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特許7374307チーグラー・ナッタプレ触媒粒子形成の制御方法およびオレフィン重合のための使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタプレ触媒粒子形成の制御方法およびオレフィン重合のための使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/658 20060101AFI20231027BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C08F4/658
C08F10/00
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022515853
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020047446
(87)【国際公開番号】W WO2021050248
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】62/898,207
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/706,411
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/905,373
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513156456
【氏名又は名称】ブラスケム アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BRASKEM AMERICA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,ジョナス アルヴス
(72)【発明者】
【氏名】オスタース,ジョージ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヘス,ダナ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-212316(JP,A)
【文献】特表2017-529421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体プレ触媒系を製造する方法であって、
反応器内で攪拌機構によるかき混ぜ下で、-10℃~60℃の開始反応器温度にて、有機溶媒および式Iの錯体のコロイド懸濁液を、ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物と反応させることと、
混合物を、制御された供給速度下で、発熱反応させて沈殿物を形成し、次に、沈殿物を十分な期間にわたり70℃未満の上限温度に到達させることと、
混合物を35℃~60℃の完了温度まで冷却させることと
を含み、
式Iの錯体が、
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、
X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、
pは0または1であり、
0<q<2であり、
0<t<2であり、
qとtの合計は2であり、
、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、
はRと同じではない]
であり、
沈殿物が3μm~10μmのD50を示し、
前記ハロゲン化化合物が、ルイス酸化合物である、方法。
【請求項2】
式Iの錯体が、2500cm-1~5000cm-1の波数にてフーリエ変換赤外C-H伸縮振動帯域を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上限温度が、60℃である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
かき混ぜることが、混合物を400rpm~2000rpmにて攪拌することを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
沈殿物を収集することと、有機溶媒または有機溶媒の混合物により沈殿物を洗浄することとをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、シリコンテトラクロリド(SiCl)またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒が、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有機溶媒が、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
有機溶媒が、n-ヘキサンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
反応させることが、溶媒の第1の部分およびハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物を、反応器に装填することと、溶媒の第2の部分中の式Iの錯体を、第1の供給速度にて、反応器に添加することとを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の供給速度が、0.05mL/分~4mL/分である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応温度が-10℃~60℃であり、上限温度が60℃であり、十分な期間が1時間である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
反応させることが、溶媒の第1の部分および式Iの錯体を、反応器に装填することと、溶媒の第2の部分中のハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物を、第1の供給速度にて、反応器に添加することとを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の供給速度が、0.05mL/分~4.0mL/分である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
開始温度が-10℃以上であり、上限温度が60℃であり、十分な期間が1時間であり、完了温度が40℃である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
反応させることが、溶媒の第1の部分を、反応器に装填することと、溶媒の第2の部分中の式Iの錯体を第1の供給速度にて、溶媒の第3の部分中のハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物を第2の供給速度にて、反応器に同時に装填することとを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1の供給速度および第2の供給速度が、0.05L/分~2.5L/分である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式I
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、
X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、
pは0または1であり、
0<q<2であり、
0<t<2であり、
qとtの合計は2であり、
、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、
はRと同じではない]
の錯体とハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物との反応生成物の固体粒子を含む固体プレ触媒系であって、
固体粒子が3μm~12μmのD50を示し、
前記ハロゲン化化合物が、ルイス酸化合物である
固体プレ触媒系。
【請求項19】
ハロゲン化化合物が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、シリコンテトラクロリド(SiCl)またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、請求項18に記載の固体プレ触媒系。
【請求項20】
プレ触媒系が、還元剤とさらに接触する、請求項18または19に記載の固体プレ触媒系。
【請求項21】
オレフィンモノマーを重合または共重合する方法であって、
ハロゲン化化合物と式I:
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、
X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、
pは0または1であり、
0<q<2であり、
0<t<2であり、
qとtの合計は2であり、
、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、
はRと同じではない]
の錯体のコロイド懸濁液との反応生成物の複合体の固体粒子を含む固体プレ触媒系を、還元剤、任意に連鎖移動剤、および1種または複数のオレフィンモノマーと接触させること
を含み、
固体粒子が3μm~12μmのD50を示し、
前記ハロゲン化化合物が、ルイス酸化合物である
方法。
【請求項22】
還元剤が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、メチルアルミノキサン(MAO)、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オレフィンモノマーが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
連鎖移動剤が、水素である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
オレフィンがエチレンであり、方法が10~250kg/molの数平均モル質量(M)を示すポリエチレンを収集することをさらに含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
オレフィンがエチレンであり、方法が150~1250kg/molの質量平均モル質量(M)を示すポリエチレンを収集することをさらに含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
オレフィンがエチレンであり、方法が3~8の多分散度(M/M)を示すポリエチレンを収集することをさらに含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
オレフィンがエチレンであり、方法が、結晶化溶出分別(CEF)分析によりポリマーの5質量%未満が30℃未満の1,2-ジクロロベンゼンで溶出される、ポリエチレンを収集することをさらに含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
オレフィンがエチレンであり、方法が、結晶化溶出分別(CEF)分析によりポリマーの90質量%超が85℃超の1,2-ジクロロベンゼンで溶出される、ポリエチレンを収集することをさらに含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月10日に出願された米国特許仮出願第62/898,207号、2019年12月6日に出願された米国特許出願第16/706,411号、2020年6月18日に出願された米国特許出願第16/905,373号の利益および優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの全内容は参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本技術は一般に、ポリオレフィン触媒に関する。より詳細には、本技術は、ポリオレフィンを製造するためのチーグラー・ナッタ触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
チーグラー触媒は広く知られており、様々なポリオレフィン製品に使用されている。例えば、米国特許第4,447,587号は、ディーゼル油中のマグネシウムエチレートの分散液にTiClを滴下添加することによる固体プレ触媒の製造を記載している。上澄みをディーゼル油で4回洗浄し、最後の洗浄プロトコルにおいてディーゼル油を使用して最終的な固体プレ触媒を得て、次に、固体プレ触媒をトリエチルアルミニウムで活性化する。米国特許第5,648,309号は、同様に、異なる遷移金属を導入したプレ触媒を製造する。米国特許第4,972,035号は、デカンおよび2-エチルヘキシルアルコール中の無水塩化マグネシウムから溶液を形成し、続いて安息香酸エチルを添加するプレ触媒の製造について記載している。次に、得られた溶液を過剰のTiClに滴下添加し、続いて加熱する。反応終了後、固体部分をろ過により収集し、洗浄して、平均粒子径が1.0μmであり、幾何学的標準偏差が1.2である粒径分布を有する粒状プレ触媒を得た。米国特許第4,933,393号は、無水塩化マグネシウムとヘキサンを反応器に供給し、エタノール、塩化ジエチルアルミニウム、およびTiClを添加することによるプレ触媒の製造について説明している。次に、固体沈殿物をろ過により分離し、ヘキサンで洗浄して、複数の層中に直径約1μmの微細な固体粒子のアグロメレートとして最終プレ触媒を得る。
【0004】
他の例示的なプレ触媒製造の分野では、米国特許第6,545,106号が、Ti(OBu)の存在下でエタノールを用いてマグネシウム金属からマグネシウムエチレートを製造することによるプレ触媒の製造を記載している。反応では、チタンのマグネシウムに対するモル比は約2である。ヘキサン中の安息香酸エチルおよび二塩化イソブチルアルミニウムの添加に続いて、固体触媒錯体が収集される。米国特許第6,174,971号は、ヘキサン中のブチルエチルマグネシウム、2-エチルヘキサノール、およびTiCl(OPr(Prはイソプロピルである)のスラリー化混合物からプレ触媒を製造して透明な溶液を得ることを記載している。次に、溶液をトリエチルアルミニウムで処理した後、TiCl/Ti(OBu)(Buはn-ブチルである)を添加して沈殿物を形成し、次に、沈殿物を収集する。このレシピを使用する最終プレ触媒には、TiClによる追加の含浸工程およびトリエチルアルミニウムを用いた前接触工程が含まれる。欧州特許第2081969号は、ジブチルエーテル、ヨウ素、および塩化ブチルを用いてクロロベンゼン中のマグネシウム粉末からプレ触媒を製造し、続いて(C)SiClおよびSi(OCHCHと接触させて懸濁液を形成することを記載している。次に、TiClを懸濁液に添加し、沈殿物を収集した。米国特許第9,068,025号は、ジブチルマグネシウムの溶液とイソオクタノールを反応させて透明な溶液を得ることを記載している。この溶液にポリスチレン-ポリブタジエントリブロックコポリマーの溶液を添加し、続いて低温にてBClとTiClを順番に添加する。温度を50℃にした後、沈殿した固体を収集し洗浄する。米国特許第9,587,047号は、マグネシウムエチラートとTi(OBu)を反応させて、加熱時に透明な液体を得ることを記載している。冷却し、ヘキサンで希釈して透明な溶液を得た後、二塩化エチルアルミニウム(EADC)を添加し、混合物を還流させた。冷却すると、固体が得られ、洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4,447,587号
【文献】米国特許第5,648,309号
【文献】米国特許第4,972,035号
【文献】米国特許第4,933,393号
【文献】米国特許第6,545,106号
【文献】米国特許第6,174,971号
【文献】欧州特許第2081969号
【文献】米国特許第9,068,025号
【文献】米国特許第9,587,047号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、式I:
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I).
の錯体が提供される。
【0007】
式Iでは、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない。一部の実施形態において、Rは、C~Cアルキルであってよく、Rは、C~Cアルキルであってよく、Rは、C-Cアルキルであってよい。一部の実施形態において、Rはn-ブチルであってよく、R2はエチルであってよく、Rはn-ブチルであってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、pは1であってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、qは約1であってよく、tは約1であってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、Xは0.2~0.5であってよく、Yは0.6~0.8であってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、X:Yの比は1~3であってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、X:Yの比は約2であってよい。
【0008】
上記の実施形態のいずれにおいても、錯体は、重水素化トルエン-dの残留溶媒ピークに対して50ppm~80ppmのアルコキシド共鳴を有する13C NMRスペクトルを示し得る。上記の実施形態のいずれにおいても、錯体は、重水素化トルエン-dの残留溶媒ピークに対して40ppm~120ppmのアリールオキシド共鳴を有する13C NMRスペクトルを示し得る。上記の実施形態のいずれにおいても、熱質量分析(TGA)によって得られる残留質量は、20質量%~35質量%であってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、錯体は、2500cm-1~4000cm-1の波数でフーリエ変換赤外C-H伸縮振動を示し得る。
【0009】
別の態様では、上記の実施形態のいずれかによる、有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液が提供される。任意の実施形態によれば、有機溶媒は、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含み得る。例えば、有機溶媒には、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン(cumine)、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれ得る。
【0010】
上記の実施形態のいずれにおいても、錯体は、分散相の多峰性ドメインサイズを示す。上記の実施形態のいずれにおいても、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)によって決定されたTiおよびMgの濃度は、1×10-5M~2.0Mであってよい。上記の実施形態のいずれにおいても、多峰性ドメインは、20℃にて、直径1nm~10nmまでのドメインサイズ平均(domain size mean)を有する第1のピーク、および直径250nm~350nmのドメインサイズ平均を有する第2のピークを示し得る。上記の実施形態のいずれにおいても、多峰性ドメインサイズは、50℃にて、直径250nm~400nmのドメインサイズ平均を有する第1のピーク、および直径4000nm~6000nmのドメインサイズ平均を有する第2のピークを示し得る。上記の実施形態のいずれにおいても、多峰性ドメインサイズは、-30℃~60℃にて測定した場合、収束ビーム反射測定(FBRM)によって測定したときに、1μm~10μmのコード長平均を有する第1のピークを示し得る。
【0011】
さらに別の態様では、ハロゲン化化合物と、本明細書に記載された式Iの錯体のコロイド懸濁液を含む任意の実施形態による式Iの錯体との反応生成物の複合体の固体粒子を含む、固体プレ触媒系が提供される。一部の実施形態において、ハロゲン化化合物には、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、シリコンテトラクロリド(SiCl)またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれる。ハロゲン化化合物は、上記の通り有機溶媒中に存在してよい。例えば、ハロゲン化化合物は、有機溶媒中に、約1~約80質量%、約5~約70質量%、約25~70質量%、または約40~60質量%存在してよい。一部の実施形態において、有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどを含み得る。上記の実施形態のいずれにおいても、Tiは0.5質量%~30質量%存在し得、Mgは1質量%~20質量%存在し得、Alは1質量%~20質量%存在し得、かつ/または固体粒子は1μm~30μmのD50を示す。上記の実施形態のいずれも、代替のルイス酸化合物をさらに含み得る。
【0012】
さらなる態様では、オレフィンモノマーを重合または共重合する方法であって、還元剤を、ハロゲン化化合物と任意の実施形態による本明細書に記載の式Iの錯体のコロイド懸濁液との反応生成物の複合体の固体粒子を含む固体プレ触媒系と共に、少なくとも1種のオレフィンモノマーと接触させることを含む方法が提供される。一部の実施形態において、オレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含み得る。そのような実施形態では、固体触媒系は、2kgPE・gCat -1-1を超える活性を示し得る。一実施形態では、オレフィンはエチレンであってよく、方法はまた、1x10g/mol超の粘度分子量(M)を示すポリエチレンを収集することを含み得る。一部の実施形態において、還元剤には、限定されないが、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、メチルアルミノキサン(MAO)、またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれる。
【0013】
さらなる態様では、水素などの連鎖移動剤の存在下でオレフィンモノマーを重合または共重合する方法であって、還元剤を、ハロゲン化化合物と任意の実施形態による本明細書に記載の式Iの錯体のコロイド懸濁液との反応生成物の複合体の固体粒子を含む固体プレ触媒系と共に、少なくとも1種のオレフィンモノマーと接触させることを含む方法が提供される。一部の実施形態において、オレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含み得る。そのような実施形態では、固体触媒系は、2kgPE・gCat -1-1を超える活性を示し得る。一実施形態では、オレフィンはエチレンであってよく、方法はまた、1x10g/mol超の数平均分子量(M)、1.5x10g/モル超の質量平均分子量(M)を示すポリエチレンを収集することを含み得る。得られたポリマーは、結晶化溶出分別(CEF)技術によって分別することもできる。この技術では、ポリマーの5質量%未満が30℃未満の1,2-ジクロリベンゼン(1,2-dichloribenzene)で溶出され、
【数1】
ポリマーの90質量%超が90℃超で溶出する
【数2】
一部の実施形態において、還元剤には、限定されないが、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリドが含まれる。
【0014】
さらに別の態様では、プレ触媒前駆体を形成する方法であって、式Ti(OR20のチタン化合物をTiClと接触させて反応性混合物を形成すること;式R20OHのアルコールを反応性混合物に添加して第2の混合物を形成すること;式Mg(OR21のマグネシウム化合物を第2の混合物に添加して、チタン化合物対マグネシウム化合物のモル比が0.2~5.0である第3の混合物を形成すること;第3の混合物を加熱して、本明細書に記載の通り、式Iの錯体のコロイド懸濁液を形成することを含む方法が提供される。
【0015】
さらに別の態様では、固体プレ触媒系を製造する方法は、有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液とハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物との反応を含む。
【0016】
さらに別の態様では、固体プレ触媒系を製造する方法は、制御された流量、温度、濃度、および/または攪拌速度の下で、ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物を、有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液に添加することを含む。
【0017】
さらに別の態様では、固体プレ触媒系を製造する方法は、制御された流量、温度、濃度、および/または攪拌速度の下で、有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液を、ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物に添加することを含む。
【0018】
さらに別の態様では、固体プレ触媒系を製造する方法は、制御された流量、温度、濃度、および/または攪拌速度の下で、ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物と有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液とを、不活性液体媒体に同時に添加することを含む
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例3の試料の13C NMRスペクトルを示す図である。
図2】実施例3、Ti(OBu)、およびMg(EtO)のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示す図である。
図3】ヘキサン中の実施例1の懸濁液の重み付けされていないコード長中央値の測定値のグラフである。
図4】実施例1による、攪拌条件下(最大400rpm)、0.076~0.293mol/Lの[Ti]濃度、および30℃または40℃の温度下での、コード長の重み付けされていない中央値のグラフである。
図5】同じ条件下での実施例1~3の試料のDLS結果のグラフである。25℃での同様の二峰性強度分布を示している。
図6】実施例による、プレ触媒粒子径に対する反応温度の影響を示すグラフである。
図7】実施例による、反応物の即時の変換を想定した反応時間に沿った、Ti-Mg錯体消費およびプレ触媒形成に対するチタン種の濃度のグラフである。
図8】実施例による、プレ触媒粒子径に対するTi-Mg錯体濃度の影響を示すグラフである。
図9】溶液、コロイド溶液、懸濁液、およびコロイド懸濁液という用語が本出願においてどのように使用されるかに関する図である。
図10A】本明細書に記載のプレ触媒を形成するための異なる反応器の構成の図である。
図10B】本明細書に記載のプレ触媒を形成するための異なる反応器の構成の図である。
図11】実施例による、攪拌速度の関数としての粒子径(D50)のグラフである。
図12A】実施例22に記載の重合条件に従って、異なる活性化条件下で実施例13および14で製造された触媒系を用いて実施された重合のCEのプロットを示すグラフである。
図12B】実施例22に記載の重合条件に従って、異なる活性化条件下で実施例13および14で製造された触媒系を用いて実施された重合のCEのプロットを示すグラフである。
図13】実施例による、Malvern Panalytical社製Mastersizer2000レーザー回折式粒子径測定装置において測定された粒子径分布のグラフである。
図14】本明細書に記載のプレ触媒を形成するための異なる反応器構成の図である。
図15】供給方法BおよびCについての粒子径ピークモード対温度のグラフである。
図16】実施例による、濁度画像分析のグラフである。
図17】時間に関してモデル化された濁度ユニティ(unity)のグラフである。k(T)は、TU時定数であり、反応器作動温度の関数であり、TUmax(T)は、系の最大TUであり、実施例による、反応器温度の関数でもある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下で、様々な実施形態について説明する。特定の実施形態は、網羅的な説明として、または本明細書で論じられているより広い態様を限定するものとして意図されているわけではないことに留意されたい。特定の実施形態に関連して説明される1つの態様は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、他の任意の実施形態により実施することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、その語が使用される文脈に応じてある程度変化する。当業者には明らかでない用語の使用がある場合、その用語が使用される文脈を考慮したうえで、「約」は、特定の用語の最大±10%を意味する。
【0022】
要素を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」ならびに「the」という用語ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の記載がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を包括すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の記載がない限り、単に、範囲内に入る各個別の値を個々に指す略記法として用いられており、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書において提供されるいずれかおよびすべての例、または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に実施形態をより適切に明示することを意図しており、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、範囲に制限を課さない。本明細書のいかなる文言も、特許請求の範囲に記載されていない要素が必須であると示していると解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「溶液」という用語は、便宜上、溶媒と呼ばれる1種(または複数)の物質が、溶質と呼ばれる他の物質とは異なって扱われる場合に、複数の物質を含有する液相または固相を指す。このような混合物では、溶質は溶媒によって安定化されるか、または単に溶媒和され、その結果、溶質は最大寸法で1nm以下の粒子径で存在し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「コロイド溶液」という用語は、物質または物質の混合物が、異なる組成の連続相に規則的に分散した粒子またはドメインを形成する系を指す。このような系では、粒子またはドメインのサイズは、最大寸法で1nm~100nmである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「懸濁液」という用語は、物質または物質の混合物が、異なる組成(または状態)の連続相に分散している間に最大寸法で100nmを超えるサイズを有する粒子またはドメインを形成する系を指す。このサイズレベルでは、材料の個々の粒子の凝集体が形成され始め、かき混ぜ手段がないと沈殿物として沈殿することがある。粒子またはドメインが、連続相中で規則的に凝集および分散してもしなくても、かき混ぜ手段がなくても沈殿または沈降しないコロイド懸濁液を形成する場合がある。コロイド懸濁液は、100nm超~10μmのドメインまたは粒子径を有する場合がある。溶液、コロイド溶液、および懸濁液は、図9に示されている。
【0026】
一般に、「置換されている」とは、以下に定義される通り、そこに含有された水素原子への1個以上の結合が非水素または非炭素原子への結合によって置き換えられた、アルキル、アルケニル、アリール、またはエーテル基(例えば、アルキル基)を指す。置換されている基には、炭素原子または水素原子への1個以上の結合が、ヘテロ原子への二重結合または三重結合を含む1個以上の結合により置き換えられている基も含まれる。したがって、置換されている基は、特に明記しない限り、1個以上の置換基で置換されている。一部の実施形態では、置換されている基は、1、2、3、4、5、または6個の置換基で置換されている。置換基の例には、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、およびI);ヒドロキシル;アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、およびヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N-オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;ウレア;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;ニトリル(すなわち、CN);などが含まれる。
【0027】
さらに置換されているの定義は、基礎になるアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはシクリル基のアルキル化またはアリール化も含むように拡張される。このことは、例えば、アリール基は、アルキル基、アリール基、縮合環構造などをも含み得ることを意味する。このことはまた、アリール基、例えば「フェニル」への一般的言及は、トリル、tert-ブチル、ジ-tert-ブチル、ビフェニル、アントラセニルなどを含むことを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、1~約20個の炭素原子、典型的には1~12個の炭素、または一部の実施形態では1~8個の炭素原子を有する、直鎖および分岐アルキル基を含む。アルキル基は置換されていてもまたは非置換であってもよい。アルキル基は1回以上置換されてよい。アルキル基は2回以上置換されてよい。直鎖アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基が含まれる。分岐アルキル基の例には、イソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル基、および1-シクロペンチル-4-メチルペンチルが含まれるが、これらに限定されない。代表的な置換アルキル基は、例えば、アミノ、チオ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、および/またはF、Cl、Br、およびI基などのハロ基で1回以上置換され得る。本明細書で使用される場合、ハロアルキルという用語は、1個以上のハロ基を有するアルキル基である。一部の実施形態において、ハロアルキルは、パーハロアルキル基を指す。ヘテロアルキル基は、ヘテロ原子を含有するアルキル基である。
【0029】
シクロアルキル基は、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基などの環状アルキル基である。一部の実施形態では、シクロアルキル基は3~8個の環員を有するが、他の実施形態では、環炭素原子の数は3~5、6、または7の範囲である。シクロアルキル基は、置換されていてもまたは非置換であってもよい。シクロアルキル基には、限定されないが、ノルボルニル、アダマンチル、ボルニル、カンフェニル、イソカンフェニル、およびカレニル基などの多環式シクロアルキル基、ならびに限定されないが、デカリニルなどの縮合環がさらに含まれる。シクロアルキル基はまた、上記で定義された通りそれに結合した直鎖または分枝鎖アルキル基をさらに有し得る環を含む。代表的な置換シクロアルキル基は、単一置換または2回以上置換されているものであってよく、例えば、限定されないが、2,2-;2,3-;2,4-;2,5-;もしくは2,6-二置換シクロヘキシル基または単一置換、二置換、もしくは三置換ノルボルニルもしくはシクロヘプチル基であってよく、これらは、例えば、アルキル、アルコキシ、アミノ、チオ、ヒドロキシ、シアノ、および/またはハロ基で置換されてよい。
【0030】
アルケニル基は、2~約20個の炭素原子を有し、少なくとも1個の二重結合をさらに含む、直鎖、分岐または環状アルキル基である。一部の実施形態において、アルケニル基は、1~12個の炭素、または典型的には、1~8個の炭素原子を有する。アルケニル基は、置換されていてもまたは非置換であってもよい。アルケニル基には、例えば、特に、ビニル、プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、およびヘキサジエニル基が含まれる。アルケニル基は、アルキル基と同様に置換され得る。二価のアルケニル基、すなわち、2個の結合点を有するアルケニル基は、
【0031】
【化1】
を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アリール」または「芳香族」基は、ヘテロ原子を含まない環状芳香族炭化水素である。アリール基には、単環式、二環式、および多環式の環系が含まれる。したがって、アリール基には、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニレニル、インダセニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、ビフェニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ペンタレニル、およびナフチル基が含まれるが、これらに限定されない。1個以上のアルキル基を有するアリール基は、アルカリール基と呼ばれることもある。一部の実施形態では、アリール基は、6~14個の炭素を含有し、他の実施形態では、6~12個、さらには6~10個の炭素原子を、基の環部分に含有する。「アリール基」という句は、縮合環、例えば縮合芳香族脂肪族環系(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチルなど)、を含有する基を含む。アリール基は、置換されていてもまたは非置換であってもよい。
【0033】
ヘテロシクリルまたは複素環は、1個以上がN、O、およびSなどのヘテロ原子であるがこれらに限定されない3個以上の環員を含有する、単環式、二環式、および多環式環化合物を含む、芳香族環化合物および非芳香族環化合物の両方を指す。ヘテロシクリル基の例には、1~4個の窒素原子を含有する不飽和3~8員環、例えば、限定されないが、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ジヒドロピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H-1,2,4-トリアゾリル、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリルなど)、テトラゾリル(例えば、1H-テトラゾリル、2Hテトラゾリルなど);1~4個の窒素原子を含有する飽和3~8員環、例えば、限定されないが、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル;1~4個の窒素原子を含む縮合不飽和複素環基、例えば、限定されないが、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル;1~2個の酸素原子および1~3個の窒素原子を含有する不飽和3~8員環、例えば、限定されないが、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリルなど);1~2個の酸素原子および1~3個の窒素原子を含有する飽和3~8員環、例えば、限定されないが、モルホリニル;1~2個の酸素原子および1~3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基、例えば、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサジニル(例えば、2H-1,4-ベンゾオキサジニルなど);1~3個の硫黄原子および1~3個の窒素原子を含有する不飽和3~8員環、例えば、限定されないが、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリルなど);1~2個の硫黄原子および1~3個の窒素原子を含有する飽和3~8員環、例えば、限定されないが、チアゾロジニル;1~2個の硫黄原子を含有する飽和および不飽和3~8員環、例えば、限定されないが、チエニル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン;1~2個の硫黄原子および1~3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環、例えば、限定されないが、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアジアジニル(例えば、2H-1,4-ベンゾチアジニルなど)、ジヒドロベンゾチアジニル(例えば、2H-3,4-ジヒドロベンゾチアジニルなど;酸素原子を含有する不飽和3~8員環、例えば、限定されないが、フリル;1~2個の酸素原子を含む不飽和縮合複素環、例えば、ベンゾジオキソリル(例えば、1,3-ベンゾジオキソイル(1,3-benzodioxoyl)など);1個の酸素原子および1~2個の硫黄原子を含有する不飽和3~8員環、例えば、限定されないが、ジヒドロオキサチイニル;1~2個の酸素原子および1~2個の硫黄原子を含有する飽和3~8員環、例えば、1,4-オキサチアン;1~2個の硫黄原子を含有する不飽和縮合環、例えば、ベンゾチエニル、ベンゾジチイニル;ならびに1個の酸素原子および1~2個の酸素原子を含有する不飽和縮合複素環、例えば、ベンゾオキサチイニル(benzoxathiinyl)が含まれるが、これらに限定されない。ヘテロシクリル基には、環内の1個以上のS原子が1個または2個の酸素原子に二重結合している上記のもの(スルホキシドおよびスルホン)も含まれる。例えば、ヘテロシクリル基には、テトラヒドロチオフェンオキシドおよびテトラヒドロチオフェン1,1-ジオキシドが含まれる。典型的なヘテロシクリル基は、5個または6個の環員を含有する。したがって、例えば、ヘテロシクリル基には、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、チオフェニル、チオモルホリニル、S原子が1個以上のO原子に結合したチオモルホリニル、ピロリル、ピリジニル、ホモピペラジニル、オキサゾリジン-2-オニル、ピロリジン-2-オニル、オキサゾリル、キヌクリジニル、チアゾリル、イソキサゾリル、フラニル、ジベンジルフラニル、およびテトラヒドロフラニルが含まれる。ヘテロシクリルまたは複素環は置換されてよい。
【0034】
ヘテロアリール基は、5個以上の環員を含有する芳香族環化合物であり、環員のうちの1個以上は、N、O、およびSなどのヘテロ原子であるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基には、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インドリル、アザインドリル(ピロロピリジニル)、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾピリジニル(アザベンズイミダゾリル)、ピラゾロピリジニル、トリアゾロピリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾピリジニル、イソキサゾロピリジニル、チアナフチル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノキサリニル、およびキナゾリニル基などの基が含まれるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基には、インドリル基などのすべての環が芳香族である縮合環化合物が含まれ、2,3-ジヒドロインドリル基などの環の1つだけが芳香族である縮合環化合物が含まれる。「ヘテロアリール基」という句は、縮合環化合物を含むが、アルキル基などの、環員のうちの1個に結合した他の基を有するヘテロアリール基を含まない。むしろ、そのような置換を有するヘテロアリール基は、「置換ヘテロアリール基」と呼ばれる。代表的な置換ヘテロアリール基は、上記のような様々な置換基で1回以上置換され得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、接頭辞「ハロ」は、接頭辞「ハロ」によって修飾される基に結合しているハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、またはI)を指す。例えば、ハロアリールは、ハロゲン化アリール基である。
【0036】
本技術の化合物内に2個以上の結合点を有する(すなわち、二価、三価、または多価の)本明細書に記載の基は、接尾辞「エン(ene)」の使用によって示される。例えば、二価のアルキル基はアルキレン基であり、二価のアリール基はアリーレン基であり、二価のヘテロアリール基は二価のヘテロアリーレン基であり、他も同様である。
【0037】
驚くべきことに、式I(XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I))のTi-Mg錯体の安定したコロイド懸濁液が形成され、オレフィン重合反応のための効率的なチーグラー・ナッタ触媒の製造に対する反応物として使用され得ることが見出された。Ti-Mg錯体の組成を制御することにより、ドメインおよび凝集体を有するコロイド懸濁液の生成が可能になる。理論に拘束されるものではないが、ドメインの凝集および破壊は、液滴の表面張力によって引き起こされるようであり、液滴のサイズは攪拌速度、濃度、温度、溶媒媒体、および化学組成によって影響を受け得る。したがって、プレ触媒形成中に核形成ドメインとして機能すると思われる、連続相中に分散した粒子の寸法を制御することは、プレ触媒粒子の組成および特性を制御することになる。本明細書では、組成物、コロイド懸濁液を製造する方法、コロイド懸濁液からプレ触媒を製造する方法、およびポリオレフィンの製造において触媒系を使用する方法が提供される。
【0038】
さらに、触媒系の粒子径は、反応物の添加順序を変えることによって制御され得ることが観察された。例えば、ハロゲン化化合物を式IのTi-Mg錯体のコロイド懸濁液に添加すると、式IのTi-Mg錯体のコロイド懸濁液とハロゲン化化合物を不活性媒体に同時に添加する場合と比較して、攪拌速度が同じであるとき、得られる固体プレ触媒粒子のD50粒子径は少なくとも2倍になる。添加方法のうちの2つが図10Aおよび図10Bに例示されている。製造方法について、以下でさらに説明する。
【0039】
式Iにおいて、X:Yのモル比は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRはそれぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり;RはRと同じではない。一部の実施形態において、Rは、C~Cアルキルであってよく、Rは、C~Cアルキルであってよく、Rは、C-Cアルキルであってよい。1つの例示的かつ非限定的な実施形態は、Rがn-ブチルであり、Rがエチルであり、Rがn-ブチルである場合を含む。式Iの一部の実施形態では、pは1である。このような任意の実施形態では、qは約1であってよく、tは約1であってよい。一部の実施形態では、Xは0.2~0.5であり、Yは0.6~0.8である。上記の通り、X:Yの比は変化し得る。例えば、X:Yの比は、1~3、または約2であってよい。
【0040】
ヘキサン中の式Iの懸濁錯体および式Iの単離された錯体の炭素13核磁気共鳴(13C NMR)では、重水素化トルエン-dの残留溶媒シグナルに対して50ppm~80ppmのアルコキシド共鳴が示される(図1)。これはTi-Mg錯体に由来するアルコキシ基の混合物を示している。式Iの錯体がアリールオキシド基を含む一部の実施形態では、錯体の13C NMRスペクトルは、重水素化(deutareted)トルエン-dの残留溶媒シグナルに対して、40ppm~120ppmの共鳴を示し得る。
【0041】
熱質量分析(TGA)を使用して、錯体の試料からの実際の質量損失と理論上の質量損失を比較することにより、化合物の特性評価を支援することができる。式Iの錯体の場合、TGA後、得られる残留質量は、20質量%~35質量%であり得る。
【0042】
13C NMRおよびTGAと同様に、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して錯体の特性を決定することができる。式Iの組成物において、金属-酸素-C-Hに由来するC-H伸縮振動は、FTIRを使用して2500cm-1~4000cm-1の波数に観察され得る。
【0043】
式Iの錯体のコロイド懸濁液はまた、有機相を含み得る。例えば、有機相は、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物であってよい。有機相の実例には、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
興味深いことに、本明細書に記載の錯体/錯体のコロイド懸濁液は、分散相の多峰性ドメインサイズを示す。本明細書で使用される場合、「分散相」は、本質的に同じ組成のバルク相の特性を有する対象の粒子またはドメインであり、「連続」相は、組成が異なる。分散相では、多峰性ドメインサイズ、20℃にて、直径1nm~10nmのドメインサイズ平均を有する第1のピーク、および直径250nm~350nmのドメインサイズ平均を有する第2のピーク。これは、50℃にて、直径250nm~400nmのドメインサイズ平均を有する第1のピーク、および直径4000nm~6000nmのドメインサイズ平均を有する第2のピークを示す多峰性ドメインサイズを含む。
【0045】
ICP-OESを使用して、式Iの化合物中のTiおよびMg濃度を決定することができる。一部の実施形態において、TiおよびMgの濃度は、ICP-OESによって決定された通り、1x10-5M~2.0MであるとICP-OESにより決定された。
【0046】
式Iの錯体の粒子径を決定するための1つの手法、FBRM。FBRMによると、錯体およびコロイド懸濁液は、-30℃~60℃にて測定した場合、1μm~10μmのコード長平均を有する第1のピークを示し得る。
【0047】
別の実施形態において、固体プレ触媒系は、上記の式Iの化合物のコロイド懸濁液、およびハロゲン化化合物から形成される。式I(XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR)において、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない。ハロゲン化化合物は、ルイス酸化合物であってよい。例示的なルイス酸化合物には、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、およびシリコンテトラクロリド(SiCl)のうちの1種以上が含まれ得る。固体プレ触媒系において、Tiの総量は、約0.5質量%~約30質量%であってよい。固体プレ触媒系において、Mgは約1質量%~約20質量%存在し得る。固体プレ触媒系において、Alは、約1質量%~約20質量%存在し得る。固体プレ触媒系では、固体粒子は、反応が添加方法A(図10A)により実施される場合、1μm~30μmのD50を示し、同様の反応条件下、反応が添加方法B(図10B)により実施される場合、1μm~15μmのD50を示す。
【0048】
上記の実施形態のいずれにおいても、固体のプレ触媒系は、還元剤を含み得る。例示的な還元剤には、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、メチルアルミノキサン(MAO)、またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書に記載のコロイド懸濁液から生成されたチーグラー・ナッタ触媒系は、オレフィンの重合のための重合または共重合触媒として使用されてよい。したがって、重合方法において、コロイド懸濁液から生成されたプレ触媒系のいずれかを使用する方法が提供される。方法は、還元剤を、ハロゲン化化合物の反応生成物と本明細書に具体化される式I(XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR)の錯体のコロイド懸濁液との複合体の固体粒子を含む固体プレ触媒系と共に、少なくとも1種のオレフィンモノマーと接触させることを含み得る。多種多様なオレフィンが触媒により重合され得る。例示的な非限定的なオレフィンには、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれ得る。
【0050】
固体触媒系の触媒効率(「CE」)は、2kgPE・gCat -1・時-1より大きいと決定された。この範囲は、2kgPE・gCat -1・時-1~50kgPE・gCat -1・時-1、および4 kgPE・gCat -1・時-1~20kgPE・gCat -1・時-1を含み得る。
【0051】
この方法の一部の実施形態では、オレフィンはエチレンであってよく、方法から得られるポリエチレンは、1.0dl/g超の固有粘度を示す。この範囲は、1dl/g~50dl/g、および5dl/g~40dl/gを含み得る。
【0052】
別の態様では、式Iの錯体を含むプレ触媒組成物を形成する方法が提供される。方法は、式Ti(OR20のチタン化合物をTiClと接触させて反応性混合物を形成することを含む。次に、第2の混合物を形成するために、式R20OHのアルコールを反応性混合物に添加することができる。次に、第2の混合物に、式Mg(OR21のマグネシウム化合物を添加して、チタン化合物とマグネシウム化合物のモル比が0.2~5.0である第3の混合物を形成する。最後に、第3の混合物を加熱して、本明細書に記載の式Iの錯体を形成し、続いて、この反応の副生成物としてのエタノールを除去する。
【0053】
形成方法において、反応性混合物の形成は、発熱暴走を最小化または防止するために、周囲温度付近または周囲温度以下にて実施されてよい。例示的な温度は、約0℃~40℃、約10℃~約40℃、または約25℃~約30℃である。同様に、第3の混合物の加熱は、反応が進行し、反応混合物に由来する副生成物アルコールを蒸留するために十分な温度にて行われる。この温度は変動し得るが、一般的には約80℃~約180℃である。一部の実施形態では、温度は約100℃~160℃である。
【0054】
製造方法の実例として、反応性混合物は、30℃未満の温度にて、攪拌しながら、Ti(OBu)/TiClのモル比を約3として、純粋なTi(OBu)にTiClを滴下添加することによって形成される。この場合、TiClはTi(OBu)に対する塩素化剤として機能し、ラジカル相互交換反応を通じてTiCl(OBu)を生成する。このチタン化合物に、不活性雰囲気下で攪拌しながら、マグネシウムエトキシド粉末を、Ti種に対するモル比を2として添加する。次に、反応が完了するまで(約4~6時間)、混合物を攪拌しながら130℃に加熱する。この工程では、異なる量のブタノールが添加され、マグネシウムエトキシドとの部分的または完全な交換反応が生じて、マグネシウムブトキシドまたはマグネシウムエトキシドとブトキシドの混合物が形成され、透明な液体が形成される。この反応の副生物(エタノール)は、ディーン・スタークトラッピングによって収集される。次に、温度を100℃に下げ、錯体をヘキサン中に懸濁させて、0.4mol/L未満のチタン濃度を有するコロイド懸濁液を得る。ヘキサンの添加中、温度は60℃に達し、そこで少なくとも1時間攪拌しながら維持される。その後、コロイド懸濁液は室温にて安定である。
【0055】
さらなる態様において、ポリオレフィン触媒としての固体プレ触媒系を製造する方法は、反応条件およびコロイド懸濁液がどのように製造されるかに依存する。例えば、一部の実施形態において、固体プレ触媒系を製造する方法は、有機溶媒のコロイド懸濁液および式Iの錯体を、ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物と反応させることを含む。方法において、式Iの錯体は、本明細書の任意の実施形態について記載された通りである。他の実施形態では、固体プレ触媒系を製造する方法は、制御された流量、温度、濃度、および/または攪拌速度の下で、ハロゲン化化合物またはハロゲン化化合物の混合物を、有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液に添加することを含む。さらなる実施形態では、固体プレ触媒系を製造する方法は、制御された流量、温度、濃度、および/または攪拌速度の下で、ハロゲン化化合物(またはハロゲン化化合物の混合物)と有機溶媒および式Iの錯体を含むコロイド懸濁液とを、不活性液体媒体に同時に添加することを含む。
【0056】
方法において、式Iの化合物、有機溶媒、コロイド懸濁液、ハロゲン化化合物、およびプレ触媒系は、上記の通りである。ただし、前述の通り、温度、濃度、および/または攪拌速度などの反応条件は、コロイド懸濁液中のドメインおよび固体プレ触媒粒子の粒子径に影響を与える。図11に示される通り、攪拌速度を500~1750rpmに上げると、プレ触媒の粒子径のD50値が減少する。一部の実施形態では、方法における攪拌速度は、50~3000rpm、200~2500rpm、400~2000rpm、または500~1800rpmである。
【0057】
一般に、化学反応を伴う反応性沈殿プロセスは、核形成、結晶成長、および凝集の同時的かつ迅速な発生につながる。したがって、攪拌速度に加えて、温度および濃度などの反応条件もまた、粒子形成のメカニズムに影響を及ぼし得ることが予想され得る。図5に示される通り、媒体の温度が低いほど、Ti-Mg錯体コロイド懸濁液中のドメインサイズは小さくなり、このことは、反応性沈殿プロセスにおける核形成ドメインの向上した制御を示唆している可能性がある。反応媒体中のより低い温度は、核形成および結晶成長のメカニズムを促進し、そのことにより、図6に示される通り、より小さなプレ触媒粒子径の形成がもたらされ得ることも知られている。他方では、粒子が形成されると、凝集力の増加により、スラリー系の表面張力が増加することに関する懸念も考慮に入れる必要がある。図13に示す通り、最低反応温度での表面張力の大幅な増加は、粒子径分布を広げる凝集メカニズムからの重要な寄与を示唆している。希釈された反応媒体では、粒子形成全体を通して凝集力が抑制されるため、逆のことが観察された。
【0058】
上記の方法において、有機溶媒および/または不活性液体媒体には、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物が個々に含まれ得るが、これらに限定されない。例示的な有機溶媒および/または不活性液体媒体には、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはこれらの任意の2種以上の混合物が個々に含まれ得る。
【0059】
方法において、ハロゲン化化合物には、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、シリコンテトラクロリド(SiCl)またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。方法において、ハロゲン化化合物は、任意の実施形態において、本明細書に記載されているものなどの有機溶媒で希釈され得る。添加時のハロゲン化化合物の濃度は、約5質量%を超えていてもよい。
【0060】
上記の方法では、コロイド懸濁液中のTiおよびMgの濃度は、ICP-OESで測定した場合、約1x10-5M~約2.0Mである。
【0061】
本明細書の実施形態のいずれにおいても、方法は、約-40℃~+60℃の温度で実施されてよい。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、方法は、一定の塩化物対-ORモル比[式中、xは単にR、R、およびR基を集合的に示す]における、ハロゲン化化合物と式Iの錯体のコロイド懸濁液との同時供給を含む。一部の実施形態において、塩化物対-ORモル比は、約0.1~約10である。
【0062】
本明細書の実施形態のいずれかにおいて、方法から得られる固体プレ触媒は、0.5質量%~30質量%のTi含有率、1質量%~20質量%のMg含有率、および/または1質量%~20質量%のAl含有率を示す。方法から得られる固体プレ触媒粒子は、約1μm~約15μmのD50を示し得る。
【0063】
本明細書の実施形態のいずれかにおいて、方法は、固体プレ触媒系を還元剤と接触させることをさらに含み得る。例示的な還元剤には、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、メチルアルミノキサン(MAO)、またはこれらの任意の2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、固体プレ触媒系は、還元剤とさらに接触して、固体触媒系をもたらし得る。
【0064】
このように一般的に説明される本発明は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。以下の実施例は、例示として提供されるものであり、本発明を限定することを意図していない。
【実施例
【0065】
[実施例1]
コロイド懸濁液の製造
工程1:Ti(OBu)(89.1mL;0.27mol)を、30℃の不活性雰囲気下で、オーバーヘッド攪拌器、ディーン・スタークトラップ、および還流冷却器を備えた3Lガラス反応器に導入した。反応に続いて、250rpmにて攪拌し、温度を30℃未満に維持しながら、TiCl(9.61mL;0.085モル)を滴下添加して、反応性混合物を形成した。工程2:反応性混合物をこれらの条件下で1時間保持し、次に無水n-ブタノール(31.0mL、0.34mol)を15mL/分の流速で導入した。n-ブタノールの添加が完了した後、Mg(OEt)2(s)(77.5g、0.68mol)を窒素下でゆっくりと添加した。工程3:反応温度を130℃に上げ、攪拌速度を500rpmに上げた。この状態を1.5時間維持した後、ディーン・スタークトラップを介して副生物(すなわち、エタノール)を回収した。追加の無水n-ブタノール(25.0mL、0.27mol)を15mL/分の流速で導入し、反応を同じ条件下でさらに3.0時間維持した。工程4:250rpmの攪拌速度にして反応温度を100℃に下げ、ディーン・スタークトラップを窒素下で除去した。温度を60℃に設定すると同時に、n-ヘキサン(2.5L)を25mL/分の流速で添加した。ヘキサンの添加が完了した後、中間錯体(IC)懸濁液を室温に維持した。
【0066】
無水ブタノールは、99.8%の無水1-ブタノールアッセイとしてAldrichから購入され、これは水をさらに除去するために3Aモレキュラーシーブにより処理された。
【0067】
ICP-OESによって、中間錯体懸濁液は0.296Mチタンと0.618Mマグネシウムを含有すると決定した。この場合のマグネシウム:チタンの比は約2.1である。合わせて41mLのエタノール(26mL)とn-ブタノール(15mL)を、ディーン・スタークトラップを介して除去した。13C NMRを使用して、このエタノールとブタノールの量を決定した。エタノールが完全に除去されたと仮定すると、得られたTi-Mg錯体は、0.36TiCl(OBu)・0.72Mg(OEt)1.4(OBu)0.6という式を有し得る。固体を回収して乾燥させた後、ICP-OES分析は、理論量がそれぞれ8.46と8.60に対し、6.39質量%のTiと6.56質量%のMgを含有することを示した。固体の残部は、アルコキシドおよびハロゲン化物である。実施例1の錯体およびTi(OBu)のFTIRスペクトルが得られ、スペクトルは、MgおよびTiに結合した特徴的なα-C-H伸縮振動を示し、Ti-Mg錯体の形成を示唆している。
【0068】
実施例1についての考察。この分析では、それぞれC(b)とC(f)として割り当てられたエタノールとブタノールのアルファ炭素間の積分比を基準ピークとして使用した。この結果は、回収された試料中のエタノールとブタノールのモル比を示している。式(1)を適用することにより、回収された試料の約26mLがエタノールであったと推定することができる。したがって、スキーム1に示す通り、工程2の反応において生成されたエタノールのほとんどが回収されたと仮定すると、ブタノール-マグネシウムエトキシド交換反応のモル変換は0.31になる。
式(1):
【0069】
【数3】
[式中、∫αc2&c4はアルファ炭素ピークの13C NMR積分、ρc2&C4は密度、Mc4&c2はそれぞれエタノールとブタノールのモル質量、Vはディーン・スタークにおいて回収された総体積、Vc4はブタノールの体積である]
【0070】
この情報に基づいて、スキーム2に示す通り、実施例1における工程2の錯体の組成を推定することができる。上記に基づいて、実施例1の中間体錯体は、
0.36TiCl(O-n-Bu)・0.72Mg(O-Et)1.4(O-n-Bu)0.6
となる。化学式は、C8.0618.65Cl0.36Mg0.722.52Ti0.36であり、分子量は203.46g/molである。
【0071】
[実施例2]
工程1~2:実施例1と同じ。工程3:反応温度を150℃に上げ、攪拌速度を500rpmに上げた。この状態を1.5時間維持した後、ディーン・スタークトラップ中の副生物を回収した。次に、さらに4.0時間の反応時間の間に、30分ごとに15mL/分の流速にて、脱水n-ブタノール(4×25.0mL、4×0.27mol)の4回の付加的な添加を導入した。工程4:実施例1と同じ。
【0072】
実施例2の条件下で、ICP-OESにより、中間錯体懸濁液が0.314Mのチタンおよび0.618Mのマグネシウムを含有することを決定した。この場合、マグネシウム:チタン比は約2.0である。合わせて58mLのエタノール(39mL)およびn-ブタノール(19mL)を、ディーン・スタークトラップを介して除去した。実施例2の中間錯体は、
0.36TiCl(O-n-Bu)・0.72Mg(O-Et)1.1(O-n-Bu)0.9である。
化学式はC8.5019.51Cl0.36Mg0.722.52Ti0.36であり、分子量は209.35g/molである。固体を回収して乾燥させた後、ICP-OES分析は、理論量がそれぞれ8.20と8.60に対し、9.08質量%のTiと7.30質量%のMgを含有することを示した。
【0073】
[実施例3]
工程1~4:実施例1と同じ。この実施例の目的は、実施例1の実験を再現し、これらの条件下で、0.3Mのチタンと0.6Mのマグネシウムの濃度に達し、マグネシウム:チタンの比が約2.0になるようにすることである。合わせて21mLのエタノール(17mL)およびn-ブタノール(4mL)を、ディーン・スタークトラップを介して除去した。実施例3の中間錯体は、
0.36TiCl(O-n-Bu)・0.72 Mg(O-Et)1.6(O-n-Bu)0.4である。
化学式はC7.7818.01Cl0.36Mg0.722.52Ti0.36であり、分子量は199.27g/molである。実施例3の錯体のFTIRスペクトルを、錯体をヘキサン中に懸濁させ単離した形態で得た。スペクトルは、MgおよびTiに結合した特徴的なα-C-H伸縮振動を示し、Ti-Mg錯体の形成を示唆している。
【0074】
実施例1~3の要約。中間錯体の製造は、スキーム1に示した、2つの主要な反応工程を含む。工程1は、チタンアルコキシハロゲン化物錯体を得るための、チタンアルコキシドと塩化物との間の交換反応である。工程2は、マグネシウムエトキシドをチタンアルコキシハロゲン化物錯体中に懸濁させるものであり、この懸濁は、ブタノールとマグネシウムエトキシドとの間の部分的または完全な交換反応によって促進されて、マグネシウムブトキシドを形成する。均一で懸濁したTi-Mg錯体の形成後、余剰のヘキサン中に懸濁させ、0.4mol/L未満のTi濃度に到達させ、懸濁液を60℃にて攪拌条件下で少なくとも1時間維持した後、25℃まで冷却させた。
スキーム1:
【0075】
【化2】
【0076】
ヘキサン添加後のTiおよびMgの濃度をICP-OESにより推定した。Ti-Mg錯体を約2Lのヘキサン中に懸濁させた(1回目の希釈)。結果を表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
ICP-OESによって得られた1回目の希釈の[Mg]/[Ti]のモル濃度比は2.0であり、この値はスキーム1の化学量論係数に示されている予想された結果であることに留意することが重要である。
【0079】
得られた懸濁液は、熱質量分析(TGA)、光学顕微鏡、収束ビーム反射測定(FBRM)、動的光散乱(DLS)、および電気泳動光散乱(ELS)によっても分析された。
【0080】
TGA
分解生成物が酸化チタンおよび酸化マグネシウムであると仮定して、実施例1~3を熱質量分析にかけた。実施例1では、理論上の質量損失は71.61質量%、測定された質量損失は77.71質量%となっている。実施例2では、理論上の質量損失は72.49質量%、測定された質量損失は72.98質量%となっている。実施例3では、理論上の質量損失は71.01質量%、測定された質量損失は76.88質量%となっている。
【0081】
光学顕微鏡検査
光学顕微鏡分析の前に、グローブボックス内の石英窓を備えた試料ホルダーに、(窒素下で)Ti-Mg錯体懸濁液(実施例1および2)を移した。実施例2のブトキシド基の含有量を増加させることにより、マイクロサイズ範囲の凝集体の形成が抑制されるように見えることが観察された。D.C.Bradley(Chem.Rev.、89巻、1317~1322頁(1989))によって報告された通り、立体的なかさばりがより少ない基(例えば、メチルおよびエチル)を含有するアルコキシドは、通常の2電子共有結合によって酸素を介して2種または3種の金属に結合し(bounded)得るアルコキシド基の架橋傾向のために、オリゴマー(例えば、二量体、三量体、および四量体)であることが証明された。したがって、実施例2のアルコキシド基のかさ高さを高める(エトキシドよりブトキシドの含有量が多い状態にする)ことにより、大きな凝集体の形成を効率的に抑制しているように思われる。
【0082】
FBRM
FBRM実験は、Yu,Z.Q.ら、Organic Process Research&Development、2008、12巻、646頁によって説明されている。収束ビーム反射測定(FBRM)では、高速で回転する収束レーザービームが、円筒形プローブの先端に取り付けられたサファイア窓を介してスラリー/懸濁液に伝播する。レーザービームが粒子の端を横切ると、レーザービームの一部は同じプローブに取り付けられた検出器に後方散乱し、レーザービームが粒子の反対側の端に到達するまで回路内で立ち上がり信号を誘起する。このようにコード長が記録される。回転するレーザービームの立ち上がり時間と接線速度の積がコード長である。コード長の測定範囲は、レーザービームのスキャン速度に依存し、ハードウェア内で固定数の線形チャネルに分割される。コード長の各計数は対応するチャネルに記録され、コード長分布(CLD)が生成される。チャネルごとにグループ化されたコード長の計数は、FBRMによって提供される一次データである。さらに、制御インターフェースは、一次データの様々な重み付けまたは非重み付け統計、例えば、一次データの様々な統計的表現である、すべてのチャネルのコード長の総計数、平均コード長、CLDの中央値標準偏差(median standard deviation)などを提供する。
【0083】
ここで実施したFBRM測定には、オーバーヘッド攪拌器を備えた1Lジャケット付き反応器およびMettler-Toledo社製携帯型FBRM(登録商標)G600Bを使用した。FBRM(登録商標)は、媒体中の粒子、粒子構造、および液滴の変化の速度および程度を追跡するリアルタイム定量測定である。G600Bウェットプローブの寸法(D×L)は、Hastelloy C22およびサファイア窓で構成された19mm×400mmである。プローブ温度作動範囲は-10℃~120℃であり、圧力限度は10バールである。中間錯体(intermediated complex)懸濁液を反応器に移し、さらにヘキサンで希釈して[Ti]を0.125mol/Lにする。次に、測定前に、混合物を、30℃にて250rpmで30分間攪拌した。攪拌を停止し、ヘキサン中の実施例1の懸濁ドメインの材料の粒子のコード長を、図3に示す通り記録した。図4は、懸濁液が、攪拌なしで30℃および40℃にて経時的に安定していることを示している。
【0084】
光学顕微鏡分析のために、グローブボックス内の石英窓を備えた試料ホルダーに、(窒素下で)Ti-Mg錯体懸濁液を移した。
【0085】
DLS
すべての動的光散乱(DLS)測定は、測定に石英セルを使用して、Malvern Instruments社製Zetasizer NANOで実施した。
すべての試料を不活性雰囲気下で製造し、測定中はセルにキャップを付けた。
【0086】
図5は、25℃および0.125mol/Lの[Ti]における実施例1~3のヘキサン中の懸濁液の強度および体積による粒度分布の例示である。この条件下で、試料は、表3に示す範囲内での強度分布によって二峰性の粒子径を示した。
【0087】
【表2】
【0088】
ELS
すべての電気泳動光散乱(ELS)測定は、石英キュベット内の耐溶剤性セルを使用して、Malvern Instruments社製Zetasizer NANOで実施した。
【0089】
【表3】
【0090】
[実施例4]
不活性雰囲気下で、機械的攪拌機、加熱ジャケット、および還流冷却器を備えた1Lガラス反応器に、ヘキサン中の実施例1の中間錯体336mL([Ti]=0.296mol/L)を添加した。攪拌機を1500rpmに設定し、反応器温度を30℃に設定した。これらの条件下で、280.0mLのエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)溶液(ヘキサン中50質量%(0.47mol))を、5.00mL/分の流量にて添加した。次に、得られたスラリー混合物を60℃まで加熱し、反応性混合物をこの状態で1時間維持する。洗浄工程を開始する前に、反応器の温度を40℃に下げた。かき混ぜを停止し、固体プレ触媒を反応器の底部に沈降させた。上澄みをカニューレにより急冷容器に移して取り除き、500mLのヘキサンを添加した。スラリーを300rpmで少なくとも15分間攪拌し、この工程をさらに少なくとも3回繰り返した後、不活性雰囲気下で最終プレ触媒スラリーを貯蔵用フラスコに移した。結果を表5に示す。
【0091】
[実施例5]
実施例4と同様の条件。違いは次の通りである。(a)ヘキサン中の実施例1の中間錯体[Ti]=0.205mol/Lとして、この実施例のプレ触媒を生成する。結果を表5に示す。
【0092】
[実施例6]
実施例5と同様の条件を使用した。ただし、ヘキサン中の実施例1の中間錯体[Ti]=0.125mol/Lおよび1700~1800rpmの攪拌速度を使用して、プレ触媒を生成した。結果を表5に示す。
【0093】
[実施例7]
実施例6と同様の条件を使用した。ただし、1800rpmの攪拌速度、40℃の反応温度、および1~2mL/分のEASC流量を使用した。結果を表5に示す。
【0094】
[実施例8]
実施例7と同様の条件を使用した。ただし、反応温度は30℃であった。結果を表5に示す。
【0095】
[実施例9]
実施例8と同様の条件を使用した。ただし、反応温度は60℃であり、500rpmの攪拌速度を使用した。結果を表5に示す。
【0096】
[実施例10]
実施例8と同様の条件を使用した。ただし、ヘキサン中の実施例1の中間錯体[Ti]=0.076mol/L、30℃の反応温度、1600rpmの攪拌速度、および140mLのEASC体積を使用した。結果を表5に示す。
【0097】
[実施例11]
実施例8と同様の条件を使用した。ただし、1100rpmの攪拌速度を使用した。結果を表5に示す。
【0098】
[実施例12]
実施例10と同様の条件を使用した。ただし、ヘキサン中の実施例1の中間錯体[Ti]=0.125mol/L、10℃の反応温度、および280mLのEASC体積を使用した。結果を表5に示す。
【0099】
[実施例13]
実施例12と同様の条件を使用した。ただし、ヘキサン中の実施例1の中間錯体[Ti]=0.076mol/L、-10℃の反応温度、および140mLのEASC体積を使用した。結果を表5に示す。図13は、実施例7、11、および12について、Malvern Panalytical社製Mastersizer2000レーザー回折粒子径分析装置で測定された粒子径分布を示している。
【0100】
実施例4~14のそれぞれにおいて、図10Aに示した構成を使用したことに留意されたい。
【0101】
【表4】
【0102】
[実施例14]
不活性雰囲気下で、機械的攪拌機、加熱ジャケット、および還流冷却器を備えた1Lガラス反応器に、275mLのヘキサンを移した。攪拌機を1600rpmに設定し、反応器温度を30℃に設定した。これらの条件下、ヘキサン中の実施例1の中間体錯体95mL([Ti]=0.296mol/L)を1.35mL/分で、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)溶液(ヘキサン中50質量%(0.235mol))を流速2.00mL/分で、同時に反応器に供給した。次に、得られたスラリー混合物を60℃まで加熱し、反応性混合物をこの条件で1時間維持した。洗浄工程を開始する前に、反応器の温度を40℃に下げた。かき混ぜを停止し、固体プレ触媒を反応器の底部に沈降させた。上澄みをカニューレにより急冷容器に移して取り除き、500mLのヘキサンを添加した。スラリーを300rpmで少なくとも15分間攪拌し、この工程をさらに少なくとも3回繰り返した後、不活性雰囲気下で最終プレ触媒スラリーを貯蔵用フラスコに移した。結果を表6に示す。
【0103】
[実施例15]
実施例14と同様の条件を使用した。ただし、ヘキサン中の実施例2の中間錯体[Ti]=0.314mol/Lおよび1100rpmの攪拌条件を使用した。結果を表6に示す。
【0104】
[実施例16]
実施例15と同様の条件を使用した。ただし、500rpmの攪拌条件を使用した。結果を表6に示す。
【0105】
[実施例17]
実施例15と同様の条件を使用した。ただし、1500rpmの攪拌条件を使用した。結果を表6に示す。
【0106】
[実施例18]
実施例15と同様の条件を使用した。ただし、1600rpmの攪拌条件を使用した。結果を表6に示す。
【0107】
[実施例19]
実施例18と同様の条件を使用した。ただし、反応温度は-10℃であった。結果を表6に示す。
【0108】
[実施例20]
実施例18と同様の条件を使用した。ただし、反応温度は60℃であった。結果を表6に示す。
【0109】
したがって、上記の実施例では、プレ触媒製造のための2つの異なる方法を検討した。実施例4~14は、図10Aに示す通り、Ti-Mg懸濁液へのハロゲン化化合物(EASC)の添加を使用する。それとは異なり、実施例14~20は、図10Bに示す通り、混合条件を可能にするために、特定の体積のヘキサンへのハロゲン化化合物(EASC)およびTi-Mg錯体懸濁液の同時添加を使用する。プレ触媒製造方法B(同時添加)により、図7に例示する通り、Ti-Mg錯体に由来するTiの濃度が反応時間に沿って急速に低下することに留意されたい。このアプローチの結果として、図8に示す通り、プレ触媒粒子径形成に対する、より顕著な希釈効果を観察することができる。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
このことはまた、プレ触媒製造方法A(図10A)よりもプレ触媒製造方法B(図10B)を使用することによって小粒子径プレ触媒を製造することの重要な利点である。図11に示す通り、より小さなプレ触媒粒子径範囲を、実施例14~20(プレ触媒製造方法B)で使用した中間体錯体とは無関係に、同様の剪断速度条件下で得た。換言すれば、プレ触媒製造方法B(図10B)では、より小さなプレ触媒粒子径を生成するためには、はるかに少ないエネルギー入力が必要だった。
【0113】
[実施例21]
エチレン重合を1ガロンの反応器で行った。反応器を窒素下100℃にて1時間パージした。室温にて、反応器に2.3Lのヘキサンおよび230mgのDEAC(ジエチルアルミニウム)を装填する。次に、ヘキサンスラリー中の30mgのプレ触媒を反応器に添加する。反応器の温度を80℃に上げ、次にエチレンを装填して120psiに到達させた。360gのエチレンが消費されるまで、圧力をエチレン圧力により一定に保つ。保持の最後に、反応器を排気し、ポリマーを回収した。結果を表8および9に示す。
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
[実施例22]
実施例21と同様の条件下で、重合反応を実施した。ただし、重合時間を30分に固定し、表10に示す通り、触媒系は様々な活性化条件を受けた。この場合、重合反応器には、異なるレベルのDEAC、TiBA、および異なるモル比の下での両方の共触媒の混合物を装填した。結果を図12Aおよび図12Bにも要約する。
【0117】
【表9】
【0118】
[実施例23]
磁気的に結合された機械式攪拌機を備え、約23mLの幾何学的容量(geometric volume)および約5.5mLの液相用作業容量を備えた、反応器セル内で、一般的な重合手順を実行した。最初に、断続的な窒素流れ下で、90℃~140℃にて8時間セルをパージした。次に室温まで冷却した後、セルに使い捨ての10mLガラスおよび攪拌パドルを取り付け、次に攪拌トップ(stir tops)を反応器系に戻した。次に、所定量の乾燥ヘプタンおよびコモノマーとしての1-ブテンを、捕捉剤としての少量のアルキルアルミニウムの存在下で、シリンジポンプを介して反応器系に供給した。次に、系をエチレンにより設定温度および動作圧力に到達させた。この一般的な動作圧力は120psiであった。この条件下で、スラリーニードルシステム(slurry needle system)を使用して、ヘプタンスラリー中に分散したプレ触媒の所定量(約0.1mg)を回収した。通常は捕捉剤として使用されるものと同じである、ヘプタン中のアルキルアルミニウムの溶液を、セルに注入する前に、ニードルシステムに装填した。重合反応は、エチレンを供給し、通常30分間攪拌(800rpm)することにより、一定の圧力下で開始する。系を乾燥空気で過圧することにより反応をクエンチし、反応器を室温まで冷却して排気した。ガラスセルを反応器から取り出し、溶媒を遠心エバポレーター内で蒸発させ、得られたポリマーを真空下で一晩乾燥させた。
【0119】
試験した触媒系の重合結果を表11にまとめた。
【0120】
【表10】
【0121】
[実施例24]
粒子径に及ぼす温度および混合の影響を研究した。図14に示す通り、3つの異なる操作を説明する。プレ触媒形成のメカニズムの違いである、供給方法BおよびCは、方法Aと比較して、プレ触媒粒子径に対して非常に顕著な温度応答を有することが見出された。図15に示す通り、反応物供給方法BおよびCを使用する場合、媒体の温度を上昇させることによって、プレ触媒粒子径が減少することが見出された。異なる反応温度でのプレ触媒系の製造条件を表12にまとめる。
【0122】
【表11】
【0123】
【表12】
【0124】
方法A。不活性雰囲気下で、機械的攪拌機、加熱ジャケット、および還流冷却器を備えた1Lガラス反応器に、ヘキサン中の中間錯体懸濁液375mL([Ti]約0.3mol/L)を添加する。1600rpmの混合速度で、所望の温度を-10℃~60℃に設定する。これらの条件下で、ヘキサン中のEASC50質量%230.0mLを1.0~2.0mL/分にて添加する。次に、得られたプレ触媒スラリーを60℃まで加熱し、反応性混合物をこの状態で1時間維持する。洗浄工程を開始する前に、反応器の温度を40℃に下げる。かき混ぜを停止し、固体プレ触媒を反応器の底部に沈降させる。上澄みをカニューレにより急冷容器に移して取り除き、500mLのヘキサンを添加する。スラリーを300rpmで少なくとも15分間攪拌し、この工程をさらに少なくとも3回繰り返した後、不活性雰囲気下で最終プレ触媒スラリーを貯蔵用フラスコに移す。
【0125】
方法B。不活性雰囲気下で、機械的攪拌機、加熱ジャケット、および還流冷却器を備えた1Lガラス反応器に、ヘキサン(275mL)を移した。1600rpmの攪拌速度で、所望の温度を-10℃~60℃に設定する。これらの条件下、ヘキサン中の中間錯体懸濁液95mL([Ti]約0.3mol/L)を1.35mL/分で、ヘキサン中50質量%のEASC140.0mLを流速2.00mL/分で、同時に反応器に供給した。次に、得られたスラリー混合物を60℃まで加熱し、反応性混合物をこの状態で1時間維持する。洗浄工程を開始する前に、反応器の温度を40℃に下げた。かき混ぜを停止し、固体プレ触媒を反応器の底部に沈降させる。上澄みをカニューレにより急冷容器に移して取り除き、500mLのヘキサンを添加する。スラリーを300rpmで少なくとも15分間攪拌し、この工程をさらに少なくとも3回繰り返した後、不活性雰囲気下で最終プレ触媒スラリーを貯蔵用フラスコに移す。
【0126】
方法C。不活性雰囲気下で、機械的攪拌機、加熱ジャケット、および還流冷却器を備えた1Lガラス反応器に、室温にてヘキサン中EASC19質量%溶液415mLを添加する。次に、1600rpmの攪拌速度および-10℃~60℃の反応器温度を設定する。これらの条件下で、ヘキサン中の90.0mLの中間錯体懸濁液([Ti]約0.3mol/L)を1.00mL/分の流速で添加する。次に、得られたプレ触媒スラリーを60℃まで加熱し、反応性混合物をこの状態で1時間維持する。洗浄工程を開始する前に、反応器の温度を40℃に下げる。かき混ぜを停止し、固体プレ触媒を反応器の底部に沈降させる。上澄みをカニューレにより急冷容器に移して取り除き、500mLのヘキサンを添加する。スラリーを300rpmで少なくとも15分間攪拌し、この工程をさらに少なくとも3回繰り返した後、不活性雰囲気下で最終プレ触媒スラリーを貯蔵用フラスコに移す。
【0127】
Metller-Toledo社製ParticleView V19を使用して、プレ触媒合成の過程での粒子形成をモニタした。このプローブは、粒子形成の画像ベースのモニタリングを可能にし、画像の明るさおよび光源の強度の関数として濁度画像分析における変化を追跡する。反応物供給の方法Cを使用する反応温度の関数としてのプレ触媒合成の濁度画像分析プロファイルを図16に示す。これらの実験では、画像分析から得られる濁度ユニティ(TU)は、粒子径および固体濃度の関数であり、反応媒体の温度によって変化する。粒子形状、粒子の明るさ、屈折率、ならびにすべての反応プロセスパラメーター(すなわち、攪拌速度、供給速度、反応物の濃度、および反応物の供給源)などの他の重要なパラメーターは、選択した実験間で同じに保たれる。
【0128】
別の実施形態では、PVM V19プローブから得られた画像分析に関連する濁度ユニティ(TU)を、式(2)を使用してモデル化した。式中、図17に示す通り、k(T)はTU時定数であり、反応器作動温度の関数であり、TUmax(T)は系の最大TUであり、これも反応器温度の関数である。式(2)は、プレ触媒製造方法CにおけるIC供給の完了に対する、反応性媒体中の濁度の変化の開始を反映している。
式(2):
【0129】
【数4】
【0130】
各実験実行に関するkおよびTUmaxの値を、非線形計画問題(NLP)を定式化して解くことによって決定した。ここでの目的は、測定したTU値と計算したTU値の間の平均二乗誤差を最小化することである。式(2)は、3つのラグランジュ・ラダウ(Lagrange-Radau)選点を使用した有限要素上の直交選点によって時間で積分され、温度は各実験実行で一定であると仮定した。NLPは式(3)で表され、Pyomoで実装され、IPOPT3.12.13を使用して解決された。kおよびTUmaxの値を、それぞれ表1に示す。
式(3):
【0131】
【数5】
【0132】
【表13】
【0133】
関数k(T)およびTUmax(T)は、式(4)および式(5)によって定義される二次多項式により定義される。
式(4):k(T)=0.0001797*T+0.005646*T+2.16
式(5):TUmax(T)=-1.696e-05*T+0.004725*T+0.6432
【0134】
[実施例32]
実施例23と同じ初期処理手順であるが、これらの実験では、乾燥ヘプタンの量を、捕捉剤として1.0μmolのDEACの存在下でシリンジポンプを介して反応器系に最初に供給した。次に、系を設定温度(65~100℃)および水素とエチレンによる動作圧力に到達させた。この一般的な動作圧力は、110~135psiの範囲であった。この条件下で、スラリーニードルシステム(slurry needle system)を使用して、ヘプタンスラリー中に分散したプレ触媒の所定量(約0.03mg)を回収した。ヘプタン中に3.6μmolのDEACを含有する溶液を、セルに注入する前にニードルシステムに装填した。重合反応は、エチレンを供給し、通常60分以下の時間、攪拌(800rpm)することにより、一定の圧力下で開始する。系を乾燥空気で過圧することにより反応をクエンチし、反応器を室温まで冷却して排気した。ガラスセルを反応器から取り出し、溶媒を遠心エバポレーター内で蒸発させ、得られたポリマーを真空下で一晩乾燥させた。
【0135】
【表14】
【0136】
試験した触媒系の重合結果を表16にまとめた。次に、得られたポリマーを、高温サイズ排除(exlusion)クロマトグラフィー(HSEC)および結晶化溶出分別(CEF)によって特性決定した。
【0137】
【表15】
【0138】
項目1.式I:
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない]
の錯体。
【0139】
項目2.RがC~Cアルキルであり、RがC~Cアルキルであり、RがC~Cアルキルである、項目1に記載の錯体。
【0140】
項目3.Rがn-ブチル、Rがエチル、Rがn-ブチルである、項目1または2に記載の錯体。
【0141】
項目4.pが1である、項目1から3のいずれか一項に記載の錯体。
【0142】
項目.qが約0.5~1.5であり、tが約0.5~1.5である、項目1から4のいずれか一項に記載の錯体。
【0143】
項目6.Xが0.2~0.5であり、Yが0.6~0.8である、項目1から5のいずれか一項に記載の錯体。
【0144】
項目7.X対Yのモル比が1~3である、項目1から6のいずれか一項に記載の錯体。
【0145】
項目8.X対Yのモル比が約2である、項目1から7のいずれか一項に記載の錯体。
【0146】
項目9.重水素化トルエン-dの残留溶媒信号に対して50ppm~80ppmのアルコキシド共鳴を有する13C NMRスペクトルを示す、項目1から8のいずれか一項に記載の錯体。
【0147】
項目10.重水素化トルエン-dの残留溶媒信号に対して40ppm~120ppmのアリールオキシド共鳴を有する13C NMRスペクトルを示す、項目1から9のいずれか一項に記載の錯体。
【0148】
項目11.熱質量分析(TGA)によって得られた残留質量が、20質量%~35質量%である、項目1から10のいずれか一項に記載の錯体。
【0149】
項目12.2500cm-1~4000cm-1の波数にてフーリエ変換赤外C-H伸縮振動を示す、項目1から11のいずれか一項に記載の錯体。
【0150】
項目13.有機溶媒および式I:
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない]
の錯体を含むコロイド懸濁液。
【0151】
項目14.有機溶媒が、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目13に記載のコロイド懸濁液。
【0152】
項目15.有機溶媒が、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目13または14に記載のコロイド懸濁液。
【0153】
項目16.錯体が、分散相の多峰性ドメインサイズを示す、項目13から15のいずれか一項に記載のコロイド懸濁液。
【0154】
項目17.誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)によって決定されたTiおよびMgの濃度が、1×10-5M~2.0Mである、項目16に記載のコロイド懸濁液。
【0155】
項目18.多峰性ドメインサイズが、20℃にて、直径1nm~10nmのドメインサイズ平均を有する第1のピーク、および直径250nm~350nmのドメインサイズ平均を有する第2のピークを示す、項目16または17に記載のコロイド懸濁液。
【0156】
項目19.多峰性ドメインサイズが、50℃にて、直径250nm~400nmのドメインサイズ平均を有する第1のピーク、および直径4000nm~6000nmのドメインサイズ平均を有する第2のピークを示す、項目16、17、または18に記載のコロイド懸濁液。
【0157】
項目20.多峰性ドメインサイズが、収束ビーム反射測定(FBRM)によって測定したときに、-30℃~60℃にて測定した場合、1μm~10μmのコード長平均の第1のピークを示す、項目16、17、18、または19に記載のコロイド懸濁液。
【0158】
項目21.ハロゲン化化合物と、式I:
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない]
の錯体のコロイド懸濁液との反応生成物の複合体の固体粒子を含む固体プレ触媒系。
【0159】
項目22.ハロゲン化化合物が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、シリコンテトラクロリド(SiCl)またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目21に記載の固体プレ触媒系。
【0160】
項目23.Tiが、0.5質量%~30質量%存在する、項目21または22に記載の固体プレ触媒系。
【0161】
項目24.Mgが、1質量%~20質量%存在する、項目21~23のいずれか一項に記載の固体プレ触媒系。
【0162】
項目25.Alが、1質量%~20質量%存在する、項目21~24のいずれか一項に記載の固体プレ触媒系。
【0163】
項目26.固体粒子が、1μm~30μmのD50を示す、項目21~25のいずれか一項に記載の固体プレ触媒系。
【0164】
項目27.還元剤とさらに接触する、項目21~26のいずれか一項に記載の固体プレ触媒系。
【0165】
項目28.オレフィンモノマーを重合または共重合する方法であって、ハロゲン化化合物と式I
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない]
の錯体のコロイド懸濁液との反応生成物の複合体の固体粒子を含む固体プレ触媒系を、還元剤およびオレフィンモノマーと接触させることを含む、方法。
【0166】
項目29.還元剤が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、メチルアルミノキサン(MAO)、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目28に記載の方法。
【0167】
項目30.オレフィンモノマーが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目28または29に記載の方法。
【0168】
項目31.固体触媒系が、2kgPE・gCat -1・時-1より大きい触媒効率(CE)を示す、項目28から30のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
項目32.オレフィンがエチレンであり、1.0dl/gより大きい固有粘度を示すポリエチレンを収集することをさらに含む、項目28から31のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
項目33.固体プレ触媒系組成物を形成する方法であって、ハロゲン化化合物および式I
XTiCl(OR4-p・YMg(OR(OR (I)
[式中、X対Yのモル比(X/Y)は0.2~5.0であり、pは0または1であり、0<q<2であり、0<t<2であり、qとtの合計は2であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐ヘテロアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、または(ヘテロアリール)アルキルであり、RはRと同じではない]
の錯体のコロイド懸濁液を不活性液体媒体に同時に接触させて固体プレ触媒系を形成することを含む、方法。
【0171】
項目34.有機溶媒が、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目33に記載の方法。
【0172】
項目35.有機溶媒が、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目33または34に記載の方法。
【0173】
項目36.式Iの錯体が、分散相の多峰性ドメインサイズを示す、項目33から35のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
項目37.誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-OES)によって決定されたTiおよびMgの濃度が、1×10-5M~2.0Mである、項目33から36のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
項目38.多峰性ドメインサイズが、50℃にて直径250nm~400nmのドメインサイズ平均を有する第1のピーク、および直径4000nm~6000nmのドメインサイズ平均を有する第2のピークを示す、項目36~37のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
項目39.ハロゲン化化合物が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、チタンテトラクロリド(TiCl)、シリコンテトラクロリド(SiCl)またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目33から38のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
項目40.ハロゲン化化合物が、5質量%より高い濃度にて有機溶媒中に希釈される、項目33から39のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
項目41.不活性液体媒体が、アルカン、芳香族化合物、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目33から40のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
項目42.不活性液体媒体が、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンジン、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、クミン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、鉱油、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目33から41のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
項目43.不活性液体媒体の温度が、-40℃~+60℃である、項目33から42のいずれか一項に記載の方法。
【0181】
項目44.接触させることが、50rpm~1800rpmにて攪拌することを含む、項目33から43のいずれか一項に記載の方法。
【0182】
項目45.接触させることがハロゲン化化合物の同時添加を含み、式Iの錯体のコロイド懸濁液は一定の塩化物対-ORモル比[式中、Rは、集合的なR、R、およびRに対応する]におけるものである、項目33から44のいずれか一項に記載の方法。46.塩化物対-ORモル比が、1~10である、項目33から45のいずれか一項に記載の方法。
【0183】
項目47.固体プレ触媒系が、0.5質量%~30質量%のTiを含む、項目33から46のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
項目48.固体プレ触媒系が、1質量%~20質量%のMgを含む、項目33から47のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
項目49.固体プレ触媒系が、1質量%~20質量%のAlを含む、項目33から48のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
項目50.固体プレ触媒系が、1μm~15μmのD50を有するプレ触媒粒子を含む、項目33から49のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
項目51.固体プレ触媒系が、還元剤とさらに接触する、項目33から50のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
項目52.還元剤が、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、メチルアルミノキサン(MAO)、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目51に記載の方法。
【0189】
項目53.固体触媒系が、オレフィンモノマーを重合または共重合するように構成される、項目33から52のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
項目54.オレフィンモノマーが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの任意の2種以上の混合物を含む、項目33から53のいずれか一項に記載の方法。
【0191】
項目55.固体触媒系が、2kgPE・gCat -1・時-1より大きいオレフィン重合触媒効率(CE)を示す、項目33から54のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
項目56.オレフィンがエチレンを含み、方法が1.0dl/gより大きい固有粘度を示すポリエチレンを収集することをさらに含む、項目33から55のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
特定の実施形態が例示および説明されているが、当業者は、以下の特許請求の範囲において定義される、より広い態様で本技術から逸脱することなく、そこでの変更および修正を行うことができると理解すべきである。
【0194】
本明細書に例示的に記載されている実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない、何らかの1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限なしに、適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、開放的に、非限定的に解釈するべきである。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、図示および説明される特徴またはその一部の均等物を排除する意図はないが、特許請求の範囲に記載された技術の範囲内で種々の変更が可能であると認識される。さらに、「から本質的になる」という句は、具体的に列挙された要素、および特許請求の範囲に記載された技術の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素を含むと理解される。「からなる」という句は、明記されていない要素を排除する。
【0195】
本開示は、本出願に記載された特定の実施形態の点から限定されるものではない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更形態および変形形態が可能であることは、当業者にとって明白である。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に均等の方法および組成物は、前述の説明から当業者には明らかであろう。このような変更形態および変形形態は、添付した特許請求の範囲内に入ることが意図されている。本開示は、添付された特許請求の範囲の条件、およびそのような特許請求の範囲に権利が付与された均等物の全範囲によってのみ限定されるべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されず、当然に変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0196】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群の観点から説明されている場合、当業者は、それによって、本開示が、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素または構成要素の部分群に関しても説明されていることを認識するであろう。
【0197】
当業者によって理解される通り、あらゆる目的のために、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に開示されるすべての範囲は、あらゆる可能な部分領域およびその部分領域の組み合わせをも包含する。列挙された任意の範囲は、十分に説明されており、同じ範囲を少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割できると容易に認識することができる。非限定的例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、中3分の1、および上3分の1などに容易に分解することができる。当業者によっても理解される通り、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての文言は、列挙された数を含み、後に上記の部分領域に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解される通り、範囲は、個々の構成要素を含む。
【0198】
本明細書内で言及されるすべての刊行物、特許出願、発行済み特許、および他の文書は、個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、または他の文書が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に表示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた原書に含まれている定義は、本開示の定義と矛盾する範囲に限り排除される。
【0199】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17