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特許7374206低電力で動作する形状記憶合金コイルばねを備える線形アクチュエータ
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  • 特許-低電力で動作する形状記憶合金コイルばねを備える線形アクチュエータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】低電力で動作する形状記憶合金コイルばねを備える線形アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F03G 1/02 20060101AFI20231027BHJP
   F03G 7/06 20060101ALI20231027BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20231027BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
F03G1/02
F03G7/06 A
F16F1/06 A
F16F1/12 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021555258
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020058864
(87)【国際公開番号】W WO2020201164
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】102019000004715
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・チトロ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・フマガッリ
(72)【発明者】
【氏名】マテオ・ザネッラ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・スカルラタ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-024965(JP,U)
【文献】実開昭61-036737(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0073318(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0083325(US,A1)
【文献】特開2011-051012(JP,A)
【文献】実開平03-122275(JP,U)
【文献】実開平02-012540(JP,U)
【文献】特開昭63-191067(JP,A)
【文献】特開平02-197782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 1/02
F03G 7/06
F16F 1/06
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気制御式の形状記憶合金コイルばね(23)を備える線形アクチュエータであって、前記形状記憶合金コイルばね(23)は、外径(D)を有し、かつ太さ(T)を有するコイル状の形状記憶合金ワイヤで作られ、前記外径(D)と前記ワイヤ太さ(T)との間の比(Φ)は、4と10との間に含まれる、線形アクチュエータにおいて、前記形状記憶合金コイルばね(23)は、各先端に圧着端子を備え、前記圧着端子の各自は、前記形状記憶合金コイルばね(23)の端子部で変形させられかつ圧着される圧着構成要素(21)と、前記形状記憶合金コイルばね(23)を、対応する係合手段を備える前記線形アクチュエータに搭載するのに適した取付部(22b)と、を備え、前記取付部(22b)は、前記圧着端子の別個の係合部材(22)上に形成され、前記係合部材(22)は、前記形状記憶合金コイルばね(23)の前記端子部に取付けられ、かつ前記圧着端子が圧着されるとき変形させられないよう保つように、直径が前記形状記憶合金コイルばね(23)の内径に等しく、前記圧着構成要素(21)よりも硬い材料で形成された接続部(22a)を含むことを特徴とする、線形アクチュエータ。
【請求項2】
前記圧着構成要素(21)は、前記形状記憶合金コイルばね(23)の前記外径(D)以上の内径を有する管状本体(21a)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の線形アクチュエータ。
【請求項3】
前記管状本体(21a)は、前記係合部材(22)に向かう前記管状本体(21a)の遠位端部に、及び/又は前記形状記憶合金コイルばね(23)に向かう前記管状本体(21a)の近位端部に、円錐形フレア(21b)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の線形アクチュエータ。
【請求項4】
前記取付部(22b)は、フック形状、又はL字形状(44)、又は釘形状(44’)、又は球形状(44’’)、又は穴の開けられた正方形形状(44’’’)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の線形アクチュエータ。
【請求項5】
前記コイル状の形状記憶合金ワイヤは、ポリウレタン、シリコン、金属、ラッカー、塗料、及びマイクロカプセル化された相変化材料から選択される材料でコーティングされることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の線形アクチュエータ。
【請求項6】
線形に配置される前記形状記憶合金コイルばね(23)の先端に接続される移動可能要素を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の線形アクチュエータを備える装置。
【請求項7】
U字形状又はV字形状の形態で搭載される前記形状記憶合金コイルばね(23)の中央部に接続される移動可能要素を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の線形アクチュエータを備える装置。
【請求項8】
前記装置は、ロック装置、扉閉塞スイッチ又は流体バルブであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ、スイッチ、ロックシステムなどの線形変位を制御するのに適し、かつ低電圧及び低電流を必要とする電気制御式の形状記憶合金コイルばねを備えるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、廃水処理場、発電所、製造所、製油所などのさまざまな産業用途、及び白物家電などの特定の民生用の又は住宅の装置でよく知られている。アクチュエータは、それぞれ1つ又は複数(2つ以上)の安定状態を有する対象の能力に関連するアクチュエータアセンブリ用途で補助するために、いわゆる単安定又は多安定機構に結合され得る。対象を安定状態(例えば双安定対象の2つの状態)のいずれか1つに維持するためには、エネルギーはほとんど又はまったく必要とされないが、しかしながら、対象が安定状態から変位させられるために(例えば2つの所定の安定状態の間で切り替えるために)は、起動エネルギーが必要とされる。
【0003】
アクチュエータにより引き起こされる移動のために最も一般的に使用されるタイプの器具はソレノイドであり、ソレノイドは、エネルギーを移動可能要素の線形変位に変換するのに適した装置である。電気機械的ソレノイドは、通常、電流が巻線を通過して流れるとき巻線が磁場を生じるように、磁気コアの周りに巻かれた導電性巻線を備え、それにより磁気コアを軸方向に移動させる。移動可能要素は、線形変位を得るために作動させられ得るように磁気コアに結合され、例示的な用途は、バルブ、スイッチ、又は白物家電の扉のためのロックシステムの作動である。
【0004】
電気機械的ソレノイドに関する一般的な制限は、特に、それだけでないが、ソレノイドが小型又は携帯型の民生用の用途で使用されるとき、大きな電力要件を有するという事実である。実際に、ACからDCへの電力変換器又は「直列」構成の高価な種類のバッテリーがソレノイドに備え付けられる必要があるので、ソレノイドは、動作のためにコストがかかるかつ複雑な電源を必要とする。
【0005】
ソレノイドのさらなる欠点は、ソレノイドが、熱を発生し、アクチュエータ又は装置の他の構成要素に影響を与え得る外部磁場を創出し、また、精密制御が結果的に困難となり得、それらの応答時間が所望のものより長くなるという事実にある。
【0006】
過去数十年間、形状記憶合金(SMA)材料を含む構成要素へのソレノイドの置換が行われてきた。SMA材料は、雰囲気温度で第1の弛緩(マルテンサイト)状態を有し、所定の温度に加熱されるとき第2の完全作動(オーステナイト)状態を有する。SMA材料で作られた構成要素は、いくつかの形状及び構造で市販されている:ワイヤ、ロッド、コイルばね、シートが普及している例である。線形アクチュエータのソレノイドを、作動領域で雰囲気温度に応答するのではなく電気制御を受けるこれらのSMA構成要素へ、置換するためのいくつかの試みがなされてきた。
【0007】
特許文献1は、非SMAばねにより付勢されるSMAワイヤの動作により、シールが開放位置と閉塞位置との間で本体に対して移動可能である線形作動バルブを開示する。直線状のSMAワイヤを使用する、特許文献1により開示される簡素な構成は、制限されたストロークにより特徴付けられ、すなわちアクチュエータの移動可能部分の変位は、結果的に多くの用途で使用されるためには小さすぎる。
【0008】
実際に、SMA構成要素の使用により得られるストロークを改善するためのいくつかの試みは、いくつかの文献に記載されてきた。
【0009】
特許文献2は、SMAワイヤが3つの滑車と組み合わせて使用されるアクチュエータを開示する。滑車の配置は、アセンブリのフォームファクタ要件を削減するために必要である:滑車から滑車へとアセンブリ内でフィラメントを往復して「蛇行」させることは、移動可能部分の変位(すなわち有効ストローク)を、ワイヤの単一の直線状の行程の変位の約4倍に向上させることを可能にする。このような解決策は、アクチュエータの構造をより複雑にし、アクチュエータ内に滑車を配置することに強い制限が存在する場合、常に使用され得るわけでないことは明らかである。
【0010】
上に記載される制限にもかかわらず、ワイヤは、特にコイルばねと比較した場合、線形アクチュエータにおいて電力供給により駆動される最も利用されてきたSMA構成要素である。実際に、SMAばねは、SMAばねの一部が相変態のために適切な温度に達しない場合に、コイル状の形状を変形させ得る温度勾配に敏感であり得るので、電流ではなく雰囲気温度に応答する部材として一般的に使用される。さらに、コイル形状のSMA構成要素は、線形形状のSMA構成要素ほど大きくかつ均一な復帰力を有しない:実際に、ばねの復帰力は、その表面でのみ最大であり、中心に向かって弱まる。
【0011】
特許文献3は、少なくとも1つのSMAばねを含むベネチアンブラインド機構のための形状記憶合金アクチュエータを開示するが、電流によるそれらの使用に関する上述される制限がどのように克服され得るかについて言及していない。
【0012】
特許文献4は、付与される電気刺激の有無に基づき、対象の身体部分に圧縮を付与する、又は圧縮を取除くように構成された形状記憶合金(SMA)線形アクチュエータ部材を含む能動圧縮衣服を開示する。線形アクチュエータ部材は、コイルばねの外径とコイル状のワイヤの太さとの間の比が4.08である、SMAコイルばねを備えるが、前記ばねがアクチュエータユニット及び被駆動要素にどのように接続されているかについて言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第5211371号明細書
【文献】米国特許第9027903号明細書
【文献】米国特許第5816306号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0073318号明細書
【文献】米国特許第4830262号明細書
【文献】米国特許第8152941号明細書
【文献】米国特許第8430981号明細書
【文献】米国特許第4565589号明細書
【文献】米国特許第5114504号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、先行技術に記載の線形アクチュエータのSMA構成要素の欠点を克服することであり、利用可能なストローク及び寿命サイクル数の最大化、構造の簡素さ、低電力要件及び熱慣性、小さいサイズを確保し、普遍的に適用される可能性を提供することである。
【0015】
以下の図を用いて、本発明は説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるばねと、非作動状態から作動状態へのその作用 と、の概略図を示す。
図2】本発明による圧着端子を有するばねを示す。
図3図2の圧着端子の拡大長手方向縦断面図を示す。
図4a】本発明によるばねのための代替の圧着端子を示す。
図4b】本発明によるばねのための代替の圧着端子を示す。
図4c】本発明によるばねのための代替の圧着端子を示す。
図4d】本発明によるばねのための代替の圧着端子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上で参照される図では、本発明を理解するために不可欠な要素のみが示されており、電流供給源などの補助的な構成要素は、当技術分野で知られている通常の手段であるので示されていない。さらに、特に、しかし非排他的に、SMAワイヤ直径に関して、要素の寸法及び寸法比は、いくつかの場合では、読みやすさを向上させるために変更されている。
【0018】
本発明は、いかなる特定の形状記憶合金材料にも限定されないが、ニチノールの商品名で一般的に知られている合金などのNi-Tiベースの合金が好ましく、その基本特性は特許文献5に記載されている。SAESスマートマテリアルの名称で特許文献6及び特許文献7に記載されている、より新しく改良された形状記憶合金も採用され得る。
【0019】
特に、Ni-Tiベースの形状記憶合金という用語は、ニッケル及びチタンの優勢な含有量(少なくとも60原子パーセント、at%)を有する形状記憶合金を含み、追加の元素は、例えば特許文献8に記載されているNi-Ti-Cu合金の場合、より低いヒステリシス、又は、例えば特許文献9に記載されているNi-Ti-Hf合金の場合のように、より高い変態温度、などの異なる特性を与え得る。
【0020】
本発明は、特定の幾何学的特性を有するSMAコイルばねと被駆動要素に接続するための手段とを備える線形アクチュエータである。実際に、発明者らは、4と10との間に含まれる、コイルばねの外径(D)とコイル状のワイヤの太さ(T)との間の比(Φ)を有するコイルばねが、その端子部が寿命サイクル数を改善するのに適した新しい方法で圧着されるとき、線形アクチュエータにおいて有利に使用され得ることを見出した。
【0021】
比Φが4未満であるとき、ワイヤが太すぎかつ大きい熱慣性を有するので、ばねは所望のストローク及び作動速度を達成するのに適していないことが見出された一方で、この比が10より大きいとき、ワイヤが十分な力を提供するためには細すぎるので、ばねの低い強度が、ソレノイドの置換のためのばねの利点を制限する。
【0022】
図1は、本発明によるばね11を概略的に表し、ばね11は、太さTを有するSMAワイヤにより形成され、SMAワイヤは、先端12及び先端13を有するコイルばね11が非作動状態Aにあるとき外径Dと内径dと長さLとを有するような方法でコイル状にされている。明確にする目的のために、外径D及び太さTは、それぞればねの断面及びコイル状のワイヤの断面から測定され得ることに留意することが重要である。ばね11及びばね11を構成するコイル状のワイヤの両方は、正確に円形ではない断面を有し得るので、本発明の目的のために、外径D及び太さTは、前記断面に外接し得る最小の円の直径と見なされ得る。
【0023】
図1の非作動状態Aと作動状態Bとの間の比較は、ばね11が(示されない)付勢荷重と関連してどのように作用し得るかを概略的に示し、その先端12及び先端13に電力が供給されたとき、ばね11がその作動状態Bになり、その長さはL’に減少し、L-L’として定義されるストロークSを提供する。本発明によるばね11の使用は、非コイル状のワイヤより何倍も大きい、通常は2倍と12倍との間の、ストロークを達成することを可能にする。
【0024】
外径Dは、好ましくは0.1mmと10mmとの間に含まれ、ワイヤ太さTは、好ましくは0.025mmと1mmとの間に含まれ、ばね11の巻き数は、好ましくは2と240との間に含まれる。ばねを製造するのに使用されるコイル状のSMAワイヤは、例えばポリウレタン、シリコン、金属、ラッカー、塗料、マイクロカプセル化された相変化材料などの異なる材料で、随意にコーティングされ得る。この場合、外径D及びワイヤ太さTの測定において、ばね及びワイヤのそれぞれの断面へのコーティングの寄与は考慮されるべきでなく、すなわち断面は、SMA材料で作られたそれらのコアに関して評価される必要がある。
【0025】
図2及び図3に示される、本発明の主な技術的特徴として、ばねは、その先端の圧着端子とともに使用され、各端子は、圧着構成要素21と、前記圧着構成要素21によりばね23に接続された係合部材22と、を備え、圧着構成要素21は、適切に変形させられるのに適した延性材料(例えば真鍮、アルミニウム、銅)で作られ、未だ変形させられていない形状で図に示される。
【0026】
図3は、図2の圧着端子の拡大長手方向断面を示し、圧着構成要素21は、管状本体21aを有し、管状本体21aは、係合部材22に向かう管状本体21aの遠位端部に、円錐形フレア21bを随意に備え、係合部材22は、通常、ロッドのような線形形状を有する接続部22aと、線形アクチュエータに設けられた対応する係合手段との係合のためのフック形状を有する取付部22bと、を有する。円錐形フレアは、ばねの挿入を簡素化するために、近位端部にも、すなわちばねに向かって位置付けられ得る。さらに、管状本体は、管により、或いは管状の形状を有するが構造的連続性がない、適切に予め変形させられた金属片により、得られ得る。圧着構成要素21上に取付部が形成される、すなわち別個の係合部材22は存在しない従来の圧着システムとは異なり、ばね23を適切に保持し使用するために、係合部材22は、圧着端子の内側部分として機能し、圧着構成要素21は、圧着端子の外側部分として機能する。
【0027】
より具体的には、内側部分の接続部22aの直径は、ばね23の内径dに実質的に等しく、一方で、外側部分の管状本体21aの内径は、ばね23の外径D以上である。ばね23の端子部及び内側部分(係合部材22)の両方上で適切に変形させられかつ圧着された外側部分(圧着構成要素21)は、内側部分が、ばね23が外側部分に対応するのみで変形させられないよう保つことができるので、システム全体が、内側部分と外側部分との間の相対的な運動なしに、取扱われかつ使用されることを可能にする。この目的のために、内側部分は、通常、鋼などの、外側部分より必ず硬い材料で作られているが、外側部分も、外側部分の太さが、必要とされる変形を可能にする場合には、(より柔らかい材料が好ましいとしても)鋼で作られ得る。
【0028】
上で述べられるように、フック形状の係合部材22は、対応する係合手段を備える装置の線形アクチュエータへのばね23の搭載を容易にするのに適しており、同様に、図4a~図4dは、係合部材を備える圧着端子のためのいくつかの代替の形状を示し、取付部は、図4aのように「L」字形状44、図4bのように釘形状44’、図4cのように球形状44’’、又は図4dのように穴の開けられた正方形形状44’’’を有する。
【0029】
上での説明において、ばねの線形構成に関して本発明の作用原理が説明されたとしても、(図に示されない)第2の可能な実施形態において、前記ばねは結果的に「V」字形状又は「U」字形状となる最終装置に搭載され得る。これらの代替では、移動する要素の線形変位は、ばねの先端の1つではなくばねの中央部へのその接続により確保される。
【0030】
低電力供給を使用することによる線形アクチュエータにおけるワイヤ又はソレノイドの置換のための本発明によるばねの利点の根拠を与えるのに適したワイヤとばねとの間の比較は、直線状のワイヤ及びコイルばねの両方を作動させるために、同じ作用力及び同じ設置長さに設定しかつ適切な電流を供給することにより行われ得る。ワイヤ/ばねの変形の正確な測定を保証するために、非常に剛性の高いアルミニウム製の静定フレームで構成された、専用の試験設備が使用されており、これは、このようなフレームが、SMA要素(ワイヤ及びばね)が拘束されるよう保ち、かつ電流をSMA要素に供給し、同様に、一定の荷重又は付勢ばねでそれに荷重をかけることを可能にするからである。
【0031】
内部で設計された電子機器により、このような試験設備は、ストローク、供給電流、作動時間、疲労特性評価のためのサイクル数などの、SMA要素のための異なるパラメータの測定を可能にする。ストロークは、レーザーを使用することにより測定され、本発明によるばねで得られるストロークは、最大でその長さの12%である一方で、ワイヤは、約3%に制限された値を確保することが確認され得る。
【0032】
同様のアプローチは、線形ソレノイドの性能から始まり次に同じ機械的仕事を実行し得るSMAばねを設計することにより、線形ソレノイドと本発明によるSMAばねとの間の比較のために使用された。前の試験設備は、(12Vの)線形ソレノイド及び(その長さに依存して可変な)SMAばねの両方の適切な供給を保証し、したがって実際の供給電流、SMAばねに電力を供給する電圧、及び作動時間を測定するようにソレノイド供給を可能にするために変更された。機械的仕事は、ソレノイドの移動する部分に一定の力を加えかつ12Vで装置に電力を供給することにより得られ、2つの端部停止部が、それらの間の距離に等しい同じストロークを加え、それにより、ストロークによる力の結果が機械的仕事である。
【0033】
2つのアクチュエータの重量及びサイズについて、並びに同じ機械的機能を実行するために2つのアクチュエータにより必要とされる電力について比較がなされ、その結果、SMAコイルばねは、ソレノイドと比較されたときいくつかの利点を得ることを可能にし得る。実際に、重量及び体積の著しい、両方とも90%より大きい、削減は、その作動のために使用される電力の大幅な、すなわち50%より大きくかつ最大で90%ソレノイドによって必要とされる電力より小さい、削減とともに、達成され得る。
【0034】
以降、一般的に使用される圧着システムと比較した、本発明により圧着されたばねの利点の根拠を与えることを目的として、本発明は、以下の非限定的な例に関してより詳細に説明される。
【0035】
本圧着システムは、ばねの2つの端部に位置する巻き部の内側に挿入される変形不可能なコアを構成する、剛性部分を含み、その結果、前記巻き部は、剛性コアと変形可能な材料で作られた外部管との間で圧縮/拘束される。旧来の圧着は、ばねの端部に位置する巻き部の変形を引き起こし、結果として、本発明による圧着システムと比較して、同じ荷重及びストローク条件で、疲労寿命がより短い。
【0036】
線形疲労試験は、次のように設定されたステーションで実施された:ばねの第1の端部はステーション構造の上部固定部分にアンカー固定され、低摩擦で垂直方向にのみ摺動し得る機械的構成要素を用いて第2の端部は鋼付勢ばねの第1の端部に接続され、かつ鋼付勢ばねの第2の端部が、ステーションの固定構造に接続される。2つのばねを接続する機械的構成要素は、コールドストッパー(cold stopper)を有し、機械的構成要素と一体である永久磁石により生成される磁場を検出する、ステーション構造に設置されたホールセンサにより、ばねにより動かされたストロークを検出することを可能にする。ばねの起動は、ばねのストローク及び荷重に見合った電気インパルスを通じて行われ、動作サイクルの間の冷却時間は、ばねの質量と厳密に相関する。
【0037】
試験は、30巻き、0.13mmのワイヤ直径、かつ0.5mmの内径を有する、2つの同一のばねについて、0.5Nの動作力及び4mmの動作ストロークを付与することにより、行われた。この圧着幾何学形状(すなわち剛性内部コア)を有するばねは、100000サイクルより多く作用することができた一方で、従来の方法で圧着されたばねにおいて、疲労寿命は15000サイクルより短かった。
【0038】
本発明によるSMAコイルばねを備える線形アクチュエータの使用は、いくつかの装置、例えばロック装置、扉閉塞スイッチ又は流体バルブにおいて、上の利点のすべてを得ることを可能にする。
【符号の説明】
【0039】
11,23…形状記憶合金コイルばね、21…圧着構成要素、21a…管状本体、21b…円錐形フレア、22…係合部材、22a…接続部、22b…取付部、44…L字形状、44’…釘形状、44’’…球形状、44’’’…穴の開けられた正方形形状、D…外径、T…ワイヤ太さ、Φ…外径とワイヤ太さとの間の比
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d