(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】水性で貯蔵安定性のある、VOCフリーのN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/26 20060101AFI20231027BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C08G77/26
C08L83/08
(21)【出願番号】P 2021554999
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020056299
(87)【国際公開番号】W WO2020182788
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-08
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァスマー
(72)【発明者】
【氏名】ティム ビッグズ
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン アザール
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207020(JP,A)
【文献】特表2008-500306(JP,A)
【文献】特開平08-208997(JP,A)
【文献】特開2002-187977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物の加水分解物、および任意で前記加水分解物の縮合物と、
- ハロゲン化ビニルベンジル
との反応から誘導される、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール、および任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩を含む水性組成物であって、
前記組成物は、100質量%の全組成物に対して、
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩を1質量%~70質量%、
- 水を30質量%~99質量%
含有し、酸性のpHを有し、
全組成物中の遊離アルコール含有率が0.5質量%以下である、組成物。
【請求項2】
i)7.0未満のpHを有し、かつ/または
ii)無機酸または有機酸またはそれらの混合物から選択される酸を0.1質量%以上含有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記酸が、塩酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸またはフマル酸から選択されることを特徴とする、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩の質量平均分子量(Mw)が1000g/mol以上であり、かつ/またはN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩の数平均分子量(Mn)が700g/mol以上であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
全組成物中、シロキサノールの窒素原子1molあたり0.2~1.5molのプロトン(ヒドロン)、ならびにハロゲン化物のアニオンおよび任意で酸のアニオンが存在することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
全組成物中の加水分解性アルコキシ基含有率が5質量%未満であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノアルキル官能性アルコキシシランが、式I
(R
1O)
3-a-b(R
2)
aSi(B)
1+b (I)
に対応し、式Iの基Bが、独立して、式II
-(CH
2)
c-[(NH)(CH
2)
d]
e[(NH)(CH
2)
f]
gNH
(2-h)R
3
h (II)
の基に対応し、式I中、R
1は、独立して、1~8個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を表し、R
2は、独立して、1~8個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を表し、式II中、R
3は、独立して、1~8個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、アリール基またはアルキルアリール基を表し;式I中、aは、独立して、0または1であり、bは、独立して、0、1または2であり;式II中、cは、独立して、1、2、3、4、5および6から選択され;dは、独立して、1、2、3、4、5および6から選択され;eは、独立して、0、1、2、3、4、5および6から選択され;fは、独立して、1、2、3、4、5および6から選択され;gは、独立して、0、1、2、3、4、5および6から選択され;かつhは、独立して、0または1であるか;あるいは式Iの基Bは、式III
-(CH
2)
j-NH
2-p(CH
2-CH
2-NH
2)
p (III)
[式中、j=1、2または3であり、かつp=0、1または2である]の基に対応することを特徴とする、請求項1または6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノアルキル官能性アルコキシシランが、式I
(R
1O)
3-a-b(R
2)
aSi(B)
1+b (I)
に対応し、式Iの基Bが、式III
-(CH
2)
3-NH-CH
2-CH
2-NH
2 (III)
の基に対応することを特徴とする、請求項1または7に記載の組成物。
【請求項9】
N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩の質量平均分子量(Mw)が、1000g/mol以上100000g/mol以下であり、かつ/またはN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩の数平均分子量(Mn)が、700g/mol以上100000g/mol以下であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
アルコール含有率が、1.0質量%未満であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
以下の工程:
- 少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物を、任意でアルコール組成物として、最初に装入する工程、
- ケイ素原子1molあたり0.5~4.5molの水を添加する工程、
- 任意で、混合しながら温度を40~65℃の範囲に維持する工程、
- 前記少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランの加水分解物、任意で前記加水分解物の縮合物、および加水分解アルコールを含む組成物を得る工程、
- 前記加水分解物および任意で前記加水分解物の前記縮合物を、ハロゲン化ビニルベンジルと反応させる工程であって、前記ハロゲン化ビニルベンジルを、前記アミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物に対して1.0:0.60~1.0:1.15のモル比で添加し、かつ任意で40~60℃の範囲の温度で前記ハロゲン化ビニル
ベンジルを添加する工程、
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩の組成物を得る工程、
- 無機酸または有機酸またはそれらの混合物から選択される酸を添加することにより、前記組成物のpHを調節する工程、
- 水を添加する工程、および
- アルコールおよび加水分解アルコールを除去する工程、および
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意で前記プロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩を含み、酸性のpHを有する水性組成物を得る工程
を含む方法であって、前記水性組成物は、全組成物中の遊離アルコール含有率が0.5質量%以下であ
り、酸を添加する工程を、アルコールおよび加水分解アルコールを除去する工程の前に行う、方法。
【請求項12】
それぞれの工程において、
- 水を添加する工程が、規定量の水の添加を含み、かつ
- 前記アルコールおよび前記加水分解アルコールを除去する工程が、蒸留により前記アルコールおよび前記加水分解アルコールを除去することを含み、
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩を含む水性組成物を得る工程が、
- 100質量%の全組成物に対して、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩を1質量%~70質量%、ならびに水を30質量%~99質量%含有する組成物を
得ることを含む
ことを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記水性組成物が、全組成物中5質量%未満の加水分解性アルコキシ基含有率を有することを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物を、アミノ官能性アルコキシシラン対アルコールの質量比が80:20~30:70であるアルコール組成物として最初に装入することを含むことを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項15】
酸の添加により前記組成物のpHを調節する間に、2.7~4のpHを確立することを特徴とする、請求項11、13または14記載の方法。
【請求項16】
無機基材および有機基材に使用する接着促進剤としての、無機表面と有機表面との間の接着促進剤としての、無機粒子充填ポリマーの製造においてモノマーと架橋するよう無機粒子を被覆するための、有機ポリマーを無機充填剤で補強する際の、無機表面または有機ポリマーを被覆する際の、ならびに繊維強化ポリマーにおける無機ファイバーと有機ポリマーとの間の接着促進剤としての、請求項1から10までのいずれか1項記載の組成物の使用、または請求項11から
15までのいずれか1項記載の方法の生成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物の加水分解物および任意で前記加水分解物の縮合物と、ハロゲン化ビニルベンジルとの反応から誘導された、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールを含有し、1質量%以上のN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール塩、ならびに水を含む、貯蔵安定性のある、かつ好ましくは無色の水性組成物に関し、ここで全組成物の総和が100質量%、pHが2~3.5である。この組成物の製造方法も同様に開示される。
【0002】
メタノール溶液としての塩酸塩官能化アミノシラン、たとえば3-(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの製造、およびたとえば接着促進剤としてのその使用は、かなり以前から知られている(ほんの数例を挙げると、米国特許第4,902,556号明細書、欧州特許第353766号明細書、米国特許第4,849,294号明細書、欧州特許第338128号明細書、米国特許第4,499,152号明細書、米国特許第4,382,991号明細書、米国特許第4,330,444号明細書、独国特許発明第2802242号明細書、特開01-259369号公報、欧州特許出願公開第176062号明細書、欧州特許第590270号明細書、国際公開第2005/118599号)。
【0003】
ところが、VOC(揮発性有機化合物)フリー製品の需要が多くの用途で高まっている。VOCは一般に、環境への影響および作業安全性をはじめとする多くの理由から好ましくない。業界の慣行では、3-(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩を製造するための塩化ビニルベンジル(VBC)とN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(DAMO)との反応生成物は、溶媒溶液として得られるのみである。溶媒としてよく用いられるのがメタノールである。このメタノール溶液は、たとえば(プリント基板(PCB)で)グラスファイバーとエポキシ樹脂との間の接着促進剤として用いられる。通常、グラスファイバーへは水性サイズ(当技術分野ではサイズ剤とも呼ばれる)として塗布する。メタノール中の反応生成物はまず水中で加水分解され、この加水分解物の安定性は、最大48時間持続する。
【0004】
したがって、3-(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランに関して推奨される慣例的な利用法では、3-(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの含有率が0.1%以下~0.5質量%の水性組成物しか製造されないが、これはそうしないと数日のうちに沈殿物としての油相を含む多相組成物が形成するからである。該組成物には、加水分解アルコールも含まれている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、貯蔵安定性のあるVOCフリーのN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シランの水性組成物を提供することであり、該組成物はさらに、比較的長期間にわたり多相混合物を形成してはならず、安定性の目安である粘性もこの期間中は好ましくは実質的に変化してはならない。これらの組成物の製造方法を提供することも、さらなる課題であった。水希釈液中の組成物の(そのまま使えるサイズ、たとえばグラスファイバー用サイズ剤としての)安定性は、24時間を超えるべきであり、または理想的には48時間を超えるべきである。そのような水希釈液は、典型的には、組成物に対し0.5~10質量%の範囲の固体含有率を有する(DIN ISO 3251に従って測定した場合)。
【0006】
これらの課題は、請求項1記載の組成物および請求項10記載の方法により解決され、さらに従属請求項および本明細書で好ましい実施形態を明らかにする。
【0007】
驚くべきことに、使用したN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを水で加水分解してから塩化ビニルベンジルと反応させ、続いて中和し、かつ好ましくは酸性のpHに調節してから、蒸留によりアルコール、この場合はメタノールを除去すると、(室温で少なくとも6カ月間)貯蔵安定性のある水性のVOCフリー(揮発性有機化合物を含まない)の、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランと塩化ビニルベンジルとの反応生成物が得られることがわかった。蒸留は、好ましくは真空下に塔底温度60℃未満で実施する。これにより、(メタノール、エタノールおよびプロパノールなどの)アルコール含有率、具体的にはメタノール含有率が1.0質量%未満であり、室温(20~23℃)での貯蔵安定性が6カ月超である組成物、具体的には溶液を、有利に得ることができる。水希釈液(サイズとして使用)としての安定性も、室温(20~23℃)で1カ月超である。溶液とは、単相としてのみ存在する、水と本発明のアミノ官能性シロキサノールとの均質な混合物を意味すると理解すべきである。
【0008】
したがって本発明は、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール、および任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩を含む組成物、具体的には、3-(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシロキサン塩酸塩および水を含有する組成物(以下、「本発明の溶液」と略すこともある)のほか、その製造方法およびその使用も提供する。
【0009】
本発明は、
- 少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物の加水分解物、および任意で加水分解物の縮合物と、
- ハロゲン化ビニルベンジル
との反応から誘導される、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール、および任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、および任意でそれらの混合物を含む水性組成物であって、該組成物は、
- 100質量%の全組成物に対し、1質量%~70質量%のN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノール、および任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、
- 30質量%~99質量%の水を含み、酸性のpH、具体的には7.0未満のpH、好ましくは2~3.5のpHを有する、水性組成物を提供する。
【0010】
水性組成物中、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の含有率が、10質量%~65質量%、好ましくは20質量%~60質量%、特に好ましくは30質量%~60質量%であること、具体的には35質量%~90質量%の水、好ましくは40質量%~80質量%の水、特に好ましくは40質量%~70質量%の水と共に含まれることが、特に好ましい。水性組成物は、好ましくは2~3.75のpHを有する水溶液の形態である。極めて好ましい組成物は、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩およびそれらの混合物の含有率が40質量%~65質量%であり、好ましくは含有率は35質量%~50質量%、特に好ましくは35質量%~45質量%であり、具体的には50質量%~65質量%の水、好ましくは55質量%~65質量%の水を共に含み、該水性組成物のpHは、好ましくは2.7~4、特に好ましくは2.7~3.75、好ましくは2.85~3.5である。あるいは、3±0.5、±0.25のpHが好ましい。酸性組成物のN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の含有率は、固体含有率の測定により決定することができる。N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の含有率が少なくとも25質量%~65質量%であることが極めて好ましく、ここで100質量%の全組成物の含水率は75質量%以下~35質量%である。
【0011】
特に好ましい実施形態では、本発明は、i)7.0未満のpH、具体的には2~3.5のpHを有する組成物を提供する。該組成物はまた、無機酸もしくは有機酸またはそれらの混合物から選択されるアニオンでプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールを形成する酸またはその解離イオンの含分を含んでいてもよい。酸は、好ましくは、シランまたはシロキサンの窒素原子に対し0.5mol~1.0molの比率で添加される。
【0012】
一実施形態では、本発明は、全組成物中、窒素原子1molあたり0.2~1.5molのプロトン(ヒドロン)、具体的には0.45~1.15molのプロトン(ヒドロン)を含む組成物を提供する。組成物は、全組成物中、シロキサノールの窒素原子1molあたり0.2~1.5molのプロトン(ヒドロン)、ならびに具体的にはハロゲン化物のアニオンおよび任意で酸の0.2~1.5molのアニオン、好ましくは0.45~1.15molのアニオンを、さらに含み得る。
【0013】
好ましい酸としては、塩酸およびカルボン酸が挙げられる。酸は、より好ましくは、塩酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、およびフマル酸から選択される。たとえば5g/100gを上回る水溶性を有する水溶性酸が、基本的に好適である。同様に好適なのは、硫酸、1~5個の炭素原子を有するアルキルカルボン酸、乳酸、フルーツ酸、脂肪酸、アクリル酸、メタクリル酸、および/またはオレフィン酸である。
【0014】
pHの調節、ならびにアルコールおよび加水分解アルコールの除去を行う順番は、貯蔵安定性のある溶液の製造にとって極めて重要である。本発明では、アミノアルキル官能性アルコキシシランまたはそれらの混合物の加水分解物および任意で縮合物と、ハロゲン化ビニルベンジルとの反応の後、酸または酸混合物の添加により、まずはpHを中性値、好ましくは酸性値になるよう調節する。次に、得られた組成物を水で希釈することができ、好ましくは加水分解に用いた1~100倍の量の水を添加し、好ましくは10~30倍の量の水を添加し、そして好ましくは300mbar(絶対)未満、具体的には100~250mbar(絶対)に減圧し(真空)、塔底温度20~65℃、特に35~60℃で蒸留することにより、組成物からアルコールおよび加水分解アルコールを除去し、任意でさらに水を、好ましくは加水分解に用いた0.5~100倍の量の水、好ましくは0.5~10倍の量の水を添加して、水性組成物を得る。
【0015】
この貯蔵安定性のある水溶液は、得られたN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、および任意でそれらの混合物の規定の分子量のおかげで規定の粘性を示すことが見出された。本発明のビニルベンジル官能化シロキサノールはミセル様の構造を形成するので貯蔵安定性が高まると考えられるが、特にこの説に縛られるわけではない。
【0016】
分子量の測定は、オリゴマー構造またはポリマー構造の分子量を確立するGPC測定などの、当業者にはよく知られている方法により実施することができる。GPC測定のさまざまな方法が知られている。そこで三連検出では、数平均の分子量(Mn=数平均分子量)、質量平均の分子量(Mw=質量平均分子量)、または分子量の不均衡を説明する平均(Mz=遠心分析による平均分子量)を測定する。同様に、ピーク分子量(Mp=ピーク分子量)も報告することができる。
質量平均分子量(Mw)
【数1】
および数平均分子量(Mn)
【数2】
それぞれ式中、
n
i=i-merの物質量[質量]
M
i=i-merのモル質量
【0017】
質量平均および数平均の定義の詳細は、当業者には自体公知であるが、特にhttp://de.wikipedia.org/wiki/Molmassenverteilungに、または標準的な数学のテキストにも見出され得る。
【0018】
N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の質量平均分子量(Mw)が1000g/mol以上の、かつ/またはN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の数平均分子量(Mn)が700g/mol以上の水性組成物が好ましく、具体的には、質量平均分子量(Mw)は10000g/mol以上、かつ/または数平均分子量(Mn)は800g/mol以上、好ましくは1500g/mol以上である。
【0019】
本発明の代替形態では、組成物が、質量平均分子量(Mw)が1000g/mol以上であり、かつ数平均分子量(Mn)が700g/mol以上である、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、またはそれらの混合物を含有することが好ましく、ここで多分散性、すなわちMw/Mnの商は、1.0~10、好ましくは1.05~6、選択肢でいえば1.05~2.5または3.5~6である。
【0020】
質量平均分子量(Mw)が10000g/mol以上であり、かつ数平均分子量(Mn)が800g/molである、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、またはそれらの混合物を含む組成物も好ましく、ここで多分散性、すなわちMw/Mnの商は、1.05~10、好ましくは1.05~2.5、あるいは好ましくは3.5~6である。同様に好ましい組成物は、質量平均分子量(Mw)が10000g/mol以上であり、かつ数平均分子量(Mn)が1500g/mol以上であるこれらのシロキサンオリゴマーを含有し、ここで多分散性(D)、すなわちMw/Mnの商は、任意で3.5~6である。
【0021】
したがって本発明は、N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の質量平均分子量(Mw)が、1000g/mol以上100000g/mol以下、具体的には1000g/mol以上10000g/mol以下であり、かつ/またはN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の数平均分子量(Mn)が、700g/mol以上100000g/mol以下、好ましくは700g/mol以上10000g/mol以下である組成物も提供する。一代替形態では、質量平均分子量(Mw)は、10000g/mol以上50000g/mol以下であり得、かつ/または数平均分子量(Mn)は、800g/mol以上、好ましくは1500g/mol以上50000g/mol以下であり得る。
【0022】
N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩が、完全に加水分解されている組成物が好ましく、具体的には、シロキサノールに対するアルコキシ基の含有率は、0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満である。
【0023】
代替の好ましい実施形態では、水性組成物の粘性は、1~500[mPas、20℃]、具体的には10~400[mPas、20℃]、好ましくは50~350[mPas、20℃]である。具体的にはN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の含有率が20質量%~60質量%、好ましくは30質量%~40質量%である水性組成物の粘性が、60℃で21日間貯蔵した後20℃で測定すると、50~500[mPas、20℃]の範囲、好ましくは100~350[mPas、20℃]の範囲であることが、さらに好ましい。粘性は、DIN53015に従って決定することができる。
【0024】
特に好ましい水性組成物は、全組成物に対し、
i)全組成物中0.5質量%以下、具体的には0.25質量%未満、特に好ましくは0.1質量%以下の遊離アルコール含有率、および任意で、
ii)全組成物中5質量%未満、好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、または好ましくは0.01質量%以下の加水分解性アルコキシ基含有率
を有する。
【0025】
水性組成物が、有機希釈剤を実質的に含んでおらず、かつ架橋時にアルコールを実質的にもはや放出しないことが好ましく、具体的には、本質的に組成物が含むのは、水、水溶性N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、またはそれらの混合物、ならびに任意で少なくとも1種の酸、またはその加水分解物だけである。
【0026】
水性組成物は、好ましくは、3,5-ジ-tert-ブチルカテコール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、4-tert-ブチルピロカテコール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、および2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを含まない。上記化合物はアルコール溶液の安定剤として使用されるものであり、したがって本発明の場合は必要ない。
【0027】
組成物の製造に好適なアミノアルキル官能性アルコキシシランは、式I
(R1O)3-a-b(R2)aSi(B)1+b (I)
に対応することができ、式Iの基Bは、独立して、式II
-(CH2)c-[(NH)(CH2)d]e[(NH)](CH2)f]gNH(2-h)R3
h (II)
の基に対応し、式I中、R1は、独立して、1~8個の炭素原子を有する、具体的には1個、2個、3個、または4個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を表し、R2は、独立して、1~8個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を表し、式IIのR3は、独立して、1~8個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、アリール基またはアルキルアリール基を表し;式I中、aは、独立して、0または1であり、bは、独立して、0、1、または2、好ましくは0であり;式II中、cは、独立して、1、2、3、4、5および6から選択され;dは、独立して、1、2、3、4、5および6から選択され;eは、独立して、0、1、2、3、4、5および6から選択され;fは、独立して、1、2、3、4、5および6から選択され;gは、独立して、0、1、2、3、4、5および6から選択され;hは、独立して、0または1であり;あるいは式Iの基Bは、式III
-(CH2)j-NH2-p(CH2-CH2-NH2)p (III)
の基に対応し、
式中、j=1、2または3であり、p=0、1または2であり;pは、好ましくは0および1から選択される。
【0028】
式I
(R1O)3-a-b(R2)aSi(B)1+b (I)
のアミノアルキル官能性アルコキシシランが特に好ましく、具体的には、R1O-は、メトキシ基およびエトキシ基から選択されるアルコキシであり、a=0かつb=0であり、
式Iの基Bは、式III
-(CH2)3-NH-CH2-CH2-NH2 (III)
の基に対応し、式中、aは、独立して、0または1であり、bは、独立して、0、1または2であり、好ましくはbは0であり、好ましくはa=0かつb=0または1であり、具体的にはb=0である。
【0029】
アミノアルキル官能性アルコキシシランが、式Iのジアミノアルキル官能性またはトリアミノアルキル官能性アルコキシシランに対応するのが概して好ましい。同様に特に好ましいのは、前述のシランの混合物、たとえばアミノシランとジアミノシランとの、またはアミノシランとトリアミノシランとの、またはジアミノシランとトリアミノシランとの混合物、あるいは式Iの3種以上の異なるアミノシランを含む混合物である。
【0030】
本発明はまた、以下の工程を有する方法および特に該方法により得られる組成物を提供する:
- 少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物を、任意でアルコール組成物として、最初に装入する工程、
- アミノ官能性アルコキシシランのケイ素原子1molあたり0.5~4.5molの水、具体的にはケイ素原子1molあたり1.0~3.5molの水、好ましくはケイ素原子1molあたり1.5~3.0molの水、具体的にはどの場合も±0.15molを添加する工程、
- 任意で、混合しながら温度を40~65℃の範囲に維持する工程、
- 該少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランの加水分解物、および任意で前記加水分解物の縮合物、および加水分解アルコールを含む組成物を得る工程、
- 該加水分解物および任意で前記加水分解物の縮合物を、ハロゲン化ビニルベンジル、具体的には塩化ビニルベンジルと反応させる工程であって、該ハロゲン化ビニルベンジルを、アミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物に対して、1.0:0.60~1.0:1.15のモル比、好ましくは1:0.99~1.01のモル比で添加する工程、そして任意で、
- 具体的には40~60℃の範囲の温度で該ハロゲン化ビニルを添加し、そして好ましくはこの温度範囲で反応させる工程、
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の組成物を得る工程、
- 無機酸もしくは有機酸またはそれらの混合物から選択される酸を添加することにより、該組成物のpHを具体的にはpH7.0未満に調節する工程、
- 水、具体的には蒸留水を添加する工程、および
- アルコールおよび任意で加水分解アルコールを除去する工程、および
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩を含み、酸性のpHを有する水性組成物を得る工程
を含む。
【0031】
上述のハロゲン化ビニルベンジルのモル比は、アルコキシシランに対するものである。
【0032】
代替方法の変化形態では、ハロゲン化ビニルを添加する前に酸を添加してpHを中性または酸性に調節し、それからハロゲン化ビニルを添加することも可能である。
【0033】
少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物は、好ましくは、まずは少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランまたはアミノアルキル官能性アルコキシシラン混合物を、アミノ官能性アルコキシシラン対アルコール、具体的にはエタノールまたはメタノールの質量比が80:20~30:70であるアルコール組成物として装入または製造することにより、最初にアルコール組成物として装入される。
【0034】
N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩の組成物を得た後、該組成物のpHを、好ましくは、まずは塔底温度を0℃~40℃に、具体的には0℃~30℃に、好ましくは25℃未満に設定し、そして無機酸もしくは有機酸またはそれらの混合物から選択される酸の添加によりpHを調節することにより、調節するが、ここで塔底温度は好ましくは60℃を超えず、具体的には40℃を超えない。
【0035】
好ましい代替形態では、それぞれの工程において、
- 水を添加する工程は、規定量の水、具体的には蒸留水を添加することを含み、
- アルコールおよび加水分解アルコールを除去する工程は、アルコールおよび加水分解アルコールを、好ましくは真空下に塔底温度60℃未満で、蒸留により除去することを含み、かつ
- N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび任意でプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩を含む水性組成物を得る工程では、該組成物は、100質量%の全組成物に対し、1質量%~70質量%、具体的には30質量%~60質量%のN-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールおよび/またはプロトン化N-ビニルベンジルアミノアルキル官能性シロキサノールの塩、ならびに30質量%~99質量%、具体的には40質量%~70質量%の水を含み、具体的には2~3.5のpHを有する。
【0036】
アルコールの除去は、好ましくは、得られた組成物を水で希釈することにより実施され、好ましくは加水分解に用いた1~100倍の量の水を添加し、好ましくは10~30倍の量の水を添加し、そして真空状態、好ましくは低真空、特に好ましくは300mbar(絶対)未満、具体的には100~250mbar(絶対)の真空に減圧し、好ましくは塔底温度範囲20℃~65℃、特に35℃~60℃で蒸留することにより、組成物からアルコールおよび加水分解アルコールを除去し、任意でさらに水、好ましくは加水分解に用いた0.5~100倍の量の水、好ましくは0.5~10倍の量の水を添加して、水性組成物を得る。
【0037】
アルコールおよび加水分解アルコールを除去する工程は、好ましくは、この工程で加水分解アルコールの少なくとも一部分を除去するために、さらに水を添加して実施し、留出物の量を、好ましくはおよそ等量の水で置き換える。
【0038】
本発明では、該方法により、全組成物中、i)全組成物中の遊離アルコールの含有率が、0.5質量%以下、具体的には0.25質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である、水性組成物が得られる。ii)任意で、加水分解性アルコキシ基の任意の含有率は、全組成物中、好ましくは5質量%未満、具体的には0.1質量%未満である。
【0039】
さらに、好ましい酸の添加により組成物のpHの調節を実施し、pH2.7~4、好ましくはpH2.7~3.75、特に好ましくはpH2.85~3.5、より好ましくはpH3.0±0.5、±0.25とする。任意で、得られた水性組成物のpHをチェックし、上述のpH値の1つに調節することがより好ましい。
【0040】
該方法が、分別蒸留されたハロゲン化ビニルの添加を含み、該添加の前に、具体的には該添加の直前に、tert-ブチル-カテコールなどの少なくとも1種の安定剤を添加することも好ましい。
【0041】
加水分解物および任意で加水分解物の縮合物と、ハロゲン化ビニルベンジルとの反応は、有利には、40~60℃の範囲の温度で、30分~3時間かけて、混合しながら実施することができる。
【0042】
特に好ましい変化形態では、以下のように方法を実施して、アルコール含有率および任意で加水分解アルコール含有率が1.0質量%未満である水性組成物を得ることができる:
- 工程1では、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびメタノール、またはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランおよびエタノールを最初に装入し、そして混合しながら、ケイ素1molあたり0.5~4.5molの水、具体的にはケイ素1molあたり0.5~3.0molの水、特に好ましくはケイ素1molあたり1.0~3.0molの水を滴加し、そして混合物を60℃で1時間混合し、好ましくは撹拌し、
- 工程2では、工程1からのオリゴマーのシロキサノールを、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランまたはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン対塩化ビニルベンジル1.0:0.60~1.0:1.15、好ましくは1:0.99~1.01のモル比で塩化ビニルベンジルに添加し、具体的には添加してさらに40~60℃の範囲の温度で反応させ、
- 工程3では、工程2からの反応生成物を酸で、具体的には塩酸で中和し、好ましくは酸性化し、そして水で希釈してから、メタノールまたはエタノールを蒸留により除去する。
【0043】
方法を、好ましくは、アミノアルキル官能性アルコキシシラン、または少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランの加水分解もしくは縮合物、または少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランと少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランの加水分解および/または縮合物とを含む混合物を用いて実施することが同じく好ましく、該アミノアルキル官能性アルコキシシランは、以下の、特に一般式Iのアミノアルキル官能性アルコキシシラン:3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1-アミノメチルトリメトキシシラン、1-アミノメチルトリエトキシシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、3-アミノイソブチルトリメトキシシラン、3-アミノイソブチルトリエトキシシラン、N-n-ブチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-n-ブチル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-n-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-n-ブチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-n-ブチル-1-アミノメチルトリエトキシシラン、N-n-ブチル-1-アミノメチルメチルジメトキシシラン、N-n-ブチル-1-アミノメチルトリメトキシシラン、N-n-ブチル-1-アミノメチルメチルトリエトキシシラン、ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ベンジル-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジル-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ジアミノエチレン-3-プロピルトリメトキシシラン、ジアミノエチレン-3-プロピルトリエトキシシラン、トリアミノジエチレン-3-プロピルトリメトキシシラン、トリアミノジエチレン-3-プロピルトリエトキシシラン、(2-アミノエチルアミノ)エチルトリメトキシシラン、(2-アミノエチルアミノ)エチルトリエトキシシラン、(1-アミノエチルアミノ)メチルトリメトキシシラン、および(1-アミノエチルアミノ)メチルトリエトキシシランから選択され、ジアルコキシシランおよび/またはトリアミノアルコキシシランが特に好ましい。特に好ましいのは、ジアミノエチレン-3-プロピルトリメトキシシラン、ジアミノエチレン-3-プロピルトリエトキシシラン、トリアミノジエチレン-3-プロピルトリメトキシシラン、トリアミノジエチレン-3-プロピルトリエトキシシランである。
【0044】
本発明はまた、無機基材および有機基材に使用する接着促進剤としての、無機表面と有機表面との間の接着促進剤としての、無機粒子充填ポリマーの製造においてモノマーと架橋するよう無機粒子を被覆するための、有機ポリマーを無機充填剤で補強する際の、無機表面または有機ポリマーを被覆する際の、ならびに繊維強化ポリマーにおける無機ファイバーと有機ポリマーとの間の接着促進剤としての、組成物またはプロセス生成物の使用も提供する。
【0045】
無機基材もしくは表面とは、コンクリート、レンガ、モルタル、石、鉱物漆喰、金属、合金、ハイブリッド材料、およびガラスを意味するものと理解され、有機基材もしくは表面とは、ポリマー、たとえば合成モノマーのポリマー、たとえばアクリレート、スチレン、ポリアミド、PEEK等を意味し、かつ木、紙、セルロース、およびリグノセルロースを含有する基材もしくは表面も意味するものと理解される。
【0046】
以下の実施例により、本発明の主題を制限することなく本発明をより詳細に明らかにする。
【0047】
実施例:
分子量の測定:
モル質量/分子量も、モル質量分布も、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。GPC分析法は、“Modern Size-Exclusion Liquid Chromatography”, Andre Striegel et al., Wiley & Sons, 2nd edn., 2009などの参照文献に詳細に説明されている。シロキサン分析の方法を較正する標準として、たとえばジビニルテトラメトキシジシロキサンを用いることができる。
【0048】
SiO
2
含有率の測定:るつぼ法:濃硫酸による酸分解、およびその後のフッ素化による蒸発により、SiO2含有率を測定する。
【0049】
GC分析:
当業者には周知のGC標準分析の文脈では、好適な較正および任意で内部標準(たとえばノナン)を用いて、アルコールおよび加水分解アルコールの含有率を測定する。
【0050】
実施例1:DAMOオリゴマー(H2O 3.0mol/Si 1mol)/VBC(塩化ビニルベンジル)および水の反応生成物
装置:2000ml四口フラスコ、滴下漏斗、蒸留ブリッジ、強力クーラー、KPGスタラー、温度制御できるオイルバス、真空ポンプ
最初に、2000ml四口フラスコに、126.3g(0.568mol)のDAMO((2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)および62.0gのメタノールを装入した。塔底温度を23℃から34℃に上げた。30.7g(1.705mol)のDM(脱塩)水を3分かけて添加した。塔底温度を49℃に上げた。混合物を、塔底温度50℃でさらに1時間撹拌した。続いて、塔底温度55℃~58℃で、73.7g(0.483mol)の塩化ビニルベンジル(アイソマー混合物)を2.4時間かけて添加し、この温度で混合物をさらに2時間撹拌した。次に、207.3gのメタノールで塔底液を希釈した。塔底温度20℃で、濃塩酸(37%)の添加を開始した。60.9g(0.618mol)の濃塩酸を3分かけて添加した。塔底温度を37℃に上げた。次いで透明な塔底液を578.9gのDM水で希釈し、絶対圧力200mbar~170mbar、塔底温度42℃~55℃で蒸留して、メタノールおよび加水分解メタノールを除去した。全部で660.9gの留出物を除去し、さらに24gのDM水を添加した。502.2gの黄色い透明な低粘性の塔底生成物を得た。該生成物は、加速貯蔵試験(60℃で3週間、再循環乾燥棚)後も透明で低粘性のままであった。
【0051】
【0052】
実施例1のモル質量分布(貯蔵前):
GPCカラム:PSS Novema Max.プレカラム、カラム2および3:PSS Movema Mac 100A、検出器1:Agilent RID G1362A、溶離液:水、流量:1ml/分、温度:40℃
【表2】
【0053】
実施例2:DAMOオリゴマー(1.5mol H2O/1mol Si)/VBC(塩化ビニルベンジル)および水の反応生成物
装置:1000ml四口フラスコ、滴下漏斗、蒸留ブリッジ、強力クーラー、KPGスタラー、温度制御できるオイルバス、真空ポンプ
最初に、1000ml四口フラスコに、94.6g(0.425mol)のDAMO((2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)および51.0gのメタノールを装入した。塔底温度を23℃から34℃に上げた。11.5g(0.638mol)のDM水と11.5gのメタノールとの混合物を3分かけて添加した。塔底温度を49℃に上げた。混合物を、塔底温度50℃でさらに1時間撹拌した。続いて、塔底温度55℃~58℃で、55.4g(0.363mol)の塩化ビニルベンジル(アイソマー混合物)を0.5時間かけて添加し、この温度で混合物をさらに2時間撹拌した。次に、26.1gのメタノールで塔底液を希釈した。塔底温度20℃で、濃塩酸(37%)の添加を開始した。45.7g(0.464mol)の濃塩酸を4分かけて添加した。塔底温度を36℃に上げた。次いで透明な塔底液を373.8gのDM水で希釈し、絶対圧力200mbar~170mbar、塔底温度44℃~56℃で蒸留して、加水分解メタノールを除去した。全部で291.8gの留出物を除去し、さらに34.8gのDM水を添加した。375.0gの黄色い透明な低粘性の塔底生成物を得た。該生成物は、加速貯蔵試験(60℃で3週間)後も透明で低粘性のままであった。
【0054】
【0055】
実施例2のモル質量分布(貯蔵前):
GPCカラム:PSS Novema Max.プレカラム、カラム2および3:PSS Movema Mac 100A、検出器1:Agilent RID G1362A、溶離液:水、流量:1ml/分、温度:40℃
【表4】
【0056】
比較例1:(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩の加水分解物水溶液
装置:2000ml四口フラスコ、滴下漏斗、蒸留ブリッジ、強力クーラー、KPGスタラー、温度制御できるオイルバス、真空ポンプ
最初に、2000ml四口フラスコに、メタノール中42%の499.5g(0.605mol)の(N-ビニルベンジル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩を装入した。58.7gの濃塩酸、37%(0.645mol HCL r.S./2.22mol H2O)を0.5時間かけて添加した。塔底温度を45℃に上げた。絶対圧力300mbar~130mbar、塔底温度約60℃で、全部で737.8gの留出物を除去した。蒸留中に713.8gのDM水を添加した。507.7gの赤黄色の透明な低粘性の生成物を得た。
【0057】
この生成物は、(再循環乾燥棚で)60℃で1日貯蔵すると固化した。
【0058】