protein 4C.Gene ID:92421)、CLDN14(claudin 14.Gene ID:23562)、SLC7A11(solute carrier family 7 member 11.Gene ID:23657)、BOC(BOC cell adhesion associated、oncogene regulated.Gene ID:91653)、AJUBA(ajuba LIM protein.Gene ID:84962)、LMO7(LIM domain 7.Gene ID:4008)、MMP24(matrix metallopeptidase 24.Gene ID:10893)、C3orf58(divergent protein kinase domain 2A.Gene ID:205428)、KLF10(Kruppel like factor 10.Gene ID:7071)、CSGALNACT1(chondroitin sulfate N-acetylgalactosaminyltransferase 1.Gene ID:55790)、CEP120(centrosomal protein 120.Gene ID:153241)、CHAC1(ChaC glutathione specific gamma-glutamylcyclotransferase 1.Gene ID:79094)、ASNS(asparagine synthetase(glutamine-hydrolyzing).Gene ID:440)、NFE2L2(nuclear factor、erythroid 2 like 2.Gene ID:4780)、RIOK3(RIO kinase3.Gene ID:8780)、TXNIP(thioredoxin interacting protein.Gene ID:10628)、MTR(5-methyltetrahydrofolate-homocysteine methyltransferase.Gene ID:4548)、IFRD1(interferon related developmental regulator 1.Gene ID:3475)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されてよいが、これに限定されるものではなく、前記遺伝子の発現の増加有無を確認することによりヘリコバクターピロリの感染有無を診断することができる。本出願の一具現形態において、前記ヘリコバクターピロリの感染により発現が増加する遺伝子は、FGF21、CTH、CREBRF、PTPRN及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されてよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本出願の他の具現形態において、前記ヘリコバクターピロリの感染により発現が減少する遺伝子は、ADGRA2(adhesion G protein-coupled receptor A2.Gene ID:25960)、TBX4(T-box 4.Gene ID:9496)、OVOL2(ovo like zinc finger 2.Gene ID:58495)、ACVRL1(activin A receptor like type 1.Gene ID:94)、ALB(albumin.Gene ID:213)、JADE1(jade family PHD finger 1.Gene ID:79960)、MLLT11(MLLT11、transcription factor 7 cofactor.Gene ID:10962)、ADORA1(adenosine A1 receptor.Gene ID:134)、TNFRSF8(TNF receptor superfamily member 8.Gene ID:943)、NLRP12(NLR family pyrin domain containing 12.Gene ID:91662)、CASP14(caspase 14.Gene ID:23581)、LTA(lymphotoxin alpha.Gene ID:4049)、SMAGP(small cell adhesion glycoprotein.Gene ID:57228)、NEO1(neogenin precursor1.Gene ID:4756)、MTSS1(MTSS1、I-BAR domain containing.Gene ID:9788)、TSPAN32(tetraspanin32.Gene ID:10077)、CLDN8(claudin 8.Gene ID:9073)、MYBPH(myosin binding protein H.Gene ID:4608)、SGCE(sarcoglycan epsilon.Gene ID:8910)、CDH15(cadherin 15.Gene ID:1013)、ARHGAP6(Rho GTPase activating protein 6.Gene ID:395)、ZFP36L2(ZFP36 ring finger protein like 2.Gene ID:678)、EHF(ETS homologous factor.Gene ID:26298)、SLAMF6(SLAM family member 6.Gene ID:114836)、HLA-DPB1(major histocompatibility complex、class II、DP beta 1.Gene ID:3115)、SSC5D(scavenger receptor cysteine rich family member with 5 domains.Gene ID:284297)、CCR4(C-C motif chemokine receptor 4.Gene ID:1233)、CCR7(C-C motif chemokine receptor 7.Gene ID:1236)、KLRG1(killer cell lectin-like receptor subfamily G member 1.Gene ID:10219)、BLNK(B cell linker.Gene ID:29760)、IGFBP1(insulin-like growth factor=binding protein 1.Gene ID:3484)、GIF(MIF、macrophage migration inhibitory factor.Gene ID:4282)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されてよいが、これに限定されるものではなく、前記遺伝子の発現の減少有無を確認することによりヘリコバクターピロリの感染有無を診断することができる。
【0021】
本出願において、前記で例示されたもののようなヘリコバクターピロリの感染により発現が増加または減少する遺伝子の塩基配列、及び前記遺伝子から発現されたタンパク質のアミノ酸配列は、NCBIのGenBankなどの公開されたデータベースや文献から本技術分野の通常の技術者が容易に入手することができる。具体的に、本出願のGene IDは、NCBI(The National Center for Biotechnology Information)のUID(Unique identifiers)であり、NCBIの遺伝子検索(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)を介して確認することができる。
【0022】
本出願の一具現形態において、ヘリコバクターピロリの感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現量を測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAが存在する量、または前記遺伝子から発現されたタンパク質が存在する量を測定する製剤であってよい。前記遺伝子のmRNAが存在する量を測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAに特異的に結合して認識できるようにするか、量を増幅させることができる製剤を意味する。具体的な例として、前記mRNAまたはmRNAを逆転写させて作ったcDNAの塩基配列に特異的に結合するプライマー対やプローブであってよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
本出願において、前記「プライマー」は、遊離3’-末端水酸化基(free 3’ hydroxyl group)を有する短い長さの核酸配列であって、相補的な鋳型鎖(template strand)と塩基対を形成することにより、核酸重合酵素が鋳型鎖を複製して増幅する際の開始地点を提供する役割を担う核酸配列を示す。そして、前記「プローブ」は、mRNAまたはcDNAと特異的結合をなすことができる配列からなる数塩基から数百塩基の長さを有する核酸切片を示す。
【0024】
本出願の一具現形態において、前記遺伝子のmRNAが存在する量は、前記遺伝子配列のセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR、RT-PCR、競合的RT-PCR(Competitive RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)などの方法を行うことにより測定することができ、前記遺伝子のmRNAまたは逆転写して作られたcDNAに特異的結合をなし得る配列を有したプローブを用いてノーザンブロット(Northern blot)、マイクロアレイ(Microarray)などの方法を行うことにより測定することができ、さらには、RNase保護分析法(RNase protection assay)、塩基配列分析(sequencing)などの方法で測定することができるが、これに限定されるものではなく、本技術分野の通常の技術者に知られている如何なる方法を用いるのに必要な製剤でも可能である。
【0025】
前記遺伝子から発現されたタンパク質が存在する量を測定する製剤は、前記タンパク質に特異的に結合して認識できるようにする製剤を意味する。具体的な例として、前記タンパク質に特異的に結合する抗体またはアプタマー(aptamer)であってよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記「抗体」は、免疫学的に前記タンパク質のエピトープ(epitope)と特異的結合して反応性を有する兔疫グロブリン分子を意味し、単クローン抗体、多クローン抗体、全長の鎖構造を有した抗体、少なくとも抗原結合機能を有する機能的な断片の抗体及び組換え抗体を非制限的に全て含む意味で用いられる。前記アプタマーは、前記タンパク質を標的として特異的な結合を形成することができる特徴を有し、安定的な3次立体構造をなしている一本鎖核酸分子を意味し、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment)技術などを用いて前記タンパク質に特異性を有したアプタマーを合成することができる。
【0027】
本出願の一具現形態において、前記遺伝子から発現されたタンパク質の量は、前記抗体またはアプタマーを用いてウエスタンブロット(Western blot)、タンパク質マイクロアレイ(タンパク質チップ)、ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)、二次元電気泳動法(2-Dimentional Electrophoresis)、免疫化学染色法(Immunohistochemistry、IHC)、免疫蛍光法(Immunofluorescence)、共免疫沈降法(Co-Immunoprecipitation Assay)、FACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)、放射線免疫分析(Radioimmunoassay、RIA)、放射免疫拡散法(Radioimmunodiffusion)、MALDI-TOF分析(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)などの方法で測定することができるが、これに限定されるものではなく、本技術分野の通常の技術者に知られている如何なる方法を用いるのに必要な製剤でも可能である。
【0028】
前記遺伝子の発現量を測定する製剤を含む組成物は、ヘリコバクターピロリ連関疾患の診断だけではなく、前記疾患を有する患者の予後に対する予測の用途として用いることができる。本出願の一具現形態において、前記遺伝子の発現量を測定した結果、前記遺伝子の発現量が増加または減少している場合、ヘリコバクターピロリ連関疾患を有する患者の予後が悪いとの予測ができるようにし、治療のための戦略と対策を樹立することができる。
【0029】
本出願において、「診断」との用語は、病理状態の存在または特徴を確認するものであって、本発明の目的上、癌患者の転移有無による癌治療効果の差を確認することだけではなく、癌の治療後、当該個体の再発、薬物反応性、耐性などの有無を判断することを意味する。好ましくは、本発明の遺伝子の突然変異を用いる場合、腎臓癌患者の試料から突然変異の有無を確認することにより、当該腎臓癌患者の転移による腎臓癌治療効果の差、及び今後の当該患者の予後が分かる生存率の差に対しても予測が可能である。
【0030】
本出願において、「予後」との用語は、ヘリコバクターピロリ連関疾患の例を挙げて、再発、転移性拡散及び薬物耐性を含めた病気の経過及び完治可否を意味する。本出願の一具現形態において、前記ヘリコバクターピロリ連関疾患としては、胃炎、胃潰瘍、胃癌などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本出願において、「癌」との用語は、異常細胞の調節されない成長を特徴とする疾患部類の任意の一員を含む。前記用語は、悪性、陽性、軟組織または固形のうちいずれかに特徴されるにかかわらず、全ての既知の癌及び新生物の状態、及び転移前/後の癌を含む全ての時期及び等級の癌を含む。
【0032】
本出願において、「遺伝子」及びこの変形物との用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与したDNA断片を含み;これはコーディング部位以前及び以後の部位、例えば、プロモーター及び3’非翻訳領域をそれぞれ含むだけでなく、個別的なコーディング断片(エクソン)間の介入配列(イントロン)を含む。
【0033】
本出願の一具現形態において、前記遺伝子の突然変異は、任意の1つ以上の突然変異を含んでよく、例えば、切断型(truncating)突然変異、ミスセンス(missense)突然変異(または、過誤突然変異)、ナンセンス(nonsense)突然変異、フレームシフト(frame shift)突然変異、インフレーム(in-frame)突然変異(または、読み枠内突然変異)、スプライス突然変異及びスプライスサイト(splice region)突然変異よりなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を有することができる。前記フレームシフト突然変異は、フレームシフト挿入(frame shift insert、FS ins)突然変異及びフレームシフト欠失突然変異(frame shift delete、FS del)のうち少なくとも1つであってよい。前記インフレーム突然変異は、インフレーム挿入(in-frame insertion、IF ins)突然変異及びインフレーム欠失(in-frame delete、IF del)突然変異のうち少なくとも1つであってよい。
【0034】
ポリペプチド配列における突然変異に関し、「X#Y」との用語は、本技術分野の通常の技術者に自明に認識されるものであって、ここで、「#」は、ポリペプチドのアミノ酸番号と関連して突然変異の位置を示し、「X」は、野生型アミノ酸配列のその位置から発見されるアミノ酸を示し、「Y」は、その位置での突然変異体アミノ酸を示す。
【0035】
前記遺伝子の発現の増加または減少を用いて、ヘリコバクターピロリ連関疾患の予後を診断するための分析方法としては、次世代塩基配列分析法(next generation sequencing、NGS)、RT-PCR、直接核酸配列分析方法、マイクロアレイなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。本出願の一具現形態において、遺伝子発現の増加または減少を確認するための抗体または核酸プローブは検出可能に標識され、前記標識は、免疫蛍光標識、化学発光標識、リン光標識、酵素標識、放射性標識、アビジン/ビオチン、コロイド性金粒子、着色粒子及び磁気粒子よりなる群から選択されてよいが、これに限定されるものではない。本出願の他の具現形態において、遺伝子発現の増加または減少は、放射性免疫検定、ウエスタンブロット検定、免疫蛍光検定、酵素免疫検定、免疫沈澱検定、化学発光検定、免疫組織化学検定、ドットブロット検定、スロットブロット検定または流動細胞測定検定により決定されてよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
本出願において、「ポリヌクレオチド」との用語は、一般的に非修飾されたRNAまたはDNA、または修飾されたRNAまたはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを示す。よって、例えば、本出願で定義されたところのようなポリヌクレオチドは、非制限的に一本及び二本鎖DNA、一本及び二本鎖領域を含むDNA、一本及び二本鎖RNA、及び一本及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本及び二本鎖領域を含み得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子を含んでよい。よって、安定性または他の理由により修飾されたバックボーンを有するDNAまたはRNAも、本出願で意図された用語のような「ポリヌクレオチド」に該当する。また、イノシンのような通常でない塩基、または三重水素化塩基のような修飾された塩基を含むDNAまたはRNAが、本出願で定義されたところのような「ポリヌクレオチド」に含まれる。一般的に、「ポリヌクレオチド」との用語は、非修飾されたポリヌクレオチドの全て化学的に、酵素的に、及び/または代謝的に修飾された形態を含む。ポリヌクレオチドは、試験管内組換えDNA-媒介技術を含めた多様な方法により、そして、細胞及び有機体内のDNAの発現により製造されてよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
本出願のキットは、前記で説明したような本出願の組成物を含んでおり、本出願のキットは、従来の一般的な遺伝子の検索方法に比べて時間とコストが節減されるので非常に経済的である。本出願の一具現形態において、本出願のキットは、チップ1つに多様な遺伝子の発現の程度を検出することができるプライマーセットがともに集積できるため、従来の方法に比べ、時間だけでなくコストまで節減することができる。
【0038】
2.ヘリコバクターピロリ連関疾患の診断のために必要な情報を提供する方法
本出願の他の側面は、個体のサンプルから試料DNAを準備するステップ;前記試料DNAを本出願の組成物またはキットを用いて増幅するステップ;増幅結果からヘリコバクターピロリ感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現の程度を確認するステップを含む、個体のヘリコバクターピロリ連関疾患の診断のために必要な情報を提供する方法を提供する。
【0039】
前記方法は、追加でヘリコバクターピロリの感染により発現が増加または減少する遺伝子が確認された個体に任意のヘリコバクターピロリ連関疾患の治療候補物質を処理したり、任意の方法で治療するステップ;及び任意の治療候補物質または任意の治療方法が前記疾患を改善したり、治療する場合、前記患者に好適な治療候補物質または治療方法に採用するステップ;を含む、ヘリコバクターピロリに感染した個体の治療効果の差を判定するために必要な情報を提供する方法を提供する。
【0040】
本出願のまた他の側面は、ヘリコバクターピロリに感染した患者のサンプルから試料DNAを準備するステップ;前記試料DNAを本出願の組成物またはキットを用いて増幅するステップ;及び前記増幅結果からヘリコバクターピロリ感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現の程度を確認するステップ;を含む、ヘリコバクターピロリに感染した患者においてヘリコバクターピロリ連関疾患の診断、例えば予後の診断のために必要な情報を提供する方法を提供する。
【0041】
前記「ヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用組成物及びキット」に対する説明は、「1.ヘリコバクターピロリ連関疾患の診断用組成物及びキット」に記載したところと同一なので、具体的な説明を省略する。
【0042】
前記任意の治療候補物質は、ヘリコバクターピロリ連関疾患の治療のために通常用いられる治療剤、または前記疾患に対する治療効果が知られていない新規の物質であってよいが、これに限定されるものではない。前記任意の治療候補物質をヘリコバクターピロリに感染した患者に処理した後、治療効果を確認することにより、治療候補物質が特定の患者群に効果があるのか否かが分かる。もしヘリコバクターピロリの感染により発生した胃炎に治療効果があれば、ヘリコバクターピロリの感染により発生する他の疾患、例えば、胃潰瘍または胃癌を有する患者群に適用する際にも治療効果が高いものと予測することができるので、治療戦略の決定に有用な情報を提供することができる。また、もしヘリコバクターピロリの感染により発生した胃炎に対して任意の治療候補物質を使用時に治療効果が現れない場合には、ヘリコバクターピロリの感染により発生する他の疾患、例えば、胃潰瘍または胃癌を有する患者群にはこれ以上治療を進めないことにより不要な治療を実施しなくてもよいので、治療戦略を効率的に設計することができる。
【0043】
本出願において、「サンプル」との用語は、患者から収得した任意の生物学的標本を非制限的に含む意味で用いられる。本出願の一具現形態において、前記サンプルは、患者の胃から入手された微細針吸引物(例えば、無作為な乳腺微細針吸引により採取された吸引物)、組織サンプル(例えば、胃炎、胃潰瘍、胃癌の組織)、例えば、腫瘍生検(例えば、穿刺生検、腫瘍の手術的切除)、及びその細胞抽出物を非制限的に含むことができる。本出願の一具現形態において、前記サンプルは、例えば、胃炎、胃潰瘍、または胃癌から製造されたホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織サンプルである。本出願の他の具現形態において、前記サンプルは、胃炎、胃潰瘍、または胃癌を有する対象から収得した凍結組織から製造された組織溶解物または抽出物である。
【0044】
本出願の「個体」は、ヒトを含むラット、マウス、家畜などの全ての動物であってよく、具体的に、ヘリコバクターピロリに感染したか、感染が疑われる個体であってよく、他の一例として、ヘリコバクターピロリ連関疾患が発病したか発病し得る個体であってよい。より具体的に、ヘリコバクターピロリに感染した患者であってよい。
【0045】
本出願において、「患者」との用語は、通常、ヒトを含むだけでなく、他の動物、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む意味として用いられる。
【0046】
本出願において、「改善」との用語は、治療と連関されたパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為を制限なく示す意味として用いられる。
【0047】
本出願において、「予防」との用語は、ヘリコバクターピロリ連関疾患の症状を抑制させるか遅延させる全ての行為を含む意味として用いられる。
【0048】
本出願において、「治療」との用語は、ヘリコバクターピロリ連関疾患の症状が好転するかよく変更される全ての行為を制限なく含む意味として用いられる。
【0049】
また、本出願において、「投与」との用語は、適切な方法で個体に所定の物質を導入する意味として用いられる。
【0050】
本出願において、ヘリコバクターピロリ連関疾患を有する患者のサンプルで、本出願で開示しているヘリコバクターピロリの感染により発現が増加または減少する遺伝子の発現を分析することにより、対象試料を有した個体が前記ヘリコバクターピロリ連関疾患に対して如何なる予後を有するのかを確認することができる。本出願の一具現形態において、前記ヘリコバクターピロリの感染により発現が増加する遺伝子は、FGF21、CTH、CREBRF、DLL4、FGF18、FOS、PDK1、PTPRN、CLIC4、PTPRB、PPP1R15A、PTPRH、DDIT3、BIRC3、FOXO3、BCL2、PRKCE、CHMP4C、CLDN14、SLC7A11、BOC、AJUBA、LMO7、MMP24、C3orf58、KLF10、CSGALNACT1、CEP120、CHAC1、ASNS、NFE2L2、RIOK3、TXNIP、MTR、IFRD1、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されてよく、具体的に、FGF21、CTH、CREBRF、PTPRN、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されてよいが、これに限定されるものではない。本出願の他の具現形態において、前記ヘリコバクターピロリの感染により発現が減少する遺伝子は、ADGRA2、TBX4、OVOL2、ACVRL1、ALB、JADE1、MLLT11、ADORA1、TNFRSF8、NLRP12、CASP14、LTA、SMAGP、NEO1、MTSS1、TSPAN32、CLDN8、MYBPH、SGCE、CDH15、ARHGAP6、ZFP36L2、EHF、SLAMF6、HLA-DPB1、SSC5D、CCR4、CCR7、KLRG1、BLNK、IGFBP1、GIF、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されてよいが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明者達は、前記遺伝子の発現の増加または減少を、ヘリコバクターピロリ連関疾患を有する患者に対する治療効果の差を予測したり、予後を診断することができる診断マーカーとして用いることができることを最初に究明した。本出願の一具現形態において、本出願のヘリコバクターピロリ連関疾患の予後の診断のために必要な情報を提供する方法は、前記疾患の発生有無を診断したり、前記疾患を有する患者の生存率を高めたり、または再発率を下げたりするのに用いられ得る。本出願の他の具現形態において、本出願の方法を介して前記疾患に対する治療効果を予測したり、前記疾患を有する患者の生存率または再発率を予測することができるため、各患者に好適な治療剤の発掘だけでなく、治療法の選択において情報を提供することができるので、ヘリコバクターピロリ連関疾患に関する治療的戦略を効率的に設計することができる。
【0052】
本出願は、ヘリコバクターピロリ感染による生体内の遺伝子発現の変化を分析することにより、疾病の診断及び予後を予測する方法を提供する。本出願の一具現形態において、分類化を介して治療法の最適化、特定治療法の進行可否の決定及び治療剤の容量、選択などの最適化が可能である。また、単一細胞に対する遺伝子群の発現パターンを分析することにより、疾病状態の細胞において突然変異及び/または経路を標的とする治療法の同定及び開発を提供することができる。
【0053】
本出願の他の具現形態において、本出願は、哺乳動物組織または細胞サンプルで1つ以上の遺伝子マーカーの発現を検査及び分析する方法を提供する。一具現形態において、1つ以上の遺伝子マーカーの発現は、それから組織または細胞サンプルを採取した哺乳動物個体がヘリコバクターピロリ連関疾患にかかっている可能性がより大きいことを示す。
【0054】
本出願の一具現形態において、ヘリコバクターピロリに感染した個体は、乳酸菌を含むキムチを摂取または投与することにより、ヘリコバクターピロリ連関疾患の症状が改善または治療され得る。本出願の一具現形態において、前記キムチは、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119及びラクトバチルス・プランタラムCJLP133を含むキムチであってよいが、これに限定されるものではない。前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119は、韓国生命工学研究院の遺伝子バンクに受託番号KCTC 13043BPとして寄託された微生物菌株であって、前記菌株の分離及び同定の方法に対しては韓国登録特許第1,807,995号公報に具体的に開示されている。また、前記ラクトバチルス・プランタラムCJLP133は、韓国生命工学研究院の遺伝子バンクに受託番号KCTC 11403BPとして寄託された微生物菌株であって、前記菌株の分離及び同定の方法に対しては韓国登録特許第1,486,999号公報に具体的に開示されている。
【0055】
前記「キムチ」は、野菜を塩に漬けた後、薬味を混合して発酵させた食品を制限なく含む意味として用いられる。例えば、前記野菜は、白菜、大根、長ネギ、カラシナ、キュウリなどが用いられてよく、具体的に白菜が用いられてよいが、これら以外の任意の野菜がいずれもキムチの原料として用いられてよい。本出願の一具現形態において、前記野菜は、白菜、具体的に、リコペンの含量が高い白菜であってよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
本出願の一具現形態において、前記薬味は、唐辛子粉、ニンニク、生姜、塩辛などの材料を混合して製造されるものであって、薬味を構成する材料は、これらの他にも個人の嗜好度、発酵方式、発酵期間などに応じて必要時に他の任意の材料が適宜追加又は除外されてよい。前記キムチは、通常のキムチの製造方法により塩に漬けた野菜、例えば、塩に漬けた白菜に薬味を和えた後に発酵させる方法により製造されてよい。前記白菜としては、リコペン含量が高い白菜を用いるのがより適切であるが、これに限定されるものではなく、通常の白菜がキムチの製造に制限なく用いられてよい。
【0057】
本出願の一具現形態によると、試験管内または生体内で、ヘリコバクターピロリの感染によりERストレス遺伝子、酸化ストレス遺伝子、組織再生遺伝子、血管新生遺伝子などの遺伝子の発現が増加し得る(図1図2及び図5参照)。
【0058】
本出願の他の具現形態によると、試験管内または生体内で、ヘリコバクターピロリの感染により細胞防御反応遺伝子、組織再生遺伝子、抗酸化遺伝子、細胞結合遺伝子などの遺伝子の発現が減少し得る(図3図4及び図6参照)。
【0059】
このように、本出願で確認されたヘリコバクターピロリの感染によりその発現が増加または減少する遺伝子のリストは、ヘリコバクターピロリから誘発され得る多様な疾患、例えば、胃炎、胃潰瘍及び胃癌の予防、治療、または改善のために有用に用いられ得る。
【0060】
以下、本発明を実施例及び実験例により詳細に説明する。
【0061】
但し、下記の実施例及び実験例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0062】
下記の実施例及び実験例において、統計分析は、GraphPad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA,USA)とSPSSソフトウェア(Version 12.0;SPSS Inc.,Chicago,IL,USA)を用いて行い、グループ間の統計的有意性は、マン・ホイットニーのU検定(Mann-Whitney U test)により決定され、統計的有意性は、p<0.05で認定された。
【0063】
実施例1:ヘリコバクターピロリ感染の胃癌細胞及び動物モデルの準備
<1-1> ヘリコバクターピロリ感染の胃癌細胞モデル
胃腺癌種(AGS)は、ATCC(Manassas,VA)で購入して保管しながら用いた。全ての細胞は、蘇生後6ヶ月以上用いなかった。AGS細胞は、RPMI-1640培養液(Gibco BRL,Gaithersburg,MD)及び10%FBS(fetal bovine serum,Gibco BRL)が含まれている培地で37℃、5%COで培養した。細胞を6ウェルプレートに10細胞/ml濃度で分株し、24時間吸着させた後、細胞にヘリコバクターピロリを50MOI(500 CFU)で6時間露出させて感染させた。
【0064】
<1-2> 坑癌キムチの準備
キムチは、通常のキムチの製法により製造した。坑癌キムチ(以下、「CpKimchi」又は「CPK」で示す場合がある)は、一般の白菜ではないリコペン含量が高い白菜を主原料に用い、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119及びラクトバチルス・プランタラムCJLP133の2種の乳酸菌を用いたことを除いては、一般キムチ(以下、「sKimchi」又は「SK」で示す場合がある)の製法と同一に製造した。前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119は、韓国生命工学研究院の遺伝子バンクに受託番号KCTC 13043BPとして寄託された微生物菌株であって、前記菌株の分離及び同定の方法に対しては韓国登録特許第10-1807995号公報に具体的に開示されている。また、前記ラクトバチルス・プランタラムCJLP133は、韓国生命工学研究院の遺伝子バンクに受託番号KCTC 11403BPとして寄託された微生物菌株であって、前記菌株の分離及び同定の方法に対しては韓国登録特許第10-1486999号公報に具体的に開示されているので、その具体的な記載を省略する。
【0065】
<1-3> キムチ抽出物の濃縮液の製造
前記実施例<1-2>で製造されたキムチを凍結乾燥した後、粉砕して粉末として準備した。ここに20倍重量のメタノールを加えた後、攪拌機を用いて12時間抽出した。抽出された上澄み液を濾過紙で濾過し、残った沈殿物は再びメタノールを追加して12時間抽出した。前記抽出物を濃縮器で約40℃の温度で加温濃縮した濃縮物を製造した後、これを4℃で貯蔵して追加的な実験に用いた。
【0066】
<1-4> 試験管内及び生体内実験モデルのための準備
試験管内実験には、実施例<1-3>で製造したキムチ抽出物の濃縮液5 mg/ml及び10mg/mlでそれぞれ用いた。生体内実験のためのキムチ摂取量は、次のように設定した:韓国人の通常のキムチ摂取量は、個人の趣向に応じて一日に約30から100gであり、坑癌キムチ抽出物の濃縮液は、動物モデルの食餌療法ペレットに1週間に1回、体重2倍、1.7g/kg/日、5.1g/kg/日の比率で混合し、一般的な韓国人のキムチ摂取量に換算して用いた。
【0067】
<1-5> RNAの分離及びRT-PCRの遂行
実施例<1-1>で製造したヘリコバクターピロリに感染した胃癌細胞の培養培地を吸引して除去した後、前記細胞をダルベッコ(Dulbecco)のPBSで2回洗浄した。RiboEX(500μl,GeneAll,Seoul,Korea)を4℃で10分間培養したプレートに添加した。RiboEXを収去して1.5mlチューブに移した後、100μlのクロロホルムを入れてゆっくり混合した。氷で10分間静置した後、サンプルを10,000gで30分間遠心分離した。上澄み液を200μlのイソプロパノールと混合した後、前記混合物を4℃で1時間静置した。13,000gで30分間遠心分離した後、沈殿物を70%(vol/vol)のエタノールで洗浄した。エタノールを完全に蒸発させた後、沈殿物を100μlのDEPC(Diethylene pyrocarbonate)で処理された水(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)に溶解させた。モロニーマウス白血病ウイルス(Promega,Madison,WI)から由来された逆転写酵素を用いてcDNAを製造した。PCRは、94℃で20秒、58℃で30秒、72℃で45秒の30サイクルを用いて行った。
【0068】
<1-6> mRNA塩基配列の分析
SMARTer Stranded RNA-Seqキット(Clontech Laboratories,Inc.,USA)を用いて2μgの総RNAからライブラリを準備した。mRNAの分離は、Poly(A)RNA Selection Kit(LEXOGEN,Inc.,Austria)を用いて行った。分離されたmRNAは、cDNA合成及び切断に用いた。インデックスは、Illumina指数1-12を用い、PCRを用いて増幅した。次いで、Agilent 2100 bioanalyzer(DNA High Sensitivity Kit)を用いてライブラリを確認することで、平均断片の大きさを評価した。定量は、Step OneリアルタイムPCRシステム(Life Technologies,Inc.,USA)を用いてライブラリ定量キットを用いた。大量-高効率配列分析(high-throughput sequencing)は、HiSeq 2500(Illumina,Inc.,USA)を用いてペアエンド(paired-end)100配列分析で行った。
【0069】
<1-7> データの分析
mRNA-Seq分析は、整列ファイルを得るためにTopHatソフトウェア(Cole Trapnell et al.,2009)ツールを用いた。差別的に発現された遺伝子は、Bedtools(Quinlan AR,2010)の適用範囲を用いて固有及び多重整列の計数に基づいて決定した。RT(Read Count)データは、Bioconductor(Gentleman et al.,2004)を用いて統計プログラムR(R development Core Team,2016)のEdgeRを用いるQuantile正規化法に基づいて処理した。Cufflinksを用いて転写体を組み立て、存在量を推定し、発現及び調節を分析しており、遺伝子またはアイソ(iso)フォームの差別的な発現を検出するのに用いた。遺伝子領域の発現水準を決定する方法として、FPKM(fragments per kilobase of exon per million fragments)を用いた。遺伝子の分類は、DAVID(http://david.abcc.ncifcrf.gov/)で行った検索を基盤とした。
【0070】
実施例2:ヘリコバクターピロリ感染により特異的に増加する遺伝子
<2-1> RNAseqを介した遺伝子の確認
ヘリコバクターピロリ感染による標的遺伝子を探すためにRNAseq分析を行い、遺伝子中、ヘリコバクターピロリ感染で発現が増加したがCpKimchiの併用処理で正常化された遺伝子126個を確認した。これらの遺伝子は、ERストレス遺伝子、酸化ストレス遺伝子、組織再生遺伝子、血管新生遺伝子などで表れた(図1)。
【0071】
<2-2> RNAseqの結果をRT-PCRで検証
RNAseqのヒートマップ分析結果をRT-PCRで検証した。血管新生遺伝子のうち、DLL4(delta-like 4)及びFGF18(fibroblast growth factor 18)がCpKimchi 併用処理後にその発現が有意に減少し、ERストレス遺伝子のうちFGF21(fibroblast growth factor 21)、CTH(cystathionine-lyase)及びCREBPF(cAMP responsive element binding protein)と、酸化的ストレス遺伝子のうちFOS、PDK1(phosphoinositide-dependent kinase-1)及びPTPRN(receptor-type tyrosine-protein phosphatase-like N)もまた、CpKimchi併用処理後にその発現が有意に減少した(図2)。
【0072】
実施例3:ヘリコバクターピロリ感染により特異的に減少する遺伝子
<3-1> RNAseqを介した遺伝子の確認
遺伝子中、ヘリコバクターピロリ感染で発現が減少したがCpKimchiの処理で正常化され発現が増加する遺伝子を分析した。総262個の遺伝子が同定された。ヘリコバクターピロリ感染により発現が減少したがCpKimchiの併用治療で正常化された遺伝子を分類してみると、細胞防御反応遺伝子、組織再生遺伝子、抗酸化遺伝子、細胞結合遺伝子などである(図3)。
【0073】
<3-2> RNAseqの結果をRT-PCRで検証
RNAseqのヒートマップ分析結果をRT-PCRで検証し、ALB、NEO1(neogenin precursor1)、CLDN8(claudin 8)、KLRG1(killer cell lectin-like receptor subfamily G member 1)及び IGFBP1(insulin-like growth factor=binding protein 1)の場合、CpKimchi処理後に減少した遺伝子の発現が正常化されたことを確認した(図4)。
【0074】
実施例4:ヘリコバクターピロリの感染により特異的に増加する遺伝子の生体内検証
ヘリコバクターピロリ感染動物モデル実験において、RNAseq結果と同様にERストレス遺伝子の発現を確認した。ヘリコバクターピロリに感染したグループ2でERストレス遺伝子の発現が有意に増加しており、これはRNAseqの結果と一致した。ERストレスに関与するこれらの遺伝子は、CpKimchiが投与されたグループ3とグループ4で有意に改善され、やはりRNAseq結果と一致した(図5)。
【0075】
実施例5:ヘリコバクターピロリ感染により特異的に減少する遺伝子の生体内検証
ヘリコバクターピロリ感染動物モデル実験において、RNAseq結果と同様に抗酸化関連遺伝子の発現を確認した。抗酸化遺伝子は、ヘリコバクターピロリに感染したグループ2で有意に減少したが、CpKimchiが投与されたグループ3とグループ4で全て有意に発現が増加して回復された(図6)。
【0076】
前記では、本出願の好ましい実施形態を例示的に説明したが、本出願の範囲は前記のような特定の実施形態だけに限定されず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、本出願の特許請求の範囲に記載された範疇内で適宜変更が可能であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6