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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
F16K37/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021501982
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006061
(87)【国際公開番号】W WO2020171018
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2019027669
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100183380
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊英
(72)【発明者】
【氏名】近藤 研太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104203(WO,A1)
【文献】特開平10-148275(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191852(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202006012959(DE,U1)
【文献】特開2011-220461(JP,A)
【文献】特開昭55-027548(JP,A)
【文献】特開2002-238288(JP,A)
【文献】特開2002-106744(JP,A)
【文献】国際公開第2007/026448(WO,A1)
【文献】米国特許第05654885(US,A)
【文献】国際公開第2019/106960(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107420627(CN,A)
【文献】特表2007-525622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入路および流出路が形成されたボディと、
前記流入路および前記流出路を開閉する弁体と、
前記弁体により前記流入路および前記流出路を連通または遮断させるために、前記ボディに対し近接および離間移動するステムと、
前記ステムのストローク量を調整するストローク調整部と、
前記ステムの下端の変位を検知する変位センサと、を備えるバルブ。
【請求項2】
前記変位センサにより、バルブが開状態または閉状態において検知された測定値に基づき、前記ステムのストローク算出のためのゼロ点を設定する制御部を備える、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記制御部は、前記変位センサの測定値と、閾値とに基づき、バルブが開状態か閉状態かを判定する、請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記制御部は、前記変位センサにより、バルブが開状態および閉状態において検知された測定値に基づき、前記閾値を更新する、請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記ストローク調整部は、第1ストローク調整部と、前記第1ストローク調整部とは異なる位置に設けられた第2ストローク調整部とを備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項6】
第1ねじ孔が形成され、前記ボディに固定されたボンネットと、
ケーシングおよび前記ケーシングに収容された駆動部を有するアクチュエータと、をさらに備え、
前記ケーシングは、円筒状をなし、前記ステムが当接可能であり、外周に前記第1ねじ孔に螺合する第1ねじ部が設けられた螺合部を有し、
前記駆動部は、前記ステムに連結され、前記ステムと共に前記ボディに対し近接および離間移動する駆動軸を有し、
前記第1ねじ部および前記第1ねじ孔は、前記第1ストローク調整部を構成し、
前記第2ストローク調整部は、前記ケーシングにおいて、前記駆動部に対する前記螺合部側の反対側に設けられ、
前記第2ストローク調整部は、円筒状をなし回転可能に設けられ第2ねじ孔を有するハンドルと、外周に前記第2ねじ孔に螺合する第2ねじ部が設けられ前記駆動軸が当接可能な移動ディスクとを有し、
前記第1ストローク調整部は、前記ケーシングを回転させて、前記螺合部の前記第1ねじ部を前記ボンネットの第1ねじ孔に対して回転させることにより、前記ケーシングの前記ボディに対する位置を調整して、前記ステムのストローク量を調整するように構成され、
前記第2ストローク調整部は、前記ハンドルを回転させて、互いに螺合している前記第2ねじ孔と前記第2ねじ部により、前記移動ディスクを移動させて、前記移動ディスクの前記ボディに対する位置を調整して、前記ステムのストローク量を調整するように構成され、
前記第2ねじ部および前記第2ねじ孔のピッチは、前記第1ねじ部および前記第1ねじ孔のピッチよりも小さく構成されている、請求項5に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造装置等に用いるバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動流体により開閉を行うバルブにおいて、エアシリンダによる開閉素子の開閉リフトを調節して流体の流量を調節し得る調節手段を有するバルブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-14155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のバルブでは、開閉リフトを調整した後、実際にどの程度開閉素子のリフト量が変化したのか把握することができない。
【0005】
そこで本開示は、ステムのストローク量を把握可能なバルブを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本発明の一態様であるバルブは、流入路および流出路が形成されたボディと、前記流入路および前記流出路を開閉する弁体と、前記弁体により前記流入路および前記流出路を連通または遮断させるために、前記ボディに対し近接および離間移動するステムと、前記ステムのストローク量を調整するストローク調整部と、前記ステムの変位を検知する変位センサと、を備える。
【0007】
前記変位センサにより、バルブが開状態または閉状態において検知された測定値に基づき、前記ステムのストローク算出のためのゼロ点を設定する制御部を備えてもよい。
【0008】
前記制御部は、前記変位センサの測定値と、閾値とに基づき、バルブが開状態か閉状態かを判定してもよい。
【0009】
前記制御部は、前記変位センサにより、バルブが開状態および閉状態において検知された測定値に基づき、前記閾値を更新してもよい。
【0010】
前記ストローク調整部は、第1ストローク調整部と、前記第1ストローク調整部とは異なる位置に設けられた第2ストローク調整部とを備えていてもよい。
【0011】
第1ねじ孔が形成され、前記ボディに固定されたボンネットと、ケーシングおよび前記ケーシングに収容された駆動部を有するアクチュエータと、をさらに備え、前記ケーシングは、円筒状をなし、前記ステムが当接可能であり、外周に前記第1ねじ孔に螺合する第1ねじ部が設けられた螺合部を有し、前記駆動部は、前記ステムに連結され、前記ステムと共に前記ボディに対し近接および離間移動する駆動軸を有し、前記第1ねじ部および前記第1ねじ孔は、前記第1ストローク調整部を構成し、前記第2ストローク調整部は、前記ケーシングにおいて、前記駆動部に対する前記螺合部側の反対側に設けられ、前記第2ストローク調整部は、円筒状をなし回転可能に設けられ第2ねじ孔を有するハンドルと、外周に前記第2ねじ孔に螺合する第2ねじ部が設けられ前記駆動軸が当接可能な移動ディスクとを有し、前記第1ストローク調整部は、前記ケーシングを回転させて、前記螺合部の前記第1ねじ部を前記ボンネットの第1ねじ孔に対して回転させることにより、前記ケーシングの前記ボディに対する位置を調整して、前記ステムのストローク量を調整するように構成され、前記第2ストローク調整部は、前記ハンドルを回転させて、互いに螺合している前記第2ねじ孔と前記第2ねじ部により、前記移動ディスクを移動させて、前記移動ディスクの前記ボディに対する位置を調整して、前記ステムのストローク量を調整するように構成され、前記第2ねじ部および前記第2ねじ孔のピッチは、前記第1ねじ部および前記第1ねじ孔のピッチよりも小さく構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステムのストローク量を把握可能なバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るバルブの断面図である。
図2】バルブのステムのフランジ近傍の拡大断面図である。
図3】センサ部から出力される信号の一例である。
図4】ストローク算出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一実施形態に係るバルブについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るバルブ1の断面図を示している。図2は、バルブ1のステム17のフランジ17A近傍の拡大断面図を示している。なお、本実施形態に係るバルブ1はダイヤフラムバルブである。
【0016】
図1に示すように、バルブ1は、ボディ10と、アクチュエータ20と、センサ部2と、制御部3とを備える。なお、以下の説明において、バルブ1の、アクチュエータ20側を上側、ボディ10側を下側として説明する。
【0017】
[ボディ10]
ボディ10は、ボディ本体11と、シート12と、ボンネット13と、ダイヤフラム14と、押えアダプタ15と、ダイヤフラム押え16と、ステム17と、圧縮コイルスプリング18を備える。
【0018】
ボディ本体11には、弁室11aと、弁室11aに連通する流入路11bおよび流出路11cとが形成されている。シート12は、環状をなし、弁室11aと流入路11bとが連通する箇所の周縁に設けられている。
【0019】
ボンネット13は、有蓋の略円筒状をなし、その下端部の外周に設けられた雄ネジ部をボディ本体11に設けられた雌ネジ部に螺合させることにより、弁室11aを覆うようにボディ本体11に固定されている。
【0020】
ボンネット13の頂壁部13Aの中央部には、第1貫通孔13bが形成されている。頂壁部13Aの下面であって第1貫通孔13bの周縁部には、下方に突出する円筒状の第1下突出部13Cが設けられている。第1貫通孔13bおよび第1下突出部13Cの内周には、雌ねじ部13Dが設けられている。ボンネット13には、その軸に対して直交する方向に貫通し、ガスの漏れを検知するための第2貫通孔13eが形成されている。ボンネット13の内周であって、第2貫通孔13eの下側には、後述のホールIC2Bを収容する収容凹部13f(図2)が形成されている。第1貫通孔13b、第1下突出部13Cの内周、および雌ネジ部13Dは、第1ねじ孔に相当する。
【0021】
弁体であるダイヤフラム14は、ボンネット13の下端に配置された押えアダプタ15とボディ本体11の弁室11aを形成する底面とにより、その外周縁部が挟圧され保持されている。ダイヤフラム14は、球殻状をなし、上に凸の円弧状が自然状態となっている。ダイヤフラム14がシート12に対し離間および当接することによって、流体通路の開閉が行われる。ダイヤフラム14は、例えば、複数枚の金属の薄板により構成され、円形に切り抜き、中央部を上方へ膨出させた球殻状に形成される。
【0022】
ダイヤフラム押え16は、ダイヤフラム14の上側に設けられ、ダイヤフラム14の中央部を押圧可能に構成されている。
【0023】
ステム17は、略円柱状をなし、ボンネット13内に上下移動可能に配置されている。ステム17の下端には、フランジ17Aが設けられている。フランジ17Aの外周面には、一周連続して環状をなす磁石収容溝17b(図2)が形成されている。収容凹部13fと磁石収容溝17bとは、径方向において互いに対向している。フランジ17Aの下面側には、下方に突出する円筒状の第3下突出部17Cが設けられている。第3下突出部17C内に、ダイヤフラム押え16が嵌合されている。
【0024】
圧縮コイルスプリング18は、ボンネット13の頂壁部13Aとステム17のフランジ17Aとの間に設けられている。圧縮コイルスプリング18は、ステム17を常に下方に付勢している。このため、バルブ1は、圧縮コイルスプリング18により、通常時(駆動部30の非作動時)は閉状態に保たれる。
【0025】
[アクチュエータ20]
アクチュエータ20は、ケーシング21と、第1ストローク調整部22と、駆動部30と、第2ストローク調整部40とを備える。ケーシング21は、下ケーシング25と、下端部が下ケーシング25の上端部に螺合された上ケーシング26とを有する。
【0026】
下ケーシング25は、底部25Aと、第1上突出部25Bと、第2下突出部25Cとを有する。底部25Aは、円盤状をなし、中央部に第3貫通孔25dが形成されている。第1上突出部25Bは、円筒状をなし、底部25Aの外周縁から上方に突出するように設けられている。第2下突出部25Cは、第3貫通孔25dの周縁部から下方に突出するように設けられている。第2下突出部25Cの下部の外周には、雄ねじ部25Eが設けられている。第2下突出部25Cの雄ねじ部25Eの下部は、ボンネット13の雌ねじ部13D
に螺合されている。第2下突出部25Cは螺合部に相当し、雄ねじ部25Eは第1ねじ部に相当する。
【0027】
上ケーシング26は、有蓋の略円筒状をなし、周壁部26Aと、頂壁部26Bとを有する。頂壁部26Bの中央部には、第4貫通孔26cが形成されている。頂壁部26Bの上面であって第4貫通孔26cの周縁部には、上方に突出する円筒状の第2上突出部26Dが設けられている。第2上突出部26Dには、その軸に直交する方向に貫通するねじ孔26eが形成されている。
【0028】
第1ストローク調整部22は、ナット22Aを有している。ナット22Aは、第2下突出部25Cの雄ねじ部25Eの上部に螺合されている。ナット22Aは、頂壁部13Aに当接することにより、下ケーシング25のボンネット13に対する回動を抑制する。ナット22Aを緩めることにより、下ケーシング25の回動の抑制は解除され、下ケーシング25を回動させることにより、下ケーシング25はボディ10に対し上下動可能となる。
【0029】
ステム17は、その上方への移動に際し、ステム17の上面17Dが、下ケーシング25の第2下突出部25Cの下面25Fに当接することで、それ以上のステム17の上方への移動が阻止される。ナット22Aを緩めた状態で、下ケーシング25を回転させることで、ステム17のストローク量(リフト量)を所望の値に設定することができる。すなわち、ステム17の上方への移動量の上限値を所望の値に設定することができる。ナット22A、第2下突出部25Cの雄ねじ部25E、およびボンネット13の雌ねじ部13Dにより、第1ストローク調整部22が構成される。
【0030】
[駆動部30]
駆動部30は、第1ピストン31と、仕切ディスク32と、第2ピストン33、駆動軸34とを有する。
【0031】
第1ピストン31は、略円盤状をなし、中央部に駆動軸34が貫通する第5貫通孔31aが形成されている。第1ピストン31および下ケーシング25により、第1圧力室P1が形成される。
【0032】
仕切ディスク32は、略円盤状をなし、中央部に駆動軸34が貫通する第6貫通孔32aが形成されており、上ケーシング26の内周に移動不能に固定されている。
【0033】
第2ピストン33は、略円盤状をなし、中央部に駆動軸34が貫通する第7貫通孔33aが形成されている。第2ピストン33、仕切ディスク32、および上ケーシング26により、第2圧力室P2が形成される。
【0034】
駆動軸34は、略円柱状をなし、上下方向に移動可能に設けられ、ボンネット13から、 下ケーシング25の第2下突出部25Cを通って、後述の移動ディスク42の小径部42Bまで延びている。駆動軸34の下端部は、その外径がステム17の外径よりも小さく構成され、ステム17に螺合されている。
【0035】
駆動軸34には、その上半分部分に、上下方向に延びる流体流路34aが形成され、さらに流体流路34aを横切る第1,2流体流出孔34b,34cが形成されている。流体流路34aの上端は、駆動軸34の上面で開口している。第1流体流出孔34bは、第1圧力室P1に連通している。第2流体流出孔34cは、第1流体流出孔34bの上側に位置し、第2圧力室P2に連通している。
【0036】
駆動軸34には、第2ピストン33と後述の移動ディスク42の小径部42Bとの間に位置する部分に、フランジ34Dが設けられている。フランジ34Dは、第2ピストン33の上面に当接している。これにより、第2ピストン33が上側に移動すると、駆動軸34およびステム17が上側に移動する。
【0037】
第2ストローク調整部40は、ハンドル41と、移動ディスク42と、案内ピン43と、押えリング44と、ワッシャ45とを備える。
【0038】
ハンドル41は、円筒状をなし、第2上突出部26Dの外側に位置し、上ケーシング26の頂壁部26B上に回転可能に配置されている。ハンドル41には、下端部にフランジ41Aが設けられ、上部の内周に雌ねじ部41Bが設けられている。ハンドル41には、その周方向の2箇所にねじ孔41cが形成されている。ねじ孔41cに固定ねじ41Dが螺合されて移動ディスク42の外周面に当接することにより、移動ディスク42の上下動および回転が規制される。ハンドル41の上部の内周および雌ネジ部41Bは、第2ねじ孔に相当する。
【0039】
移動ディスク42は、大径部42Aと、大径部42Aの下側に位置し大径部42Aよりも外径が小さい小径部42Bとを有する。大径部42Aはその下面が第2上突出部26Dの上面に当接可能に配置されている。小径部42Bは、第2上突出部26D内に位置している。大径部42Aの外周には、雄ねじ部42Cが設けられいる。大径部42Aの雄ねじ部42Cとハンドル41の雌ねじ部41Bとは、互いに螺合している。このため、ハンドル41の回転により、移動ディスク42は上下移動する。第2ストローク調整部40の雄ねじ部42Cおよび雌ねじ部41Bのピッチは、第1ストローク調整部22の雄ねじ部25Eおよび雌ねじ部13Dのピッチよりも小さく構成されている。このため、第1ストローク調整部22によりステム17のストロークを大きく調整し、第2ストローク調整部40によりステム17のストロークの微調整を行うことができる。小径部42Bの外周には、上下方向に延びる案内溝42dが形成されている。案内溝42dと第2上突出部26Dのねじ孔26eとは、径方向において互いに隣り合っている。雄ねじ部42Cは、第2ねじ部に相当する。
【0040】
移動ディスク42には、上下方向に沿って貫通する流体導入路42eが形成されている。流体導入路42eの上端部には、図示せぬ管継手が装着される。流体導入路42eの下端部には、駆動軸34の上端部が挿入されている。これにより、流体導入路42eと流体流路34aとは互いに連通している。
【0041】
案内ピン43は、第2上突出部26Dのねじ孔26eに螺合されている。案内ピン43の先端は、案内溝42d内に位置している。これにより、移動ディスク42は、上ケーシング26に対して回転不能かつ上下方向に移動可能に構成される。
【0042】
押さえリング44は、略円筒状をなし、周壁部44Aと、内方突出部44Bとを有する。周壁部44Aの内周は、上ケーシング26の上端部の外周に螺合されている。内方突出部44Bは、環状をなし、周壁部44Aの上端から内方に向かって突出し、上ケーシング26の頂壁部26Bおよびハンドル41のフランジ41Aを覆っている。
【0043】
ワッシャ45は、その表面にフッ素樹脂コーティングが施され、フランジ41Aと内方突出部44Bとの間に設けられている。ワッシャ45をコーティングする材料はフッ素樹脂に限らず、ワッシャ45に代えて、スラストベアリング、ボールベアリング等を用いてもよい。ワッシャ45を設けることにより、開状態のバルブ1において、ハンドル41の操作性を向上させることができる。
【0044】
[センサ部2]
センサ部2は、ステム17の変位を検知するための変位センサであり、図2に示すように、磁石2AとホールIC2Bと配線2Cを有するホールセンサである。磁石2Aは、円環状をなし、ステム17のフランジ17Aの磁石収容溝17bに収容されている。ホールIC2Bは、収容凹部13fに収容されている。ホールIC2Bは、ホール素子とオペアンプ等の増幅回路とを有する。配線2Cは、ホールIC2Bに接続され、第2貫通孔13eを介して外部へ延び、制御部3に接続されている。
【0045】
ホールIC2Bのホール素子に一定電流を流した状態で、ステム17に設けられた磁石2Aの位置が変化すると、磁束密度に応じた電圧がホール素子から出力される。当該出力電圧をオペアンプで増幅し、信号処理することにより、磁束密度に応じた信号がホールIC2Bから制御部3へ出力される。当該出力信号により、ステム17のストローク量を把握することができる。
【0046】
図3は、センサ部2から出力される信号の一例である。縦軸は電圧(V)であり、横軸は時間(秒)である。
【0047】
図3に示すように、バルブ1の閉時には低い電圧を示し、バルブ1の開時には高い電圧を示す信号Sが得られる。なお、信号Sのノイズは、ガスの内圧、振動、電磁波、および抵抗等によるものである。
【0048】
[制御部3]
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)と、記憶部とを備える。記憶部は、各種プログラムを記憶し、当該プログラムがCPUに読み出されて実行されることにより、後述のストローク算出処理が行われる。
【0049】
[バルブ1の開閉動作]
次に、本実施形態に係るバルブ1の開閉動作について説明する。
【0050】
本実施形態のバルブ1では、第1、2圧力室P1、P2に駆動流体が流入していない状態では、ステム17は圧縮コイルスプリング18の付勢力によって下死点にあり(ボディ本体11に近接し)、ダイヤフラム押え16によりダイヤフラム14が押圧されてバルブ1は閉状態となっている。つまり、バルブ1は、通常状態(駆動流体が供給されていない状態)では閉状態である。
【0051】
そして、図示せぬ駆動流体供給源からバルブ1へ駆動流体が流れる状態にする。これにより、バルブ1へ駆動流体が供給される。駆動流体は、図示せぬエアチューブおよび管継手を介して、流体導入路42eおよび流体流路34aを通過し、第1,2流体流出孔34b,34cを通過して、第1、2圧力室P1、P2に流入する。第1、2圧力室P1、P2に駆動流体が流入すると、第1、2ピストン31、33が、圧縮コイルスプリング18の付勢力に抗して上昇する。これにより、ステム17および駆動軸34は上死点に移動し(ボディ本体11から離間し)、ダイヤフラム14の弾性力および流体(ガス)の圧力によりダイヤフラム押え16が上側に移動し、流入路11bと流出路11cとが連通し、バルブ1は開状態となる。
【0052】
バルブ1を開状態から閉状態にするには、図示せぬ三方弁を、駆動流体がバルブ1の駆動部30(第1、2圧力室P1、P2)から外部へ排出する流れに切り替える。これにより、第1、2圧力室P1、P2内の駆動流体が、第1,2流体流出孔34b,34c、流体流路34a、および流体導入路42eを介して、外部へ排出される。これにより、ステム17、駆動軸34および第1、2ピストン31、33は圧縮コイルスプリング18の付勢力によって下死点に移動し、バルブ1は閉状態となる。
【0053】
[ストローク調整方法]
次に、ステム17のストローク量の調整方法について説明する。ステム17のストローク量を調整することにより、バルブ1の流量(Cv値)を変更することができる。
【0054】
第1ストローク調整部22において、ナット22Aを緩めた状態で、下ケーシング25を回転させることにより、ケーシング21のボディ10に対する上下方向の位置を調整する。これにより、ステム17の上面17Dと下ケーシング25の第2下突出部25Cの下面25Fとの距離が、所望の距離に設定される。その結果、ステム17のストローク量の上限値が設定される。この時、移動ディスク42の下面と駆動軸34のフランジ34Dの上面との距離を、設定した上限値以上にする。
【0055】
ステム17のストローク量を微調整したい(少し減少させたい)場合、第2ストローク調整部40によりストローク量の微調整を行う。具体的には、固定ねじ41Dを外して、ハンドル41を回転させて、移動ディスク42を下降させる。これにより、移動ディスク42が駆動軸34のフランジ34Dに近づくことで、ステム17のストローク量がわずかに減少する。この状態では、ステム17が上死点に位置するときに、駆動軸34のフランジ34Dの上面が移動ディスク42の下面に当接するが、ステム17の上面17Dは下ケーシング25の第2下突出部25Cの下面25Fに当接しない。
【0056】
次に、本実施形態のバルブ1の制御部3で行われるストローク算出処理について、図3、4を参照して説明する。当該ストローク算出処理は、バルブ1の作動時であって、センサ部2および制御部3に通電されている間、制御部3により常に実行される。
【0057】
図4は、ストローク算出処理のフローチャートである。
【0058】
制御部3は、センサ部2のホールIC2Bから送信される信号データ(電圧値(測定値))を取得、記憶部に記憶する(ステップS1)。制御部3は、初めに信号データを取得してから所定期間(T1)経過したか否か判定する(ステップS2)。ここで、所定期間(T1)とは、バルブ1の開閉時間、例えば、バルブ1を開閉するための図示せぬ三方弁を開状態にし閉状態してから次に開状態にするまでの時間であるが、これに限らない。制御部3は、所定期間が経過していない場合(S2:NO)、ステップS1に戻り、次の信号データを取得する。
【0059】
所定期間(T1)を経過した場合(S2:YES)、制御部3は、所定期間(T1)に取得した信号データの電圧値うち、最小値(V1)をストローク算出のためのゼロ点(基準値)に設定する(ステップS3)。すなわち、バルブ1が閉状態におけるセンサ部2による測定値(電圧値)をゼロ点として設定する。制御部3は、所定期間(T1)に取得した信号データの電圧値のうち、最大値(V2)を示す電圧値を取得し、最小値(V1)と最大値(V2)の中間値(Vm1)を、バルブ1開閉の判定のための閾値(Vm1)に設定する(ステップS4)。
【0060】
次に、制御部3は、センサ部2のホールIC2Bから信号データを取得し(ステップS5)、取得した信号データの電圧値と、設定した閾値(Vm1)とを比較し、バルブ1の開閉状態を判定する(ステップS6)。制御部3は、前回判定時のバルブ1の開閉状態に基づき、バルブ1が開状態から閉状態になったか否か判断する(ステップS7)。バルブ1が開状態から閉状態になっていない場合(S7:NO)、制御部3は、ステップS5に戻る。
【0061】
一方、バルブ1が開状態から閉状態になった場合(S7:YES)、制御部3は、ステップS5で取得した信号データの直前の一定時間(t)に取得された信号データの電圧値のうち、最大値(V3)と、ゼロ点の値(V1)との差分を算出し、当該差分に相当するストローク量を算出する(ステップS8)。ストローク量の算出は、予めホール素子に対する磁石A2の移動量と、当該移動量に対するホール素子における電圧変化との相関関係を求めておき、当該相関関係に基づきストローク量を算出する。当該算出したストローク量をディスプレイ等の表示部に表示してもよい。
【0062】
制御部3は、ゼロ点の値(V1)と、ステップS7で取得した最大値(V3)との中間値(Vm2)を算出し、算出した値をバルブ1開閉の判定のための新たな閾値(Vm2)として更新する(ステップS9)。例えば、図3に示すように、ステム17のストロークが調整され、ストローク量が減少した場合、閾値は更新され減少する。その後、制御部3は、ステップS5に戻る。
【0063】
以上説明した本実施形態のバルブによれば、ステム17のストローク量を調整する第1,第2ストローク調整部22,40と、ステム17の変位を検知するセンサ部2とを備える。このため、ストローク調整後のステム17のストローク量を把握することができる。ひいては、バルブ1の流量(Cv値)も把握することができる。
【0064】
バルブ1は、センサ部2により、バルブ1が閉状態において検知された測定値(電圧値)に基づき、ステム17のストローク算出のためのゼロ点を設定する制御部3を備える。これにより、ステム17のストロークのゼロ点を正確に設定することができ、ステム17の正確なストローク量を算出することができる。さらに、シート12が経年劣化しても、ステム17のストロークのゼロ点を正確に設定することができる。
【0065】
制御部3は、センサ部2の測定値と、閾値とに基づき、バルブ1が開状態か閉状態かを判定する。これにより、バルブ1が開状態か閉状態かを正確に把握することができる。
【0066】
制御部3は、センサ部2により、バルブ1が開状態および閉状態において検知された測定値に基づき、閾値を更新する。これにより、第1,第2ストローク調整部22,40によりストローク量が変更されてたとしても、閾値を更新することにより、バルブ1が開状態か閉状態かを正確に把握することができる。
【0067】
なお、本開示は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本開示の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0068】
例えば、上記の実施形態において、センサ部2は、ホールセンサであったが、静電容量センサ等の他の変位センサであってもよい。制御部3は、取得した信号データの電圧値のうち、最小値(V1)をストローク算出のためのゼロ点(基準値)に設定したが、最大値(V2)をゼロ点として設定してもよい。制御部3は、取得した信号データの電圧値のうち、最小値(V1)をストローク算出のためのゼロ点(基準値)に設定したが、一定時間の電圧値の平均値をゼロ点としてもよい。最大値(V2、V3)を、一定時間の電圧値の平均値を用いてもよい。閾値は、最小値(V1)と最大値(V2)の中間値(Vm1)であったが、これに限らず、中間値(Vm1)よりも最小値(V1)の値であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:バルブ、 2:センサ部、 3:制御部、 10:ボディ、 11:ボディ本体、11b:流入路、 11c:流出路、 14:ダイヤフラム 22:第1ストローク調整部、 17:ステム、 40:第2ストローク調整部

図1
図2
図3
図4