(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】構築物の三次元形状データの生成方法
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20231030BHJP
G06T 17/20 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G06T17/20
(21)【出願番号】P 2019159659
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591248223
【氏名又は名称】株式会社計測リサーチコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 剣一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 知広
(72)【発明者】
【氏名】藏重 裕俊
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】生田目貴徳、外3名,“マンハッタンワールド仮説を用いたアズビルドモデリング”,2011年度精密工学会学術講演会講演論文集,公益財団法人精密工学会,2011年,セッションID: F06
【文献】Y. Furukawa, et al.,“Manhattan-world Stereo”,IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition,米国,IEEE,2009年,p.1422-1429,doi: 10.1109/CVPR.2009.5206867
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、複数の視点から撮影して得られた構築物の複数の二次元画像データから所定の方法で生成して得られた点群データ、又は、レーザスキャナで得られた点群データを用い、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を有する座標系の空間内に配置され、z軸方向に凹凸を有する
前記構築物の表面上の複数の点の各々に関し当該点の座標値を示す点データの集まりである
z軸点群データを取得するステップと、
前記コンピュータが、前記
z軸点群データが示す複数の点のうちz軸に平行な平面領域内の点を境界点として抽出するステップと、
前記コンピュータが、xy平面において前記境界点に囲まれる複数の領域を特定するステップと、
前記コンピュータが、前記複数の領域の各々に関し、前記
z軸点群データに含まれる複数の点データのうちx座標値及びy座標値が当該領域内である複数の点データのz座標値の代表値をz座標値とするxy平面に平行な平面領域を特定するステップと、
前記コンピュータが、特定した複数の前記xy平面に平行な平面領域のうち互いに隣接する2つの平面領域の外縁を2辺とする矩形のz軸に平行な平面領域を特定するステップと、
前記コンピュータが、前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表すデータを、前記構築物の三次元形状を表す三次元形状データとして生成するステップと
を備える構築物の三次元形状データの生成方法。
【請求項2】
前記座標系を第2座標系とし、前記
z軸点群データを第2座標系点群データとするとき、
前記
z軸点群データを取得するステップは、
前記コンピュータが、前記第2座標系とは異なる第1座標系で前記構築物の表面上の複数の点の各々に関し当該点の座標値を示す点データの集まりである第1座標系点群データを取得するステップと、
前記コンピュータが、前記第1座標系点群データが表す三次元形状の支配的な3軸を前記第2座標系の3軸として特定するステップと、
前記コンピュータが、前記第1座標系点群データが示す点群の座標値を前記第2座標系の座標値に変換して前記第2座標系点群データを生成するステップと
を有する
請求項1に記載の構築物の三次元形状データの生成方法。
【請求項3】
前記生成するステップは、
前記コンピュータが、前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表す前記第2座標系の座標値を前記第1座標系の座標値に変換するステップと、
前記コンピュータが、変換した前記第1座標系の座標値により前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表す三次元形状データを生成するステップと
を有する
請求項2に記載の構築物の三次元形状データの生成方法。
【請求項4】
前記複数の領域を特定するステップは、
前記コンピュータが、前記境界点を含む領域を通る線を近似する直線又は所定の特性の曲線を特定するステップと、
前記コンピュータが、特定した前記直線又は所定の特性の曲線を外縁とする複数の領域を特定するステップと
を有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構築物の三次元形状データの生成方法。
【請求項5】
コンピュータに、
複数の視点から撮影して得られた構築物の複数の二次元画像データから所定の方法で生成して得られた点群データ、又は、レーザスキャナで得られた点群データを用い、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を有する座標系の空間内に配置され、z軸方向に凹凸を有する
前記構築物の表面上の複数の点の各々に関し当該点の座標値を示す点データの集まりである
z軸点群データを取得する処理と、
前記
z軸点群データが示す複数の点のうちz軸に平行な平面領域内の点を境界点として抽出する処理と、
xy平面において前記境界点に囲まれる複数の領域を特定する処理と、
前記複数の領域の各々に関し、前記
z軸点群データに含まれる複数の点データのうちx座標値及びy座標値が当該領域内である複数の点データのz座標値の代表値をz座標値とするxy平面に平行な平面領域を特定する処理と、
特定した複数の前記xy平面に平行な平面領域のうち互いに隣接する2つの平面領域の外縁を2辺とする矩形のz軸に平行な平面領域を特定する処理と、
前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表すデータを、前記構築物の三次元形状を表す三次元形状データとして生成する処理と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物の三次元形状データを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元レーザスキャナ等のデプスセンサにより生成される構築物の三次元形状を表す三次元スキャン画像データから、多数のメッシュの集まりにより当該構築物の三次元形状を表す三次元メッシュモデルデータを生成することが行われている。三次元メッシュモデルデータは三次元スキャン画像データよりも小さいデータ量で物体の三次元形状を表すため、扱いやすい。
【0003】
三次元スキャン画像データから三次元メッシュモデルデータを生成する方法として、例えば以下の方法がある。
【0004】
まず、三次元スキャン画像データに対し局所二次多項式曲面フィッティングを反復的に行いメッシュ頂点の主曲率を算出し、算出した主曲率に基づき初期セグメンテーションを行う。
【0005】
初期セグメンテーションにおいては、各メッシュ頂点の主曲率を解析し、本来の曲面間の境界ではなく曲面上に乗っていると推定される小さな数の連結頂点の集合からなるシード領域を生成する。続いて、二次多項式曲面と二次曲面を併用したリージョングローイングを用いて領域への曲面フィッティングとシード領域への近傍頂点追加を反復的に行い、メッシュ頂点上の部分領域とそれを近似する解析曲面を抽出する。
【0006】
続いて、リージョンマージングを用いて、ユーザが指定した閾値内で領域数ができるだけ少なくなるように初期セグメンテーションで生成された初期領域を統合する。
【0007】
三次元スキャン画像データから三次元メッシュモデルデータを生成する技術を開示している文献として、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した方法によれば、構築物の形状がどのような形状であっても、その三次元形状を表す三次元メッシュモデルデータを生成することができる。ただし、上述した方法による場合、二次多項式曲面を全て探査する必要があり、多大な計算時間を要する。
【0010】
ところで、構築物の中には、互いに直交する3軸のいずれかに直交する平面領域の集まりに近似する形状のものがある。例えば、橋梁の上部工を下から見た形状は、多くの場合、その大半が、鉛直方向をz軸とし、橋梁の軸方向をx軸とし、橋梁の幅方向をy軸とする座標系の空間において、実質的にxy平面、xz平面、yz平面のいずれかに平行な複数の平面領域で構成されている。
【0011】
上記の事情に鑑み、本発明は、大半が規則的に配置された複数の平面領域で構成される構築物の三次元形状を表す三次元形状データを従来技術と比較して短時間で生成する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、コンピュータが、複数の視点から撮影して得られた構築物の複数の二次元画像データから所定の方法で生成して得られた点群データ、又は、レーザスキャナで得られた点群データを用い、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を有する座標系の空間内に配置され、z軸方向に凹凸を有する前記構築物の表面上の複数の点の各々に関し当該点の座標値を示す点データの集まりであるz軸点群データを取得するステップと、前記コンピュータが、前記z軸点群データが示す複数の点のうちz軸に平行な平面領域内の点を境界点として抽出するステップと、前記コンピュータが、xy平面において前記境界点に囲まれる複数の領域を特定するステップと、前記コンピュータが、前記複数の領域の各々に関し、前記z軸点群データに含まれる複数の点データのうちx座標値及びy座標値が当該領域内である複数の点データのz座標値の代表値をz座標値とするxy平面に平行な平面領域を特定するステップと、前記コンピュータが、特定した複数の前記xy平面に平行な平面領域のうち互いに隣接する2つの平面領域の外縁を2辺とする矩形のz軸に平行な平面領域を特定するステップと、前記コンピュータが、前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表すデータを、前記構築物の三次元形状を表す三次元形状データとして生成するステップとを備える構築物の三次元形状データの生成方法を第1の態様として提供する。
【0013】
第1の態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法によれば、大半が規則的に配置された複数の平面領域で構成される構築物の三次元形状を表す三次元形状データを従来技術と比較して短時間で生成することができる。
【0014】
また、本発明は、第1の態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法であって、前記座標系を第2座標系とし、前記z軸点群データを第2座標系点群データとするとき、前記z軸点群データを取得するステップは、前記コンピュータが、前記第2座標系とは異なる第1座標系で前記構築物の表面上の複数の点の各々に関し当該点の座標値を示す点データの集まりである第1座標系点群データを取得するステップと、前記コンピュータが、前記第1座標系点群データが表す三次元形状の支配的な3軸を前記第2座標系の3軸として特定するステップと、前記コンピュータが、前記第1座標系点群データが示す点群の座標値を前記第2座標系の座標値に変換して前記第2座標系点群データを生成するステップとを有する、という構成を第2の態様として提案する。
【0015】
第2の態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法によれば、構築物の三次元形状の支配的な3軸とは異なる3軸の座標系の座標値により当該構築物の三次元形状を表す点群データを用いて、当該構築物の三次元形状を複数の平面領域で表す三次元形状データを生成することができる。
【0016】
また、本発明は、第2の態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法であって、前記生成するステップは、前記コンピュータが、前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表す前記第2座標系の座標値を前記第1座標系の座標値に変換するステップと、前記コンピュータが、変換した前記第1座標系の座標値により前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表す三次元形状データを生成するステップとを有する、という構成を第3の態様として提案する。
【0017】
第3の態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法によれば、用いる点群データの座標系の座標値で構築物の三次元形状を表す三次元形状データを生成することができる。
【0018】
また、本発明は、第1乃至第3のいずれかの態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法であって、前記複数の領域を特定するステップは、前記コンピュータが、前記境界点を含む領域を通る線を近似する直線又は所定の特性の曲線を特定するステップと、前記コンピュータが、特定した前記直線又は所定の特性の曲線を外縁とする複数の領域を特定するステップとを有する、という構成を第4の態様として提案する。
【0019】
第4の態様に係る構築物の三次元形状データの生成方法によれば、構築物の三次元形状を構成する平面領域の境界線の形状が直線又は円や楕円等の所定の特性の曲線で構成されている場合、当該構築物の三次元形状を高い精度で表す三次元形状データを生成することができる。
【0020】
また、本発明は、コンピュータに、複数の視点から撮影して得られた構築物の複数の二次元画像データから所定の方法で生成して得られた点群データ、又は、レーザスキャナで得られた点群データを用い、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を有する座標系の空間内に配置され、z軸方向に凹凸を有する前記構築物の表面上の複数の点の各々に関し当該点の座標値を示す点データの集まりであるz軸点群データを取得する処理と、前記z軸点群データが示す複数の点のうちz軸に平行な平面領域内の点を境界点として抽出する処理と、xy平面において前記境界点に囲まれる複数の領域を特定する処理と、前記複数の領域の各々に関し、前記z軸点群データに含まれる複数の点データのうちx座標値及びy座標値が当該領域内である複数の点データのz座標値の代表値をz座標値とするxy平面に平行な平面領域を特定する処理と、特定した複数の前記xy平面に平行な平面領域のうち互いに隣接する2つの平面領域の外縁を2辺とする矩形のz軸に平行な平面領域を特定する処理と、前記xy平面に平行な平面領域と前記z軸に平行な平面領域とを表すデータを、前記構築物の三次元形状を表す三次元形状データとして生成する処理とを実行させるためのプログラムを第5の態様として提供する。
【0021】
第5の態様に係るプログラムによればコンピュータにより、大半が規則的に配置された複数の平面領域で構成される構築物の三次元形状を表す三次元形状データを従来技術と比較して短時間で生成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、大半が規則的に配置された複数の平面領域で構成される構築物の三次元形状を表す三次元形状データを従来技術と比較して短時間で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】一実施形態に係る方法の処理フローを示した図。
【
図1B】一実施形態に係る方法の処理フローを示した図。
【
図2】一実施形態に係る方法において生成される第2座標系点群データが表す画像を例示した図。
【
図3】一実施形態に係る方法において特定される境界ピクセルを表す画像を例示した図。
【
図4】一実施形態に係る方法において特定されるエッジを表す画像を例示した図。
【
図5】一実施形態に係る方法において2本のエッジを接続する処理を説明するための図。
【
図6】一実施形態に係る方法において2本のエッジを接続する処理を説明するための図。
【
図7】一実施形態に係る方法において特定されるxy平面に平行な平面領域を表す画像を例示した図。
【
図8】一実施形態に係る方法において生成される点群データと三次元簡略化モデルデータが表す三次元形状を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る構築物の三次元形状データの生成方法(以下、「方法M」という)を説明する。方法Mは、点群により構築物の三次元形状を表す三次元形状データ(以下、「点群データ」という)から、頂点、エッジ、ループ、領域を示すデータ群により構築物の三次元形状を表す三次元形状データ(以下、「三次元簡略化モデルデータ」という)を生成する方法である。
【0025】
ただし、方法Mにより有効な三次元簡略化モデルデータが生成できる構築物は、互いに直交する支配的な3軸が存在する構築物である。なお、互いに直交する支配的な3軸が存在する構築物とは、構築物の表面の大半が互いに直交する3軸のいずれか1つを法線とする複数の平面領域で構成されている構築物を意味する。
【0026】
図1A及び
図1B(以下、これらを「
図1」と呼ぶ)は、方法Mの処理フローを示した図である。
図1に示される処理はコンピュータが本実施形態に係るプログラムに従い行う。以下、三次元簡略化モデルデータの生成の対象を構築物Sとし、下から見た橋梁の上部工が構築物Sである場合を例に方法Mの処理フローを説明する。
【0027】
まず、構築物Sを複数の視点から撮影して得られる二次元画像を表す画像データを取得する(ステップS01)。続いて、SfM(Structure from Motion)により、ステップS01において取得した複数の画像データから構築物の点群データを生成する(ステップS02)。本実施形態においては、ステップS02において、法線ベクトルを持つメッシュ群を表す点群データを生成する。ステップS02で生成される点群データが表すメッシュの各々の頂点や法線ベクトルは、或る座標系(以下、「第1座標系」という)における座標値を用いて表現されている。以下、ステップS02で生成される点群データを「第1座標系点群データ」という。
【0028】
続いて、第1座標系点群データが表す三次元形状の支配的な3軸を、頂点法線ベクトルのガウシアンマッピングとRANSAC法により特定する(ステップS03)。
【0029】
以下、ステップS03において特定された3軸をx軸、y軸、z軸とする座標系を「第2座標系」と呼ぶ。第2座標系のz軸は鉛直方向の軸であり、x軸は構築物Sの軸方向(車両等の走行方向)の軸であり、y軸は構築物Sの幅方向(車両等の幅方向)の軸である。
【0030】
続いて、第1座標系点群データが示す点群の座標値を第2座標系の座標値に変換した点群データ(以下、「第2座標系点群データ」という)を生成する(ステップS04)(請求の範囲に記載の点群データを取得するステップの一例)。
図2は、第2座標系点群データが表す画像を例示した図である。
【0031】
続いて、第2座標系点群データが示す複数のメッシュの中から、法線ベクトルがxy平面との間でなす角度が所定の閾値内(実質的に平行)のメッシュを抽出する(ステップS05)(請求の範囲に記載の抽出するステップの一例)。なお、ステップS05において抽出されるメッシュは、構築物Sの表面のうちz軸に平行な平面領域内のメッシュである。以下、ステップS05において抽出されるメッシュを「境界メッシュ」と呼び、境界メッシュの頂点を「境界頂点」(請求の範囲に記載の境界点の一例)と呼ぶ。
【0032】
続いて、第2座標系点群データが示すメッシュの頂点をxy平面に投影する(ステップS06)。なお、点をxy平面に投影する、という場合、その点のz座標値をゼロ値に変更することを意味する。
【0033】
続いて、xy平面を所定サイズの所定形状の単位領域であるピクセルに分割する(ステップS07)。本実施形態においては、例として、1ピクセルは10cm四方の正方形とする。
【0034】
続いて、境界頂点を含むピクセルを抽出する(ステップS08)。以下、ステップS08において抽出されるピクセルを「境界ピクセル」と呼ぶ。
図3は、境界ピクセルを表す画像を例示した図である。なお、
図3において、境界ピクセルは白で示されている。
【0035】
続いて、境界ピクセルを対象に、領域成長法により直線状に分布するピクセル群を1塊とするセグメンテーションを行う(ステップS09)。続いて、セグメンテーションされたピクセル群にフィットする直線(線分)を特定する(ステップS10)。なお、ステップS10において特定される直線は、セグメンテーションされたピクセル群(境界頂点を含む領域)を通る線を近似する直線である。以下、ステップS10において特定される線分を「エッジ」(請求の範囲に記載の外縁の一例)と呼ぶ。エッジの両端が三次元簡略化モデルにおける頂点となる。
図4は、エッジを表す画像を例示した図である。
【0036】
続いて、不連続なエッジ間の接続処理を行う(ステップS11)。具体的には、以下の2つのパターンに関して、エッジ間の接続処理を行う。
【0037】
(パターン1)
図5(a)に示すように、隣接する2本のエッジの端点間の距離が所定の閾値以内である場合、2本のエッジの各々を延長して交点を特定し、その交点を2本のエッジに共通の新たな頂点とする(
図5(b))。
【0038】
(パターン2)
図6(a)に示すように、隣接する2本のエッジの一方の端点と他方のエッジとの距離が所定の閾値以内である場合、一方のエッジを延長して交点を特定し、その交点を延長したエッジの新たな頂点とするとともに、他方のエッジをその交点で2本のエッジに分割する(
図6(b))。
【0039】
続いて、境界ピクセルでないピクセルが連続する領域をクラスタリングする(ステップS12)。続いて、クラスタリングした領域の各々に関し、領域内のピクセルのz座標値の平均値を当該ピクセルのz座標値とするxy平面に平行な平面領域を特定する(ステップS13)(請求の範囲に記載のxy平面に平行な平面領域を特定するステップの一例)。
図7は、xy平面に平行な平面領域を表す画像を例示した図である。
【0040】
続いて、ステップS13において特定した平面領域の中から、各エッジに隣接する2つの平面領域を探索し、平面領域間の隣接関係を特定する(ステップS14)。また、ステップS13において特定した平面領域の各々に関し、平面領域を囲むエッジ群をループとして特定する(ステップS15)。
【0041】
続いて、各エッジを、そのエッジに隣接する2つの平面領域のz座標値間でz軸方向にスイープして生成される平面領域を、z軸に平行な平面領域として特定する(ステップS16)(請求の範囲に記載のz軸に平行な平面領域を特定するステップの一例)。なお、ステップS16において特定される平面領域は、隣接する2つの平面領域のエッジを2辺とする矩形の平面領域である。ステップS16の処理によって、新たなエッジとループが生成される。
【0042】
以上の処理により、構築物Sの形状を表す、xy平面に平行な平面領域と、z軸に平行な平面領域と、それらの平面領域を囲むループと、各ループを構成するエッジと、各エッジの両端の頂点が特定される。
【0043】
続いて、上記のように特定された平面領域、ループ、エッジ及び頂点を示す座標値を、第1座標系の座標値に変換する(ステップS17)。そして、ステップS17における変換後の座標値により平面領域、ループ、エッジ及び頂点を示すデータを、構築物Sの三次元形状を表す三次元簡略化モデルデータ(請求の範囲に記載の三次元形状データの一例)として生成する(ステップS18)(請求の範囲に記載の生成するステップの一例)。
図8は、第1座標系点群データが表す三次元形状と、ステップS18において生成される三次元簡略化モデルデータが表す三次元形状を例示した図である。
図8(a)は第1座標系点群データが表す三次元形状の例であり、
図8(b)は三次元簡略化モデルデータが表す三次元形状の例であり、
図8(c)はそれらの三次元形状を重ね合わせた図の例である。方法Mにより生成される三次元簡略化モデルデータは、第1座標系点群データより大幅に要素数が削減されているが、
図8より、第1座標系点群データが表す三次元形状をよく近似していることが分かる。
【0044】
以上が方法Mの処理の説明である。上述した方法Mによれば、構築物Sを少ないデータ量で表す三次元簡略化モデルデータが従来技術による場合と比較して短時間で生成される。
【0045】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0046】
(1)ステップS01及びS02において第1座標系点群データを生成する手法はSfMに限られない。例えば、ステレオカメラやレーザスキャナ等のデプスセンサにより第1座標系点群データが生成されてもよい。その場合、コンピュータは外部の装置により生成された第1座標系点群データを取得し、その第1座標系点群データを用いて、ステップS03以降の処理を行えばよい。
【0047】
(2)第1座標系点群データの形式は法線ベクトルを持つメッシュ群を表すものに限られない。例えば、ポリゴンモデルを表す第1座標系点群データが用いられてもよい。
【0048】
(3)ステップS03において、第1座標系点群データが表す三次元形状の支配的な3軸を特定する手法は、頂点法線ベクトルのガウシアンマッピングとRANSAC法を用いる手法に限られない。
【0049】
(4)ピクセルのサイズ及び形状は上述したものに限られない。
【0050】
(5)上述した実施形態においては、エッジは直線であるものとしたが、エッジが円弧や楕円弧等の所定の特性を持つ曲線であってもよい。この場合、ステップS10において、セグメンテーションされたピクセル群にフィットする直線又は所定の特性を持つ曲線を特定することになる。
【0051】
(6)上述した実施形態においては、ステップS13において特定するxy平面に平行な平面領域のz座標値として、ステップS12においてクラスタリングした領域内のピクセルのz座標値の平均値を用いるものとした。ここで、平均値に代えて、中間値、最頻値等の他の統計値を用いてもよい。
【0052】
(7)上述した実施形態においては、第2座標系点群データが示すメッシュのうち法線ベクトルがxy平面と実質的に平行なものを抽出し、それらのメッシュの頂点(境界点)を含む領域を通る線をxy平面に平行な平面領域の境界線として特定する。xy平面に平行な平面領域の境界線の特定方法はこれに限られない。例えば、第2座標系点群データが示す点をxy平面に投影し、xy平面において投影された点群の分布に基づき、境界線の特定を行ってもよい。すなわち、xy平面において点群の密度が所定の閾値以上である領域を通る線を境界線として特定してもよい。