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特許7374203ハイブリッド電気推進アーキテクチャおよびそのようなアーキテクチャにおいて電気エネルギを散逸させるための方法
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  • 特許-ハイブリッド電気推進アーキテクチャおよびそのようなアーキテクチャにおいて電気エネルギを散逸させるための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気推進アーキテクチャおよびそのようなアーキテクチャにおいて電気エネルギを散逸させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20060101AFI20231027BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20231027BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231027BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20231027BHJP
   B60L 7/22 20060101ALI20231027BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20231027BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20231027BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20231027BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20231027BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231027BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20231027BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231027BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20231027BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20231027BHJP
   B64U 50/33 20230101ALI20231027BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/08 ZHV
B64C39/02
B60L7/14
B60L7/22 G
B60L50/61
B60L58/13
B60K6/46
B60W20/13
B60W10/08 900
B60W10/26 900
H02J7/00 B
B64U10/13
B64U50/19
B64U50/33
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021549542
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 FR2020050343
(87)【国際公開番号】W WO2020174165
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】1901979
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロノウスキー,トマ
(72)【発明者】
【氏名】バラコ,トマ
(72)【発明者】
【氏名】セルギンヌ,キャメル
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03056555(FR,A1)
【文献】特開2018-098857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0070266(US,A1)
【文献】特開2013-124084(JP,A)
【文献】特開2003-134602(JP,A)
【文献】特開2016-220328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/24
B64C 27/08
B64C 39/02
B60L 1/00- 3/12, 7/00-13/00,15/00-58/40
B60K 6/46
B60W 20/13
B60W 10/08
B60W 10/26
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチロータ回転翼航空機のためのハイブリッド電気推進アーキテクチャ(100)であって、
-内燃機関(112)と、
-動作中に内燃機関(112)が発電機(114)を駆動するように内燃機関(112)に結合された発電機(114)と、
-発電機(114)に接続され、発電機によって送達される交流を直流に変換するように構成された整流器(116)と、
-直流を交流に変換するための手段(118a、118b、118c、118d)と、
-整流器(116)を変換手段(118a、118b、118c、118d)に接続する電気ネットワーク(120)であって、高電圧直流バスを備える電気ネットワーク(120)と、
-発電機(114)と並列に電気ネットワーク(120)に接続された電気エネルギ貯蔵手段(126)と、
-動作中に変換手段(118a、118b、118c、118d)が電気モータ(122a、122b、122c、122d)に交流を供給するように、変換手段(118a、118b、118c、118d)に接続された電気モータ(122a、122b、122c、122d)と、
-動作中に電気モータ(122a、122b、122c、122d)がプロペラ(124a、124b、124c、124d)を駆動するように、電気モータ(122a、122b、122c、122d)に結合されたプロペラ(124a、124b、124c、124d)と
を備え、
アーキテクチャ(100)が、発電機(114)がエンジン発電機であり、動作中に内燃機関(112)が発電機(114)を発電機モードで駆動すること、
電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上での電気エネルギの回生中に、貯蔵手段(126)の充電状態に応じて、貯蔵手段(126)が電気エネルギを回収するように構成されること、
電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上での電気エネルギの回生中に、貯蔵手段(126)の充電状態に応じて、整流器(116)が電気エネルギを回収するように構成されること、および
電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上での電気エネルギの回生中に、貯蔵手段(126)の充電状態に応じて、動作中に発電機(114)が電気エネルギを回収するように、発電機がモータモードで動作するように構成されることを特徴とする、ハイブリッド電気推進アーキテクチャ(100)。
【請求項2】
貯蔵手段(126)の充電状態が60%未満であるときに、貯蔵手段(126)が、電気エネルギを回収するように構成され、
貯蔵手段(126)の充電状態が60%から80%の間であるときに、貯蔵手段(126)および整流器(116)が、電気エネルギを回収するように構成され、
貯蔵手段(126)の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機(114)が、電気エネルギを回収するように構成される、請求項1に記載のアーキテクチャ(100)。
【請求項3】
変換手段(118a,118b,118c,118d)および整流器(116)が、電流可逆式であるように構成される、請求項1または2に記載のアーキテクチャ(100)。
【請求項4】
発電機(114)が、同期または非同期電気機械である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアーキテクチャ(100)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド電気推進アーキテクチャを備えるマルチロータ回転翼航空機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド電気推進アーキテクチャ(100)において電気エネルギを散逸させるための方法であって、
-電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上の電気エネルギの回生のステップ(S01)と、
-貯蔵手段(126)の充電状態の取得のステップ(S02)と、
-電気ネットワーク(120)の高電圧直流バスからの回生電気エネルギの回収のステップであって、貯蔵手段(126)の充電状態に応じて、
・電気ネットワーク(120)の高電圧直流バスからの回生電気エネルギの回収が貯蔵手段(126)によって実行される(S10)、または
・電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上の回生電気エネルギの回収が、貯蔵手段(126)および整流器(116)によって実行される(S20)、または
・電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上の回生電気エネルギの回収が、モータモードで動作する発電機(114)によって実行される(S30)、回収のステップと
を含む、方法。
【請求項7】
電気ネットワーク(120)の高電圧直流バス上の回生電気エネルギを回収するステップの間に、
・電気エネルギの回収が、貯蔵手段の充電状態が60%未満であるときに、貯蔵手段(126)によって実行され(S10)、
・電気エネルギの回収が、貯蔵手段の充電状態が60%から80%の間であるときに、貯蔵手段(126)および整流器(116)によって実行され(S20)、
・電気エネルギの回収が、貯蔵手段(126)の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機(114)によって実行される(S30)、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
貯蔵手段(126)の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機(114)によって電気エネルギを回収するステップの前に、電気モータ(122a,122b,122c,122d)のデフラキシングからなるステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
貯蔵手段(126)の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機(114)によって電気エネルギを回収するステップの前に、整流器(116)による電気エネルギの回収からなるステップを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
貯蔵手段(126)の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機(114)によって電気エネルギを回収するステップの前に、電気ネットワーク(120)の高電圧直流バスの電圧の増加からなるステップを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチロータ回転翼航空機のためのハイブリッド電気推進アーキテクチャ、そのようなハイブリッド電気推進アーキテクチャを備える航空機、およびそのようなハイブリッド電気推進アーキテクチャにおいて電気エネルギを散逸させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、特に、仏国特許出願公開第3056555号明細書、米国特許出願公開第2018/162379号明細書、米国特許出願公開第2016/070266号明細書、独国特許出願公開第102010031540号明細書および欧州特許出願公開第2684798号明細書を含む。
【0003】
先行技術から、一般に直列ハイブリダイゼーションと呼ばれる、熱電発電との航空機のハイブリッド推進アーキテクチャが知られている。
【0004】
図1に示されるように、ハイブリッド推進アーキテクチャ10は、一般に、
-内燃機関12と、
-動作中に内燃機関12が発電機14を駆動するように内燃機関に結合された発電機14と、
-発電機14に接続され、発電機14によって送達される交流を直流に変換するように構成された整流器16と、
-直流を交流に変換するための手段18a、18b、18c、18dと、
-整流器16を変換手段18a、18b、18c、18dに接続する電気ネットワーク20と、
-動作中に変換手段18a、18b、18c、18dが電気モータ22a、22b、22c、22dに交流を供給するように、変換手段18a、18b、18c、18dに接続された電気モータ22a、22b、22c、22dと、
-動作中に電気モータ22a、22b、22c、22dがプロペラ24a、24b、24c、24dを駆動するように、電気モータ22a、22b、22c、22dに結合されたプロペラ24a、24b、24c、24dと
を備える。
【0005】
さらに、電気ネットワーク20は、典型的には、高電圧直流(HVDC)バスを備える。
【0006】
アーキテクチャ10はまた、HVDCバスからの過剰な電気エネルギを吸収するため、または過渡段階中に追加のエネルギを確保するために、例えばバッテリなどの貯蔵ユニット26を備えることができる。特に、HVDCバス上に電気エネルギの戻りがあるとき、貯蔵ユニット26は、HVDCバスの構成要素を保護するためにこの過剰な電気エネルギを吸収する。
【0007】
このようなアーキテクチャでは、化石燃料源、内燃機関12から、および機械-電気変換を介して、発電機14によって、変換手段18a、18b、18c、18d、電気モータ22a、22b、22c、22d、およびプロペラ24a、24b、24c、24dから構成される電気推進チェーンは、回転する多翼によって航空機が飛行することを可能にする。
【0008】
そのようなハイブリッド推進アーキテクチャを備える航空機はマルチロータであり、これは、航空機の制御性、例えば、制動、回避戦略、方向の変更、またはロータの傾斜に関して、従来の航空機と比較してさらなる自由度を提供することを可能にする。
【0009】
しかしながら、そのようなアーキテクチャは、かなりの搭載質量を有し、搭載航空環境の特定の状況における電気的リスク管理を保証する必要がある。
【0010】
実際に、このアーキテクチャは、電気ネットワーク20のHVDCバスの良好な調整および良好な安定性を可能にするために、重くて大きい電気機器を必然的に統合しなければならない。
【0011】
図1のハイブリッド推進アーキテクチャ10はまた、電気ネットワーク20のHVDCバス上にエネルギ回収システム28を備える。エネルギ回収システム28は、一般に、貯蔵ユニット26が完全に充電されているとき、および過渡的ないわゆる「回生(regeneration)」段階、すなわち、下流に位置する負荷から貯蔵ユニット26および内燃機関12に結合された発電機14への電気エネルギの戻りがあるときに使用される。特に、これは、プロペラ24a、24b、24c、24dが制動し、HVDCバス上の電気エネルギを拒絶するときに発生する。実際に、この電気エネルギの戻りは、推進モータとして知られる電気モータ22a、22b、22c、22dに生成される起電力がHVDCバスの電圧よりも大きく、変換手段18a、18b、18c、18dの電流が可逆的であるときに発生する。エネルギ回収システムは、トランジスタなどの上流に位置する電子部品に保護を提供することを可能にする。エネルギ回収システム28は、一般に、電気エネルギを熱エネルギに変換する電気抵抗器30と、電圧ピークを吸収するのに有用な電圧閾値を設定することを可能にするチョッパ32とからなる。したがって、このエネルギ回収システムは、発熱的に電気エネルギを散逸させることができるため、散逸回路である。
【0012】
しかしながら、このシステムの質量は、比較的大きい可能性があり、散逸されるエネルギに依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】仏国特許出願公開第3056555号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/162379号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/070266号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010031540号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2684798号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、これらの欠点の少なくともいくつかを改善することを可能にする解決策を提供することである。
【0015】
特に、本発明は、従来技術のエネルギ回収システムの排除を可能にする電気エネルギ管理を提供する。したがって、本発明は、トランジスタなどの静的構成要素、およびフィルタリングまたはデカップリングコンデンサなどの受動構成要素の電圧の危険な上昇をもたらすHVDCバス上の電気エネルギの「オーバーフロー」を散逸させるために使用される電気機器を排除するために、HVDCバスの電気エネルギを管理することによってハイブリッド推進アーキテクチャを軽量化することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、マルチロータ回転翼航空機のためのハイブリッド電気推進アーキテクチャであって、
-内燃機関と、
-動作中に内燃機関が発電機を駆動するように内燃機関に結合された発電機と、
-発電機に接続され、発電機によって送達される交流を直流に変換するように構成された整流器と、
-直流を交流に変換するための手段と、
-整流器を変換手段に接続する電気ネットワークであって、高電圧直流(HVDC)バスを備える電気ネットワークと、
-発電機と並列に電気ネットワークに接続された電気エネルギ貯蔵手段と、
-動作中に変換手段が電気モータに交流を供給するように、変換手段に接続された電気モータと、
-動作中に電気モータがプロペラを駆動するように、電気モータに結合されたプロペラと
を備え、
アーキテクチャが、発電機がエンジン発電機であり、動作中に内燃機関が発電機を発電機モードで駆動すること、
電気ネットワークの高電圧直流バス上での電気エネルギの回生中に、貯蔵手段の充電状態に応じて、貯蔵手段が電気エネルギを回収するように構成されること、
電気ネットワークの高電圧直流バス上での電気エネルギの回生中に、貯蔵手段の充電状態に応じて、整流器が電気エネルギを回収するように構成されること、および
電気ネットワークの高電圧直流バス上での電気エネルギの回生中に、貯蔵手段の充電状態に応じて、動作中に発電機が電気エネルギを回収するように、発電機がモータモードで動作するように構成されることを特徴とする、アーキテクチャに関する。
【0017】
有利には、本発明は、従来技術のエネルギ回収システムの抑制を可能にする電気エネルギシステムを可能にする。実際に、このアーキテクチャは、エネルギ回収システムを統合することなく、電気ネットワークのHVDCバスの良好な調整および良好な安定性を可能にする。したがって、本発明にかかるアーキテクチャの質量は最適化され、散逸される電気エネルギに依存しない。
【0018】
特に、従来技術にかかるアーキテクチャとは異なり、本発明にかかるアーキテクチャは、抵抗散逸回路の形態のエネルギ回収システムを備えない。これは、有利には、そのような回路は一般に非常に重くてかさばる、本発明にかかるアーキテクチャの重量および体積を低減することを可能にする。
【0019】
本発明の実施形態によれば、貯蔵手段の充電状態が60%未満であるときに、貯蔵手段は、電気エネルギを回収するように構成され;貯蔵手段の充電状態が60%から80%の間であるときに、貯蔵手段および整流器は、電気エネルギを回収するように構成され;貯蔵手段の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機は、電気エネルギを回収するように構成される。
【0020】
電気ネットワークは、双方向性とすることができる。換言すれば、電流は、例えば整流器から電気推進チェーンへ、またはその逆に、電気ネットワーク内で双方向に流れることができる。
【0021】
変換手段は、1つ以上のインバータを備えることができる。
【0022】
変換手段および整流器は、電流可逆式(current reversible)であるように構成されることができる。これは、有利には、必ずしも散逸回路を必要とせずに、HVDCバス上の電力吸収を可能にする。
【0023】
発電機は、同期電気機械とすることができる。あるいは、発電機は、非同期電気機械であってもよい。
【0024】
内燃機関は、モータモードで動作する発電機によって回収された電気エネルギを消費するように構成されることができる。
【0025】
本発明はまた、本発明にかかるハイブリッド電気推進アーキテクチャを備えるマルチロータ回転翼航空機に関する。
【0026】
本発明はまた、本発明にかかるハイブリッド電気推進アーキテクチャにおいて電気エネルギを散逸させるための方法であって、
-電気ネットワークの高電圧直流バス上の電気エネルギの回生のステップと、
-貯蔵手段の充電状態の取得のステップと、
-電気ネットワークの高電圧直流バスからの回生電気エネルギの回収のステップであって、貯蔵手段の充電状態に応じて、
・電気ネットワークの高電圧直流バスからの回生電気エネルギの回収が貯蔵手段によって実行される、または
・電気ネットワークの高電圧直流バス上の回生電気エネルギの回収が、貯蔵手段および整流器によって実行される、または
・電気ネットワークの高電圧直流バス上の回生電気エネルギの回収が、モータモードで動作する発電機によって実行される、回収のステップと
を含む、方法に関する。
【0027】
本発明の実施形態によれば、電気ネットワークの高電圧直流バス上の回生電気エネルギを回収するステップの間に、
・電気エネルギの回収が、貯蔵手段の充電状態が60%未満であるときに、貯蔵手段によって実行され、
・電気エネルギの回収が、貯蔵手段の充電状態が60%から80%の間であるときに、貯蔵手段および整流器によって実行され、
・電気エネルギの回収が、貯蔵手段の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機によって実行される。
【0028】
換言すれば、貯蔵手段の充電状態を取得するとき、貯蔵手段の充電状態が低い、例えば60%未満であるときに、電気エネルギの回収は、貯蔵手段によって実行される。貯蔵手段の充電状態を取得するとき、貯蔵手段の充電状態が中間、例えば60%から80%の間であるときに、電気エネルギの回収は、貯蔵手段および整流器によって実行される。貯蔵手段の充電状態を取得するとき、貯蔵手段の充電状態が高い、例えば80%を超えるとき、電気エネルギの回収は、モータモードで動作する発電機によって実行される。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、貯蔵手段の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機によって電気エネルギを回収するステップの前に、本方法は、電気モータのデフラキシング(defluxing)からなるステップを含む。これは、有利には、電気エネルギの直接的な再注入を回避することを可能にする。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、貯蔵手段の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機によって電気エネルギを回収するステップの前に、本方法は、整流器による電気エネルギの回収からなるステップを含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、貯蔵手段の充電状態が80%よりも大きいときに、モータモードで動作する発電機によって電気エネルギを回収するステップの前に、本方法は、電気ネットワークの高電圧直流バスの電圧の増加からなるステップを含む。これは、有利には、電気モータの起電力の増加を回避することを可能にする。
【0032】
本発明は、非限定的な例として、添付の図面を参照して行われる以下の説明から、よりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴および利点がより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、従来技術にかかる航空機のハイブリッド電気推進アーキテクチャを表している。
図2図2は、本発明にかかる航空機のハイブリッド電気推進アーキテクチャを表している。
図3図3は、本発明にかかるハイブリッド電気推進アーキテクチャにおいて電気エネルギを散逸させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
異なる実現形態において同じ機能を有する要素は、図において同じ参照符号を有する。
【0035】
図2は、本発明にかかるマルチロータ回転翼を有する、例えばヘリコプタまたは飛行機タイプの航空機のハイブリッド電気推進アーキテクチャ100を表している。例えば、アーキテクチャ100は、50kWから2000kWの間の搭載機械的動力を有する5000kg未満の重量の航空機に統合されることができる。
【0036】
例えば補助動力ユニット(APU)などのターボ機械などの内燃機関112は、発電機114に結合される。動作中、発電機114は、内燃機関112によって駆動される。
【0037】
発電機114は、電動発電機であり、すなわち、発電機モードおよびモータモードの双方で動作するように適合されている。換言すれば、発電機114は、特に内燃機関112によって駆動されるとき、発電機モードで、またはモータモードで動作することができる。発電機114は、同期または非同期電気機械とすることができる。したがって、発電機114は、可逆電気機械である。発電機114は、双方向の機械-電気エネルギ変換、すなわち機械-電気変換および電気-機械変換を提供することを可能にする。発電機114は、多相電流、例えば図2に示すような三相電流を生成することができる。
【0038】
発電機114に接続された内燃機関112のロータ軸の回転速度N1は、制御手段102(EECU、電子エンジン制御ユニット)によって制御されることができる。これらの制御手段102は、発電機114の回転速度N1および周波数N1*または各電気推進チェーンについての負荷Ω1*、Ω2*、Ω3*、Ω4*の予測などの他のパラメータに基づいて、WFで示される燃料重量流量などの内燃機関112のパラメータを制御することができる。
【0039】
スタータ104は、補助ギアボックス106によって発電機114に接続されることができる。スタータ104は、例えば、28Vの直流を提供する。制御ユニット108は、スタータ104を制御することができる。スタータ104は、スイッチ110を介して、例えば直流28Vのバッテリ128に接続されることができる。スイッチ110は、スタータ104をバッテリ128に、したがって直流28Vのネットワーク129に接続することを可能にする。
【0040】
整流器116は、発電機114への入力に接続され、発電機114によって送達される交流を直流に変換するように構成される。整流器116は、電流可逆式とすることができる。コンデンサ130は、発電機114と並列に配置されることができる。
【0041】
電気ネットワーク120は、整流器116の出力を変換手段118a、118b、118c、118dの入力に並列に接続する。
【0042】
変換手段118a、118b、118c、118dは、直流電流を交流電流に変換するように構成される。変換手段118a、118b、118c、118dは、直流交流電流変換器を備えることができる。
【0043】
変換手段118a、118b、118c、118dは、インバータを備えることができる。図2において、DCは直流を意味し、ACは交流を意味する。各インバータは、交流電流の3つの相119、121、123(変換手段118dについてのみ言及される)を電気モータ122a、122b、122c、122dのそれぞれにそれぞれ送達する3つのインバータアームを備えることができる。
【0044】
変換手段118a、118b、118c、118d、特にインバータは、電流可逆式とすることができる。コンデンサ136a、136b、136c、136dは、変換手段118a、118b、118c、118dのそれぞれと並列に配置されることができる。
【0045】
電気ネットワーク120は、双方向とすることができ、すなわち、電流は、整流器116から変換手段118a、118b、118c、118dに、および反対方向に流れることができる。
【0046】
電気モータ122a、122b、122c、122dは、変換手段118a、118b、118c、118dに接続されている。動作中、電気モータ122a、122b、122c、122dには、変換手段118a、118b、118c、118dによって交流電流が供給される。
【0047】
電気モータ122a、122b、122c、122dは、多相同期モータとすることができる。これらのモータは、誘導モータまたは可変リラクタンスモータなどの異なるタイプのものとすることができる。これらのモータは、単一ステータまたはマルチロータタイプからなるものとすることができる。これは、有利には、電気モータ122a、122b、122c、122dの質量および体積を低減することを可能にする。
【0048】
発電機114と電気モータ122a、122b、122c、122dとの間の接続は、電気ネットワーク120の安定性および電力管理を改善するために、比較的高い電圧で、直流で動作される。したがって、整流器116は、発電機120によって送達される交流を直流に確実に変換することを可能にする一方で、変換手段118a、118b、118c、118dは、この直流を電気モータ122a、122b、122c、122dに意図された交流に確実に変換する。
【0049】
プロペラ124a、124b、124c、124dは、電気モータ122a、122b、122c、122dに結合される。動作中、プロペラ124a、124b、124c、124dは、電気モータ122a、122b、122c、122dによって駆動される。プロペラ124a、124b、124c、124dは、同軸の逆回転プロペラとすることができる。
【0050】
特に、変換手段118a、それぞれ、118b、118c、118d、電気モータ122a、それぞれ、122b、122c、122d、およびプロペラまたは複数のプロペラ124a、それぞれ、124b、124c、124dは、電気推進チェーン125a、それぞれ、125b、125c、125dを形成する。したがって、図2には、4つの電気推進チェーン125a、125b、125c、125dが存在する。
【0051】
各電気推進チェーン125a、125b、125c、125dについて、ギアボックス134a、134b、134c、134dを介して、電気モータ122a、122b、122c、122dおよびプロペラ124a、124b、124c、124dを接続するシャフトの回転速度Ω1、Ω2、Ω3、Ω4は、制御手段132a、132b、132c、132dによって制御されることができる。同様に、各電気モータ122a、122b、122c、122dに供給するための変換手段118a、118b、118c、118dからの電圧U1、U2、U3、U4は、制御手段132a、132b、132c、132dによって制御されることができる。これらの制御手段132a、132b、132c、132dは、電気モータ122a、122b、122c、122dの回転速度Ω1、Ω2、Ω3、Ω4および電圧U1、U2、U3、U4、ならびに負荷Ω1*、Ω2*、Ω3*、Ω4*の予測などの他のパラメータに基づいて、電気モータ122a、122b、122c、122dの電圧U1、U2、U3、U4およびF1、F2、F3、F4で示されたスイッチング周波数設定点(デューティサイクルとも呼ばれる)などの変換手段118a、118b、118c、118dのパラメータを制御することができる。
【0052】
貯蔵手段126は、電気ネットワーク120のHVDCバスから過剰な電気エネルギを吸収するように、発電機114と並列に電気ネットワーク120に接続される。貯蔵手段126はまた、発電機114を補足または置換することによって、電気モータ122a、122b、122c、122dに一時的に電力を供給するように構成されることができる。貯蔵手段126は、電気化学タイプ、静電タイプ、例えば容量性、または機械タイプとすることができる。特に、電気エネルギ貯蔵手段126は、1つまたは複数のバッテリ、1つまたは複数のコンデンサ、あるいは1つまたは複数のスーパーキャパシタを備えることができる。
【0053】
電気ネットワーク120のHDVCバスのプリチャージ回路138はまた、HDVCバスをプリチャージするように統合されることができる。
【0054】
特にプロペラ124a、124b、124c、124dの制動段階中に、電気ネットワーク120のHVDCバス上の過電圧を吸収することができ、したがって、例えばHVDCバスのコンデンサ、および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)または金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などの電子部品の破損を回避するために、過渡段階を管理するための方法が実施される。
【0055】
上述したようなアーキテクチャ100内の電気エネルギを散逸させるための方法のステップを表す図3に示すように、過渡段階の管理は、貯蔵手段126の充電状態に応じている。
【0056】
ステップS01は、電気ネットワーク120のHVDCバス上で電気エネルギを回生するステップを表す。この回生段階中、電気推進チェーン125a、125b、125c、125dのうちの少なくとも1つから電気ネットワーク120のHVDCバスに過剰の電気エネルギが放出される。図2では、この余剰電気エネルギは、各電気推進チェーン125a、125b、125c、125dの電気強度にそれぞれ対応する矢印I1、I2、I3、I4によって表されている。もちろん、電気推進チェーンのうちの1つのみ、またはいくつか、または全てが電気エネルギを回生することができる。
【0057】
ステップS02は、貯蔵手段126の充電状態を取得するステップを表す。このステップS02の間に、貯蔵手段126の充電状態が低い、中間、または高いかどうかが決定される。
【0058】
貯蔵手段126の低い充電状態は、40%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは60%未満の充電状態に対応することができる。
【0059】
貯蔵手段126の中間充電状態は、40%から90%の間、好ましくは50%から80%の間、より好ましくは60%から80%の間の充電状態に対応することができる。あるいは、貯蔵手段126の中間充電状態は、40%から90%の間、例えば40%から80%の間、または50%もしくは60%もしくは70%もしくは80%から90%の間、または70%から80%の間任意の値の範囲であってもよい。
【0060】
貯蔵手段126の高い充電状態は、80%を超える、好ましくは90%を超える充電状態に対応することができる。
【0061】
ステップS10は、貯蔵手段126によって、特に貯蔵手段126のみによって、電気ネットワーク120のHVDCバス上の回生電気エネルギを回収するステップを表す。このステップS10は、貯蔵手段126の充電状態が低い、例えば60%未満であるときに実行される。特に、貯蔵手段126が60%未満、例えば50%から60%の間の充電状態にある場合、電気エネルギの回収は、貯蔵手段126によって、特に貯蔵手段126によってのみ実行されることができる。図2では、この電気エネルギ回収は、矢印IR126によって表されている。
【0062】
高周波電力ピークの吸収のために、貯蔵手段126は、有利には、スーパーキャパシタタイプの容量性素子を備える。
【0063】
ステップS20は、貯蔵手段126および整流器116によって電気ネットワーク120のHVDCバス上の回生電気エネルギを回収するステップを表す。このステップS20は、貯蔵手段126が中間充電状態にあるとき、例えば、貯蔵手段126の充電状態が60%から80%の間であるときに実行される。
【0064】
このステップS20はまた、貯蔵手段126が貯蔵手段126の完全な再充電を可能にしない熱的状態にあるとき、すなわち、貯蔵手段126がそれを構成する要素の不必要な過熱の危険性がある熱的状態にあるときに実行されることができる。
【0065】
このステップS20は、トランジスタなどの静的構成要素の保護を可能にするための高周波電気エネルギ管理である。「高周波」という用語は、電気ネットワーク120のHVDCバス上の電流のレベルが1kHzよりも高い周波数を指す。
【0066】
過電流の吸収は、一方では貯蔵手段126に統合された容量性構成要素によって、他方では整流器116を用いて達成される。整流器116は、図2においてIR116で示される過電流を吸収し、それを大きな無効成分を有する電流、すなわち、パーク参照フレームにおいて発電機114から整流器116によって受信された電流Idの大きな変化を有する電流に変換する。これは、電気機械の力率を低下させることによる、発電機114によって形成される電気機械の性能の低下をもたらす。これは、有利には、電気機械の効率を低下させることによって過剰な電気エネルギを吸収することを可能にするが、従来技術にかかるアーキテクチャのようにエネルギ回収回路を追加することはない。
【0067】
電気機械、したがって発電機114は、同期または非同期機械とすることができる。
【0068】
同期機械の場合、性能の低下は自発的なデフラキシングをもたらし、すなわち、ステータ内に作りだされる磁場は、回転磁石の磁場とは反対である。これは、同期機械の磁石のレベルでの磁気損失および温度上昇をもたらす。さらに、機械がサリエント(salient)であると言われる場合、発電機における強度Idの増加は、機械的伝達に加えられる電磁トルクを数パーセント増加させ、したがってタービンは、過剰な電力の吸収に寄与する。
【0069】
非同期機械では、性能低下は、スリップの増加、すなわち非同期機械の回転周波数とステータ電流の周波数(すなわち、非同期機械のステータの電流の周波数)との差の増加に起因する。ロータにおけるジュール損失は、スリップに比例するため、このスリップ変動は、電力吸収の長い段階の間に同期機械のロータ加熱(すなわち、同期機械のロータの加熱)をもたらす。
【0070】
ステップS30は、モータモードで動作する発電機114によって電気ネットワーク120のHVDCバス上で回生された電気エネルギを回収するステップを表す。このステップS30は、貯蔵手段126がほぼ完全に充電されているとき、または完全に充電されている場合、すなわち、貯蔵手段126の充電状態が高いとき、例えば80%を超える場合、好ましくは90%を超えるときに実行される。
【0071】
このステップS30は、高周波電気エネルギ管理でもある。
【0072】
電気モータ122a、122b、122c、122dが電気ネットワーク120のHVDCバスに電気エネルギを送り返すとき、それは、電気モータ122a、122b、122c、122dが非常に迅速に制動しなければならないこと、またはいくつかの電気モータがもはや駆動されないこと、すなわち、電気モータのトルク設定点がゼロでありそれらのプロペラが依然として回転しており、同時に他の電気モータが対照的にフルに加速していることを意味する。これは、例えば、航空機が方向を変えなければならないとき、または回避操縦の場合に起こる。
【0073】
この場合、起電力(頭字語EMFによって知られている)を減少させ、電気エネルギの再注入を直接回避するために、電気モータ122a、122b、122c、122dはデフラキシングされる、すなわち、発電機114によって供給される強度IdまたはIqは、マークの角度にしたがって変更される。しかしながら、電気エネルギの再注入の回避は、いくつかの場合、例えば、電気モータ122a、122b、122c、122dが既に過熱されてデフラキシングを妨げているとき、または電気モータの分散制御が使用されて貯蔵手段126の充電状態の取得を困難にしている場合には、常に可能であるとは限らない。この場合、電気エネルギは、アーキテクチャ100の電気エネルギ生成部によって行われる。
【0074】
電気モータ122a、122b、122c、122dのデフラキシングが不可能であるか、または再注入を回避するのに不十分であるとき、上述したように、整流器116を用いた電気エネルギ管理戦略がそれに関連付けられることができる。この場合、電気エネルギの管理のパラメータは、同期機械のデフラキシングまたはスリップの変動とすることができる。
【0075】
電力ピークが非常に高いとき、電気エネルギの回収は、モータモードで動作する発電機114によって実行される。実際に、発電機114の象限は、それをモータモードに切り替えることによって変更されることができ、これは内燃機関112にトルクを課し、したがって電気エネルギの消費体になる。
【0076】
さらに、電気モータ122a、122b、122c、122d上の設定点を予測して、より具体的には、電気モータ122a、122b、122c、122dの起電力の増加を防ぐために、内燃機関112のロータのシャフトの回転速度を増加させ、電気ネットワーク120のHVDCバスの電圧が増加されることができる。これはまた、ジュール損失を低減することを可能にする。
図1
図2
図3