(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
G09F 3/03 20060101AFI20231030BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G09F3/03 D
G09F3/10 J
(21)【出願番号】P 2020053445
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月6日にポートメッセなごやにおいて開催されたメッセナゴヤ2019において、株式会社ユニバースパッケージが出品
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509102731
【氏名又は名称】株式会社ユニバースパッケージ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】小栗 千春
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174352(WO,A1)
【文献】特開2019-174638(JP,A)
【文献】特開2017-178351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/03
G09F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として開閉可能な容器、箱体等を封印するために用いられる基材の裏面に粘着剤層を設けたシール部材であって、
前記基材の表面の周縁際に谷折り線が
設けられており、
その谷折り線と交差するように谷折り状の起上抑制線が設けられていることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記谷折り線が複数本並べて設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記基材がポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項1、または2に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開閉可能な容器、箱体等の封印や広告・ポスター等の貼り付け等に用いられるシール部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉可能な容器、箱体等の封印や広告・ポスター等の貼り付け等に用いられる部材として、トラック形や円形等の形状を有するシール部材が用いられることがある。ところが、かかるシール部材は、剥がす際に、摘まむきっかけがないと、箱体、容器、封書等から容易に、かつ、綺麗に剥がすことができないし、反対に、裏面の粘着力あるいは接着力が低いと、予期しないタイミングで不用意に箱体、容器、封書等から剥がれる事態が生じてしまう、という不具合がある。
【0003】
そのような不具合を調整すべく、特許文献1の如く、貼付面に粘着力の異なる粘着剤を使用することによって貼付対象面への接着強度に差を設けるとともに、粘着度の境界部分にトムソン加工によりミシン目を施すことによって、貼付対象面から剥離するときに、接着強度の弱い部分を剥離、分離させ、接着強度の強い部分を貼付対象面に止まらせるように構成されたシール部材が開発されている。また、特許文献2の如く、周囲の輪郭際に粘着性を有さない一定幅の非粘着部を設けて剥し易くしたシール部材も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3209130号公報
【文献】特開2011-174986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き従来のシール部材は、剥がす際には比較的容易に剥がすことができるものの、粘着剤層の構成がきわめて複雑であるため、安価かつ容易に製造することが困難である。また、特許文献2の如きシール部材も、粘着面に短いピッチで非粘着部を設けなければならないため、安価かつ容易に製造することが難しい。
【0006】
本発明の目的は、上記従来のシール部材が有する問題点を解消し、貼り付けられた箱体や容器等から開封者等が非常に容易に剥がすことができる上、安価かつ容易に製造することが可能で実用性に優れたシール部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、主として開閉可能な容器、箱体等を封印するために用いられる基材の裏面に粘着剤層を設けたシール部材であって、前記基材の表面の周縁際に谷折り線が設けられており、その谷折り線と交差するように谷折り状の起上抑制線が設けられていることを特徴とするものである。なお、本発明に係るシール部材は、主として開閉可能な各種の箱体、容器や封書等の封印の用途に用いられるものであるが、その用途のみに限定されず、壁への広告やポスター等の貼り付け等の本来的な封印以外の用途にも広く用いることができるものである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記谷折り線が複数本並べて設けられたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または2に記載された発明において、前記基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムあるいはポリプロピレン(PP)フィルムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載されたシール部材は、基材の表面の周縁際に谷折り線が設けられており、容器や箱体等の被粘着物に粘着された場合(貼り付けられた場合)に、その谷折り線の外側の端縁が、その被粘着物の表面から離れた状態(あるいは、離れ易い状態)になるため、開封者が、人差し指の爪等によって谷折り線の外側の端縁を容易に起き上がらせて開封することができる。
【0012】
請求項2に記載されたシール部材は、複数の谷折り線が平行に設けられているため、開封者が、人差し指の爪等によって起き上がらせた谷折り線の外側の端縁を、大きな力を加えることなくさらに上方まで起き上がらせることができるので、より容易に開封することができる。
【0013】
請求項3に記載されたシール部材は、基材がPETフィルムあるいはPPフィルムによって形成されており、剛性が高く、かつ、耐久性に優れているため、谷折り線の外側の端縁が長期間に亘って被粘着物の表面から離れた状態(あるいは、離れ易い状態)で保たれるので、開封者が谷折り線の外側の端縁を容易に起き上がらせ得る状態が長期間に亘って維持される。
【0014】
請求項1に記載されたシール部材は、谷折り線と交差するように谷折り状の起上抑制線が設けられており、当該起上抑制線の下面の部分が被粘着物(容器や箱体等)の表面に粘着した状態で保たれるので、谷折り線の外側の端縁が不必要に(開封時以外に)起き上がる事態が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1のシール部材を示す説明図である(aは平面図であり、bはaにおけるA-A線断面である)。
【
図2】実施例1のシール部材を製造する様子を示す説明図(平面図)である。
【
図3】実施例1のシール部材を剥がす様子を示す説明図(斜視図)である。
【
図4】実施例2のシール部材を示す説明図である(aは平面図であり、bはaにおけるA-A線断面である)。
【
図5】シール部材の変更例を示す説明図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るシール部材は、基材の裏面に粘着剤層が積層されており、周縁際に少なくとも1本以上の谷折り線(表面側から見て谷状のもの)が設けられていることを特徴とするものである。当該谷折り線は、基材の表面に金属板や裁断不能にした刃等を押し当てることによって形成することができる。また、谷折り線の数は、特に限定されないが、1本以上4本以下であると、シール部材の被粘着物(箱や容器等)からの引き剥がしが容易になるので好ましい。加えて、谷折り線の数が複数本(特に3本以上)であると、シール部材を以下の三段階で被粘着物から引き剥がすことが可能になり、結果的に被粘着物からの引き剥がしがきわめて容易になるので特に好ましい(
図3参照)。
(1)周縁に軽く人差し指の爪等を引っ掛けてシール部材の周縁を起き上がらせる
(2)さらに軽く指先を周縁に押し当てて、シール部材の周縁を大きな立ち上がり角度(45°前後)になるように起き上がらせる
(3)大きな立ち上がり角度で起き上がった周縁際の部分を二指の指先で摘まんでシール部材を引き剥がす
【0017】
また、周縁に複数の谷折り線を設ける場合には、周縁と最外位置の谷折り線との間隔と、谷折り線同士の間隔とを同じにすることも可能であるし、異ならせることも可能であるが、周縁と最外位置の谷折り線との間隔、および、谷折り線同士の間隔を、いずれも0.5mm以上1.2mm以下に調整すると、シール部材の被粘着物からの引き剥がしがきわめて容易になるので好ましい。
【0018】
また、シール部材の基材の材質は、特に限定されず、合成樹脂フィルムや紙等を好適に用いることができるが、基材がPETフィルムあるいはPPフィルムであると、谷折り線の形状が経時変化しにくい上、引っ掛かり部の起き上がり力を調整し易いため、引き剥がし容易性が長期間に亘って損なわれないので好ましい。なお、シール部材の基材が、15μm以上200μm以下の厚みを有するPETフィルムあるいはPPフィルムであると、谷折り線の形状の保持機能が良好なものとなるので好ましく、25μm以上100μm以下の厚みであるとより好ましい。
【0019】
一方、シール部材の形状は、特に限定されず、円形状、楕円形状、トラック状、多角形状等の各種の形状とすることが可能である。本発明に係るシール部材を、略直角状に折り曲げた状態で箱や容器等の開閉部に貼り付けることによって封印するものとする場合には、折り曲げる部分に直線状の表示やミシン目等を設けることも可能である。かかる構成を採用した場合には、それらの直線状の表示やミシン目等が折り曲げ位置(箱や容器の本体と蓋材との境界位置)の目安になるので封印作業が容易なものとなる、というメリットがある。加えて、折り曲げる部分にミシン目を設けた場合には、略直角状に折り曲げた状態を保ち易くなり、貼り付けた箱や容器の表面から剥がれにくくなる、というメリットもある。
【0020】
また、本発明に係るシール部材においては、裏面の粘着剤層の粘着強度によって周縁際に設ける谷折り線の個数を異ならせるのが好ましい。すなわち、接着力(ここでは、ステンレス板に粘着させて剥離(180°剥離)する際の25mm幅当たりの接着力(粘着力)を言う)が0.5N~2.0Nである所謂“低粘着レベル”のシール部材である場合には、主たる谷折り線と補助谷折り線とを合わせて1~3本の谷折り線を設けるのが好ましく、接着力が2.0N~8.0Nである“中粘着レベル”のシール部材である場合には、主たる谷折り線と補助谷折り線とを合わせて2,3本の谷折り線を設けるのが好ましく、接着力が8.0N~15.0Nである“強粘着レベル”のシール部材である場合には、主たる谷折り線と補助谷折り線とを合わせて3,4本の谷折り線を設けるのが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明に係るシール部材について、実施例によって詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。
【0022】
[実施例1]
<シール部材の構造>
図1(a)は、実施例1のシール部材を示したものである。シール部材S
1は、基材Bの裏面に粘着剤層Aを積層したものであり、その粘着剤層Aには、離型紙Eが積層されている。基材Bは、所定の厚み(約50μm)を有する透明な合成樹脂フィルム(PETフィルム)によって、所定の大きさ(長さ×幅=40mm×20mm)のトラック形(長方形の各短辺を円弧状にした形状)に形成されている。そして、その基材Bの裏面には、アクリル系樹脂(溶剤を加えたもの)からなる粘着剤層Aが積層されている。加えて、その粘着剤層Aの下側に、離型紙Eが積層された状態になっている。
【0023】
さらに、シール部材S1の長手方向における片方の端縁際には、主谷折り線(表面側から見て谷折り状のもの)L1が設けられており、その主谷折り線L1の外側に、剥がす際に爪等を引っ掛ける起点となる所定の幅(最大幅=約1.0mm)の引っ掛かり部Tが形成された状態になっている。そして、当該引っ掛かり部Tにおいては、外端縁と谷折れ線L1との間隔が狭くなっているため(約1.0mm)、基材Bの弾性により起き上がり力が働き易くなっている。また、主谷折り線L1の内側には、2本の補助谷折り線L2,L3が主谷折り線L1と平行になるように設けられており、主谷折り線L1から補助谷折り線L2までの幅、補助谷折り線L2から補助谷折り線L3までの幅が、それぞれ、約1.0mmに調整されている。
【0024】
さらに、3本の谷折り線L1~L3の幅方向の中間位置には、それらの谷折り線L1~L3と交差(直交)するように、起上抑制線Iが谷折り状に設けられている。当該起上抑制線Iは、シール部材S1の周縁から一番内側の谷折り線L3の内側まで至っており、最も内側の部分の左右には、それぞれ、谷折り状の短い傾斜線i,iが付設されており、起上抑制線Iと短い2本の傾斜線i,iとによって矢印が形成された状態になっている。かかる起上抑制線Iは、3本の谷折り線L1~L3を設けることによって基材Bの端縁際に付与された起き上がり力を抑制する機能を奏するとともに、引っ掛かり部Tの形成部位を示す目印としても機能する。加えて、起上抑制線Iと傾斜線i,iとからなる矢印が、シール部材S1を捲る方向を示す機能を奏する。
【0025】
一方、
図1(b)は、
図1(a)におけるA-A線断面を示したものであり、シール部材S
1の端縁際の3本の谷折り線L
1~L
3の形成部分の裏面側(粘着剤層Aの形成面側)においては、谷折り線L
1の形成部分P
1、谷折り線L
1と谷折り線L
2との中間の部分P
2、谷折り線L
2の形成部分P
3、谷折り線L
2と谷折り線L
3との中間の部分P
4、および、谷折り線L
3の形成部分P
5が、離型紙Eに接触した状態になっている。そして、谷折り線L
1の形成部分P
1の外側の部分、谷折り線L
1の形成部分P
1と隣り合った内側の部分、谷折り線L
2の形成部分P
2と隣り合った外側・内側の部分、および、谷折り線L
3の形成部分P
5と隣り合った外側・内側の部分が、離型紙Eから剥がれた状態(あるいは簡単に剥がれ易い状態)になっている。
【0026】
<シール部材の製造方法>
図2は、シール部材S
1を製造する様子を示したものである。シール部材S
1の製造には、基材Bとなる所定の厚み(約50μm)を有する透明な合成樹脂フィルム(PETフィルム)Fを離型紙E上に積層してなる一定幅の長尺なシール状物が用いられる(
図2(a)参照)。長尺なシール状物においては、合成樹脂フィルムFの裏面に、厚みが約20μm程度になるように粘着剤(アクリル系樹脂に溶剤を加えたもの)が積層されており、当該粘着剤によって、離型紙Eが(剥離可能に)貼り付いた状態(粘着した状態)になっている。
【0027】
シール部材S
1を製造する際には、まず、シール状物の長手方向に沿って、トラック形の切り込みC,C・・が設けられる(
図2(b)参照)。なお、当該切り込みC,C・・は、トラック形の刃を有する治具がシール状物に押し当てられることによって形成されるが、合成樹脂フィルムFおよび粘着剤が完全に裁断され、かつ、離型紙Eが裁断されずに残るような態様で形成される。
【0028】
そして、上記の如く、シール状物の長手方向に沿ってトラック形の切り込みC,C・・を形成した後には、各トラック形の切り込みC,C・・の周縁際に、3本の谷折り線(すなわち、主谷折り線L
1、および補助谷折り線L
2,L
3)が設けられる(
図2(c)参照)。なお、それらの谷折り線L
1~L
3は、平行な3本の直線状の刃(裁断不能な刃)を有する治具がシール状物に押し当てられることによって、上から見て“谷折り”状に形成される。また、それらの主谷折り線L
1、および補助谷折り線L
2,L
3を形成した後には、同様な方法で、起上抑制線Iが谷折り線L
1~L
3を直交状に横切るように形成されるとともに、その起上抑制線Iの先端に傾斜線i,iが形成される(
図2(d)参照)。
【0029】
そして、上記の如く、シール状物の長手方向に沿って並べたトラック形の切り込みC,C・・の周縁際に、谷折り線L
1~L
3を形成するとともに、起上抑制線Iおよび傾斜線i,iを形成した後には、円形の切り込みC,C・・の外側の合成樹脂フィルムFを離型紙Eから引き剥がすことによって、シール部材S
1,S
1・・(離型紙E上に複数のシール部材S
1,S
1・・が並んだもの)を得ることができる(
図2(e)参照)。
【0030】
<シール部材の使用方法>
上記の如く構成されたシール部材S
1を使用する際には、基材Bを離型紙Eから剥がして、開閉可能な各種の箱体や容器に貼り付ける(粘着させる)。なお、貼り付ける際には、シール部材S
1の中間の部分が封印する箱体や容器等の本体と蓋材との境界に位置し、谷折り線L
1~L
3が開封者の人差し指の爪を掛け易い位置になるように(たとえば、谷折り線L
1~L
3が鉛直下側に位置するように)貼り付ける(粘着させる)。そのように箱体や容器等に貼り付けた場合には、シール部材S
1の谷折り線L
1~L
3の形成部分の裏面側においては、谷折り線L
1の形成部分P
1、谷折り線L
1と谷折り線L
2との中間の部分P
2、谷折り線L
2の形成部分P
3、谷折り線L
2と谷折り線L
3との中間の部分P
4、および、谷折り線L
3の形成部分P
5が、被粘着物(箱体や容器等)の表面に接触した状態になる。そして、谷折り線L
1の形成部分P
1の外側の部分、谷折り線L
1の形成部分P
1と隣り合った内側の部分、谷折り線L
2の形成部分P
2と隣り合った外側・内側の部分、および、谷折り線L
3の形成部分P
5と隣り合った外側・内側の部分が、被粘着物の表面から離れた状態(あるいは基材Bの弾性によって簡単に離れ易い状態)になる(
図1(b)参照)。
【0031】
また、
図3は、箱体や容器等からシール部材S
1を剥がす様子を示したものであり、シール部材S
1,S
1を剥がす場合には、
図3(a)の如く、主谷折り線L
1の外側の部分(引っ掛かり部T)に人差し指の爪等を引っ掛けて、上方に起き上がらせる。シール部材S
1においては、上記の如く、主谷折り線L
1の外側の部分が、箱体や容器等の被粘着物の表面から離れた状態(あるいは簡単に離れ易い状態)になっているため(
図1(b)参照)、開封者は、主谷折り線L
1の外側の部分を人差し指の爪等によって容易に上方に起き上がらせることができる。
【0032】
上記の如く、主谷折り線L
1の外側の部分(引っ掛かり部T)を人差し指の爪等によって上方に起き上がらせた後には、さらに指先を軽く周縁に押し当てることによって、主谷折り線L
1の外側の部分を大きな立ち上がり角度(45°前後)になるように起き上がらせるとともに、補助谷折り線L
2の外側の部分を起き上がらせる(
図3(b)参照)。シール部材S
1においては、上記の如く、補助谷折り線L
2の外側の部分も被粘着物の表面から離れた状態(あるいは離れ易い状態)になっているため(
図1(b)参照)、開封者は、指先を軽く周縁に押し当てるだけで、補助谷折り線L
3の外側の部分も容易に上方に起き上がらせることができる。
【0033】
そして、主谷折り線L
1の外側の部分を大きな角度で立ち上がらせ、かつ、補助谷折り線L
2の外側の部分を起き上がらせた後には、それらの起き上がった部分(補助谷折り線L
2の外側の部分および主谷折り線L
1の外側の部分)を二指の指先で摘まんで(挟んで)、シール部材S
1全体を引き剥がす(
図3(c)参照)。シール部材S
1においては、上記の如く、最も内側の補助谷折り線L
3の外側および内側の部分も被粘着物の表面から離れた状態(あるいは離れ易い状態)になっているため(
図1(b)参照)、開封者は、主谷折り線L
1の外側の部分および補助谷折り線L
2の外側の部分を二指の指先で摘まみ上げることによって、補助谷折り線L
3の内側の部分まで、大きな力を加えることなく容易に引き剥がすことができる。
【0034】
<シール部材の効果>
実施例1のシール部材S1は、上記の如く、基材Bの表面の周縁際に谷折り線L1~L3が設けられており、容器や箱体等の被粘着物に貼り付けた場合(粘着させた場合)に、谷折り線L1の外側の部分(すなわち、引っ掛かり部T)が、その被粘着物の表面から離れた状態(離れ易い状態)になるため、開封者が、人差し指の爪等によって容易に谷折り線L1の外側の端縁を起き上がらせて摘まんでから開封することができる。
【0035】
また、シール部材S1は、3本の谷折り線L1~L3が並べて設けられているため、開封者が人差し指の爪等によって起き上がらせた谷折り線L1の外側の端縁を、大きな力を加えることなくさらに上方まで起き上がらせることができ、谷折り線L2の外側の部分および谷折り線L1の外側の部分を簡単に摘まむことができるので、より容易に開封することができる。
【0036】
さらに、シール部材S1は、基材BがPETフィルムであり、剛性が高く、かつ、耐久性に優れているため、谷折り線L1の外側の部分(すなわち、引っ掛かり部T)が被粘着物の表面から離れた状態(あるいは離れ易い状態)で保たれるので、開封者が谷折り線L1の外側の部分(すなわち、引っ掛かり部T)を容易に起き上がらせ得る状態が長期間に亘って維持される。
【0037】
加えて、シール部材S1は、谷折り線L1~L3と直交するように谷折り状の起上抑制線Iが設けられており、その谷折り状の起上抑制線Iの下面の部分が粘着物の表面に粘着した状態で保たれるので、谷折り線L3の外側の端縁が不必要に(開封時以外に)起き上がる事態が生じない上、開封者が、起上抑制線Iおよび傾斜線i,iによって開封作業を行うべき位置を瞬時に認識することができるため、きわめて容易に開封することができる。
【0038】
[実施例2]
<シール部材の構造>
図4(a)は、実施例2のシール部材を示したものである。シール部材S
2も、実施例1のシール部材S
1と同様に、基材Bの裏面に粘着剤層Aを積層したものであるが、実施例1のシール部材S
1 と異なり、端縁際部分に、単一の谷折り線(表面側から見て谷折り状のもの)L
1のみが設けられている。なお、谷折り線L
1とシール部材S
2の外端縁との間隔は、実施例1のシール部材S
1と同様に約1.0mmになっている(すなわち、引っ掛かり部Tの幅が約1.0mmになっている)。
【0039】
一方、
図4(b)は、
図4(a)におけるA-A線断面を示したものであり、シール部材S
2の端縁際の谷折り線L
1の形成部分の裏面側(粘着剤層Aの形成面側)においては、谷折り線L
1の形成部分P
1の外側の部分、谷折り線L
1の形成部分P
1と隣り合った内側の部分が、離型紙Eから剥がれた状態(あるいは簡単に剥がれ易い状態)になっている。
【0040】
<シール部材の効果>
実施例2のシール部材S2も、実施例1のシール部材S1と同様に、基材Bの表面の周縁際に谷折り線L1が設けられており、容器や箱体等の被粘着物に粘着した場合(貼り付けられた場合)に、谷折り線L1の外側の部分(すなわち、引っ掛かり部T)が、その被粘着物の表面から離れた状態(あるいは離れ易い状態)になるため、開封者が、人差し指の爪等によって容易に谷折り線L1の外側の端縁を起き上がらせて開封することができる。
【0041】
[シール部材の変更例]
本発明に係るシール部材は、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、本体の材質、厚み、形状、構造、粘着剤層の材質、粘着剤による粘着強度、厚み等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0042】
たとえば、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、本体(粘着剤以外の部分)が、PETフィルムによって形成されているものに限定されず、本体がポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリアミドフィルム等のPETフィルム以外のフィルムによって形成されたものでも良いし、本体が複数種類の合成樹脂からなる積層フィルムによって形成されたもの等でも良い。また、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、基材の裏面にアクリル系樹脂からなる粘着剤層を積層したものに限定されず、ウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等のアクリル系樹脂以外の樹脂からなる粘着剤層や接着剤層を基材の裏面に積層したものでも良い。
【0043】
また、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、基材の表面の端縁際に設ける谷折り線が3本であるものに限定されず、
図5(a)の如く、谷折り線が2本であるものや、
図5(b)の如く、谷折り線が4本であるもの等でも良い。また、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、複数の谷折り線が平行(略平行を含む)になっているものに限定されず、複数の谷折り線が所定の角度を成した状態になっているものでも良い。一方、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、各谷折り線(主谷折り線および補助谷折り線)が単なる折り曲げ線であるものに限定されず、各谷折り線の鉛直断面(谷折り線と直交する鉛直断面)が溝状であるもの(すなわち、谷折り線が一定の幅を有するもの)や、谷折り線に沿って(カッター等で)切り込みが形成されているもの等に変更することも可能である。加えて、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、連続した谷折れ線を設けたものに限定されず、不連続の(たとえば、破線状等の)谷折れ線を設けたものでも良い。また、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、各谷折り線が直線状であるものに限定されず、各谷折り線が曲線状であるもの等でも良い。
【0044】
さらに、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、左右あるいは上下の片側に谷折り線が設けられたものに限定されず、
図5(c)の如く、左右あるいは上下の両側に谷折り線が設けられたものに変更することも可能である。加えて、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、谷折り線や起上抑制線のみが設けられたものに限定されず、谷折り線の近傍に、その存在を知らせるための○、◎、△、□、☆等の各種のマーク等を付したもの等にすることも可能である。
【0045】
また、本発明に係るシール部材は、上記実施形態の如く、トラック形状のものに限定されず、
図5(d)の如き円形状のもの、
図5(e)の如き楕円形状のもの、
図5(f)の如き六角形状や
図5(g)の如き八角形状等の多角形状のもの等でも良い。さらに、シール部材を多角形状のものとする場合には、
図5(h)の如く、多角形の頂点に谷折り線を設けることも可能である。加えて、結婚式の引き出物の容器等に本発明に係るシール部材を用いる場合には、全体形状を扇形等の形状にすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るシール部材は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、開閉可能な各種の容器、箱体等を封印するための部材や、壁に広告やポスター等を貼り付けるための部材等として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
S,S1,S2・・シール部材
B・・基材
A・・粘着剤層
E・・離型紙
L1・・谷折り線(主谷折り線)
L2,L3・・谷折り線(補助谷折り線)
T・・引っ掛かり部
I・・起上抑制線