(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】空気調和装置の室外機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/14 20110101AFI20231027BHJP
F24F 1/18 20110101ALI20231027BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20231027BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20231027BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
F24F1/14
F24F1/18
F28D1/047 B
F28F1/32 W
F28F9/26
(21)【出願番号】P 2022531108
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023375
(87)【国際公開番号】W WO2021255780
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】安田 源
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 先金
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-196507(JP,A)
【文献】特開2015-141009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/14
F24F 1/18
F28D 1/047
F28F 1/32
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、圧縮機、送風ファン、熱交換器を備えた空気調和装置の室外機において、
前記送風ファンが前記熱交換器の上部に搭載されると共に、
前記熱交換器は、上部側熱交換器と下部側熱交換器からなり、前記上部側熱交換器と前記下部側熱交換器は、U字状に曲げられた円管により形成されたU字伝熱管と、熱交換フィンと、液冷媒分配器と、ガスヘッダと、U字伝熱管の端部を繋ぐパス接続管で構成され、
前記熱交換器は、空気が流れる方向に沿って並べられた3列の熱交換部で構成され、
前記熱交換部の風上側の第1列熱交換部は、前記U字伝熱管が段方向に重ねて並ぶように配置され、風下側の2列は前記U字伝熱管が第2列熱交換部と第3列熱交換部を跨ぐように配置され、
前記上部側熱交換器の前記第3列熱交換部の前記U字伝熱管の端部が前記ガスヘッダに接続されており、前記ガスヘッダと接続される冷媒パス数が前記熱交換器の全段数/2より多く、かつ前記上部側熱交換器の段数が前記ガスヘッダと接続される冷媒パス数と同じ数であり、
前記下部側熱交換器の前記第1列熱交換部の前記U字伝熱管の端部が液冷媒分配器と接続されており、前記下部側熱交換器の前記第3列熱交換部の前記U字伝熱管の端部と前記上部側熱交換器の前記第1列熱交換部の前記U字伝熱管の端部が、前記パス接続管を介して接続されている
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置の室外機において、
前記上部側熱交換器と前記下部側熱交換器は、前記熱交換器が設置される接地面に対して高さ方向に並べて形成されており、前記上部側熱交換器と前記下部側熱交換器を合わせた高さ方向の長さは1m以上である
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和装置の室外機において、
前記液冷媒分配器と接続されている前記U字伝熱管による冷媒パス数に対して、前記ガスヘッダと接続される前記U字伝熱管による冷媒パスの数が4倍に決められている
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項4】
請求項3に記載の空気調和装置の室外機において、
前記液冷媒分配器と接続された前記下部側熱交換器の冷媒パスは、前記第1列熱交換部を通過した後に三又ジョイントを介して2分岐されて前記下部側熱交換器の前記第2列熱交換部、及び前記第3列熱交換部を通過し、
2分岐された冷媒パスの夫々は、前記上部側熱交換器の前記第1列熱交換部を通過した後に前記三又ジョイントを介して更に2分岐されて前記上部側熱交換器の前記第2列熱交換部、及び前記第3列熱交換部を通過して前記ガスヘッダに接続されている
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項5】
請求項3に記載の空気調和装置の室外機において、
前記液冷媒分配器と接続された前記下部側熱交換器の冷媒パスは、前記第1列熱交換部を通過した後に前記下部側熱交換器の前記第2列熱交換部、及び前記第3列熱交換部を通過し、
前記下部側熱交換器の前記第3列熱交換部を通過した冷媒パスは、前記上部側熱交換器の前記第1列熱交換部を通過する前に三又ジョイントを介して2分岐され、
2分岐された冷媒パスの夫々は、前記上部側熱交換器の前記第1列熱交換部を通過した後に前記三又ジョイントを介して更に2分岐されて前記上部側熱交換器の前記第2列熱交換部、及び前記第3列熱交換部を通過して前記ガスヘッダに接続されている
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項6】
請求項3に記載の空気調和装置の室外機において、
前記液冷媒分配器と接続された前記下部側熱交換器の冷媒パスは、前記第1列熱交換部を通過した後に三又ジョイントを介して2分岐されて前記下部側熱交換器の前記第2列熱交換部、及び前記第3列熱交換部を通過し、前記第3列熱交換部を通過した後で再び前記三又ジョイントを介して合流され、
前記下部側熱交換器の前記第3列熱交換部を通過した冷媒パスは、前記上部側熱交換器の前記第1列熱交換部を通過する前に前記三又ジョイントを介して2分岐され、
2分岐された冷媒パスの夫々は、前記上部側熱交換器の前記第1列熱交換部を通過した後に前記三又ジョイントを介して更に2分岐されて前記上部側熱交換器の前記第2列熱交換部、及び前記第3列熱交換部を通過して前記ガスヘッダに接続されている
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項7】
請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の空気調和装置の室外機において、
前記下部側熱交換器における前記液冷媒分配器との接続部は、前記第1列熱交換部の段方向に配置された前記U字伝熱管の重力方向で下側の端部である
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【請求項8】
請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の空気調和装置の室外機において、
少なくとも、前記三又ジョイント、前記ガスヘッダ、前記U字伝熱管の端部、前記パス接続管は、前記熱交換器を通過する空気の流れと平行な面の一方側に集約して配置されている
ことを特徴とする空気調和装置の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和装置の室外機に係り、特に送風ファンが熱交換器の上部に搭載されたトップフロー型の室外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内の暖房や冷房を行なう空気調和装置は、室外に設置された室外機と室内に設置された室内機によって構成され、室内機と室外機には、空気と冷媒とを熱交換させる熱交換器と、熱交換器に空気を流す送風ファンと、室外機と室内機を接続する冷媒配管とが備えられている。そして、室外機の熱交換器は、室内を加熱する暖房運転の場合は外部空気の熱を吸収し、室内を冷却する冷房運転の場合は外部空気へ熱を放出する機能を備えている。
【0003】
ところで、商用ビル等の建築物では、例えば、VRF(Variable refrigerant flow)方式と呼ばれる、1台から複数台の室外機と、この室外機と冷媒配管で接続された複数台の室内機を備えた空気調和装置が使用されている。このような空気調和装置は、いわゆる「マルチエアコンディショナーシステム」と呼ばれている。
【0004】
VRF方式の空気調和装置に使用される室外機は、送風ファンが熱交換器の上部に搭載された形式のトップフロー型の室外機が多く使用されている。このトップフロー型の室外機に使用される熱交換器の例として、伝熱管に扁平管を用いたものが国際公開第2014/199501号(特許文献1)に記載されている。
【0005】
この特許文献1の室外機は、並列して配置された偏平形状の複数の伝熱管を有し、少なくとも冷凍サイクルの凝縮器として用いられる熱交換器と、熱交換器を所定の風速分布で通過する空気の流れを生成する送風ファンとを備えている。ここで、以下に説明する「冷媒パス」は、冷媒の流路を示すものである。
【0006】
特許文献1において、凝縮器としての熱交換器は、伝熱管内部を流通する冷媒と空気との熱交換を行って冷媒の熱を空気に放出するのである。熱交換器は、1つ又は複数の伝熱管により構成された複数の冷媒パスを有しており、複数の冷媒パスは、ガス冷媒を流入させ、二相冷媒として流出させる複数の第1冷媒パスと、複数の第1冷媒パスから流出した二相冷媒を流入させ、過冷却液冷媒として流出させる複数の第2冷媒パスとを含むように構成されている。
【0007】
そして、複数の第2冷媒パスは、複数の第1冷媒パスよりも空気の風速が小さい領域に配置されている。また、複数の第1冷媒パスの夫々は空気の風速が互いに異なる領域に配置されており、複数の第2冷媒パスの夫々も空気の風速が互いに異なる領域に配置されている。
【0008】
複数の第1冷媒パス、及び複数の第2冷媒パスは、第1冷媒パスと第2冷媒パスの中で、それぞれ空気の風速が大きい領域に配置されたもの同士から順次対応付けられ、複数の第1冷媒パスの出口側は、それぞれ対応付けられた複数の第2冷媒パスの入口側に連結される構成とされている。
【0009】
また、室外機の熱交換器に円管をU字状に曲げた伝熱管を使用する空気調和装置において、冷媒パス数を増加させて空調能力を向上させる空気調和装置の室外熱交換器が特開2014-126322号公報(特許文献2)に記載されている。
【0010】
この特許文献2に記載の空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器、及び室外膨張弁を有する室外機と室内の室内機とを、液接続配管、及びガス接続配管で接続している。また、室外熱交換器は、複数枚の板状の熱交換フィンと、複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液冷媒分配器及びガス冷媒分配器を備えている。
【0011】
そして、ガス冷媒分配器側の冷媒パス数は、液冷媒分配器側の冷媒パス数に対して倍以上で、1つの室外熱交換器は複数に分割されている。複数に分割された室外熱交換器には、それぞれ複数枚の板状の熱交換フィンと、板状の熱交換フィンに直交する複数の伝熱管と、各伝熱管を複数のパスに統合する液冷媒分配器、及びガス冷媒分配器が備えられている。そして、複数に分割された各室外熱交換器を合せた液冷媒分配器側の冷媒パス数が、分割前の室外熱交換器の伝熱管の段数/4の値よりも多くなる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2014/199501号
【文献】特開2014-126322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
空気調和装置の中でも、商用ビル等の建築物に用いられる大型の空気調和装置においては、室外機1ユニット当たりの冷房・暖房能力の向上が求められている。
【0014】
暖房運転時に熱交換器が蒸発器として使用されるときの暖房能力の向上には、熱交換器に大量の液冷媒を流して蒸発させる必要がある。熱交換器内の冷媒パス数は、熱交換器内部で冷媒が分岐して流れる冷媒パスの数である。この冷媒パス数が少ないと液冷媒がガス化した際に、冷媒パスの内部流速が大きくなり過ぎ、内部の圧力損失が大きくなってしまう。
【0015】
この内部の圧力損失は、熱交換器内に不要な温度分布を作る要因となり、空気調和装置の省エネ性の低下につながる。したがって暖房能力の向上には、冷媒パス数の増加が必要である。
【0016】
一方で、冷房運転時に冷媒パスを増やした熱交換器を凝縮器として使用するときには、ガス冷媒の凝縮が進んで液冷媒の比率が高くなった場合には、冷媒パス数が多いと液冷媒の流速が低下しすぎるため、熱交換性能が低下する。したがって、冷房運転時の熱交換性能(冷房性能)の向上には、熱交換器の液冷媒分配器の側の冷媒パス数は少なくしておくことが必要である。
【0017】
また、熱交換器の高さが1mを超えるようなトップフロー型の室外機では、冷房時に熱交換器が凝縮器として使用される場合に、最上部の冷媒パスと最下部の冷媒パスの液側出口の高低差が1m近くなることが多い。このような場合、最下部の冷媒パスの液側出口には、液冷媒の高さ分だけの圧力が作用し、その圧力は10kPa近くになる。
【0018】
しかしながら、一般的に凝縮器として使用する際のガス側と液側の圧力差は小さく、特に冷媒パス数が多い条件の下では10kPaを下回ることがある。このような場合、液側出口に圧力のかかった熱交換器の下部側の冷媒パスには冷媒が流れない場合がある。冷媒が流れない冷媒パスは、実質的に熱交換をしないので、その領域の伝熱面積が無駄となり、これも熱交換性能(冷房性能)の低下につながることになる。
【0019】
加えて、トップフロー型の室外機は、送風ファンが室外機の上部にあり、熱交換器は室外機の側面で、設置面(例えば、地面やビルの屋上階床)に対して垂直に配置されている。このため、送風ファンに近い熱交換器の上部の風速は速く、送風ファンから遠い熱交換器の下部の風速は遅くなる傾向にある。
【0020】
したがって、熱交換器の下部の熱交換量は、熱交換器の上部の熱交換量に比べて少なくなる。このため、熱交換量に合わせて冷媒の分配量を、液冷媒分配器と細径管等の圧損体で調整する必要があり、この分だけ製造コストが増大するようになる。
【0021】
ところで、特許文献1の空気調和装置においては、風速が相対的に大きい領域に第1冷媒パスを配置し、風速が相対的に小さい領域に第2冷媒パスを配置することにより、伝熱管内における液相部の占める割合を減少させることができ、熱交換効率を向上させることができる。
【0022】
しかしながら、特許文献1に記載された熱交換器は、扁平管を採用しているので内部流路は細管となる。このため、特に蒸発器として用いられる際の圧力損失が大きくなり暖房能力の向上を阻害する。また、扁平管は構造が複雑であり製造コストが増大するという課題を有している。
【0023】
一方で、特許文献2には、円管を用いた熱交換器において、複数に分割された各室外熱交換器を合せた液冷媒分配器の側のパス数が、分割前の室外熱交換器の伝熱管の段数/4の値よりも多くなるようにしている。
【0024】
しかしながら、特許文献2に記載されている空気調和装置は、熱交換器を2分割する必要がある。したがって2分割できない場合、または2分割した状態を基準にして、更に暖房能力を向上したい場合には冷媒パス数を増やせず、暖房能力を向上できないという課題があった。
【0025】
本発明は、熱交換器の風速分布と熱交換器の高さに伴う液ヘッドの影響がある中で、高い暖房能力、及び冷房性能の向上を低コストで実現することができる空気調和装置の室外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、
少なくとも、圧縮機、送風ファン、熱交換器を備えた空気調和装置の室外機において、
送風ファンが熱交換器の上部に搭載されると共に、
熱交換器は、上部側熱交換器と下部側熱交換器からなり、夫々の熱交換器は、U字状に曲げられた円管により構成されたU字伝熱管と、熱交換フィンと、液冷媒分配器と、ガスヘッダと、U字伝熱管の端部を繋ぐパス接続管で構成され、
熱交換器は、空気が流れる方向に沿って並べられた3列の熱交換部で構成され、
熱交換部の風上側の第1列熱交換部は、U字伝熱管が段方向に重ねて並ぶように配置され、風下側の2列はU字伝熱管が第2列熱交換部と第3列熱交換部を跨ぐように配置され、
上部側熱交換器の第3列熱交換部のU字伝熱管の端部がガスヘッダに接続されており、このガスヘッダと接続される冷媒パス数が熱交換器の全段数/2より多く、かつ上部側熱交換器の段数がガスヘッダと接続される冷媒パス数と同じ数であり、
下部側熱交換器の第1列熱交換部のU字伝熱管の端部が液冷媒分配器と接続されており、下部側熱交換器の第3列熱交換部のU字伝熱管と上部側熱交換器の第1列熱交換部のU字伝熱管が、パス接続管を介して接続されている
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、熱交換器の風速分布と熱交換器の高さに伴う液ヘッドの影響がある中で、高い暖房能力、及び冷房性能の向上を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明が適用される空気調和装置の室外機の外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す室外機の内部構成を示す外観斜視図である。
【
図3】空気調和装置の冷凍サイクルを示す構成図である。
【
図5】従来の熱交換器の製造方法を説明するための外観斜視図である。
【
図6】従来の熱交換器の冷媒パスを説明するための構成図である。
【
図7】従来の他の熱交換器の冷媒パスを説明するための構成図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態になる熱交換器を一方から見た外観斜視図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態になる冷媒パスを説明するための構成図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態になる熱交換器を他方から見た外観斜視図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態になる冷媒パスを説明するための構成図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態になる冷媒パスを説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0030】
先ず、
図1を用いて本発明が適用される室外機の概要を説明する。本発明が適用される室外機では、筐体の上部にファンを有するトップフロー型の室外機を対象としている。また、その設置面積をコンパクトに保ちながら、高い冷房能力、及び暖房能力を発揮するために、室外機の高さは1mを超えており、熱交換器の高さも1mを超えている。
【0031】
更に
図1に示すように、本発明が適用される室外機は、2台の送風ファン13とそれに伴う2つのベルマウス16、そして2台の熱交換器12によって構成されている。尚、これらは、前面パネル15等からなる筐体に収納されている。
【0032】
図2には、
図1で示した室外機からファンとベルマウスと前面パネル15を取り外し、内部を見えるようにした斜視図を示している。室外機の内部には、圧縮機10、冷媒タンク11、アキュムレータ14、制御盤17等が配置されている。室外機は、底部設置板18の上に載置されている。制御盤17は、室外機に取り付けられたセンサの入力部や、圧縮機10や送風ファン13の運転を制御する電気品が搭載されている。冷媒タンク11は、冷凍サイクルの途中に取り付けられており、冷房運転と暖房運転で、サイクル内で必要となる冷媒量の差を吸収するためのものである。
【0033】
図3には、VRF方式の空気調和装置における冷凍サイクルの概要を示しており、特に暖房運転時の冷凍サイクルを記載している。圧縮機10から吐出された高温高圧のガス冷媒は、冷媒配管9、四方弁19を通過してガス側阻止弁に流れる。ここからガス冷媒配管101によって室内機103とガス側阻止弁が接続されている。ガス側阻止弁より流れ出たガス冷媒は室内機103内の室内熱交換器104に流れる。尚、室内機103は2つの居室300に設けられている。もちろん、これ以上の数の居室に設けることも可能である。
【0034】
室内熱交換器104には、室内送風ファン105によって空気が流されており、空気は冷媒の熱を奪って室内に供給される。この室内熱交換器104内部で、冷媒は冷却され液化する。液化した冷媒は、液冷媒配管102を通って、液側阻止弁に流れる。液側阻止弁から室外機100に流入した冷媒は、室外機100内に収納された室外膨張弁20にて減圧され、低温低圧の気液2相状態となり、冷媒タンク等を経由して室外熱交換器12に流れる。
【0035】
室外熱交換器12には、室外送風ファン13によって室外の空気が流されており、冷媒は、熱交換器12を流れる室外の空気温度よりも低い温度になるよう減圧されているため、熱交換器12で室外の空気の熱を吸熱して蒸発する。
【0036】
室外熱交換器12で蒸発してガス化したガス冷媒は、四方弁19を通過し、アキュムレータ14を経て、圧縮機10に戻り、再び圧縮機10の圧縮作用によって高温高圧のガスに圧縮される。これらの繰り返しによって暖房運転を継続することができる。一方、冷房運転時には、四方弁19によって、圧縮機10の吐出配管と室外熱交換器12が接続され、ガス側阻止弁とアキュムレータ14が接続されるように、四方弁19での接続が切り替えられる。
【0037】
これによって室外熱交換器12及び室内熱交換器104に流れる冷媒の流れ方向が逆転する。また、室外熱交換器12ではガス冷媒が凝縮して液化し、室内熱交換器104では、液冷媒が蒸発してガス化する。これらの繰り返しによって冷房運転を継続することができる。
【0038】
図4には、従来の円管の伝熱管を使用した熱交換器の構造を示している。
図4に示すように熱交換器は、U字に曲げられた円管の伝熱管であるU字伝熱管22と、板状の熱交換フィン21によって構成されている。熱交換器は3列としているが、風の流れに沿って風上側から縦方向に第1列熱交換部28、第2列熱交換部29、第3列熱交換部30とする。
【0039】
図5には、熱交換器の組み立て構造を示している。
図4に示した熱交換器は、等ピッチで積層された熱交換フィン21に対してU字伝熱管22を差し込むことで作成される。一般に熱交換フィン21にU字伝熱管22が差し込まれた後に、U字伝熱管22の端部から拡管用機械を挿入し、U字伝熱管22を内側から拡管することで、熱交換フィン21とU字伝熱管22とを密着させている。機械的な拡管のほかに液圧を利用した拡管方法もある。
【0040】
従来の熱交換器では、この熱交換フィン21にU字伝熱管22を差し込む熱交換器組み立て工程を列毎に行えるように、U字伝熱管22を列毎に縦に並べた配置(
図5参照)が用いられてきた。
【0041】
図6には、U字伝熱管22による従来の冷媒パス(冷媒の流路)を示している。
図6中の横方向を列方向とし、左から第1列熱交換部28、第2列熱交換部29、第3列熱交換部30と数える。また、
図6中の縦方向を段方向とし、伝熱管の数で1段、2段と数える。
図6に示す構成では、3列12段の熱交換器である。従来の熱交換器は、U字伝熱管22を段方向に並べて配置し、これを3列分並べることで構成している。
【0042】
図6中の黒い矢印は冷媒の流れを示している。暖房運転時には、膨張弁を出た2相流は、図には示していない液冷媒分配器を通して、熱交換器の各液側冷媒出入口25に分配される。その後、図中の矢印に沿って熱交換器の第3列熱交換部30からガスヘッダ24に流入する。ガスヘッダ24にて合流した冷媒は、四方弁へ流れる。
【0043】
空気調和装置においては、冷房運転、暖房運転ともに大きな空調能力に対応するには、熱交換器に大量の冷媒を流す必要がある。暖房運転時には、室外機の熱交換器を、蒸発器として大量の液冷媒をガス化させる必要がある。液からガスに相変化することで同一質量当たりの冷媒体積が劇的に増加するため、熱交換器内部の伝熱管内で冷媒の流速が高くなり、大きな圧力損失の原因となる。この圧力損失は、熱交換器内部での冷媒の温度分布の原因ともなり、熱交換器の熱交換性能を低下させる。
【0044】
このため、従来の高い暖房能力に対応する機種に搭載されている熱交換器では、U字伝熱管を利用した最大分割数になるように、
図6のような冷媒パスが採用されてきた。
図6に示すような冷媒パスの構造では、熱交換器の中の冷媒の流路数である冷媒パスの数を極力増やし、一つの冷媒パスの配管長を短くするとともに、一つの冷媒パスに流れる冷媒の量を少なくすることで圧力損失を低減させてきた。
【0045】
特に空調能力の高い空気調和装置では特許文献2に示されるように、室外機の熱交換器を分割することで1つの熱交換器に流れる冷媒量を減らし、かつ熱交交換器の幅を短くできるため、U字伝熱管1ターンの流路長が短くなり、当然冷媒の圧力損失も小さくすることができる。
【0046】
ここで、
図6に示すような従来の冷媒パスの構造において、熱交換器は夫々の列毎に、U字伝熱管を段方向に並べたものを使用している。これは、1列毎に同じ熱交換器を製作して組み合わせればよいので、製造上のコスト低減につながる。一方で、熱交換量は風上側の第1列熱交換部が最も大きく、風下になる第2列熱交換部、第3列熱交換部と少なくなってゆく。
【0047】
したがって、
図6に示す従来の冷媒パスの構造のような第1列熱交換部28から第3列熱交換部30までを一つの冷媒パスで繋ぐ構成を採用しない場合、例えば第1列熱交換部28を通過した冷媒を2つに分割して一方を第2列熱交換部29、他方を第3列熱交換部30のU字伝熱管にそれぞれ流すようなパスを設けたとすると、第2列熱交換部29で可能な熱交換量は、第3列熱交換部30の交換熱量よりも大きいので、それに合わせて冷媒分配を調整しなくてはならない。
【0048】
つまり、第3列熱交換部30のU字伝熱管には冷媒が流れにくいように第1列熱交換部28と第3列熱交換部30の接続部には細径管などの圧損体を設ける必要がある。また、この分配量が最適でないと、性能低下につながる。
【0049】
また同様に、第2列熱交換部29または第3列熱交換部30に液側冷媒出入口25を設けてパス数を増やさない構成も、第2列熱交換部29以降は第1列熱交換部28での熱交換量によって空気温度が変化しており、適切な冷媒量を流すことが難しく性能向上が困難であるためである。
【0050】
加えて、冷房運転時に液側冷媒出入口25が第1列熱交換部28にない場合、冷却風が第1列熱交換部28の熱交換によって温度上昇したものになるため、凝縮した液冷媒のサブクール量が、第1列熱交換部28に液側冷媒出入口25がある場合と比べて取れなくなる。一般にサブクール量が取れないと性能が低下する傾向がある。
【0051】
更に、この
図6に示すような従来の冷媒パスの構造は、冷房時に凝縮器と使用した際に、熱交換器の最上部の冷媒パスと最下部の冷媒パスの高低差が付いてしまう。ここで、U字伝熱管22の外径は5mm~8mmであり、これに対して段ピッチは15mm~30mmの間である。
【0052】
したがって、段ピッチを20mmとすれば、
図6の熱交換器の高さはおよそ240mmとなる。実際の高い暖房能力に対応するトップフロー型室外機の熱交換器は、段数が50段近くとなり、高さも1mを超えるものがある。
【0053】
図面では、12段の熱交換器を示しているが、実際には、段数方向(上方向)に同様の比率で冷媒パスが存在するものである。段数が50段であれば、
図6に示す従来の冷媒パスは、冷媒のパス数が25になることを意味している。
【0054】
一例として、熱交換器の最上部のパスの液側冷媒出入口25と、最下部のパスの液側冷媒出入口25との高低差が1mあったとする。そして、近年の空気調和装置で使用される冷媒として、「R410A」や「R32」といった冷媒があるが、これらの2.2MPa、35℃の時の液密度は、「R410A」が1006kg/m3、「R32が」917kg/m3であることから、密度の軽い「R32」冷媒であっても、少なくとも8.9kPaの液ヘッドが、熱交換器の下部側の液側冷媒出入口25に作用することになる。熱交換器を凝縮器として使用した場合に、ガスヘッダと液冷媒分配器との間の圧力損失は、 10kPa程度となることが多い。
【0055】
したがって、液ヘッドのかからない上部の冷媒パスは、冷媒の圧力損失のみで10kPaの圧力差を生じるが、液ヘッドがかかる下部の冷媒パスは、冷媒流動の圧力損失に、液ヘッドを加えた値が10kPaとなっている必要がある。
【0056】
つまり、液ヘッドがかかる冷媒パスは、その分だけ冷媒循環量が減り、冷媒流動の圧力損失が小さくなることで釣り合いをとるようになる。ましてや、より高さのある熱交換器に置いては、液ヘッドだけで10kPaを超えてしまい、ほぼ冷媒が流れないような状態も生じる。冷媒が流れないことは、その冷媒パスにおいて熱交換が行われないことを意味し、伝熱面積が有効に使えない分だけ性能が低下することとなる。
【0057】
また
図1に示すように、熱交換器の高さが高いトップフロー型室外機においては、熱交換器に流れ込む空気の風速が上部と下部とで異なる。つまり室外送風ファンに近い熱交換器の上側では風速が速く、室外送風ファンから遠くなる熱交換器の下側では風速が遅いことが知られている。
【0058】
このため、風速の速い上部では熱交換量が多くなるため多くの冷媒を流し、風速の遅い下部では熱交換冷媒量を少なくする必要がある。
図6に示す従来の冷媒パスでは、液側冷媒出入口25と、これと接続される液冷媒分配器との間に、長さの異なる細径管を設け、特に蒸発器として使用する場合の各冷媒パスへ流す冷媒量を調整していた。
【0059】
しかしながら、この細径管はすべての冷媒パスに必要であり、また冷媒流量を少なくしたい冷媒パスには、1m以上の細径管が必要な場合があり、製造コストが増加する要因ともなる。加えて、この細径管による冷媒量調整の設計には、気液二層流の正確な圧力損失を把握する必要があり、設計が困難であった。
【0060】
一方で、高い暖房能力がさほど必要でない機種では、
図7に示すような冷媒パスが採用されてきた。つまり、特許文献1に類似した冷媒パスの構成で、熱交換器を上部と下部に分け、暖房運転時に下部側熱交換器に流入した冷媒が、パス接続管26を通過し、上部側熱交換器を流れてガスヘッダに流出する構成となっている。
【0061】
このような構成では、冷房運転時に室外熱交換器を凝縮器として使用するときに、液側冷媒出入口25のパス数を少なくできる。液側冷媒出入口25のパス数を少なくできると、冷媒の凝縮が進んで液相が増加した2相流は、流速が遅くなりやすいが、これを抑制することができる。少なくとも冷媒パス数が多いものに比べて、冷媒パス数が少ないものは、冷媒の流速を上げることができるため、冷媒側の熱伝達率が高くなりやすくサブクールが取りやすくなる。
【0062】
また上述したように、熱交換器の上部ほど風速が速く、下部ほど風速が遅いことが知られている。
図7に示したような熱交換器を上部側熱交換器と下部側熱交換器に分け、冷媒が上下両方の熱交換器を通過できるようにすると、各冷媒パスの熱交換量の差が小さくなる。
【0063】
図6に示した冷媒パスでは風速の遅い下部側熱交換器と風速の速い上部側熱交換器の冷媒パスで、熱交換量に大きな差が生じたが、
図7の冷媒パスの構成では、1つの冷媒パスが風速の遅い下部側熱交換器と、風速の速い上部側熱交換器の両方を通過するため、冷媒パスの合計風量に冷媒パス毎の差が少なくなる。このため、冷媒の分配調整が容易となるため、細径管を設けるといった分配調整にかかる製造コストを抑えることができる。
【0064】
しかしながら、
図7に示した冷媒パスの構成では、熱交換器の全体の冷媒パス数を
図6に示した冷媒パス数と比べて多くできず、特に暖房運転時の暖房能力が向上できないものである。
【実施例1】
【0065】
このような背景から、本発明の第1の実施形態では、熱交換器を蒸発器と使用するときの圧力損失を低減し、熱交換器の風速分布と熱交換器の高さに伴う液ヘッドの影響がある中で、高い暖房能力、及び冷房性能の向上を低コストで実現することができる空気調和装置の室外機を提供することを目的としている。
【0066】
図8には、本実施形態で使用する熱交換器の構造について示している。本実施形態では、熱交換器の風上側の第1列熱交換部28は、U字伝熱管22が段方向(高さ方向)に並んで配置されており、風下側の第2列熱交換部29と第3列熱交換部30では、U字伝熱管22が第2列熱交換部29と第3列熱交換部30を跨ぐように配置されている。U字伝熱管22は、U字状に折り曲げられており、熱交換器12の空気の流れと平行な一方の面に折れ曲がり部22Bが露出し、熱交換器12の空気の流れと平行な他方の面に冷媒が流入/流出する端部22Eが露出している。
【0067】
図9は、本実施形態の冷媒パスの構成を示したものである。熱交換器12は、上部側熱交換器12Uと下部側熱交換器12Bとから構成されており、上部側熱交換器12Uの方が、下部側熱交換器12Bに比べて段数が多く設定されている。第3列熱交換部30の段数でみると、2倍の段数に構成されている。また、U字伝熱管22で形成される冷媒パスは、空気の流れ方向で見て千鳥配列とされており、伝熱管同志の間隔を広くでき、空気流が 加速されることもなくなり、空気流の圧力損失を小さくできる構成とされている。
【0068】
本実施形態の熱交換器を暖房運転、つまり蒸発器として使用するときには、先ず膨張弁を経た2相流は、液冷媒分配器を経由して分配され、その後に僅かだが分配量調整用の細径管を通過し、
図9では2個所の液側冷媒出入口25に流入する。
【0069】
2個所から流入した冷媒は、第1列熱交換部28の夫々のU字伝熱管を上昇し、その風下であって、第2列熱交換部29と第3列熱交換部30に跨って配置された2本の列跨ぎU字伝熱管に分配されて流入する。この第1列熱交換部28から第2列熱交換部29に分岐される際には、三又ジョイント23(
図10参照)を用いて分岐される。
【0070】
そして、2個所から流入した冷媒は、下部側熱交換器12Bの第2列熱交換部29、及び第3列熱交換部30の4個の冷媒パスを流れて通過する。この4個の冷媒パスは、夫々のパス接続管26を通って、上部側熱交換器12Uに至る。
【0071】
次に、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28の4個の冷媒パスを通過した冷媒は、第1列熱交換部28と第2列熱交換部29の間で、再び三又ジョイント23(
図10参照)にて2分岐された8個の冷媒パスを流れる。そして、最終的に上部側熱交換器12Uの第3列熱交換部30の8段からガスヘッダ24へガス化した冷媒が8つの冷媒パスで流入する。
【0072】
尚、下部側熱交換器12Bにおける液冷媒分配器との接続部(液側冷媒出入口25)は、第1列熱交換部28の段方向に配置されたU字伝熱管の重力方向で下側の端部である。これによって、蒸発器として機能する場合は、液側冷媒出入口25から流入した冷媒は、同じU字伝熱管の上の段に上昇して流れるようになる。一方、凝縮器として機能する場合は、逆の流れとなる。
【0073】
図10には、
図9で示した冷媒パス配管を組んだ熱交換器の斜視図を示している。冷媒パス配管は、U字伝熱管22、三又ジョイント23、ガスヘッダ24、パス接続管26等で構成されている。また、U字伝熱管22、三又ジョイント23、パス接続管26は円管状に形成されたものであり、これによって、熱交換器を蒸発器と使用するときの圧力損失を低減するようにしている。
【0074】
ここで、三又ジョイント23、ガスヘッダ24、液側冷媒出入口25であるU字伝熱管22の端部22E、パス接続管26は、熱交換器の空気の流れと平行な面の一方側に集約して配置され、熱交換器の空気の流れと平行な面の他方側には、U字伝熱管22のU字状の折れ曲がり部22Bが配置されている。
【0075】
図9に示すように、段方向にU字伝熱管22を並べた第1列熱交換部28と、列跨ぎU字伝熱管22を段方向に並べた第2列熱交換部29と第3列熱交換部30を組み合わせることで、第1列熱交換部28から第2列熱交換部29に冷媒を流す際に、三又ジョイント23を用いるだけで容易に冷媒パスを分割して増加させることができる。
【0076】
更に、熱交換器を上部側熱交換器12Uと下部側熱交換器12Bに分け、冷媒が夫々の熱交換器を通過することから、第1列熱交換部28から第2列熱交換部29への2分岐にするだけで、液側冷媒出入口25で1つの冷媒パスだったものを、ガスヘッダ24に流出するまでに4つの冷媒パスにまで容易に増やすことができる。
【0077】
加えて、パス接続管26を用いて、下部側熱交換器12Bの冷媒パスから上部側熱交換器12Uの冷媒パスへ冷媒を移動させる途中でも三又ジョイント23を用いることで冷媒を分岐することができる。このため三又ジョイント23を使用するだけで様々な冷媒パスを構成することが。これについては、第2の実施形態、第3の実施形態で詳細に説明する。
【0078】
三又ジョイント23は、接続する3つのU字伝熱管22の端部の位置で構造を変える必要があるものの、冷媒パス側の流入口を工夫することで、共通化も容易である。つまり同じ形状の三又ジョイント23だけで冷媒パスを構成することも可能である。これによって、異なった形状の三又ジョイントを新たに準備する必要がなく、部品コストを低減することが可能である。
【0079】
図9に示した本実施形態の冷媒パスでは、ガスヘッダ24は、上部側熱交換器12Uの第3列熱交換部30の2/3の段数の全てのU字伝熱管22と接続されている。一方、液冷媒分配器の液側冷媒出入口25は、下部側熱交換器12Bの第1列熱交換部28の1/3の段数の全てのU字伝熱管22と接続されている。
【0080】
これによって、
図9のガスヘッダ24と接続する冷媒パス数を8個の冷媒パス数としているが、これは
図6に示す従来の熱交換器における6個の冷媒パス(最大冷媒パス数)よりも多くなっている。このため熱交換器を蒸発器として使用した際の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0081】
ガスヘッダへ流れる冷媒パス数を、
図6の従来の冷媒パスでは最大でも全段数/2までしか増やせなかったが、本実施形態では、熱交換器を上部側熱交換器と下部側熱交換器に分けた上で、冷媒パス数を上部側熱交換器の段数と同じ数まで増やすことができる。
【0082】
また
図6に示すような従来の冷媒パスの構成では、例えば熱交換器を蒸発器として使用した際には、第1列熱交換部28に入った冷媒を、第2列熱交換部29のU字伝熱管と、第3列熱交換部30のU字伝熱管に均等に分配してしまうと、第2列熱交換部29より第3列熱交換部30の熱交換量は小さいので、第3列熱交換部30に流した冷媒が蒸発しきらないようなことが考えられる。
【0083】
これに対して、本実施形態のような風下2列の熱交換部を跨ぐU字伝熱管22を、段方向に並べる分には2本のU字伝熱管22の熱交換量に大きな差は生じない。つまり、第1列熱交換部28に入った冷媒を、風下の2つの列跨ぎのU字伝熱管22に均等に流しても、性能低下につながらない。
【0084】
加えて、本実施形態の冷媒パスでは、冷媒が上部側熱交換器12Uと下部側熱交換器12Bの両方を通過するため、
図7で示した冷媒パスと同様の効果が得られる。つまり風速分布に伴う、冷媒量の分配調整や、調整用の圧損体の設計、調整不足による性能低下も考慮する必要がない。
【0085】
また、本実施形態では、冷房運転で熱交換器を凝縮器として使用するときには、ガスヘッダ24から流入した冷媒ガスは、上部側熱交換器12U(熱交換器12の上側である2/3の領域)に設けられた冷媒パスを風下側から風上側へ通過した後に、下部側熱交換器12B(熱交換器12の下側である1/3の領域)に設けたサブクール領域を風下側から風上側へ通過する。この下部側熱交換器12Bの領域に設けられた冷媒パスの液側冷媒出入口25と液冷媒分配器とが接続されるため、この液側出入口25のヘッド差を小さくできる。
【0086】
また、上部側熱交換器12Uに設けた冷媒パスから、下部側熱交換器12Bに設けた冷媒パスに冷媒を流すときに、冷媒パスを集約して冷媒パス数を減らすことから、液側での冷媒流速を向上することができるため、液冷媒の冷却性能が高くなる。
【0087】
空気調和装置においては、冷房運転では凝縮器の出口にて冷媒のサブクール度を高めることが性能向上につながる。したがって、下部側熱交換器12Bにサブクール領域を設けることで、ヘッド差の解消だけでなく熱交換器としての性能も向上できる。
【0088】
図9では、12段の熱交換器を用いて本実施形態を説明しているが、実際には段ピッチを20mmとして、60段の熱交換器を採用したとする。このとき熱交換器の高さは約1.2mになる。同一の比率であるので上部側熱交換器12Uは40段であり、ガスヘッダ24との接続パス数も40となる。同様に、下部側熱交換器12Bは20段であり、液側冷媒出入口25は10箇所となる。尚、本実施形態で使用する熱交換器12においては、上部側熱交換器12Uと下部側熱交換器12Bは、熱交換器12が設置される底部設置板18の設置面に対して高さ方向に並べて形成されており、上部側熱交換器12Uと下部側熱交換器12Bを合わせた高さ方向の長さは、好ましくは1m以上である。
【0089】
これを暖房運転における蒸発器として使用した場合に考えると、膨張弁と液冷媒分配器を通過して10個所に分割された冷媒が、10箇所の液側冷媒出入口25に流入する。10個の冷媒パスで下部側熱交換器12Bの第1列熱交換部28を通過した冷媒は、第2列熱交換部29に至るところで、三又ジョイント23によって各冷媒パスが2分岐されるため、下部側熱交換器12Bの風下側の2列の熱交換部29、30を20個の冷媒パスで通過する。
【0090】
そして、20個のパス接続管26を通過した冷媒は、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28を20個の冷媒パスで通過する。更に上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28から第2列熱交換部29に至るときに、冷媒パスは三又ジョイント23にて更に2分岐され、冷媒は、上部側熱交換器の風下2列の熱交換部29、30を40個の冷媒パスで通過する。そして40個の冷媒パスはガスヘッダ24と接続されているので、冷媒はガスヘッダで合流された後で四方弁へと流れる。
【0091】
上記のような本実施形態によれば、円管のU字伝熱管を用いた熱交換器において、ガス側の冷媒パス数を確保しながら、冷媒パスを上部側熱交換器と下部側熱交換器の2段構成とすることができる。
【0092】
これによって、夫々の冷媒パス毎の風速分布の影響を小さくできるため、分配調整のためのコストを低減できる。また、トップフロー型の高さのある熱交換器であっても、液側冷媒出入口を下部側熱交換器に集めるため、凝縮器として使用する時に液ヘッド差を小さくすることができ冷房性能を向上することができる。
【0093】
加えて、下部側熱交換器の冷媒パス数を少なくすることができるので、凝縮器と使用した際にサブクールが取りやすく冷房能性を向上することができる。また、第1列熱交換部から第2列熱交換部に冷媒を流す際に、三又ジョイントを使用することで冷媒を2分岐しやすい。更に、上部側熱交換器、下部側熱交換器の第1列熱交換部と第2列熱交換部に三又ジョイントを用いるだけで、ガスヘッダに接続する冷媒パス数を、液側冷媒出入口の冷媒パス数の4倍にすることが容易である。
【0094】
また、三又ジョイントは、3分岐以上の分配器、または分配ジョイントに比べて安価に作れるため、三又ジョイントのみで冷媒パスを構成できることはコスト低減につながる。
【0095】
また、本実施形態では、最下段の風速の遅い冷媒パスを最上段の風速の速い冷媒パスに接続するようにしている。これによって一つの冷媒パスが熱交換器の下部と上部で受ける風量を比較的均一とすることができる。これによって、とくに蒸発器として使用する場合に、冷媒パスごとの冷媒分配量を比較的均一として暖房性能が向上できるようになる。
【0096】
つまり、従来の冷媒パスにおいては、風速分布に合わせるように冷媒の分配量を調整する必要があり、液冷媒分配器と液側冷媒パスとの間に細径管を設け、その長さ等で分配量を調整していた。このため、冷媒循環量毎に常に最適な分配比率に調整することは困難であった。しかしながら、この分配比がほぼ均一に調整できれば、細径管による冷媒パス毎の調整は不要であり、冷媒循環量が変わっても最適に近い性能を提供できる。
【0097】
本実施形態によれば、円管を用いた熱交換器において、熱交換器の風速分布と熱交換器の高さに伴う液ヘッドの影響がある中で、高い暖房能力、及び冷房性能の向上を低コストで実現することができる。
【実施例2】
【0098】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、本実施形態の冷媒パスを示したものである。第1の実施形態では下部側熱交換器12Bにおいて、三又ジョイント23を使って冷媒パス数を増加しているが、本実施形態では下部側熱交換器12Bにおいて三又ジョイント23によるパス数の増加を行わず、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28の手前で、三又ジョイント23によって2分岐させて冷媒パス数を増加した構成を提案している。
【0099】
図11において、暖房運転で熱交換器を蒸発器として使用するときには、下部側熱交換器12Bの第1列熱交換部28のU字伝熱管に入った冷媒は、つぎに、その第1列熱交換部28のU字伝熱管の風下の第2列熱交換部29の2つの列跨ぎU字伝熱管に流入する。その後、列跨ぎU字伝熱管を介して第3列熱交換部30からの冷媒は、パス接続管26を通って上部側熱交換器12Uの側に流れる。
【0100】
冷媒パスは、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28に流入する直前で、三又ジョイント23によって2分岐されてその数が増加され、更に第1列熱交換部28を通過した後で、第2列熱交換部29に流入する直前で再び三又ジョイント23によって2分岐されて、冷媒パス数が増加される構成となっている。
【0101】
一方、冷房運転で熱交換器を凝縮器として使用するときには、上述の蒸発器で説明した冷媒の流れとは逆の流れとなる。つまりガスヘッダから8個の冷媒パス数で上部側熱交換器12Uに流入したガス冷媒は、上部側熱交換器12Uの風下側の2列の熱交換部29、30を通過した後に、三又ジョイント23によって4個の冷媒パスとなった上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28を通過する。
【0102】
更に、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28を通過した冷媒は、再び三又ジョイント23によって2個となった冷媒パスを通って2本のパス接続管26によって下部側熱交換器12Bへ流入する。下部側熱交換器では、冷媒は2個の冷媒パスを通って液側冷媒出口25から液冷媒分配器へ流出する。
【0103】
このように下部側熱交換器12B内を全て液側冷媒出入口と同じ数の冷媒パス数とすることで、冷媒の流速の早い領域が広がるため、サブクールがより取りやすくなる。したがって、このように下部側熱交換器で冷媒パス数を増やさないことで、冷房能力の向上を図ることが可能である。
【実施例3】
【0104】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。
図12は、本実施形態の冷媒パスを示したものである。第1の実施形態では下部側熱交換器12Bにおいて三又ジョイント23を使って冷媒パス数を増加しているが、本実施形態では下部側熱交換器12Bにおいて三又ジョイント23による冷媒パス数の増加を行った後に冷媒パス数を元に戻し、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28の手前で、三又ジョイント23によって2分岐させて冷媒パス数を増加した構成を提案している。
【0105】
図12において、暖房運転で熱交換器を蒸発器として使用するときには、まず膨張弁を経た冷媒の2相流は液冷媒分配器を経由して分配され、その後、僅かだが分配量調整用の細径管を通過し、2箇所の液側冷媒出入口25に流入する。
【0106】
2個所の液側冷媒出入口25から入った冷媒は、第1列熱交換部28のU字伝熱管を上昇し、その直ぐ風下に位置する第2列熱交換部29と第3列熱行幹部30に跨って配置された2個の列跨ぎU字伝熱管に分配されて流入する。この第1列熱交換部28から第2列熱交換部29に分岐される際には、すでに説明したように三又ジョイント23を用いて分岐される。
【0107】
そして、第3列熱交換部30を通過した冷媒は、その後に再び三又ジョイント23によって合流された一つの冷媒パスに流入し、パス接続管26を通って上部側熱交換器12Uに至る。そして、上部側熱交換器の第1列熱交換部28に流入する前に、三又ジョイント23によって再び冷媒パスは2分岐され、この2分岐された冷媒パスを通って冷媒は上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28に流入する。
【0108】
更に、上部側熱交換器12Uの第1列熱交換部28と第2列熱交換部20の間で三又ジョイント23によって冷媒パスは2分岐されて増加する。そして、最終的に上部側熱交換器12Uの第3列熱交換部30の8個(全段)の冷媒パスからガスヘッダ24へガス化した冷媒が流入する。
【0109】
このような構成を採用することで、途中のパス接続管の本数が、第1の実施形態で示した冷媒パスの場合と比べて半分の2本とすることができるので、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0110】
また、本実施形態では、下部側の風速の遅い冷媒パスを上部側の風速の速い冷媒パスに接続するようにしている。これによって一つの冷媒パスが熱交換器の下部と上部で受ける風量を比較的均一とすることができる。これによって、とくに蒸発器として使用する場合に、冷媒パスごとの冷媒分配量を比較的均一として暖房性能が向上できるようになる。
【0111】
つまり、従来の冷媒パスにおいては、風速分布に合わせるように冷媒の分配量を調整する必要があり、液冷媒分配器と液側冷媒パスとの間に細径管を設け、その長さ等で分配量を調整していた。このため、冷媒循環量毎に常に最適な分配比率に調整することは困難であった。しかしながら、この分配比がほぼ均一に調整できれば、細径管による冷媒パス毎の調整は不要であり、冷媒循環量が変わっても最適に近い性能を提供できる。
【0112】
また本実施形態では、下部側熱交換器の液側冷媒出口は、第1列熱交換部のU字伝熱管の重力方向で下側としている。これは、冷房運転で熱交換器を凝縮器として使用したときに、少しでも重力の作用で伝熱管内の液冷媒の排水性を高め、冷房性能の向上を図るために有効である。
【0113】
以上に説明した第1の実施形態~第3の実施形態においては、好ましくは、下部側熱交換器12Bの液冷媒分配器と接続されるU字伝熱管による冷媒パス数(例えば、2個の冷媒パス数)に対して、上部側熱交換器12Uのガスヘッダ24と接続されるU字伝熱管による冷媒パス数(例えば、8個の冷媒パス数)が4倍となっている。これによって、上述したように暖房能力と冷房性能の向上を図ることができる。
【0114】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0115】
9…冷媒配管、10…圧縮機、11…冷媒タンク、12…熱交換器、12B…下部側熱交換器、12U…上部側熱交換器、13…室外送風ファン、14…アキュムレータ、15…前面パネル、16…ベルマウス、17…制御盤、18…底部設置板、19…四方弁、20…室外膨張弁、21…熱交換フィン、22…U字伝熱管、22B…折れ曲がり部、22E…端部、23…三又ジョイント、24…ガスヘッダ、25…液側冷媒出入口、26…パス接続管、28…第1列熱交換部、29…第2列熱交換部、30…第3列熱交換部、100…室外機、101…液側接続管、102…ガス側接続管、103…室内機、104…室内熱交換器、105…室内ファン、106…室内膨張弁、300…居室。