(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】塩素供給装置及び乾海苔製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20231030BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20231030BHJP
【FI】
A23L17/60 103Z
C02F1/50 550L
(21)【出願番号】P 2020003483
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】599048786
【氏名又は名称】光洋通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】笠井 秀城
(72)【発明者】
【氏名】笠井 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 弘子
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-358343(JP,A)
【文献】特開昭58-98066(JP,A)
【文献】特開2002-282865(JP,A)
【文献】特開平11-188083(JP,A)
【文献】特開2004-254556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C02F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素を貯留する塩素タンクと、
乾海苔の製造工程で使用する製造用水に塩素を添加する塩素添加部とを備え、
前記塩素添加部は、前記製造用水の流れ方向において、地下水及び製造工程で使用された使用水を前記製造用水として貯留する貯水槽の下流側に位置する製造機器の作動信号に基づいて前記塩素を添加することを特徴とする塩素供給装置。
【請求項2】
前記製造機器は、生海苔の濃度を調節する調合機あるいは/及び前記生海苔を海苔簀に貼り付ける漉き機であることを特徴とする請求項1に記載の塩素供給装置。
【請求項3】
前記調合機の前記作動信号は、前記生海苔を送り出す圧送ポンプの駆動信号であることを特徴とする請求項2に記載の塩素供給装置。
【請求項4】
前記漉き機の前記作動信号は、前記海苔簀に前記生海苔を吐出するための開閉弁の駆動信号であることを特徴とする請求項2に記載の塩素供給装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の塩素供給装置を備えることを特徴とする乾海苔製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素供給装置及び乾海苔製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1は、「国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所」のホームページであり、乾海苔製造に関する技術が開示されている。このホームページには、従来の乾海苔製造における衛生管理としては、乾海苔製品へ異物など余計なものが混入を防ぐことに主眼が置かれていたが、今後は生菌数の制御が重要となり、例えば脱水用スポンジの洗浄等、乾燥工程における衛生管理の徹底が重要であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】http://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/hoshinori/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乾海苔の製造工程では大量の水(真水)を使用するが、この水の衛生管理が乾海苔製造における衛生管理として重要である。例えば、乾海苔の製造工程では乾燥工程で脱水された水等の使用水を循環再利用する場合があるので、水の衛生管理を従来よりも徹底することによって、衛生管理上、従来よりも品質の高い乾海苔を製造することが可能になる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、乾海苔の製造における水の衛生管理を的確に行うことが可能な塩素供給装置及び乾海苔製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、塩素供給装置に係る第1の解決手段として、塩素を貯留する塩素タンクと、乾海苔の製造工程で使用する製造用水に塩素を添加する塩素添加部とを備え、前記塩素添加部は、前記製造用水の流れ方向において、地下水及び製造工程で使用された使用水を前記製造用水として貯留する貯水槽の下流側に位置する製造機器の作動信号に基づいて前記塩素を添加する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、塩素供給装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記製造機器は、生海苔の濃度を調節する調合機あるいは/及び前記生海苔を海苔簀に貼り付ける漉き機である、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、塩素供給装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記調合機の前記作動信号は、前記生海苔を送り出す圧送ポンプの駆動信号である、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、塩素供給装置に係る第4の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記漉き機の前記作動信号は、前記海苔簀に前記生海苔を吐出するための開閉弁の駆動信号である、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、乾海苔製造装置に係る解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段に係る塩素供給装置を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乾海苔の製造における水の衛生管理を的確に行うことが可能な塩素供給装置及び乾海苔製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る塩素供給装置及び乾海苔製造装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における調合機の機能構成を示すブロック図(a)及び漉き機の機能構成を示すブロック図(b)である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る塩素供給装置及び乾海苔製造装置の要部制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る乾海苔製造装置Aは、生海苔から乾海苔を製造する設備であり、
図1に示すように原藻タンク1、異物除去機2、裁断機3、調合機4、撹拌槽5、漉き機6、乾燥機7、海水ポンプ8、汲上ポンプ9、貯水槽10及び塩素供給装置Bを備えている。
【0014】
原藻タンク1は、海苔の養殖場(養殖水域)から収穫された原藻を一定時間に亘って貯留する容器であり、海水ポンプ8から供給された新鮮な海水と共に原藻を保存する。養殖場では生海苔が十分に生育すると、専用船(刈取船)によって海苔網から収穫される。この原藻は、専用船によって港に運ばれて原藻タンク1に収容されることによって陸揚げされる。すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、原藻タンク1によって原藻貯留工程が行われる。
【0015】
異物除去機2は、原藻タンク1に一定時間貯留された原藻から生海苔以外の異物を除去する装置である。この異物は、例えば極小さな海老等であり、養殖場における海苔の生育過程で海苔網に付着し得るものである。異物除去機2は、このような異物を原藻タンク1から受け入れた原藻から分離・回収することにより、生海苔のみを後段の裁断機3に供給する。
【0016】
すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、異物除去機2によって異物除去工程が行われる。また、この異物除去工程では、海水ポンプ8から供給された海水が原藻に添加されつつ、原藻に含まれる異物が効果的に除去される。このような異物除去機2から出力される生海苔は、水分が比較的少ないペースト状である。
【0017】
裁断機3は、生海苔を裁断することによって微細化する装置である。原藻に含まれる生海苔つまり養殖場で十分に生育した海苔(藻類)は、長尺状の個体を有している。このような生海苔を薄板状の乾海苔にするためには、原藻の個体長よりも微細化する必要がある。裁断機3は、生海苔を所望長さに裁断することにより、後述する漉き工程において均一な暑さで漉いた状態の生海苔が均一な厚さで矩形状に分散するように生海苔の個体サイズを最適化する。
【0018】
すなわち、この乾海苔製造装置Aでは、裁断機3によって裁断工程が行われる。また、この裁断工程では、生海苔を裁断する際に貯水槽10から取り込んだ真水が添加される。原藻は海水を含み、また原藻タンク1及び異物除去機2では海水が添加されるが、裁断工程では、生海苔が真水によって洗われることにより塩分が除去される。このような裁断機3から出力される生海苔は、水分が比較的少ないペースト状である。
【0019】
調合機4は、裁断機3から取り込んだペースト状の生海苔(生海苔ペースト)に所定量の真水を添加することにより、生海苔と真水との混合水(海苔混合水)を調合する装置である。この調合機4は、
図2(a)に示すように、撹拌インペラ4a、送込インペラ4b、圧送ポンプ4c、給水ポンプ4d及び調合制御装置4eを備えている。この調合機4は、生海苔の調合工程を行う。
【0020】
撹拌インペラ4aは、調合槽に収容された生海苔ペーストを撹拌する羽根車であり、専用モータ(撹拌モータ)によって回転駆動される。送込インペラ4bは、調合槽の底部に備えられ、生海苔ペーストを調合槽から圧送ポンプ4cに送り込む回転スクレイパーであり、専用モータ(送込モータ)によって回転駆動される。圧送ポンプ4cは、送込インペラ4bによって送り込まれた生海苔ペーストを撹拌槽5に送り出すポンプである。給水ポンプ4dは、圧送ポンプ4cから送り出された生海苔ペーストに貯水槽10から受け入れた適量の真水を供給するポンプである。
【0021】
上記撹拌モータは調合制御装置4eから入力される駆動信号(撹拌駆動信号S1)に基づいて作動し、上記送込モータは調合制御装置4eから入力される駆動信号(送込駆動信号S2)に基づいて作動する。また、圧送ポンプ4cは、調合制御装置4eから入力される駆動信号(圧送駆動信号S3)に基づいて作動する。さらに、給水ポンプ4dは、調合制御装置4eから入力される駆動信号(給水駆動信号S4)に基づいて作動する。これら撹拌駆動信号S1、送込駆動信号S2、圧送駆動信号S3及び給水駆動信号S4は、調合機4における駆動信号(調合機駆動信号S1~S4)である。
【0022】
調合制御装置4eは、撹拌槽5の水位センサ5aから入力される水位検出信号に基づいて、上述した撹拌駆動信号S1、送込駆動信号S2、圧送駆動信号S3及び給水駆動信号S4を生成する。すなわち、この調合制御装置4eは、撹拌駆動信号S1を撹拌モータに出力することにより撹拌インペラ4aを制御する。また、調合制御装置4eは、送込駆動信号S2を送込モータに出力することにより送込インペラ4bを制御する。
【0023】
また、調合制御装置4eは、圧送駆動信号S3を圧送ポンプ4cに出力することにより生海苔ペーストの出力量を制御する。さらに、調合制御装置4eは、給水駆動信号S4を給水ポンプ4dに出力することにより真水の出力量を制御する。すなわち、この調合機4は、圧送ポンプ4cによって設定される生海苔ペーストの出力量と給水ポンプ4dによって設定される真水の出力量によって生海苔と真水との調合比、つまり海苔混合水における生海苔濃度が決定される。
【0024】
撹拌槽5は、所定量の海苔混合水を貯留する容器であり、調合機4から受け入れた海苔混合水を撹拌すると共に生海苔濃度の微調整(最終調整)を行う。この撹拌槽5には、上述した水位センサ5aが設けられており、調合機4の調合制御装置4eによって海苔混合水の水位つまり海苔混合水の貯留量が制御される。上記水位センサ5aは、撹拌槽5における海苔混合水の水面高さを検出するセンサであり、水位検出信号を調合制御装置4eに出力する。
【0025】
また、この撹拌槽5は、図示しない濃度センサ、排水ポンプ、給水ポンプ及び濃度制御装置が備えられている。この撹拌槽5では、濃度センサが検出する海苔混合水の生海苔濃度が所望の目標濃度となるように、海苔混合水から真水のみを排水する排水ポンプ及び/あるいは海苔混合水に真水を供給する給水ポンプが濃度制御装置によって制御される。このような撹拌槽5によって生海苔濃度が最終調整された海苔混合水は漉き機6に順次供給される。
【0026】
漉き機6は、所定量の生海苔混合液を海苔簀に向けて吐出することにより、生海苔を海苔簀に貼り付ける装置である。この漉き機6には、複数の海苔簀が一列に配列した状態で設けられていると共に、各々の海苔簀に対応して複数のノズルが設けられている。この漉き機6では、各海苔簀に各ノズルから同時に生海苔混合液を吐出することにより、複数の海苔簀に同時並行的に生海苔を貼り付ける。すなわち、この漉き機6は、片面に生海苔が矩形状に付着すると共に一列に配列した複数の海苔簀(海苔付き簀)を乾燥機7に向けて送り出す。
【0027】
このような漉き機6は、
図2(b)に示すような制御構成を備えている。すなわち、この漉き機6は、制御的な構成要素として、漉き制御装置6a、漉きモータ6b、駆動カム6c及び開閉弁6dを備えている。漉き制御装置6aは、漉きモータ6bに駆動信号(漉き機駆動信号S5)を供給することにより、当該漉きモータ6bを制御する制御装置である。漉きモータ6bは、漉き機6における動力装置であり、漉き機駆動信号S5に基づいて回転することにより駆動軸を回転させる。
【0028】
駆動カム6cは、駆動軸の長手方向に一定間隔で複数設けられており、駆動軸の回転に伴ってカム面が駆動軸の回転中心に対して変位する。これら複数の駆動カム6cは、各カム面が同一形状かつ駆動軸の回転角に対して同一位相となるように駆動軸に固定されている。開閉弁6dは、駆動カム6cに対応して復設けられており、各々に上記カム面に当接する弁体を備えている。すなわち、複数の開閉弁6dは、上記駆動カム6cによって駆動されることにより、全て同一のタイミングで開閉する。
【0029】
ここで、漉き機6では各ノズルから生海苔混合水を各海苔簀に吐出することによって、真水が生海苔から分離する。すなわち、生海苔混合水を海苔簀に吐出すると、生海苔のみが海苔簀の片面に付着する。これに対して、生海苔混合水に含まれる真水は、海苔簀に形成されている隙間を通過して生海苔から分離する。このように生海苔から分離した真水は、漉き機6で回収され、第2使用液として貯水槽10に供給される。このような漉き機6は、生海苔の漉き工程を行う。
【0030】
乾燥機7は、漉き機6から供給される海苔簀に加熱処理を施すことにより、海苔簀の片面に矩形状に貼り付いた生海苔を乾燥させる。すなわち、乾燥機7は、漉き機6から同時並行的に供給される海苔簀を同時に加熱処理することにより、矩形状かつ乾燥状態の海苔(乾海苔)を製品として排出する。このような乾燥機7は、生海苔に対して乾燥工程を行う。
【0031】
海水ポンプ8は、図示しない海水タンクから新鮮な海水を汲み出して原藻タンク1及び異物除去機2に供給する。汲上ポンプ9は、地下水(真水)を汲み上げて貯水槽10に供給するポンプであり、図示しない制御装置(汲上制御装置)によって作動が制御される。すなわち、この汲上ポンプ9は、貯水槽10の水位が所定の目標水位になるように汲上制御装置によって制御される。
【0032】
貯水槽10は、汲上ポンプ9から供給される地下水、調合機4から供給される第1使用液及び漉き機6から供給される第2使用液を貯留する容器である。地下水、第1使用液及び第2使用液は、何れも塩分を含まない、あるいは塩分濃度が極めて低い真水である。貯水槽10は、このような地下水、第1使用液及び第2使用液の混合水を乾海苔の製造に使用する製造用水として貯留し、裁断機3及び調合機4に供給する。
【0033】
ここで、地下水は、水道水とは異なり、殺菌処理が施されていない。また、第1使用液及び第2使用液は、生海苔から分離されたものであり、微細な生海苔等の有機成分が含まれている。貯水槽10は、このような地下水、第1使用液及び第2使用液の混合水を製造用水として所定量貯留している。
【0034】
このような原藻タンク1、異物除去機2、裁断機3、調合機4、撹拌槽5、漉き機6、乾燥機7、海水ポンプ8、汲上ポンプ9及び貯水槽10のうち、裁断機3、調合機4、撹拌槽5及び漉き機6は、製造用水の流れ方向において、地下水及び各製造工程で使用された使用水を製造用水として貯留する貯水槽10の下流側に位置する製造機器である。すなわち、貯水槽10は、製造用水の流れ方向において汲上ポンプ9の次に上流側に位置する製造機器として位置付けられる。
【0035】
塩素供給装置Bは、このような貯水槽10に適量の塩素を添加する装置であり、塩素タンクb1及び塩素ポンプb2を備える。塩素タンクb1は、所定量の塩素を貯留する容器であり、塩素ポンプb2に塩素を供給する。なお、この塩素タンクb1が貯留する塩素は、正確には次亜塩素酸(HClO)を主成分とする塩素水溶液(例えば弱酸性次亜塩素酸水あるいは微酸性次亜塩素酸水)である。塩素ポンプb2は、貯水槽10の製造用水に塩素を添加する塩素添加部である。この塩素ポンプb2は、貯水槽10への塩素の添加量(塩素添加量)を調節する。
【0036】
このような塩素供給装置Bは、
図3に示すような制御構成を備えている。すなわち、塩素供給装置Bは、制御的な構成要素として、塩素添加制御装置b3を備えている。この塩素添加制御装置b3は、調合制御装置4eが出力する調合機駆動信号S1~S4及び/あるいは漉き制御装置6aが出力する漉き機駆動信号S5に基づいて塩素ポンプb2を制御することにより塩素添加量を制御する。このような塩素供給装置Bは、製造用水に対する塩素添加処理を行う。
【0037】
すなわち、塩素添加制御装置b3は、調合機駆動信号S1~S4及び/あるいは漉き機駆動信号S5に基づいて塩素ポンプb2を制御するための駆動信号(塩素添加駆動信号)を生成し、当該塩素添加駆動信号を塩素ポンプb2に出力することによって塩素ポンプb2の作動を制御する。
【0038】
なお、調合機駆動信号S1~S4及び漉き機駆動信号S5等、本実施形態における駆動信号は、乾海苔製造装置Aを構成する製造機器の作動時(運転時)を示す作動信号である。すなわち、本実施形態における駆動信号は、本発明の作動信号に相当する。
【0039】
次に、本実施形態に係る乾海苔製造装置A及び塩素供給装置Bの動作について詳しく説明する。
【0040】
この乾海苔製造装置Aでは、原藻タンク1に貯留された原藻を異物除去機2に順次供給することにより乾海苔の製造が開始される。すなわち、原藻タンク1における貯留工程において所定時間に亘って貯留された原藻は、異物除去機2に供給されて異物除去工程に供される。この異物除去工程では、極小の海老等の異物が除去されることによって生海苔のみが裁断機3に供給される。
【0041】
裁断工程では、上記異物除去工程で異物が除去された生海苔が裁断機3によって裁断され、所定の目標サイズに微細化される。そして、調合工程では、調合機4によって裁断工程で生成された生海苔ペーストに所定量の真水が添加されることによって生海苔混合水が調製される。
【0042】
ここで、調合工程では、調合制御装置4eが調合機駆動信号を用いて撹拌インペラ4a、送込インペラ4b、圧送ポンプ4c及び給水ポンプ4dを制御することによって、生海苔混合水が調製されて撹拌槽5に送り出される。調合制御装置4eは、4つの調合機駆動信号つまり撹拌駆動信号、送込駆動信号、圧送駆動信号及び給水駆動信号を同時並行的に生成して撹拌インペラ4a、送込インペラ4b、圧送ポンプ4c及び給水ポンプ4dに出力し、以って撹拌インペラ4a、送込インペラ4b、圧送ポンプ4c及び給水ポンプ4dを同時に作動させる。
【0043】
このような調合機駆動信号S1~S4は、乾海苔製造装置Aが稼働を開始すると、調合制御装置4eによって連続的に生成される。すなわち、この調合機駆動信号S1~S4は、乾海苔製造装置Aの稼働に連動した信号、つまり乾海苔製造装置Aにおける製造用水の使用量に密接に関連する信号である。
【0044】
撹拌工程では、調合工程から受け入れた生海苔濃度の最終調整が撹拌槽5によって行われ、調整後の生海苔混合水を漉き工程に供給する。漉き工程では、漉き機6によって生海苔が複数の海苔簀に同時並行的に順次貼り付けられ、生海苔が片面に付着した海苔簀を乾燥工程に順次供給する。
【0045】
ここで、漉き工程では、漉き制御装置6aが漉きモータ6bに出力する漉き機駆動信号S5に基づいて複数の開閉弁6dが開閉することによって、複数の海苔簀に生海苔混合水が吹き付けられる。すなわち、漉き機駆動信号S5は、乾海苔製造装置Aが稼働を開始すると、漉き制御装置6aによって生成されるので、乾海苔製造装置Aの稼働に連動した信号、つまり乾海苔製造装置Aにおける製造用水の使用量に密接に関連する信号である。
【0046】
さらに、乾燥工程では、生海苔が矩形状に付着した海苔簀を乾燥機7で加熱することによって矩形状の乾海苔を生成する。この乾燥工程では、海苔簀に付着した乾海苔を海苔簀から剥がし、乾海苔製造装置Aの製品として出力する。
【0047】
このような乾海苔製造装置Aにおいて、塩素供給装置Bは、塩素添加部製造用水の使用量に密接に関連する調合機駆動信号S1~S4あるいは/及び漉き機駆動信号S5に基づいて貯水槽10に塩素を添加する。すなわち、塩素添加制御装置b3は、調合制御装置4eが出力する調合機駆動信号S1~S4及び/あるいは漉き制御装置6aが出力する漉き機駆動信号S5に基づいて塩素ポンプb2を制御することによって、貯水槽10に貯留された製造用水の塩素濃度を設定する。
【0048】
例えば、塩素添加制御装置b3は、調合機駆動信号S1~S4及び漉き機駆動信号S5のいずれか一方のみに基づいて塩素添加駆動信号を生成する。すなわち、この塩素添加制御装置b3は、調合機駆動信号S1~S4あるいは漉き機駆動信号S5が入力されている間にのみ、つまり製造用水が貯水槽10から調合機4に取り込まれている場合、あるいは、漉き機6が生海苔混合水を海苔簀に吹き付けている場合にのみ、塩素ポンプb2から貯水槽10に塩素を添加させる。
【0049】
または、塩素添加制御装置b3は、調合機駆動信号S1~S4及び漉き機駆動信号S5の両方に基づいて塩素添加駆動信号を生成する。すなわち、この塩素添加制御装置b3は、調合機駆動信号S1~S4及び漉き機駆動信号S5の両方が入力されている間にのみ、製造用水が貯水槽10から調合機4に取り込まれている場合、かつ、漉き機6が生海苔混合水を海苔簀に吹き付けている場合にのみ、塩素ポンプb2から貯水槽10に塩素を添加させる。
【0050】
このような塩素供給装置Bは、塩素濃度が一般的な水道水における塩素濃度よりも低い塩素濃度、例えば0.1ppm程度となるように塩素水溶液を製造用水に添加する。
【0051】
本実施形態によれば、調合機駆動信号S1~S4あるいは/及び漉き機駆動信号S5に基づいて貯水槽10に添加する塩素の添加量が調節されるので、製造用水の塩素濃度を目標濃度に維持することが可能である。すなわち、本実施形態によれば、製造用水の塩素濃度が目標濃度に対して極端に高くなること、また目標濃度に対して極端に低くなることを的確に防止することが可能である。したがって、本実施形態によれば、乾海苔の製造における製造用水の衛生管理を的確に行うことが可能である。
【0052】
例えば、製造用水の流れ方向として貯水槽10の上流側に位置する汲上ポンプ9の駆動信号を作動信号として塩素添加制御装置b3に取り込んで塩素添加量を制御することが考えられるが、この場合には製造用水が使用されない状態、つまり調合機4や漉き機6等が作動を停止している状態において、塩素供給装置Bから貯水槽10に塩素水溶液を添加してしまうことが発生し得る。このような状態での塩素水溶液の添加は、製造用水の塩素濃度を目標濃度に対して極端に高くすることになるので好ましくない。
【0053】
また、製造用水の塩素濃度を目標濃度に維持するための制御手法として、例えば貯水槽10に塩素濃度計を設置し、当該塩素濃度計の検出結果に基づいて塩素ポンプb2をフィードバック制御することが考えられる。しかしながら、上記塩素濃度計は比較的高価であり、乾海苔製造装置A及び塩素供給装置Bのコストアップを招く。このような事情から本実施形態ではフィードバック制御手法ではなく、調合機駆動信号S1~S4あるいは/及び漉き機駆動信号S5に基づくオープンループ制御手法によって塩素ポンプb2を制御する。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、調合機駆動信号S1~S4あるいは/及び漉き機駆動信号S5に基づいて貯水槽10に塩素を添加したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、塩素供給装置Bは、貯水槽10に貯留されている製造用水の流れ方向において、貯水槽10の下流側に位置する製造機器つまり裁断機3、調合機4、撹拌槽5及び漉き機6のいずれか1つあるいは複数の作動信号に基づいて塩素を添加してもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、製造機器の駆動信号を塩素添加処理における作動信号としたが、本発明はこれに限定されない。製造機器の作動時(運転時)を示す信号であれば、駆動信号以外の信号を用いて塩素添加処理を行ってもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、調合機駆動信号S1~S4を用いて塩素添加処理を行ったが、調合機駆動信号S1~S4には、撹拌駆動信号、送込駆動信号、圧送駆動信号及び給水駆動信号が含まれる。撹拌駆動信号S1、送込駆動信号S2、圧送駆動信号S3及び給水駆動信号S4のうちいずれか1つあるいは複数を用いて塩素添加処理を行ってもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、塩分を含まない、あるいは塩分濃度が極めて低い製造用水に塩素を添加したが、本発明はこれに限定されない。上記製造用水に加えて、原藻タンク1及び異物除去機2等で使用される海水、つまり塩分を含む製造用水(製造用海水)にも塩素を添加してもよい。なお、この場合には、製造用海水を使用する原藻タンク1及び異物除去機2等の作動信号に基づいて塩素を製造用海水に添加する。
【0058】
(5)上記実施形態では、製造用水に添加する塩素として次亜塩素酸(HClO)を主成分とする塩素水溶液を用いたが、本発明はこれに限定されない。塩素による殺菌作用が期待できる薬剤であれば、次亜塩素酸(HClO)以外の薬剤を主成とする塩素水溶液を用いてもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では、塩素濃度が0.1ppm程度となるように塩素水溶液を製造用水に添加したが、本発明はこれに限定されない。塩素濃度は、殺菌作用が期待できること、また生海苔に悪影響を与えないことを考慮して選定されるべきものである。
【0060】
(7)上記実施形態では、貯水槽10に塩素を添加したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、塩素は製造用水の流路のいずれに添加してもよい。例えば、乾燥機7で乾海苔が剥がされた海苔簀には微量な乾海苔が残存することがあるので、乾燥工程では高圧洗浄機を用いた海苔簀の高圧洗浄が行われる場合がある。この高圧洗浄機には高圧洗浄水として製造用水が用いられるので、上述した貯水槽10に加えてあるいは貯水槽10に代えて、高圧洗浄機に供給する製造用水に塩素を添加してもよい。
【符号の説明】
【0061】
A 乾海苔製造装置
B 塩素供給装置
b1 塩素タンク
b2 塩素ポンプ(塩素添加部)
b3 塩素添加制御装置
S1 撹拌駆動信号
S2 送込駆動信号
S3 圧送駆動信号
S4 給水駆動信号
S5 漉き機駆動信号
1 原藻タンク
2 異物除去機
3 裁断機
4 調合機
4a 濃度センサ
4b 調合制御装置
4c 排水ポンプ
4d 給水ポンプ
5 撹拌槽
6 漉き機
6a 漉き制御装置
6b 漉きモータ
6c 駆動カム
6d 開閉弁
7 乾燥機
8 海水ポンプ
9 汲上ポンプ
10 貯水槽