(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】コールドチェーンシステム及びコールドチェーンシステムに於ける保冷庫の冷気環境状態報知方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0832 20230101AFI20231030BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20231030BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G06Q10/0832
F25D3/00 A
F25D11/00 101D
(21)【出願番号】P 2021127861
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】521343954
【氏名又は名称】日野 弘
(73)【特許権者】
【識別番号】521343471
【氏名又は名称】小林 仁
(73)【特許権者】
【識別番号】521343965
【氏名又は名称】村上 真生
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】日野 弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 真生
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040466(JP,A)
【文献】特開2018-136705(JP,A)
【文献】特開2020-109347(JP,A)
【文献】特開2002-108951(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2277806(KR,B1)
【文献】特開2017-186035(JP,A)
【文献】特開2019-086220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
F25D 3/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷剤が設置され保冷車に搭載された保冷庫内部の冷気環境状態を温度により検知するとともに当該保冷庫外部の周辺温度を検知してこれら検知結果を検知情報としてネットワークを介して外部へ送出する保冷状態検知機構端末と、
上記ネットワークに接続しこの保冷状態検知機構端末から送出されてくる検知情報及び上記保冷庫内に収納される被保冷物の特性情報に基づいて当該保冷庫内に関する冷気残存可能時間情報を導出して当該ネットワークを介して外部へ送出する保冷管理サーバと、
この保冷管理サーバが上記冷気残存可能時間情報を導出する際に参照され、保冷剤の種類別に被保冷物に関する冷気の状態推移情報を格納するデータベース部と、
上記保冷車に搭載され、上記ネットワークに接続し上記保冷管理サーバから送出されてくる冷気残存可能時間情報を受信し、当該冷気残存可能時間情報を報知する報知部を内設するドライバー端末とを具備
し、
上記保冷管理サーバは、
上記保冷剤の種類を認識する保冷剤情報認識部を有し、
この保冷剤情報認識部による認識情報、上記検知情報及び上記被保冷物の特性情報に基づいて上記保冷庫に関する冷気残存可能時間情報を導出して上記ネットワークを介して送出するよう機能構成したことを特徴とするコールドチェーンシステム。
【請求項2】
上記保冷管理サーバは、上記導出した冷気残存可能時間情報が予め設定された閾値に達すると警告情報として上記ネットワークを介して送出するよう機能構成され、
上記報知部は、上記ネットワークを介して送出されてくる警告情報を受信すると、当該警告情報を報知するよう機能構成されたことを特徴とする請求項
1記載のコールドチェーンシステム。
【請求項3】
保冷庫に於ける保冷剤による冷気の状態推移情報を格納するデータベース部を接続する保冷管理サーバと、
保冷車に搭載され設置された保冷材の冷気による保冷庫内部の冷気環境状態を温度により検知するとともに当該保冷庫外部の周辺温度を検知してこれら検知結果を検知情報として送出する保冷状態検知機構端末と、
上記保冷車に搭載され上記保冷管理サーバから送出されてくる情報を受信可能なドライバー端末とがネットワークを介して接続されるコールドチェーンシステムに於いて、
上記保冷管理サーバは、上記保冷剤の種類及び当該保冷剤の保冷対象となる被保冷物の特性及び上記保冷庫の収納可能容積を認識し、これら認識した情報及び上記ネットワークを介して送出されてくる上記検知情報に基づき上記データベース部を参照して上記被保冷物に関する上記保冷庫内部の冷気残存可能時間情報を導出し、
さらに上記保冷管理サーバは、この導出された冷気残存可能時間情報が予め設定された閾値に達したと判断すると、警告情報として上記ネットワーク上に送出し、
上記ドライバー端末は、上記ネットワーク上に送出されたこの警告情報を受信すると当該警告情報を報知するようにしたことを特徴とするコールドチェーンシステムに於ける保冷庫の冷気環境状態報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温管理が求められる生鮮食品や冷凍食品或いは医薬品等を生産・製造、輸送及び消費・使用の過程で途切れることなく所定の低温度を維持して輸送可能とするコールドチェーンシステム及びコールドチェーンシステムに於ける保冷庫の冷気環境状態報知方法、特に保冷車に搭載され保冷剤のみにより保冷庫内を低温度に維持して輸送可能とするコールドチェーンシステム及びコールドチェーンシステムに於ける保冷庫の冷気環境状態報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生鮮食品や冷凍食品或いは医薬品や電子部品等を生産地・製造地から消費地・使用地まで、一定の温度で管理して、即ち一貫して低温、冷蔵または冷凍の状態を維持しての低温流通体系の種々の輸送技術が提案されてきている。所謂コールドチェーンと称される流通体系にあっては、特に、流通の各段階を途切れることなく一定の温度を保つためには、生産・製造・加工施設や小売店舗等に於ける温度管理のみならず、保管倉庫や輸送用トラック・コンテナ等も一定の温度で管理することが極めて重要である。
【0003】
下記特許文献1には、車両の温湿度測定記録をパソコンに後でデータ伝送するのではなく、温湿度測定記録器と車載端末を接続し、通信ネットワークを介して遠隔場所にある管理パソコンと双方向通信方法をもってリアルタイムに車両の温度状態を把握し、温湿度異常を検知する温湿度遠隔監視管理方法が開示されている。従来の温湿度測定記録器では、例えば運送や配達作業に於いて、全ての作業が終了しセンターに帰車してから管理パソコンに専用の伝送機器を介してデータをパソコンに送るため、異常温度も含め全て後認識となってしまう虞があった。しかし、この特許文献1にあっては、パケット網や通信衛星を使用した双方向リアルタイム管理としたので、異常時に直ぐに何等かの対応をとれるようにしたものである。
【0004】
下記特許文献2には、荷物の量や扉の開閉等に伴う冷気の放出による蓄冷材の冷気の消費から蓄冷材の補充時期を判断して報知する蓄冷材量管理方法が開示されている。このものにあっては、蓄冷材で保冷する車載保冷庫内の温度をコンピュータが監視し、輸送時間に応じて車載保冷庫内の温度が必要な輸送温度を保てるか否かをコンピュータが判断し、適切な輸送温度を保てないと判断した場合には、蓄冷材の補充を配達員に促すようにコンピュータが報知するようにしたものである。
【0005】
下記特許文献3には、輸送ボックスから電磁波を漏洩させることなく、保冷容器の内部温度をリアルタイムに監視する技術が開示されている。このものにあっては、収容物を金属層で囲む保冷容器及び輸送ボックスを用い、輸送ボックスに複数の保冷容器を収容して輸送する保冷輸送用の温度監視システムに於いて、周辺温度を測定し、測定した温度データ信号を長波帯または超長波帯の電磁波を伝送媒体として送信する複数の温度測定装置と、これらの温度測定装置が送信した温度データ信号を受信する温度監視装置とを設けて、温度測定装置及び被保冷物が収容された複数の保冷容器を輸送ボックスに収容し、輸送ボックス内に配置した温度監視装置によって、輸送中に於ける各保冷容器の内部温度を監視するようにしたものである。
【0006】
下記特許文献4には、既存の携帯端末を用いて確実なモニターを可能とし、保冷室や保冷庫内の商品の品質保証を的確に実現する温度検知システムが開示されている。このものにあっては、ユーザが携帯する携帯端末と、保冷車の保冷庫内或いは保冷倉庫の保冷室内に載置される温度センサユニットとを備えた温度検知システムに於いて、温度センサユニット側の無線通信部が携帯端末からのリクエスト信号を所定時間以上受信していない場合には、ストレージモードに移行して温度データの測定及び記録のみを行うよう制御するようにしたものである。
【0007】
下記特許文献5には、配送の対象となる保温保冷容器の内部温度を管理するための技術、及び管理すべき温度が異なる複数の保温保冷容器を輸送する場合に、夫々に対して温度調整を適切に行う技術が開示されている。このものにあっては、販売業者側が輸送機関により運送すべき商品の種類及び商品を保持すべき許容温度の情報を取得し、種類及び許容温度に基づき商品を収容する保温保冷容器内に設置すべき温度調整材の個数を決定し、この決定した温度調整材の個数に関する情報を含む帳票データを配送業者または宅配業者側へ送信し、配送業者または宅配業者側はこの帳票データを受信・出力するようにしたものである。加えて、商品の種類及び許容温度毎に必要な温度調整材の個数を定めたテーブル情報を参照することにより、種類及び許容温度に基づき温度調整材の個数を決定することを特徴としたものである。
【0008】
下記特許文献6には、冷凍車両の保冷庫の扉が適切ではない状況で開いたときに冷凍機の運転強度を上昇させる冷凍車両の制御装置に関する技術が開示されている。このものにあっては、冷凍車両の運転手が意識しない状況で保冷庫の扉が開いた場合でも、保冷庫を適切な温度に保つことができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-235271号公報
【文献】特開2002-267315号公報
【文献】特開2006-11585号公報
【文献】特許第6211663号公報
【文献】再公表特許第2018-155408号公報
【文献】特開2021-60144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近時、例えば水揚げ時の鮮度を保持した状態での輸送や閾値を超えてしまうと使用不可となるワクチンの輸送等、厳格に低温管理された輸送が求められてきており、その需要は増加の一途を辿るものである。
【0011】
斯様な状況下にあっては、輸送車両自体で温度を下げることができ任意の温度を維持することが可能な冷蔵車や冷凍車が好適ではある。しかしながら、経済面やメンテナンス面では少なくはない負荷を強いられるものである。また、車両自体の大型化や重量化は否めないものでもある。さらには、コンプレッサー等を稼働させることによる二酸化炭素の排出量増加の懸念もある。
【0012】
他方、輸送車両自体で温度を下げる機能を有さない保冷車にあっては、経済面やメンテナンス面での負荷は少なく、冷蔵車や冷凍車に比べて優位ではある。しかし、低温状態を保持した長距離輸送には好適ではないものと考えられてきている。
【0013】
特許文献1に開示されたものは、パケット網や通信衛星を使用した双方向リアルタイム管理ではあるが、大規模な設備となり、また輸送コストにも影響し、物理的にも経済的にも大きな負荷を強いられるものである。さらに、メンテナンス面での負荷も少なくはないものである。
【0014】
特許文献2に開示されたものは、輸送時間に応じて車載保冷庫内の温度が必要な輸送温度を保てるか否かを判断するようにはしているが、配送中に車載保冷庫内の蓄冷材温度のみを検出しているに過ぎないものである。保冷庫外部の温度は考慮していないため、蓄冷材が持つ時間の予測精度は高いものとは言い難く、以って被保冷物に対する精度の高い温度管理は難しいものである。
【0015】
特許文献3に開示されたものは、輸送中に於ける保冷容器内の温度と保冷容器が収納される輸送ボックスの内部温度を監視はしているが、保冷容器外の周辺温度は考慮していない。このため、保冷可能時間の予測精度は高いものとは言い難く、以って被保冷物に対する精度の高い温度管理は難しいものである。
【0016】
特許文献4に開示されたものは、保冷車の保冷庫内或いは保冷倉庫の保冷室内の温度を検知するのみであり、保冷庫外或いは保冷室外の周辺温度は全く考慮していない。このため、たとえ保冷可能時間を予測できたとしてもその精度は高いものとは言い難いものである。
【0017】
特許文献5に開示されたものは、温度センサが保温保冷容器に収容されているので、保温保冷容器内の温度を検知するのみであり、保温保冷容器外の周辺温度は全く考慮していない。このため、たとえ保冷可能時間を予測できたとしてもその精度は高いものとは言い難いものである。
【0018】
特許文献6に開示されたものは、保冷庫内の温度検知による温度管理ではないため、厳格な低温管理輸送には不向きなものである。
【0019】
持続可能な社会にあっては、二酸化炭素排出量が少ない保冷庫及び保冷剤のみによるコールドチェーンシステムは好適なものである。しかしながら、保冷時間の制限や保冷管理に難点があり、上記各特許文献他魅力ある解決策は提案されてこなかったのが実情である。
【0020】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、上述した難点・不具合を解消し、保冷剤のみにより保冷庫内を低温度に維持して特性を損なうことなく被保冷物の輸送管理を可能とするコールドチェーンシステム及びコールドチェーンシステムに於ける保冷庫の冷気環境状態報知方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、保冷庫内の低温度状況を考慮した被保冷物の最適な配送を可能とするコールドチェーンシステム及びコールドチェーンシステムに於ける保冷庫の冷気環境状態報知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記目的を達成するために以下の通りの構成とすることを特徴とする。
【0022】
(1) 保冷剤が設置され保冷車に搭載された保冷庫内部の冷気環境状態を温度により検知するとともに当該保冷庫外部の周辺温度を検知してこれら検知結果を検知情報としてネットワークを介して外部へ送出する保冷状態検知機構端末と、上記ネットワークに接続しこの保冷状態検知機構端末から送出されてくる検知情報及び上記保冷庫内に収納される被保冷物の特性情報に基づいて当該保冷庫内に関する冷気残存可能時間情報を導出して当該ネットワークを介して外部へ送出する保冷管理サーバと、この保冷管理サーバが上記冷気残存可能時間情報を導出する際に参照され保冷剤の種類別に被保冷物に関する冷気の状態推移情報を格納するデータベース部と、上記保冷車に搭載され上記ネットワークに接続し上記保冷管理サーバから送出されてくる冷気残存可能時間情報を受信し当該冷気残存可能時間情報を報知する報知部を内設するドライバー端末とを具備した構成とすることを特徴とする。
【0023】
(2) 上記(1)の構成にあって、上記保冷管理サーバは、上記保冷剤の種類を認識する保冷剤情報認識部を有し、この保冷剤情報認識部による認識情報、上記検知情報及び上記被保冷物の特性情報に基づいて上記保冷庫に関する冷気残存可能時間情報を導出して上記ネットワークを介して送出するよう機能構成したことを特徴とする。
【0024】
(3) 上記(1)または(2)の構成にあって、上記保冷管理サーバは上記導出した冷気残存可能時間情報が予め設定された閾値に達すると警告情報として上記ネットワークを介して送出するよう機能構成され、上記報知部は上記ネットワークを介して送出されてくる警告情報を受信すると当該警告情報を報知するよう機能構成されたことを特徴とする。
【0025】
(4) 保冷庫に於ける保冷剤による冷気の状態推移情報を格納するデータベース部を接続する保冷管理サーバと、保冷車に搭載され設置された保冷材の冷気による保冷庫内部の冷気環境状態を温度により検知するとともに当該保冷庫外部の周辺温度を検知してこれら検知結果を検知情報として送出する保冷状態検知機構端末と、上記保冷車に搭載され上記保冷管理サーバから送出されてくる情報を受信可能なドライバー端末とがネットワークを介して接続されるコールドチェーンシステムに於いて、
上記保冷管理サーバは、上記保冷剤の種類及び当該保冷剤の保冷対象となる被保冷物の特性及び上記保冷庫の収納可能容積を認識し、これら認識した情報及び上記ネットワークを介して送出されてくる上記検知情報に基づき上記データベース部を参照して上記被保冷物に関する上記保冷庫内部の冷気残存可能時間情報を導出し、さらに上記保冷管理サーバは、この導出された冷気残存可能時間情報が予め設定された閾値に達したと判断すると、警告情報として上記ネットワーク上に送出し、
上記ドライバー端末は、上記ネットワーク上に送出されたこの警告情報を受信すると当該警告情報を報知するようにしたことを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、保冷庫内を所定の低温度に維持・管理して被保冷物の特性を損なうことなく輸送が可能となるものである。
【0027】
また、上記構成によれば、保冷庫内の低温度状況を適宜確認可能としたので、温度特性の異なる被保冷物の輸送に際して、夫々に最適な配送を実現できるものである。
【0028】
さらに、上記構成によれば、閾値を超えると警報が発せられるので、被保冷物への悪影響阻止の対応が容易に可能となるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、保冷剤のみにより保冷庫内を所定の低温度に維持して、特性を損なうことがないよう被保冷物の輸送管理を実現できるものである。
また、本発明によれば、保冷庫内の低温度状況を考慮した被保冷物の最適な配送管理・対応を可能としたので、実用的で有用な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係わるコールドチェーンシステムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】同実施形態に係わり、保冷管理サーバの構成を概略的に示す図である。
【
図3】同実施形態に係わり、保冷状態検知機構端末の構成を概略的に示す図である。
【
図4】同実施形態に係わり、ドライバー端末の構成を概略的に示す図である。
【
図5】同実施形態に係わり、保冷庫の周辺温度、車両搭載される保冷剤・保冷庫の特性及び閾値に基づく冷気残存時間(保冷温度遷移情報)をテーブル形式にて模式的に示す図である。
【
図6】同実施形態に係わり、低温輸送時の報知・警報処理の全体の流れを示す図である。
【
図7】同実施形態に係わり、温度検知処理の流れを示す図である。
【
図8】同実施形態に係わり、解析処理の流れを示す図である。
【
図9】同実施形態に係わり、報知処理の流れを示す図である。
【
図10】同実施形態に係わり、警告処理の流れを示す図である。
【
図11】同実施形態に係わり、保冷車に搭載される保冷庫、保冷剤及び被保冷物の特性等の情報を設定する画面を模式的に示す図である。
【
図12】同実施形態に係わり、保冷車にて輸送中の保冷庫毎の冷気残存状況等が正常であることを報知する表示画面を模式的に示す図であり、(a)はドライバー端末の表示画面を示す図であり、(b)は保冷管理サーバの表示画面を示す図である。
【
図13】同実施形態に係わり、保冷車にて輸送中の保冷庫毎の冷気残存状況等が異常であることを報知・警告する表示画面を模式的に示す図であり、(a)はドライバー端末の表示画面を示す図であり、(b)は保冷管理サーバの表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明の一実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0032】
本実施形態に係わるコールドチェーンシステムは、ネットワーク(例えばパブリックネットワーク)100を介して保冷管理サーバ200、保冷車400に搭載される保冷状態検知機構端末500及びドライバー端末600が有機的に連携することにより、保冷車400に搭載され保冷剤10のみにより保冷庫20内を適切な低温度に維持・管理すべく、保冷庫20の内部及び外部の温度並びに保冷剤10の特性を考慮して被保冷物30の最適な輸送を実現したものである。
【0033】
即ち、保冷剤10が設置され保冷車400に搭載された保冷庫20の内部の冷気環境状態を温度により検知するとともに当該保冷庫20の外部の周辺温度を検知してこれら検知結果を検知情報としてネットワーク100を介して外部へ送出する保冷状態検知機構端末500と、ネットワーク100に接続し保冷状態検知機構端末500から送出されてくる検知情報及び保冷庫20内に収納される被保冷物30の温度特性情報に基づいて当該保冷庫20内に関する冷気残存可能時間情報を導出してネットワーク100を介して外部へ送出する保冷管理サーバ200と、保冷管理サーバ200が上記冷気残存可能時間情報を導出する際に参照され保冷剤10の種類別に被保冷物30に関する冷気の温度状態遷移情報を格納するデータベース部(DB)300と、保冷車400に搭載されネットワーク100に接続し保冷管理サーバ200から送出されてくる冷気残存可能時間情報を受信して当該冷気残存可能時間情報を報知する報知部640を内設するドライバー端末600とから構成されることを特徴とするものである。
【0034】
また、本コールドチェーンシステムにあっては、保冷管理サーバ200は、保冷剤30の種類を認識する保冷剤情報認識部240を有し、保冷剤情報認識部240による認識情報、保冷状態検知機構端末500からの検知情報及び被保冷物の温度特性情報に基づいて保冷庫400に関する冷気残存可能時間情報を導出してネットワーク100を介してドライバー端末400へ送出するよう機能構成したことを特徴とするものである。
なお、本実施形態では、ネットワークとしてパブリックネットワークを利用しているが、これに限らずプライベートネットワークを利用してもよく、本発明の範疇内であることは勿論である。
【0035】
さて、保冷管理サーバ200は、
図2に示すようにサーバコンピュータであり、当該サーバ200の全体の制御・処理を司る機能を有する中央制御処理部210、中央制御処理部210の管理下で入出力機能を担う入出力部220、中央制御処理部210が参照し各種情報をリード/ライト可能なメモリ230及び保冷車400に搭載される保冷剤10の種類を認識する保冷剤情報認識部240が信号線250を介して接続されたハードウェア構成からなる。而して保冷管理サーバ200は、中央制御処理部210がメモリ230に格納された所定のプログラム情報を参照して、パブリックネットワーク100を介して行われる外部との各種情報のやりとりや内部での各種処理を入出力部220を介してDB300にリード/ライト可能となるよう機能構成されている。
【0036】
なお、メモリ230は、各種作業を行うための作業領域230a、中央制御処理部210が各種制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納するプログラム情報記憶領域230b、保冷剤の種類(質量、体積及び凝固点の特性情報を含む)に関する情報を格納する保冷剤種類情報記憶領域230c、保冷庫の種類等(容積及び素材情報を含む)に関する情報を格納する保冷庫情報記憶領域230d、保冷庫内に収納される被保冷物に関する情報(温度特性情報を含む)を格納する被保冷物情報記憶領域230e、測定される保冷庫の内部温度情報を格納する保冷庫内温度情報記憶領域230f、測定される保冷庫外部の周辺温度情報を格納する保冷庫外温度情報記憶領域230g、測定または設定される外気の温度情報を格納する外気温情報記憶領域230h、保冷庫内にて所定の温度を保冷剤毎に維持可能な時間情報を格納する残存冷気維持可能情報記憶領域230i、保冷庫内の温度を報知するための閾値等の情報を格納する報知情報記憶領域230j、保冷庫の輸送ルート状況等の情報を格納する運搬ルート状況情報記憶領域230k及び保冷庫に格納され被保冷物の実際の輸送に際しての保冷庫内部の温度状況の遷移情報等を格納する学習情報記憶領域230i等の記憶領域を有する。
【0037】
保冷状態検知端末500は、例えばデータロガーと称されるものであり、
図3に示すように定期的にまたは予め設定されたタイミングで検知情報をパブリックネットワーク100上に送出する機能を有する測定情報出力部520及びこの測定情報出力部520に各種温度検知情報を送出する検知部530とから成る本体部510と、各種温度を測定可能なセンサ部540とが信号線550を介して接続されることにより構成されるものである。
【0038】
ここで、センサ部540は、保冷剤10そのものの温度を測定する機能を有する保冷剤用センサ540a、保冷庫20の内部の温度を測定する機能を有する保冷庫用センサ540b、保冷庫20に収納される被保冷物30そのものの温度を測定する機能を有する被保冷物用センサ540c、保冷庫20の外部の周辺温度を測定する機能を有する保冷庫周辺温度用センサ540d及び例えば保冷車400外部の外気温を測定する機能を有する外気温用センサ540eを有する。本実施形態に於いては、少なくとも保冷庫用センサ540b及び保冷庫周辺温度用センサ540dを利用するものとする。また、必要に応じて外気温用センサ540eも活用する。
【0039】
ドライバー端末400は、
図4に示すように、当該端末400の全体の制御・処理を司る機能を有する制御処理部610、制御処理部610の管理下で入出力機能を担う入出力部620、制御処理部610が参照し各種情報をリード/ライト可能なメモリ630及び送出されてくる冷気残存可能時間情報等を表示や音声により報知する報知部640が信号線650を介して接続されたハードウェア構成からなる。ドライバー端末400は、例えばタブレット型端末或いはスマートフォンである。
【0040】
なお、メモリ630は、各種作業を行うための作業領域630a、制御処理部610が各種制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納するプログラム情報記憶領域630b、入出力部620を介して送出されてくる冷気残存可能時間情報等の報知情報を格納する報知情報記憶領域630c及び保冷庫20の輸送ルート状況等の情報を格納する運搬ルート情報記憶領域630d等の記憶領域を有する。また、メモリ630には、本コールドチェーンシステム専用のアプリケーション・プログラムが格納されている。
【0041】
図5は、保冷管理サーバ200が冷気残存可能時間情報を導出する際に参照するテーブルの一例であり、DB300にリード/ライト可能に格納されている。このテーブルは、保冷庫20の周辺温度、車両(保冷車400)搭載される保冷剤10・保冷庫20の特性及び閾値に基づく保冷庫20内部の冷気残存時間(保冷温度遷移情報)を模式的に示すものであり、情報量としてはメモリ230に格納される情報(保冷剤種類情報、保冷庫情報、被保冷物情報、保冷庫内温度情報、保冷庫外温度情報、外気温情報、残存冷気維持可能情報)量と同等以上のものである。
【0042】
ここで、テーブルに掲載される「予測値」とは、保冷庫20に保冷剤10をセットして5時間経過時点に於ける被保冷物30に関する冷気残存時間を意味する。例えば、テープル中「3」と記された行で保冷剤Aが4枚の場合、-20℃以下を15.24時間(H)残存として予測値を5時間後に導出したということを意味するものである。
【0043】
なお、テーブルは、これに限らず保冷剤や保冷庫の種類、特性に合致・相当する他のテーブルも用意されているものである。
【0044】
また、冷気残存可能時間情報の導出はこれに限らず、他の特性や線形モデル等に基づいて保冷温度遷移情報を導出するようにしてもよいものである。例えば、保冷剤の種類及び枚数毎に於ける保冷庫の内部と外部の実測温度に基づく経時グラフの利用も本発明の範疇内である。
【0045】
さらには、このテーブルは、DB300に限定して格納する必要はなく、保冷管理サーバ200のメモリ230やクラウド型のメモリにリード/ライト可能に格納してもよいことは勿論である。
【0046】
上記構成につき、本コールドチェーンシステムの全体の作用を以下に述べる。
【0047】
保冷車400に搭載され被保冷物30及び保冷剤10が収納される保冷庫20は、少なくともその内部には保冷庫用センサ540bが設置されるとともにその外部には保冷庫周辺温度用センサ540dが設置されて、保冷状態検知機構端末500による温度検知処理が行われる。検知された温度情報は、定期的にまたは予め設定したタイミングで、ネットワーク100を介して保冷状態検知機構端末500から保冷管理サーバ200に送出される(
図6のステップS100参照)。
【0048】
すると、保冷管理サーバ200はDB300のテーブルを参照して、保冷剤10及び保冷庫20の特性並びに保冷庫20内外の実測温度(送出されてきた検知された温度情報)及び閾値を考慮した保冷庫20内部の冷気残存可能時間を導出することになる(ステップS200)。
【0049】
ここで、保冷庫20内部の実測温度が予め設定された温度以下または被保冷物30の特性を維持可能な温度以下の場合は(ステップS300のY)、実測温度と適温である旨の正常情報が保冷管理サーバ200からドライバー端末600に送出される。そして、当該情報を受信したドライバー端末600は、実測温度と適温である旨が報知部620にて報知することになる(ステップS400)。
【0050】
他方、保冷庫20内部の実測温度が予め設定された温度、被保冷物30の特性を維持可能な温度または閾値を超えた場合は(ステップS300のN)、実測温度と異常状態である旨の報知情報の一つとしての警告情報が保冷管理サーバ200からドライバー端末600に送出される。而して、当該警告情報を受信したドライバー端末600は、実測温度と異常状態である旨が報知部620にて報知・警報することになる(ステップS500)。
【0051】
なお、本実施形態では警告情報を含む報知情報の判断は、保冷管理サーバ200側にて行い、ドライバー端末400側ではその結果のみを受信して出力するよう機能構成している。しかし、ドライバー端末400側で判断(例:警報閾値と残存冷気維持可能情報の比較)が行えるように機能構成してもよいことは勿論である。
【0052】
さて、ステップS100の「温度検知処理」について、
図7を参照して詳述する。
【0053】
先ず、保冷状態検知機構端末500のセンサ部540、特に保冷庫用センサ540c及び保冷庫周辺温度用センサ540dにて保冷庫20の内部及び外部の温度検知の情報が検知部530にて取得・蓄積される(ステップS702)。
【0054】
測定情報出力部520は、所定時間毎にまたは予め設定されたタイミングにて(ステップS704のY)、検知部530に取得・蓄積された検知情報をネットワーク100を介して保冷管理サーバ200に送出することになる(ステップS706)。
【0055】
検知情報を保冷管理サーバ200が受信すると、ステップS200の「解析処理」に移行する。この解析処理について、
図8を参照して詳述する。
【0056】
保冷管理サーバ200は、先ず、保冷庫20に収納されている保冷剤10の種類及び重量を識別・認識する(ステップS802、ステップS804)。この識別・認識は、例えば保冷剤10を保冷庫20に収納時に予め保冷管理サーバ200の入出力部220またはドライバー端末600の入出力部620を介して情報が入力されているものとする。
【0057】
次に、保冷管理サーバ200は、保冷庫20の容量を認識する(ステップS806)。この認識も、例えば保冷剤10を保冷庫20に収納時に予め保冷管理サーバ200の入出力部220またはドライバー端末600の入出力部620を介して情報が入力されているものとする。
【0058】
ここで、ステップS802乃至ステップS806の処理は、表示画面上は例えば次の通りである。
ドライバー端末600の入出力部620を構成する表示画面または保冷管理サーバ200の入出力部220を構成する表示画面にて、保冷車400に搭載される保冷庫20、保冷剤10及び被保冷物30の特性等の情報が設定・入力される。即ち、
図11に示すように、保冷庫毎(タブ「保冷庫1」、タブ「保冷庫2」、タブ「保冷庫3」、…、タブ「保冷庫n」、…)に当該保冷庫の容量と素材、保冷剤の種類と枚数及び被保冷物の推奨温度と限界温度(警告値)につき、プルダウン・メニューからの選択またはマニュアル入力される。なお、この設定・入力は、これに限らずセンサ等によりAI(Artificial Intelligence)による自動識別等でもよいことは勿論である。
また、必要に応じて配送先や輸送ルートを入力することにより、保冷車400に装備されたカーナビゲーションシステムと連携して所要時間及び渋滞情報が表示されるようにしてもよい。
【0059】
続いて、保冷管理サーバ200は、受信した温度検知情報を認識する(ステップS808)。
なお、ステップS802乃至ステップS808の処理の順序は、これに限定される訳ではなく、他の順序でもよい。
【0060】
而して保冷管理サーバ200は、DB300に格納されたテーブルにアクセス・参照し(ステップS810)、識別・認識した情報及び検知情報に合致または相当する予測値を選出することになる(ステップS812)。
【0061】
ここで、予測値と実測値に差異が生じる場合、あらたな予測値を導出してテーブルに学習効果として適宜反映するようにしてもよい(ステップS814、ステップS816)。但し、本実施形態に於いては、これは必須なものではない。
【0062】
また、解析処理の結果は、即ち導出された予測値が閾値以下であるかの判断がなされる(ステップS300)。
【0063】
導出され閾値または所定温度以下の予測値(ステップS300のY)のステップS400の「報知処理」ついて、
図9を参照して詳述する。
【0064】
導出された予測値、即ち残存冷気維持可能時間情報は、ネットワーク100を介して保冷管理サーバ200からドライバー端末400に送出されることになる(ステップS902)。また、当該情報は、保管管理サーバ200のメモリ230やDB300に格納されるとともに、入出力部220に表示出力される(
図12(b)参照)。
【0065】
ドライバー端末400が残存冷気維持可能時間情報を受信すると、報知部640に当該情報が表示出力されることになる(ステップS904、
図12(a)参照)。ここで、冷気残量はテキストによるメッセージ表示とともにインジケータ表示されるので、ドライバーは容易且つ確実に視認できるものである。
【0066】
導出され閾値または所定温度を超える予測値(ステップS300のN)のステップS500の「警告処理」ついて、
図10を参照して詳述する。
【0067】
導出された予測値、即ち残存冷気維持可能時間情報は、パブリックネットワーク100を介して保冷管理サーバ200からドライバー端末400に送出されることになる(ステップS1002)。また、当該情報は、保冷管理サーバ200のメモリ230やDB300に格納されるとともに、入出力部220に表示出力される(
図13(b)参照)。
【0068】
ドライバー端末400が閾値または所定温度を超える残存冷気維持可能時間情報を受信すると、報知部640に当該警告情報が例えば赤色表示及び音声出力されて報知されることになる(ステップS1004、
図13(a)参照)。
【0069】
ここで、報知部640による警告情報の報知の際、保冷剤10の交換、推奨されるあらたな輸送ルートまたは配送順序の変更を表示出力または音声出力するようにしてもよい。
【0070】
上記実施形態によれば、保冷庫20内の低温度状況を保冷管理サーバ200及びドライバー端末600にて適宜正確に把握できるので、被保冷物30の特性を損なうことなく適切な輸送が可能となるものである。
【0071】
また、上記実施形態によれば、温度特性の異なる被保冷物30の輸送に際して、夫々に応じた保冷管理ができるので、最適な配送を実現でき、実用的にも極めて有用なものである。
【0072】
さらに、上記実施形態によれば、閾値や所定温度を超えると報知部640にて警報が発せられるので、被保冷物30への悪影響阻止の早期対応が可能となるものである。
【0073】
また、外気温用センサ540e等の他のセンサも併用すると、よりきめ細かい温度管理を実現できるものである。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
10 …保冷剤
20 …保冷庫
30 …被保冷物
100 …ネットワーク
200 …保冷管理サーバ
300 …データベース部(DB)
400 …保冷車
500 …保冷状態検知機構端末
600 …ドライバー端末
640 …報知部