(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】トング
(51)【国際特許分類】
A47G 21/10 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A47G21/10 Z
(21)【出願番号】P 2020174372
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520404126
【氏名又は名称】株式会社ワクワクック
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板谷 一人
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-520114(JP,A)
【文献】特開2007-098062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/10
A47J 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に相対向して設けられ把持対象物を把持する一対の把持部と、一対の前記把持部の他端側に設けられ前記把持部による把持・把持解除操作を行う一対の操作部と、一対の前記操作部の他端側を一体的に連結する湾曲部とを備え、前記操作部と前記湾曲部は金属板から一体に形成され、前記操作部は前記湾曲部に向かって延びる他端側に弾性部を部分的に備えるとともに、前記弾性部が形成された部分を除く前記操作部の部分と前記湾曲部は弾性変形しないように構成され、前記操作部
は略平坦な板状に形成され、前記金属板の前記弾性部に対応する部位を圧延して焼き鈍しすることにより前記弾性部の厚みは前記弾性部が形成された部分を除く前記操作部の部分の厚みよりも薄く形成され、前記弾性部の長さは前記弾性部の幅よりも大きく形成されていることを特徴とするトング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品その他の物品を挟んで掴むための器具として用いられるトングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向してそれぞれ設けられると共に把持対象物を把持する左右一対の把持部と、該把持部を下端側に備え相対向して上方に延びると共に前記把持部による把持・把持解除操作を行う操作部と、該両操作部を上端部において一体的に連結し、上方に向けて左右方向に折り返して弯曲すると共に弾性を有する弾性弯曲部とからなるトングが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のトングは、操作部により把持・把持解除操作を行う際に、弾性を有する弾性弯曲部において捩れが生じやすいため、左右一対の把持部が相互にずれてしまい、把持対象物を上手く把持できないことがあった。また、上記のトングは、把持・把持解除操作の際の弾性弯曲部における弾性変形量が大きいため、弾性弯曲部が塑性変形してしまい、把持部が開きにくくなることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、左右一対の把持部が相互にずれることがなく、しかも、操作部を連結する湾曲部が塑性変形することのない、使い勝手の良いトングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトングは、一端側に相対向して設けられ把持対象物を把持する一対の把持部と、一対の前記把持部の他端側に設けられ前記把持部による把持・把持解除操作を行う一対の操作部と、一対の前記操作部の他端側を一体的に連結する湾曲部とを備え、前記操作部と前記湾曲部は金属板から一体に形成され、前記操作部は前記湾曲部に向かって延びる他端側に弾性部を部分的に備えるとともに、前記弾性部が形成された部分を除く前記操作部の部分と前記湾曲部は弾性変形しないように構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記弾性部の長さは前記弾性部の幅よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、前記操作部は略平坦な板状に形成され、前記弾性部の厚みは前記操作部の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトングによれば、前記操作部と前記湾曲部は金属板から一体に形成され、前記操作部は前記湾曲部に向かって延びる他端側に弾性部を部分的に備えるとともに、前記弾性部が形成された部分を除く前記操作部の部分と前記湾曲部は弾性変形しないように構成されている。弾性部は金属板から形成されており、弾性力が最小になるような一方向にのみ弾性変形するように作用するため、左右一対の把持部が相互にずれることはない。また、弾性部が2か所で弾性変形するため、それぞれの弾性部における弾性変形量が少なくなり、弾性部が塑性変形することがない。
【0010】
また、前記弾性部の長さは前記弾性部の幅よりも大きく形成されているため、単位面積当たりの弾性変形量が小さくなり、弾性部が塑性変形することがない。
【0011】
さらに、前記操作部は略平坦な板状に形成され、前記弾性部厚みは前記操作部の厚みよりも薄く形成されているため、圧延と焼き鈍しにより弾性部を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のトングの一実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明のトングの一実施例を示す弾性部近傍の操作部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施例に基づき、本発明のトングについてより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0014】
本実施例のトングを示す
図1において、1はトングであり、ステンレス鋼等の1枚の細長な金属板を機械加工して製作されたものである。トング1の一端側には、食品等の把持対象物2を把持する左右一対の把持部3A,3Bが相対向して設けられている。把持部3A,3Bから他端側に向かって、把持部3A,3Bによる把持・把持解除操作を行う左右一対の操作部4A,4Bが相対向して延びている。そして、操作部4A,4Bの他端側には、左右方向に滑らかに湾曲して操作部4A,4Bを一体的に連結する湾曲部5が設けられている。また、把持部3A,3Bは、縁に凹凸部6を形成したスプーンの掬い部のような形状に形成されている。なお、本実施例では、把持部3A,3Bは、操作部4A,4Bと一体に形成されているが、合成樹脂により形成されたものであってもよい。
【0015】
操作部4A,4Bは、それぞれ細長で略平坦な板状に形成されており、湾曲部5に向かって延びる他端側において、弾性部7A,7Bをそれぞれ部分的に備えている。弾性部7A,7Bの一端側から他端側へ向かう方向の長さLは、それと直交する方向の幅Wよりも大きく形成されている。また、
図2の断面図に示すように、弾性部7A,7Bも略平坦な板状に形成されており、弾性部7A,7Bの厚みAは、操作部4A,4Bの厚みBよりも薄く形成されている。そして、操作部4A,4Bの他端側において部分的に厚みが薄く形成された弾性部7A,7Bのみが弾性変形し、弾性部7A,7Bが形成された部分を除く操作部4A,4Bの部分と湾曲部5は、弾性変形しないように構成されている。
【0016】
本実施例のトング1の製造方法について説明する。はじめに、適切な大きさの細長の金属板材を準備し、弾性部7A,7Bに対応する部位をロールで圧延することにより薄く加工する。つぎに、必要に応じて、圧延した部位を焼き鈍しする。これらの加工により、弾性部7A,7Bに対応する部位のみが肉薄で弾性変形する金属板材が得られる。そして、この金属板材の把持部3A,3Bに対応する部位を所定の形状に加工し、湾曲部5に対応する部位を曲げ、最後に磨きなどの仕上げの加工を施すことにより、トング1が得られる。
【0017】
本実施例のトング1の作用について説明する。使用していない場合のトング1は、
図1に示すように、左右一対の把持部3A,3Bは開状態にある。そして、左右一対の操作部4A,4Bを外側より握ることにより、左右一対の把持部3A,3Bは、弾性部7A,7Bの弾性力に抗して閉状態となって、把持対象物2を把持することができる。この際、弾性部7A,7Bのみが弾性変形し、湾曲部5は弾性変形しない。また、弾性部7A,7Bは、略平坦な金属板から形成されており、弾性力が最小になるような一方向にのみ弾性変形するように作用する。したがって、従来のトングのように湾曲部5が捩れて左右一対の把持部3A,3Bが相互にずれるようなことは起こらない。
【0018】
また、湾曲部5が1か所で弾性変形する従来のトングと比較して、本実施例のトング1では、弾性部7A,7Bが2か所で弾性変形するため、それぞれの弾性部7A,7Bにおける弾性変形量が少なくなる。さらに、弾性部7A,7Bの長さLが幅Wよりも大きく形成されているため、単位面積当たりの弾性変形量が小さい。その結果、度重なる使用においても弾性部7A,7Bが塑性変形することがない。
【0019】
以上のように、本実施例のトング1は、一端側に相対向して設けられ把持対象物2を把持する一対の把持部3A,3Bと、一対の前記把持部3A,3Bの他端側に設けられ前記把持部3A,3Bによる把持・把持解除操作を行う一対の操作部4A,4Bと、一対の前記操作部4A,4Bの他端側を一体的に連結する湾曲部5とを備え、前記操作部4A,4Bと前記湾曲部5は金属板から一体に形成され、前記操作部4A,4Bは前記湾曲部5に向かって延びる他端側に弾性部7A,7Bを部分的に備えるとともに、前記弾性部7A,7Bが形成された部分を除く前記操作部4A,4Bの部分と前記湾曲部5は弾性変形しないように構成されている。したがって、弾性部7A,7Bは金属板から形成されており、弾性力が最小になるような一方向にのみ弾性変形するように作用するため、左右一対の把持部3A,3Bが相互にずれることはない。また、弾性部7A,7Bが2か所で弾性変形するため、それぞれの弾性部7A,7Bにおける弾性変形量が少なくなり、弾性部7A,7Bが塑性変形することがない。
【0020】
また、前記弾性部7A,7Bの長さLは前記弾性部7A,7Bの幅Wよりも大きく形成されているため、単位面積当たりの弾性変形量が小さくなり、弾性部7A,7Bが塑性変形することがない。
【0021】
さらに、前記操作部4A,4Bは略平坦な板状に形成され、前記弾性部7A,7Bの厚みAは前記操作部4A,4Bの厚みBよりも薄く形成されているため、圧延と焼き鈍しにより弾性部7A,7Bを容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 トング
2 把持対象物
3A,3B 把持部
4A,4B 操作部
5 湾曲部
7A,7B 弾性部
L 長さ
W 幅
A 厚み
B 厚み