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  • 特許-咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法 図1
  • 特許-咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法 図2
  • 特許-咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法 図3
  • 特許-咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 11/00 20060101AFI20231030BHJP
   A61C 19/045 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61C11/00 B
A61C19/045 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020149866
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044305
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】599066676
【氏名又は名称】学校法人東京歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】山下 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光雄
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-086316(JP,U)
【文献】実開平05-000123(JP,U)
【文献】米国特許第04242087(US,A)
【文献】特開昭64-58251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 11/00-08
A61C 19/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の左右の耳珠の上縁に当接させる一対の耳珠上縁当接部と、前記患者の鼻翼の下縁に当接させる鼻翼下縁当接部と、前記一対の耳珠上縁当接部及び前記鼻翼下縁当接部を、前記左右の耳珠の上縁及び前記鼻翼の下縁の3点を含むカンペル平面上に保持するアーム部と、を有するカンペル平面測定ユニットと、
前記患者の口腔内において、前記カンペル平面に対して平行に延びる仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想咬合平面における仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を走行する仮想咬合平面指示部を有する咬合平面指示ユニットと、
前記カンペル平面測定ユニットと、前記咬合平面指示ユニットとを、前記仮想咬合平面指示部が前記カンペル平面に対して平行な状態を維持したまま移動可能に接続する支柱と、を備え、
前記耳珠上縁当接部の先端には、それぞれ、前記患者と直接接触する先端部が設けられており、かつ、当該先端部は、それぞれ、耳珠上縁当接部に対して、前記カンペル平面に平行な面内で回転可能に接続されており、
前記鼻翼下縁当接部は、前記患者の顔の左右に配置されて前記患者の顔の前方から前記患者の耳に向けて延びる前記アーム部と平行な方向において、摺動可能に接続されている咬合平面再現装置。
【請求項2】
前記咬合平面指示ユニットが、前記仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想歯列の上顎中切歯切縁部の位置を指示する歯列前端指示部を、更に有する請求項1に記載の咬合平面再現装置。
【請求項3】
前記一対の耳珠上縁当接部が、前記カンペル平面上で前記患者の耳に近づく又は遠ざかる方向において摺動可能に前記アーム部に接続されており、
前記鼻翼下縁当接部が、前記カンペル平面上で前記患者の鼻に近づく又は遠ざかる方向において摺動可能に前記アーム部に接続されている、請求項1又は請求項2に記載の咬合平面再現装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の咬合平面再現装置を用いた咬合平面再現方法であって、
患者の左右の耳珠の上縁及び前記患者の鼻翼の下縁の3点を含むカンペル平面を測定するカンペル平面測定工程と、
前記患者の口腔内において、前記カンペル平面に対して平行に延びる仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想咬合平面における仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を指示する咬合平面指示工程と、を有する咬合平面再現方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咬合平面再現装置、及び当該咬合平面再現装置を用いた咬合平面再現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯列中の歯が部分的に欠損した患者に対して、喪失した顎機能を回復するために、補綴装置を口腔内に装着する治療が行われる。欠損している歯が多数にわたる患者の場合、咬合平面を再構成する必要があり、例えば、患者の口腔内の印象を採取して製作した模型上で分析する方法(例えば、特許文献1)や、レントゲン、CT等の画像を用いて分析する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-220079号公報
【文献】特開2016-087401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、咬合平面を間接的に分析することになり、患者の口腔内で直接的に咬合平面を分析することが難しい。
【0005】
なお、全部床義歯で使用する咬合平面設定板を口腔内に挿入し、咬合平面を分析する方法がある。しかしながら、歯列中の歯が部分的に欠損した患者において、その残存歯について上顎又は下顎の対合する歯が欠損、あるいは歯冠形態が著しく損傷していた場合、当該残存歯が、咬合平面から挺出する場合がある。その場合、患者の残存歯の位置に合わせた貫通孔が設けられた咬合平面設定板を患者ごとに準備することが必要となる(例えば、特許文献2)。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、歯列中の歯が部分的に欠損し、当該歯列の残存歯が咬合平面から挺出していたり、咬合平面より低位にあったりする患者の口腔内において、咬合平面を直接的に再現する咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法ことを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)患者の左右の耳珠の上縁に当接させる一対の耳珠上縁当接部と、前記患者の鼻翼の下縁に当接させる鼻翼下縁当接部と、前記一対の耳珠上縁当接部及び前記鼻翼下縁当接部を、前記左右の耳珠の上縁及び前記鼻翼の下縁の3点を含むカンペル平面上に保持するアーム部と、を有するカンペル平面測定ユニットと、前記患者の口腔内において、前記カンペル平面に対して平行に延びる仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想咬合平面における仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を走行する仮想咬合平面指示部を有する咬合平面指示ユニットと、前記カンペル平面測定ユニットと、前記咬合平面指示ユニットとを、前記仮想咬合平面指示部が前記カンペル平面に対して平行な状態を維持したまま移動可能に接続する支柱と、を備える咬合平面再現装置。
【0008】
(2)患者の左右の耳珠の上縁及び前記患者の鼻翼の下縁の3点を含むカンペル平面を測定するカンペル平面測定工程と、前記患者の口腔内において、前記カンペル平面に対して平行に延びる仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想咬合平面における仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を指示する咬合平面指示工程と、を有する咬合平面再現方法。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歯列中の歯が部分的に欠損し、当該歯列の残存歯が咬合平面から挺出していたり、咬合平面より低位にあったりする患者の口腔内において、咬合平面を直接的に再現する咬合平面再現装置及び咬合平面再現方法ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】カンペル平面Pc及び仮想咬合平面Pbの説明図
図2】実施形態1に係る咬合平面再現装置1を患者が装着した状態を示す模式図
図3】実施形態1に係る咬合平面再現装置1の模式図
図4】咬合平面指示ユニット30の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る咬合平面再現装置について、図面を参照しながら順に説明する。まず、カンペル平面Pc及び仮想咬合平面Pbについて説明する。図1は、カンペル平面Pc及び仮想咬合平面Pbの説明図である。図1は、患者の頭部を右側から見た図であり、説明のため、口腔内の一部を示した図である。
【0013】
カンペル平面Pcは、患者の左右の耳珠4の上縁と、鼻翼5の下縁の3点を含む平面である。カンペル平面Pcは、左右の鼻翼5の下縁のうちどちらか一方を含んでいればよいが、通常、両方を含むことが多い。図1中、カンペル平面Pcを二点鎖線で示している。本実施形態において、仮想咬合平面Pbは、カンペル平面Pcと略平行であり、かつ、上顎中切歯切縁部を通る平面である。図1中、仮想咬合平面Pbを一点鎖線で示している。
【0014】
図1において、患者の歯は、歯列中の一部の歯が欠損し、欠損部分3ができた状態を示している。欠損部分3と対合する残存歯2である挺出残存歯2eは、仮想咬合平面Pbから挺出している。このような患者において、口腔内で理想的な咬合平面を再現することは、従来技術では困難であった。なお、このような患者に対しては、挺出した残存歯2の一部を削除すること、あるいは好ましい形態を有する歯冠修復物等で被覆すること等により、咬合平面を再構成することができる。その場合、挺出した残存歯2において、削除、あるいは修正する部分を口腔内で示すために、口腔内において仮想咬合平面Pbを再現する必要がある。
【0015】
図2は、実施形態1に係る咬合平面再現装置1を患者が装着した状態を示す模式図である。図2は、図1と同様、患者の頭部を右側から見た図であり、説明のため、口腔内の一部を示した図である。図2において、咬合平面再現装置1のカンペル平面測定ユニット10の耳珠上縁当接部11a及び鼻翼下縁当接部13が、それぞれ耳珠4の上縁と鼻翼5の下縁に当接している状態を示している。咬合平面再現装置1の咬合平面指示ユニット30の仮想咬合平面指示部31は、患者の口腔内に挿入され、仮想咬合平面Pbを指示している状態を示している。咬合平面指示ユニット30の歯列前端指示部35は、患者の上顎中切歯切縁部に当接している。
【0016】
このように咬合平面再現装置1を装着することにより、カンペル平面Pcと平行な仮想咬合平面Pbを仮想咬合平面指示部31により口腔内で再現することができる。このとき、仮想咬合平面指示部31は、患者の残存歯2と接触していない状態である。すなわち、仮想咬合平面指示部31は、患者の残存歯2等から推測される仮想歯列よりも頬側、又は唇側に遷移した位置を走行している。言い換えると、仮想咬合平面指示部31は、口腔内において、仮想歯列から所定の距離だけ頬側又は唇側に離れた位置を走行している。なお、仮想歯列から離れる距離は、一定であってもよく、仮想歯列中の部位ごとに異なっていてもよい。これにより、残存歯2の位置や挺出又は低位の状況、形状等にかかわらず、口腔内で仮想咬合平面Pbを再現することができる。
【0017】
<咬合平面再現装置1>
次に、実施形態1に係る咬合平面再現装置1の具体的構成について説明する。図3は、実施形態1に係る咬合平面再現装置1の模式図である。図3(a)は、咬合平面再現装置1の側面図であり、図3(b)は、咬合平面再現装置1の平面図である。図3中、各構成部材の可動方向を矢印で示している。
【0018】
咬合平面再現装置1は、カンペル平面測定ユニット10と、咬合平面指示ユニット30と、支柱20と、を備える。カンペル平面測定ユニット10と、咬合平面指示ユニット30とは支柱20によって接続されている。
【0019】
カンペル平面測定ユニット10は、一対の耳珠上縁当接部11a,11bと、鼻翼下縁当接部13と、アーム部15と、を有する。一対の耳珠上縁当接部11a,11b、及び鼻翼下縁当接部13は、それぞれアーム部15に接続されている。アーム部15は、支柱20のカンペル平面測定ユニット接続部21と接続可能に形成された支柱接続部19を有している。
【0020】
アーム部15は、右アーム部15aと左アーム部15bとにより、患者の顔の左右に配置することができる。すなわち、右アーム部15aと左アーム部15bとの間の距離は、患者の顔の左右の耳の間の距離よりも長くなるように調節可能である。図3において、アーム部15は、コの字型の棒状部材として示されているが、アーム部15の形状はこれに限定されず、U字型、円弧型等、任意の形状とすることができる。アーム部15としては、患者の顔が、右アーム部15a及び左アーム部15bによって区画される空間に、患者の顔が入るように構成されていれば、その形状は特に制限されない。
【0021】
アーム部15は、一対の耳珠上縁当接部11a,11bと、鼻翼下縁当接部13と、をカンペル平面Pc上に保持する。耳珠上縁当接部11a,11b及び鼻翼下縁当接部13は、後述するように、アーム部15に対して、相対的に移動可能であるが、その移動方向は、カンペル平面Pc上に制限される。これにより、一対の耳珠上縁当接部11a,11b及び鼻翼下縁当接部13を、それぞれ左右の耳珠及び鼻翼下縁に当接させることで、アーム部15(カンペル平面測定ユニット10)をカンペル平面に対して略平行に配置することができる。
【0022】
耳珠上縁当接部11a,11bは、患者の左右の耳珠の上縁に当接可能な構成を有する。耳珠上縁当接部11a,11bの先端には、それぞれ、患者と直接接触する先端部12a,12bが設けられていても良い。先端部12a,12bは、例えば、樹脂製、ゴム製等で構成され、角部が面取りされた部材とすることができる。
【0023】
耳珠上縁当接部11aは、右アーム部15aに接続され、耳珠上縁当接部11bは、左アーム部15bに接続されている。耳珠上縁当接部11a,11bは、それぞれ、左右のアーム部15a,15bに対して、回転可能に接続されていても良い。耳珠上縁当接部11a,11bは、それぞれ、左右のアーム部15a,15bに対して、患者の耳(耳珠)に近づく又は遠ざかる方向において摺動可能に接続されていても良い。また、先端部12a,12bは、それぞれ、耳珠上縁当接部11a,11bに対して、回転可能に接続されていても良い。また、先端部12a,12b及び/又は耳珠上縁当接部11a,11bは、アーム部15a,15bがカンペル平面Pc上に保持される限り、アーム部15a,15bによって形成される平面上に位置していなくても良い。たとえば、先端部12a,12bは、患者の左右の耳道に挿入されるよう構成されていても良く、結果として、アーム部15a,15bがカンペル平面Pc上に配置されれば良い。このように耳珠上縁当接部11a,11b、先端部12a,12bを構成することにより、患者の頭の大きさや、耳(耳珠)の位置によらず、様々な患者に、咬合平面再現装置1を装着することができる。
【0024】
鼻翼下縁当接部13は、アーム部15に接続され、患者の鼻翼の下縁に当接可能な構成を有する。鼻翼下縁当接部13は、右アーム部15a又は左アーム部15bの一方のみに接続されていれば良く、両方に接続されていなくとも良い。
【0025】
鼻翼下縁当接部13は、アーム部15に対して、回転可能に接続されていても良い。鼻翼下縁当接部13は、アーム部15に対して、患者の鼻(鼻翼)に近づく若しくは遠ざかる方向、又はアーム部15と平行な方向において、摺動可能に接続されていても良い。
【0026】
咬合平面指示ユニット30は、仮想咬合平面指示部31を有する。図3において、仮想咬合平面指示部31は、支持部37を介して支柱20に接続され、カンペル平面Pcに対して平行に伸びる仮想咬合平面Pb上に保持されている。
【0027】
仮想咬合平面指示部31は、仮想咬合平面Pbにおける仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を走行するよう構成されている。仮想咬合平面指示部31は、患者の残存歯2と接触しないように構成される。
【0028】
仮想咬合平面指示部31の形状は、特に制限されないが、例えば、図3図4(a)に示すように、仮想歯列に沿って棒状に伸びるU字形状とすることができる。図4は、咬合平面指示ユニット30の例を示す模式図である。
【0029】
仮想咬合平面指示部の形状としては、例えば、図4(b)に示すような仮想咬合平面指示部32のように、2本の直線的に伸びる棒状とすることもできる。図4(b)に示すような仮想咬合平面指示部32の場合、患者の口の大きさに応じて、2本の仮想咬合平面指示部32の間の距離(幅)を調節できるよう、移動可能に構成されていても良い。
【0030】
仮想咬合平面指示部31,32の材質は、患者の口腔内で仮想咬合平面を指示することができる限り、特に制限されない。仮想咬合平面指示部31,32の材質としては、例えば、患者の口腔内を損傷し難い、樹脂製やゴム製等の比較的軟らかく、弾性を有するものが好ましい。また、仮想咬合平面指示部31,32の材質としては、仮想咬合平面指示部31,32は患者の口腔内に挿入するものであるため、適切な消毒ができる素材であることが好ましい。咬合平面再現装置1を構成する各部材は、面取り等により、鋭利な先端部を有さないことが好ましい。なお、咬合平面再現装置1は、仮想咬合平面指示部31,32以外のその他の部分については、患者が感染症に罹患している場合もあるため、簡便な清拭により消毒可能な素材であることが好ましい。また、咬合平面再現装置1は、全体として消毒可能な素材とすることもでき、滅菌処理等により完全に無菌化できる素材や、抗菌機能を有する素材、抗菌機能を有するコーティングが施されていても良い。
【0031】
咬合平面指示ユニット30は、歯列前端指示部35を更に有していることが好ましい。歯列前端指示部35は、仮想歯列の上顎中切歯切縁部の位置を指示する。患者の上顎中切歯が残っており、かつ、当該上顎中切歯の位置が仮想歯列における上顎中切歯の位置と一致している場合、歯列前端指示部35は、当該患者の上顎中切歯の切縁部に当接した状態で、仮想咬合平面指示部31が咬合平面を指示するよう構成されていても良い。上顎中切歯の位置が仮想歯列における上顎中切歯の位置と一致していない場合は、想定される理想的な上顎中切歯の切縁部の位置に当接した状態で、仮想咬合平面指示部31が咬合平面を指示するよう構成されていても良い。
【0032】
咬合平面指示ユニット30としては、図示しないが、仮想咬合平面指示部31のような物理的構成物ではなく、例えば、カンペル平面Pcと平行な方向に照射可能なレーザ光や、仮想咬合平面Pbを口腔内に投影可能なホログラム等により実現することもできる。
【0033】
支柱20は、カンペル平面測定ユニット10と、咬合平面指示ユニット30とを、仮想咬合平面指示部31がカンペル平面Pcに対して平行な状態を維持したまま移動可能に接続する。すなわち、カンペル平面測定ユニット10と、咬合平面指示ユニット30とは、カンペル平面Pcと略平行な状態を維持しつつ、相互に平行な状態を維持したまま移動可能である。咬合平面指示ユニット30の仮想咬合平面指示部31は、カンペル平面Pcと平行に配置可能であり、使用の際には、カンペル平面Pcと平行であることが求められる。
【0034】
上述のような支柱20の機能を実現するものである限り、支柱20と、カンペル平面測定ユニット10、咬合平面指示ユニット30との接続形態は、特に制限されない。例えば、図3に示すように、カンペル平面測定ユニット10の支柱接続部19が棒状の突起であり、支柱20のカンペル平面測定ユニット接続部21が当該突起を挿入可能な孔であり、当該突起を把持することにより、カンペル平面測定ユニット10を支柱20に固定可能な構成であっても良い。また、図3に示すように、咬合平面指示ユニット30の支柱接続部39が棒状の突起であり、支柱20の咬合平面指示ユニット接続部29が当該突起を挿入可能な孔であり、当該突起を把持することにより、咬合平面指示ユニット30を支柱20に固定可能な構成であっても良い。
【0035】
支柱20は、図3においては1つの部材として示しているが、例えば、2つ以上の分離した部材で構成されていても良い。その場合、分離した支柱のそれぞれに、棒状の仮想咬合平面指示部32が支持部37を介して保持されている構成とすることもできる。
【0036】
[実施形態2]
以下、実施形態2に係る咬合平面再現方法について説明する。実施形態2に係る咬合平面再現方法は、実施形態1に係る咬合平面再現装置1を用いて実現することができる。以下の説明中、同様の構成については説明を省略し、共通の符号を用いる。
【0037】
咬合平面再現方法は、カンペル平面測定工程と、咬合平面指示工程と、を有する。カンペル平面測定工程では、患者のカンペル平面Pcを測定する。このとき、咬合平面再現装置1のカンペル平面測定ユニット10を用いてカンペル平面Pcを測定することができる。咬合平面指示工程では、患者の口腔内において、カンペル平面Pcに対して平行に延びる仮想咬合平面Pb上の位置であり、かつ、仮想咬合平面Pbにおける仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を指示する。このとき、咬合平面再現装置1の咬合平面指示ユニット30を用いて、口腔内に仮想咬合平面Pbを指示することができる。
【0038】
上述の咬合平面再現装置1及び咬合平面再現方法により再現される仮想咬合平面は、残存歯2が仮想咬合平面Pbから挺出している又は低位にある患者における歯列の診断にも用いることができる。なお、咬合平面再現方法は、診断方法そのものではなく、診断の精度向上のための支援方法である。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、本発明は以下の趣旨を含むものとする。
【0040】
(趣旨1)咬合平面再現装置は、患者の左右の耳珠の上縁に当接させる一対の耳珠上縁当接部と、前記患者の鼻翼の下縁に当接させる鼻翼下縁当接部と、前記一対の耳珠上縁当接部及び前記鼻翼下縁当接部を、前記左右の耳珠の上縁及び前記鼻翼の下縁の3点を含むカンペル平面上に保持するアーム部と、を有するカンペル平面測定ユニットと、前記患者の口腔内において、前記カンペル平面に対して平行に延びる仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想咬合平面における仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を走行する仮想咬合平面指示部を有する咬合平面指示ユニットと、前記カンペル平面測定ユニットと、前記咬合平面指示ユニットとを、前記仮想咬合平面指示部が前記カンペル平面に対して平行な状態を維持したまま移動可能に接続する支柱と、を備えることを趣旨とする。
【0041】
これによれば、歯列中の歯が部分的に欠損し、当該歯列の残存歯が咬合平面から挺出していたり、咬合平面より低位にあったりする患者の口腔内において、咬合平面を直接的に再現することができる。
【0042】
(趣旨2)咬合平面再現装置は、前記咬合平面指示ユニットが、前記仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想歯列の上顎中切歯切縁部の位置を指示する歯列前端指示部を、更に有するものであってもよい。
【0043】
(趣旨3)咬合平面再現装置は、前記一対の耳珠上縁当接部及び前記鼻翼下縁当接部が、前記カンペル平面上で平行移動可能に、前記アーム部に接続されているものであってもよい。
【0044】
(趣旨4)咬合平面再現方法は、患者の左右の耳珠の上縁及び前記患者の鼻翼の下縁の3点を含むカンペル平面を測定するカンペル平面測定工程と、前記患者の口腔内において、前記カンペル平面に対して平行に延びる仮想咬合平面上の位置であり、かつ、前記仮想咬合平面における仮想歯列よりも頬側又は唇側に遷移した位置を指示する咬合平面指示工程と、を有するものである。
【符号の説明】
【0045】
1:咬合平面再現装置 2:残存歯 2e:挺出残存歯
3:欠損部分 4:耳珠 5:鼻翼
10:カンペル平面測定ユニット 11a,11b:耳珠上縁当接部
12a,12b:先端部 13:鼻翼下縁当接部
15:アーム部 19:支柱接続部
20:支柱 21:カンペル平面測定ユニット接続部
29:咬合平面指示ユニット接続部 30:咬合平面指示ユニット
31,32:仮想咬合平面指示部 35:歯列前端指示部
37:支持部 39:支柱接続部
Pb:仮想咬合平面 Pc:カンペル平面
図1
図2
図3
図4