(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】錠剤カセット
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
(21)【出願番号】P 2020035629
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/096328(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/164196(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0247731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の錠剤を収容しうる容器部と、軸回転可能な状態で前記容器部に収められて複数の区画室を画成する整列盤とを備え、前記容器部の底部に排出口が形成されていて、前記整列盤の軸回転にて前記区画室の中に落ち入った錠剤を前記排出口から逐次落下させる錠剤カセットにおいて、
前記整列盤が、前記容器部の底面を貫く回転伝動軸のうち前記容器部の内部空間に位置する内挿部分に外装された周方向拡縮機構と径方向拡縮機構と干渉部材とを具備したものであり、
前記周方向拡縮機構が、前記区画室を複数連動させて周方向に拡縮しうるようになっており、
前記径方向拡縮機構が、前記区画室それぞれに対応した径方向画成部材と、前記径方向画成部材を摺動可能に保持するとともに前記径方向画成部材の移動可能方向を径方向に限定する摺動許容保持部材とを具備していて、前記区画室を個別に径方向へ拡縮しうるようになっており、
前記干渉部材が、前記径方向拡縮機構に押し付けられると前記径方向画成部材と干渉して前記径方向画成部材の径方向移動を阻止するようになって
おり、
前記摺動許容保持部材が、前記径方向画成部材の摺動部分を両側から挟んで前記径方向画成部材を保持する一対の挟持部材を具備したものであ
り、
前記径方向画成部材に突起が設けられており、前記突起が前記挟持部材から外へ突き出ており、前記径方向画成部材の径方向移動の阻止が前記突起と前記干渉部材との干渉によって行われるようになっている、ことを特徴とする錠剤カセット。
【請求項2】
前記挟持部材のうち前記突起の突き出しを可能とする打ち抜き部分が、外縁部より内側にとどまっている、ことを特徴とする
請求項1記載の錠剤カセット。
【請求項3】
多数の錠剤を収容しうる容器部と、軸回転可能な状態で前記容器部に収められて複数の区画室を画成する整列盤とを備え、前記容器部の底部に排出口が形成されていて、前記整列盤の軸回転にて前記区画室の中に落ち入った錠剤を前記排出口から逐次落下させる錠剤カセットにおいて、
前記整列盤が、前記容器部の底面を貫く回転伝動軸のうち前記容器部の内部空間に位置する内挿部分に外装された周方向拡縮機構と径方向拡縮機構と干渉部材とを具備したものであり、
前記周方向拡縮機構が、前記区画室を複数連動させて周方向に拡縮しうるようになっており、
前記径方向拡縮機構が、前記区画室それぞれに対応した径方向画成部材と、前記径方向画成部材を摺動可能に保持するとともに前記径方向画成部材の移動可能方向を径方向に限定する摺動許容保持部材とを具備していて、前記区画室を個別に径方向へ拡縮しうるようになっており、
前記干渉部材が、前記径方向拡縮機構に押し付けられると前記径方向画成部材と干渉して前記径方向画成部材の径方向移動を阻止するようになって
おり、
前記径方向画成部材の表面に径方向の目盛が付されていることを特徴とする錠剤カセット。
【請求項4】
前記径方向画成部材の表面に径方向の目盛が付されていることを特徴とする
請求項1又は請求項2の何れかに記載された錠剤カセット。
【請求項5】
多数の錠剤を収容しうる容器部と、軸回転可能な状態で前記容器部に収められて複数の区画室を画成する整列盤とを備え、前記容器部の底部に排出口が形成されていて、前記整列盤の軸回転にて前記区画室の中に落ち入った錠剤を前記排出口から逐次落下させる錠剤カセットにおいて、
前記整列盤が、前記容器部の底面を貫く回転伝動軸のうち前記容器部の内部空間に位置する内挿部分に外装された周方向拡縮機構と径方向拡縮機構と干渉部材とを具備したものであり、
前記周方向拡縮機構が、前記区画室を複数連動させて周方向に拡縮しうるようになっており、
前記径方向拡縮機構が、前記区画室それぞれに対応した径方向画成部材と、前記径方向画成部材を摺動可能に保持するとともに前記径方向画成部材の移動可能方向を径方向に限定する摺動許容保持部材とを具備していて、前記区画室を個別に径方向へ拡縮しうるようになっており、
前記干渉部材が、前記径方向拡縮機構に押し付けられると前記径方向画成部材と干渉して前記径方向画成部材の径方向移動を阻止するようになって
おり、
前記周方向拡縮機構が、前記回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて前記区画室の両側面のうち一方を画する第1揺動部材と、前記回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて前記区画室の両側面のうち他方を画する第2揺動部材と、前記回転伝動軸に対して周方向回転不能に外装されたリンク移動路形成部材と、一端部が前記第1揺動部材に揺動許容状態で連結された第1リンク部材と、一端部が前記第2揺動部材に揺動許容状態で連結された第2リンク部材とを具備しており、前記第1リンク部材の他端部と前記第2リンク部材の他端部とが互いに揺動許容状態で連結されており且つその連結部の移動が前記リンク移動路形成部材によって前記回転伝動軸の径方向に限定されている、ことを特徴とする錠剤カセット。
【請求項6】
前記周方向拡縮機構が、前記回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて前記区画室の両側面のうち一方を画する第1揺動部材と、前記回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて前記区画室の両側面のうち他方を画する第2揺動部材と、前記回転伝動軸に対して周方向回転不能に外装されたリンク移動路形成部材と、一端部が前記第1揺動部材に揺動許容状態で連結された第1リンク部材と、一端部が前記第2揺動部材に揺動許容状態で連結された第2リンク部材とを具備しており、前記第1リンク部材の他端部と前記第2リンク部材の他端部とが互いに揺動許容状態で連結されており且つその連結部の移動が前記リンク移動路形成部材によって前記回転伝動軸の径方向に限定されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された錠剤カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や薬局等で行われる調剤を自動化するための錠剤フィーダにおいて被駆動部を成す錠剤カセットに関し、詳しくは、錠剤を収容する容器部と容器部の中の整列盤とを具備していて整列盤が軸回転駆動されると錠剤を整列盤の周囲に整列させながら容器部の排出口から逐次落下させる錠剤カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多用されている錠剤フィーダは(例えば特許文献1の
図1,特許文献2の
図1,特許文献3の
図5を参照)、給電や制御のために錠剤分包機の引出棚や錠剤分割装置の本体部などに固定して列設される駆動部と、錠剤補充作業の容易化などのため駆動部に対して着脱自在になっている錠剤カセットとからなり、多数の錠剤を錠剤カセットにランダム収納しておき、必要に応じて駆動部を間欠動作や連続動作させて錠剤カセットから錠剤を一つずつ送り出すようになっている。このような錠剤フィーダは、錠剤を上から下へ移動させながら錠剤を絞り込むことで逐次排出を行う。
【0003】
また、そのような錠剤フィーダへの組み込みに最も多く用いられている錠剤カセットは、蓋を開けて補充された多数の錠剤を内部の空間に収容する容器部と、その中に軸回転可能に設けられていて駆動部の駆動を回転伝動軸にて受ける整列盤と、容器部と整列盤との環状間隙の下端部を画する容器部の底板に貫通形成された排出口に対向させて設けられ環状間隙の上端側の一部を仕切る仕切ユニットとを備えている、というものである。
さらに、この錠剤カセットでは、錠剤の整列箇所である環状間隙を錠剤一つ分ずつ区切るために、環状間隙に突き出た羽根状の隔壁が、整列盤の外周面に等ピッチで多数形成されており、隣り合う隔壁の間が、整列盤の上から落ちてきた錠剤を一個ずつ収める区画室になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-192702号公報
【文献】特開2013-039237号公報
【文献】特開2019-141330号公報
【文献】特願2018-241162号(出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような錠剤カセットは、着脱式であって、而も既に多く使用されている固定式の駆動部に対して付け替え容易であるといったことから、多くの錠剤分包機や錠剤分割装置の錠剤フィーダに採用されている。
ところが、そのような駆動部に対する付け替え容易性の具有にとどまらず、カセットの付け替えを行うまでもなく種々の薬剤に共用しうるように改良することまでも求められ、かかる要請に応えるべく、錠剤を一個ずつ収める区画室を拡縮しうるようになった錠剤カセットも開発されている。
【0006】
具体的には(特許文献4参照)、多数の錠剤を収容しうる容器部と、軸回転可能な状態で前記容器部に収められて複数の区画室を画成する整列盤とを備え、前記容器部の底部に排出口が形成されていて、前記整列盤の軸回転にて前記区画室の中に落ち入った錠剤を前記排出口から逐次落下させる錠剤カセットにおいて、前記整列盤が、前記容器部の底面を貫く回転伝動軸のうち前記容器部の内部空間に位置する内挿部分に外装された周方向拡縮機構と径方向拡縮機構とを具備しており、前記周方向拡縮機構が、前記区画室を複数連動させて周方向に拡縮しうるものであり、前記径方向拡縮機構が、前記区画室を複数連動させて径方向に拡縮しうるものである、という錠剤カセットが開発されている。
【0007】
しかしながら、この錠剤カセットでは、区画室の拡縮を担う機構について、周方向拡縮機構ばかりか、径方向拡縮機構までも、複数の区画室を連動させて拡縮させるようにしたことから、機能や性能は大きく向上したが、構造が複雑になってしまった。
そのため、部品数の増加や、部材の繊細化、さらには製造コストの増加といった負担も大きくなってしまった。
そこで、負担軽減のため機能面で或る程度の犠牲を払っても使い勝手は良い区画室拡縮式の錠剤カセットを実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の錠剤カセットは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
多数の錠剤を収容しうる容器部と、軸回転可能な状態で前記容器部に収められて複数の区画室を画成する整列盤とを備え、前記容器部の底部に排出口が形成されていて、前記整列盤の軸回転にて前記区画室の中に落ち入った錠剤を前記排出口から逐次落下させる錠剤カセットにおいて、
前記整列盤が、前記容器部の底面を貫く回転伝動軸のうち前記容器部の内部空間に位置する内挿部分に外装された周方向拡縮機構と径方向拡縮機構と干渉部材とを具備したものであり、
前記周方向拡縮機構が、前記区画室を複数連動させて周方向に拡縮しうるようになっており、
前記径方向拡縮機構が、前記区画室それぞれに対応した径方向画成部材と、前記径方向画成部材を摺動可能に保持するとともに前記径方向画成部材の移動可能方向を径方向に限定する摺動許容保持部材とを具備していて、前記区画室を個別に径方向へ拡縮しうるようになっており、
前記干渉部材が、前記径方向拡縮機構に押し付けられると前記径方向画成部材と干渉して前記径方向画成部材の径方向移動を阻止するようになっている、
ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の錠剤カセットは(解決手段2)、上記解決手段1の錠剤カセットであって、前記摺動許容保持部材が、前記径方向画成部材の摺動部分を両側から挟んで前記径方向画成部材を保持する一対の挟持部材を具備したものである、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の錠剤カセットは(解決手段3)、上記解決手段2の錠剤カセットであって、前記径方向画成部材に突起が設けられており、前記突起が前記挟持部材から外へ突き出ており、前記径方向画成部材の径方向移動の阻止が前記突起と前記干渉部材との干渉によって行われるようになっている、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の錠剤カセットは(解決手段4)、上記解決手段3の錠剤カセットであって、前記挟持部材のうち前記突起の突き出しを可能とする打ち抜き部分が、外縁部より内側にとどまっている、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の錠剤カセットは(解決手段5)、上記解決手段1~4の錠剤カセットであって、前記径方向画成部材の表面に径方向の目盛が付されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の錠剤カセットは(解決手段6)、上記解決手段1~5の錠剤カセットであって、前記周方向拡縮機構が、前記回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて前記区画室の両側面のうち一方を画する第1揺動部材と、前記回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて前記区画室の両側面のうち他方を画する第2揺動部材と、前記回転伝動軸に対して周方向回転不能に外装されたリンク移動路形成部材と、一端部が前記第1揺動部材に揺動許容状態で連結された第1リンク部材と、一端部が前記第2揺動部材に揺動許容状態で連結された第2リンク部材とを具備しており、前記第1リンク部材の他端部と前記第2リンク部材の他端部とが互いに揺動許容状態で連結されており且つその連結部の移動が前記リンク移動路形成部材によって前記回転伝動軸の径方向に限定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段1)、区画室の拡縮機能を具体化するに際して、周方向拡縮機構は複数区画室の連動機能を維持するが、径方向拡縮機構については、連動機能を廃して、それぞれの区画室ごとに個別調整を行うようにしたことにより、複雑かつ繊細になりがちなリンク機構等が不要になって、構成が簡素化される。一方、径方向拡縮の個別調整は、該当部材を摺動させることで行うようにしたことにより、弱い力でも簡便かつ軽快に行えるうえ、調整後は乱暴に取り扱わなければ調整時の状態が維持される。そして、個別調整を総て終えてから干渉部材を径方向拡縮機構に押し付けると、区画室の拡縮状態が固定される。そのため、個別調整であっても、調整回数は増えるが、それを補って余りある負担軽減効果を享受することができ、使い勝手も良い。
【0015】
また、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段2)、一対の挟持部材を摺動許容保持部材に採用したうえで、それらの挟持部材が径方向画成部材の摺動部分を上下等の両側から挟んで保持するようにしたことにより、複数の径方向画成部材を含んだ径方向拡縮機構が、回転伝動軸や周方向拡縮機構から分離した状態でも一纏まりの物として取り扱えるようになるので、径方向画成部材を摺動させて行う径方向拡縮の調整が、個別調整であっても、楽に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段3)、径方向画成部材を挟持する挟持部材から上面上方等の外へ径方向画成部材の突起が出るようにしたことにより、その突き出し側から干渉部材を径方向画成部材に押し当てると、突起と干渉部材とが干渉しあって径方向画成部材の径方向移動が阻止される。そのため、個別調整の済んだ後は一括で簡便に複数の径方向画成部材の位置を固定することができる。
【0017】
また、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段4)、挟持部材における打ち抜き部分を挟持部材の外縁部より内側にとどめたことにより、径方向画成部材の突起の移動範囲もその範囲にとどまるため、径方向画成部材が摺動しすぎて挟持部材から外れてしまうという不所望な事態の発生が簡便かつ的確に防止される。
【0018】
また、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段5)、径方向画成部材の表面に径方向の目盛を付したことにより、取り扱い対象の錠剤の該当箇所の寸法を計測した後や、複数の径方向画成部材のうち何れか一つでも径方向拡縮の調整が済んだ後は、寸法計測値や径方向拡縮調整済み目盛値に、調整対象の径方向画成部材の目盛の値を合わせることで容易かつ迅速に複数の径方向画成部材の個別調整を行うことができる。
【0019】
また、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段6)、周方向拡縮機構の主要部材として複数の区画室の左右等の両側面を画する第1揺動部材と第2揺動部材を第1リンク部材と第2リンク部材の一端部にそれぞれ連結したうえで、両リンク部材の他端部同士の連結部をリンク移動路形成部材にて回転伝動軸の径方向にだけ移動可能にしたことにより、繊細になりがちなリンク部材の個数が少なくても、回転伝動軸に対して周方向回転可能に外装されて複数の区画室を連動させて周方向に拡縮しうる周方向拡縮機構を実現することができる。しかも、上述したように径方向拡縮機構がリンク機構を要しないので、両拡縮機構を具備した整列盤を、繊細な部材が少ないものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1について、錠剤カセットの構造を示し、(a)が上蓋を取り外した錠剤カセットの縦断面図、(b)が整列盤の外観斜視図である。
【
図5】回転伝動軸と周方向拡縮機構とに係る展開斜視図である。
【
図6】回転伝動軸とリンク機構の一部とに係る展開斜視図である。
【
図7】(a)がリンク機構の展開斜視図、(b)が第2揺動部材とリンク機構とに係る展開斜視図である。
【
図8】第2揺動部材およびリンク機構と第1揺動部材とに係る展開斜視図である。
【
図9】回転伝動軸付き周方向拡縮機構とスペーサとに係る展開斜視図である。
【
図10】回転伝動軸およびスペーサ付き周方向拡縮機構に係る外観斜視拡大図である。
【
図12】(a),(b)何れも径方向拡縮機構の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
このような本発明の錠剤カセットについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1~
図12に示した実施例1は、上述した解決手段1~6(出願当初の請求項1~6)を総て具現化したものである。
【実施例1】
【0022】
本発明の錠剤カセットの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、錠剤カセット10の全体構造を示し、(a)が上蓋を取り外した錠剤カセット10の縦断面図、(b)が整列盤40の外観斜視図である。また、
図2は、整列盤40の縦断面拡大図、
図3は整列盤40の外観斜視図の拡大図である。さらに、
図4は、整列盤40を組立時の適宜な纏まり単位で展開した斜視図である。
【0023】
また、
図5は、回転伝動軸41と周方向拡縮機構6080とに係る展開斜視図であり、
図6は、回転伝動軸41とリンク機構80のリンク移動路形成部材81とに係る展開斜視図である。
図7(a)は、リンク機構80の遊動リンク部材83,86の展開斜視図であり、
図7(b)は、周方向拡縮機構6080の第2揺動部材70とリンク機構80の遊動リンク部材83,86とに係る展開斜視図である。
図8は、遊動リンク部材83,86付きの第2揺動部材70と周方向拡縮機構6080の第1揺動部材60とに係る展開斜視図である。
図9は、回転伝動軸41付き周方向拡縮機構6080とスペーサ46とに係る展開斜視図である。
図10は、回転伝動軸41及びスペーサ46の付いた周方向拡縮機構6080に係る外観斜視図の拡大図である。
【0024】
図11は、径方向拡縮機構90の展開斜視図であり、
図12は、(a),(b)が何れも径方向拡縮機構90の外観斜視図であり、そのうち(a)は、四個の径方向画成部材94の径方向位置が揃っていない未調整・調整未完了の状態を示し、(b)は、四個の径方向画成部材94の径方向位置が揃っている調整済み状態を示している。
【0025】
錠剤カセット10は(
図1参照)、従来品(例えば特許文献1~3参照)を部分的に改造した容器部20と、容器部20やその従来品に対する組み込み互換性を維持しながら区画室67の拡縮機能を付加するために一体物や少部品組合せ物の整列盤から多数の部品を組み合わせた整列盤に変貌させるに際して部品増加の程度を抑制した整列盤40とを具備している。
【0026】
容器部20は、プラスチックの射出成型などで量産される箱形の容器本体21を主体にしたものであり、容器本体21の内部空間が多数の錠剤をランダム収容しうる錠剤収容空間22になっており、錠剤補充時等には図示しない上蓋にて錠剤収容空間22を開閉しうるようになっている。容器本体21の外側には持ち運び用の把手23が設けられており、容器本体21の下部が図示しない駆動部(ベース)に対する着脱部24になっている。
【0027】
また、容器部20は、容器本体21の底部25のうち一カ所に(
図1(a)では左側)、排出口28が貫通形成されており、整列盤40の軸回転にて錠剤が排出口28の上に運ばれてくると、その錠剤を排出口28を通して下方へ落下させるようになっている。
さらに、容器部20は、容器本体21に仕切ユニット30を着脱できるようにもなっている。そして、仕切保持部31を容器本体21に外側から装着して、仕切作用部32を容器本体21のスリットから錠剤収容空間22へ差し込むと、仕切作用部32が排出口28の上方に来て、それより下の錠剤は落下させるが上の錠剤の落下を阻止することで、錠剤の落下を逐次に行わせるものとなる。
【0028】
それに加え、この容器部20は、ベルト保持部33も容器本体21に対して外側から装着できる又は着脱できるように改造されている。
ベルト保持部33は、例えば丸紐状のゴム製で伸縮性を有する無端ベルト34を張った状態で保持するものであり、仕切ユニット30を容器本体21に装着して、無端ベルト34を容器本体21のスリットから錠剤収容空間22へ差し込むと、無端ベルト34が排出口28及び仕切作用部32の上方に来るようになっている。
【0029】
整列盤40は(
図1~
図3参照)、従来品と同様に(例えば特許文献1~3参照)、軸回転可能な状態で容器部20に収められて錠剤収容空間22の底部に複数の区画室(本例では4個の区画室67)を画成するものであり、その区画室67の中に落ち入った錠剤を軸回転時に区画室67と共に排出口28のところへ移送するようになっている。
もっとも、複数の区画室67を簡便に拡縮できるようにするために、整列盤40は、従来は無かった整列盤胴部の外周寄りの周方向拡縮機構6080と整列盤胴部の中央寄りの径方向拡縮機構90と干渉部材47と整列盤頭部の傘部50とを具備している。
そして、それら6080,90,47,50は、整列盤脚部の回転伝動軸41に外挿されて(
図4も参照)、回転伝動軸41の軸回転に随伴して軸回転するようになっている。
【0030】
回転伝動軸41は(
図1(a),
図6参照)、容器部20の底部25の貫通穴26に挿入されて、底部25を軸回転可能な状態で貫くものとなっている。回転伝動軸41の下端部42は底部25から外へ突き出ていて図示しない駆動部の回転駆動軸と嵌合・噛合するようになっている。回転伝動軸41は、中間部43が下端部42より細く、上端部44が中間部43より細く、それら43,44が容器本体21の内部の錠剤収容空間22の中に位置する内挿部分になっている。そして、その内挿部分に対して下から順に周方向拡縮機構6080と干渉部材47と径方向拡縮機構90と傘部50とが外装されて止めネジ48で固定される(
図1~
図4参照)。このように容器部20の内底に対して整列盤40を装着したことで、容器本体21の内周面27(整列盤内挿空間)と整列盤40の外周部との間に、本例では、四つの区画室67が画成されるようになっている(
図3参照)。
【0031】
また、この整列盤40は、全体を組み上げた一体化状態で容器部20に着脱されるが(
図1~
図3参照)、そのように一体化する前や、容器部20から取り外して区画室67の拡縮調整を行うとき等には、扱い易いユニット毎(群単位)に展開しうるようにもなっている(
図4参照)。具体的には、回転伝動軸41及びスペーサ46付きの周方向拡縮機構6080と、その上の径方向拡縮機構90と干渉部材47と傘部50と止めネジ48とにユニット分けされる。後者90,47,50,48は、その順で、周方向拡縮機構6080とスペーサ46との付いた回転伝動軸41に対してその上端部44の上から嵌装され、止めネジ48の先端を回転伝動軸41の上端にねじ込むとしっかり連結されて一体化し、止めネジ48を逆回しすると緩んだり外れたりするようになっている。
【0032】
周方向拡縮機構6080は(
図1~
図4参照)、四つの区画室67を複数連動させて周方向に拡縮させることを可能にするために、本例では上側の第1揺動部材60と本例では下側の第2揺動部材70とそれらの間のリンク機構80とを具備している。
もっとも、それら60,70,80は、いずれもが回転伝動軸41に装着されて初めて一体化・ユニット化(群化)するようになっている(
図4の最下部分や
図10を参照)。
詳述すると、先ず回転伝動軸41の中間部43に(
図6参照)、リンク機構80のリンク移動路形成部材81を嵌装しておく(
図5の下半分を参照)。
【0033】
それから、リンク機構80の残り部材83~88を付けた周方向拡縮機構6080を回転伝動軸41に嵌装することで(
図5参照)、一体的に組み上がるようになっている(
図9の下半分を参照)。なお、その際、第2揺動部材70とリンク機構80の遊動リンク部材86,85と第1揺動部材60は、その順に一つずつ回転伝動軸41に嵌装しても良く(
図7,
図8参照)、纏めてから嵌装しても良い(
図5参照)。
さらに、このような周方向拡縮機構6080付きの回転伝動軸41に対して上から更にスペーサ46を装着することで(
図9参照)、回転伝動軸41及びスペーサ46付きの周方向拡縮機構6080が組み上がるようになっている(
図10参照)。
【0034】
これに対し、径方向拡縮機構90は(
図11参照)、四つの径方向画成部材94の上部を上部挟持部材91と下部挟持部材97とで上下から挟んでから上部挟持部材91の係合子93と下部挟持部材97の係合部99とを係合させることで一体化・ユニット化(群化)するようになっている(
図12参照)。
しかも、径方向拡縮機構90は、回転伝動軸41に装着しなくても、一体化・ユニット化(群化)され、一体物として取り扱えるものとなっている(
図4,
図12参照)。
【0035】
以下、各部について詳述する。
【0036】
周方向拡縮機構6080の第1揺動部材60は(
図8の上半分を参照)、回転伝動軸41の中間部43を挿通しうる穴65が中央に貫通形成された穴あき円板状の基部64と、基部64から等角で放射状に径方向へ突き出た四つの区画部材61と、基部64の下面に突設されたピン66とを具備したものであり、区画部材61の片面の区画面62が、区画室67の周方向対向面の一方をなしている。区画部材61の外端部には、仕切作用部32との干渉を避けるための溝63が複数形成されている(図では4個ずつ示した)。また、第1揺動部材60の基部64には、次に詳述する第2揺動部材70のピン76との干渉を回避するために(
図8の下半分も参照)、逃がし穴68も貫通形成されている。
【0037】
第2揺動部材70は(
図7(b)参照)、回転伝動軸41の中間部43を挿通しうる穴75が中央に貫通形成された穴あき円板状の基部74と、基部74から等角で放射状に径方向へ突き出た四つの区画部材71と、基部74の上面に突設されたピン76とを具備したものであり、区画部材71の片面の区画面72が、区画室67の周方向対向面の他方をなしている。区画部材71の外端部にも、仕切作用部32との干渉を避けるための溝73が複数形成されている(上述の溝63と対応しているので同数の4個ずつ図示した)。
第1揺動部材60も、第2揺動部材70も、穴65,75が回転伝動軸41の中間部43より僅かに大きくて、回転伝動軸41との係合が緩いので、挿入された回転伝動軸41に対して軸周り回転が可能なものとなっている。
【0038】
リンク機構80は(
図1(b)と
図3の左下寄り部分を参照)、径方向に伸びた長穴82が形成されたリンク移動路形成部材81と(
図6の上半分を参照)、一端部に丸穴84が貫通形成され他端部に連結ピン85が突出形成された上部遊動リンク部材83(第1リンク部材)と(
図7(a)参照)、一端部に丸穴87が貫通形成され他端部に丸穴88が貫通形成された下部遊動リンク部材86(第2リンク部材)とを具備したものである(
図7(a)参照)。そして、このリンク機構80は(
図7(b)の上側部分を参照)、連結ピン85が丸穴87に挿入されることで、上部遊動リンク部材83と下部遊動リンク部材86とが揺動許容状態で連結するようになっている
【0039】
また、丸穴88に第2揺動部材70のピン76が挿入されて第2揺動部材70とリンク機構80とが揺動許容状態で連結し(連結前の状態を示す
図7(b)と連結後の状態を示す
図8の下半分を参照)、丸穴84に第1揺動部材60のピン66が挿入されて第1揺動部材60とリンク機構80とが揺動許容状態で連結し(連結前の状態を示す
図8を参照)、連結ピン85がリンク移動路形成部材81の長穴82にも挿入されてリンク移動路形成部材81と上部遊動リンク部材83と下部遊動リンク部材86とが揺動許容状態で連結するようになっている(連結前の状態を示す
図5と連結後の状態を示す
図9を参照)。
【0040】
リンク移動路形成部材81は(
図6参照)、回転伝動軸41の中間部43を挿入可能な貫通穴が形成されているが、その貫通穴が完全な円形ではないので、回転伝動軸41に嵌装されると(
図5の下半分を参照)、回転伝動軸41に対する周方向回転が阻止される。そのため、長穴82によって連結ピン85の移動可能方向が回転伝動軸41の径方向に限定され、それによって、上部遊動リンク部材83の丸穴84と下部遊動リンク部材86の丸穴88との移動が回転伝動軸41の周方向における逆向きで同距離のものに限定されるので、周方向拡縮機構6080は、何れか一対の区画部材61,71について周方向の離隔距離を拡縮させると、総ての区画室67について周方向の中心位置が変わることなく周方向の離隔距離が連動して同時に同距離だけ纏まって拡縮するようになっている。
【0041】
径方向拡縮機構90は(
図4,
図11,
図12参照)、複数の区画室67を手動で個別に径方向へ拡縮させるものであり、そのために(特に
図11を参照)、それぞれの区画室67に一つずつ対応させて組み込まれて区画室67と同数だけ設けられている径方向画成部材94と、それらの径方向画成部材94を四方に分散させて径方向にだけ摺動しうる状態で保持する摺動許容保持部材91+97を具備している。
この摺動許容保持部材91+97は、上下に分離しうる一対の上部挟持部材91と下部挟持部材97とからなり、両部材91,97を上下に重ねると上部挟持部材91の係合子93と下部挟持部材97の係合部99とが係合して一体化するようになっている。
【0042】
下部挟持部材97の上面には(
図11参照)、中央から真っ直ぐ延びて外縁に至る直線状の案内路98が四方に向けて彫り込み形成されている。
また、上部挟持部材91には、案内路98に対応して中央から外縁へ向かって真っ直ぐ延びる案内路92が打ち抜き形成されているが、こちらの案内路92は、外縁の手前までにとどまっている。
そして、両部材91,97を上下に重ねると、上下で対をなす案内路92と案内路98とが、何れの対でも、平行に並んで径方向に延びるようになっている。
【0043】
径方向画成部材94は(
図11参照)、何れも、区画室67に直面する縦長の本体部分に加えて、その上端部から横に曲がった摺動部分と、その摺動部分の先端から上方へ突き出た突起95も、具備している。そして、径方向画成部材94の本体部分を下部挟持部材97の外縁から突き出させた状態で、径方向画成部材94の摺動部分を下部挟持部材97の案内路98に収めてから、下部挟持部材97に上から上部挟持部材91を重ねて両部材91,97を係合させると、それら91,96,…,96,97が一体化して径方向拡縮機構90が出来上がるようになっている(
図12参照)。
【0044】
このような径方向拡縮機構90では、挟持部材91,97によって径方向画成部材94の摺動部分が上下から挟まれて案内路98に中に保持されるとともに、径方向画成部材94の突起95が案内路92中に下から入って上方へ少しだけ突き出る。そのため、それぞれの径方向画成部材94を、径方向外側へ引き出すことも(
図12(a)参照)、径方向内側へ押し込むことも(
図12(b)参照)、個別に出来るようになっている。
しかも、突起95の外径方向移動が案内路92の外端で突起95と上部挟持部材91の外縁部との当接することで止められるので、径方向画成部材94が摺動許容保持部材91+97から抜け落ちるという不所望な事態が発生しないものにもなっている。
【0045】
このように径方向拡縮機構90は、個々の径方向画成部材94を指先等で摺動許容保持部材91+97から出し入れすることで区画室67を個別に径方向へ拡縮しうるようになっているが、径方向画成部材94の摺動部の上面に目盛96が付されているので(
図11参照)、その目盛96と上部挟持部材91の外周面とを対比することで(
図12参照)、容易かつ的確に、複数の径方向画成部材94の径方向位置を揃えることができるものとなっている。また(
図4,
図12参照)、回転伝動軸41の上端部44に嵌装された径方向拡縮機構90の上に干渉部材47や傘部50を重ねて止めネジ48で締め込むと、干渉部材47が径方向拡縮機構90に押しつけられて突起95と干渉するため(
図2参照)、径方向画成部材94の径方向移動が的確に阻止されるようにもなっている。
【0046】
この実施例1の錠剤カセット10について、その使用態様及び動作を、上述した図面等を引用しながら説明する。
【0047】
新たに開発された錠剤であって、従来の専用カセット(例えば既述した特許文献1~3を参照)を製作して取り扱うもの程たくさん使用されるようには未だなっていないが、手撒き作業などで取り扱うだけで足りるほど少数しか使用されないものでもない錠剤には、サイズの比較的大きなものが多い。また、そのような大きめの錠剤は、一回の服用で複数個を使用することが少ないことから、短時間の間に続けて多数個をカセットから逐次排出させることが少ない。そのため、整列盤の区画室のサイズに多少のばらつきがあっても更には区画室の個数が少なめでも、必要な整列機能や排出機能を発揮することができるので、少数だが拡縮調整可能な区画室67を具備した錠剤カセット10は、特許文献4記載の錠剤カセットと同様、大きめの錠剤の自動排出に適している。
【0048】
錠剤カセット10は、その区画室67のサイズを錠剤の使用に先立って錠剤のサイズに適合させる必要があり、区画室67のサイズ調整を人手作業にて行う。その調整作業は、容器部20から取り外した状態の整列盤40に対して行うのが基本であり(
図3参照)、止めネジ48を回して抜くと径方向拡縮機構90と周方向拡縮機構6080とが分離されるので(
図4参照)、それぞれ90,6080に対して調整を行う遣り方が勧められる。その際、何れかの区画室67に錠剤を収めた状態で区画室67に錠剤を倣わせる態様で行っても良く、錠剤のサイズ等を測定しておきその測定値に基づいて区画室67を可変する態様で行っても良いが、錠剤カセット10の場合、前者は周方向拡縮機構6080の調整に好適で、後者は径方向拡縮機構90の調整に好適である、という傾向が見られる。
【0049】
そこで、周方向拡縮機構6080による区画室67の周方向幅を調整するときは(
図10参照)、四つの区画室67のうち何れか一つの区画室67を間にして対向する何れかの区画部材61と区画部材71とを離隔させて、そこに錠剤を入れ、その錠剤を挟むところまで区画部材61と区画部材71とを接近させてから、ほんの少しだけ広げておくといったことで、操作対象の区画室67の周方向幅を錠剤の逐次通過に必要な幅になるよう拡大・縮小させると、四つ総ての区画室67の周方向幅が連動して同時に錠剤の逐次通過に必要な幅になることから、区画室67が複数・多数であっても、それらの周方向の拡縮調整の作業は、それらを纏めて的確に行えるので、簡便かつ迅速に済ませることができる。
【0050】
また、径方向拡縮機構90による区画室67の径周方向幅を調整するときは(
図12参照)、先ず錠剤の厚みや短径といった径方向の幅を物差し等で測定しておく。そして、四つの径方向画成部材94それぞれについて、径方向画成部材94を引き出したり(
図12(a)参照)、径方向画成部材94を押し込んだりして(
図12(b)参照)、目盛96のうち上記の測定幅に対応した値を示す目盛線が上部挟持部材91の外径端の直下に来るようにする。この調整作業は、目盛96を参照することで簡便かつ迅速に行えるので、径方向画成部材94の個数だけ繰り返えしても、作業負担が重くなる訳では無い。
【0051】
このような簡便な作業を行うだけで、総ての区画室67のサイズが錠剤に適合するので、回転伝動軸41から分離されていた径方向拡縮機構90と干渉部材47と傘部50とを(
図4参照)、周方向拡縮機構6080付き回転伝動軸41に戻してから、それらを止めネジ48で固定して(
図3参照)、整列盤40の調整作業を終える。
そして、その整列盤40を容器部20に戻して装着すると、錠剤カセット10が所望の錠剤のランダム収容および逐次排出に使用できるものになるので、錠剤カセット10に適量の錠剤を補充するとともに、錠剤分包機等に実装されている錠剤カセットで取り敢えず使用しないで済むものを選出して、その錠剤カセットを駆動部から取り外し、その駆動部に錠剤カセット10を取り付ける。
【0052】
この錠剤カセット10では、錠剤が取り扱い可能なもののうちで小さいものの場合、区画部材61,71が対向間隔を狭めて径方向画成部材94に接近するとともに傘部50の切欠53の下に現れる(
図3参照)。また、径方向画成部材94も、容器本体21の内周面27に近づいて対向間隔を狭めるとともに(
図1(a)参照)、傘部50の切欠53の下に現れる。この切欠53の下に現れた部分は大部分が滑らかな曲面なので、そこへ傘部50の央部51等から落ちてきた錠剤は、そこに留まることなく速やかに、区画室67の中へ落ちていく。
【0053】
また、錠剤の幅が少し大きい場合、それに対応した調整によって区画部材61,71が離れるので、区画部材61,71が径方向画成部材94から少し離れるとともに部分的に傘部50の張出部52の下に隠れるが、区画部材61,71は逆向きに同じだけ移動することから、区画室67の周方向位置が傘部50の張出部52の切欠53に対して中央位置を維持するとともに、区画室67における径方向画成部材94の周方向位置も中央位置を維持するので、区画部材61,71と径方向画成部材94との隙間が広がっても、その隙間に錠剤が落ちるという不所望な事態は回避されて、錠剤は区画室67に落ちていく。
【0054】
錠剤の幅が更に大きい場合、それに対応した調整によって区画部材61,71が大きく離れるので、区画部材61,71の大部分または全部が傘部50の張出部52の下に隠れるが、区画室67の上端部の周方向幅が傘部50の張出部52の切欠53によって適切な範囲の上限以下に規制されるとともに、区画室67と切欠53とに係る周方向中央位置関係も区画室67と径方向画成部材94に係る周方向中央位置関係も維持されるので、この場合も、錠剤は区画室67に落ちていく。
【0055】
さらに、錠剤が厚み方向にも少し大きい場合は径方向画成部材94がそれに対応した調整によって回転伝動軸41の方へ後退して容器本体21の内周面27から離れて径方向画成部材94の折れ曲がり部の近くや一部が傘部50の央部51の下に隠れ、錠剤が厚さ方向にもかなり大きい場合はそれに対応した調整によって径方向画成部材94のほとんどが傘部50の央部51の下に隠れるので、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、やはり錠剤は区画室67にだけ落ちていく。
【0056】
なお、この錠剤カセット10の傘部50にあっては(
図4参照)、切欠53の周方向幅よりも張出部52の周方向幅の方が広いため、その観点からは従来構造の錠剤カセットに比べて錠剤が張出部52の上に留まりやすくなっているが、無端ベルト34が張出部52の上方に張設されていることから(
図1(a)参照)、張出部52の上に載って運ばれ続けた錠剤は、一周する前に無端ベルト34に当接して反力を受けるので、無端ベルト34の所に押しとどめられて姿勢を変えたり傘部50の央部51へ押し上げられたりする。そして、追いついてきた区画室67が空ならば、大方がその区画室67に落ちて入り込み、その区画室67が空でなければ、その区画室67に落ちかけたとしても仕切作用部32より上方にとどまって排出口28の上方を通過後に区画室67の底まで落ちる。
そのため、錠剤の逐次排出は大きく遅滞することなく的確に遂行される。
【0057】
また、整列盤40に組み込まれるリンク部材が、径方向拡縮機構90では皆無になっており、周方向拡縮機構6080でも上部遊動リンク部材83と下部遊動リンク部材86との二種類に抑えられていて最少構成では二個まで減らせるので(
図7参照)、少数で済む。そのため、部材の緩みやがたつき等が発生し難く、しかも部材遊動用の空間が小さくて済み(
図2,
図3参照)、ひいては錠剤粉の侵入や蓄積といった不所望な事態の発生も抑制され、錠剤粉の影響による部材品質の劣化なども抑制されることになる。
【0058】
リンク部材に限らず他の部材を含めた組み合わせ状態についても、隙間の少ない稠密配置になっているので(例えば
図2参照)、同様の効果が発揮されるとともに、止めネジ48による締め付けだけでも部材同士が強固に固定される。
そのため、整列盤40について堅牢性や耐久性が向上する。
【0059】
[その他]
上記実施例では、径方向画成部材94の摺動部の上面の目盛96として、線の並びを図示するにとどめたが(
図11,
図12参照)、それに限定される訳では無く、例えば目安としての数値など他の補助的事項が付記されていても良い。目盛96が、径方向画成部材94の側面に付記されていても良く、上面と側面の双方に付記されていても良い。
目盛96の線は、彫り込み形成等にて凹みを持たせても良い。そうすれば、調整作業時に目盛線の凹みに爪先等を引っ掛けて径方向画成部材94を進退させる等のことにより、位置合わせが容易かつ的確に行えるようになる。
【0060】
上記実施例では、区画室67の個数が四つであったが、区画室67の個数は、四つに限定される訳でなく、それより多くても良く、それより少なくても良い。
上記実施例では、干渉部材47が独立した単体物であったが、干渉部材47は傘部50の下面に貼着等にて付設されていても良い。干渉部材47は、ある程度の製造誤差は避けることができない複数の径方向画成部材94の突起95に当接して何れの突起95に対しても無理なく押さえ付ける役目を担っていることから、傘部50よりも変形能や緩衝能に優れた材質の物から作られるので、材質まで傘部50と一体化される物ではない。
【0061】
上記実施例では、仕切作用部32として薄板状体のものを図示したが、仕切作用部32は、板状体に限定される訳でなく、仕切保持部31は複雑になるが、無端ベルト34のような伸縮性の無端ベルトを仕切作用部32に採用することも可能であり、そうした方が、区画室67のサイズ調整が多少ラフでも上下錠剤の仕切りが的確に行われるので、区画室67のサイズ調整が楽になる。仕切作用部32と区画部材61,71との干渉を避けるための溝63,73の形成条件も緩和される。
【0062】
上述の説明では、煩雑になるのを避けるために言及を控えたが、錠剤カセット10についても、回転伝動軸41等に下向き当接部材を少数個たとえば二個ほど付設するとともに(図示せず)、容器部20の底部25の上面に衝上部材をやはり少数個たとえば二個ほど付設して(図示せず)、整列盤40の軸回転に伴って間欠的に即ち当接部材が衝上部材を乗り越える度に整列盤40が少し突き上げられるようにしても良い(例えば特許文献3参照)。そうすることにより、錠剤が塊になっていた場合でもその塊が速やかに解れるとともに、個々の錠剤が区画室67に転げ落ちやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の錠剤カセットは、既述した薬剤分包機のように庫部などに多数の駆動部を組み込んだ装置にも、錠剤分割装置のように一台だけしか搭載していない装置にも、使用することが可能である。また、一個の錠剤カセットを幾つかの駆動部に付け替えて使用することや、一個の駆動部に幾つかの錠剤カセットを付け替えて使用することも可能である。
本発明の錠剤カセットで取り扱う錠剤の典型例は大きめで縦長の丸筒状カプセル剤であるが、取り扱える錠剤がそれに限定される訳でなく、紡錘状や円盤状といった他の剤形や他のサイズの錠剤でも取り扱えるものは多い。
【符号の説明】
【0064】
10…錠剤カセット、
20…容器部、
21…容器本体、22…錠剤収容空間、23…把手、24…着脱部、
25…底部、26…貫通穴、27…内周面(整列盤内挿空間)、28…排出口、
30…仕切ユニット、
31…仕切保持部、32…仕切作用部、33…ベルト保持部、34…無端ベルト、
40…整列盤、
41…回転伝動軸(整列盤脚部)、
42…下端部、43…中間部、44…上端部、
46…スペーサ、47…干渉部材、48…止めネジ、
50…傘部(整列盤頭部)、
51…央部、52…張出部、53…切欠(区画室上端部)、
6080…周方向拡縮機構(整列盤胴部)、
60…第1揺動部材、
61…区画部材、62…区画面、63…溝、64…基部、65…穴、66…ピン、
67…区画室、68…逃がし穴、
70…第2揺動部材、
71…区画部材、72…区画面、73…溝、74…基部、75…穴、76…ピン、
80…リンク機構、
81…リンク移動路形成部材、82…長穴、
83…上部遊動リンク部材、84…丸穴、85…連結ピン、
86…下部遊動リンク部材、87…丸穴、88…丸穴、
90…径方向拡縮機構、
91…上部挟持部材(摺動許容保持部材)、
92…案内路(打ち抜き部分)、93…係合子、
94…径方向画成部材、95…突起、96…目盛、
97…下部挟持部材(摺動許容保持部材)、98…案内路、99…係合部