(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】複数のレーダセンサの低妨害動作のための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/931 20200101AFI20231027BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231027BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
G01S13/931
G08G1/16 C
G01C21/26 B
(21)【出願番号】P 2022521078
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2020075740
(87)【国際公開番号】W WO2021069180
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】102019215358.5
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ヒンメルシュトス,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ハコビアン,ゴル
(72)【発明者】
【氏名】ドル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】エンゲバルト,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ポグンケ,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ゼルゲル,ベルナー
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298736(JP,A)
【文献】特表2017-529525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の車両(1、2、3)に搭載され、周波数、符号化、動作時間帯のパラメータのうちの少なくとも1つによって特徴付けられている動作範囲(A、B)でそれぞれ送信信号を送出する複数のレーダセンサ(11、12、21、22、31、32)の低妨害動作のための方法であって、
前記複数の車両(1、2、3)の各車両の車載ナビゲーションシステムから、前記各車両が現在走行している道路に関する情報と前記各車両の走行方向に関する情報とを取得し、
当該取得された情報に基づいて、前記車載ナビゲーションシステムが使用するデジタルマップに保存されている方向パラメータの中から、前記各車両が現在走行している道路の当該走行方向に割り当てられている方向パラメータを取得し、
当該取得された方向パラメータと、グローバル座標系で測定された前記各車両の位置および/または向きを特徴付ける少なくとも1つの
移動の自由度
とに応じて、
前記各車両に搭載されている各レーダセンサ(11、12、21、22、31、32)に動作範囲(A、B)を割り当てる
、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
複数の前記動作範囲(A、B)は、当該レーダセンサが送受信を行う周波数帯域(FA、FB)の位置で互いに異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーダセンサは符号化信号を送信し、複数の前記動作範囲は、符号化に使用された符号シンボルについて互いに異なる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数の前記レーダセンサは、グローバル時刻信号によって互いに同期され、複数の前記動作範囲は、前記レーダセンサが送信および/または受信を行う動作時間帯(50)の位置で互いに異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記動作範囲の割り当てに対して決定的な少なくとも1つの自由度は、前記グローバル座標系における前記車両の位置座標である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記動作範囲の割り当てに対して決定的な自由度は、方位(S)に対する前記車両の向きである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
個々のレーダセンサに対する前記動作範囲の割り当ては、それぞれの前記車両に対する前記レーダセンサの向きに応じている、請求項
1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各動作範囲(F(α))は連続的に変化するパラメータ(f
c)によって特徴付けられ、各レーダセンサへの動作範囲の割り当ては、方位に対する前記レーダセンサの向きを示す角度(α)に前記パラメータ(f
c)の値を割り当てる関数によって行われる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記動作範囲の割り当ては、2つの異なる車両に取り付けられて当該車両の空間的向きが互いに反対向きであるレーダセンサの各ペアについて、前記2つのレーダセンサの動作範囲が互いに異なるように行われることを特徴とする、請求項
7または
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる車両に搭載され、周波数、符号化、動作(アクティブ)時間帯のパラメータの少なくとも1つによって特徴付けられている動作範囲でそれぞれ送信信号を送出する複数のレーダセンサの低妨害動作のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、交通周辺環境を検出する測位装置として、レーダセンサが使用される。交通周辺環境に関する測位情報は、間隔調整、自動緊急ブレーキシステム、自動駐車など、さまざまなアシスト機能の基礎となる。自律走行車が開発される中で、アシストシステムは、人間の運転者が影響を及ぼすことなく、自律的に車両を制御するドライビングシステムへと次第に発展していくだろう。
【0003】
自動車の自動運転化に伴って、レーダセンサを搭載する車両数も、同一車両内に搭載されるレーダセンサの個数も増加することが予想される。
【0004】
このため、レーダセンサは、それ自体の送信信号によるレーダエコーのみならず、他車のレーダセンサからのレーダ信号を直接、または物体での反射後に受信する可能性が高くなる。異なる発信源のレーダ信号が干渉することで、偽信号が発生し、受信した信号を正しく解釈することが難しくなり、ひいてはレーダセンサの誤動作や性能低下につながる可能性がある。
【0005】
一般的に、レーダセンサは特定の周波数帯域内でのみレーダ信号を送信し、2つのレーダセンサが同じ周波数帯域で動作する場合にのみ、妨害干渉が大きくなることが予想される。
【0006】
また、多くのレーダセンサでは、送信部と受信部は常に動作(アクティブ化)しているわけではなく、受信した信号を解析するためのそれらの「送信休止」の間にある一定の時間帯においてのみ動作する。また、送信部と受信部の動作時間帯を調整し、一方のレーダセンサが送信している間に他方のレーダセンサが送信を休止するようにすれば、干渉を同様に回避することができる。
【0007】
送信信号を符号化して動作するレーダセンサも開発中である。符号化することで、同じ周波数帯域内で異なる送信信号を分離することができる。そのため、レーダセンサが、異なる符号化がなされた信号で動作することによっても、基本的に干渉を回避することができる。
【0008】
個々のレーダセンサで使用される周波数および/または動作時間帯および/または符号化の範囲を総称して動作範囲と呼ぶ。そのため、干渉を回避する方法は、レーダセンサを異なる動作範囲で動作させることが一般的である。しかし、利用可能な動作範囲(周波数、時間帯、符号化)の数は、各車両のレーダセンサに個別の動作範囲を確保するには到底足りない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、利用可能な動作範囲の数が限られていることを鑑みても、異なるレーダセンサ間の干渉頻度を低減することを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この課題は、レーダセンサが搭載されている車両の移動の少なくとも1つの自由度に応じて、各レーダセンサに動作範囲を割り当てることによって解決される。
【0011】
車両の移動の自由度は、グローバル座標系における車両の位置および/または向きを特徴付ける。動作範囲の割り当てがこのような移動の自由度に応じていることで、例えば、ほぼ同じ位置にいる2台の車両のレーダセンサに異なる動作範囲を割り当てて、干渉を回避することができる。一方で、空間的に離れている車両の場合、レーダセンサは同じ動作範囲で干渉を懸念することなく動作できる。同様に、例えば2つのレーダセンサがそれぞれの車両に対して前方に向けられ、2台の車両が互いに反対向きである場合、動作範囲の割り当ては、2台の車両のレーダセンサに異なる動作範囲が割り当てられるように、車両の向きに依存していてもよい。これにより、各レーダセンサが他のセンサから送信された信号を直接受信する場合の干渉を回避することができる。また、それぞれの車両に対して異なる向きを有するレーダセンサのペアについても同様である。
【0012】
本発明の有利な実施形態および改善形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
レーダセンサの動作範囲は、送信信号がある周波数帯域、または符号化信号の場合はレーダセンサが送信する符号シンボルのセットによって特徴付けることができる。同様に、動作範囲は、周波数帯域と符号化の異なる組み合わせによって、特徴付けられてもよい。
【0014】
さらに、レーダセンサの送受信部がアクティブになる特定の動作(アクティブ)時間帯によって動作範囲を特徴付けてもよい。しかし、この場合、動作時間帯を安定的に分離することを確実にするために、異なる車両のレーダセンサを互いに同期させる必要がある。同期には、地球航法衛星システム(GNSS:global navigation satellite system)(例えばGPS)の信号、モバイル通信ネットワークからの時刻信号、電波時計信号など、無線で受信可能な時刻信号を使用することができる。時刻信号は常時受信可能である必要はなく、車両やレーダセンサのローカルタイムが一定間隔で時刻信号と同期すればよい。
【0015】
レーダセンサの動作範囲は、動作時間帯と周波数帯域および/または符号化の特定の選択の組み合わせによって特徴付けられてもよい。
【0016】
車両がそれぞれナビゲーションシステムを有する場合は、位置の自由度に基づいて動作範囲の割り当てを行ってもよい。例えば、ナビゲーションシステムが使用するデジタルマップにおいて、道路ごとに、その道路の2つの進行方向に適用される動作範囲が互いに異なるように、2つ以上の動作範囲を定義することができる。これにより、その道路で出会った2台の車両のレーダ信号が互いに干渉することが回避される。
【0017】
また、他の方法では、出会った車両同士の干渉を回避するために、異なる2台の車両に搭載され、互いに反対の向き(車両の前進方向に対するレーダセンサの向きと、車両の北方向に対する向きによって決まる)を有するレーダセンサが異なる動作範囲を有するように、車両やレーダセンサの北方向に対する向きによって動作範囲を割り当てる。その場合、車両はナビゲーションシステムを有する必要はなく、基本的に十分な精度のコンパス機能が利用可能であれば十分である。
【0018】
また、角度によって選択された周波数帯域は互いに重なってもよいが、端部のみ重なることが好ましい。受信したレーダ信号は、通常、信号解析の際に周波数空間でウィンドウ処理を行うため、いずれにしても周波数帯域の端部では受信信号の一定の抑制が起こり、他のレーダセンサからの信号との干渉も抑制される。
【0019】
好ましくは、2つの方向間の角度差が180°に近いほど、周波数帯域の重なりが小さくなるように、センサの異なる方向へ周波数帯域の割り当てが選択される。
【0020】
同様の効果によって、異なるレーダセンサの動作時間帯も、少なくとも端部で互いに重なってもよい。ここでも、例えば周波数変調連続波(FMCW)レーダの場合、複数の高速チャープランプに亘って(2次元フーリエ変換の1次元分で)ウィンドウ化を行うことで、干渉が著しく抑制される。
【0021】
以下、図面を参照しながら、実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る方法を説明するための交通状況のスケッチの図である。
【
図2】
図1に示す交通状況において、レーダセンサ間の予想される干渉を表現するためのマトリックスの図である。
【
図3】
図1に示すレーダセンサへの周波数帯域の割り当ての一例の図である。
【
図4】レーダセンサの周波数帯域の割り当て規則を示した、ナビゲーションシステムのデジタルマップの図である。
【
図5】2つのレーダセンサの動作(アクティブ)時間帯の同期を示す周波数/時間の図である。
【
図6】本発明に係る方法の他の実施形態を説明するウインドローズの図である。
【
図7】レーダセンサの向きによる周波数帯域の割り当ての一例の図である。
【
図8】
図6、7に係る方法における周波数帯域のオーバーラップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、3台の車両1、2、3が、各走行方向にそれぞれ1車線5、6を有する道路4を走行している交通状況を示す。車両1、2は車線5を同じ方向に走行し、車両3が車線6で対向して来ている。
【0024】
車両1は、前部に走行方向前方を向いたレーダセンサ11、後部に走行方向後方を向いたレーダセンサ12を有する。車両2、3もそれぞれ同じ配置のレーダセンサ21、22、31、32を有する。レーダセンサのレーダローブは、それぞれ図で示した波で表されている。
【0025】
3台の車両1、2、3のそれぞれは、GPS衛星40と通信する車載ナビゲーションシステムを有する。ナビゲーションシステムには、車両が現在走行している道路4に関する情報と、個々の車両の走行方向に関する情報がある。
【0026】
図1に示す状態では、レーダセンサ21が送信したレーダ波をレーダセンサ12が直接受信し、逆にレーダセンサ12が送信したレーダ波をレーダセンサ21が直接受信するように、車両1のレーダセンサ12と車両2のレーダセンサ21とは対向している。そのため、仮に両方のセンサが同じ周波数帯域で動作した場合、両方のセンサで干渉によって妨害が発生する。
【0027】
このような干渉は、レーダセンサ21、31のペアにおいても予想される。
【0028】
少し後の時点で車両3が車両2を追い越した場合、レーダセンサ22、32も対向しているため、ここでも干渉が発生する可能性がある。
図1では車両1、2のレーダセンサ11、22は互いに離れて向けられているため妨害は予期されないが、後に車両2が車両1を追い越し、その際にレーダセンサ11、22間で干渉が発生することは除外できない。
【0029】
レーダセンサ11、21、32のレーダローブは全て同じ方向を向いているため、ここでは少なくとも1つのセンサから他のセンサへの直接的な信号伝達はない。レーダ信号の反射による干渉が、場合によって小規模で発生する可能性はある。3つのレーダセンサ12、22、31についても同様である。
【0030】
妨害のリスクを低減するために、レーダセンサ11、21、32はある周波数帯域FAで動作し、レーダセンサ12、22、31は別の周波数帯域FBで動作する。周波数帯域FA、FBは、重ならない程度にずれている。各レーダセンサはその周波数帯域にある受信信号のみに反応するため、妨害干渉が回避される。
【0031】
各レーダセンサが正しい周波数帯域で動作することを確実にするために、車線5には方向パラメータr=1が、車線6には方向パラメータr=-1が割り当てられている。ここで、走行方向前方を向いたレーダセンサ11、21、31には、それに属する車両が位置する車線の方向パラメータrが値1であれば周波数帯域FAの動作範囲Aが割り当てられ、方向パラメータが値-1であれば周波数帯域FBの動作範囲Bが割り当てられる。走行方向後方を向いたレーダセンサ12、22、32では、動作範囲A、Bの割り当てがちょうど逆になる。
【0032】
図2は、干渉の危険性が高いという意味で互いに「敵対的」なレーダセンサ11~32の組み合わせをマトリックスで示している。これらの組み合わせは、マトリックスにハッチングで示されている。また、マトリックスの端には、各レーダセンサに属する動作範囲AまたはBが記載されている。レーダセンサの各ペアに、方向パラメータrに応じた動作範囲を割り当てるため、レーダセンサが互いに敵対する場合、互いに異なる動作範囲AおよびBを有することがわかる。
【0033】
図3では、横軸にレーダセンサ11~32を配置し、縦軸にこれらのレーダセンサが動作する周波数fがプロットされている。動作範囲Aが割り当てられているレーダセンサ11、21、32は周波数帯域FAで動作し、残りの3つのレーダセンサは周波数帯域FBで動作する。周波数帯域は互いに重ならないようにずらされており、実質的に干渉は発生しない。
【0034】
各車両1、2、3のレーダセンサの機能は、それぞれの車両の車載ナビゲーションシステムからデータを取得する図示しない制御装置によって制御される。このデータには、現在の道路4と自車両の現在の走行方向に適用される方向パラメータrも含まれており、方向パラメータrは動作範囲A、Bの割り当てを決定する。
【0035】
図4は、車両の1台、例えば車両1が現在走行している地域の道路網の区間が記載されたデジタルマップ42の一例である。レーダセンサは、ナビゲーションシステムから、自車両が現在道路4上にいるという情報を取得する。また、デジタルマップには、走行方向ごとの方向パラメータrが保存されている。自車両の位置と走行方向は、通常通りカーソル44で記載されている。この情報に基づいて、
図1~
図3に関連して上述したように、各車両における動作範囲を割り当てることができる。
【0036】
図4に示すデジタルマップ42の区間には、他の道路46、48も含まれる。これらの道路46、48についても、走行方向ごとに、どの走行方向が値1であり、どの走行方向が値-1であるかを示す方向パラメータが保存されている。例えば、北や東の走行方向に対してはr=1、南や西の走行方向に対してはr=-1というように、方向パラメータの選択に特定の規則を設定することができる。しかし、道路が曲がっている可能性もあるため、同じ道路を走行している間に方向パラメータが変わる場合があり得る。
【0037】
特に安全な方向パラメータの決定方法は、全てのナビゲーションシステムに拘束力のある取り決めで、各道路と各走行方向に方向パラメータを一意的に割り当てることである。
【0038】
レーダセンサの動作範囲は、周波数帯域だけでなく、例えば、レーダセンサの送受信部がアクティブになる時間帯についても異なる可能性がある。一般的に、車両用レーダセンサ(例えばFMCWレーダセンサ)は、周波数変調された信号の周期的なシーケンスを送信し、そこでは送受信が行われる動作(アクティブ)時間帯と、送受信が行われない静止時間帯とが交互に現れる。動作時間帯中に、受信されたデータはデジタル化されて保存され、プロセッサに転送され、さらに解析が行われる。しかし、一般的にデジタルデータの解析には、測定段階でのデータ収集よりも多くの時間がかかる。この理由から、動作時間帯と静止時間帯とを分けて、前の測定期間に記録されたデータの解析を完了させる。
【0039】
図5は、2つのレーダセンサの周波数変調パターンMA、MBの例を示す。各変調パターンは、測定が行われる、すなわちレーダ信号が送受信される動作時間帯50と、送受信部が非アクティブでデータの解析のみが行われる静止時間帯52との周期的なシーケンスを含む。敵対的なレーダセンサの変調パターンMA、MBは、ここでは、一方のレーダセンサの動作時間帯50が、それぞれ他方のセンサの静止時間帯52内にあるように同期される。このようにして、2つのレーダセンサの信号間干渉を回避することができる。ただし、一連の動作時間帯と静止時間帯を決定するレーダセンサの局所クロック生成部が、グローバル時刻信号によって互いに同期していることが前提条件となる。グローバル時刻信号は、例えば、GPS衛星40から受信した信号とすることができる。
【0040】
したがって、一般的にレーダセンサの動作範囲は、使用される周波数帯域だけでなく、それぞれの動作時間帯50の位置についても互いに異なることができる。周波数帯域と動作時間帯の両方について動作範囲が異なれば、利用可能な動作範囲の数を増やすことができる。同様に、レーダセンサが符号化された信号を送信することも可能である。この場合、使用する符号シンボルについても動作範囲が異なってもよい。
【0041】
図6から
図8を用いて、より多くの異なる動作範囲で動作し、動作範囲が、例えば特定の方位に対するグローバル座標系においてそれぞれのセンサの向きに応じて割り当てられる変形実施例について説明する。
【0042】
図6は、矢印52が南方向sに対するレーダセンサの向き(すなわち主送受信方向)を示すウインドローズを示す。矢印52と南方向Sの間の角度をαと呼び、区間(-π,π]で変化する(上限πは区間に属するが、下限-πは区間に属さない)。角度αは準連続的に、あるいは例えば1°、15°など一定の刻みで変化してもよい)。
【0043】
動作範囲は、例えば、周波数帯域の中心fc、動作時間帯の開始など、連続的なパラメータによって特徴付けられてもよい。そして、動作範囲の割り当ては、動作範囲を特徴付けるパラメータを角度αに応じて指定する関数を用いて決定される。
【0044】
図7は、動作範囲が固定幅BWおよび角度αの関数として変化する中心周波数f
c周波数を有する周波数帯域F(α)である例を示している。全ての周波数帯域は、幅BW
Band、中心周波数f
c,Bandを有する全体帯域54内にある。
【0045】
図示の例では、個々の周波数帯域の幅BWは全体帯域の幅BW
Bandの1/4であり、中心周波数f
cは、αが-πから+πの範囲で変化する場合に全体帯域が完全に利用されるように、かつ2つのレーダセンサが互いに敵対する場合、すなわちこれら2つのセンサについて角度αがπ(180°)だけ異なる場合に属する周波数帯域が重ならないように選択されている。
図7に示す周波数帯域の割り当ては、以下の式に基づく。
【0046】
fc=fc,Band+(α/π)(BWBand-BW)/2
【0047】
2つのレーダセンサの角度αの差が小さくなると、属する周波数帯域は互いに近づき、角度差がπ/2(90°)より小さくなると重なり始める。しかし、この構成では、一方のセンサが送信した光線を他方のセンサが直接受信する可能性はすでに極めて低い。
【0048】
必然的に、幅BWが全幅BWBandに占める割合が大きくなると、周波数帯域間の重なり(オーバーラップ)は大きくなる。
【0049】
図8では、幅BW
Band=5GHzの全帯域について、周波数帯域(MHz)の異なる幅BW、およびレーダセンサの向きの異なる角度ずれΔαについて、周波数帯域(MHz)の重なり(オーバーラップ)の程度をグラフ化して示している。